(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
重合性ビニルモノマー、重合性ビニルプレポリマー、多官能(メタ)アクリレートモノマーおよび多官能(メタ)アクリレートオリゴマーから選ばれる少なくとも1種の重合成分と、
直鎖状構造を有し、その両末端にアルコキシシリル基を有するオルガノアルコキシシランと
を含有し、
前記重合成分の少なくとも一部が、活性水素基を含有し、
前記オルガノアルコキシシランが、前記アルコキシシリル基以外に、前記重合成分と反応し得る基を有さない
ことを特徴とする無溶剤型粘着性組成物。
前記無溶剤型粘着性組成物は、前記重合成分として、少なくとも前記重合性ビニルモノマーおよび前記多官能(メタ)アクリレートオリゴマーを含有することを特徴とする請求項1または2に記載の無溶剤型粘着性組成物。
前記無溶剤型粘着性組成物中における前記オルガノアルコキシシランの含有量は、前記重合成分100質量部に対して、0.01質量部以上、20質量部以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の無溶剤型粘着性組成物。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について説明する。
〔無溶剤型粘着性組成物〕
本実施形態に係る無溶剤型粘着性組成物(以下「無溶剤型粘着性組成物P」という場合がある。)は、重合性ビニルモノマー、重合性ビニルプレポリマー、多官能(メタ)アクリレートモノマーおよび多官能(メタ)アクリレートオリゴマーから選ばれる少なくとも1種の重合成分と、直鎖状構造を有し、その両末端にアルコキシシリル基を有するオルガノアルコキシシランとを含有する。ここにおいて、上記重合成分の少なくとも一部は、活性水素基を含有する。なお、本明細書において、(メタ)アクリレートとは、アクリレート及びメタクリレートの両方を意味する。他の類似用語も同様である。
【0025】
本実施形態に係る無溶剤型粘着性組成物Pでは、硬化の際に、重合成分同士のラジカル重合反応が進行するとともに、重合成分が有する活性水素基と、オルガノアルコキシシランが有するアルコキシシリル基との間で加水分解縮合反応が進行すると推定される。当該加水分解縮合反応は当該ラジカル重合反応よりも緩やかに進行するため、主として、当該ラジカル重合反応がある程度進行した後に、加水分解縮合反応が生じると推定される。そのため、当該オルガノアルコキシシランは、粘着剤層の表面近傍に存在する割合が高くなるものと推定される。さらに、当該加水分解縮合反応は、オルガノアルコキシシランの両末端に存在するアルコキシシリル基において生じるため、オルガノアルコキシシランが重合成分間を架橋した構造が形成される。当該構造は、重合成分同士がラジカル重合反応することで形成される構造とは別の態様で粘着剤を補強し、凝集力を有効に向上させると推定されるため、得られる粘着剤は、非常に高い凝集力を有する。以上の結果、本実施形態に係る無溶剤型粘着性組成物Pから得られる粘着剤層は、凝集力に優れるとともに被着体への密着性に優れる。
【0026】
以上のことから、本実施形態に係る無溶剤型粘着性組成物Pを用いて得られる粘着剤は、優れた耐ブリスター性を発揮することができる。例えば、本実施形態に係る無溶剤型粘着性組成物Pを使用して得たディスプレイが高温高湿条件下(例えば、85℃、85%RH)に置かれ、プラスチック板等からなる表示体構成部材からアウトガスが発生した場合でも、粘着剤層と表示体構成部材との界面において気泡、浮き、剥がれ等のブリスターが発生することが抑制される。
【0027】
なお、本実施形態に係る無溶剤型粘着性組成物Pを硬化させる際における、上述した反応や形成される構造は、推定されるものであり、その他の反応が生じたり、その他の構造が形成されてもよい。例えば、オルガノアルコキシシランは、両末端のアルコキシシリル基が活性水素基と必ず結合している必要はなく、片末端のアルコキシシリル基が反応せずに残存していてもよい。また、オルガノアルコキシシラン同士の加水分解縮合反応が生じ、オルガノアルコキシシラン繰り返し構造が形成された上で、その両末端または片末端のアルコキシシリル基と、重合成分の活性水素基とが結合していてもよい。さらには、オルガノアルコキシシランは、粘着剤層の表面近傍のみでなく、内部に存在していてもよい。
【0028】
(1)重合成分
本実施形態に係る無溶剤型粘着性組成物Pは、重合性ビニルモノマー、重合性ビニルプレポリマー、多官能(メタ)アクリレートモノマーおよび多官能(メタ)アクリレートオリゴマーから選ばれる少なくとも1種の重合成分を含有する。
【0029】
本実施形態に係る無溶剤型粘着性組成物Pにおいて、重合成分の少なくとも一部は、活性水素基を有する。当該活性水素基は、ヒドロキシ基およびカルボキシ基の少なくとも1つであることが好ましく、前述したようなラジカル重合反応と加水分解縮合反応との速度差が明確となり、オルガノアルコキシシランを粘着剤層の表面近傍により存在させ易いという観点から、ヒドロキシ基であることが特に好ましい。一般的に、タッチパネル等が高温高湿の環境下に置かれると、粘着剤層中に水分が浸入し、タッチパネル等が常温に戻ったときに、粘着剤層が白化して透明性が低下する「湿熱白化」という問題が生じることがある。ここで、重合成分が上記活性水素基を含有することで、得られる粘着剤中に当該基が存在することとなる。当該基は、浸入した水分との相溶性がよいため、結果として、粘着剤層の白化が抑制され、粘着剤は耐湿熱白化性に優れたものとなる。
【0030】
重合成分は、上述した4種のうち、少なくとも重合性ビニルモノマーおよび多官能(メタ)アクリレートオリゴマーを含有することが好ましい。重合成分がこれらの化合物を含有することで、得られる粘着剤の凝集力が向上し、耐ブリスター性により優れた粘着剤を得ることができる。
【0031】
(1−1)重合性ビニルモノマー
重合性ビニルモノマーとしては、ビニル基含有基を有するものであれば、特に制限されるものではなく、従来公知のものを適宜使用することができる。なお、本実施形態における重合性ビニルモノマーとは、1つのビニル基含有基を有する重合性ビニルモノマーを意味し、後述する多官能(メタ)アクリレートモノマーとは重複しない。
【0032】
重合性ビニルモノマーの具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ミリスチル(メタ)アクリレート、パルミチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ポリオキシアルキレン変性(メタ)アクリレート等の分子内にビニル基含有基以外の官能基を有さない(メタ)アクリレートが挙げられる。これらの中でも、2−エチルヘキシルアクリレートまたはイソボルニルアクリレートを使用することが好ましい。
【0033】
また、重合性ビニルモノマーは、分子内に、ビニル基含有基以外の官能基をさらに有するものであってもよい。当該官能基の例としては、上述した活性水素基、すなわち、ヒドロキシ基、カルボキシ基、チオール基、および1または2級のアミノ基等が挙げられる。このような官能基を有する重合性ビニルモノマーの具体例としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド等のヒドロキシ基含有アクリルアミド類;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸等のエチレン性不飽和カルボン酸等が挙げられる。これらの中でも、2−ヒドロキシエチルアクリレートを使用することが好ましい。
【0034】
また、その他の重合性ビニルモノマーとして、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類;エチレン、プロピレン、イソブチレン等のオレフィン類;塩化ビニル、ビニリデンクロリド等のハロゲン化オレフィン類;スチレン、α−メチルスチレン等のスチレン系単量体;ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等のジエン系単量体;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル系単量体;アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−ビニルピロリドン等のアミド系単量体;(メタ)アクリル酸N−N−ジエチルアミノエチル、N−(メタ)アクリロイルモルフォリン等の3級アミノ基含有単量体等が挙げられる。
【0035】
(1−2)重合性ビニルプレポリマー
重合性ビニルプレポリマーとしては、特に限定されるものではなく、従来公知のものを適宜使用することができるが、上述した重合性ビニルモノマーを重合してなる重合性ビニルプレポリマーを使用することが好ましい。なお、本明細書において、プレポリマーとは、モノマーが重合してなる化合物であって、さらなる重合を行うことでポリマーを構成することが可能な化合物を意味する。
【0036】
なお、上述した重合性ビニルモノマーを重合することで重合性ビニルプレポリマーを得る場合、当該モノマー1種を単独で重合してもよいし、複数種を共重合してもよい。
【0037】
また、重合性ビニルプレポリマーは、フリーラジカル重合によって得られるものであってもよく、リビング重合によって得られるものであってもよく、特に、RAFT(Reversible Addition-Fragmentation Chain Transfer Polymerization)末端を残した重合体であってもよい。
【0038】
重合性ビニルプレポリマーの重量平均分子量は、6,000以上であることが好ましく、特に7,500以上であることが好ましく、さらには10,000以上であることが好ましい。また、当該重量平均分子量は、1,500,000以下であることが好ましく、特に1,000,000以下であることが好ましく、さらには100,000以下であることが好ましい。当該重量平均分子量が上記範囲内であることで、無溶剤性粘着性組成物Pの粘度を所望の範囲にすることが容易となる。なお、本明細書における重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定した標準ポリスチレン換算の値である。
【0039】
(1−3)多官能(メタ)アクリレートモノマー
多官能(メタ)アクリレートモノマーとしては、特に限定されるものではなく、従来公知のものを適宜使用することができる。
【0040】
特に、多官能(メタ)アクリレートモノマーとしては、一分子中に(メタ)アクリロイル基を2つ以上有するモノマーを好ましく挙げることができる。このようなモノマーの例としては、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールアジペートジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性リン酸ジ(メタ)アクリレート、ジ(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、アリル化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ビス(アクリロキシエチル)ヒドロキシエチルイソシアヌレート、イソシアヌル酸エチレンオキサイド変性ジアクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキサイド変性トリアクリレート、ε―カプロラクトン変性トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ジグリセリンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0041】
(1−4)多官能(メタ)アクリレートオリゴマー
多官能(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、特に限定されるものではなく、従来公知のものを適宜使用することができるが、一分子中に2つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレートオリゴマーを用いることが好ましい。このようなオリゴマーの例としては、ウレタンアクリレート系、ポリエステルアクリレート系、エポキシアクリレート系、ポリエーテルアクリレート系、ポリブタジエンアクリレート系、シリコーンアクリレート系等のオリゴマーが挙げられる。
【0042】
ウレタンアクリレート系オリゴマーは、例えば、ポリアルキレンポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ヒドロキシ基末端を有する水添イソプレン、ヒドロキシ基末端を有する水添ブタジエンといった化合物と、ポリイソシアネートとの反応によって得られるポリウレタンオリゴマーを、(メタ)アクリル酸または(メタ)アクリル酸誘導体でエステル化することにより得ることができる。
【0043】
ここで、ウレタンアクリレート系オリゴマーの製造に使用されるポリアルキレンポリオールの例としては、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリブチレングリコール、ポリへキシレングリコール等が挙げられ、特にポリプロピレングリコールを使用することが好ましい。なお、得られるウレタンアクリレート系オリゴマーの官能基数を3以上とする場合は、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリエタノールアミン、ペンタエリスリトール、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、ソルビトール、スクロース等を適宜組み合わせればよい。
【0044】
また、ポリイソシアネートの例としては、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート;トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート;ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の脂環式ジイソシアネート等が挙げられ、これらの中でも脂肪族ジイソシアネートを使用することが好ましく、特にヘキサメチレンジイソシアネートを使用することが好ましい。なお、ポリイソシアネートは2官能に限らず、3官能以上のものも用いることができる。
【0045】
また、(メタ)アクリル酸誘導体としては、2−ヒドロキシエチルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、2−イソシアネートエチルアクリレート、2−イソシアネートエチルメタクリレート、1,1−ビス(アクリロキシメチル)エチルイソシアネート等が挙げられ、特に2−イソシアネートエチルアクリレートを使用することが好ましい。
【0046】
ウレタンアクリレート系オリゴマーの別の製造方法として、ポリアルキレンポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ヒドロキシ基末端を有する水添イソプレン、ヒドロキシ基末端を有する水添ブタジエンといった化合物が有するヒドロキシ基と、イソシアネートアルキル(メタ)アクリレートが有する−N=C=O部分との間の反応により、ウレタンアクリレート系オリゴマーを得ることもできる。この場合、当該イソシアネートアルキル(メタ)アクリレートとしては、上述の2−イソシアネートエチルアクリレート、2−イソシアネートエチルメタクリレート、1,1−ビス(アクリロキシメチル)エチルイソシアネート等を使用することができる。
【0047】
ポリエステルアクリレート系オリゴマーは、例えば、多価カルボン酸と多価アルコールの縮合によって得られる両末端にヒドロキシ基を有するポリエステルオリゴマーのヒドロキシ基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより、あるいは、多価カルボン酸にアルキレンオキシドを付加して得られるオリゴマーの末端のヒドロキシ基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。
【0048】
エポキシアクリレート系オリゴマーは、例えば、比較的低分子量のビスフェノール型エポキシ樹脂やノボラック型エポキシ樹脂のオキシラン環に、(メタ)アクリル酸を反応しエステル化することにより得ることができる。また、エポキシアクリレート系オリゴマーを部分的に二塩基性カルボン酸無水物で変性したカルボキシル変性型のエポキシアクリレート系オリゴマーを用いることもできる。
【0049】
ポリエーテルアクリレート系オリゴマーは、例えば、ポリエーテルポリオールのヒドロキシ基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。
【0050】
多官能(メタ)アクリレートオリゴマーの重量平均分子量は、10,000以上であることが好ましく、特に20,000以上であることが好ましい。また、当該重量平均分子量は、350,000以下であることが好ましく、特に200,000以下であることが好ましい。
【0051】
(1−5)配合割合
重合成分として重合性ビニルモノマーおよび多官能(メタ)アクリレートオリゴマーの2種を使用する場合、重合性ビニルモノマーの質量を多官能(メタ)アクリレートオリゴマーの質量で除して得られる割合は、0.18以上であることが好ましく、特に1以上であることが好ましく、1.5以上であることが好ましい。また、当該割合は、999以下であることが好ましく、特に19以下であることが好ましく、さらには9以下であることが好ましい。
【0052】
(2)オルガノアルコキシシラン
本実施形態に係る無溶剤型粘着性組成物Pは、直鎖状構造を有し、その両末端にアルコキシシリル基を有するオルガノアルコキシシランを含有する。ここで、「直鎖状構造」の「直鎖」は、実質的に「直鎖」であることを意味する。すなわち、オルガノアルコキシシランによる重合成分間を架橋する作用効果が良好に発揮されれば、直鎖状構造は分岐鎖を有していてもよく、あるいは、環状構造を含んでいてもよい。また、両末端にアルコキシシリル基を有するとは、直鎖状構造の両端部それぞれにアルコキシシリル基を有することを意味する。
【0053】
上記オルガノアルコキシシランは、少なくとも一方の末端に、複数のアルコキシシリル基を含有することが好ましい。すなわち、オルガノアルコキシシランは、少なくとも一方の末端に、2つのアルコキシシリル基または3つのアルコキシシリル基を含有することが好ましく、特に3つのアルコキシシリル基を含有することが好ましい。オルガノアルコキシシランが、少なくとも一方の末端に、複数のアルコキシシリル基を含有することにより、重合成分が有する活性水素基との結合が容易になる結果、得られる粘着剤の凝集力がより高いものとなる。
【0054】
アルコキシシリル基の例としては、メトキシシリル基、エトキシシリル基、n−プロポキシシリル基、イソプロポキシシリル基、n−ブトキシシリル基、s−ブトキシシリル基、イソブトキシシリル基、t−ブトキシシリル基等が挙げられる。これらの中でも、優れた耐ブリスター性を得られる観点から、メトキシシリル基が好ましい。
【0055】
上記オルガノアルコキシシランは、アルコキシシリル基以外に、重合成分と反応し得る基を有さないことが好ましい。アルコキシシリル基以外の当該反応し得る基の例としては、(メタ)アクリロキシ基、ビニルオキシ基、アリルオキシ基等が挙げられる。上記オルガノアルコキシシランがこのような基を有さないことにより、オルガノアルコキシシランが重合成分中に均一に取り込まれてしまうことが抑制される。これにより、得られる粘着剤層の表面近傍にオルガノアルコキシシランが存在する割合がより高くなり、粘着剤層の被着体に対する密着性が、より向上する。さらに、アルコキシシリル基以外の基が存在しないことで、アルコキシシリル基と重合成分中の活性水素基との反応が妨げられることなく進行する。これにより、得られる粘着剤層中においてオルガノアルコキシシランが重合成分間を架橋した構造が良好に形成され、粘着剤層表面の凝集力がより向上する。以上の結果として、得られる粘着剤層は耐ブリスター性に優れたものとなる。
【0056】
本実施形態に係る無溶剤型粘着性組成物Pに含有されるオルガノアルコキシシランの例としては、ビス(アルコキシシリル)アルカン;1,4−ビス(アルコキシシリル)ベンゼン、1,4−ビス(アルコキシシリルアルキル)ベンゼン等の芳香族化合物;1,2−ビス(アルコキシシリル)エチレンオキシド、1,3−ビス(アルコキシシリル)プロピレンオキシド等のアルキレンオキサイド化合物;1,3−ビス(アルコキシシリル)シクロブタン、1,3−ビス(アルコキシシリルアルキル)シクロブタン、1,4−ビス(アルコキシシリル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アルコキシシリルアルキル)シクロヘキサン等の脂環式化合物等が挙げられる。これらの中でも、分子が嵩高くなく、粘着剤の活性水素基と結合を形成しやすいという観点から、ビス(アルコキシシリル)アルカンが特に好ましい。
【0057】
ビス(アルコキシシリル)アルカンのアルカンは、炭素数が、1以上のものであることが好ましく、特に3以上のものであることが好ましく、さらには5以上のものであることが好ましい。また、当該アルカンは、炭素数が、20以下のものであることが好ましく、特に10以下のものであることが好ましく、さらには7以下のものであることが好ましい。
【0058】
ビス(アルコキシシリル)アルカンの好ましい例としては、1,6−ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン、1,7−ビス(トリメトキシシリル)ヘプタン、1,8−ビス(トリメトキシシリル)オクタン等が挙げられる。これらの中でも、優れた耐ブリスター性を得られる観点から、1,6−ビス(トリメトキシシリル)ヘキサンまたは1,8−ビス(トリメトキシシリル)オクタンを使用することが好ましい。
【0059】
無溶剤型粘着性組成物P中における上記オルガノアルコキシシランの含有量は、重合成分100質量部に対し、0.01質量部以上であることが好ましく、特に0.05質量部以上であることが好ましく、さらには0.1質量部以上であることが好ましい。また、当該含有量は、重合成分100質量部に対し、20質量部以下であることが好ましく、特に10質量部以下であることが好ましく、さらには3質量部以下であることが好ましい。当該含有量が上記範囲であることで、上記オルガノアルコキシシランによる上述した効果を十分に得ることができる。
【0060】
(3)重合開始剤
本実施形態に係る無溶剤型粘着性組成物Pは、重合開始剤をさらに含有することが好ましい。重合開始剤を含有することにより、無溶剤型粘着性組成物Pを効率的に硬化させることが可能となる。
【0061】
重合開始剤としては、特に限定されず、従来公知のものを使用することができるが、無溶剤型粘着性組成物Pの硬化の態様に応じて選択することが好ましい。すなわち、無溶剤型粘着性組成物Pを、活性エネルギー線としての紫外線の照射により硬化させる場合には、重合開始剤として光重合開始剤を使用することが好ましい。また、無溶剤型粘着性組成物Pを、加熱により硬化させる場合には、熱重合開始剤を使用することが好ましい。光重合開始剤および熱重合開始剤を併用してもよい。
【0062】
光重合開始剤の例としては、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン−n−ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、アセトフェノン、ジメチルアミノアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−プロパン−1−オン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−2−(ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、ベンゾフェノン、p−フェニルベンゾフェノン、4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノン、ジクロロベンゾフェノン、2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−ターシャリ−ブチルアントラキノン、2−アミノアントラキノン、2−メチルチオキサントン、2−エチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタール、アセトフェノンジメチルケタール、p−ジメチルアミノ安息香酸エステル、オリゴ[2−ヒドロキシ−2−メチル−1[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノン]、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0063】
熱重合開始剤の例としては、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウリウム等の過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0064】
無溶剤型粘着性組成物P中の重合開始剤の含有量は、重合成分100質量部に対して、0.1質量部以上であることが好ましく、特に0.3質量部以上であることが好ましく、さらには0.5質量部以上であることが好ましい。また、当該含有量は、重合成分100質量部に対して、10質量部以下であることが好ましく、特に5質量部以下であることが好ましく、さらには3質量部以下であることが好ましい。当該含有量が0.1質量部以上であることで、無溶剤型粘着性組成物Pの硬化を効率的に進行させることができる。一方、当該含有量が10質量部以下であることで、硬化において未反応のまま残留する重合開始剤を無くす、または減らすことが可能となり、得られる粘着剤を所望の物性に設定し易くなる。
【0065】
(4)各種添加剤
無溶剤型粘着性組成物Pには、所望により、各種添加剤、例えばシランカップリング剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、粘着付与剤、酸化防止剤、光安定剤、軟化剤、充填剤、屈折率調整剤などを添加することができる。なお、後述の重合溶媒は、無溶剤型粘着性組成物Pを構成する添加剤に含まれないものとする。
【0066】
ここで、無溶剤型粘着性組成物Pがシランカップリング剤を含有すると、得られる粘着剤は、ガラス部材やプラスチック板との密着性が向上する。これにより、得られる粘着剤は、耐ブリスター性により優れたものとなる。
【0067】
シランカップリング剤としては、上述したオルガノアルコキシシランを除く、分子内にアルコキシシリル基を少なくとも1個有する有機ケイ素化合物であって、上述した重合成分およびオルガノアルコキシシランとの相溶性がよく、光透過性を有するものが好ましい。
【0068】
かかるシランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等の重合性不飽和基含有ケイ素化合物、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ構造を有するケイ素化合物、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルジメトキシメチルシラン等のメルカプト基含有ケイ素化合物、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン等のアミノ基含有ケイ素化合物、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、あるいはこれらの少なくとも1つと、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン等のアルキル基含有ケイ素化合物との縮合物などが挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0069】
無溶剤型粘着性組成物Pがシランカップリング剤を含有する場合、その含有量は、重合成分100質量部に対して、0.01質量部以上であることが好ましく、特に0.05質量部以上であることが好ましく、さらには0.1質量部以上であることが好ましい。また、当該含有量は、重合成分100質量部に対して、1質量部以下であることが好ましく、特に0.5質量部以下であることが好ましく、さらには0.3質量部以下であることが好ましい。
【0070】
(5)無溶剤型粘着性組成物の製造
無溶剤型粘着性組成物Pは、重合成分と、オルガノアルコキシシランとを混合するとともに、所望により添加剤を加えることで製造することができる。
【0071】
なお、本実施形態に係る無溶剤型粘着性組成物Pは、無溶剤型であるため、主に重合成分により適度な粘度を有している。そのため、本実施形態に係る無溶剤型粘着性組成物Pは、希釈剤等を添加することなく、そのまま塗布溶液として使用することができる。
【0072】
〔粘着剤〕
本実施形態に係る粘着剤は、無溶剤型粘着性組成物Pを硬化してなるものである。無溶剤型粘着性組成物Pの硬化は、当該組成物Pが含有する材料に応じて、活性エネルギー線の照射により行うことができ、または、加熱処理により行うことができる。このように、本明細書における「硬化」とは、特に言及がない限り、活性エネルギー線の照射による硬化、および加熱処理による硬化の両方を含む。
【0073】
無溶剤型粘着性組成物Pの硬化は、活性エネルギー線の照射により行うことが好ましい。これにより、硬化の際に熱を加える必要が無くなり、無溶剤型粘着性組成物Pの塗布対象としての樹脂フィルム等の熱劣化、熱収縮等を防ぐことができる。また、加熱しないことにより、無溶剤型粘着性組成物P中の揮発成分の加熱による消失を抑制することができる。
【0074】
活性エネルギー線とは、電磁波または荷電粒子線の中でエネルギー量子を有するものをいい、具体的には、紫外線や電子線などが挙げられる。活性エネルギー線の中でも、取扱いが容易な紫外線が特に好ましい。
【0075】
紫外線の照射は、高圧水銀ランプ、フュージョンHランプ、キセノンランプ等によって行うことができ、紫外線の照射量は、照度が50mW/cm
2以上、1000mW/cm
2以下であることが好ましい。光量は、50mJ/cm
2以上であることが好ましく、80mJ/cm
2以上であることがより好ましく、200mJ/cm
2以上であることが特に好ましい。また、光量は、10000mJ/cm
2以下であることが好ましく、5000mJ/cm
2以下であることがより好ましく、2000mJ/cm
2以下であることが特に好ましい。一方、電子線の照射は、電子線加速器等によって行うことができ、電子線の照射量は、10krad以上、1000krad以下が好ましい。
【0076】
加熱処理の加熱温度は、50℃以上であることが好ましく、特に70℃以上であることが好ましい。また、当該加熱温度は、150℃以下であることが好ましく、特に120℃以下であることが好ましい。加熱処理の加熱時間は、10秒以上であることが好ましく、特に50秒以上であることが好ましい。また、当該加熱時間は、10分以下であることが好ましく、特に90秒以下であることが好ましい。この加熱処理は、無溶剤型粘着性組成物Pの塗布後の乾燥処理で兼ねることもできる。
【0077】
なお、本実施形態に係る粘着剤を製造するにあたり、加熱処理を行った後、活性エネルギー線照射を行ってもよいし、両処理を同時に行ってもよい。また、加熱処理後または活性エネルギー線照射後、常温(例えば、23℃、50%RH)で1〜2週間程度の養生期間を設けることも好ましい。
【0078】
本実施形態に係る粘着剤のゲル分率は、50%以上であることが好ましく、特に55%以上であることが好ましく、さらには60%以上であることが好ましい。また、当該ゲル分率は、100%以下であることが好ましく、特に80%以下であることが好ましく、さらには70%以下であることが好ましい。粘着剤のゲル分率が上記範囲であることで、粘着剤の凝集力が高くなり、耐ブリスター性がより優れたものとなる。ここで、粘着剤のゲル分率の測定方法は、後述する試験例に示す通りである。
【0079】
本実施形態に係る粘着剤は、上述した無溶剤型粘着性組成物Pを硬化することで得られるものである。そのため、当該硬化の際に、重合成分同士の重合反応とともに、オルガノアルコキシシランと活性水素基との縮合反応が表面近傍を中心に進行するため、当該粘着剤には強固な架橋構造が形成される。結果として、本実施形態に係る粘着剤は、非常に高い凝集力を有する。すなわち、本実施形態に係る粘着剤は、被着体と接する表面の凝集力を局所的に高めながら、全体としては柔軟性に富んだものとなる。これより、本実施形態に係る粘着剤は、十分な段差追従性を有しながら、優れた耐ブリスター性を発揮することができる。
【0080】
〔粘着シート〕
本実施形態に係る粘着シートは、一の表示体構成部材と他の表示体構成部材とを貼合するための粘着剤層を有し、当該粘着剤層が、前述した粘着剤からなるものである。
【0081】
本実施形態に係る粘着シートの一例としての具体的構成を
図1に示す。
図1に示すように、一実施形態に係る粘着シート1は、2枚の剥離シート12a,12bと、それら2枚の剥離シート12a,12bの剥離面と接するように当該2枚の剥離シート12a,12bに挟持された粘着剤層11とから構成される。なお、本明細書における剥離シートの剥離面とは、剥離シートにおいて剥離性を有する面をいい、剥離処理を施した面および剥離処理を施さなくても剥離性を示す面のいずれをも含むものである。
【0082】
(1)粘着剤層
粘着剤層11は、前述した粘着剤から構成され、すなわち、無溶剤型粘着性組成物Pを硬化してなる粘着剤から構成される。
【0083】
本実施形態に係る粘着シート1における粘着剤層11の厚さ(JIS K7130:1999に準じて測定した値)は、10μm以上であることが好ましく、25μm以上であることがより好ましく、特に50μm以上であることが好ましく、さらには75μm以上であることが好ましい。また、当該厚さは、1000μm以下であることが好ましく、400μm以下であることがより好ましく、特に300μm以下であることが好ましい。なお、粘着剤層11は単層で形成してもよいし、複数層を積層して形成することもできる。
【0084】
粘着剤層11の厚さが10μm以上であると、所望の粘着力を発揮し易くなる。また、粘着剤層11の厚さが1000μm以下であると、加工性が良好なものとなる。
【0085】
(2)剥離シート
剥離シート12a,12bは、粘着シート1の使用時まで粘着剤層11を保護するものであり、粘着シート1(粘着剤層11)を使用するときに剥離される。本実施形態に係る粘着シート1において、剥離シート12a,12bの一方または両方は必ずしも必要なものではない。
【0086】
剥離シート12a,12bとしては、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブテンフィルム、ポリブタジエンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリウレタンフィルム、エチレン酢酸ビニルフィルム、アイオノマー樹脂フィルム、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体フィルム、エチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリイミドフィルム、フッ素樹脂フィルム等が用いられる。また、これらの架橋フィルムも用いられる。さらに、これらの積層フィルムであってもよい。
【0087】
上記剥離シート12a,12bの剥離面(特に粘着剤層11と接する面)には、剥離処理が施されていることが好ましい。剥離処理に使用される剥離剤としては、例えば、アルキッド系、シリコーン系、フッ素系、不飽和ポリエステル系、ポリオレフィン系、ワックス系の剥離剤が挙げられる。なお、剥離シート12a,12bのうち、一方の剥離シートを剥離力の大きい重剥離型剥離シートとし、他方の剥離シートを剥離力の小さい軽剥離型剥離シートとすることが好ましい。
【0088】
剥離シート12a,12bの厚さについては特に制限はないが、通常20μm以上、150μm以下である。
【0089】
(3)物性
(3−1)粘着力
本実施形態に係る粘着シート1のソーダライムガラスに対する粘着力は、5N/25mm以上であることが好ましく、特に10N/25mm以上であることが好ましく、さらには15N/25mm以上であることが好ましい。また、当該粘着力は、50N/25mm以下であることが好ましく、特に40N/25mm以下であることが好ましく、さらには35N/25mm以下であることが好ましい。粘着シート1の粘着力が5N/25mm以上であると、耐ブリスター性がより優れたものとなる。また、粘着シート1の粘着力が50N/25mm以下であると、良好なリワーク性が得られ、貼合ミスが生じた場合、高価な表示体構成部材の再利用が可能となる。ここで、本明細書における粘着力は、基本的にはJIS Z0237:2009に準じた180度引き剥がし法により測定した粘着力をいい、具体的な測定方法は、後述する試験例に示す通りである。
【0090】
(3−2)ヘイズ値
本実施形態に係る粘着シート1の粘着剤層11のヘイズ値は、5%以下であることが好ましく、特に、1%以下であることが好ましく、さらには0.5%以下であることが好ましい。粘着剤層11のヘイズ値が5%以下であると、透明性が高く、光学用途(表示体用)として好適である。なお、本明細書におけるヘイズ値は、JIS K7136:2000に準じて測定した値とする。
【0091】
(3−3)全光線透過率
本実施形態に係る粘着シート1の粘着剤層11の全光線透過率は、90%以上であることが好ましく、特に95%以上であることが好ましく、さらには98%以上であることが好ましい。全光線透過率が98%以上であると、透明性が非常に高く、光学用途として好適なものとなる。なお、本明細書における全光線透過率は、JIS K7361−1:1997に準じて測定した値とする。
【0092】
(4)粘着シートの製造
粘着シート1の一製造例としては、一方の剥離シート12a(または12b)の剥離面に、上記無溶剤型粘着性組成物Pを塗布することで塗布層を形成し、当該塗布層に他方の剥離シート12b(または12a)の剥離面を重ね合わせた後、塗布層に対して活性エネルギー線照射および/または加熱処理を行って粘着剤層11を形成する。
【0093】
粘着シート1の他の製造例としては、一方の剥離シート12a(または12b)の剥離面に、上記無溶剤型粘着性組成物Pを塗布し、活性エネルギー線照射および/または加熱処理を行って無溶剤型粘着性組成物Pを硬化させ、粘着剤層11を形成した後、その粘着剤層11に他方の剥離シート12b(または12a)の剥離面を重ね合わせる。
【0094】
上記無溶剤型粘着性組成物Pの塗布液を塗布する方法としては、例えばバーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法等を利用することができる。
【0095】
以上の通り製造される本実施形態に係る粘着シート1では、粘着剤層11が、上述した無溶剤型粘着性組成物Pを硬化してなる粘着剤からなるため、上述した通り非常に高い凝集力を有する。さらに、当該無溶剤型粘着性組成物Pの塗膜を形成する際、極性を有するオルガノアルコキシシランが当該塗膜の表面近傍に多く偏在し、上記縮合反応は表面近傍においてより進行すると推定される。この結果、本実施形態に係る粘着シート1では、粘着剤層11の表面に近いほど高い凝集力を有すると推定される。これらにより、本実施形態に係る粘着シート1によれば、優れた耐ブリスター性が発揮される。
【0096】
〔表示体〕
図2に示すように、本実施形態に係る表示体2は、少なくとも貼合される側の面に段差を有する第1の表示体構成部材21(一の表示体構成部材)と、第2の表示体構成部材22(他の表示体構成部材)と、それらの間に位置し、第1の表示体構成部材21および第2の表示体構成部材22を互いに貼合する粘着剤層11とを備えて構成される。本実施形態に係る表示体2では、第1の表示体構成部材21は、粘着剤層11側の面に段差を有しており、具体的には、印刷層3による段差を有している。
【0097】
上記表示体2における粘着剤層11は、前述した粘着シート1の粘着剤層11である。
【0098】
表示体2としては、例えば、液晶(LCD)ディスプレイ、発光ダイオード(LED)ディスプレイ、有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)ディスプレイ、電子ペーパー等が挙げられ、タッチパネルであってもよい。また、表示体2としては、それらの一部を構成する部材であってもよい。
【0099】
第1の表示体構成部材21は、ガラス板、プラスチック板等の他、それらを含む積層体などからなる保護パネルであることが好ましい。この場合、印刷層3は、第1の表示体構成部材21における粘着剤層11側に、額縁状に形成されることが一般的である。
【0100】
上記ガラス板としては、特に限定されることなく、例えば、化学強化ガラス、無アルカリガラス、石英ガラス、ソーダライムガラス、バリウム・ストロンチウム含有ガラス、アルミノケイ酸ガラス、鉛ガラス、ホウケイ酸ガラス、バリウムホウケイ酸ガラス等が挙げられる。ガラス板の厚さは、特に限定されないが、通常は0.1mm以上であり、好ましくは0.2mm以上である。また、当該厚さは、通常は5mm以下であり、好ましくは2mm以下である。
【0101】
上記プラスチック板としては、特に限定されることなく、例えば、アクリル板、ポリカーボネート板等が挙げられる。プラスチック板の厚さは、特に限定されないが、通常は0.2mm以上であり、好ましくは0.4mm以上である。また、当該厚さは、通常は5mm以下であり、好ましくは3mm以下である。
【0102】
なお、上記ガラス板やプラスチック板の片面または両面には、各種の機能層(透明導電膜、金属層、シリカ層、ハードコート層、防眩層等)が設けられていてもよいし、光学部材が積層されていてもよい。また、透明導電膜および金属層は、パターニングされていてもよい。
【0103】
第2の表示体構成部材22は、第1の表示体構成部材21に貼付されるべき光学部材、表示体モジュール(例えば、液晶(LCD)モジュール、発光ダイオード(LED)モジュール、有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)モジュール等)、表示体モジュールの一部としての光学部材、または表示体モジュールを含む積層体であることが好ましい。
【0104】
上記光学部材としては、例えば、飛散防止フィルム、偏光板(偏光フィルム)、偏光子、位相差板(位相差フィルム)、視野角補償フィルム、輝度向上フィルム、コントラスト向上フィルム、液晶ポリマーフィルム、拡散フィルム、半透過反射フィルム、透明導電性フィルム等が挙げられる。飛散防止フィルムとしては、基材フィルムの片面にハードコート層が形成されてなるハードコートフィルム等が例示される。
【0105】
印刷層3を構成する材料は特に限定されることなく、印刷用の公知の材料が使用される。印刷層3の厚さ、すなわち段差の高さは、3μm以上であることが好ましく、特に5μm以上であることが好ましく、さらには7μm以上であることが好ましく、10μm以上であることが最も好ましい。また、当該高さは、50μm以下であることが好ましく、特に35μm以下であることが好ましい。
【0106】
上記表示体2を製造するには、一例として、粘着シート1の一方の剥離シート12aを剥離して、粘着シート1の露出した粘着剤層11を、第1の表示体構成部材21の印刷層3が存在する側の面に貼合する。その後、粘着シート1の粘着剤層11から他方の剥離シート12bを剥離して、粘着シート1の露出した粘着剤層11と第2の表示体構成部材22とを貼合する。また、他の例として、第1の表示体構成部材21および第2の表示体構成部材22の貼合順序を入れ替えてもよい。
【0107】
以上の表示体2においては、粘着剤層11が、上述した無溶剤型粘着性組成物Pを硬化してなる粘着剤からなるため、上述した通り、非常に高い凝集力を有しており、特に、この凝集力は、粘着剤層11の表面に近いほど高くなっていると推定される。このため、表示体2が高温高湿条件下におかれ、第1の表示体構成部材21または第2の表示体構成部材22からアウトガスが発生したとしても、気泡、浮き、剥がれ等のブリスターの発生が抑制される。
【0108】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【0109】
例えば、粘着シート1における剥離シート12a,12bのいずれか一方または両方は省略されてもよく、また、剥離シート12aおよび/または12bの替わりに所望の光学部材が積層されてもよい。また、第1の表示体構成部材21は、印刷層3以外の段差を有するものであってもよい。さらには、第1の表示体構成部材21のみならず、第2の表示体構成部材22も粘着剤層11側に段差を有するものであってもよい。
【実施例】
【0110】
以下、実施例等により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例等に限定されるものではない。
【0111】
〔製造例1〕
1.ウレタンアクリレート系オリゴマーの調製
重量平均分子量3000のポリプロピレングリコール100質量部(固形分換算値;以下同じ)と、ヘキサメチレンジイソシアネート4質量部と、ジオクチル錫ジラウレート0.02質量部とを混合し、80℃で6時間撹拌することにより反応物を得た。得られた反応物について、赤外分光法によりIRスペクトルを測定したところ、イソシアネート基がほぼ消失していることが確認された。
【0112】
その後、得られた反応物の全量に対して、2−イソシアネートエチルアクリレート1質量部を混合し、80℃で3時間撹拌することで、ウレタンアクリレート系オリゴマーを得た。得られたウレタンアクリレート系オリゴマーについて、赤外分光法によりIRスペクトルを測定したところ、イソシアネート基がほぼ消失していることが確認された。また、得られたウレタンアクリレート系オリゴマーの分子量を後述する方法で測定したところ、重量平均分子量(Mw)25,000であった。
【0113】
2.液状混合物の調製
重合性ビニルモノマーとしての2−エチルヘキシルアクリレート40質量部と、重合性ビニルモノマーとしてのイソボルニルアクリレート20質量部と、重合性ビニルモノマーとしての2−ヒドロキシエチルアクリレート10質量部と、多官能(メタ)アクリレートオリゴマーとしての、上記の通り調製したウレタンアクリレート系オリゴマー30質量部とを混合し、撹拌することで液状混合物を得た。
【0114】
ここで、前述した重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて以下の条件で測定(GPC測定)したポリスチレン換算の重量平均分子量である。
<測定条件>
・GPC測定装置:東ソー社製,HLC−8020
・GPCカラム(以下の順に通過):東ソー社製
TSK guard column HXL−H
TSK gel GMHXL(×2)
TSK gel G2000HXL
・測定溶媒:テトラヒドロフラン
・測定温度:40℃
【0115】
〔製造例2〕
重合性ビニルモノマーとしての2−エチルヘキシルアクリレート40質量部と、重合性ビニルモノマーとしてのアクリロイルモルフォリン20質量部と、重合性ビニルモノマーとしての2−ヒドロキシエチルアクリレート10質量部と、上記製造例1において調製したウレタンアクリレート系オリゴマー30質量部とを混合し、撹拌することで液状混合物を得た。
【0116】
〔実施例1〕
1.無溶剤型粘着性組成物の調製
上記製造例1にて調製した液状混合物100質量部(固形分換算値;以下同じ)と、オルガノアルコキシシランとしての1,6−ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン0.3質量部と、光重合開始剤としての1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン0.5質量部とを混合することにより、無溶剤型粘着性組成物を得た。
【0117】
2.粘着シートの製造
上記工程1で得られた無溶剤型粘着性組成物を、ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面をシリコーン系剥離剤で剥離処理した重剥離型剥離シート(リンテック社製,製品名「SP−PET752150」)の剥離処理面に、ナイフコーターで塗布した。
【0118】
次いで、上記で得られた重剥離型剥離シート上の塗布層と、ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面をシリコーン系剥離剤で剥離処理した軽剥離型剥離シート(リンテック社製,製品名「SP−PET382120」)とを、当該軽剥離型剥離シートの剥離処理面が塗布層に接触するように貼合した。
【0119】
その後、重剥離型剥離シートを介して、塗布層に対し下記の条件で紫外線を照射して、重剥離型剥離シート/粘着剤層(厚さ:100μm)/軽剥離型剥離シートの構成からなる粘着シートを作製した。
[紫外線照射条件]
・光源:高圧水銀灯
・光量:1000mJ/cm
2
・照度:100mW/cm
2
【0120】
〔実施例2〜4,比較例1〜6〕
液状混合物の種類、ならびにオルガノアルコキシシランの種類および配合量を表1に示すように変更する以外、実施例1と同様にして粘着シートを製造した。なお、比較例3において、オルガノアルコキシシランとして使用したトリス−(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレートは、いわゆるイソシアヌレート環を主骨格とし、その主骨格に対して3つのトリメトキシシリルプロピル基が等間隔に結合したものである。そのため、当該オルガノアルコキシシランは、上述した直鎖状構造を有するオルガノアルコキシシランとはいえず、本実施形態に係るオルガノアルコキシシランには該当しない。
【0121】
〔試験例1〕(ゲル分率の測定)
実施例および比較例で得られた粘着シートを80mm×80mmのサイズに裁断して、その粘着剤層をポリエステル製メッシュ(メッシュサイズ200)に包み、その質量を精密天秤にて秤量し、上記メッシュ単独の質量を差し引くことにより、粘着剤のみの質量を算出した。このときの質量をM1とする。
【0122】
次に、上記ポリエステル製メッシュに包まれた粘着剤を、室温下(23℃)で酢酸エチルに3日間浸漬させた。その後粘着剤を取り出し、100℃のオーブン中にて3時間乾燥させた。乾燥後、温度23℃、相対湿度50%の環境下に3時間静置した後、その質量を精密天秤にて秤量し、上記メッシュ単独の質量を差し引くことにより、粘着剤のみの質量を算出した。このときの質量をM2とする。ゲル分率(%)は、(M2/M1)×100で表される。結果を表1に示す。
【0123】
〔試験例2〕(光学特性の評価)
実施例および比較例で得られた粘着シートから軽剥離型剥離シートを剥がし、露出した粘着剤層を、厚さ1.1mmのソーダライムガラス(日本板硝子社製)に貼付した後、重剥離型剥離シートを剥がすことで、評価用サンプルを得た。
【0124】
当該評価サンプルの粘着剤層側から、ヘイズメーター(日本電色工業社製,製品名「NDH−2000」)の測定光を入射して、全光線透過率(%)およびヘイズ値(%)を測定した。測定は、それぞれ3回行い、それらの平均値を算出した。その結果を表1に示す。
【0125】
〔試験例3〕(粘着力の測定)
実施例および比較例で得られた粘着シートから軽剥離型剥離シートを剥離し、露出した粘着剤層を、易接着層を有するポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東洋紡社製,製品名「PET A4300」,厚さ:100μm)の易接着層に貼合し、剥離シート/粘着剤層/PETフィルムの積層体を得た。得られた積層体を25mm幅、150mm長に裁断し、これをサンプルとした。
【0126】
23℃、50%RHの環境下にて、上記サンプルから重剥離型剥離シートを剥離し、露出した粘着剤層をソーダライムガラス(日本板硝子社製)に貼付したのち、2kgのローラーを1往復させることにより圧着した。その後、23℃、50%RHの条件下で24時間放置してから、引張試験機(オリエンテック社製,テンシロン)を用い、剥離速度300mm/min、剥離角度180度の条件で粘着力(N/25mm)を測定した。ここに記載した以外の条件はJIS Z0237:2009に準拠して、測定を行った。結果を表1に示す。
【0127】
〔試験例4〕(耐ブリスター性の評価)
実施例および比較例で得られた粘着シートの軽剥離型剥離シートを剥離し、露出した粘着剤層を、片面にスズドープ酸化インジウム(ITO)からなる透明導電膜が設けられたポリエチレンテレフタレートフィルム(尾池工業社製,製品名「ITOフィルム」,厚さ:125μm)の透明導電膜が設けられた面に貼付し、60mm×60mmに裁断した。さらに、粘着シートから重剥離型剥離シートを剥離して、露出した粘着剤層を、ポリメチルメタクリレート(PMMA)とポリカーボネート(PC)とが積層された樹脂板(三菱ガス化学社製,製品名「MR−58」,厚さ:785μm)のポリカーボネート側の面に貼付することで、試験片を得た。
【0128】
得られた試験片を、50℃、0.5MPaの条件下で30分間オートクレーブ処理した後、常圧、23℃、50%RHにて24時間放置した。次いで、85℃、85%RHの高温高湿条件下にて72時間保管した。その後、粘着剤層と被着体との界面における浮き剥がれを目視で確認し、以下の基準により耐ブリスター性を評価した。結果を表1に示す。
○:気泡も浮き剥がれも確認できない。
△:小さい気泡がわずかに確認されるが、浮き剥がれは確認されない。
×:大きな気泡または浮き剥がれが確認できる。
【0129】
〔試験例5〕(耐湿熱白化性の評価)
実施例または比較例で得られた粘着シートの粘着剤層を、片面にスズドープ酸化インジウム(ITO)からなる透明導電膜が設けられたポリエチレンテレフタレートフィルム(尾池工業社製,製品名「ITOフィルム」,厚さ:125μm)2枚で挟み、積層体を得た。このとき、当該フィルムの透明導電膜が設けられた面を粘着剤層に貼付した。得られた積層体を、50℃、0.5MPaの条件下で30分間オートクレーブ処理した後、常圧、23℃、50%RHにて24時間放置した。その後、ヘイズメーター(日本電色工業社製,製品名「NDH2000」)を用いて、JIS K7136:2000に準じてヘイズ値(%)を測定した。
【0130】
次に、上記積層体を、85℃、85%RHの湿熱条件下にて120時間保管した(耐久試験)。その後、23℃、50%RHの常温常湿に戻し、当該積層体について、再度ヘイズ値(%)を測定した。なお、当該ヘイズ値は、積層体を常温常湿に戻してから30分以内に測定した。
【0131】
上記耐久試験前のヘイズ値(%)からの上記耐久試験後のヘイズ値(%)の上昇値から、以下の基準に基づいて耐湿熱白化性を評価した。結果を表1に示す。
◎:耐久試験後のヘイズ値(%)の上昇値が、0.90%以下である。
○:耐久試験後のヘイズ値(%)の上昇値が、0.90%を超え且つ1.50%以下である。
×:耐久試験後のヘイズ値(%)の上昇値が、1.50%を超える。
【0132】
〔試験例6〕(段差追従性の評価)
ガラス板(NSGプレシジョン社製,製品名「コーニングガラス イーグルXG」,縦90mm×横50mm×厚み0.5mm)の表面に、紫外線硬化型インク(帝国インキ社製,製品名「POS−911墨」)を塗布厚が30μmとなるように額縁状(外形:縦90mm×横50mm,幅5mm)にスクリーン印刷した。次いで、紫外線を照射(80W/cm
2,メタルハライドランプ2灯,ランプ高さ15cm,ベルトスピード10〜15m/分)して、印刷した上記紫外線硬化型インクを硬化させ、印刷による段差を有する段差付ガラス板を作製した。
【0133】
実施例および比較例で得られた粘着シートから軽剥離型剥離シートを剥がし、露出した粘着剤層を、易接着層を有するポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡社製,製品名「PET A4300」,厚さ:100μm)の易接着層に貼合した。次いで、重剥離型剥離シートを剥がし、粘着剤層を表出させた。そして、ラミネーター(フジプラ社製,製品名「LPD3214」)を用いて、粘着剤層の表出した面と上記段差付ガラス板の段差を有する面とを、粘着剤層が額縁状の印刷全面を覆うように貼合し、これを評価用サンプルとした。
【0134】
得られた評価用サンプルを、50℃、0.5MPaの条件下で30分間オートクレーブ処理した後、常圧、23℃、50%RHにて24時間放置した。次いで、85℃、85%RHの高温高湿条件下にて72時間保管し(耐久試験)、その後、粘着剤層(特に印刷層による段差の近傍)を目視により確認し、以下の基準により段差追従性を評価した。結果を表1に示す。
◎:段差近傍に浮き剥がれがなく、粘着剤が隙間なく追従している。
○:段差近傍にわずかに浮き剥がれが見られる。
×:段差近傍に大きな気泡が混入している。
【0135】
【表1】
【0136】
表1から分かるように、実施例で得られた粘着シートは、耐ブリスター性に優れるとともに、耐湿熱白化性および段差追従性にも優れていた。