(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態に係る回転電機の実施形態の原理を説明するためのモデル図であって、回転電機の軸に垂直な断面図である。
【
図2】回転電機の固定支持部材にかかる電磁力の分布の例を示す図である。
【
図3】回転電機の円環振動モードモデルによる解析結果の例を示す図であって、2個のばね支持の開き角を90度または180度とした場合の、サインモードとコサインモードを区別して示す共振曲線を示すグラフである。
【
図4】回転電機の円環振動モードモデルによる解析結果の例を示す図であって、2個のばね支持の開き角を90度の近傍で種々に変えた場合の共振曲線を示すグラフである。
【
図5】回転電機の円環振動モードモデルによる解析結果の例を示す図であって、2個のばね支持の開き角を45度または135度とした場合の、サインモードとコサインモードを区別して示す共振曲線を示すグラフである。
【
図6】回転電機の円環振動モードモデルによる解析結果の例を示す図であって、2個のばね支持の開き角を135度の近傍で種々に変えた場合の共振曲線を示すグラフである。
【
図7】回転電機の円環振動モードモデルによる解析結果の例を示す図であって、2個のばね支持の開き角を種々に変えた場合の共振曲線を示すグラフである。
【
図8】回転電機の円環振動モードモデルによる解析結果の例を示す図であって、2個のばね支持の開き角およびばね定数を種々に変えた場合の最大振幅を示すグラフである。
【
図9】回転電機の円環振動モードモデルによる解析結果の例を示す図であって、2個のばね支持の開き角およびばね定数を種々に変えた場合の共振点での振幅を示すグラフである。
【
図10】本発明の実施形態に係る回転電機の軸に垂直な模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、図面を参照して、本発明に係る回転電機の実施形態について説明する。
【0013】
初めに、本発明に係る回転電機の実施形態の制振に係る原理について説明する。
【0014】
図1は、回転電機の制振方法の実施形態の原理を説明するためのモデル図であって、回転電機の軸に垂直な断面図である。また、
図2は、回転電機の固定支持部材にかかる電磁力の分布の例を示す図である。
【0015】
ハンマリング試験において、電磁振動が問題となる数千Hz以下の振動数範囲には軸方向に節があるモードが得られないことが知られている。そのため、簡単のために、回転電機の固定子およびその外側の固定子枠を含めた固定支持部材10を、変位の軸方向の分布を考えない
図1に示すような一様な円環で近似することとする。なお、ここで、「固定支持部材」の名称は、回転せずに回転子を支持するという意味で「固定」とされているのであって、この固定支持部材の振動を考えるときは、固定されておらずに振動するものである。
【0016】
固定支持部材10は円筒形で、厚さが周方向に一様であるとする。固定支持部材10内側に、固定支持部材10の軸と共通の軸の周りに回転する回転子50(
図10参照)が配置されている。固定支持部材10の外側に、円周方向の角度θ=α
n(n=1,・・・,L)の位置にL個のばね支持11を設置する。
【0017】
ここでは固定支持部材10は円環振動をすることを想定しているので、ばね支持11は、ばね定数knのばねを介して固定位置に対して固定支持部材10を半径方向に弾性支持するものとする。
【0018】
固定支持部材10の半径方向の変位uは、M個の振動モードを考慮するとき、次式(1)で表される。
【0020】
ここに、
θ:円周方向の座標(rad)(反時計回りが正)
i:円周方向の振動モードを表す整数
a:θ=0に腹をもつコサイン型のモードiの変位
b:θ=π/(2i)に腹をもつサイン型のモードiの変位
回転電機に作用する外力として一般的なものは、半径方向に作用する力が円周方向に分布するとともに円周方向に回転する電磁力であるので、それを次式(2)で表す。
【0022】
ここに
s:電磁力のモードを表す整数
Ω
s:モードsをもつ電磁力の角振動数
F
s:モードsの電磁力の振幅
実際の電磁力は多くの振動数成分を含むが、簡単のためF
scos(−Ωst+sθ)の成分のみが作用する場合を考える。また、ばね定数knはそれほど大きくないとして、i次モードのみ採用し、i=sの場合を扱うとき、運動方程式は以下の式(3)、式(4)のようになる。
【0025】
ここに
r:円環の半径
E:固定支持部材の縦弾性係数
A:断面積(長方形断面の場合は円環の厚さHと軸(幅)方向長さWとの積)
I:円環の面に垂直な主軸に関する断面二次モーメント(長方形断面の場合は、I=WH
3/12)
ρ:固定支持部材の密度
L:ばね支持の個数
kn:θ=θnに設置したばね支持のばね定数
ここではi=2のモードを例に取ることとする。例えば、式(3)、式(4)の定常解を次の式(5)、式(6)のようにおく。
a
2=A
1cosΩ
2t+B
1sinΩ
2t (5)
b
2=A
2cosΩ
2t+B
2sinΩ
2t (6)
【0026】
なお、iが0の場合は、円環の形状がそのままの形状で大きくなったり小さくなったりする振動となる。また、iが1の場合は、円環の形状および大きさがそのままで、一つの周方向の位置とその反対側に交互に変位する振動となる。
【0027】
iが2の場合は、
図2に示すように、周方向に90度ごとに、振幅が最大となる腹と、腹と腹との中間位置にあって振幅が最小となる節とが形成される。iが3以上の場合も、周方向に等間隔に交互に腹と節が形成される。実際の回転電機における振動現象では、通常、i=sが2の場合が最も重要である。よって、以下、i=s=2の場合について検討を進める。
【0028】
[数値解析結果]
ここでは、固定支持部材の周方向2か所にばね支持を配置した場合の固定支持部材の円環振動の状況を数値解析した結果について説明する。なお、
図3〜
図9では、縦軸は次式(7)で示すように、式(1)で表される半径方向の変位uの2乗を空間と時間で平均したものを(F
2π/k
02)
2で除して無次元化したもので定義している。
【0030】
ただし、k
02=9EIπ/r
3、T=2π/Ω
2とする。
【0031】
また、共振曲線の横軸も、ν=Ω
2/ω
02として電磁力の角振動数を2次モードの固有角振動数で無次元化している。ただし、ω
022=36EI/(5ρAr
4)とする。
【0032】
よって、
図3〜
図7の横軸のν=1が主系の2次モードの無次元固有角振動数、つまり、共振点となる。
図3〜
図7では、ばね支持のk
02で無次元化したばね定数は、κ
1=κ
2=0.064とした。
【0033】
図3は、回転電機の円環振動モードモデルによる解析結果の例を示す図であって、2個のばね支持の開き角Δαを90度または180度とした場合の共振曲線を示すグラフである。縦軸は無次元振幅の2乗値A
2、横軸は回転電機の回転数に比例する電磁力の振動数の無次元値νである。i=s=2の振動モードを想定しているので、2個のばね支持の開き角Δαを90度とした場合と180度とした場合の解析結果は一致する。
【0034】
ばね支持がないときは、コサインモードとサインモードの固有振動数が同じであるため、太い実線(曲線)C1に示すように、1つのピークをもつ共振曲線となる。ばね支持があるときは、ばね支持部が腹となるコサインモード(点線C2で示す)のみ固有振動数が高くなり、結果としてコサインモード(点線の曲線C2)とサインモード(1点鎖線の曲線C3で示す)の固有振動数がずれることにより、コサインモードとサインモードの共振曲線の合計(細い実線の曲線C4で示す)には2つのピークが生じる。また、ピーク値は曲線C1に比べて低くなり、振幅の比較的大きな領域が広くなる。
【0035】
図4は、回転電機の円環振動モードモデルによる解析結果の例を示す図であって、2個のばね支持の開き角Δαを90度の近傍で種々に変えた場合の共振曲線を示すグラフである。縦軸と横軸は
図3と同様である。ただし、
図4では横軸ν=1の近傍のみを拡大して示している。また、
図4では、開き角Δαを70〜110度の間で種々に変えた場合の解析結果を示している。
図4の曲線C1は
図3の曲線C1と同じ曲線であり、
図4の曲線C4は
図3の曲線C4と同じ曲線である。
【0036】
この解析結果から、開き角Δαが70〜110度の間であれば、共振曲線のピーク値が、ばね支持がない場合(曲線C1)に比べて著しく低下することがわかる。なお、開き角Δαが80度の場合(曲線C11)、90度の場合(曲線C4)、100度の場合(曲線C12)ではピーク値がほとんど同じである。また、開き角Δαが70度の場合(曲線C13)と110度の場合(曲線C14)のピーク値は、開き角Δαが80度、90度、100度の場合(曲線C11、C4、C12)に比べてわずかに高くなっている。
【0037】
図5は、回転電機の円環振動モードモデルによる解析結果の例を示す図であって、2個のばね支持の開き角を45度または135度とした場合の、サインモードとコサインモードを区別して示す共振曲線を示すグラフである。縦軸と横軸は
図3と同様である。i=s=2の振動モードを想定しているので、2個のばね支持の開き角Δαを135度とした場合と45度とした場合の解析結果は一致する。
【0038】
図5で、ばね支持がないときを表す太い実線C1は
図3および
図4と同じである。
図5では、ばね支持により、コサインモードの曲線C22とサインモードの曲線C23が同じ値だけ固有振動数が高くなって、互いに重なっている。このため、コサインモードとサインモードの合計を表す曲線C24は、ばね支持がない場合の曲線C1と比べて、共振曲線が、振動数の大きい方へずれる。その結果、振動数の無次元値νが1(共振点)の場合の無次元振幅の2乗値A
2は、ばね支持がない場合(曲線C1)に比べて、ばね支持がある場合(曲線C24)は著しく低下する。ただし、曲線C24のピーク値は曲線C1のピーク値に比べてわずかに低下するものの、あまり変化しない。
【0039】
すなわち、回転電機が一定回転数で回転する場合は、2個のばね支持の開き角Δαを約45度または約135度とすることにより、共振点での振幅を大幅に低下させることができることがわかる。ただし、2個のばね支持の開き角を45度または135度とする場合は、ばね支持がない場合に比べて、共振点がずれるだけでそのピーク値に大きな変化がないので、回転電機がインバータなどによって可変速運転を行う場合は、大きな制振効果を得ることはできない。
【0040】
図6は、回転電機の円環振動モードモデルによる解析結果の例を示す図であって、2個のばね支持の開き角Δαを135度の近傍で種々に変えた場合の共振曲線を示すグラフである。
【0041】
図6の曲線C1は
図3〜
図5の曲線C1と同じ曲線であり、
図6の曲線C24は
図5の曲線C24と同じ曲線である。
【0042】
図6で、開き角Δαが115度の場合の共振曲線C31と155度の場合の共振曲線C32は、互いにほぼ重なっている。また、開き角Δαが125度の場合の共振曲線C34と145度の場合の共振曲線C35は、互いにほぼ重なっている。
【0043】
図6で、開き角Δαが125度、145度の場合(曲線C34、C35)は、135度の場合(曲線C24)と同様に一つのピークを持つが、そのピーク値は135度の場合(曲線C24)よりも低くなる。開き角Δαが115度、155度の場合(曲線C31、C32)は、ピークが二つになり、それらのピーク値は開き角Δαが125度、145度の場合(曲線C34、C35)よりもさらに低くなる。しかし、振動数の無次元値νが1(共振点)の場合の無次元振幅の2乗値A
2は、開き角Δαが135度から離れるにしたがって高くなる。ただし、ここではi=2のモードを想定しているので、開き角Δαは、90度小さくしても解析結果は全く同じになる。
【0044】
以上説明したことから、
図6により、回転電機が一定回転数で回転する場合は、2個のばね支持の開き角Δαを、125〜145度または35〜55度とすることにより、共振点での振幅を大幅に低下させることができることがわかる。
【0045】
図7は、回転電機の円環振動モードモデルによる解析結果の例を示す図であって、2個のばね支持の開き角Δαを種々に変えた場合の共振曲線を示すグラフである。ここで、ばね支持がない場合(曲線C1)も併せて示している。開き角Δαが90度の場合(曲線C4)、135度の場合(曲線C24)のほか、開き角Δαが112.5度の場合(曲線C41)を重ねて示している。
【0046】
図7から、一定速度で回転する回転電機の2次モードの共振点ν=1での振幅を低下させるには、開き角Δαを約135度とすることが好ましいことがわかる。また、可変速運転を行う回転電機の2次モードの振動を抑制するためには、共振曲線のピーク値を低くするために、開き角Δαを約90度とすることが好ましいことがわかる。
【0047】
図8は、回転電機の円環振動モードモデルによる解析結果の例を示す図であって、2個のばね支持の開き角Δαおよびばね定数を種々に変えた場合の共振曲線上の最大振幅を示すグラフである。ばね支持の無次元化したばね定数(κ
1=κ
2)を、
図3〜
図7の場合と同じ0.064とした場合(曲線C51)のほか、0.048(曲線C52)、0.032(曲線C53)に変えた場合の計算を行った。
【0048】
図8から、最大振幅は、開き角Δαが45度または135度のときに最大となり、90度または180度のときに最小となることがわかる。すなわち、可変速運転を行う回転電機では、開き角Δαを約90度または約180度とするのが好ましい。この場合に、開き角Δαは、70〜110度または160〜200度であればよい。また、ばね定数を小さくすればばね支持がない場合に近づいて最大振幅は大きくなることがわかる。また、最大振幅は、開き角Δαが45度または135度のときに最大となり、90度または180度のときに最小となること、そしてそれらの角度から離れるにしたがって最大値または最小値から離れる傾向は、ばね定数によらないということがわかる。
【0049】
図9は、回転電機の円環振動モードモデルによる解析結果の例を示す図であって、2個のばね支持の開き角およびばね定数を種々に変えた場合のばね支持がない時に共振点であったν=1での振幅を示すグラフである。
図8と同様に、ばね支持の無次元化したばね定数(κ
1=κ
2)を、0.064とした場合(曲線C61)のほか、0.048(曲線C62)、0.032(曲線C63)に変えた場合の計算を行った。
【0050】
図9から、ばね支持がない時に共振点であったν=1での振幅は、開き角Δαが45度または135度のときに最小となることがわかる。すなわち、一定回転速度の運転を行う回転電機では、開き角Δαを約45度または約135度とするのが好ましい。この場合に、開き角Δαは、35〜55度または125〜145度であればよい。また、ばね定数を小さくすればばね支持がない場合に近づいて最大振幅は大きくなることがわかる。また、共振点での振幅は、開き角Δαが45度または135度のときに最小となること、そしてそれらの角度から離れるにしたがって最小値から離れる傾向は、ばね定数によらないということがわかる。
【0051】
[第1の実施形態]
図10は、本発明の実施形態に係る回転電機の軸に垂直な模式的断面図である。
【0052】
円筒状の固定支持部材(固定子および固定子枠)10の半径方向内側に円筒状の回転子50が配置されている。固定支持部材10は環状のギャップ51を介して回転子50を取り囲んでいる。回転子50は図示しない軸受を介して固定支持部材10により、回転可能に支持されている。固定支持部材10は2個のばね支持である支持脚11により弾性的に支持されている。2個の支持脚11は周方向に開き角Δαだけ離間している。
【0053】
この第1の実施形態の回転電機は、一定の定格回転数で回転するものである。2個の支持脚11の開き角Δαは、約135度または約45度である。開き角Δαは、125〜145度または35〜55度であればよい。
【0054】
前述のように、一定の定格回転数で回転する回転電機で、2個の支持脚11の開き角Δαを125〜145度または35〜55度とすることにより、共振を避け、振動を抑制することができる。
【0055】
[第2の実施形態]
図10に示す回転電機の構成は第2の実施形態でも同様である。第2の実施形態の回転電機は、インバータ駆動などにより可変回転数で回転するものである。2個の支持脚11の開き角Δαは、約90度または約180度である。開き角Δαは、70〜110度または160〜200度であればよい。
【0056】
前述のように、可変速度で回転する回転電機で、2個の支持脚11の開き角Δαを70〜110度または160〜200度とすることにより、共振時の振幅を低下させ、振動を抑制することができる。
【0057】
[他の実施形態]
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。