特許第6660854号(P6660854)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6660854
(24)【登録日】2020年2月13日
(45)【発行日】2020年3月11日
(54)【発明の名称】オイルセパレータ外装エンジン
(51)【国際特許分類】
   F01M 13/00 20060101AFI20200227BHJP
   F01M 13/04 20060101ALI20200227BHJP
【FI】
   F01M13/00 L
   F01M13/04 C
   F01M13/00 H
   F01M13/00 E
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-171700(P2016-171700)
(22)【出願日】2016年9月2日
(65)【公開番号】特開2018-35787(P2018-35787A)
(43)【公開日】2018年3月8日
【審査請求日】2018年12月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】100087653
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴江 正二
(72)【発明者】
【氏名】秋田 光広
(72)【発明者】
【氏名】澤田 康平
【審査官】 家喜 健太
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−036432(JP,A)
【文献】 特開2012−251497(JP,A)
【文献】 特開2010−174734(JP,A)
【文献】 実開昭60−173612(JP,U)
【文献】 特開2013−108497(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0186686(US,A1)
【文献】 特開2007−247552(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01M 13/04
B01D 46/00 − 46/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブローバイガスからオイルを捕捉して除去するオイルセパレータが、エンジン本体に外付け装備されているオイルセパレータ外装エンジンであって、
発熱可能な発熱構造体が、前記オイルセパレータの底面に下方から面当接する状態で前記オイルセパレータに装着され
前記発熱構造体は、前記オイルセパレータの下向きのオイル出口を避ける逃がし凹部を備えた二股形状に設定されているオイルセパレータ外装エンジン。
【請求項2】
前記発熱構造体は、内部にエンジン冷却水の通り道を備えた発熱ケースを有して構成されている請求項1に記載のオイルセパレータ外装エンジン。
【請求項3】
前記オイルセパレータにおける捕捉されたオイルの出口であるオイル出口が、前記オイルセパレータの下端部に設けられている請求項1又は2に記載のオイルセパレータ外装エンジン。
【請求項4】
前記オイルセパレータと前記発熱構造体とは、それぞれの側面に亘って取り付けられる連結部材を用いて一体化されるとともに、前記連結部材は前記エンジン本体に支持されている請求項1〜3の何れか一項に記載のオイルセパレータ外装エンジン。
【請求項5】
前記連結部材が金属材により形成されている請求項4に記載のオイルセパレータ外装エンジン。
【請求項6】
前記オイルセパレータ及び前記発熱構造体は、前記エンジン本体における吸気マニホルド存在側に配置されている請求項1〜5の何れか一項に記載のオイルセパレータ外装エンジン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、産業用、走行車両用などのオイルセパレータ外装エンジンに係り、詳しくは、ブローバイガスからオイルを捕捉して除去するオイルセパレータが、エンジン本体に外付け装備されているオイルセパレータ外装エンジンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ブローバイガスは、内燃機関における燃焼室内の混合気や燃焼ガスが、ピストンとシリンダとの間隙(詳しくは、ピストンリングとシリンダとの間隙)からクランクケース内に漏れ出したものを指す。すなわち、未燃焼ガスや排ガス、及びこれらがエンジンオイル(以下、単にオイルと略称する)と混ざったオイルミストと呼ばれるものも含まれている。このブローバイガスが、クランクケース内に入ると、エンジンオイルの劣化や金属の腐食、さらには大気汚染の原因になる。
【0003】
従って、クランクケース内に溜まるブローバイガスを吸気経路に還流させて、新しい混合気と混ぜて燃焼させ、そのままの状態で大気放出しないようする機構、即ち、ブローバイガス還流装置を設けることが一般に行われている。しかし、ブローバイガスは、オイルミストだけでなく、排ガス中に含まれる水分などが混ざったものであるため、そのまま吸気経路に還元させると都合が悪い場合がある。
【0004】
そこで、ブローバイガス還流装置においては、ブローバイガス中に含まれるオイル(オイルミスト)や水などの液体成分を極力除いてから吸気経路に戻すために、ブローバイガス中の主にオイル成分を捕捉して除去するオイルセパレータが設けられている。オイルセパレータが単独部品として外装されたエンジンとしては、特許文献1,2において開示されたものが知られている。オイルセパレータは、特許文献1ではベンチレータ(2)として、特許文献2ではベンチレータ装置(1)として、それぞれ開示されている。
【0005】
ブローバイガスを吸気経路に戻す配管などを備えたブローバイガス還流装置は、基本的にエンジンに外装されて外部露出されているので、寒さには弱い傾向がある。即ち、冬の北国における−20〜−30℃といった極低温状況では、ブローバイガスが冷やされてブローバイガス中の水分が凍結してしまうとか、それによって詰まりが生じることがある。
【0006】
特に、エンジン外装のオイルセパレータは表面積が大きく冷えやすい傾向にあり、内部でブローバイガス中の水分が凍結することがある。水分が凍結すると、ブローバイ還流機能に支障をきたすだけでなく、捕捉したオイルの戻し口などが詰まり、オイルセパレータ内部にオイルが異常に溜まってオイル分離機能が阻害され、また、クランクケース内圧が上昇して不測のオイル漏れを招くおそれもある。
【0007】
その対策としては、特許文献2の図1にて開示されるように、オイルセパレータの底壁の外側を覆う断熱材(28)を有する凍結防止カバー(26)を設け、オイルセパレータの内部が過冷却され難いように工夫された技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2014−211088号公報
【特許文献2】特開2007−247552号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前述した凍結防止カバーを設けた特許文献2が開示する技術では、ある程度の効果は見られるが、作業機における作業翌日朝のエンジン始動時など、低温にさらされる時間が長いとか、極低温時といった条件が厳しい場合には、凍結防止効果が芳しくないことが容易に推測されるため、さらなる改善の余地が残されていた。
【0010】
本発明の目的は、オイルセパレータの冷え過ぎを抑制又は防止させることにより、ブローバイガスの凍結による前述の不都合が抑制又は解消されるように、より改善されたオイルセパレータ外装エンジンを提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に係る発明は、ブローバイガスからオイルを捕捉して除去するオイルセパレータ9が、エンジン本体1Hに外付け装備されているオイルセパレータ外装エンジンにおいて、
発熱可能な発熱構造体19が、前記オイルセパレータ9の底面16Aに下方から面当接する状態で前記オイルセパレータ9に装着され
前記発熱構造体19は、前記オイルセパレータ9の下向きのオイル出口9cを避ける逃がし凹部25を備えた二股形状に設定されていることを特徴とする。
【0012】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載のオイルセパレータ外装エンジンにおいて、
前記発熱構造体19は、内部にエンジン冷却水の通り道21を備えた発熱ケース20を有して構成されていることを特徴とする。
【0013】
請求項3に係る発明は、請求項1又は2に記載のブローバイガス昇温装置付エンジンにおいて、
前記オイルセパレータ9における捕捉されたオイルの出口である前記オイル出口9cが、前記オイルセパレータ9の下端部に設けられていることを特徴とする。
【0014】
請求項4に係る発明は、請求項1〜3の何れか一項に記載のオイルセパレータ外装エンジンにおいて、
前記オイルセパレータ9と前記発熱構造体19とは、それぞれの側面に亘って取り付けられる連結部材32を用いて一体化されるとともに、前記連結部材32は前記エンジン本体1Hに支持されていることを特徴とする。
【0015】
請求項5に係る発明は、請求項4に記載のオイルセパレータ外装エンジンにおいて、
前記連結部材32が金属材により形成されていることを特徴とする。
【0016】
請求項6に係る発明は、請求項1〜5の何れか一項に記載のオイルセパレータ外装エンジンにおいて、
前記オイルセパレータ9及び前記発熱構造体19は、前記エンジン本体1Hにおける吸気マニホルド8存在側に配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、オイルセパレータの底面に下方から面当接する発熱構造体が設けられているので、上方に伝わる熱を広い面積によってより有効にオイルセパレータに伝導させて温めることができる。つまり、発熱構造体の熱を面当接により素早く、かつ、効率よくオイルセパレータに熱伝導し得る。
その結果、オイルセパレータの冷え過ぎを抑制又は防止させて、ブローバイガスの凍結による前述の不都合が抑制又は解消されるように、より改善されたオイルセパレータ外装エンジンを提供することができる。
【0018】
また、エンジン冷却水を通して発熱する発熱ケースを用いれば、既存の設備を用いたコスト安で必要スペースも取らない合理的な発熱構造体となる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】ヒータを示し、(a)は一部切書きの左側面図、(b)は底面図
図2】発熱ケースを示し、(a)は平面図、(b)は左側面図
図3】発熱ケースを示し、(a)は右側面図、(b)は図2(a)のZ−Z線断面図
図4】発熱ケースにおける図2(b)のY−Y線断面図
図5】昇温装置付オイルセパレータASSYの左側面図
図6】昇温装置付オイルセパレータASSYの背面図
図7】昇温装置付オイルセパレータASSYの右側面図
図8】直列多気筒ディーゼルエンジンの正面図
図9図8に示すエンジンの左側面図
図10図8に示すエンジンの平面図
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明によるオイルセパレータ外装エンジンの実施の形態を、農用トラクタ用エンジンなど、産業用の直列多気筒ディーゼルエンジンの場合について、図面を参照しながら説明する。以下において、クランク軸1Kの方向でフライホイールハウジング7が装備されている側を後、その反対側を前、吸気マニホルド8側を左、排気マニホルド10側を右とそれぞれ定義する。
【0021】
図8図10に示されるように、このエンジンEは、シリンダブロック1の上部にシリンダヘッド2が組付けられ、シリンダヘッド2の上部にヘッドカバー(シリンダヘッドカバー)3が組付けられ、シリンダブロック1の下部にオイルパン4が組付けられている。シリンダブロック1の前端部に伝動ケース5が組付けられ、伝動ケース5の前部にエンジン冷却ファン(図示省略)を備える冷却ファン軸6が配置され、シリンダブロック1の後部にフライホイールを収容するフライホイールハウジング7が配置されている。
【0022】
シリンダブロック1の上半部はシリンダ部1Aに、そして、下半部はクランクケース1Bにそれぞれ構成されている。1Kはクランク軸である。シリンダヘッド2の左側に吸気マニホルド8やオイルセパレータ9が配置され、シリンダヘッド2の右側に排気マニホルド10や過給器11などが配置されている。このエンジンEは、クランクケース1B内にて生成されたブローバイガスを吸気経路Qに戻すブローバイガス還流装置12が装備されている。なお、シリンダブロック1、シリンダヘッド2、ヘッドカバー3を総称してエンジン本体1Hと呼ぶものとする。
【0023】
このエンジンEには、図5に示されるように、クランクケース1B内に生じたブローバイガスからオイル成分を除去してから吸気経路Qに戻すブローバイガス還流装置12が装備されている。吸気経路Qは、吸気マニホルド8(又はその主管)や過給器11などが挙げられる。ブローバイガス還流装置12は、ブローバイガスからオイルを捕捉して除去するオイルセパレータ9、オイルセパレータ9を加熱(加温)可能なブローバイガス昇温装置Aを有している。つまり、オイルセパレータ9により、大部分のオイル(液体成分)が取り除かれたブローバイガスが、戻し側の下流配管14を通って吸気経路Qに戻される。
【0024】
オイルセパレータ9は、図5図7に示されるように、ヘッドカバー3に上流配管13を介して連通されているブローバイガス入口部9aと、吸気経路Qに下流配管14を介して連通されているブローバイガス出口9bと、ブローバイガス中から捕捉されて回収されたオイル(エンジンオイル)を流下排出するためのオイル出口(オイルの出口)9cとを備えたセパレータケースを有している。セパレータケース内には、ブローバイガスからオイルなどの液体成分を捕捉して除去可能な濾材(図示省略)などが収容されている。オイル出口9cには配管などによるオイル戻し路15が連通接続されており、オイルセパレータで回収されたオイルは、重力によりクランクケース1B内部に還元されるように構成されている。
【0025】
セパレータケースは上下方向視で円形をなし、ケース底部16には、図3(b)に示されるように、上下方向視で中心に配置されて下方突出したパイプ状のオイル出口9cが形成されている。ケース底部16は、オイル出口9cを中央に有して下方に突出した中心突出部17、及びその周囲の傾斜底周壁18を有して構成されている。傾斜底周壁18は、中央部から外周部に近付くに従って下面の高さ位置が高くなる傾斜が付けられてる。つまり、ケース底部16は、オイル出口9cを中心とした段付すり鉢状の底周壁に形成されており、前後左右の中央に配置されたオイル出口9cに向けて低くなる内底面(図示省略)を有している。
【0026】
つまり、セパレータケース内にて回収されたオイル(詳しくは、オイルや水でなる液体成分である)は、セパレータケース内部にて下方移動し、ケース底部16の内側面である内底面(図示省略)上を流れてオイル出口9cに向かうようになる。
従って、オイルセパレータ9においては、極低温状況になると、オイルのほかに水分も集まる場所であるケース底部16から冷えて凍結し易い傾向がある。
【0027】
次に、ブローバイガス昇温装置Aについて説明する。図1図5図7に示されるように、ブローバイガス昇温装置Aは、オイルセパレータ9の底面16Aに密着状態で当接するヒータ(発熱構造体の一例)19を有して構成されている。ヒータ19は、内部にエンジン冷却水の通り道21を備えた発熱ケース20と、発熱ケース20に取り付けられている冷却水の入口パイプ23Aと、出口パイプ24Aとを有して構成されている。発熱ケース20は、オイルセパレータ9の底面16Aに下方から面当接する天井壁22を備えている。
【0028】
発熱ケース20は、図1図4に示されるように、オイルセパレータ9の底面16Aの形状に沿う上側面22Aを備えた天井壁22、水平な底壁26、及びケース内部空間である冷却水の通り道21を有する金属(例:アルミ合金)製の箱体に構成されている。そして、発熱ケース20は、オイルセパレータ9の下向きのオイル出口9cを避ける横向きの逃がし凹部25を備えた上下方向視で二股形状(C字形、コ字形)に設定されている。そして、発熱ケース20の右前端部(上下方向視における周方向の一端部)に冷却水の入口部23が、かつ、発熱ケース20の左後端部(上下方向視における周方向の他端部)に出口部24がそれぞれ設けられている。
【0029】
入口部23は、通り道21の底面に開口するL字形状の入口パイプ23Aと、入口パイプ23Aを底壁26に取付けるための入口支持部23Bとを備えて構成されている。入口パイプ23Aの先端部は左方向に取り出されており、入口パイプ23Aやこれに接続される配管とオイル出口9cとの干渉が生じないように設定されている。例えば、入口パイプ23Aには、シリンダヘッド2などを通過した冷却水の戻り経路が連通接続される。
通り道21での冷却水は、図4に示されるように、入口部23から円周経路及び逆湾曲経路とによるS字経路を描いて出口部24に向かって流れるようになる。
【0030】
出口部24は、下方に伸びる直線状の出口パイプ24Aと、出口パイプ24Aを底壁26に支持固定するための出口支持部24Bを備えて構成されている。出口パイプ24Aに上下方向視で対応する天井壁22は、その部分の通り道21が上方に突出する上方凸部27に形成され、出口パイプ24Aの上端24aは、上方凸部27以外の天井壁22よりも高い位置に設けられている。例えば、出口パイプ24Aには、ラジエータの戻り口に向かう冷却水の配管が連通接続される。
【0031】
発熱ケース20の天井壁22は、図1図3に示されるように、オイル出口9cが配置される逃がし凹部25の根元部位であって角度αで急傾斜(例:45度)した中央上壁部28と、中央上壁部28の外周側に続く角度βで緩傾斜(例:7〜8度)した主上壁部29と、主上壁部29の外周側に続く水平な外上壁部30とを有して構成されている。
中央上壁部28の上面28aと主上壁部29の上面29aとにより、オイルセパレータ9の底面16Aと密着して面当接可能な上側面22Aが構成されている。
【0032】
通り道21の天井面となる天井壁22の内側面22Bは、中央上壁部28の下面28bと、主上壁部29の下面29bと、外上壁部30の下面30bとにより形成されている。つまり、発熱ケース20の上下方向視での中央部から外周部に近付くに従って、天井壁22の内側面22Bの高さが高くなる状態に構成されている。内側面22Bの高さは、冷却水の出口部24、つまりは上方凸部27において最も高くなる設定とされている。
【0033】
図1に示されるように、出口パイプ24Aの上端24aは、天井壁22の内側面22Bにおける出口部24の部位である上方凸部27の下面27aの高さ位置の次に高い高さ位置に設定されている。天井壁22の内側面22Bにおける高さの高い順に並べると、上方凸部27の下面27a>出口パイプ24Aの上端24a>外上壁部30の下面30b>主上壁部29の下面29b>中央上壁部28の下面28b、となっている。
【0034】
ブローバイガス昇温装置Aの作用効果は次のとおりである。発熱ケース20の天井壁22とオイルセパレータ9とは、中央上壁部28の上面28a及び主上壁部29の上面29aと中心突出部17及び傾斜底周壁18との広い面積で面当接しており、ヒータ19による熱を発熱ケース20からオイルセパレータ9へ効率良く伝導させることができる。
水の集まり場所となるケース底部16に熱伝導されて、凍結箇所を素早く融かして昇温させることができるとともに、熱は上方に伝わるのでオイルセパレータ9全体を効率よく温めることができる。
【0035】
ヒータ19は、エンジン始動によって温められる冷却水を発熱ケース20内を通すことで発熱させる構成、即ち、既存のエンジン設備の有効利用したものである。故に、専用の発熱源が不要であり、コスト安で必要スペースも取らない合理的な手段により、ブローバイガスを昇温可能なブローバイガス昇温装置Aを提供することができる。
【0036】
通り道21は、C字形状に形成され、かつ、その両端部に入口部23と出口部24とが配置されているから、熱源である冷却水は入口部23から出口部24へ円滑に流れ、効率よく発熱ケース20に熱伝導させることができる。熱伝導に悪影響を及ぼす空気が発熱ケース20内に入ったとしても、冷却水の流れに乗って出口部24に運ばれ、排出される。加えて、天井壁22の内側面22Bは外周ほど高くなっているので、通り道21において空気は流れながら外周側に移動し、そして最も高い位置にあり、かつ、オイルセパレータ9の底面(ケース底部16)より径方向で外側となる上端24aを持つ出口パイプ24Aから容易に、かつ、もれなく排出できる、という利点がある。勿論、上方凸部27も、オイルセパレータ9より径方向で外側に位置されている。
【0037】
発熱ケース20には、オイル出口9cの周りに不連続となる逃がし凹部25が設けられているので、通り道21が一系統の道筋となって冷却水の円滑な流れを実現できる。そして、オイル出口9cに配管接続されている状態であっても、逃がし凹部25方向の横移動により、ヒータ19のオイルセパレータ9への装着状態と取外し状態の切換が可能となる利点もある。また、逃がし凹部25により、エンジン本体1Hの凸部や他の部品類の配置を跨ぎ、干渉なくヒータ19をエンジン本体1Hに支持させることが可能である。
【0038】
次に、オイルセパレータ9とブローバイガス昇温装置Aとの一体化構造並びにエンジン本体1Hへの装着構造につて説明する。
図5図7に示されるように、オイルセパレータ9とヒータ19とは、それぞれの右側面どうしに亘って螺着されている第1連結部材31と、それおぞれの左側面どうしに亘って螺着されている第2連結部材32とを用いて一体化されている。
【0039】
図5に示されるように、第1連結部材31は矩形の鋼板製で、2本のボルト33によりオイルセパレータ9の右側面に、かつ、2本のボルト33により発熱ケース20の左側面20Lに、それぞれ螺着されている。発熱ケース20におけるボルト33用のナット部20nは、通り道21に張り出し形成されている。
第1連結部材31取付用の上側2本のボルト33により、鋼板でなる支持金具34が共締め固定されている。支持金具34の後方上方張出し片34aに、上流配管13が締結バンド36により支持されている。支持金具34は、他のエンジン補機類の支持部品として機能可能に構成されている。
【0040】
図5図7に示されるように、第1連結部材31より厚みの厚い鋼板製の第2連結部材32は、オイルセパレータ9の左側面の2箇所にボルト33止めされ、かつ、発熱ケース20の入口側張出し部20A(図4参照)の右側面に形成された1箇所のナット部20nにボルト33止めされている。発熱ケース20の出口側張出し部20B(図4参照)の右側はフリーである。
【0041】
第2連結部材32の屈曲上端部32Aの1箇所、及び折り曲げ下端部32Bの2箇所に取付用孔32aが形成されておりそれら3箇所の取付用孔32aに通されるボルト35(図7,9参照)より、エンジン本体1Hの左側面に取付固定されている。また、第2連結部材32の下端部に装備された3箇所のナット部32bにより、他のエンジン補機類を兼用取付け可能に構成されている。
【0042】
発熱ケース20とオイルセパレータ9とが熱伝導に優れる金属材製の第1及び第2連結部材31,32を用いて一体化されているので、昇温装置Aの熱を第1連結部材31や第2連結部材32を介してオイルセパレータ9に伝えることができ、より熱伝導効率に優れる利点がある。
【0043】
また、オイルセパレータ9及び昇温装置AはエンジンEの吸気マニホルド8が配置されているサイドに装備されているので、排気マニホルド10側に設けた場合に過熱されることを抑制又は防止する機構や部材を設ける必要がなく、安定した温度環境としてオイルセパレータ9の凍結防止効果を得ることができる利点がある。
【0044】
第2連結部材32は、オイルセパレータ9とヒータ19との一体化機能と、エンジン本体1Hへの取付機能との双方の機能を発揮する合理化部品とされている。従って、エンジン本体1Hの熱を、第2連結部材32を介してオイルセパレータ9に伝えることが可能であり、
〔別実施形態〕
【0045】
連結部材31,32は、より熱伝導率に優れるアルミ合金製でも良い。オイルセパレータ9と昇温装置Aとを、エンジン本体1Hの排気マニホルド10側に設置する構成も可能である。また、オイルクーラー(オイル用ラジエータ)が装備されているエンジンでは、発熱ケース20の通り道21にオイルを通す構成を採ることも可能である。
【符号の説明】
【0046】
1H エンジン本体
8 吸気マニホルド
9 オイルセパレータ
9c オイルの出口
16A オイルセパレータの底面
19 発熱構造体
20 発熱ケース
21 エンジン冷却水の通り道
32 連結部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10