(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記リガンドが、抗体、抗原、核酸、ヌクレオチド、ヌクレオシド、タンパク質、ペプチド、アミノ酸、多糖、糖、脂質、ビタミン、薬物、基質、ホルモン又は神経伝達物質である、請求項15に記載のリガンド結合固相担体。
【発明を実施するための形態】
【0014】
〔固相担体〕
本発明の固相担体は、以下の構造単位(A)〜(C)を含む共重合体(以下、共重合体(I)とも称する)が少なくとも固相の表面を形成することを特徴とするものである。ここで、本明細書において、「固相の表面を形成する」とは、固相(基材)そのものが共重合体(I)を含むこと、或いは共重合体(I)で固相(基材)が物理的に被覆されることなどによって、共重合体(I)が固相の表面を形成することいい、共重合体(I)が固相表面から形成されるグラフト鎖であることを除く概念である。
(A)双性イオン構造を有するモノマーに由来する構造単位:全構造単位に対して1〜35質量%
(B)リガンドと化学結合可能な官能基を有するモノマーに由来する構造単位:全構造単位に対して70質量%以下
(C)リガンドと化学結合可能な官能基を有さない水難溶性モノマーに由来する構造単位
【0015】
<構造単位(A)>
共重合体(I)は、双性イオン構造を有するモノマーに由来する構造単位を、全構造単位に対して1〜35質量%含む。斯かる構造単位に含まれる双性イオン構造により、固相担体表面の親水性を高めることができ、非特異吸着が抑制される。なお、構造単位(A)は、ナトリウムイオン、カリウムイオン等のアルカリ金属イオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン等のアルカリ土類金属イオン、アンモニウムイオン、水素イオン、水酸化物イオン等の対イオンを有していてもよい。以下いずれの態様においても同様である。
【0016】
双性イオン構造を有するモノマーに由来する構造単位としては、例えば、双性イオン構造を有する(メタ)アクリレート系モノマーに由来する構造単位、双性イオン構造を有する(メタ)アクリルアミド系モノマーに由来する構造単位、双性イオン構造を有するスチレン系モノマーに由来する構造単位が挙げられ、これらのうち1種を含んでいてもよく、2種以上を含んでいてもよい。
これらの中でも、非特異吸着抑制の観点から、双性イオン構造を有する(メタ)アクリレート系モノマーに由来する構造単位、双性イオン構造を有する(メタ)アクリルアミド系モノマーに由来する構造単位が好ましく、双性イオン構造を有する(メタ)アクリレート系モノマーに由来する構造単位がより好ましい。
【0017】
双性イオン構造としては、非特異吸着抑制の観点から、第4級アンモニウム塩型カチオン性官能基と、−(C=O)O
-、−SO
3-及び−O−(O=P−O
-)−O−から選ばれる1価又は2価のアニオン性官能基とを有するものが好ましく、下記式(1)又は(2)で表されるものが特に好ましい。
【0019】
〔式(1)中、
R
1及びR
2は、それぞれ独立して、単結合又は炭素数1〜10の2価の有機基を示し、
R
3は、−(C=O)O
-又は−SO
3-を示し、
R
4及びR
5は、それぞれ独立して、メチル基又はエチル基を示す。〕
【0021】
〔式(2)中、
R
6及びR
7は、それぞれ独立して、単結合又は炭素数1〜10の2価の有機基を示し、
R
8、R
9及びR
10は、それぞれ独立して、メチル基又はエチル基を示す。〕
【0022】
式(1)中のR
1及びR
2、式(2)中のR
6及びR
7は、それぞれ独立して、単結合又は炭素数1〜10の2価の有機基を示すが、非特異吸着抑制の観点から、炭素数1〜10の2価の有機基が好ましい。当該有機基としては、2価の炭化水素基、炭素数2以上の2価の炭化水素基の炭素−炭素原子間にエーテル結合、アミド結合及びエステル結合から選ばれる1種以上を有する基が好ましく、2価の炭化水素基がより好ましい。
【0023】
2価の有機基が2価の炭化水素基である場合、その炭素数としては、1〜8が好ましく、1〜6がより好ましく、1〜4が更に好ましく、1〜3が特に好ましい。一方、2価の有機基が炭素数2以上の2価の炭化水素基の炭素−炭素原子間にエーテル結合、アミド結合及びエステル結合から選ばれる1種以上を有する基である場合、その合計炭素数としては、2〜8が好ましく、2〜6がより好ましく、2〜4が更に好ましく、2又は3が特に好ましい。
【0024】
R
1、R
2、R
6及びR
7における「2価の炭化水素基」としては、2価の脂肪族炭化水素基が好ましい。当該2価の脂肪族炭化水素基は直鎖状でも分岐鎖状でもよい。
上記2価の脂肪族炭化水素基としては、アルカンジイル基が好ましく、具体的には、メタン−1,1−ジイル基、エタン−1,1−ジイル基、エタン−1,2−ジイル基、プロパン−1,1−ジイル基、プロパン−1,2−ジイル基、プロパン−1,3−ジイル基、プロパン−2,2−ジイル基、ブタン−1,2−ジイル基、ブタン−1,3−ジイル基、ブタン−1,4−ジイル基、ペンタン−1,4−ジイル基、ペンタン−1,5−ジイル基、ヘキサン−1,5−ジイル基、ヘキサン−1,6−ジイル基等が挙げられる。
【0025】
式(1)中のR
3としては、−(C=O)O
-が好ましい。
式(1)中のR
4及びR
5、式(2)中のR
8、R
9及びR
10としては、メチル基が好ましい。
【0026】
構造単位(A)の好適な具体例としては、下記式(3)で表される構造単位が挙げられる。
【0028】
〔式(3)中、
R
11は、水素原子又はメチル基を示し、
R
12は、−(C=O)−O−*、−(C=O)−NR
14−*(R
14は、水素原子又はメチル基を示し、*は、式(3)中のR
13と結合する位置を示す)又はフェニレン基を示し、
R
13は、双性イオン構造を示す。〕
【0029】
式(3)中、R
12としては、非特異吸着抑制の観点から、−(C=O)−O−*、−(C=O)−NR
14−*が好ましく、−(C=O)−O−*がより好ましい。
また、R
13で示される双性イオン構造は上記双性イオン構造と同様であり、非特異吸着抑制の観点から、第4級アンモニウム塩型カチオン性官能基と、−(C=O)O
-、−SO
3-及び−O−(O=P−O
-)−O−から選ばれる1価又は2価のアニオン性官能基とを有するものが好ましく、式(1)又は(2)で表されるものが特に好ましい。
また、R
14としては、水素原子が好ましい。
【0030】
双性イオン構造を有するモノマーとしては、例えば、[2−((メタ)アクリロイルオキシ)エチル](カルボキシラトメチル)ジメチルアミニウム、[2−((メタ)アクリロイルオキシ)エチル](カルボキシラトエチル)ジメチルアミニウム、[2−((メタ)アクリロイルオキシ)エチル](カルボキシラトプロピル)ジメチルアミニウム、[2−((メタ)アクリロイルオキシ)エチル]ジメチル−(3−スルホメチル)アンモニウムヒドロキシド、[2−((メタ)アクリロイルオキシ)エチル]ジメチル−(3−スルホエチル)アンモニウムヒドロキシド、[2−((メタ)アクリロイルオキシ)エチル]ジメチル−(3−スルホプロピル)アンモニウムヒドロキシド、O−[2−((メタ)アクリロイルオキシ)エトキシ(オキシラト)ホスフィニル]コリン等が挙げられ、これらのうち1種を用いてよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0031】
構造単位(A)の含有量は、共重合体(I)中の全構造単位に対して1〜35質量%である。本発明の固相担体は、共重合体(I)中の構造単位(A)が低含量であるため、乳化重合法を利用して簡便に製造することができる。その一方で本発明の固相担体は、上記のように共重合体(I)中の構造単位(A)が低含量であるにも拘らず、非特異吸着が発生しにくく、リガンドを結合して用いた場合に低ノイズで標的物質の検出等を行うことができるという驚くべき性能を有する。
構造単位(A)の含有量は、全構造単位に対して、好ましくは3質量%以上であり、また、非特異吸着抑制や標的物質捕捉性能等の観点から、好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下、更に好ましくは20質量%以下、更に好ましくは15質量%以下、特に好ましくは10質量%以下である。
なお、共重合体(I)中の各構造単位の含有量は、例えば、X線光電子分光分析や元素分析等を利用して測定すればよい。
【0032】
<構造単位(B)>
共重合体(I)は、リガンドと化学結合可能な官能基を有するモノマーに由来する構造単位を、全構造単位に対して70質量%以下含む。構造単位(B)は、リガンドと化学結合可能な官能基を有するモノマーに由来する構造単位のうち、構造単位(A)以外のものを意味する。
リガンドと化学結合可能な官能基を有するモノマーに由来する構造単位としては、例えば、(メタ)アクリル酸又はその塩に由来する構造単位、リガンドと化学結合可能な官能基を有する(メタ)アクリレート系モノマーに由来する構造単位、リガンドと化学結合可能な官能基を有する(メタ)アクリルアミド系モノマーに由来する構造単位、リガンドと化学結合可能な官能基を有するスチレン系モノマーに由来する構造単位が挙げられ、これらのうち1種を含んでいてもよく、2種以上を含んでいてもよい。
これらの中でも、簡便な手法で製造できる点や非特異吸着抑制の観点等から、(メタ)アクリル酸又はその塩に由来する構造単位、リガンドと化学結合可能な官能基を有する(メタ)アクリレート系モノマーに由来する構造単位、リガンドと化学結合可能な官能基を有する(メタ)アクリルアミド系モノマーに由来する構造単位が好ましく、リガンドと化学結合可能な官能基を有する(メタ)アクリレート系モノマーに由来する構造単位がより好ましい。
【0033】
また、リガンドと化学結合可能な官能基としては、カルボキシ基、トシル基、アミノ基、エポキシ基、アジド基が挙げられる。これらの中でも、標的物質捕捉性能の観点や、リガンドとしてタンパク質や核酸等の生体分子を使用する場合にリガンドが元来有している官能基を使用して固相担体と結合できる点から、カルボキシ基、トシル基、アミノ基、エポキシ基が好ましく、カルボキシ基がより好ましい。
【0034】
また、リガンドと化学結合可能な官能基の含有量は、非特異吸着抑制や標的物質捕捉性能等の観点から、固相担体の固形分1gあたり、好ましくは1μmol以上、より好ましくは10μmol以上、更に好ましくは25μmol以上、特に好ましくは50μmol以上であり、また、非特異吸着抑制や標的物質捕捉性能等の観点から、好ましくは800μmol以下、より好ましくは650μmol以下、更に好ましくは500μmol以下である。
リガンドと化学結合可能な官能基の含有量は、例えば、リガンドと化学結合可能な官能基がカルボキシ基の場合、電気伝導度測定法等により測定可能であり、具体的には、後述する実施例に記載の方法に従い測定できる。また、リガンドと化学結合可能な官能基がトシル基の場合は、トシル基の紫外可視光吸収を測定するなどして求めることができ、リガンドと化学結合可能な官能基がアミノ基の場合は、アミノ基にN−スクシイミジル−3−(2−ピリジルジチオ)プロピオナートを反応させた後、還元し、遊離のチオピリジル基の吸光度を測定するなどして求めることができる。
【0035】
構造単位(B)の好適な具体例としては、下記式(4)で表される構造単位が挙げられる。
【0037】
〔式(4)中、
R
15は、水素原子又はメチル基を示し、
R
16は、−(C=O)−O−*、−(C=O)−NR
18−*(R
18は、水素原子又はメチル基を示し、*は、式(4)中のR
17と結合する位置を示す)又はフェニレン基を示し、
R
16が−(C=O)−O−*である場合、R
17は、水素原子、又はリガンドと化学結合可能な官能基を有する有機基を示し、R
16が−(C=O)−NR
18−*又はフェニレン基である場合、R
17は、リガンドと化学結合可能な官能基を有する有機基を示す。〕
【0038】
式(5)中、R
16としては、非特異吸着抑制の観点から、−(C=O)−O−*、−(C=O)−NR
18−*が好ましく、−(C=O)−O−*がより好ましい。R
18としては、水素原子が好ましい。
【0039】
また、R
17としては、簡便な手法で製造できる点や非特異吸着抑制の観点等から、リガンドと化学結合可能な官能基を有する有機基が好ましい。リガンドと化学結合可能な官能基を有する有機基としては、下記式(5)で表される有機基が好ましい。なお、R
17、Yにおけるリガンドと化学結合可能な官能基は、上記リガンドと化学結合可能な官能基と同様であり、カルボキシ基、トシル基、アミノ基、エポキシ基が好ましく、カルボキシ基がより好ましい。
【0041】
〔式(5)中、
R
19は、2価の有機基を示し、
Yは、リガンドと化学結合可能な官能基を示す。〕
【0042】
R
19で示される2価の有機基としては、2価の炭化水素基、炭素数2以上の2価の炭化水素基の炭素−炭素原子間にエーテル結合、イミノ基、アミド結合及びエステル結合から選ばれる1種以上を有する基が挙げられ、炭素数2以上の2価の炭化水素基の炭素−炭素原子間にエーテル結合、イミノ基、アミド結合及びエステル結合から選ばれる1種以上を有する基が好ましい。
【0043】
2価の有機基が2価の炭化水素基である場合、その炭素数としては、1〜20が好ましく、1〜10がより好ましく、1〜8が更に好ましく、1〜6が特に好ましい。
また、2価の有機基が2価の炭化水素基である場合において、当該2価の炭化水素基は、2価の脂肪族炭化水素基、2価の脂環式炭化水素基及び2価の芳香族炭化水素基を含む概念であるが、2価の脂肪族炭化水素基が好ましい。当該2価の脂肪族炭化水素基は直鎖状でも分岐鎖状でもよい。
上記2価の脂肪族炭化水素基としては、アルカンジイル基が好ましく、具体的には、メタン−1,1−ジイル基、エタン−1,1−ジイル基、エタン−1,2−ジイル基、プロパン−1,1−ジイル基、プロパン−1,2−ジイル基、プロパン−1,3−ジイル基、プロパン−2,2−ジイル基、ブタン−1,2−ジイル基、ブタン−1,3−ジイル基、ブタン−1,4−ジイル基、ペンタン−1,4−ジイル基、ペンタン−1,5−ジイル基、ヘキサン−1,5−ジイル基、ヘキサン−1,6−ジイル基等が挙げられる。
【0044】
一方、2価の有機基が炭素数2以上の2価の炭化水素基の炭素−炭素原子間にエーテル結合、イミノ基、アミド結合及びエステル結合から選ばれる1種以上を有する基である場合、その合計炭素数としては、2〜20が好ましく、2〜16がより好ましく、2〜12が更に好ましく、2〜8が特に好ましい。
また、炭素数2以上の2価の炭化水素基の炭素−炭素原子間にエーテル結合、イミノ基、アミド結合及びエステル結合から選ばれる1種以上を有する基としては、下記式(6)で表される2価の基が好ましい。
【0046】
〔式(6)中、
R
20及びR
21は、それぞれ独立して、2価の炭化水素基を示し、
Xは、エーテル結合、イミノ基、アミド結合又はエステル結合を示し、
*は、式(5)中のYとの結合位置を示す。〕
【0047】
Xとしては、エステル結合が好ましい。
R
20及びR
21で示される2価の炭化水素基は、2価の脂肪族炭化水素基、2価の脂環式炭化水素基及び2価の芳香族炭化水素基を含む概念である。
2価の脂肪族炭化水素基の炭素数としては、1〜10が好ましく、1〜8がより好ましく、1〜6が特に好ましい。なお、2価の脂肪族炭化水素基は直鎖状でも分岐鎖状でもよい。
上記2価の脂肪族炭化水素基としては、アルカンジイル基が好ましく、具体的には、メタン−1,1−ジイル基、エタン−1,1−ジイル基、エタン−1,2−ジイル基、プロパン−1,1−ジイル基、プロパン−1,2−ジイル基、プロパン−1,3−ジイル基、プロパン−2,2−ジイル基、ブタン−1,2−ジイル基、ブタン−1,3−ジイル基、ブタン−1,4−ジイル基、ペンタン−1,4−ジイル基、ペンタン−1,5−ジイル基、ヘキサン−1,5−ジイル基、ヘキサン−1,6−ジイル基等が挙げられる。
2価の脂環式炭化水素基の炭素数としては、5〜10が好ましく、5〜7がより好ましい。2価の脂環式炭化水素基としては、シクロアルカンジイル基が好ましく、具体的には、シクロヘキサンジイル基、シクロヘプタンジイル基等が挙げられる。
2価の芳香族炭化水素基の炭素数としては、6〜18が好ましく、6〜12がより好ましい。2価の芳香族炭化水素基としては、アリーレン基が好ましく、具体的には、フェニレン基、ナフチレン基等が挙げられる。
【0048】
また、R
20とR
21との組み合わせとしては、R
20が2価の脂肪族炭化水素基であり、R
21が2価の脂肪族炭化水素基、2価の脂環式炭化水素基又は2価の芳香族炭化水素基である組み合わせが好ましく、R
20が2価の脂肪族炭化水素基であり、R
21が2価の脂肪族炭化水素基である組み合わせがより好ましい。
【0049】
リガンドと化学結合可能な官能基を有するモノマーとしては、例えば、コハク酸水素1−((メタ)アクリロイルオキシ)エチル、フタル酸1−(1−(メタ)アクリロイルオキシエチル)、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸水素1−[1−((メタ)アクリロイルオキシ)エチル]、コハク酸水素1−((メタ)アクリロイルオキシ)プロピル、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸水素1−[1−((メタ)アクリロイルオキシ)プロピル]、コハク酸1−(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)、フタル酸1−(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)、ヘキサヒドロフタル酸水素1−(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)、コハク酸水素2−((メタ)アクリロイルオキシ)プロピル、フタル酸水素1−(2−(メタ)アクリロイルオキシプロピル)、ヘキサヒドロフタル酸水素1−(2−(メタ)アクリロイルオキシプロピル)、コハク酸水素3−((メタ)アクリロイルオキシ)プロピル、フタル酸水素1−(3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル)、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸水素1−[3−((メタ)アクリロイルオキシ)プロピル]等が挙げられ、これらのうち1種を用いてよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0050】
構造単位(B)の含有量は、共重合体中の全構造単位に対して70質量%以下である。斯かる構成により、非特異吸着が発生しにくくなり、また、標的物質捕捉性能が向上する。
構造単位(B)の含有量は、全構造単位に対して、非特異吸着抑制や標的物質捕捉性能等の観点から、好ましくは1質量%以上、より好ましくは10質量%以上、特に好ましくは20質量%以上であり、また、非特異吸着抑制や標的物質捕捉性能等の観点から、好ましくは60質量%以下、より好ましくは50質量%以下、特に好ましくは40質量%以下である。
【0051】
また、構造単位(A)と構造単位(B)の含有量の質量比〔(A):(B)〕としては、非特異吸着抑制や標的物質捕捉性能等の観点から、5:95〜60:40が好ましく、10:90〜50:50がより好ましく、15:85〜40:60が更に好ましく、17.5:82.5〜35:65が更に好ましく、17.5:82.5〜30:70が更に好ましく、17.5:82.5〜25:75が特に好ましい。
【0052】
<構造単位(C)>
共重合体(I)は、上記構造単位(A)及び(B)以外に、リガンドと化学結合可能な官能基を有さない水難溶性モノマーに由来する構造単位を含む。斯かる構成により、非特異吸着が発生しにくくなり、また、標的物質捕捉性能が向上する。
なお、本明細書において、水難溶性モノマーとは、水100gに対して10g以下の溶解性をもつモノマーを意味する。
【0053】
リガンドと化学結合可能な官能基を有さない水難溶性モノマーに由来する構造単位としては、例えば、リガンドと化学結合可能な官能基を有さない水難溶性(メタ)アクリレート系モノマーに由来する構造単位、リガンドと化学結合可能な官能基を有さない水難溶性(メタ)アクリルアミド系モノマーに由来する構造単位、リガンドと化学結合可能な官能基を有さない水難溶性スチレン系モノマーに由来する構造単位が挙げられ、これらのうち1種を含んでいてもよく、2種以上を含んでいてもよい。また、これら構造単位を誘導する水難溶性モノマーは、単官能性モノマーでも多官能性モノマーでもよい。
これらの中でも、非特異吸着抑制の観点等から、リガンドと化学結合可能な官能基を有さない水難溶性(メタ)アクリレート系モノマーに由来する構造単位、リガンドと化学結合可能な官能基を有さない水難溶性(メタ)アクリルアミド系モノマーに由来する構造単位が好ましく、リガンドと化学結合可能な官能基を有さない水難溶性(メタ)アクリレート系モノマーに由来する構造単位がより好ましい。
【0054】
構造単位(C)としては、以下の構造単位(C−1)〜(C−3)が好ましい。なお、共重合体(I)は、これらのうち1種を含んでいてもよく、2種以上を含んでいてもよい。
【0055】
(C−1)重合させてホモポリマーとし自由水を共存させた場合に中間水を保持するモノアクリレートモノマー又は該モノアクリレートモノマーと側鎖の構造が同一のモノメタクリレートモノマーに由来する構造単位
【0056】
(C−2)下記式(7)で表されるモノ(メタ)アクリレートモノマーに由来する構造単位
【0058】
〔式(7)中、
R
22は、水素原子又はメチル基を示し、
R
23は、炭化水素基を示す。〕
【0059】
(C−3)多官能性モノマーに由来する構造単位
【0060】
(構造単位(C−1))
構造単位(C−1)は、重合させてホモポリマーとし自由水を共存させた場合に中間水を保持するモノアクリレートモノマー又は該モノアクリレートモノマーと側鎖の構造が同一のモノメタクリレートモノマーに由来する構造単位である。
【0061】
ここで、自由水を共存させた場合に中間水を保持するホモポリマーとは、示差走査熱量計(DSC)による示差走査熱量分析によって得られるDSC曲線において、昇温過程で−10℃未満に水の結晶化による発熱ピークが観測されるホモポリマーをいう。
また、自由水とは、示差走査熱量分析によって得られるDSC曲線において、昇温過程で0℃付近の融点(吸熱ピーク)として観測される水をいう。
また、中間水とは、示差走査熱量分析によって得られるDSC曲線において、昇温過程で、−10℃未満で結晶化による発熱ピークとして観測される水をいう。
また、昇温過程とは、示差走査熱量分析において、−100℃以下まで冷却したのちの昇温過程をいう。
【0062】
構造単位(C−1)としては、下記式(8)又は(9)で表されるモノマーに由来する構造単位が好ましく、下記式(9)で表されるモノマーに由来する構造単位がより好ましい。
【0064】
〔式(8)中、
R
24は、水素原子又はメチル基を示し、
R
25は、炭素数1〜3のアルカンジイル基を示し、
R
26は、炭素数1〜3のアルキル基を示し、
nは、1〜5の整数を示す。〕
【0066】
〔式(9)中、
R
27は、水素原子又はメチル基を示し、
mは、1又は2を示す。〕
【0067】
式(8)中、R
25で示されるアルカンジイル基の炭素数としては、2又は3が好ましく、2がより好ましい。また、アルカンジイル基は直鎖状でも分岐鎖状でもよく、具体例としては、エタン−1,1−ジイル基、エタン−1,2−ジイル基、プロパン−1,1−ジイル基、プロパン−1,2−ジイル基、プロパン−1,3−ジイル基、プロパン−2,2−ジイル基等が挙げられる。
R
26で示されるアルキル基の炭素数としては、1又は2が好ましい。また、アルキル基は直鎖状でも分岐鎖状でもよく、具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基等が挙げられる。
nは、1〜5の整数を示すが、1〜3の整数が好ましい。
式(9)中、mは、1又は2を示すが、1が好ましい。
【0068】
構造単位(C−1)を誘導するモノマーとしては、メトキシエチルアクリレート、メトキシエチルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、ジ(エチレングリコール)モノメチルエーテルアクリレート、ジ(エチレングリコール)モノメチルエーテルメタクリレート、ジ(エチレングリコール)モノエチルエーテルアクリレート、ジ(エチレングリコール)モノエチルエーテルメタクリレート、トリ(エチレングリコール)モノメチルエーテルアクリレート、トリ(エチレングリコール)モノメチルエーテルメタクリレート、トリ(エチレングリコール)モノエチルエーテルアクリレート、トリ(エチレングリコール)モノエチルエーテルメタクリレート等が挙げられ、これらのうち1種を用いてよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0069】
(構造単位(C−2))
構造単位(C−2)は、下記式(7)で表されるモノ(メタ)アクリレートモノマーに由来する構造単位である。
【0071】
〔式(7)中、
R
22は、水素原子又はメチル基を示し、
R
23は、炭化水素基を示す。〕
【0072】
R
23で示される炭化水素基は、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基及び芳香族炭化水素基を包含する概念である。
R
23における脂肪族炭化水素基の炭素数としては、1〜20が好ましく、1〜12がより好ましく、1〜8が更に好ましい。なお、脂肪族炭化水素基は、直鎖状でも分岐鎖状でもよい。脂肪族炭化水素基としては、アルキル基が好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等が挙げられる。
R
23における脂環式炭化水素基の炭素数としては、6〜12が好ましく、6〜10がより好ましい。脂環式炭化水素基は、単環の脂環式炭化水素基と橋かけ環炭化水素基に大別される。単環の脂環式炭化水素基としては、シクロプロピル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基が挙げられる。また、橋かけ環炭化水素基としては、イソボルニル基等が挙げられる。
R
23における芳香族炭化水素基の炭素数としては、6〜12が好ましい。芳香族炭化水素基としては、フェニル基等のアリール基が挙げられる。
【0073】
これら炭化水素基の中でも、R
23としては、脂環式炭化水素基が好ましく、シクロアルキル基がより好ましい。
【0074】
構造単位(C−2)を誘導するモノマーとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等が挙げられ、これらのうち1種を用いてよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0075】
(構造単位(C−3))
構造単位(C−3)は、多官能性モノマーに由来する構造単位である。例えば、多官能性(メタ)アクリレート系モノマー;ジビニルベンゼン等の多官能性芳香族ビニル系モノマー;ブタジエン、イソプレン等の共役ジオレフィン等が挙げられる。これらの中でも、多官能性(メタ)アクリレート系モノマーが好ましい。多官能性(メタ)アクリレート系モノマーとしては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート等の二官能性(メタ)アクリレート系モノマー;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等の三官能性(メタ)アクリレート系モノマー;ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)メタクリレート等の六官能性(メタ)アクリレート系モノマー等が挙げられる。
【0076】
また、構造単位(C)としては、非特異吸着抑制や標的物質捕捉性能等の観点から、構造単位(C−1)を少なくとも含むもの、構造単位(C−3)を少なくとも含むものが好ましく、構造単位(C−1)を少なくとも含むものがより好ましく、構造単位(C−1)及び(C−3)を少なくとも含むものが特に好ましい。
【0077】
構造単位(C)の合計含有量は、全構造単位に対して、非特異吸着抑制や標的物質捕捉性能等の観点から、好ましくは10質量%以上、より好ましくは30質量%以上、更に好ましくは40質量%以上、更に好ましくは50質量%以上、特に好ましくは55質量%以上であり、また、非特異吸着抑制や標的物質捕捉性能等の観点から、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下、特に好ましくは70質量%以下である。
【0078】
また、構造単位(A)と構造単位(C)の含有量の質量比〔(A):(C)〕としては、非特異吸着抑制や標的物質捕捉性能等の観点から、1:99〜60:40が好ましく、5:95〜50:50がより好ましく、10:90〜40:60が更に好ましく、10:90〜30:70が更に好ましく、10:90〜20:80が特に好ましい。
また、構造単位(B)と構造単位(C)の含有量の質量比〔(B):(C)〕としては、非特異吸着抑制や標的物質捕捉性能等の観点から、1:99〜99:1が好ましく、10:90〜60:40がより好ましく、20:80〜45:55が更に好ましく、20:80〜40:60が特に好ましい。
【0079】
また、共重合体(I)が構造単位(C−1)を有する場合、構造単位(C−1)の含有量は、全構造単位に対して、非特異吸着抑制や標的物質捕捉性能等の観点から、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、更に好ましくは30質量%以上、更に好ましくは40質量%以上、特に好ましくは50質量%以上であり、また、非特異吸着抑制や標的物質捕捉性能等の観点から、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下、更に好ましくは70質量%以下、特に好ましくは60質量%以下である。
【0080】
また、共重合体(I)が構造単位(C−2)を有する場合、構造単位(C−2)の含有量は、全構造単位に対して、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、特に好ましくは30質量%以上であり、また、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下、特に好ましくは70質量%以下である。
【0081】
また、共重合体(I)が構造単位(C−3)を有する場合、構造単位(C−3)の含有量は、全構造単位に対して、非特異吸着抑制や標的物質捕捉性能等の観点から、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上であり、また、非特異吸着抑制や標的物質捕捉性能等の観点から、好ましくは70質量%以下、より好ましくは30質量%以下、特に好ましくは15質量%以下である。
【0082】
また、共重合体(I)は、上記構造単位(A)〜(C)以外の構造単位(以下、構造単位(D)とも称する)を有していてもよい。
構造単位(D)としては、例えば、双性イオン構造を有するモノマー以外の親水性モノマーに由来する構造単位が挙げられる。より具体的には、メトキシポリエチレングリコール#400メタクリレート(新中村化学工業)等に由来する構造単位等である。
【0083】
また、共重合体(I)が架橋構造を有していない場合、数平均分子量(Mn)としては、5,000〜1,000,000が好ましく、10,000〜500,000がより好ましい。
また、共重合体(I)が架橋構造を有していない場合、重量平均分子量(Mw)としては、5,000〜1,000,000が好ましく、10,000〜500,000がより好ましい。
また、共重合体(I)が架橋構造を有していない場合、分子量分布(Mw/Mn)としては、1.0〜3.0が好ましい。
なお、数平均分子量、重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィーで測定したポリエチレングリコール換算の平均分子量を意味する。
【0084】
また、共重合体(I)中の構造単位の配列の態様は特に限定されず、ランダム共重合体、ブロック共重合体、交互共重合体のいずれであってもよいが、簡便な手法で製造できる点等から、ランダム共重合体が好ましい。
【0085】
本発明の固相担体は、上記共重合体(I)が少なくとも固相の表面を形成するものであれば、固相(基材)そのものが共重合体(I)を含むものでも、共重合体(I)で固相(基材)が物理的に被覆されたものでもよい。
また、固相の基材(原料担体)は、有機物でも金属や金属酸化物等の無機物でもよく特に限定されないが、樹脂を含むものが好ましい。樹脂としては、アガロース、デキストラン、セルロース等の多糖類で構成される天然高分子でもよく、合成高分子でもよい。
また、本発明の固相担体の形態は特に限定されるものではなく、粒子、モノリス、膜、繊維、チップ等のいずれでもよいが、粒子が好ましく、磁性粒子がより好ましい。本発明の固相担体が、粒子、特に磁性粒子の形態の場合には、優れた再分散性が発揮され、検出・分離等の操作を大幅に簡便化できる。なお、本明細書において「磁性粒子」とは、磁性体を有する粒子を意味する。
【0086】
また、磁性体は、強磁性、常磁性、超常磁性のいずれであってもよいが、磁場による分離と磁場を取り除いた後の再分散を容易にする観点から、超常磁性であることが好ましい。磁性体としては、フェライト、酸化鉄、鉄、酸化マンガン、マンガン、酸化ニッケル、ニッケル、酸化コバルト、コバルト等の金属、又は合金が挙げられる。
また、磁性粒子としては、具体的には、以下の(i)〜(iv)のいずれかの粒子の少なくとも表面を、上記共重合体(I)が形成するものが挙げられる。好ましくは多孔質又は非多孔質の磁性ポリマー粒子である。
【0087】
(i)樹脂等の非磁性体を含む連続相中に磁性体微粒子が分散している粒子
(ii)磁性体微粒子の2次凝集体をコアとし、樹脂等の非磁性体をシェルとする粒子
(iii)樹脂等の非磁性体で構成される核粒子と、該核粒子の表面に設けられた磁性体微粒子を含む磁性体層(2次凝集体層)とを有する母粒子をコアとし、該母粒子の最外層に、樹脂等の非磁性体層がシェルとして設けられた粒子
(iv)粒子の最外層に樹脂等の非磁性体層がシェルとして設けられていてもよい、樹脂やシリカ等からなる多孔質粒子の孔内に磁性体微粒子が分散している粒子
また、(i)〜(iv)の粒子の数平均粒子径は、好ましくは0.05〜250μmであり、より好ましくは0.1〜50μmであり、特に好ましくは0.1〜25μmである。なお、(i)〜(iv)の粒子はいずれも公知であり、常法に従い製造可能である。
【0088】
上記(i)〜(iv)における樹脂は特に限定されないが、例えば、単官能性モノマー及び多官能性モノマーから選ばれる1種又は2種以上に由来する樹脂が挙げられる。
単官能性モノマーとしては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ハロゲン化スチレン等の単官能性芳香族ビニル系モノマー;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル、2−アミノエチル(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート等の単官能性(メタ)アクリレート系モノマーが挙げられる。多官能性モノマーとしては、例えば、ジビニルベンゼン等の多官能性芳香族ビニル系モノマー;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)メタクリレート、アリル(メタ)アクリレート等の多官能性(メタ)アクリレート系モノマー;ブタジエン、イソプレン等の共役ジオレフィン等が挙げられる。
【0089】
また、本発明の固相担体が粒子の場合の平均粒径(体積平均粒径)は、好ましくは0.02〜500μmであり、より好ましくは0.1〜250μmであり、更に好ましくは0.2〜100μmであり、更に好ましくは0.3〜50μmである。斯様な範囲とすることにより、固相担体が磁性粒子である場合に集磁速度が速くなりハンドリング性が改善される。また、本発明の固相担体は、平均粒径が0.05〜0.3μm程度の比較的小さい粒子である場合でも、良好な再分散性が得られる。
また、平均粒径の変動係数は、20%以下程度であればよい。
また、比表面積は、1.0〜2.0m
2/g程度であればよい。
なお、上記平均粒径及び比表面積は、レーザー回析・散乱粒子径分布測定等により測定できる。
【0090】
次に、本発明の固相担体の製造方法について説明する。
本発明の固相担体は、例えば、双性イオン構造を有するモノマー:全モノマーに対して1〜35質量%と、リガンドと化学結合可能な官能基を有するモノマー:全モノマーに対して70質量%以下と、リガンドと化学結合可能な官能基を有さない水難溶性モノマーとを、原料担体(基材)の存在下でラジカル重合させる工程を含む方法により製造できる。
【0091】
ラジカル重合は、特開2008−191128号公報等を参考にして常法に従い行えばよいが、乳化重合、懸濁重合等が好ましく、簡便性及び容易性等の観点から、乳化重合がより好ましく、水中油型(O/W)の乳化重合が特に好ましい。具体的には、原料担体を分散させた水系媒体(水等)中に上記モノマーを含むプレエマルジョンを滴下して重合させる方法が挙げられる。
【0092】
また、ラジカル重合は、アゾ系開始剤、過酸化物系開始剤、レドックス系開始剤等の重合開始剤;アルキル硫酸エステル塩、アルキルアリール硫酸エステル塩、アルキルリン酸エステル塩、脂肪酸塩等の界面活性剤等を用いて行うのが好ましい。
また、重合温度は、通常40〜100℃であり、好ましくは50〜90℃である。また、重合時間は通常1〜48時間である。
【0093】
そして、本発明の固相担体は、簡便な手法で製造でき、しかも、非特異吸着が発生しにくく、リガンドを結合した場合に優れた標的物質捕捉性能を示すため、本発明の固相担体にリガンドを結合して用いることによって、高感度且つ低ノイズで標的物質の検出等を行うことができる。また、標的物質の分離を高純度化することができる。
したがって、本発明の固相担体をアフィニティー担体とすることで、酵素免疫測定、放射免疫測定、化学発光免疫測定等の抗原抗体反応を利用したイムノアッセイ;タンパク質、核酸等の検出;細胞、タンパク質、核酸等の生体関連物質のバイオセパレーション;薬物探索;バイオセンサー等をはじめとする、体外診断や生化学分野における研究等に広く利用できる。本発明の固相担体は、イムノアッセイのため、或いは核酸検出のための使用に特に適する。
【0094】
〔リガンド結合固相担体〕
本発明のリガンド結合固相担体は、本発明の固相担体にリガンドを結合させてなるものである。
上記リガンドは、標的物質と結合する分子であればよいが、例えば、抗体;抗原;DNA、RNA等の核酸;ヌクレオチド;ヌクレオシド;プロテインA、プロテインG、(ストレプト)アビジン、酵素、レクチン等のタンパク質;インシュリン等のペプチド;アミノ酸;ヘパリン等の糖又は多糖;脂質;ビオチン等のビタミン;薬物;基質;ホルモン;神経伝達物質等が挙げられる。
これらの中でも、診断薬用等に適したリガンド結合固相担体とする観点からは、抗体、抗原が好ましい。抗体、抗原は標的物質と結合するものであればよいが、例えば、抗アンチプラスミン抗体、抗Dダイマー抗体、抗FDP抗体、抗tPA抗体、抗トロンビン・アンチトロンビン複合体抗体、抗FPA抗体等の凝固線溶関連検査用抗体又はこれに対する抗原;抗BFP抗体、抗CEA抗体、抗AFP抗体、抗TSH抗体、抗フェリチン抗体、抗CA19−9抗体等の腫瘍関連検査用抗体又はこれに対する抗原;抗アポリポタンパク抗体、抗β2−ミクロブロブリン抗体、抗α1―ミクログロブリン抗体、抗免疫グロブリン抗体、抗CRP抗体等の血清蛋白関連検査用抗体又はこれに対する抗原;抗HCG抗体等の内分泌機能検査用抗体又はこれに対する抗原;抗ジゴキシン抗体、抗リドカイン抗体等の薬物分析用抗体又はこれに対する抗原;HBs抗原、HCV抗原、HIV−1抗原、HIV−2抗原、HTLV−1抗原、マイコプラズマ抗原、トキソプラズマ抗原、ストレプトリジンO抗原等の感染症関連検査用抗原又はこれに対する抗体;DNA抗原、熱変成ヒトIgG等の自己免疫関連検査用抗原又はこれに対する抗体等が挙げられる。なお、抗体は、ポリクローナル抗体でもモノクローナル抗体でもよい。
【0095】
リガンド結合量は、リガンド結合固相担体の固形分1mgあたり、好ましくは1〜200μg、より好ましくは1〜100μg、更に好ましくは1〜50μg、特に好ましくは1〜30μgである。
リガンド結合量は、後述する実施例に記載の方法に従い測定できる。
【0096】
リガンドの結合は常法に従い行えばよいが、共有結合法で行うのが好ましい。例えば、リガンドと化学結合可能な官能基がカルボキシ基であり、リガンドがアミノ基を有するものである場合は、脱水縮合剤を用いて結合させればよい。
【0097】
本発明のリガンド結合固相担体は、体外診断や生化学分野における研究等に広く利用できる。本発明のリガンド結合固相担体は、イムノアッセイのため、或いは核酸検出のための使用に特に適する。
【0098】
〔標的物質の検出又は分離方法〕
本発明の試料中の標的物質を検出又は分離する方法は、本発明のリガンド結合固相担体を用いることを特徴とするものである。
【0099】
標的物質はリガンドと結合するものであればよいが、具体的には、抗原;モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体等の抗体;細胞(正常細胞、及び大腸がん細胞、血中循環がん細胞等のがん細胞);DNA、RNA等の核酸;タンパク質、ペプチド、アミノ酸、糖、多糖、脂質、ビタミン等の生体関連物質が挙げられ、創薬ターゲットとなる薬物、ビオチン等の小分子化合物でもよい。なお、標的物質は、蛍光物質などにより標識化されたものでもよい。
なお、試料は、上記標的物質を含むもの又は標的物質を含む可能性があるものであればよく、具体的には、血液、血漿、血清、標的物質を含有するバッファー溶液等である。
【0100】
本発明の検出又は分離方法は、本発明のリガンド結合固相担体を用いる以外は常法にしたがって行えばよい。例えば、本発明のリガンド結合固相担体と標的物質を含む試料を、混合するなどして接触させる工程(接触工程)、及び標的物質を捕捉したリガンド結合固相担体を、磁石などを用いて試料から分離する工程(分離工程)を含む方法が挙げられる。なお、当該分離工程の後に、標的物質を検出する工程、又はリガンドと標的物質を解離させる工程を含んでいてもよい。
【実施例】
【0101】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
なお、実施例7は参考例である。
【0102】
<リガンドと化学結合可能な官能基(反応性官能基)の含有量>
粒子から遊離させた鎖状ポリマーに含まれる反応性官能基(カルボキシ基)の含有量を、電気伝導度測定法(Metrohm社、794 Basic Titrino)を用いて測定することで、粒子固形分1gあたりの反応性官能基の含有量を求めた。
【0103】
<体積平均粒径>
各粒子の体積平均粒径は、レーザー回析・散乱粒子径分布測定装置(Beckman Coulter LS13 320)にて測定した。
【0104】
〔合成例1〕
油性磁性流体(「EXPシリーズ、EMG」、(株)フェローテック製)にアセトンを加えて粒子を析出沈殿させた後、これを乾燥することにより、疎水化処理された表面を有するフェライト系の磁性体微粒子(平均一次粒子径:0.01μm)を得た。
次いで、ポリスチレン粒子(数平均粒子径:0.77μm)30g及び上記疎水化処理された磁性体微粒子15gをミキサーでよく混合し、この混合物をハイブリダイゼーションシステムNHS−0型((株)奈良機械製作所製)を使用して、羽根(撹拌翼)の周速度100m/秒(16,200rpm)で5分間処理し、磁性体微粒子からなる磁性体層を表面に有する母粒子(数平均粒子径:1.0μm)を得た。
【0105】
〔実施例1〕
ドデシル硫酸ナトリウム0.50質量%水溶液300gを500mLセパラブルフラスコに投入し、次いで、合成例1で得た母粒子10gを加え、ホモジナイザーで分散した後、60℃に加熱し温度を保持した。
次に別の容器に、ドデシル硫酸ナトリウム0.50質量%水溶液45g、[2−(メタクリロイルオキシ)エチル](カルボキシラトメチル)ジメチルアミニウム(以下、「CBMA」という。)0.5g、2−メタクリロイルオキシエチルコハク酸(以下、「SA」という。)2.0g、テトラヒドロフルフリルメタクリレート(以下、「THFMA」という。)3.5g、トリメチロールプロパントリメタクリレート(以下、「TMP」という。)0.5g、及びジ(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)パーオキサイド75%溶液(パーロイル355−75(S) 日油(株)製(以下、「パーロイル355−75(S)」という。))0.15gを入れて分散させプレエマルジョンを得た。このプレエマルジョンを、60℃に保持した上記500mLセパラブルフラスコに2時間かけて全量滴下した。滴下終了後、60℃に保持し2時間撹拌した。次いで、上記500mLセパラブルフラスコ中の粒子を、磁気を用いて分離した後、蒸留水を用いて繰り返し洗浄した。得られた粒子の体積平均粒径は、1.2μmであった。
【0106】
〔実施例2〕
プレエマルジョンを作製するための原料として、ドデシル硫酸ナトリウム0.50質量%水溶液45g、CBMA1.0g、SA2.0g、THFMA3.0g、TMP0.5g、及びパーロイル355−75(S)0.15gを使用した以外は、実施例1と同様の操作を行った。得られた粒子の体積平均粒径は、1.2μmであった。
【0107】
〔実施例3〕
プレエマルジョンを作製するための原料として、ドデシル硫酸ナトリウム0.50質量%水溶液45g、CBMA2.0g、SA2.0g、THFMA2.0g、TMP0.5g、及びパーロイル355−75(S)0.15gを使用した以外は、実施例1と同様の操作を行った。得られた粒子の体積平均粒径は、1.2μmであった。
【0108】
〔実施例4〕
プレエマルジョンを作製するための原料として、ドデシル硫酸ナトリウム0.50質量%水溶液45g、CBMA0.5g、SA2.0g、シクロヘキシルメタクリレート(以下、「CHMA」という)3.5g、TMP0.5g、及びパーロイル355−75(S)0.15gを使用した以外は、実施例1と同様の操作を行った。得られた粒子の体積平均粒径は、1.2μmであった。
【0109】
〔実施例5〕
プレエマルジョンを作製するための原料として、ドデシル硫酸ナトリウム0.50質量%水溶液45g、CBMA0.5g、SA1.0g、THFMA4.5g、TMP0.5g、及びパーロイル355−75(S)0.15gを使用した以外は、実施例1と同様の操作を行った。得られた粒子の体積平均粒径は、1.2μmであった。
【0110】
〔実施例6〕
プレエマルジョンを作製するための原料として、ドデシル硫酸ナトリウム0.50質量%水溶液45g、CBMA0.5g、SA3.0g、THFMA2.5g、TMP0.5g、及びパーロイル355−75(S)0.15gを使用した以外は、実施例1と同様の操作を行った。得られた粒子の体積平均粒径は、1.2μmであった。
【0111】
〔実施例7〕
プレエマルジョンを作製するための原料として、ドデシル硫酸ナトリウム0.50質量%水溶液45g、CBMA0.5g、SA2.0g、THFMA4.0g、及びパーロイル355−75(S)0.15gを使用した以外は、実施例1と同様の操作を行った。得られた粒子の体積平均粒径は、1.2μmであった。
【0112】
〔実施例8〕
プレエマルジョンを作製するための原料として、ドデシル硫酸ナトリウム0.50質量%水溶液45g、O−[2−(メタクリロイルオキシ)エトキシ(オキシラト)ホスフィニル]コリン(以下、「MPC」という。)0.5g、SA2.0g、THFMA3.5g、TMP0.5g、及びパーロイル355−75(S)0.15gを使用した以外は、実施例1と同様の操作を行った。得られた粒子の体積平均粒径は、1.2μmであった。
【0113】
〔実施例9〕
プレエマルジョンを作製するための原料として、ドデシル硫酸ナトリウム0.50質量%水溶液45g、CBMA0.5g、SA2.0g、ジエチレングリコールモノメチルエーテルメタクリレート(以下、「DEGMA」という。)3.5g、TMP0.5g、及びパーロイル355−75(S)0.15gを使用した以外は、実施例1と同様の操作を行った。得られた粒子の体積平均粒径は、1.2μmであった。
【0114】
〔実施例10〕
ドデシル硫酸ナトリウム0.50質量%水溶液300g、ヘプタン10gに分散した磁性流体EMG6g、CBMA0.5g、SA2g、THFMA3.5g、TMP0.5g、パーロイル355−75(S)0.15gを500mLセパラブルフラスコに投入し、分散させてプレエマルジョンを得たのち、60℃まで昇温して、2時間保持した。次いで、上記500mLセパラブルフラスコ中の粒子を、磁気を用いて分離した後、蒸留水を用いて繰り返し洗浄した。得られた粒子の体積平均粒径は、0.2μmであった。
【0115】
〔比較例1〕
プレエマルジョンを作製するための原料として、ドデシル硫酸ナトリウム0.50質量%水溶液45g、CBMA4.5g、SA2.0g、及びパーロイル355−75(S)0.15gを使用した以外は、実施例1と同様の操作を行った。得られた粒子の体積平均粒径は、1.2μmであった。
【0116】
〔比較例2〕
プレエマルジョンを作製するための原料として、ドデシル硫酸ナトリウム0.50質量%水溶液45g、SA2.0g、THFMA4.0g、TMP0.5g、及びパーロイル355−75(S)0.15gを使用した以外は、実施例1と同様の操作を行った。得られた粒子の体積平均粒径は、1.2μmであった。
【0117】
〔比較例3〕
プレエマルジョンを作製するための原料として、ドデシル硫酸ナトリウム0.50質量%水溶液45g、CBMA3.0g、SA2.0g、THFMA1.0g、TMP0.5g、及びパーロイル355−75(S)0.15gを使用した以外は、実施例1と同様の操作を行った。得られた粒子の体積平均粒径は、1.2μmであった。
【0118】
〔比較例4〕
プレエマルジョンを作製するための原料として、ドデシル硫酸ナトリウム0.50質量%水溶液45g、CBMA0.5g、SA5.0g、THFMA0.5g、TMP0.5g、及びパーロイル355−75(S)0.15gを使用した以外は、実施例1と同様の操作を行った。得られた粒子の体積平均粒径は、1.2μmであった。
【0119】
〔比較例5〕
プレエマルジョンを作製するための原料として、ドデシル硫酸ナトリウム0.50質量%水溶液300g、ヘプタン10gに分散した磁性流体EMG6g、SA2.0g、THFMA4.0g、TMP0.5g、及びパーロイル355−75(S)0.15gを使用した以外は、実施例10と同様の操作を行った。得られた粒子の体積平均粒径は、0.2μmであった。
【0120】
〔試験例1〕
各実施例及び比較例で得られた磁性粒子1mgを、水2mLにそれぞれ分散させた。この水分散液をエッペンドルフチューブに投入し、磁気を用いて粒子を分離して上清を除去した。次いで、粒子をMES緩衝液(100mM、pH5.0)990μLに分散させ、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(10mg/mL)10μLを加え、室温で30分間インキュベートした。磁気を用いて粒子を分離して上清を除去し、MES緩衝液(100mM、pH5.0)1mLに分散させ、抗TSH抗体(フナコシ社製)20μgを加えた。室温で12時間インキュベートした後、磁気を用いて粒子を分離して上清を除去した。TBS−T(0.05質量%Tween20)緩衝液で5回洗浄し、抗体結合粒子を得た。抗体結合量をBCA Assayにより求めた。結果を表2に示す。
【0121】
〔試験例2〕
試験例1で得られた抗体結合粒子の分散液5μL(粒子50μg相当)をテストチューブに取り、ウシ胎児血清(FCS)50μLが添加された5μIU/mLのTSH抗原溶液(富士レビオ社製ルミパルスTSH−III標準TSH溶液)50μLを混合し、25℃で10分間反応させた。磁気を用いて粒子を分離し上清を除いた後、2次抗体としてアルカリフォスフォターゼで標識した抗TSH抗体(富士レビオ社製ルミパルスTSH−III免疫反応カートリッジ付属)40μLを添加し、25℃で10分間反応させた。磁気を用いて粒子を分離し上清を除いた後、PBSで3回洗浄を繰り返して得られた粒子を、50μLの0.01%TritonX−100に分散させ、新しいチューブに移し替えた。アルカリフォスフォターゼの基質液(富士レビオ社製ルミパルス基質液)100μLを加え、37℃で10分間反応させた後、シグナルとして化学発光量を測定した。化学発光の測定には、ベルトールジャパン社製の化学発光測定装置(Lumat LB9507)を用いた。また上記で、5μIU/mLのTSH抗原溶液の代わりに、0μIU/mLのTSHキャリブレータとした以外は同様にして、ノイズとして化学発光量を測定した。さらに、シグナル(S)をノイズ(N)で割った値S/Nを算出した。結果を表2に示す。
【0122】
〔試験例3〕
各実施例及び比較例で得られた磁性粒子1mgを、水2mLにそれぞれ分散させ、分散液をエッペンドルフチューブに投入した。チューブを磁性ビーズ分離用スタンド(Magical Trapper(東洋紡社製))に取り付け、5分間程度静置して粒子がペレット状に集磁されたことを確認した。次いで、スタンドからチューブを取り外して粒子を磁気から解放し、1分間経過後の様子を確認し、以下の基準で評価した。評価結果を表2に示す。
<評価基準>
○:ペレットが崩れながらチューブ下部に沈降し、再分散性が良い
×:ペレットがほぼ保持され、再分散性が悪い
【0123】
各実施例及び比較例で得られた磁性粒子表面の共重合体を構成するモノマーの組成を、表1に示す。
【0124】
【表1】
【0125】
【表2】
【0126】
表2に示すとおり、実施例1〜10の磁性粒子は、S/N(シグナル/ノイズ)比が高く、高感度且つ低ノイズで抗原を検出できた。また、再分散性も良好であった。