(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6660981
(24)【登録日】2020年2月13日
(45)【発行日】2020年3月11日
(54)【発明の名称】担架の遮蔽カバー
(51)【国際特許分類】
A61G 1/04 20060101AFI20200227BHJP
【FI】
A61G1/04
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2018-145305(P2018-145305)
(22)【出願日】2018年8月1日
(65)【公開番号】特開2020-18630(P2020-18630A)
(43)【公開日】2020年2月6日
【審査請求日】2019年8月5日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】318009746
【氏名又は名称】川井 貫也
(74)【代理人】
【識別番号】100117374
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 真一
(72)【発明者】
【氏名】川井 貫也
【審査官】
小島 哲次
(56)【参考文献】
【文献】
韓国公開特許第10−2009−0041047(KR,A)
【文献】
特開平11−078535(JP,A)
【文献】
中国実用新案第204092354(CN,U)
【文献】
中国実用新案第204293381(CN,U)
【文献】
中国特許出願公開第106667675(CN,A)
【文献】
韓国登録特許第10−1635847(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61G 1/00−1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
担架に装着するカバーであって、担架で搬送される傷病者等を、前記傷病者等から所定の空間を隔てて、外部から見えないように覆う遮蔽部を備える担架であって、
前記遮蔽部は、伸縮自在となる蛇腹状の複数の伸縮部と、前記伸縮部を連結する複数の連結部を備え、前記連結部は、内面の曲面に沿った一端に、担架の一方の持ち手に回動自在に嵌合され前記担架の幅方向に回動して開閉可能となる装着部を形成してなることを特徴とする担架カバー。
【請求項2】
前記連結部の内面の曲面に沿った他端には、内方に屈曲するように凸設される、担架の他方の持ち手の上部に載置する係止部を形成してなることを特徴とする請求項1に記載の担架カバー。
【請求項3】
前記連結部は、縮小した前記伸縮部を収納する収納部を備えてなることを特徴とする請求項1又は2に記載の担架カバー。
【請求項4】
前記連結部は、前記連結部の一側面である厚さ幅に適宜間隔を隔てて凸部を凸設すると共に、前記連結部の他側面である厚さ幅に、隣接する前記連結部の凸部と強制嵌合可能な凹部を凹設してなることを特徴とする請求項3に記載の担架カバー。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4の何れか一に記載の担架カバーを装着されることを特徴とする担架。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、担架(ストレッチャーを含む、以下同様)に人を乗せて搬送する場合に、搬送される人を周囲から見えないように保護するための担架の遮蔽カバーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、担架で傷病人やご遺体(以下、「傷病人等」という。)を搬送する場合は、傷病人等に毛布やシーツを掛けて搬送したり、又は関係者が複数人でブルーシート等を持ち担架の周辺を囲むようにして遮蔽して傷病人等が周囲から見えないようして搬送している。
【0003】
しかしながら、傷病人等に毛布やシーツを掛けて搬送する場合は、毛布やシーツが脱落したり、傷病人等が外傷を負っている場合は毛布やシーツが汚れて不衛生となり使用できなくなる場合があり、また、関係者が複数人でブルーシート等を持ち担架の周辺を囲むようにして担架の周辺を遮蔽して傷病人等が周囲から見えないようして搬送する場合は、搬送に複数人の人手が必要となり、また搬送自体に過大な手間が掛かることとなる。また、このような場合は複数人を同時に搬送する場合にも多くの人手が必要となり、搬送に時間が掛かる虞も生じる。
【0004】
さらに、たとえば、熱中症の患者を搬送する場合には、毛布等をかけて搬送するのは適当ではなく、また、ご遺体をブルーシートで刳るんで搬送する場合にも尊厳を欠くような感情をもたれる場合もある。加えて、降雨の場合に傷病人等を搬送する祭にも、雨に濡れないように搬送する必要も生じる。そして、特に、近年においては、高解像度のカメラを備える携帯電話の普及やSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)の普及からも、プライバシー保護の観点から、搬送される傷病人等を周囲から見えないように保護する必要が高まっている。
【0005】
そこで、これらの知見から本件出願の出願人は、担架に人を乗せて搬送する場合に、搬送される人を周囲から見えないように保護するための担架の遮蔽カバーを発明するに至った。
【0006】
また、本件出願人は本願の出願に先立ち、先行技術の調査を行ったが、本願発明と同様の搬送時に搬送される傷病人等を周囲から見えないように担架の遮蔽を目的とする先行技術は見あたらなかった。なお、本願発明と関連性は無いが、搬送される傷病者等を隔離するために担架をカプセル容器で隔離する公知の発明として特公昭52−34153号(特許文献1)及び特開2005−28058(特許文献2)に記載のものがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特公昭52−34153号
【特許文献2】特開2005−28058
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前記の各装置は、搬送される傷病者等が空気感染する虞のある疾病に罹っている場合に、搬送中の傷病者等を隔離して搬送するためのものであって、そもそも発明の課題、機能、作用効果が本願発明と相違するものであり、本願発明の先行技術にはなり得ない。
【0009】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであって、担架(ストレッチャーを含む、以下同様)に人を乗せて搬送する場合に、簡易に、また、確実に搬送される人を周囲から見えないように保護する担架の遮蔽カバーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に係る担架カバーは、担架に装着するカバーであって、担架で搬送される傷病者等を、前記傷病者等から所定の空間を隔てて、外部から見えないように覆う遮蔽部を備え
る担架であって、前記遮蔽部は、伸縮自在となる蛇腹状の複数の伸縮部と、前記伸縮部を連結する複数の連結部を備え、前記連結部は、内面の曲面に沿った一端に、担架の一方の持ち手に回動自在に嵌合され前記担架の幅方向に回動して開閉可能となる装着部を形成してなることを特徴とする。
【0011】
請求項2に係る担架カバーは、請求項1に記載の担架カバーにおいて、
前記連結部の内面の曲面に沿った他端には、内方に屈曲するように凸設される、担架の他方の持ち手の上部に載置する係止部を形成してなることを特徴とする。
【0012】
請求項3に係る担架カバーは、請求項1又は2に記載の担架カバーにおいて、
前記連結部は、縮小した前記伸縮部を収納する収納部を備えてなることを特徴とする。
【0013】
請求項4に係る担架カバーは、請求
項3に記載の担架カバーにおいて、
前記連結部は、前記連結部の一側面である厚さ幅に適宜間隔を隔てて凸部を凸設すると共に、前記連結部の他側面である厚さ幅に、隣接する前記連結部の凸部と強制嵌合可能な凹部を凹設してなることを特徴とする。
【0014】
削除
【0015】
削除
【0016】
請求項
5に係る担架は、請求項1乃至請求項
4の何れか一に記載の担架カバーを装着されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
請求項1に係る担架カバーによれば、担架に装着するカバーであって、担架で搬送される傷病者等を、前記傷病者等から所定の空間を隔てて、外部から見えないように覆う遮蔽部を備え
担架であって、前記遮蔽部は、伸縮自在となる蛇腹状の複数の伸縮部と、前記伸縮部を連結する複数の連結部を備え、前記連結部は、内面の曲面に沿った一端に、担架の一方の持ち手に回動自在に嵌合され前記担架の幅方向に回動して開閉可能となる装着部を形成しているので、関係者が複数人でブルーシート等を持ち担架の周辺を囲むようにして担架の周辺を遮蔽する必要がなく、担架に装着するだけで搬送される傷病者等を外部から見えないように遮蔽することができる。また、前記遮蔽部は前記傷病者等から所定の空間を隔てて設けられるので、傷病者等と直接接触することは少なく、防汚性が高いものとなる。また、前記担架カバーを合成樹脂や薄い金属板等で形成する場合は、洗いやすく洗浄性に優れ、また軽量性、運搬性、耐久性に優れたものとなる。
【0018】
請求項2に係る担架カバーによれば、請求項1に記載の担架カバーにおいて、
前記連結部の内面の曲面に沿った他端には、内方に屈曲するように凸設される、担架の他方の持ち手の上部に載置する係止部を形成しているので、取り扱いが容易であり、さらに、運搬性、収納性に優れたものとなる。
【0019】
請求項3に係る担架カバーによれば、請求項1又は2に記載の担架カバーにおいて、
前記連結部は、縮小した前記伸縮部を収納する収納部を備えているので、
取り扱いが容易であり、さらに、運搬性、収納性に優れたものとなる。
【0020】
請求項4に係る担架カバーによれば、請求
項3に記載の担架カバーにおいて、
前記連結部は、前記連結部の一側面である厚さ幅に適宜間隔を隔てて凸部を凸設すると共に、前記連結部の他側面である厚さ幅に、隣接する前記連結部の凸部と強制嵌合可能な凹部を凹設しているので、取り扱いが容易であり、さらに、運搬性、収納性に優れたものとなる。
【0021】
削除
【0022】
削除
【0023】
請求項
5に係る担架によれば、請求項1乃至請求項
4の何れか一に記載の担架カバーを装着されているので、関係者が複数人でブルーシート等を持ち担架の周辺を囲むようにして担架の周辺を遮蔽する必要がなく、担架に装着するだけで搬送される傷病者等を外部から見えないように遮蔽することができる。また、前記遮蔽部は一部又は全部に担架の長さ方向に伸縮自在となる伸縮部を備える場合は、取り扱いが容易であり、さらに、運搬性、収納性に優れたものとなり、さらに、必要に応じて、頭部を遮蔽する部分を収縮されれば、頭部が解放され、搬送中に閉鎖感なく搬送を行うことができる。また、担架に装脱自在に固定する装着部を備える場合は、担架への脱着が容易となり、不要な場合は取り外して収納することができる。また、前記伸縮部が伸縮可能な蛇腹状に形成される場合や、前記遮蔽部は複数の伸縮部を備え、前記伸縮部が連結部により接合される場合や、前記連結部が、縮小した前記伸縮部を収納する収納部を備える場合は、取り扱いが容易となり、さらに、運搬性、収納性に優れたものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明に係る担架カバーの概略斜視図である。
【
図5】本発明に係る担架カバーの中央縦断面図である。
【
図6】伸縮部を圧縮して収納状態とした中央縦断面図である。
【
図7】本発明に係る担架カバーを担架に装着した状態を示す概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を実施するための形態について、図面に従って説明する。
【0026】
図1は、本発明に係る担架カバーの概略斜視図であり、
図2は同側面図であり、
図3は
図2のA−A線断面図であり、
図4は
図2のB−B線断面図である。また、
図5は本発明に係る担架カバーの中央縦断面図である。
【0027】
図1乃至
図5に示すように、符号10は、本発明に係る担架カバーであり、前記担架カバー10は、横断面形状を、搬送される傷病者等と一定の空間Sを保つように略半円状となるように形成し、前記担架の長さ方向略全体を覆う長さを備えるように形成される遮蔽カバー20と、前記遮蔽カバー20を前記担架に着脱自在に装着するための装着部30とを備えている。なお、本実施では、前記遮蔽カバー20の横断面形状を略半円状となるように形成したが、この形状に限定されるものではなく、例えば、横断面略コ字状や横断面略く字状となるように形成しても良い。
【0028】
そして、前記遮蔽カバー20は、伸縮自在となるように半円筒状の蛇腹状に形成される伸縮部22,22・・・と、これらの複数の伸縮部22,22・・を連結するとともに、前記伸縮部22,22・・を圧縮時において収納することのできる、横断面略半円状となるように湾曲状に形成される板状の連結部24,24・・とで構成されている。なお、前記伸縮部22と前記連結部24は、光透過性のない合成樹脂で成形されるが、その他、光透過性のない金属製薄板やプラスチック製段ボール等で成形しても良い。なお、前記伸縮部22や前記連結部24の素材としては、光透過性があるとしても、例えば、着色により、またはモアレ縞のような、内部を目視で判別できない処理がされていれば良い。
【0029】
前記連結部24,24・・は、
図3に示すように、内面の曲面に沿った一端には、後述する担架の一方の持ち手B(
図7参照)に回動自在に強制嵌合可能となるように、円弧状の凹部からなる装着部30を形成すると共に、内面の曲面に沿った他端には担架の他方の持ち手C(
図7参照)の上部に載置する係止部32を内方に屈曲するように凸設して形成している。
【0030】
そして、前記伸縮部22と前記連結部24は、前記伸縮部22の端部が前記連結部24の内側の中央部において固定するように接合されている。前記の固定は、例えば、前記連結部24の内側の中央部に内側曲面に沿って溝(図示せず)を設けるか、または内側曲面に沿って2本のリブ(図示せず)を立設して、前記溝の間、又は2本のリブの間に前記伸縮部22の端部をはめ込み、接着剤等で固定すると良い。このように、前記伸縮部22の端部を前記連結部24の内側の中央部に固定しているので、前記連結部22の内側端部から内側中央部までの空間に、縮小された前記伸縮部22を収納するように形成しているのである。
【0031】
図6は、前記伸縮部22,22・・を縮めて収納状態とした中央縦断面図である。前記担架カバー10は、前記のとおり、前記伸縮部22の端部を前記連結部24の内側の中央部に固定して、前記連結部22の内側端部から内側中央部までの空間に、縮められた前記伸縮部22を収納するように形成しているので、収納時においては、
図6に示すように、前記連結部24.24・・が、それぞれ、隣接した状態で、収納することができる。
【0032】
そして、前記連結部24には、
図2及び
図4に示すように、前記伸縮部22,22・・を縮めて収納状態とする場合に、隣接する前記連結部24と留め合うことができるように、前記連結部24の一側面(厚さ幅)に適宜間隔を隔てて円柱状の凸部24aを凸設し、一方、前記連結部24の他側面(厚さ幅)には、前記凸部24aと強制嵌合可能な円柱状の凹部24bを凹設しているため、これらを強制嵌合することにより、前記伸縮部22,22・・を縮めて収納状態の形状のままで形状維持することができる。
【0033】
図7は、本発明に係る担架カバーを担架に装着した状態を示す概略斜視図である。本発明に係る前記担架カバー10は、以上の構成からなるので、
図7に示すように、前記担架カバー10を前記担架Aに装着するには、予め前記担架Aに載せられた傷病者等を覆うように前記担架カバー10を前記担架Aに載せ、前記連結部24に設けた前記装着部30を前記担架Aの一方の持ち手Bに強制嵌合するとともに、前記担架Aの他方の持ち手Cに係止部32を載置して装着するのである。
【0034】
また、前記担架Aの一方の持ち手Bに強制嵌合される前記装着部30は、前記担架Aの一方の持ち手Bに対して回動自在となるように形成されているので、まず、前記担架Aに前記担架カバー10の前記装着部30を嵌めてから前記担架カバー10を開放した状態で傷病者等を前記担架Aに載せて、前記前記担架カバー10を前記傷病者等を覆うように回動させて装着するようにしても良い。
【0035】
以上のように、以上の構成からなる前記担架カバーを前記担架Aに装着する場合は、担架で搬送される傷病者等を、前記傷病者等から所定の空間Sを隔てて、外部から見えないように覆う遮蔽部20を備えているので、関係者が複数人でブルーシート等を持ち担架の周辺を囲むようにして担架の周辺を遮蔽する必要がなく、前記担架Aに装着するだけで搬送される傷病者等を外部から見えないように遮蔽することができる。また、前記遮蔽部20は前記傷病者等から所定の空間Sを隔てて設けられるので、傷病者等と直接接触することは少なく、防汚性が高いものとなる。また、前記担架カバー10を合成樹脂や金属製薄板やプラスチック製段ボール等で形成する場合は、洗いやすく洗浄性に優れ、また軽量性、運搬性、耐久性に優れたものとなる。
【0036】
また、前記遮蔽部20は一部に担架の長さ方向に伸縮自在となる前記伸縮部22,22・・を備えているので、取り扱いが容易であり、さらに、運搬性、収納性に優れたものとなる。
【0037】
さらに、前記担架カバー10において、前記担架Aに装脱自在に固定する前記装着部30を備えているので、前記担架Aへの脱着が容易となり、不要な場合は取り外して収納することができ、さらに、前記伸縮部22,22・・は、伸縮可能な蛇腹状に形成されているので、取り扱いが容易であり、さらに、運搬性、収納性に優れたものとなる。
【0038】
加えて、前記伸縮部22,22・・は前記連結部24,24・により接合され、前記連結部は、縮小した前記伸縮部を収納する収納部を備えているので、取り扱いが容易であり、さらに、運搬性、収納性に優れたものとなる。
【0039】
また、前記担架カバーは上記の構成からなるので、搬送される傷病者等が息苦しくならないように、搬送される傷病者等の頭部を解放するように、前記頭部に該当する前記担架カバー10の端部の前記伸縮部22を縮めて、前記頭部を開放して搬送することも可能である。
【0040】
なお、本実施例においては、4つの前記伸縮部22を、3つの前記連結部24で接合して形成したが、前記伸縮部22及び前記連結部24は適宜の数で構成しても良い。また、前記担架カバー10の長さ方向の全部を前記伸縮部22で構成しても良い。その場合、前記装着部30は前記伸縮部23に形成すると良い。
【符号の説明】
【0041】
10 担架カバー
20 遮蔽部
22 伸縮部
24 連結部
24a 凸部
24b 凹部
30 装着部
32 係止部
A 担架
B 担架の一方の持ち手
C 担架の他方に持ち手