特許第6660992号(P6660992)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6660992
(24)【登録日】2020年2月13日
(45)【発行日】2020年3月11日
(54)【発明の名称】肩当て装置
(51)【国際特許分類】
   G10D 3/18 20200101AFI20200227BHJP
【FI】
   G10D3/18 110
【請求項の数】9
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2018-199970(P2018-199970)
(22)【出願日】2018年10月24日
【審査請求日】2018年10月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】518377713
【氏名又は名称】沼田 敏男
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】沼田 敏男
【審査官】 岩田 淳
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−112981(JP,A)
【文献】 特開2016−090997(JP,A)
【文献】 特表2012−523011(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0211426(US,A1)
【文献】 米国特許第05275078(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10D 1/00−3/18
G10G 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
演奏者の肩に載せて使用される弦楽器に用いられる肩当て装置であって、
前記肩に当接する当接面、及び、前記当接面とは反対側を向き前記弦楽器に対向する対向面を有する本体部と、
前記弦楽器の第1側縁部に係止される第1係止部と、
前記弦楽器の第2側縁部に係止される第2係止部と、
前記第1係止部と前記本体部とを連結する第1連結部と、
前記第2係止部と前記本体部とを連結する第2連結部と、を備え、
前記第1側縁部と前記第2側縁部とは互いに反対側を向くと共に、前記第1側縁部は前記第2側縁部よりも前記演奏者の肩に近い側に位置し、
前記弦楽器と前記対向面とが対向する方向を対向方向として、
前記第1連結部は、前記対向面と前記第1係止部との前記対向方向の距離を調整する距離調整部を有し、
前記第1連結部は、前記本体部に連結された第1連結本体部と、前記第1係止部に連結された第1連結係止部と、を有し、
前記距離調整部は、前記第1連結本体部と前記第1連結係止部とを連結するように設けられていると共に、互いに螺合する雌雄一対のねじ部を有し、一対の前記ねじ部の相対回転によって前記第1連結本体部と前記第1連結係止部とを前記対向方向に相対移動させ、
前記距離調整部は、前記第1係止部が前記第1側縁部に係止された状態で、前記対向方向に沿う対向方向視で前記弦楽器と重複しない位置に配置されている、肩当て装置。
【請求項2】
前記距離調整部によって前記対向方向における前記対向面と前記第1係止部との距離が最も短く調整された状態で、前記対向面と前記第1連結係止部とが、前記対向方向に接触する、請求項に記載の肩当て装置。
【請求項3】
演奏者の肩に載せて使用される弦楽器に用いられる肩当て装置であって、
前記肩に当接する当接面、及び、前記当接面とは反対側を向き前記弦楽器に対向する対向面を有する本体部と、
前記弦楽器の第1側縁部に係止される第1係止部と、
前記弦楽器の第2側縁部に係止される第2係止部と、
前記第1係止部と前記本体部とを連結する第1連結部と、
前記第2係止部と前記本体部とを連結する第2連結部と、を備え、
前記第1側縁部と前記第2側縁部とは互いに反対側を向くと共に、前記第1側縁部は前記第2側縁部よりも前記演奏者の肩に近い側に位置し、
前記弦楽器と前記対向面とが対向する方向を対向方向として、
前記第1連結部は、前記対向面と前記第1係止部との前記対向方向の距離を調整する距離調整部を有し、
前記距離調整部は、前記第1係止部が前記第1側縁部に係止された状態で、前記対向方向に沿う対向方向視で前記弦楽器と重複しない位置に配置され
前記第1連結部及び前記第2連結部の少なくとも一方は、前記対向方向視における前記第1係止部と前記第2係止部との間隔を調整する間隔調整部を有する、肩当て装置。
【請求項4】
前記第1係止部と前記第2係止部とのうちの対象とする方を対象係止部として、
前記間隔調整部は、前記本体部の前記対向面に形成されて前記本体部の延在方向に沿って延びる凹溝と、前記対象係止部に連結されると共に前記凹溝に収容されて当該凹溝に沿って摺動する摺動体と、前記本体部に対する前記摺動体の位置を固定するロック機構と、を備える、請求項に記載の肩当て装置。
【請求項5】
前記ロック機構は、前記凹溝に隣接して配置されると共に前記凹溝に沿って並んで形成された複数の凹部と、前記摺動体に設けられて複数の前記凹部が設けられた側に向かって突出する形状に形成された突起部と、前記突起部を操作する操作部と、を有し、
前記突起部は、複数の前記凹部のいずれかの内部に突出して当該凹部に係合した突出状態と、前記凹部から抜け出る位置まで引退した引退状態とに、状態変更するように構成され、
前記操作部が操作されて前記突起部が前記突出状態となることで前記本体部に対する前記摺動体の位置が固定された固定状態となり、前記操作部が操作されて前記突起部が前記引退状態となることで前記本体部に対する前記摺動体の位置の固定が解除された固定解除状態となる、請求項に記載の肩当て装置。
【請求項6】
演奏者の肩に載せて使用される弦楽器に用いられる肩当て装置であって、
前記肩に当接する当接面、及び、前記当接面とは反対側を向き前記弦楽器に対向する対向面を有する本体部と、
前記弦楽器の第1側縁部に係止される第1係止部と、
前記弦楽器の第2側縁部に係止される第2係止部と、
前記第1係止部と前記本体部とを連結する第1連結部と、
前記第2係止部と前記本体部とを連結する第2連結部と、を備え、
前記本体部に設けられ、索状体が係止される索状体係止部を更に備え、
前記第1側縁部と前記第2側縁部とは互いに反対側を向くと共に、前記第1側縁部は前記第2側縁部よりも前記演奏者の肩に近い側に位置し、
前記弦楽器と前記対向面とが対向する方向を対向方向として、
前記第1連結部は、前記対向面と前記第1係止部との前記対向方向の距離を調整する距離調整部を有し、
前記距離調整部は、前記第1係止部が前記第1側縁部に係止された状態で、前記対向方向に沿う対向方向視で前記弦楽器と重複しない位置に配置されている、肩当て装置。
【請求項7】
演奏者の肩に載せて使用される弦楽器に用いられる肩当て装置であって、
前記肩に当接する当接面、及び、前記当接面とは反対側を向き前記弦楽器に対向する対向面を有する本体部と、
前記弦楽器の第1側縁部に係止される第1係止部と、
前記弦楽器の第2側縁部に係止される第2係止部と、
前記第1係止部と前記本体部とを連結する第1連結部と、
前記第2係止部と前記本体部とを連結する第2連結部と、を備え、
前記第1側縁部と前記第2側縁部とは互いに反対側を向くと共に、前記第1側縁部は前記第2側縁部よりも前記演奏者の肩に近い側に位置し、
前記弦楽器と前記対向面とが対向する方向を対向方向として、
前記当接面の全体が前記対向方向において前記肩側に凸となる湾曲面状に形成され、
前記第1連結部は、前記対向面と前記第1係止部との前記対向方向の距離を調整する距離調整部を有し、
前記距離調整部は、前記第1係止部が前記第1側縁部に係止された状態で、前記対向方向に沿う対向方向視で前記弦楽器と重複しない位置に配置されている、肩当て装置。
【請求項8】
演奏者の肩に載せて使用される弦楽器に用いられる肩当て装置であって、
前記肩に当接する当接面、及び、前記当接面とは反対側を向き前記弦楽器に対向する対向面を有する本体部と、
前記弦楽器の第1側縁部に係止される第1係止部と、
前記弦楽器の第2側縁部に係止される第2係止部と、
前記第1係止部と前記本体部とを連結する第1連結部と、
前記第2係止部と前記本体部とを連結する第2連結部と、を備え、
前記第1側縁部と前記第2側縁部とは互いに反対側を向くと共に、前記第1側縁部は前記第2側縁部よりも前記演奏者の肩に近い側に位置し、
前記弦楽器と前記対向面とが対向する方向を対向方向として、
前記本体部は、前記対向方向に沿う対向方向視において前記肩から離れる側に凸となるアーチ状に形成され、
前記第1連結部は、前記対向面と前記第1係止部との前記対向方向の距離を調整する距離調整部を有し、
前記距離調整部は、前記第1係止部が前記第1側縁部に係止された状態で、前記対向方向視で前記弦楽器と重複しない位置に配置されている、肩当て装置。
【請求項9】
前記第2連結部は、前記対向面と前記第2係止部との前記対向方向の距離を一定に維持するように構成されている、請求項1から8のいずれか一項に記載の肩当て装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弦楽器の裏板の外縁部に装着(係止)して演奏者の肩に載せて使用される弦楽器用の肩当て装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば下記の特許文献1(特開2016−090997号公報)に開示されているように、演奏者の肩に載せられた状態で使用されるバイオリンやビオラ等の弦楽器を演奏する場合に、演奏者の肩に対する弦楽器の高さを演奏者の好みに合せて調整することができる肩当て装置が知られている。
【0003】
このような従来の肩当て装置の使用状態の例を図12に示す。図12に示すように、肩当て装置(200)は、演奏者(290)の肩(291)に当接する当接面(211)とバイオリン等の弦楽器(V)に対向する対向面(212)とを有する本体部(210)を備えている。そして、図12では一方の端部(220)のみを示しているが、本体部(210)の両端部(220)には、弦楽器(V)に係止される係止部(230)が設けられている。係止部(230)は、当接面(211)から離れた位置において弦楽器(V)に係止され、これにより、弦楽器(V)を演奏者(290)の好みに合わせた位置で肩(291)に載せて支持することができる。また、肩当て装置(200)は、弦楽器(V)と本体部(210)の対向面(212)とが対向する方向において、この対向面(212)と係止部(230)との距離を調整可能な距離調整機構(240)を備えており、係止部(230)は、この距離調整機構(240)を介して本体部(210)の端部(220)に連結されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016−090997号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、演奏者の肩に対する弦楽器の高さ(演奏者の肩と弦楽器の裏板との間の距離)は、演奏者の好みに応じて調整できることが望ましい。しかしながら、上述した従来の肩当て装置では、本体部と係止部との間の距離を調整する距離調整機構が、これら係止部と本体部との間に設けられている。そのため、従来の肩当て装置では、その構造上、距離調整機構が係止部と本体部との間に存在している分、本体部と係止部との間の距離の調整可能な範囲が限られており、調整範囲の拡大に向けて改善の余地があった。
【0006】
上記実状に鑑みて、演奏者の肩と弦楽器の裏板との間の距離の調整範囲を広く確保することが可能な肩当て装置の実現が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る肩当て装置は、
演奏者の肩に載せて使用される弦楽器に用いられる肩当て装置であって、
前記肩に当接する当接面、及び、前記当接面とは反対側を向き前記弦楽器に対向する対向面を有する本体部と、
前記弦楽器の第1側縁部に係止される第1係止部と、
前記弦楽器の第2側縁部に係止される第2係止部と、
前記第1係止部と前記本体部とを連結する第1連結部と、
前記第2係止部と前記本体部とを連結する第2連結部と、を備え、
前記第1側縁部と前記第2側縁部とは互いに反対側を向くと共に、前記第1側縁部は前記第2側縁部よりも前記演奏者の肩に近い側に位置し、
前記弦楽器と前記対向面とが対向する方向を対向方向として、
前記第1連結部は、前記対向面と前記第1係止部との前記対向方向の距離を調整する距離調整部を有し、
前記第1連結部は、前記本体部に連結された第1連結本体部と、前記第1係止部に連結された第1連結係止部と、を有し、
前記距離調整部は、前記第1連結本体部と前記第1連結係止部とを連結するように設けられていると共に、互いに螺合する雌雄一対のねじ部を有し、一対の前記ねじ部の相対回転によって前記第1連結本体部と前記第1連結係止部とを前記対向方向に相対移動させ、
前記距離調整部は、前記第1係止部が前記第1側縁部に係止された状態で、前記対向方向に沿う対向方向視で前記弦楽器と重複しない位置に配置されている。
【0008】
本構成によれば、距離調整部によって本体部の対向面と第1係止部との対向方向の距離を調整することができるため、演奏者の肩と弦楽器の裏板との間の距離を適切に調整することができる。そして、距離調整部は、第1係止部が弦楽器の第1側縁部に係止された状態で、対向方向視で弦楽器と重複しない位置に配置されているため、演奏者の肩と弦楽器の裏板との間に挟まれる位置に距離調整部が配置されることはない。そのため、本構成によれば、従来の構成のように演奏者の肩と弦楽器の裏板との間に挟まれる位置に距離調整部が配置されている場合に比べて、演奏者の肩と弦楽器の裏板との間の距離を小さくする側の調整範囲の制限を少なくすることができる。従って、演奏者の肩と弦楽器の裏板との間の距離の調整範囲を広く確保することが可能となっている。
また、本構成によれば、第1連結本体部と連結する本体部の対向面と、第1連結係止部に連結する第1係止部との距離を、一対のねじ部を相対回転させることによって調整することができる。従って、演奏者の肩と弦楽器の裏板との間の距離を微調整することができる。
【0009】
また、本開示に係る肩当て装置は、
演奏者の肩に載せて使用される弦楽器に用いられる肩当て装置であって、
前記肩に当接する当接面、及び、前記当接面とは反対側を向き前記弦楽器に対向する対向面を有する本体部と、
前記弦楽器の第1側縁部に係止される第1係止部と、
前記弦楽器の第2側縁部に係止される第2係止部と、
前記第1係止部と前記本体部とを連結する第1連結部と、
前記第2係止部と前記本体部とを連結する第2連結部と、を備え、
前記第1側縁部と前記第2側縁部とは互いに反対側を向くと共に、前記第1側縁部は前記第2側縁部よりも前記演奏者の肩に近い側に位置し、
前記弦楽器と前記対向面とが対向する方向を対向方向として、
前記第1連結部は、前記対向面と前記第1係止部との前記対向方向の距離を調整する距離調整部を有し、
前記距離調整部は、前記第1係止部が前記第1側縁部に係止された状態で、前記対向方向に沿う対向方向視で前記弦楽器と重複しない位置に配置され、
前記第1連結部及び前記第2連結部の少なくとも一方は、前記対向方向視における前記第1係止部と前記第2係止部との間隔を調整する間隔調整部を有する。
【0010】
本構成によれば、距離調整部によって本体部の対向面と第1係止部との対向方向の距離を調整することができるため、演奏者の肩と弦楽器の裏板との間の距離を適切に調整することができる。そして、距離調整部は、第1係止部が弦楽器の第1側縁部に係止された状態で、対向方向視で弦楽器と重複しない位置に配置されているため、演奏者の肩と弦楽器の裏板との間に挟まれる位置に距離調整部が配置されることはない。そのため、本構成によれば、従来の構成のように演奏者の肩と弦楽器の裏板との間に挟まれる位置に距離調整部が配置されている場合に比べて、演奏者の肩と弦楽器の裏板との間の距離を小さくする側の調整範囲の制限を少なくすることができる。従って、演奏者の肩と弦楽器の裏板との間の距離の調整範囲を広く確保することが可能となっている。
本構成によれば、対向方向視での弦楽器の形状や寸法、さらに、演奏者の肩に当接する位置を演奏者の好みに合せて、第1係止部と第2係止部との間隔を調節して弦楽器の所望の位置に第1係止部及び第2係止部を係止させることができる。これより、演奏者の好みに合せて、弦楽器に対する肩当て装置の位置を調節することができる。
【0011】
また、本開示に係る肩当て装置は、
演奏者の肩に載せて使用される弦楽器に用いられる肩当て装置であって、
前記肩に当接する当接面、及び、前記当接面とは反対側を向き前記弦楽器に対向する対向面を有する本体部と、
前記弦楽器の第1側縁部に係止される第1係止部と、
前記弦楽器の第2側縁部に係止される第2係止部と、
前記第1係止部と前記本体部とを連結する第1連結部と、
前記第2係止部と前記本体部とを連結する第2連結部と、を備え、
前記本体部に設けられ、索状体が係止される索状体係止部を更に備え、
前記第1側縁部と前記第2側縁部とは互いに反対側を向くと共に、前記第1側縁部は前記第2側縁部よりも前記演奏者の肩に近い側に位置し、
前記弦楽器と前記対向面とが対向する方向を対向方向として、
前記第1連結部は、前記対向面と前記第1係止部との前記対向方向の距離を調整する距離調整部を有し、
前記距離調整部は、前記第1係止部が前記第1側縁部に係止された状態で、前記対向方向に沿う対向方向視で前記弦楽器と重複しない位置に配置されている。
【0012】
本構成によれば、距離調整部によって本体部の対向面と第1係止部との対向方向の距離を調整することができるため、演奏者の肩と弦楽器の裏板との間の距離を適切に調整することができる。そして、距離調整部は、第1係止部が弦楽器の第1側縁部に係止された状態で、対向方向視で弦楽器と重複しない位置に配置されているため、演奏者の肩と弦楽器の裏板との間に挟まれる位置に距離調整部が配置されることはない。そのため、本構成によれば、従来の構成のように演奏者の肩と弦楽器の裏板との間に挟まれる位置に距離調整部が配置されている場合に比べて、演奏者の肩と弦楽器の裏板との間の距離を小さくする側の調整範囲の制限を少なくすることができる。従って、演奏者の肩と弦楽器の裏板との間の距離の調整範囲を広く確保することが可能となっている。
また、本構成によれば、索状体を利用して、肩当て装置が弦楽器に対して外れ難い構成とすることができる。例えば、索状体における、索状体係止部に係止された部分とは異なる部分を弦楽器に係止させることで、第1係止部と第2係止部と索状体とによって肩当て装置を弦楽器の3箇所に係止することができる。これにより、肩当て装置を弦楽器から外れ難くすることができる。
【0013】
また、本開示に係る肩当て装置は、
演奏者の肩に載せて使用される弦楽器に用いられる肩当て装置であって、
前記肩に当接する当接面、及び、前記当接面とは反対側を向き前記弦楽器に対向する対向面を有する本体部と、
前記弦楽器の第1側縁部に係止される第1係止部と、
前記弦楽器の第2側縁部に係止される第2係止部と、
前記第1係止部と前記本体部とを連結する第1連結部と、
前記第2係止部と前記本体部とを連結する第2連結部と、を備え、
前記第1側縁部と前記第2側縁部とは互いに反対側を向くと共に、前記第1側縁部は前記第2側縁部よりも前記演奏者の肩に近い側に位置し、
前記弦楽器と前記対向面とが対向する方向を対向方向として、
前記当接面の全体が前記対向方向において前記肩側に凸となる湾曲面状に形成され、
前記第1連結部は、前記対向面と前記第1係止部との前記対向方向の距離を調整する距離調整部を有し、
前記距離調整部は、前記第1係止部が前記第1側縁部に係止された状態で、前記対向方向に沿う対向方向視で前記弦楽器と重複しない位置に配置されている。
【0014】
本構成によれば、距離調整部によって本体部の対向面と第1係止部との対向方向の距離を調整することができるため、演奏者の肩と弦楽器の裏板との間の距離を適切に調整することができる。そして、距離調整部は、第1係止部が弦楽器の第1側縁部に係止された状態で、対向方向視で弦楽器と重複しない位置に配置されているため、演奏者の肩と弦楽器の裏板との間に挟まれる位置に距離調整部が配置されることはない。そのため、本構成によれば、従来の構成のように演奏者の肩と弦楽器の裏板との間に挟まれる位置に距離調整部が配置されている場合に比べて、演奏者の肩と弦楽器の裏板との間の距離を小さくする側の調整範囲の制限を少なくすることができる。従って、演奏者の肩と弦楽器の裏板との間の距離の調整範囲を広く確保することが可能となっている。
また、本構成によれば、演奏者の肩に対して当接面の一部のみを当接させることができるため、演奏者の肩に対して、比較的自由に本体部を揺動させることが可能となる。これにより例えば、当接面の全体が対向方向視において肩の側に凹となる湾曲面状に形成されることにより当接面の全体が肩から上胸にかけて当接するように構成されている場合に比べて、肩当て装置に支持された弦楽器を、肩当て装置を装着しない状態で弦楽器を弾くのと同じように、左手によって行う肩に対する弦楽器の微妙な角度操作を容易に行うことができ、演奏者による弦楽器の操作性を向上させることができる。
【0015】
また、本開示に係る肩当て装置は、
演奏者の肩に載せて使用される弦楽器に用いられる肩当て装置であって、
前記肩に当接する当接面、及び、前記当接面とは反対側を向き前記弦楽器に対向する対向面を有する本体部と、
前記弦楽器の第1側縁部に係止される第1係止部と、
前記弦楽器の第2側縁部に係止される第2係止部と、
前記第1係止部と前記本体部とを連結する第1連結部と、
前記第2係止部と前記本体部とを連結する第2連結部と、を備え、
前記第1側縁部と前記第2側縁部とは互いに反対側を向くと共に、前記第1側縁部は前記第2側縁部よりも前記演奏者の肩に近い側に位置し、
前記弦楽器と前記対向面とが対向する方向を対向方向として、
前記本体部は、前記対向方向に沿う対向方向視において前記肩から離れる側に凸となるアーチ状に形成され、
前記第1連結部は、前記対向面と前記第1係止部との前記対向方向の距離を調整する距離調整部を有し、
前記距離調整部は、前記第1係止部が前記第1側縁部に係止された状態で、前記対向方向視で前記弦楽器と重複しない位置に配置されている。
【0016】
本構成によれば、距離調整部によって本体部の対向面と第1係止部との対向方向の距離を調整することができるため、演奏者の肩と弦楽器の裏板との間の距離を適切に調整することができる。そして、距離調整部は、第1係止部が弦楽器の第1側縁部に係止された状態で、対向方向視で弦楽器と重複しない位置に配置されているため、演奏者の肩と弦楽器の裏板との間に挟まれる位置に距離調整部が配置されることはない。そのため、本構成によれば、従来の構成のように演奏者の肩と弦楽器の裏板との間に挟まれる位置に距離調整部が配置されている場合に比べて、演奏者の肩と弦楽器の裏板との間の距離を小さくする側の調整範囲の制限を少なくすることができる。従って、演奏者の肩と弦楽器の裏板との間の距離の調整範囲を広く確保することが可能となっている。
また、本構成によれば、本体部を演奏者の肩周辺の形状に適合した形状とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】肩当て装置の使用状態を示す図
図2】演奏者側から見た肩当て装置の使用状態を示す図
図3】対向方向視における弦楽器側からみた肩当て装置の使用状態を示す図
図4】肩当て装置の第1斜視図
図5】肩当て装置の第2斜視図
図6】第1係止部の周辺の構造を示す一部断面図
図7】第2係止部の周辺の構造を示す一部断面図
図8】間隔調整部の動作を示す説明図
図9】ロック機構の動作を示す説明図
図10】その他の実施形態に係る肩当て装置を示す図
図11】その他の実施形態に係る肩当て装置を示す図
図12】従来の肩当て装置を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0018】
1.第1実施形態
第1実施形態に係る肩当て装置100について、図面を参照して説明する。
【0019】
〔肩当て装置の全体構成〕
図1及び図2に示すように、肩当て装置100は、演奏者90の肩91(多くの場合、左肩)に載せて使用される弦楽器Vに装着(係止)して用いられる。ここで、肩当て装置100が用いられる弦楽器Vは、演奏者90の肩91に載せられた状態で使用されるバイオリンやビオラ等の楽器である。肩当て装置100は、演奏者90の肩91に対する弦楽器Vの高さ(演奏者90の肩91と弦楽器Vの裏板との間の距離)を演奏者90の好みに合せて調整するために用いられる。
【0020】
図2及び図3に示すように、肩当て装置100は、演奏者90の肩91に当接する当接面F1、及び、当接面F1とは反対側を向き弦楽器Vに対向する対向面F2を有する本体部10と、弦楽器Vの第1側縁部V1に係止される第1係止部30と、弦楽器Vの第2側縁部V2に係止される第2係止部50と、を備えている。弦楽器Vの第1側縁部V1及び第2側縁部V2は、表板、側板、及び裏板を含んで構成される弦楽器Vの本体における、外縁部に配置されている。そして、図2及び図3に示すように、第1側縁部V1と第2側縁部V2とは互いに反対側を向くと共に、第1側縁部V1は第2側縁部V2よりも演奏者90の肩91(図1参照)に近い側に位置している。但し、ここでの第1側縁部V1及び第2側縁部V2は、予め定められた特定の位置に限定されるものではない。第1側縁部V1は、弦楽器Vの本体の外縁部における第1係止部30が係止される部分である。同様に、第2側縁部V2は、弦楽器Vの本体の外縁部における第2係止部50が係止される部分である。
【0021】
本明細書では、弦楽器Vと本体部10の対向面F2とが対向する方向を「対向方向X」とし、本体部10における第1本体部11(後述する)が延在する方向を「第1延在方向Y1」とし、本体部10における第2本体部12(後述する)が延在する方向を「第2延在方向Y2」として、肩当て装置100の構成について説明する。また、以下、肩当て装置100を構成する各部の配置等を説明する場合には、本体部10における中間本体部13(後述する)を中心として「外側(中心から離れる側)」及び「内側(外側から中心に向かう側)」と定義するものとする。
【0022】
図2及び図3に示すように、肩当て装置100は、第1係止部30と本体部10とを連結する第1連結部31と、第2係止部50と本体部10とを連結する第2連結部51と、を備えている。これにより、本体部10と第1係止部30と第2係止部50とが、一体的に構成される。そして、肩当て装置100の使用状態では、図2に示すように、第1係止部30が第1側縁部V1に係止されると共に第2係止部50が第2側縁部V2に係止された状態で、本体部10における当接面F1が演奏者90の肩91に当接した状態となる。以下、肩当て装置100の各部の構成について説明する。なお、以下の説明では、特に断らない限り、肩当て装置100の使用状態、すなわち、肩当て装置100を対向方向Xに挟んで弦楽器Vと演奏者90の肩91とが配置された状態を基準として、肩当て装置100の各部の構成について説明する。従って、以下の説明に伴って参照する図面に、弦楽器V及び演奏者90の肩91(或いは首92)が示されていない場合であっても、これら弦楽器V及び演奏者90の肩91が存在するものとして、両者の配置を基準に肩当て装置100の各部の構成を説明する場合がある。
【0023】
〔本体部〕
本体部10は、演奏者90の肩91に当接する当接面F1と、弦楽器Vに対向する対向面F2と、を有する板状部材により構成されている。図9に示すように、本実施形態では、本体部10は、その内部に空洞部を有しており、当接面F1が形成されると共に当該空洞部を対向方向Xにおける肩91(演奏者90)の側から覆う当接側外枠部10aと、対向面F2が形成されると共に当該空洞部を対向方向Xにおける弦楽器Vの側から覆う対向側外枠部10bと、を有している。図1及び図3に示すように、本体部10は、対向方向Xに沿う方向視である対向方向X視において肩91から離れる側に凸となるアーチ状に形成されている。そして、図2に示すように、当接面F1の全体が対向方向Xにおいて肩91の側に凸となる湾曲面状に形成されている。これにより、肩91に対して当接面F1の一部を当接させることができる。従って、例えば、当接面F1の全体が対向方向X視において肩91の側に凹となる湾曲面状に形成されることにより、当接面F1の全体が肩91から上胸にかけて当接するように構成されている場合に比べて、肩当て装置100に支持された弦楽器Vを、肩当て装置100を装着しない状態で弦楽器Vを弾くのと同じように、左手によって行う肩91に対する弦楽器Vの微妙な角度操作を容易に行うことができ、演奏者90による弦楽器Vの操作性を向上させることが可能となっている。但し、上記のような構成に限定されることなく、本体部10は、対向方向X視において直線状に形成されていてもよい。また、当接面F1の全体が平面状に形成され、或いは、対向方向Xにおいて弦楽器Vの側に凸となる湾曲面状に形成されていてもよい。
【0024】
図3図5に示すように、本実施形態では、本体部10は、第1係止部30が配置される側の部分である第1本体部11と、第2係止部50が配置される側の部分である第2本体部12と、第1本体部11と第2本体部12との間の部分である中間本体部13と、を有して構成されている。
【0025】
第1本体部11と第2本体部12とは、中間本体部13によって連結されている。第1本体部11は、中間本体部13から第1係止部30が配置される側に向かって延在しており、第2本体部12は、中間本体部13から第2係止部50が配置される側に向かって延在している。上述のように、第1本体部11が延在する方向が第1延在方向Y1であり、第2本体部12が延在する方向が第2延在方向Y2である。そして、図3に示すように、第1延在方向Y1と第2延在方向Y2とは、対向方向X視において斜めに交差するように設定されており、第1延在方向Y1に沿う第1本体部11と、第2延在方向Y2に沿う第2本体部12と、これら第1本体部11と第2本体部12との間に形成された中間本体部13とによって、上述のように、本体部10の全体が対向方向X視でアーチ状を成している。
【0026】
〔第1係止部〕
第1係止部30は、弦楽器Vの第1側縁部V1に係止されて、弦楽器Vを支持する。第1係止部30は、第1側縁部V1を外側から把持する第1係止爪33dを有している。図6に示すように、第1係止爪33dは、対向方向Xに沿う第1軸心AX1まわりに旋回可能に構成されている。また、第1係止爪33dは、弦楽器Vの第1側縁部V1に係止された状態で、当該第1側縁部V1の形状に適合する形状とされている。これにより、第1係止爪33dは、弦楽器Vの本体の外縁部の形状に合わせて、第1側縁部V1に係止されることが可能となっている。なお、第1係止部30は1つ又は複数の第1係止爪33dを備える。図3図5等に示すように、本例では、第1係止部30は一対の第1係止爪33dを備えている。
【0027】
〔第1連結部〕
第1連結部31は、第1係止部30と本体部10とを連結する。図6に示すように、本実施形態では、第1連結部31は、第1本体部11(本体部10)に連結された第1連結本体部32と、第1係止部30に連結された第1連結係止部33と、を有している。
【0028】
第1連結本体部32は、第1係止部30が第1側縁部V1に係止された状態(図2参照)で、当該第1係止部30よりも外側に配置された本体側固定部32bと、本体側固定部32bから第1軸心AX1に沿って延びる本体側軸部32aと、を有している。これにより、第1係止部30が第1側縁部V1に係止された状態(図2参照)で、当該第1係止部30は、本体側軸部32a(第1軸心AX1)よりも内側に配置され、この第1係止部30によって支持される第1側縁部V1(弦楽器V)についても、本体側軸部32a(第1軸心AX1)よりも内側に配置される。
【0029】
本体側固定部32bは、第1本体部11(本体部10)から外側に突出している。本体側軸部32aは、本体側固定部32bに固定されている。本体側軸部32aは、第1軸心AX1に沿って配置されると共に、本体側固定部32bから対向方向Xにおける弦楽器Vの側(肩91とは反対側)に向かって延びている。本実施形態では、本体側軸部32aは、雄ねじ部32cを有している。具体的には図6に示すように、本体側軸部32aは、ボルトにより構成されており、ボルトの頭部が本体側固定部32bに固定され、雄ねじ部32cを有するボルトの軸部が本体側固定部32bから対向方向Xにおける弦楽器Vの側に向かって突出している。但し、上記の構成に限定されることなく、すなわち、本体側軸部32aは、本体側固定部32bに固定されていなくてもよく、本体側固定部32bに対して回転可能に支持されていてもよい。
【0030】
図6に示すように、第1連結係止部33は、第1軸心AX1に沿って配置される筒状に形成された係止側筒部33aと、当該係止側筒部33aに連結され、第1軸心AX1を基準とする径方向に沿って延びる板状に形成された第1係止側板部33bと、第1係止側板部33bに連結された第1係止爪33dと、を有している。
【0031】
第1係止側板部33bは、対向方向Xにおける弦楽器Vの側を向く第1載置面33Fと、対向方向Xにおいて第1載置面33Fとは反対側を向く第1裏面33RFと、を有している。第1載置面33Fは、弦楽器Vの第1側縁部V1を支持する。このとき、弦楽器Vの第1側縁部V1は、第1載置面33Fに載置された状態となる。第1裏面33RFは、対向方向X視において第1本体部11(本体部10)と重複した状態で、対向方向Xにおいて第1本体部11(本体部10)に対向するように配置されている。なお本例では、距離調整部Dによって対向方向Xにおける対向面F2と第1係止部30との距離を最も短く調整した状態でも、第1裏面33RFと第1本体部11(本体部10)とは接触しないように構成されている。
【0032】
第1係止爪33dは、第1係止側板部33bにおける第1載置面33Fに連結されている。本例では、第1係止爪33dは、第1載置面33Fから対向方向Xにおける弦楽器Vの側に突出していると共に、当該突出方向の先端部分が、第1側縁部V1に係止された姿勢で第1延在方向Y1における弦楽器Vの側に突出するように形成されている。そして、第1係止爪33dと第1載置面33Fとによって、弦楽器Vの第1側縁部V1を、対向方向Xの両側及び外側から挟み込むようにして支持している。本実施形態では、弦楽器Vの第1側縁部V1を支持する第1係止爪33dと第1載置面33Fとを含んで、第1係止部30が構成されている。
【0033】
係止側筒部33aは、上述の本体側軸部32aに連結されている。図示の例では、係止側筒部33aは、本体側軸部32aに対して、第1軸心AX1を基準とする径方向の内側から支持されている。本実施形態では、係止側筒部33aは、筒状の内周面に、雌ねじ部33cを有している。そして、係止側筒部33aの雌ねじ部33cと本体側軸部32aの雄ねじ部32cとが、互いに螺合している。
【0034】
〔距離調整部〕
第1連結部31は、対向面F2と第1係止部30との対向方向Xの距離を調整する距離調整部Dを有している。本実施形態では、距離調整部Dは、弦楽器Vの第1側縁部V1が載置される第1載置面33Fと、対向面F2との距離を調整する。
【0035】
距離調整部Dは、第1連結本体部32と第1連結係止部33とを相対移動させる。本実施形態では、距離調整部Dは、第1連結本体部32と第1連結係止部33とを連結するように設けられていると共に、互いに螺合する雌雄一対のねじ部Da,Dbを有し、一対のねじ部Da,Dbの相対回転によって第1連結本体部32と第1連結係止部33とを対向方向Xに相対移動させる。本例では、雌雄一対のねじ部Da,Dbは、第1連結本体部32に設けられた雄ねじ部32c(Da)と、第1連結係止部33に設けられた雌ねじ部33c(Db)と、を含んで構成されている。但し、上記のような構成に限定されることなく、雌ねじ部Dbが第1連結本体部32に設けられ、雄ねじ部Daが第1連結係止部33に設けられていてもよい。この場合、雌ねじ部Dbを有する第1連結本体部32が筒状部を有して構成され、雄ねじ部Daを有する第1連結係止部33が上記筒状部に挿入される軸部を有して構成されているとよい。
【0036】
図2及び図3に示すように、距離調整部Dは、第1係止部30が第1側縁部V1に係止された状態で、対向方向X視で弦楽器Vと重複しない位置に配置されている。本実施形態では、距離調整部Dは、第1軸心AX1に対応して設けられており、上述のように、第1軸心AX1(本体側軸部32a)は、第1係止部30が第1側縁部V1に係止された状態で、当該第1側縁部V1よりも外側に配置されている。従って、第1軸心AX1に対応して設けられる距離調整部Dは、第1係止部30が第1側縁部V1に係止された状態で、当該第1側縁部V1よりも外側に配置されている。このような構成により、対向方向Xにおいて、弦楽器Vと対向面F2(本体部10)との間に距離調整部Dが配置されないようにすることができ、その分、これら弦楽器Vと対向面F2との距離を小さくする際の調整範囲の制限を少なくできている。
【0037】
〔第2係止部〕
第2係止部50は、弦楽器Vの第2側縁部V2に係止されて、弦楽器Vを支持する。第2係止部50は、第2側縁部V2を外側から把持する第2係止爪53cを有している。図7に示すように、第2係止爪53cは、対向方向Xに沿う第2軸心AX2まわりに旋回可能に構成されている。また、第2係止爪53cは、弦楽器Vの第2側縁部V2に係止された状態で、当該第2側縁部V2の形状に適合する形状とされている。これにより、第2係止爪53cは、弦楽器Vの本体の外縁の形状に合わせて、第2側縁部V2に係止されることが可能となっている。なお、第2係止部50は1つ又は複数の第2係止爪53cを備える。図3図5等に示すように、本例では、第2係止部50は一対の第2係止爪53cを備えている。
【0038】
〔第2連結部〕
第2連結部51は、第2係止部50と本体部10とを連結する。本実施形態では、第2連結部51は、第2本体部12(本体部10)に連結された第2連結本体部52と、第2係止部50に連結された第2連結係止部53と、を有している。本実施形態では、第2連結本体部52と第2連結係止部53とは、第2軸心AX2まわりに相対回転するように構成されている。図示の例では、第2連結係止部53が、第2連結本体部52に対して第2軸心AX2まわりに回転可能に支持されている。
【0039】
本実施形態では、第2連結部51は、対向面F2と第2係止部50との対向方向Xの距離を一定に維持するように構成されている。本例では、本体部10(第2本体部12)に連結された第2連結本体部52と、第2係止部50に連結された第2連結係止部53との、対向方向Xにおける相対移動が抑止されている。これにより、本体部10と第2係止部50との対向方向Xの距離が一定に維持され、ひいては、対向面F2と第2係止部50との対向方向Xの距離が一定に維持される。つまり、本例では、第2連結部51は、第1連結部31が備える距離調整部Dのような、対向面F2と第2係止部50との対向方向Xの距離を調整する機構を備えていない。これにより、演奏者90の肩91の上に載る側の対面側において、演奏者90の上胸の上に載らず、胸を不必要に圧迫することが避けられ、同時に、第2連結部51の構成の簡略化を図ることが可能となっている。
【0040】
図7に示すように、第2連結本体部52は、第2軸心AX2に沿って配置される筒状に形成された本体側筒部52aを有している。図示の例では、本体側筒部52aは、第2本体部12(本体部10)から外側に突出している。
【0041】
本実施形態では、第2連結本体部52は、本体側筒部52aの筒状の内周面に形成されて第2軸心AX2を基準とする径方向に広がる本体側段差部52bを更に有している。本体側段差部52bによって、本体側筒部52aの内径が、対向方向Xにおいて変化している。本例では、本体側筒部52aの内径のうち、本体側段差部52bを境界とする対向方向Xにおける第2係止部50側の内径が、本体側段差部52bを境界とする対向方向Xにおける第2係止部50側とは反対側の内径よりも小さくなっている。換言すれば、本体側筒部52aの筒状の内周面には、大径部52cと、この大径部52cよりも対向方向Xにおける第2係止部50側に配置されて当該大径部52cよりも内径が小さい小径部52dと、が形成されている。大径部52cと小径部52dとの間に、本体側段差部52bが形成されている。
【0042】
図7に示すように、第2連結係止部53は、第2軸心AX2を基準とする径方向に沿って延びる板状に形成された第2係止側板部53bと、当該第2係止側板部53bから本体側筒部52aの内周部に向かって突出する係止側突起部53aと、第2係止側板部53bに連結された第2係止爪53cと、を有している。
【0043】
第2係止側板部53bは、対向方向Xにおける弦楽器Vの側を向く第2載置面53Fと、対向方向Xにおいて第2載置面53Fとは反対側を向く第2裏面53RFと、を有している。第2載置面53Fは、弦楽器Vの第2側縁部V2を支持する。このとき、弦楽器Vの第2側縁部V2は、第2載置面53Fに載置された状態となる。
【0044】
第2係止爪53cは、第2係止側板部53bにおける第2載置面53Fに連結されている。本例では、第2係止爪53cは、第2載置面53Fから対向方向Xにおける弦楽器Vの側に突出していると共に、当該突出方向の先端部分が、第2側縁部V2に係止された姿勢で第2延在方向Y2における弦楽器Vの側に突出するように形成されている。そして、第2係止爪53cと第2載置面53Fとによって、弦楽器Vの第2側縁部V2を、対向方向Xの両側及び外側から挟み込むようにして支持している。本実施形態では、弦楽器Vの第2側縁部V2を支持する第2係止爪53cと第2載置面53Fとを含んで、第2係止部50が構成されている。
【0045】
係止側突起部53aは、第2係止側板部53bにおける第2裏面53RFに連結されている。本例では、係止側突起部53aは、第2裏面53RFから対向方向Xにおける第2係止爪53cの側とは反対側に突出している。図7に示すように、係止側突起部53aの先端(突出端)には、上述の本体側段差部52bに引っ掛かるフック部53dが形成されている。フック部53dは、対向方向Xにおける第2係止爪53c側を向く第1段差面53eを有している。この第1段差面53eは、本体側段差部52bに対向するように配置される。そして、第1段差面53eと、第2裏面53RFに形成された対向方向Xにおけるフック部53d側を向く第2段差面53fとによって、本体側筒部52aの小径部52dが対向方向Xに挟まれた状態となっている。これにより、第2連結本体部52と第2連結係止部53との対向方向Xにおける相対移動が抑止されている。本実施形態では、係止側突起部53aは、第2軸心AX2に沿うスリットが形成された二股構造となっており、また、フック部53dは、先端側に向かって先細りとなるテーパ面53gを有している。
これにより、第2連結本体部52に対して第2連結係止部53を取り付ける際に、本体側筒部52aの内周部への係止側突起部53aの挿入を行い易くできる。すなわち、挿入の際には、テーパ状のフック部53dが、係止側突起部53aを本体側筒部52aの内周部へ案内し、挿入中には、二股構造である係止側突起部53a及びその先端のフック部53dが、本体側筒部52aの内周面に径方向(第2軸心AX2を基準とする径方向)の外側から押圧されて縮径する(径方向に小さくなる)。そして、フック部53dが本体側筒部52aの大径部52cに到達すると、本体側筒部52aの内周面による押圧が解除されて、当該フック部53dは、元の径に戻ると共に第1段差面53eが本体側段差部52bに対向する状態となる。これにより、係止側突起部53aの抜け止めがなされた状態で、第2連結係止部53が第2連結本体部52に取り付けられる。
【0046】
図7に示すように、本実施形態では、第1段差面53eと第2段差面53fとの対向する距離が、小径部52dの対向方向Xの長さに対してわずかに長く設定され、第2連結係止部53と第2連結本体部52との間には、対向方向Xに遊び(隙間)がある状態で連結されている。これにより、第2連結係止部53が、第2連結本体部52に対して第2軸心AX2まわりに相対回転し易い構成となっている。但し、このような構成に限定されることなく、第1段差面53eと第2段差面53fとの対向する距離が、小径部52dの対向方向Xの長さと一致するように形成されていてもよい。この場合でも、第2連結係止部53が、第2連結本体部52に対して第2軸心AX2まわりに相対回転可能であればよい。
【0047】
〔間隔調整部〕
図3図5に示すように、本実施形態では、第1連結部31及び第2連結部51の少なくとも一方は、対向方向X視における第1係止部30と第2係止部50との間隔を調整する間隔調整部Sを有している。これにより、弦楽器Vの形状や幅、さらに、演奏者90の肩91に当接する位置を演奏者90の好みに合せて、第1係止部30と第2係止部50とを、弦楽器Vを支持するための適切な位置に配置することができるようになっている。また本実施形態では、第1係止部30と第2係止部50とのうちの対象とする方を対象係止部40として、間隔調整部Sは、本体部10の対向面F2に形成されて本体部10の延在方向に沿って延びる凹溝Saと、対象係止部40に連結されると共に凹溝Saに収容されて当該凹溝Saに沿って摺動する摺動体Sbと、本体部10に対する摺動体Sbの位置を固定するロック機構Lと、を備えている。
【0048】
本例では、第1係止部30と第2係止部50との双方が対象係止部40であり、第1連結部31及び第2連結部51の双方が、間隔調整部Sを有している。具体的には、第1連結部31が第1間隔調整部S1を有すると共に、第2連結部51が第2間隔調整部S2を有している。そして、第1間隔調整部S1は、第1係止部30(対象係止部40)を第1延在方向Y1に沿って移動させることにより、第1係止部30と第2係止部50との間隔を調整し、第2間隔調整部S2は、第2係止部50(対象係止部40)を第2延在方向Y2に沿って移動させることにより、第1係止部30と第2係止部50との間隔を調整する。
【0049】
図8に示すように、本実施形態では、第1間隔調整部S1は、第1本体部11(本体部10)の対向面F2に形成されて第1延在方向Y1に沿って延びる第1凹溝Sa1と、第1係止部30(対象係止部40)に連結されると共に第1凹溝Sa1に収容されて当該第1凹溝Sa1に沿って摺動する第1摺動体Sb1と、第1本体部11(本体部10)に対する第1摺動体Sb1の位置を固定する第1ロック機構L1と、を備えている。そして、第2間隔調整部S2は、第2本体部12(本体部10)の対向面F2に形成されて第2延在方向Y2に沿って延びる第2凹溝Sa2と、第2係止部50(対象係止部40)に連結されると共に第2凹溝Sa2に収容されて当該第2凹溝Sa2に沿って摺動する第2摺動体Sb2と、第2本体部12(本体部10)に対する第2摺動体Sb2の位置を固定する第2ロック機構L2と、を備えている。上記のように、第1間隔調整部S1と第2間隔調整部S2とは、移動させる対象と、その対象を移動させる方向とが異なるが、基本的な構成は同じである。以下では、第1間隔調整部S1について詳細に説明し、第2間隔調整部S2における第1間隔調整部S1と同様の構成については説明を省略する。
【0050】
第1凹溝Sa1は、対向面F2から当接面F1の側に向かって凹むと共に第1延在方向Y1に沿って連続的に形成され(図4参照)、第1本体部11における第1延在方向Y1の外側(中間本体部13とは反対側)の縁部まで延びて当該縁部に開口している(図8参照)。本実施形態では、第1本体部11(本体部10)は、その内部に空洞部を有しており、第1凹溝Sa1は、第1本体部11の内部の空洞部と一体的に形成されている。図8に示すように、弦楽器Vの側からの対向方向X視では、第1本体部11の内部の空洞部は、当該第1本体部11の対向側外枠部10bによって覆われており、第1本体部11の内部の空洞部と一体である第1凹溝Sa1は、対向側外枠部10bによって覆われていない。なお、図6及び図9等に示すように、第1本体部11の内部の空洞部は、第1本体部11における第1延在方向Y1の外側(中間本体部13とは反対側)の縁部まで延びて当該縁部に開口しており、第1本体部11の外部と連通している。
【0051】
第1摺動体Sb1は、第1本体部11の内部の空洞部及び第1凹溝Sa1の形状に対応した形状の部材である。本実施形態では、第1摺動体Sb1は、第1本体部11における第1延在方向Y1の外側(中間本体部13とは反対側)の縁部から第1本体部11の内部の空洞部に挿入され、第1延在方向Y1に沿って延在するように配置された状態で、第1本体部11に取り付けられる。図8及び図9に示すように、第1摺動体Sb1は、第1本体部11の内部の空洞部に配置される部分と、第1本体部11から第1延在方向Y1の外側に突出する部分とを有する。第1摺動体Sb1は、第1本体部11から第1延在方向Y1の外側に突出する部分において、第1係止部30(対象係止部40)に連結されている。
【0052】
図8及び図9に示すように、本実施形態では、第1摺動体Sb1(摺動体Sb,第2摺動体Sb2)は、対向方向Xにおける弦楽器Vの側を向く第1摺動面SF1(摺動面SF,第2摺動面SF2)を有している。第1摺動面SF1は、第1摺動体Sb1が第1本体部11の内部の空洞部に配置された状態で、当該空洞部に配置されて、対向面F2よりも対向方向Xにおける当接面F1の側に配置される。
【0053】
図4及び図8等に示すように、本実施形態では、第1摺動体Sb1(摺動体Sb,第2摺動体Sb2)は、第1摺動面SF1(摺動面SF,第2摺動面SF2)から対向方向Xにおける弦楽器Vの側に向かって突出する第1案内部Sc1(案内部Sc,第2案内部Sc2)を有している。第1案内部Sc1は、第1凹溝Sa1の形状に対応した形状に形成され、第1凹溝Sa1に沿って第1延在方向Y1に延在するように配置されている。これにより、第1摺動体Sb1を第1凹溝Sa1に沿って摺動させることが可能となっている。本実施形態では、第1摺動面SF1が第1本体部11の内部の空洞に配置された状態で、当該第1摺動面SF1から突出する第1案内部Sc1が、対向面F2よりも対向方向Xにおける弦楽器Vの側には突出しないようになっている。換言すれば、第1案内部Sc1の突出端が、対向面F2よりも当接面F1の側に配置されるようになっている。これにより、対向面F2と弦楽器Vとを対向方向Xにおいて近づけるように両者の距離を調整する際に、第1案内部Sc1がその調整の妨げとならないようにすることができる。
【0054】
〔ロック機構〕
ロック機構Lは、本体部10に対する摺動体Sbの位置を固定する。本実施形態では、ロック機構Lは、凹溝Saに隣接して配置されると共に凹溝Saに沿って並んで形成された複数の凹部Laと、摺動体Sbに設けられて複数の凹部Laが設けられた側に向かって突出する形状に形成された突起部Lbと、突起部Lbを操作する操作部Lcと、を有している。上述のように、本実施形態では、第1間隔調整部S1に第1ロック機構L1が備えられ、第2間隔調整部S2に第2ロック機構L2が備えられている。第1ロック機構L1は、第1本体部11に対する第1摺動体Sb1の位置を固定し、第2ロック機構L2は、第2本体部12に対する第2摺動体Sb2の位置を固定する。
【0055】
図8に示すように、本実施形態では、第1ロック機構L1は、第1凹溝Sa1に隣接して配置されると共に第1凹溝Sa1に沿って並んで形成された複数の第1凹部La1と、第1摺動体Sb1に設けられて複数の第1凹部La1が設けられた側に向かって突出する形状に形成された第1突起部Lb1と、第1突起部Lb1を操作する第1操作部Lc1と、を有している。そして、第2ロック機構L2は、第2凹溝Sa2に隣接して配置されると共に第2凹溝Sa2に沿って並んで形成された複数の第2凹部La2と、第2摺動体Sb2に設けられて複数の第2凹部La2が設けられた側に向かって突出する形状に形成された第2突起部Lb2と、第2突起部Lb2を操作する第2操作部Lc2と、を有している。上記のように、第1ロック機構L1と第2ロック機構L2とは、固定する対象が異なるが、基本的な構成は同じである。以下では、第1ロック機構L1について詳細に説明し、第2ロック機構L2における第1ロック機構L1と同様の構成については説明を省略する。
【0056】
図9に示すように、第1凹部La1は、第1本体部11の対向側外枠部10bに設けられている。第1凹部La1は、第1突起部Lb1が突出する方向に凹む形状に形成されている。これにより、第1凹部La1に対して第1突起部Lb1が係合可能となっている。
本実施形態では、第1凹部La1は、対向側外枠部10bを対向方向Xに貫通するように形成されている。これにより、複数の第1凹部La1のうちいずれに第1突起部Lb1が係合しているかについて、対向方向X視における弦楽器Vの側から視認可能となっている(図8等参照)。
【0057】
図8に示すように、本実施形態では、複数の第1凹部La1が、第1延在方向Y1に沿って等間隔に並んで配置されている。図示の例では、6つの第1凹部La1が並んで配置されている。第1突起部Lb1は、6つの第1凹部La1のうちいずれかの第1凹部La1に対して係合可能に構成されている。これにより、第1ロック機構L1は、6段階に亘って、本体部10に対する第1摺動体Sb1の位置、ひいては、本体部10に対する第1係止部30(対象係止部40)の位置を固定することができる。更に、図示の例では、第2ロック機構L2が有する第2凹部La2については、9つの第2凹部La2が、第2延在方向Y2に並んで配置されている。これにより、第2ロック機構L2は、9段階に亘って、本体部10に対する第2摺動体Sb2の位置、ひいては、本体部10に対する第2係止部50(対象係止部40)の位置を固定することができる。従って、本実施形態では、第1ロック機構L1と第2ロック機構L2とによって、第1係止部30と第2係止部50との間における本体部10の位置を、合計で54段階(6段階×9段階)に亘って調節することが可能となっている。
【0058】
第1突起部Lb1は、上述のように、第1摺動体Sb1に設けられており、本実施形態では、第1摺動体Sb1に1つの第1突起部Lb1が設けられている。第1突起部Lb1は、第1凹部La1が凹む方向に突出するように形成されている。上述のように、本実施形態では、第1凹部La1が対向側外枠部10bを対向方向Xに貫通するように形成されているため、第1突起部Lb1は、第1摺動面SF1から対向方向Xにおける弦楽器Vの側に突出するように設けられている。そして、図9に示すように、第1突起部Lb1は、対向面F2よりも対向方向Xにおける弦楽器Vの側には突出しないように構成されている。換言すれば、第1突起部Lb1の突出端が、対向面F2よりも当接面F1の側に配置されるようになっている。これにより、対向面F2と弦楽器Vとを対向方向Xにおいて近づけるように両者の距離を調整する際に、第1突起部Lb1がその調整の妨げとならないようにすることができる。
【0059】
第1操作部Lc1は、第1摺動体Sb1に設けられている。本実施形態では、第1操作部Lc1は、第1摺動体Sb1における第1凹溝Sa1によって露出する部分に設けられている。換言すれば、第1操作部Lc1は、第1凹溝Sa1の内部に配置されるように、第1摺動体Sb1に設けられている。そして、第1操作部Lc1は、第1摺動面SF1から対向方向Xにおける弦楽器Vの側に突出するように設けられている。本例では、第1操作部Lc1は、対向面F2よりも対向方向Xにおける弦楽器Vの側には突出しないように構成されている。換言すれば、第1操作部Lc1の突出端が、対向面F2よりも当接面F1の側に配置されるようになっている。これにより、対向面F2と弦楽器Vとを対向方向Xにおいて近づけるように両者の距離を調整する際に、第1操作部Lc1がその調整の妨げとならないようにすることができる。また、図8に示すように、第1操作部Lc1は、対向方向X視において第1延在方向Y1と直交する方向に、第1突起部Lb1と並ぶように配置されている。そして、第1操作部Lc1と第1突起部Lb1とは、共に第1摺動面SF1に設けられている。これにより、第1操作部Lc1が当接面F1の側に指先で押圧されて操作されることによる対向方向Xの移動(揺動)動作を、第1突起部Lb1に効率的に伝達して第1突起部Lb1を対向方向Xに移動(揺動)させることができるようになっている。
【0060】
〔ロック機構の動作〕
第1ロック機構L1は、第1操作部Lc1が操作されることにより、第1突起部Lb1を第1凹部La1に対して移動させるように構成されている。ここでは、第1操作部Lc1(操作部Lc、第2操作部Lc2)が操作されることにより、第1突起部Lb1(突起部Lb、第2突起部Lb2)は、複数の第1凹部La1(凹部La、第2凹部La2)のいずれかの内部に突出して当該第1凹部La1(凹部La、第2凹部La2)に係合した突出状態と、第1凹部La1(凹部La、第2凹部La2)から抜け出る位置まで引退した引退状態とに、状態変更するように構成されている。図9では、第1突起部Lb1の突出状態が実線で示されており、第1突起部Lb1の引退状態が仮想線で示されている。
【0061】
そして、第1操作部Lc1(操作部Lc、第2操作部Lc2)が、当接面F1の側への指先での押圧が解除される形で操作されて第1突起部Lb1(突起部Lb、第2突起部Lb2)が突出状態となることで本体部10に対する第1摺動体Sb1(摺動体Sb、第2摺動体Sb2)の位置が固定された固定状態となり、第1操作部Lc1(操作部Lc、第2操作部Lc2)が、当接面F1の側への指先での押圧により操作されて第1突起部Lb1(突起部Lb、第2突起部Lb2)が引退状態となることで本体部10に対する第1摺動体Sb1(摺動体Sb、第2摺動体Sb2)の位置の固定が解除された固定解除状態となる。
【0062】
本実施形態では、第1操作部Lc1は、対向方向Xにおける対向面F2の側から当接面F1の側に向かって押し操作されるように構成されている。そして、第1操作部Lc1が押し操作されることにより、第1摺動体Sb1が弾性変形し、第1突起部Lb1が突出状態から引退状態に状態変更される。また、第1突起部Lb1が複数の第1凹部La1(凹部La、第2凹部La2)のいずれかに対応する位置にある状態で、第1操作部Lc1に対する押し操作が解除されることにより、第1摺動体Sb1の弾性力により、第1突起部Lb1が引退状態から突出状態に復帰する。
【0063】
2.その他の実施形態
次に、肩当て装置のその他の実施形態について説明する。
【0064】
(1)図10に示すように、肩当て装置100は、本体部10に設けられ、索状体80が係止される索状体係止部14を更に備えていてもよい。図示の例では、索状体係止部14は、本体部10における演奏者90の肩91(図1参照)に近い側の縁部に形成されている。この索状体係止部14に対して、索状体80の一端が係止され、弦楽器Vの第3側縁部V3に対して、索状体80の他端が係止される。第3側縁部V3は、弦楽器Vの本体の外縁部における、第1側縁部V1及び第2側縁部V2とは異なる部分である。なお、索状体80としては、伸縮しない紐を好適に用いることができる。
【0065】
(2)上記の実施形態では、図6に示すように、第1裏面33RFは、距離調整部Dによって対向方向Xにおける対向面F2と第1係止部30との距離を最も短く調整した状態で、第1本体部11(本体部10)と接触しないように構成されている例について説明した。しかし、このような構成に限定されることなく、図11に示すように、第1裏面33RFと第1本体部11(本体部10)とは、互いに接触可能に構成されていてもよい。すなわち、距離調整部Dによって対向方向Xにおける対向面F2(本体部10)と第1係止部30(第1裏面33RF)との距離が最も短く調整された状態で、対向面F2(本体部10)と第1連結係止部33(第1裏面33RF)とが、対向方向Xに接触するように構成されていてもよい。この構成によれば、演奏者90の肩91と弦楽器Vの裏板(底面)との間の距離を、より短く調整することが可能となる。
【0066】
(3)上記の実施形態では、第2連結部51は、対向面F2と第2係止部50との対向方向Xの距離を一定に維持するように構成されている例について説明した。しかし、このような例に限定されることなく、第2連結部51は、第1連結部31と同様に、対向面F2と第2係止部50との対向方向Xの距離を調整する距離調整部Dを有していてもよい。
【0067】
(4)上記の実施形態では、距離調整部Dが、雌雄一対のねじ部Da,Dbを有し、これら一対のねじ部Da,Dbの相対回転により、対向面F2と第1係止部30との対向方向Xの距離を調整する例について説明した。しかし、距離調整部Dの構成は、このようなものに限定されない。例えば、距離調整部Dは、上述した間隔調整部Sと同様に、第1係止部30に連結され、案内部に沿って案内されて移動する被案内部と、当該案内部の位置を複数個所のいずれかに固定するロック機構とを備えた構成としてもよい。
【0068】
(5)上記の実施形態では、第1連結部31及び第2連結部51の少なくとも一方が、対向方向X視における第1係止部30と第2係止部50との間隔を調整する間隔調整部Sを有する例について説明した。しかし、このような例に限定されることなく、第1連結部31及び第2連結部51の双方が、間隔調整部Sを有さず、第1係止部30と第2係止部50との間隔が一定に固定された構成であってもよい。
【0069】
(6)上記の実施形態では、凹部Laが、対向側外枠部10bを対向方向Xに貫通するように形成され、この凹部Laに係合可能である突起部Lbが、摺動面SFから対向方向Xにおける弦楽器Vの側に突出するように設けられている例について説明した。しかし、このような構成に限定されることなく、例えば、凹部Laは、対向側外枠部10bにおいて、凹溝Saから対向面F2に沿う方向に凹むように形成されていてもよい。その場合、突起部Lbは、当該凹部Laが凹む方向に突出するように摺動体Sbに設けられるとよい。
【0070】
(7)第1係止部30及び第2係止部50は、発泡樹脂やゴム等の弾性部材により被覆されているとよい。これによれば、第1係止部30及び第2係止部50が弦楽器Vに係止されることによって、弦楽器Vが傷つくことを抑止することができる。
【0071】
(8)本体部10は、透明或いは半透明の部材により構成されていてもよい。これによれば、本体部10の内部に設けられた間隔調整部Sやロック機構L等の機構を視認可能となり、意匠性を向上させることができる。同様に、第1係止部30及び第2係止部50、並びに、第1連結部31及び第2連結部51のいずれか一つ以上が透明或いは半透明の部材により構成されていてもよい。
【0072】
(9)なお、上述した各実施形態で開示された構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示された構成と組み合わせて適用することも可能である。その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で単なる例示に過ぎない。従って、本開示の趣旨を逸脱しない範囲内で、適宜、種々の改変を行うことが可能である。
【0073】
3.上記実施形態の概要
以下、上記において説明した肩当て装置の概要について説明する。
【0074】
本開示に係る肩当て装置は、
演奏者の肩に載せて使用される弦楽器に用いられる肩当て装置であって、
前記肩に当接する当接面、及び、前記当接面とは反対側を向き前記弦楽器に対向する対向面を有する本体部と、
前記弦楽器の第1側縁部に係止される第1係止部と、
前記弦楽器の第2側縁部に係止される第2係止部と、
前記第1係止部と前記本体部とを連結する第1連結部と、
前記第2係止部と前記本体部とを連結する第2連結部と、を備え、
前記第1側縁部と前記第2側縁部とは互いに反対側を向くと共に、前記第1側縁部は前記第2側縁部よりも前記演奏者の肩に近い側に位置し、
前記弦楽器と前記対向面とが対向する方向を対向方向として、
前記第1連結部は、前記対向面と前記第1係止部との前記対向方向の距離を調整する距離調整部を有し、
前記第1連結部は、前記本体部に連結された第1連結本体部と、前記第1係止部に連結された第1連結係止部と、を有し、
前記距離調整部は、前記第1連結本体部と前記第1連結係止部とを連結するように設けられていると共に、互いに螺合する雌雄一対のねじ部を有し、一対の前記ねじ部の相対回転によって前記第1連結本体部と前記第1連結係止部とを前記対向方向に相対移動させ、
前記距離調整部は、前記第1係止部が前記第1側縁部に係止された状態で、前記対向方向に沿う対向方向視で前記弦楽器と重複しない位置に配置されている。
【0075】
本構成によれば、距離調整部によって本体部の対向面と第1係止部との対向方向の距離を調整することができるため、演奏者の肩と弦楽器の裏板との間の距離を適切に調整することができる。そして、距離調整部は、第1係止部が弦楽器の第1側縁部に係止された状態で、対向方向視で弦楽器と重複しない位置に配置されているため、演奏者の肩と弦楽器の裏板との間に挟まれる位置に距離調整部が配置されることはない。そのため、本構成によれば、従来の構成のように演奏者の肩と弦楽器の裏板との間に挟まれる位置に距離調整部が配置されている場合に比べて、演奏者の肩と弦楽器の裏板との間の距離を小さくする側の調整範囲の制限を少なくすることができる。従って、演奏者の肩と弦楽器の裏板との間の距離の調整範囲を広く確保することが可能となっている。
また、本構成によれば、第1連結本体部と連結する本体部の対向面と、第1連結係止部に連結する第1係止部との距離を、一対のねじ部を相対回転させることによって調整することができる。従って、演奏者の肩と弦楽器の裏板との間の距離を微調整することができる。
【0076】
ここで、
前記距離調整部によって前記対向方向における前記対向面と前記第1係止部との距離が最も短く調整された状態で、前記対向面と前記第1連結係止部とが、前記対向方向に接触すると好適である。
【0077】
本構成によれば、演奏者の肩と弦楽器の裏板との間の距離を、本体部の対向方向の厚みに近い程度まで小さくすることが可能な構成を実現できる。
【0078】
また、本開示に係る肩当て装置は、
演奏者の肩に載せて使用される弦楽器に用いられる肩当て装置であって、
前記肩に当接する当接面、及び、前記当接面とは反対側を向き前記弦楽器に対向する対向面を有する本体部と、
前記弦楽器の第1側縁部に係止される第1係止部と、
前記弦楽器の第2側縁部に係止される第2係止部と、
前記第1係止部と前記本体部とを連結する第1連結部と、
前記第2係止部と前記本体部とを連結する第2連結部と、を備え、
前記第1側縁部と前記第2側縁部とは互いに反対側を向くと共に、前記第1側縁部は前記第2側縁部よりも前記演奏者の肩に近い側に位置し、
前記弦楽器と前記対向面とが対向する方向を対向方向として、
前記第1連結部は、前記対向面と前記第1係止部との前記対向方向の距離を調整する距離調整部を有し、
前記距離調整部は、前記第1係止部が前記第1側縁部に係止された状態で、前記対向方向に沿う対向方向視で前記弦楽器と重複しない位置に配置され、
前記第1連結部及び前記第2連結部の少なくとも一方は、前記対向方向視における前記第1係止部と前記第2係止部との間隔を調整する間隔調整部を有する。
【0079】
本構成によれば、距離調整部によって本体部の対向面と第1係止部との対向方向の距離を調整することができるため、演奏者の肩と弦楽器の裏板との間の距離を適切に調整することができる。そして、距離調整部は、第1係止部が弦楽器の第1側縁部に係止された状態で、対向方向視で弦楽器と重複しない位置に配置されているため、演奏者の肩と弦楽器の裏板との間に挟まれる位置に距離調整部が配置されることはない。そのため、本構成によれば、従来の構成のように演奏者の肩と弦楽器の裏板との間に挟まれる位置に距離調整部が配置されている場合に比べて、演奏者の肩と弦楽器の裏板との間の距離を小さくする側の調整範囲の制限を少なくすることができる。従って、演奏者の肩と弦楽器の裏板との間の距離の調整範囲を広く確保することが可能となっている。
本構成によれば、対向方向視での弦楽器の形状や寸法、さらに、演奏者の肩に当接する位置を演奏者の好みに合せて、第1係止部と第2係止部との間隔を調節して弦楽器の所望の位置に第1係止部及び第2係止部を係止させることができる。これより、演奏者の好みに合せて、弦楽器に対する肩当て装置の位置を調節することができる。
【0080】
また、
前記第1係止部と前記第2係止部とのうちの対象とする方を対象係止部として、
前記間隔調整部は、前記本体部の前記対向面に形成されて前記本体部の延在方向に沿って延びる凹溝と、前記対象係止部に連結されると共に前記凹溝に収容されて当該凹溝に沿って摺動する摺動体と、前記本体部に対する前記摺動体の位置を固定するロック機構と、を備えると好適である。
【0081】
本構成によれば、摺動体を本体部の延在方向に沿って摺動させることができる。これにより、当該摺動体に連結する対象係止部を延在方向に沿って移動させることができ、その結果、第1係止部と第2係止部との間隔を、本体部の延在方向に調整することができる。
また、ロック機構によって摺動体の位置を固定することで、第1係止部と第2係止部との間隔が、例えば振動などにより、使用者の意図に反して変更されることを抑止できる。
【0082】
また、
前記ロック機構は、前記凹溝に隣接して配置されると共に前記凹溝に沿って並んで形成された複数の凹部と、前記摺動体に設けられて複数の前記凹部が設けられた側に向かって突出する形状に形成された突起部と、前記突起部を操作する操作部と、を有し、
前記突起部は、複数の前記凹部のいずれかの内部に突出して当該凹部に係合した突出状態と、前記凹部から抜け出る位置まで引退した引退状態とに、状態変更するように構成され、
前記操作部が操作されて前記突起部が前記突出状態となることで前記本体部に対する前記摺動体の位置が固定された固定状態となり、前記操作部が操作されて前記突起部が前記引退状態となることで前記本体部に対する前記摺動体の位置の固定が解除された固定解除状態となると好適である。
【0083】
本構成によれば、凹部に対する突起部の係合によって本体部に対する摺動体の位置が固定される。これにより、第1係止部と第2係止部との間隔を固定することができる。そして、本構成によれば、突起部が係合する対象について、凹溝に沿って並んで形成された複数の凹部のうちいずれかを選択できるため、第1係止部と第2係止部との間隔を、複数の凹部の数だけ、段階的に変更しつつ固定できる。また、対向面の凹溝に隣接して配置された凹部に、摺動体に設けられた突起部を係合させる構成としているので、これらが本体部の対向面から弦楽器側へ突出しない構成とすることが容易となっている。従って、演奏者の肩と弦楽器の裏板との間の距離を小さくする場合にロック機構がその妨げにならないようにすることが容易となっている。
【0084】
また、本開示に係る肩当て装置は、
演奏者の肩に載せて使用される弦楽器に用いられる肩当て装置であって、
前記肩に当接する当接面、及び、前記当接面とは反対側を向き前記弦楽器に対向する対向面を有する本体部と、
前記弦楽器の第1側縁部に係止される第1係止部と、
前記弦楽器の第2側縁部に係止される第2係止部と、
前記第1係止部と前記本体部とを連結する第1連結部と、
前記第2係止部と前記本体部とを連結する第2連結部と、を備え、
前記本体部に設けられ、索状体が係止される索状体係止部を更に備え、
前記第1側縁部と前記第2側縁部とは互いに反対側を向くと共に、前記第1側縁部は前記第2側縁部よりも前記演奏者の肩に近い側に位置し、
前記弦楽器と前記対向面とが対向する方向を対向方向として、
前記第1連結部は、前記対向面と前記第1係止部との前記対向方向の距離を調整する距離調整部を有し、
前記距離調整部は、前記第1係止部が前記第1側縁部に係止された状態で、前記対向方向に沿う対向方向視で前記弦楽器と重複しない位置に配置されている。
【0085】
本構成によれば、距離調整部によって本体部の対向面と第1係止部との対向方向の距離を調整することができるため、演奏者の肩と弦楽器の裏板との間の距離を適切に調整することができる。そして、距離調整部は、第1係止部が弦楽器の第1側縁部に係止された状態で、対向方向視で弦楽器と重複しない位置に配置されているため、演奏者の肩と弦楽器の裏板との間に挟まれる位置に距離調整部が配置されることはない。そのため、本構成によれば、従来の構成のように演奏者の肩と弦楽器の裏板との間に挟まれる位置に距離調整部が配置されている場合に比べて、演奏者の肩と弦楽器の裏板との間の距離を小さくする側の調整範囲の制限を少なくすることができる。従って、演奏者の肩と弦楽器の裏板との間の距離の調整範囲を広く確保することが可能となっている。
また、本構成によれば、索状体を利用して、肩当て装置が弦楽器に対して外れ難い構成とすることができる。例えば、索状体における、索状体係止部に係止された部分とは異なる部分を弦楽器に係止させることで、第1係止部と第2係止部と索状体とによって肩当て装置を弦楽器の3箇所に係止することができる。これにより、肩当て装置を弦楽器から外れ難くすることができる。
【0086】
また、本開示に係る肩当て装置は、
演奏者の肩に載せて使用される弦楽器に用いられる肩当て装置であって、
前記肩に当接する当接面、及び、前記当接面とは反対側を向き前記弦楽器に対向する対向面を有する本体部と、
前記弦楽器の第1側縁部に係止される第1係止部と、
前記弦楽器の第2側縁部に係止される第2係止部と、
前記第1係止部と前記本体部とを連結する第1連結部と、
前記第2係止部と前記本体部とを連結する第2連結部と、を備え、
前記第1側縁部と前記第2側縁部とは互いに反対側を向くと共に、前記第1側縁部は前記第2側縁部よりも前記演奏者の肩に近い側に位置し、
前記弦楽器と前記対向面とが対向する方向を対向方向として、
前記当接面の全体が前記対向方向において前記肩側に凸となる湾曲面状に形成され、
前記第1連結部は、前記対向面と前記第1係止部との前記対向方向の距離を調整する距離調整部を有し、
前記距離調整部は、前記第1係止部が前記第1側縁部に係止された状態で、前記対向方向に沿う対向方向視で前記弦楽器と重複しない位置に配置されている。
【0087】
本構成によれば、距離調整部によって本体部の対向面と第1係止部との対向方向の距離を調整することができるため、演奏者の肩と弦楽器の裏板との間の距離を適切に調整することができる。そして、距離調整部は、第1係止部が弦楽器の第1側縁部に係止された状態で、対向方向視で弦楽器と重複しない位置に配置されているため、演奏者の肩と弦楽器の裏板との間に挟まれる位置に距離調整部が配置されることはない。そのため、本構成によれば、従来の構成のように演奏者の肩と弦楽器の裏板との間に挟まれる位置に距離調整部が配置されている場合に比べて、演奏者の肩と弦楽器の裏板との間の距離を小さくする側の調整範囲の制限を少なくすることができる。従って、演奏者の肩と弦楽器の裏板との間の距離の調整範囲を広く確保することが可能となっている。
また、本構成によれば、演奏者の肩に対して当接面の一部のみを当接させることができるため、演奏者の肩に対して、比較的自由に本体部を揺動させることが可能となる。これにより例えば、当接面の全体が対向方向視において肩の側に凹となる湾曲面状に形成されることにより当接面の全体が肩から上胸にかけて当接するように構成されている場合に比べて、肩当て装置に支持された弦楽器を、肩当て装置を装着しない状態で弦楽器を弾くのと同じように、左手によって行う肩に対する弦楽器の微妙な角度操作を容易に行うことができ、演奏者による弦楽器の操作性を向上させることができる。
【0088】
また、本開示に係る肩当て装置は、
演奏者の肩に載せて使用される弦楽器に用いられる肩当て装置であって、
前記肩に当接する当接面、及び、前記当接面とは反対側を向き前記弦楽器に対向する対向面を有する本体部と、
前記弦楽器の第1側縁部に係止される第1係止部と、
前記弦楽器の第2側縁部に係止される第2係止部と、
前記第1係止部と前記本体部とを連結する第1連結部と、
前記第2係止部と前記本体部とを連結する第2連結部と、を備え、
前記第1側縁部と前記第2側縁部とは互いに反対側を向くと共に、前記第1側縁部は前記第2側縁部よりも前記演奏者の肩に近い側に位置し、
前記弦楽器と前記対向面とが対向する方向を対向方向として、
前記本体部は、前記対向方向に沿う対向方向視において前記肩から離れる側に凸となるアーチ状に形成され、
前記第1連結部は、前記対向面と前記第1係止部との前記対向方向の距離を調整する距離調整部を有し、
前記距離調整部は、前記第1係止部が前記第1側縁部に係止された状態で、前記対向方向視で前記弦楽器と重複しない位置に配置されている。
【0089】
本構成によれば、距離調整部によって本体部の対向面と第1係止部との対向方向の距離を調整することができるため、演奏者の肩と弦楽器の裏板との間の距離を適切に調整することができる。そして、距離調整部は、第1係止部が弦楽器の第1側縁部に係止された状態で、対向方向視で弦楽器と重複しない位置に配置されているため、演奏者の肩と弦楽器の裏板との間に挟まれる位置に距離調整部が配置されることはない。そのため、本構成によれば、従来の構成のように演奏者の肩と弦楽器の裏板との間に挟まれる位置に距離調整部が配置されている場合に比べて、演奏者の肩と弦楽器の裏板との間の距離を小さくする側の調整範囲の制限を少なくすることができる。従って、演奏者の肩と弦楽器の裏板との間の距離の調整範囲を広く確保することが可能となっている。
また、本構成によれば、本体部を演奏者の肩周辺の形状に適合した形状とすることができる。
【0090】
ここで、
前記第2連結部は、前記対向面と前記第2係止部との前記対向方向の距離を一定に維持するように構成されていると好適である。
【0091】
第1係止部及び第2係止部のうち演奏者の肩に近い側において、対向面との対向方向の距離を調整できれば、演奏者の肩と弦楽器の裏板との間の距離の調整を必要な範囲で行うことができる。本構成によれば、第1連結部が有する距離調整部によって演奏者の肩と弦楽器の裏板との間の距離を調整することができる構成としつつ、第2連結部については、対向面と第2係止部との対向方向の距離を一定に維持する構成として、第2連結部の構成の簡略化を図ることができる。従って、本構成によれば、演奏者の肩と弦楽器の裏板との間の距離を調整可能な構成を備えつつ、装置全体として構成を簡略化することができる。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本開示に係る技術は、弦楽器の裏板の外縁部に装着(係止)して演奏者の肩に載せて使用される弦楽器用の肩当て装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0093】
100 :肩当て装置
10 :本体部
14 :索状体係止部
30 :第1係止部
31 :第1連結部
32 :第1連結本体部
32c :雄ねじ部
33 :第1連結係止部
40 :対象係止部
50 :第2係止部
51 :第2連結部
52 :第2連結本体部
53 :第2連結係止部
80 :索状体
90 :演奏者
91 :肩
92 :首
D :距離調整部
Da :ねじ部
Db :ねじ部
F1 :当接面
F2 :対向面
L :ロック機構
L1 :第1ロック機構
L2 :第2ロック機構
La :凹部
La1 :第1凹部
La2 :第2凹部
Lb :突起部
Lb1 :第1突起部
Lb2 :第2突起部
Lc :操作部
Lc1 :第1操作部
Lc2 :第2操作部
S :間隔調整部
S1 :第1間隔調整部
S2 :第2間隔調整部
Sa :凹溝
Sa1 :第1凹溝
Sa2 :第2凹溝
Sb :摺動体
Sb1 :第1摺動体
Sb2 :第2摺動体
V :弦楽器
V1 :第1側縁部
V2 :第2側縁部
X :対向方向
Y1 :第1延在方向
Y2 :第2延在方向
【要約】
【課題】演奏者の肩と弦楽器の裏板との間の距離の調整範囲を広く確保することが可能な肩当て装置を実現する。
【解決手段】演奏者90の肩91に載せて使用される弦楽器Vに用いられる肩当て装置100であって、肩91に当接する当接面F1、及び、当接面F1とは反対側を向き弦楽器Vに対向する対向面F2を有する本体部10と、弦楽器Vの第1側縁部V1に係止される第1係止部30と、弦楽器Vの第2側縁部V2に係止される第2係止部50と、第1係止部30と本体部10とを連結する第1連結部31と、を備え、弦楽器Vと対向面F2とが対向する方向を対向方向Xとして、第1連結部31は、対向面F2と第1係止部30との対向方向Xの距離を調整する距離調整部Dを有し、距離調整部Dは、第1係止部30が第1側縁部V1に係止された状態で、対向方向Xに沿う対向方向X視で弦楽器Vと重複しない位置に配置されている。
【選択図】図2
図1
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