特許第6661008号(P6661008)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6661008化学設備における表面用コーティング方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6661008
(24)【登録日】2020年2月13日
(45)【発行日】2020年3月11日
(54)【発明の名称】化学設備における表面用コーティング方法
(51)【国際特許分類】
   B05D 7/24 20060101AFI20200227BHJP
   C09D 163/00 20060101ALI20200227BHJP
   B05D 7/00 20060101ALI20200227BHJP
   B05D 7/14 20060101ALI20200227BHJP
   B05D 7/22 20060101ALI20200227BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20200227BHJP
【FI】
   B05D7/24 302U
   B05D7/24 301V
   C09D163/00
   B05D7/00 C
   B05D7/14 Z
   B05D7/22 P
   C09D7/63
【請求項の数】14
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2018-519940(P2018-519940)
(86)(22)【出願日】2016年10月20日
(65)【公表番号】特表2018-537270(P2018-537270A)
(43)【公表日】2018年12月20日
(86)【国際出願番号】EP2016075152
(87)【国際公開番号】WO2017068015
(87)【国際公開日】20170427
【審査請求日】2018年6月15日
(31)【優先権主張番号】15191270.6
(32)【優先日】2015年10月23日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】500286643
【氏名又は名称】アクゾ ノーベル コーティングス インターナショナル ビー ヴィ
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100128761
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 恭子
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】キャメロン,コリン
(72)【発明者】
【氏名】ライト, アンソニー コリン
(72)【発明者】
【氏名】アンサンク,マシュー ジョージ
(72)【発明者】
【氏名】ウッド,ジョン
【審査官】 横島 隆裕
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−248100(JP,A)
【文献】 特開2004−115729(JP,A)
【文献】 再公表特許第2006/090794(JP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05D 1/00−7/26
C09D 1/00−10/00,101/00−201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学設備の金属またはコンクリート表面にコーティングを施用するための方法であって、
− 第1液がエポキシ樹脂を含みかつ第2液がエポキシ樹脂用アミン硬化剤を含む2液型コーティング組成物を準備するステップであり、コーティング組成物が式
【化1】
(式中、Xは、炭素原子1〜24個を有する有機基であり、炭素−ホウ素結合を介してホウ素原子に結合しており、Yは、炭素原子2〜16個を有する少なくとも2価の有機基である)
の有機ホウ素化合物をさらに含む、ステップと、
− 第1液と第2液とを合わせることによってコーティング組成物を形成するステップと、
− コーティング組成物を化学設備の表面に施用することによってコーティング層を形成するステップと、
− コーティング層を−10〜50℃の範囲の温度で硬化させるステップと
を含む方法。
【請求項2】
コーティング層が、50℃超の温度で後硬化ステップにさらに供される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
化学設備が、煙突、パイプ、またはタンク、積荷タンクもしくは貯蔵タンクである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
有機ホウ素化合物が、
− 硬化剤(複数可)中の活性水素の、組成物中に存在するエポキシ基に対する当量比が、1.00:1.00以上である場合、組成物中に存在する有機ホウ素化合物の量が、組成物中に存在するエポキシ基のモル量の1〜50%に等しい、および
− 硬化剤(複数可)中の活性水素の、組成物中に存在するエポキシ基に対する当量比が、1.00:1.00未満である場合、組成物中に存在する有機ホウ素化合物の量が、硬化剤(複数可)中の活性水素のモル量の1〜50%に等しいような量で存在する、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
Xが、C1〜C8アルキル基およびC6〜C8アリール基から選択される、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
Yが、C2〜C8アルキレン基から選択される、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
Yが、C2〜C5アルキレン基から選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
コーティング組成物が、10重量%未満のRDGE(レゾルシノールジグリシジルエーテル)を含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
コーティング組成物が、2重量%未満のRDGE(レゾルシノールジグリシジルエーテル)を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
硬化コーティング組成物のライニングを施用された金属またはコンクリート表面を備える化学設備であって、コーティング組成物が、エポキシ樹脂とエポキシ樹脂用アミン硬化剤とを含むコーティング組成物に由来し、コーティング組成物が、式
【化2】
(式中、Xは、炭素原子1〜24個を有する有機基であり、炭素−ホウ素結合を介してホウ素原子に結合しており、Yは、炭素原子2〜16個を有する少なくとも2価の有機基である)
の有機ホウ素化合物をさらに含む化学設備。
【請求項11】
煙突、パイプ、またはタンク、積荷タンクもしくは貯蔵タンクである、請求項10に記載の化学設備。
【請求項12】
Yが、C2〜C8アルキレン基から選択される、請求項10または11に記載の化学設備。
【請求項13】
Yが、C2〜C5アルキレン基から選択される、請求項12に記載の化学設備。
【請求項14】
化学設備の金属またはコンクリート表面にコーティングを施用するのに適した液状コーティング組成物であって、第1液がエポキシ樹脂を含みかつ第2液がエポキシ樹脂用アミン硬化剤を含む2液型コーティング組成物であり、式
【化3】
(式中、Xは、炭素原子1〜24個を有する有機基であり、炭素−ホウ素結合を介してホウ素原子に結合しており、Yは、炭素原子2〜16個を有する少なくとも2価の有機基である)
の有機ホウ素化合物をさらに含む液状コーティング組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学設備の金属またはコンクリート表面にコーティングを施用するための方法に関する。本発明はまた、化学設備における金属またはコンクリート表面用のコーティングとして使用するのに適した組成物、および前記コーティングを施用された化学設備に関する。
【背景技術】
【0002】
化学設備では、金属およびコンクリート表面は、多様な化合物と接触する。こうした表面は、一般に、2つの目的に適うコーティングで施用される。第1番目として、コーティングは、問題になっている化学薬品から表面を保護することが意図される。第2番目として、コーティングは、装置(例えば、タンク)の表面の、例えば、腐食による汚染から化学薬品を保護することである。広い意味では、本出願で使用されるコーティングは、広範囲の化合物との相互作用に対処可能であるべきである。加えて、コーティングは、高温および高圧の条件に対処可能であるべきである。
【0003】
追加の問題点は、2つ以上の型の化学薬品と時系列的に接触する表面の場合に発生する。例えば、陸上または海上で、液体バルクの化学薬品を貯蔵または輸送するのに使用される貯蔵または輸送タンクがそうしたケースである。多様な型の化学薬品と接触するコーティングに関する重要な特長は、多様な化学薬品との相互作用であり、その目的は、続いての化学薬品による汚染を回避することである。したがって、一方では、表面と接触するバルク化学薬品の吸収が発生する場合があり、この吸収を最小化すべきである。他方では、化学薬品が、コーティングによって吸収される場合、化学薬品は、通常の洗浄プロセスによって容易に除去されるべきである。これは、高い耐化学薬品性を有するコーティングとして記述することができ、耐化学薬品性という用語は、コーティングが、フィルムの完全性を維持しつつ、化学薬品を吸収し、続いて脱着する傾向を指す。
【0004】
国際公開第2012/119968号パンフレットには、エポキシ樹脂、硬化剤、促進剤または促進剤混合物、および1種または複数のフィラーまたは顔料の混合物を含むコーティング組成物であって、エポキシ樹脂混合物が、60〜80重量%のRDGEエポキシ樹脂と20〜40重量%のエポキシノボラック樹脂とを含むコーティング組成物が記載されている。コーティング組成物は、タンクライニング組成物として記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本参照に記載されたコーティング組成物は、タンクライニングコーティングとして使用される場合、良好な特性を示すが、化学設備の金属またはコンクリート表面上にコーティングを施用するのに適しており、広範囲の応用および高い耐化学薬品性を有する代替のコーティング組成物に対する必要性が依然として存在する。
【0006】
本発明は、かかるコーティング組成物を提供する。本発明はまた、化学設備のコンクリートまたは金属表面に硬化コーティング層を施用するための方法およびかかる層を施用された表面を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施形態では、本発明は、化学設備の金属またはコンクリート表面にコーティングを施用するための方法であって、
− 第1液がエポキシ樹脂を含みかつ第2液がエポキシ樹脂用アミン硬化剤を含む2液型コーティング組成物を施用するステップであり、コーティング組成物が式
【0008】
【化1】
(式中、Xは、炭素原子1〜24個を有する有機基であり、炭素−ホウ素結合を介してホウ素原子に結合しており、Yは、炭素原子2〜16個を有する少なくとも2価の有機基である)
の有機ホウ素化合物をさらに含むステップと、
− 第1液と第2液とを合わせることによってコーティング組成物を形成するステップと、
− コーティング組成物を化学設備の表面に適用することによってコーティング層を形成するステップと、
− コーティング層を−10〜50℃の範囲の温度で硬化させるステップと
を含む方法に関する。
【0009】
別の実施形態では、本発明は、硬化コーティング組成物のライニングを施用された金属またはコンクリート表面を備える化学設備であって、コーティング組成物が、エポキシ樹脂とエポキシ樹脂用アミン硬化剤とを含むコーティング組成物に由来し、コーティング組成物が、式
【0010】
【化2】
(式中、Xは、炭素原子1〜24個を有する有機基であり、炭素−ホウ素結合を介してホウ素原子に結合しており、Yは、炭素原子2〜16個を有する少なくとも2価の有機基である)
の有機ホウ素化合物をさらに含む化学設備に関する。
【0011】
さらなる実施形態では、本発明は、化学設備の金属またはコンクリート表面にコーティングを施用するのに適したコーティング組成物であって、第1液がエポキシ樹脂を含みかつ第2液がエポキシ樹脂用アミン硬化剤を含む2液型コーティング組成物であり、コーティング組成物が式
【0012】
【化3】
(式中、Xは、炭素原子1〜24個を有する有機基であり、炭素−ホウ素結合を介してホウ素原子に結合しており、Yは、炭素原子2〜16個を有する少なくとも2価の有機基である)
の有機ホウ素化合物をさらに含むコーティング組成物に関する。
【0013】
本発明によるコーティング組成物は、化学設備、特に、煙突、パイプ、および貯蔵タンクや積荷タンクなどのタンクにおける金属およびコンクリート表面のコーティングにおいて特に良好な結果を示すことが見出された。
【0014】
本発明およびその具体的な実施形態のさらなる利点は、さらなる明細書から明白になる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明で使用されるコーティング組成物は、式
【0016】
【化4】
(式中、Xは、炭素原子1〜24個を有する有機基であり、炭素−ホウ素結合を介してホウ素原子に結合しており、Yは、炭素原子2〜16個を有する少なくとも2価の有機基である)
の有機ホウ素化合物を含む。
【0017】
上式の有機ホウ素化合物は、少なくとも2つのヒドロキシル基を有する化合物によるボロン酸のエステル化によって調製することができる。少なくとも2つのヒドロキシル基を有する適切な化合物の例として、エチレングリコール、グリセロール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、3−フェノキシ−1,2−プロパンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、ペンタエリトリトール、ジペンタエリトリトール、ジトリメチロールプロパン、プロポキシル化ペンタエリトリトール、エトキシル化トリメチロールプロパン、ジメチロールプロピオン酸、およびその混合物が挙げられる。
【0018】
一般に、少なくとも2つのヒドロキシル基を有する化合物であって、少なくとも2つのヒドロキシル基が炭素原子2または3個によって分離されている化合物を使用することが好ましい。
【0019】
一実施形態では、炭素原子1〜24個を有する有機基Xは、アルキル基またはアリール基である。アルキルという用語には、直鎖および分枝アルキル基が含まれ、また、シクロアルキル基も包含される。アリールという用語にはまた、アルキル置換アリール基、およびアリール置換アルキル基も包含される。アルキルまたはアリール基Xはまた、酸素原子、窒素原子、イオウ原子、またはリン原子を含む基で置換することができる。
【0020】
一実施形態では、有機基Xは、C1〜C8アルキル基およびC6〜C8アリール基から選択される。
【0021】
一実施形態では、少なくとも2価である有機基Yは、C2〜C8アルキレン基、好ましくは、C2〜C5ルキレン基から選択される。
【0022】
適切な有機ホウ素化合物の例として、以下の式:
【0023】
【化5】
の化合物が挙げられる。
【0024】
【0025】
【化6】
(式中、Xは、炭素原子1〜24個を有する有機基であり、炭素−ホウ素結合を介してホウ素原子に結合しており、Yは、炭素原子2〜16個を有する少なくとも2価である有機基である)
の有機ホウ素化合物の混合物を使用することができる。
【0026】
有機ホウ素化合物の量は、以下の考察によって管理することができる。アミン基が、エポキシ官能基を開環する場合、ヒドロキシル基が生成し、それが、アミン基の窒素原子に対してβである様式で配置される。理論に拘泥するつもりはないが、1,2−アミノアルコール基と有機ホウ素化合物との間の相互作用は、コーティング組成物の耐化学薬品性を驚くほど改善する反応をもたらすと考えられている。「耐化学薬品性」とは、コーティングが、フィルムの完全性を維持しつつ、化学薬品、溶媒または他の液体積荷を吸収し、続いて脱着する傾向を意味する。
【0027】
したがって、コーティング組成物に施用される有機ホウ素化合物の量は、エポキシ基と、組成物中に存在するアミン硬化剤との間の反応から形成される1,2−アミノアルコール基の量に関係する。エポキシ−アミン反応から生成するすべての単一アルコール基に対して1分子の有機ホウ素化合物を提供することは必要でない。
【0028】
有機ホウ素化合物の適切な量は、一実施形態では、以下のように計算することができる:
− 硬化剤(複数可)中の活性水素の、組成物中に存在するエポキシ基に対する当量比が、1.00:1.00以上である場合、組成物中に存在する有機ホウ素化合物の量は、組成物中に存在するエポキシ基のモル量の1〜50%、より好ましくは、2〜20%、最も好ましくは、5〜15%に等しい、および
− 硬化剤(複数可)中の活性水素の、組成物中に存在するエポキシ基に対する当量比が、1.00:1.00未満である場合、組成物中に存在する有機ホウ素化合物の量は、硬化剤(複数可)中の活性水素のモル量の1〜50%、より好ましくは、2〜20%、最も好ましくは、5〜15%に等しい。
【0029】
あるいは、別の実施形態では、有機ホウ素化合物の適切な量は、以下のように計算することができる:
− 硬化剤(複数可)中の活性水素の、組成物中に存在するエポキシ基に対する当量比が、1.00:1.00以上である場合、組成物中に存在する有機ホウ素化合物の量は好ましくは、組成物中に存在するエポキシ基のモル量の1〜50%、より好ましくは、2〜20%、最も好ましくは、5〜15%に等しい、
− 硬化剤(複数可)中の活性水素の、組成物中に存在するエポキシ基に対する当量比が、1.00:1.00未満である場合、組成物中に存在する有機ホウ素化合物の量は好ましくは、硬化剤(複数可)中の活性水素のモル量の1〜50%、好ましくは、2〜20%、最も好ましくは、5〜15%に等しい。
【0030】
その活性水素を含む硬化剤(複数可)およびエポキシ基含有化合物は以下でより詳細に議論される。
【0031】
コーティング組成物は、少なくとも1種のエポキシ樹脂を含む。適切なエポキシ樹脂は、当技術分野で公知である。適切なエポキシ樹脂には、例えば、フェノールノボラックエポキシ樹脂、ビスフェノールFエポキシ樹脂、およびレゾルシノールジグリシジルエーテル(RDGE)エポキシ樹脂が包含される。他の適切なエポキシ樹脂として、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル、ビスフェノールAノボラック樹脂、水素化ビスフェノールA、またはビスフェノールS、上記ビスフェノールの任意のものの縮合または拡張グリシジルエーテル、ビスフェノールの水素化縮合グリシジルエーテル、ジシクロペンタジエン系エポキシ樹脂;トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、グリセロールトリグリシジルエーテル、ペンタエリトリトールテトラグリシジルエーテル、ジペンタエリトリトールポリグリシジルエーテル、ブタンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ヘキサンジオールジグリシジルエーテルおよびソルビトールグリシジルエーテルなどの多価アルコールのポリグリシジルエーテル;エポキシ化油、ジエポキシオクタンおよびエポキシ化ポリブタジエンのようなエポキシ化合物が挙げられる。
【0032】
一実施形態では、エポキシ樹脂は、芳香族エポキシ樹脂、特に、フェノールノボラックエポキシ樹脂を含む。適切なフェノールノボラックエポキシ樹脂は、当技術分野では周知であり、さらなる説明を要しない。本発明にしたがって組成物中で使用できるフェノールノボラックエポキシ樹脂の例として、DEN 425、DEN 431およびDEN 438(DOW Chemicalsより)、Epon 154、Epon 160、Epon 161およびEpon 162(Momentive Performance Chemicalsより)、ならびにEpalloy 8250(Emerald Chemical Co.より)が挙げられる。こうしたエポキシ化合物は、165〜185g/当量の範囲のエポキシ当量を有する。エポキシ当量は、1モル(または1当量)のエポキシ官能基を得るのに必要なエポキシ樹脂重量である。使用できる他のエポキシ樹脂として、Epon 164やEpon 165(Momentive Performance Chemicalsより)などのエポキシクレゾールノボラック樹脂、または樹脂のEpon SU範囲などのビスフェノールAエポキシノボラック樹脂が挙げられる。
【0033】
一実施形態では、エポキシ樹脂は、芳香族エポキシ樹脂、特に、ビスフェノールFエポキシ樹脂を含む。適切なビスフェノールFエポキシ樹脂は、当技術分野では周知であり、さらなる説明を要しない。本発明にしたがって組成物中で使用できるビスフェノールFエポキシ樹脂の例として、DER 354(DOW Chemicalsより)またはEpikote 862(Momentive performance Chemicalsより)が挙げられる。
【0034】
一実施形態では、エポキシ樹脂は、RDGEエポキシ樹脂を含む。本発明にしたがって組成物中で使用できるRDGEエポキシ樹脂は、通常、低粘度エポキシ化合物であり、エポキシ当量は、110〜140g/当量、より好ましくは、120〜135g/当量である。
【0035】
RDGEエポキシ樹脂は、非常に高い耐化学薬品性を有するコーティングを製造するのに非常に魅力的であるが、RDGEの使用なしで済ませることが好ましい場合がある。その理由は、このエポキシ樹脂が非常に激しい増感特性を有するからである。したがって、一実施形態では、コーティング組成物は、エポキシ樹脂の全量に対して計算して、50重量%未満のRDGEエポキシ樹脂、好ましくは、20重量%未満、より好ましくは、10重量%未満のRDGE、さらには、5重量%未満のRDGE、例えば、2重量%未満のRDGEを含む。コーティング組成物が基本的にRDGEを含まないことが好ましい場合もあり、これはRDGEを、意図的に、組成物に添加しないことを意味する。
【0036】
非常に良好な耐化学薬品性を示しつつ、上記されたように比較的少量のRDGEを含む、または基本的にRDGEを含まない組成物を調製できることが、本発明の特定の特長、および驚くべきであり予想外である発見である。
【0037】
上のいずれかのエポキシ樹脂のブレンドも互いに合わせて使用できるが、非常に高い耐化学薬品性が必要である場合、エポキシフェノールノボラック樹脂またはビスフェノールFエポキシ樹脂が好ましい。したがって、エポキシフェノールノボラック樹脂またはビスフェノールFエポキシ樹脂が、エポキシ樹脂によって提供された全エポキシ基に対して計算してエポキシ樹脂の少なくとも50%を占めることが好ましい。より好ましくは、エポキシフェノールノボラック樹脂またはビスフェノールFエポキシ樹脂は、エポキシ樹脂によって提供された全エポキシ基に対して計算してエポキシ樹脂の少なくとも60%、より特に、少なくとも70%、さらに特に、少なくとも80%を占める。
【0038】
とりわけ、エポキシ樹脂を含むいずれのコーティング組成物の溶媒含量を最小化するために、エポキシフェノールノボラック樹脂またはビスフェノールFエポキシ樹脂は、使用される場合、例えば、エポキシフェノールノボラック樹脂またはビスフェノールFエポキシ樹脂の重量に対して、20重量%未満、好ましくは、10重量%未満の低い溶媒含量を有することが好ましい。エポキシフェノールノボラック樹脂またはビスフェノールFエポキシ樹脂が溶媒を含まないことが特に好ましい。
【0039】
コーティング組成物は、エポキシ樹脂用のアミン硬化剤を含む。エポキシ樹脂は、本来、求電子性であるので、通常、求核剤と反応する。本発明で使用される硬化剤は、エポキシ基と反応する求核官能基、本発明の場合、アミン基を含む。エポキシドと求核剤(求核官能基)の開環反応中、水素原子は、求核剤からエポキシドの酸素原子に移行する。この移行水素原子は、「活性水素」と呼ばれる。反応は以下のように説明される:
【0040】
【化7】
【0041】
したがって、求核種の当量を活性水素当量で見積もることは普通である。これは、単純に、開環エポキシに移行可能な水素原子1モル(または1「当量」)を得るのに必要な求核種の重量である。したがって、アミン硬化剤の場合、アミン硬化剤の活性水素当量は、1モル(または1「当量」)のN−H基を与える硬化剤重量である。例えば、第1級アミン硬化剤は、2つのエポキシド基と反応できるので、2つの活性水素を有する。
【0042】
本発明で使用されるアミン硬化剤は、分子当り平均少なくとも2つの活性水素を有する。アミン基は、第1級および/または第2級アミン基であってよい。2つ以上の窒素原子を有するアミン硬化剤は、ポリアミンと呼ぶことができる。
【0043】
適切なポリアミン硬化剤の例は、エチレンジアミン、N−(2−ヒドロキシエチル)エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、テトラエチレンペンタミン、ならびにアミドアミンおよびアミン官能性ポリアミド硬化剤をもたらすこうしたポリアミン硬化剤を脂肪酸および脂肪酸二量体と反応させることによって通常製造される硬化剤である。かかる硬化剤の例は、Society for Protective Coatingsから出版されたClive H. Hareによる「Protective Coatings, Fundamentals of Chemistry and Composition」(ISBN 0-938477-90-0)に記載されており、参照により本明細書に組み込まれている。さらなるポリアミン硬化剤は、ジシアンジアミド、イソホロンジアミン、m−キシリレンジアミン、m−フェニレンジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタン、N−アミノエチルピペラジン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジエチル−ジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、およびこうしたポリアミン硬化剤を使用して製造されたMannich系硬化剤である。任意のこうしたポリアミン硬化剤の市販級品質の硬化剤を使用することができ、例えば、Ancamine 2264(Air Productsより)は、主としてビス(4−アミノシクロヘキシル)メタンを含む市販品質の硬化剤である。アミン硬化剤の例は、Society for Protective Coatingsから出版されたClive H. Hareによる「Protective Coatings, Fundamentals of Chemistry and Composition」(ISBN 0-938477-90-0)、LLCから出版されたH LeeおよびK Nevilleによる「Epoxy Resins」(ISBN 978-1258243180)、Hanserから出版されD StoyeおよびW Freitagによって編纂された「Resins for Coatings」(ISBN 978-1569902097)に記載されており、参照により本明細書に組み込まれている。
【0044】
任意のこうしたアミンの付加物もまた使用することができる。かかる付加物は、アミンとケイ素不含エポキシ樹脂やエポキシ官能性反応希釈剤、例えば、ブチルグリシジルエーテルなどの適切な反応性化合物との反応によって調製することができる。こうした付加物によって、硬化剤の遊離アミン含量が低減されるので、低温および/または高湿度という条件下での使用に対してこうした付加物がより適切になる。エポキシ官能性反応希釈剤のさらなる例は、Society for Protective Coatingsから出版されたClive H. Hareによる「Protective Coatings, Fundamentals of Chemistry and Composition」(ISBN 0-938477-90-0)に記載されており、参照により本明細書に組み込まれている。任意のこうしたアミンの付加物もまた、アミンとアクリラート、マレアート、フマラート、メタクリラートなどの適切な反応性化合物、またはまれにはアクリロニトリルなどの求電子性ビニル化合物との反応によって調製することができる。
【0045】
脂環式アミンが、本発明の組成物中で良好な耐化学薬品性を与えることが見出された。適切な脂環式アミン硬化剤の例として、以下に示すようなビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン
【0046】
【化8】
、およびイソホロンジアミンが挙げられる。
【0047】
本発明で使用されるアミン硬化剤は、上で議論されたように−10〜50℃の範囲の温度でエポキシ樹脂を少なくとも部分的に硬化させることができる。
【0048】
アミン硬化剤の混合物もまた使用することができる。
【0049】
さらなる成分に応じて、アミン硬化剤は、アミン硬化剤として少なくとも1種のアミノ官能性シランまたはシロキサンを含むことができる。適切な化合物は、以下でより詳細に議論される。ケイ素含有アミン硬化剤とケイ素不含アミン硬化剤との組合せの使用もまた、予測されている。
【0050】
本発明で使用するのに適したアミノ官能性シランおよびアミノ官能性シロキサンとして、式2
式2:
Q’−NH−R’−Si−(OR’n’(R’2−n’−O[−(Q−NH−R’)Si(OR’n’−1(R’2−n’−O−]m’R’
(式中、Q’は、残基−(CHCHNH)z’−Hまたはアミノアリール基を表し、R’は、炭素原子1〜6個を有する脂環式アルキル基を表し、R’は、脂肪族1価C1〜C6アルキル基を表し、R’は、脂肪族1価C1〜C6アルキル基または1価C6芳香族基を表し、n’は、1または2であり、m’は、ゼロ以上の整数である)
のものが挙げられる。式2では、z’は、値0、1または2を有する。R’は、好ましくは、炭素原子2〜4個、より好ましくは、3個を有する。R’は、好ましくは、メチル、エチルまたはプロピル、より好ましくは、メチルである。R’は、好ましくは、脂肪族C1〜C6アルキル基、より具体的には、メチル、エチルまたはプロピル、より好ましくは、メチルまたは1価C6芳香族基、好ましくは、フェニルである。
【0051】
n’=2である場合、R’は、存在しない。m’=0である場合、一般式は、アミノ官能性シランを記述する。m’>0である場合、一般式は、アミノ官能性シロキサンを記述する。アミノ官能性シロキサンでは、m’は、広範囲で変動することができる。本発明で使用されるアミノ官能性シランがm’に対して10以下の数平均値を有することが一般に好ましい。適切なアミノ官能性シランまたはシロキサン化合物は、当技術分野で公知である。
【0052】
適切なアミノ官能性シランまたはシロキサンの例として、アミノプロピルトリエトキシシラン(式2においてQ’=−Hであり、R’=−CHCHCH−であり、R’=−CHCHであり、R’は存在せず、m’=0である)、アミノプロピルトリメトキシシラン(式2においてQ’=−Hであり、R’=−CHCHCH−であり、R’=−CHであり、R’は存在せず、m’=0である)、アミノフェニルトリメトキシシラン(式2においてQ’=−CNHであり、R’は存在せず、R’=−CHであり、R’は存在せず、m’=0である)、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン(式2においてQ’=−NHCHCHNHであり、R’=−CHCHCH−であり、R’=−CHCHであり、R’は存在せず、m’=0である)、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン(式2においてQ’=−(CHCHNH)−Hである、すなわち、z’=1であり、式2においてR’=−CHCHCH−であり、R’=−CHであり、R’は存在せず、m’=0である)、および(3−トリメトキシシリルプロピル)ジエチレン−トリアミン(式2においてQ’=−(CHCHNH)−Hである、すなわち、z’=2であり、式2においてR’=−CHCHCH−であり、R’=−CHであり、R’は存在せず、m’=0である)が挙げられる。
【0053】
Wacker製のSilres HP2000(式2においてm’=2、n’=1、R’=CH、R’=フェニルである化合物)を含めて、使用できるさらなる適切な化合物が多数存在する。これは、アミノシロキサンの一例である。本発明に関連するアルコキシシランを含むアミンとしてまた、アミノアルキルアルキルジアルコキシシラン、アミノアルキルジアルキルアルコキシシランおよび予め縮合したアミノアルキルアルコキシシランが挙げられる。他の適切な化合物として、ビス(トリメトキシシリルプロピル)アミン、第2級アミン官能性シロキサン(Dynasylan 1124)、または3−アミノプロピルトリメトキシシラン(Dynasylan AMMO)を含む、Evonikから入手できるアミノ官能性シロキサンのDynasylan類が挙げられる。
【0054】
アミン硬化剤(すなわち、コーティング組成物中に存在するアミン硬化剤の全量)が分子当り平均少なくとも2つの活性水素を有することが好ましい。十分な架橋を得るのに十分なアミン官能基を有するアミン硬化剤(またはアミン硬化剤を合わせたもの)を選択することは、当業者の範囲内である。
【0055】
本発明の一実施形態では、コーティング組成物中に存在するアミン硬化剤の量は、硬化剤中の活性水素の、組成物中のエポキシ基の全数に対する当量比が約0.7:1.00から1.3:1.00の間、さらには、0.85:1.00から1.10:1.00の間になるようにする。活性水素の、エポキシ基に対するこの比によって、本発明によるコーティング組成物の効果的な硬化が可能になる。硬化剤中の活性水素という用語は、組成物中に存在するすべてのアミン硬化剤(ケイ素不含アミン硬化剤とケイ素含有アミン硬化剤から(すなわち、アミノ官能性シランおよびアミノ官能性シロキサン)の両方)に由来する活性水素を包含する。
【0056】
一実施形態では、コーティング組成物はさらに、反応性希釈剤を含む。当業者には周知であるように、反応性希釈剤は、組成物の粘度を低減する際に溶媒のように作用するが、溶媒と異なり、コーティング樹脂と結合することまたは主要な硬化反応とは独立に化学反応を行うことのいずれかを可能にする反応性基を有するために組成物のVOCに寄与しない添加剤である。主要な結合剤成分、例えば、本組成物中のフェノールノボラックエポキシ樹脂またはビスフェノールFエポキシ樹脂の1つと同じ化学官能基を有する反応性希釈剤は、一般に、そのより低い粘度によって、およびしばしば、ポリマーネットワークの形成が行われることを可能にするには不十分な数の官能基を有する結果として、希釈剤として働くための相手の樹脂なしで硬化した場合、所期の目的に合った機械的に強固なコーティングフィルムを形成できないことによって、樹脂と区別することができる。
【0057】
反応性希釈剤は、無理のない量、例えば、粘度を低減するために一緒に使用されるコーティング液の全反応性官能基の50%以下を供給する量で存在することができるが、一般的な規則として、反応性希釈剤を使用して希釈するための相手の樹脂に比較してより少ない量で存在する。
【0058】
反応性希釈剤の存在によって、コーティングを調合してスプレー可能な組成物にすることがより容易になることが見出された。スプレーは、コーティング組成物を適用するための好ましい様式である。本明細書の意味内で、反応性希釈剤は、コーティング組成物の粘度を低減し、それ自体、エポキシ樹脂、および/またはアミン硬化剤と反応できる基を含む化合物である。
【0059】
好ましい反応性希釈剤は、エポキシ官能性シラン、エポキシ官能性シロキサン、およびジアルキルカルボナートである。本発明のコーティング組成物はまた、硬化剤反応性の官能基を有さない反応性希釈剤化合物を含むことができる。適切な化合物の例は、フェニルトリエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、およびメチルトリメトキシシランである。
【0060】
特に、グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(GOPTMS)およびジメチルカルボナート(DMC)が好ましい。その理由は、こうした化合物が、反応性希釈剤を含まないコーティングの耐化学薬品性を維持しつつ、スプレー性組成物を提供することが見出されたからである。GOPTMSの使用が特に好ましいと考えられている。その理由は、この化合物がまた、コーティング組成物の耐化学薬品性を改善することが見出されたからである。したがって、グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(GOPTMS)を含むことが、コーティング組成物用の本発明の特定の実施形態になる。エポキシド基を1つしか持っていないので、GOPTMSは、エポキシド基単独の反応によってそれ自体でアミン硬化剤とポリマーネットワークを形成することができない。したがって、GOPTMSは、この点でエポキシ樹脂と区別することができる。
【0061】
反応性希釈剤が使用される場合、組成物中で使用されるその量は、広範囲に変動することができる。例えば、十分な材料を添加することによって、組成物の効果的なスプレー適用に所望である水準まで組成物の粘度を低減することができる。この量は、使用されるエポキシ樹脂および選択された反応性希釈剤化合物に応じて変動する。
【0062】
反応性希釈剤が、1つまたは複数のエポキシド基を含む場合、例えば、GOPTMSの場合、反応性希釈剤は、コーティング組成物中に存在するエポキシド基の全数に対して反応性希釈剤中のエポキシド基の数から計算して、例えば、0〜50%の量、特に、10〜35%の量で存在することができる。
【0063】
反応性希釈剤がエポキシド基を含まない場合、反応性希釈剤は、一般に、エポキシ樹脂の重量に対して計算されて、30重量%未満の量で存在する。
【0064】
本発明の一実施形態では、コーティング組成物は、少なくとも1種のエポキシ官能性シランまたはシロキサンを含む。本明細書の文脈内では、エポキシ官能性シランという用語は、モノグリシジルアルコキシシランを指し、エポキシ官能性シロキサンは、少なくとも1つの−Si−O−Si−結合を含む組成物の任意の成分を含むモノおよびポリグリシジルポリシロキサン組成物を指す。
【0065】
本発明で使用するのに適したエポキシ官能性シランおよびエポキシ官能性シロキサンには、式1
式1:Q−R−Si−(OR(R2−n−O[−(Q−R)Si(ORn−1(R2−n−O−]
(式中、Qは、グリシドキシ基
【0066】
【化9】
を表し、Rは、炭素原子1〜6個を有する脂肪族アルキル基を表し、Rは、脂肪族1価C1〜C6アルキル基を表し、Rは、脂肪族1価C1〜C6アルキル基または1価C6芳香族基を表し、nは1または2であり、mは、ゼロ以上の整数である)
のものが含まれる。
【0067】
は、好ましくは、炭素原子2〜4個、より好ましくは、3個を有する。Rは、好ましくは、メチル、エチルまたはプロピル、より好ましくは、メチルである。Rは、好ましくは、脂肪族C1〜C6アルキル基、より具体的には、メチル、エチルまたはプロピル、より好ましくは、メチルまたは1価C6芳香族基、好ましくは、フェニルである。
【0068】
n=2である場合、Rは、存在しない。m=0である場合、一般式は、エポキシ官能性シランを記述する。m>0である場合、一般式は、エポキシ官能性シロキサンを記述する。エポキシシロキサンでは、mは、広範囲に変動することができる。本発明で使用されるエポキシ官能性シランがmに対して10以下の数平均値を有することが一般に好ましい。適切なエポキシ官能性シランまたはシロキサン化合物は、当技術分野で公知である。
【0069】
一実施形態では、R=−CHCHCH−であり、R=CHであり、Rは存在せず、n=2およびm=0である式1のエポキシ官能性シランが使用される。この化合物は、式
【0070】
【化10】
を有する。
【0071】
この材料は、グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(GOPTMS)であり、例えば、Evonik(商標Dynasylan GLYMOで)から入手可能である。
【0072】
別の実施形態では、−(Si−O)−主鎖と懸垂エポキシ基とを有するエポキシ官能性シロキサンオリゴマーが使用される。一実施形態では、この型のエポキシ官能性シロキサンオリゴマーが使用され、それは、上の式1(式中、R=−CHCHCH−であり、R=CHであり、Rは存在せず、n=2およびmは2〜8の範囲、さらには、3〜5、例えば、約4の数平均値を有する)である。かかる材料は、Momentive Performance Chemicalsによって製造され、商標Momentive MP200で販売される。
【0073】
グリシドキシプロピルトリエトキシシラン(式1の化合物であり、式中、R=−CHCHCH−であり、R=CHCHであり、Rは存在せず、n=2およびm=0である)、Wacker製のSilres HP1000(式1の化合物であり、式中、m=2であり、n=1であり、R=CHであり、R=フェニルである)、グリシドキシプロピルジメチルエトキシシラン(式1の化合物であり、式中、R=−CHCHCH−であり、R=CHCHであり、R=CHであり、n=0およびm=0である)、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン(式1の化合物であり、式中、R=−CHCHCH−であり、R=CHであり、R=CHであり、n=1およびm=0である)、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン(式1の化合物であり、式中、R=−CHCHCH−、R=CHCHであり、R=CHであり、n=1およびm=0である)を含めて、使用できるさらなる適切な化合物が多数存在する。
【0074】
一実施形態では、1種または複数の以下のエポキシ官能性シランおよびエポキシ官能性シロキサン(式中、Rは、グリシドキシ基であり、eは0.1〜0.5の値を有し、fは0.1〜0.5の値を有し、gは0.5〜0.9の値を有する):すなわち、
単位:(R(CHSiO1/2および(CSiO3/2を含むエポキシ官能性ケイ素材料
単位:(R(CHSiO1/2、((CHSiO2/2および(CSiO3/2を含むエポキシ官能性ケイ素材料
単位:((CHSiO1/2,(R(CH)SiO2/2および(CSiO3/2を含むエポキシ官能性ケイ素材料
単位:(R(CH)SiO2/2および(CSiO3/2を含むエポキシ官能性ケイ素材料
単位:(R(CHSiO1/2、および(CHSiO3/2を含むエポキシ官能性ケイ素材料
単位:(R(CHSiO1/2、((CHSiO2/2および(CHSiO3/2を含むエポキシ官能性ケイ素材料
単位:((CHSiO1/2、(R(CH)SiO2/2および(CHSiO3/2を含むエポキシ官能性ケイ素材料
単位:(R(CH)SiO2/2および(CHSiO3/2を含むエポキシ官能性ケイ素材料
単位:((CHSiO2/2および(RSiO3/2を含むエポキシ官能性ケイ素材料が使用される。
【0075】
一実施形態では、コーティング組成物は、エポキシ樹脂のエポキシ基とアミン硬化剤の官能基との間の硬化反応の速度を速める促進剤を含む。
【0076】
エポキシ樹脂と硬化剤との間の硬化反応の速度を速めることが知られている促進剤の例として、以下:アルコール、フェノール、カルボン酸、スルホン酸、塩および第3級アミンが挙げられる:
エポキシ樹脂とアミン硬化剤との間の硬化反応の速度を速めることが知られている促進剤の例として、以下:アルコール、フェノール、カルボン酸、スルホン酸、塩および第3級アミンが挙げられる:
アルコール:適切なアルコールの例として、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、t−ブタノール、ベンジルアルコール、フルフリルアルコール、および他のアルキルアルコール、プロパンジオール、ブタンジオール、グリセロールおよび他の多価アルコール、トリエタノールアミン、トリ−イソプロパノールアミン、ジメチルアミノエタノールおよび他のβ−ヒドロキシ第3級アミンが挙げられる。
フェノール:適切なフェノールの例として、フェノール、2−クロロフェノール、4−クロロフェノール、2,4−ジクロロフェノール、2,4,6−トリクロロフェノール、2−ニトロフェノール、4−ニトロフェノール、2,4−ジニトロフェノール、2,4,6−トリニトロフェノール、4−シアノフェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、4−エチルフェノール、4−イソプロピルフェノール、2,4−ジメチルフェノール、3,5−ジメチルフェノール、ノニルフェノール、オイゲノール、イソオイゲノール、カルダノールおよび他のアルキル化フェノール、2,2’−ジヒドロキシビフェニル、2,4’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジヒドロキシビフェノール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、カテコール、4−t−ブチルカテコール、レゾルシノール、4−ヘキシルレゾルシノール、オルシノール、ヒドロキノン、ナフタレンジオール、アントラセンジオール、ビフェニレンジオールおよび他の置換2価フェノール、フロログルシノール、フロログルシド、カリックスアレーン、ポリ(4−ビニルフェノール)および他の多塩基性フェノールが挙げられる。
カルボン酸:適切なカルボン酸の例として、酢酸、プロパン酸、酪酸、乳酸、フェニル酢酸および他のアルキルカルボン酸、マロン酸、シュウ酸、マレイン酸、フマル酸および他の二塩基性酸またはそのモノエステル、安息香酸、4−t−ブチル安息香酸、サリチル酸、3,5−ジクロロサリチル酸、4−ニトロ安息香酸および他の芳香族酸が挙げられる。
スルホン酸:適切なスルホン酸の例として、メタンスルホン酸および他のアルキルスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、4−ドデシルベンゼンスルホン酸、および他の芳香族スルホン酸、ナフタレンジスルホン酸、ジ−ノニルナフタレンジスルホン酸および他の多塩基性スルホン酸が挙げられる。
塩:適切な塩の例として、硝酸カルシウム、ナフテン酸カルシウム、チオシアン酸アンモニウム、チオシアン酸ナトリウム、チオシアン酸カリウム、チオシアン酸イミダゾリニウム、四フッ化ホウ酸リチウム、臭化リチウム、三フッ化酢酸リチウム、塩化カルシウム、イッテリビウムトリフラート、過塩素酸リチウム、亜鉛トリフラート、硝酸リチウムが挙げられる。こうした塩のすべてにおいて、カチオンは、リチウム、ナトリウムまたはカリウム間で相互置換することができる。
【0077】
本発明のコーティング組成物では、エポキシ基のアニオン重合もまた、行われる場合がある。一実施形態では、エポキシ基のアニオン重合は、組成物中に促進剤を含ませることによって促進される。適切なアニオン重合促進剤の例は、1,8−ジアザ−ビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン、トリエチレンジアミン(ジアザビシクロオクタン)、ベンジルジメチルアミン、ジメチルアミノプロピルアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、N−メチルモルホリン、3−モルホリノプロピルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、2−ジメチルアミノメチルフェノール、4−ジメチルアミノメチルフェノール、2,4−ビス(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,6−ビス(ジメチルアミノメチル)フェノールおよび2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノールのような第3級アミン;1−メチルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾールおよび2−ヘプタデシルイミダゾールのようなイミダゾールである。こうした促進剤はまた、エポキシ樹脂のエポキシ基と活性水素を有する硬化剤の官能基との間の硬化の速度を速める。
【0078】
本出願の文脈における好ましい促進剤として、1,8−ジアザ−ビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン、トリエチレンジアミン(ジアザビシクロオクタン)、ベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、および2,4,6−トリス−(ジメチルアミノメチル)フェノールのような第3級アミン;1−メチルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾールおよび2−ヘプタデシルイミダゾールのようなイミダゾールが挙げられ、任意選択で、1種または複数の他の触媒と上記の促進剤を合わせてもよい。
【0079】
第3級アミン促進剤はまた、本発明で使用するために上で議論された有機シランまたは有機シロキサンのアルコキシシラン基の加水分解および縮合用の触媒として機能する。
【0080】
第3級アミンに加えて、未反応または反応形態いずれかで硬化剤のアミン基はまた、GOPTMSまたは存在すれば他の類似の反応性希釈剤に存在するアルコキシシラン基の加水分解および縮合反応を促進し、このプロセスの速度を速める促進剤を添加することもまた有利である場合がある。こうした促進剤のある種のものはまた、組成物中に存在するエポキシ樹脂(複数可)中のエポキシ基のアニオン重合を助長することができる。アルコキシシラン基の加水分解および縮合の速度を速めるが、アミン基とエポキシ基との間の反応またはエポキシエポキシ基のアニオン重合に対して大きな影響を与えない促進剤を添加することも可能である。かかる促進剤の例は、二ラウリン酸二ブチルスズ、二ラウリン酸二オクチルスズ、二酢酸二ブチルスズ、ネオデカン酸ビスマス、テトラブトキシチタン、テトライソプロポキシチタン、ポリ(n−チタン酸ブチル)などである。
【0081】
促進剤(複数可)は、存在する場合、エポキシ樹脂100重量部に対して0.1〜5重量部、好ましくは、エポキシ樹脂100重量部に対して0.5〜5重量部の量で適切に使用される。
【0082】
促進剤(複数可)がアミン硬化剤を含むパックで存在することが好ましい。促進剤(複数可)がエポキシ樹脂混合物を含むパックで存在することは推奨されない。その理由は、そのために、こうしたパックの保存可能期間が低減されるおそれがあるからである。
【0083】
一実施形態では、本発明のコーティング組成物は、1種または複数の顔料および/またはフィラーを含む。1種または複数の顔料は、着色用顔料、例えば、二酸化チタン(白色顔料)、黄色または赤色酸化鉄またはフタロシアニン顔料などの着色された顔料であってよい。1種または複数の顔料は、雲母質酸化鉄、結晶性シリカおよびウオラストナイトなどの補強顔料であってよい。1種または複数の顔料は、リン酸亜鉛、モリブデン酸亜鉛またはホスホン酸亜鉛などの耐食性顔料であってよい。1種または複数の顔料は、バライト、タルク、長石、または炭酸カルシウムなどのフィラー顔料であってよい。
【0084】
組成物は、1つまたは複数のさらなる成分、例えば、微粒子シリカ、ベントナイト粘土、水素化ひまし油、またはポリアミドワックスなどの増粘剤またはチキソトロープを含んでよい。組成物はまた、可塑剤、顔料分散剤、安定剤、流動補助剤、湿潤剤、消泡剤、接着促進剤、または希釈溶媒を含んでもよい。一実施形態では、本発明で使用されるコーティング組成物は、250g/l以下、詳細には、200g/l以下、より詳細には、150g/l以下、さらにより詳細には、100g/l以下の溶媒含量を有する。溶媒含量が50g/l以下であることが好ましい場合もある。一実施形態では、組成物は、溶媒の添加がない場合もある。
【0085】
溶媒含量は、以下のように決定することができる:溶媒含量は、0〜50℃で液体であり、エポキシ樹脂またはアミン硬化剤と反応せず、25℃で0.01kPa超の蒸気圧または1気圧下で250℃未満の沸点を有する成分を含む。明確にするために、コーティング組成物の硬化によって生成する上の定義による任意の揮発性材料は、溶媒含量中には含まれない。
【0086】
コーティング組成物は、第1液がエポキシ樹脂を含みかつ第2液がエポキシ樹脂用アミン硬化剤を含む2液型コーティング組成物である。コーティングが−10〜50℃の範囲の温度で硬化することが、本発明による方法の特長である。この特長は、2液型コーティング組成物の使用に関連している。その理由は、−10〜50℃の範囲の温度で硬化を示す組成物は、1液型コーティング組成物における保存可能期間が不十分であるからである。
【0087】
本発明のコーティング組成物は、−10〜50℃の範囲の温度でエポキシ官能性樹脂を少なくとも部分的に硬化させることが可能である。したがって、本発明のコーティング組成物は、周囲温度硬化性コーティング組成物である。この要件を満足しない場合、組成物は、化学設備における金属またはコンクリート表面をコーティングするのにあまり適していない。コーティング組成物が、第1のステップで−10〜50℃の範囲、例えば、−5〜30℃、さらには、0〜25℃の温度で硬化することが、本発明による方法の特長である。このステップでは、硬化は、少なくとも、続いて水をコーティング上にスプレーできる、またはコーティングがコーティング表面を破壊させることなく、物理的に取り扱いできる程度まで進行すべきである。このステップは、これ以降、周囲硬化ステップと呼称される。この周囲硬化ステップは、例えば、1〜24時間、さらには、3〜10時間で実施することができ、より高い温度は、必要な硬化時間を低減し、より低い温度は、必要な硬化時間を増加させる。
【0088】
周囲硬化ステップが0〜100%の範囲、より好ましくは、20〜80%の範囲、最も好ましくは、40〜60%の範囲の相対湿度範囲で実施されることが好ましい場合がある。コーティングされる表面が、比較的囲まれている場合、例えば、タンクの一部である場合、コーティング操作中に相対湿度を制御することによって、大きな欠陥のない全体コーティングを提供するようにフィルムが形成されることを保証するのが通常の作業である。
【0089】
しばしば、最適な耐化学薬品性能を備えたコーティングを提供するために、特に、コーティングが非常に刺激の強い化学薬品と接触する場合、第2ステップでコーティング組成物をさらに硬化させることが有利である。後硬化と呼称される場合もある、この第2ステップでは、コーティング層は、所与の時間、例えば、以下の期間、例えば、1〜24時間、さらには、3〜16時間、50℃超の温度まで加熱される。一般に、後硬化は、少なくとも50℃、例えば、50〜150℃の温度で実施することができる。一実施形態では、後硬化は、50〜100℃、例えば、50〜80℃の温度で実施される。別の実施形態では、後硬化は、100〜150℃の温度で実施される。
【0090】
後硬化の実施様式は、コーティングされる表面の性質によって決まり、当業者には明白であろう。例えば、硬化は、熱空気または熱水を用いて、例えば、スプレーによって表面を加熱することによって実施することができる。化学設備がタンクである場合、加熱はまた、例えば、追加の硬化を実施するために積荷からの熱を使用して、コーティングされた表面を熱積荷と接触させることによって、またはタンクを熱水で満たすことによって実施することができる。少なくとも50℃の温度での後硬化ステップの実施が、本発明の好ましい実施形態である。
【0091】
一実施形態では、後硬化は、表面を熱空気で加熱することによってまたはコーティングされた表面を熱積荷に接触させることによって実施される。
【0092】
コーティング組成物は、当技術分野で公知の方法によって、コーティングされる表面に施用することができる。適切な方法の例として、ローリング、スプレー、およびブラッシングが挙げられる。スプレーによる施用が好ましい。その理由は、均一なコーティング層の効率的な沈着がもたらされるからである。コーティング組成物が大量の溶媒に依存することなく、スプレー可能な粘度を有するように調合できることは、本発明の特長である。組成物は、例えば、単一供給無空気スプレー技術または複数成分施用技術を介して施用することができる。
【0093】
本発明において施用されるコーティング層それぞれは、例えば、50〜350ミクロン、さらには、75〜200ミクロンの硬化後厚さを有することができる。こうした厚さは、施用後個別にまたは同時に硬化されても、それとは無関係に層それぞれにあてはまる。
【0094】
本発明は、化学設備の金属またはコンクリート表面のコーティングに関する。本明細書の文脈では、「化学設備」とは、液体またはガス状バルク化学薬品を生成するおよび/または貯蔵するおよび/または輸送するのに使用される建築物、人工構造物および/または装置を意味する。化学設備の具体的な例として、船舶または海上産業、油およびガス産業、化学薬品取扱産業、電力産業、廃棄物および水産業、輸送産業、および採鉱および金属産業用の、現存および新規化学薬品装置両方の建築物、人工構造物および/または装置が挙げられる。
【0095】
バルク化学薬品とは、バルク、すなわち、少なくとも容積10mで存在する化学薬品を指す。バルク化学薬品は、鋼、コンクリートおよびまたは他の材料に対して全く無害から非常に強刺激まで変動する。液体バルク化学薬品は、食用から非食用産品まで広く分類することができる。食用液体バルク化学薬品の積荷の例は、果実ジュース、ミルクおよび植物油であるが、非食用バルク化学薬品の例として、化学溶媒、酢酸ビニル、石油、酸、アルカリおよび液化天然ガス(LNG)などの反応性化学中間体が挙げられる。
【0096】
金属またはコンクリート表面として、貯蔵タンク、貯蔵容器、その関連配管または他の一般配管、送気管および格納領域の内部と外部両方の表面を挙げることができる。液体またはガス状化学薬品に加えて、化学設備のかかる金属またはコンクリート表面は、静的または循環いずれかの高温、およびまた静的または循環いずれかの高圧に暴露される場合がある。
【0097】
一実施形態では、本発明においてコーティングされた化学設備は、煙突、パイプ、またはタンク、例えば、積荷もしくは貯蔵タンクである。
【0098】
本発明によるコーティング組成物は、多様な化学薬品に対して吸収が少なく、合わせて洗浄性も良好であるのでタンクライニング組成物として特に良好な結果を示し、そのためにコーティング組成物が、多様な型のバルク化学薬品の循環負荷に耐え得ることが見出された。コーティング組成物は、高目の温度で熱安定性が良好であり、そのために、高温が問題になるおそれのある陸上貯蔵タンクで使用するのに適していることがさらに見出された。本発明は、積荷タンク内部および積荷タンク用で特に使用されるが、また、多様な化学薬品および原油または炭化水素−水混合物用の陸上貯蔵タンクなどのさらなるタンク、およびこうしたタンク用の2次格納領域でも特に使用される。
【0099】
コーティング組成物は、プライマー/仕上げとして直接表面に適用することができる、すなわち、組成物は、表面上の保護コーティングの唯一の型として使用することができる。
【0100】
本発明によるコーティング組成物をプライマーとして適用することも可能である、すなわち、本発明のコーティングを表面上に最初に適用することによって第1のコーティング層を形成し、0〜50℃の温度でコーティング層を硬化させ、第1のコーティング層上にさらにコーティングを施用することによって第2のコーティング層を形成し、第2のコーティング層を硬化させることも可能である。本発明のコーティング組成物の3つ以上の層を施用するために、さらなるコーティング層の適用もまた可能である。通常、3層超は必要でないが、正確な数は、個々の層の厚さで決まる。後硬化ステップが実施される場合、これをすべての層が沈着した後に実施することが好ましい。
【0101】
本明細書に記載のコーティング組成物の実施形態は、当業者に明らかな方法で相互に合わせることができることに留意されたい。これは、すべての優先事項、特性および組成物に適用される。コーティングに対して記載されたすべての実施形態および特性はまた、タンクにタンクライニングを施用するための方法、および硬化コーティング組成物のライニングを施用されたタンクにも適用可能である。
【0102】
ここで、本発明は、以下の実施例を参照して明解になる。こうした実施例は、本発明を例示することが意図され、いかなる点においても本発明の範囲を限定するとみなすべきでない。
【0103】
実施例A
本発明による実施例
本発明による本実施例は、エポキシ基の80%がエポキシノボラック樹脂に由来しかつエポキシ基の20%がエポキシ官能性シラン樹脂に由来するようにエポキシ官能性シラン樹脂と合わせることによって樹脂の粘度が変更されたエポキシノボラック樹脂と、これを硬化するアミン硬化剤およびメチルボロン酸とプロパン−1,3−ジオールとに由来する環式ボロン酸エステルとの混合が二塩化エチレンの吸収質量%におよぼす効果を示す。
【0104】
DEN 431(Dow Chemicalsより;9.0g、0.0511エポキシ当量)をグリシドキシプロピルトリメトキシシラン(3.0214g、0.01278エポキシ当量)と合わせ、ブレンドし、Ancamine 2264(Air Productsより;3.4517g、0.06392N−H当量)、2−メチル−1,3,2−ジオキサボリナン(0.932g、エポキシ当量に対して10モル%)およびトリス(2,4,6−ジメチルアミノメチル)フェノール(0.332g、エポキシ当量に対して2モル%)の混合物と室温で完全に混合した。活性水素の、エポキシ基に対する当量比は1.00である。
【0105】
400ミクロン立方形塗布機を使用して、小数点以下4桁まで予め精秤された3個の顕微鏡用ガラススライドに対して混合物を適用した。次いで、コーティングされたスライドを23℃、相対湿度50%に保持された環境キャビネット中に入れ、24時間硬化させた。コーティングは、24時間以内に十分乾燥した。次いで、コーティングされたスライドを80℃に保持されたファン付オーブンに16時間入れた。オーブンから取り出して、スライドを室温まで冷却し、コーティングされたスライドを小数点以下4桁まで精秤した。それぞれのスライドを1,2−二塩化エチレン入りの個別のガラスジャーに入れた。ガラススライドをそのジャーから周期的に取り出し、コーティングされたスライドの表面を乾燥し、速やかにスライドを小数点以下4桁まで精秤することによって1,2−ジクロロエタンの吸収質量を観測した。吸収量を以下のように計算して、元のフィルムの質量に対する%として表した:
【0106】
【数1】
【0107】
以下の表に与えられた結果は、室温で1,2−ジクロロエタンに28日間浸漬後の3個のコーティングされたスライドの平均吸収量を表す。
【0108】
【表1】
【0109】
実施例B
本発明による実施例
本発明による本実施例は、エポキシ基の80%がエポキシノボラック樹脂に由来しかつエポキシ基の20%がエポキシ官能性シラン樹脂に由来するようにエポキシ官能性シラン樹脂と合わせることによって樹脂の粘度が変更されたエポキシノボラック樹脂と、これを硬化するアミン硬化剤および2−チオフェンボロン酸とプロパン−1,3−ジオールとに由来する環式ボロン酸エステルとの混合が二塩化エチレンの吸収質量%におよぼす効果を示す。
【0110】
2−(チオフェン−2−イル)−1,3,2−ジオキサボリナン(1.074g、エポキシ当量に対して10モル%)をDEN 431(Dow Chemicalsより;9.0g、0.0511エポキシ当量)とグリシドキシプロピルトリメトキシシラン(3.0214g、0.01278エポキシ当量)の溶液に添加し、ボロナートエステルが溶解するまで混合物を50℃で加熱した。混合物を放置冷却した。このエポキシボロン酸エステル混合物に、室温でAncamine 2264(Air Productsより;3.4517g、0.06392N−H当量)とtris(2,4,6−ジメチルアミノメチル)フェノール(0.332g、エポキシ当量に対して2モル%)の混合物を添加した。活性水素の、エポキシ基に対する当量比は1.00である。
【0111】
400ミクロン立方形塗布機を使用して、小数点以下4桁まで予め精秤された3個の顕微鏡用ガラススライドに対して混合物を適用した。次いで、コーティングされたスライドを23℃、相対湿度50%に保持された環境キャビネット中に入れ、24時間硬化させた。コーティングは、24時間以内に十分乾燥した。次いで、コーティングされたスライドを80℃に保持されたファン付オーブンに16時間入れた。オーブンから取り出して、スライドを室温まで冷却し、コーティングされたスライドを小数点以下4桁まで精秤した。それぞれのスライドを1,2−二塩化エチレン入りの個別のガラスジャーに入れた。ガラススライドをそのジャーから周期的に取り出し、コーティングされたスライドの表面を乾燥し、速やかにスライドを小数点以下4桁まで精秤することによって1,2−ジクロロエタンの吸収質量を観測した。吸収量を以下のように計算して、元のフィルムの質量に対する%として表した:
【0112】
【数2】
【0113】
以下の表に与えられた結果は、室温で1,2−ジクロロエタンに28日間浸漬後の3個のコーティングされたスライドの平均吸収量を表す。
【0114】
【表2】
【0115】
実施例C
本発明による実施例
本発明による本実施例は、エポキシ基の70%がビスフェノールFエポキシ樹脂に由来しかつエポキシ基の30%がエポキシ官能性シラン樹脂に由来するようにエポキシ官能性シラン樹脂と合わせることによって樹脂の粘度を変更され、合わせたエポキシ樹脂が顔料入り塗料配合物の一部である、ビスフェノールFエポキシ樹脂と、アミン硬化剤およびメチルボロン酸とプロパン−1,3−ジオールとに由来する環式ボロン酸エステルとの混合が二塩化エチレンの吸収質量%におよぼす効果を示す。
【0116】
本発明による塗料ベースが製造され、以下を含んだ。
【0117】
【表3】
【0118】
上の顔料入りエポキシ樹脂配合物(11.26g、0.0203エポキシ当量)をAncamine 2264(Air Productsより;1.101g、0.0204N−H当量)、2−メチル−1,3,2−ジオキサボリナン(0.2034g、エポキシ当量に対して10モル%)およびトリス(2,4,6−ジメチルアミノメチル)フェノール(0.1074g、エポキシ当量に対しておよそ2モル%)の混合物と室温で完全に混合した。活性水素の、エポキシ基に対する当量比は1.00である。
【0119】
400ミクロン立方形塗布機を使用して、小数点以下4桁まで予め精秤された3個の顕微鏡用ガラススライドに対して混合塗料を適用した。次いで、コーティングされたスライドを23℃、相対湿度50%に保持された環境キャビネット中に入れ、24時間硬化させた。コーティングは、24時間以内に十分乾燥した。次いで、コーティングされたスライドを80℃に保持されたファン付オーブンに16時間入れた。オーブンから取り出して、スライドを室温まで冷却し、コーティングされたスライドを小数点以下4桁まで精秤した。それぞれのスライドを1,2−二塩化エチレン入りの個別のガラスジャーに入れた。ガラススライドをそのジャーから周期的に取り出し、コーティングされたスライドの表面を乾燥し、速やかにスライドを小数点以下4桁まで精秤することによって1,2−ジクロロエタンの吸収質量を観測した。吸収量を以下のように計算して、元のフィルムの質量に対する%として表した:
【0120】
【数3】
【0121】
以下の表に与えられた結果は、室温で1,2−ジクロロエタンに23日間浸漬後の3個のコーティングされたスライドの平均吸収量を表す。
【0122】
【表4】
【0123】
実施例D
本発明による実施例
本発明による本実施例は、エポキシ基の70%がビスフェノールFエポキシ樹脂に由来しかつエポキシ基の30%がエポキシ官能性シラン樹脂に由来するようにエポキシ官能性シラン樹脂と合わせることによって樹脂の粘度が変更され、合わせたエポキシ樹脂が顔料入り塗料配合物である、ビスフェノールFエポキシ樹脂と、アミン硬化剤および2−チオフェニルボロン酸とプロパン−1,3−ジオールとに由来する環式ボロン酸エステルとの混合が二塩化エチレンの吸収質量%におよぼす効果を示す。
【0124】
本発明による塗料ベースが製造され、以下を含んだ。
【0125】
【表5】
【0126】
2−(チオフェン−2−イル)−1,3,2−ジオキサボリナン(0.317g、エポキシ当量に対して10モル%)を上の顔料入りエポキシ樹脂配合物(10.56g、0.019エポキシ当量)に添加し、ボロナートエステルが溶解するまでこの混合物を50℃で加熱した。混合物を放置冷却した。このエポキシ塗料ベース−ボロン酸エステル混合物に、Ancamine 2264(Air Productsより;1.022g、0.019N−H当量)とトリス(2,4,6−ジメチルアミノメチル)フェノール(0.098g、エポキシ当量に対して2モル%)の混合物を室温で添加した。活性水素の、エポキシ基に対する当量比は1.00である。
【0127】
400ミクロン立方形塗布機を使用して、小数点以下4桁まで予め精秤された3個の顕微鏡用ガラススライドに対して混合塗料を適用した。次いで、コーティングされたスライドを23℃、相対湿度50%に保持された環境キャビネット中に入れ、24時間硬化させた。コーティングは、24時間以内に十分乾燥した。次いで、コーティングされたスライドを80℃に保持されたファン付オーブンに16時間入れた。オーブンから取り出して、スライドを室温まで冷却し、コーティングされたスライドを小数点以下4桁まで精秤した。それぞれのスライドを1,2−二塩化エチレン入りの個別のガラスジャーに入れた。ガラススライドをそのジャーから周期的に取り出し、コーティングされたスライドの表面を乾燥し、速やかにスライドを小数点以下4桁まで精秤することによって1,2−ジクロロエタンの吸収質量を観測した。吸収量を以下のように計算して、元のフィルムの質量に対する%として表した:
【0128】
【数4】
【0129】
以下の表に与えられた結果は、室温で1,2−ジクロロエタンに23日間浸漬後の3個のコーティングされたスライドの平均吸収量を表す。
【0130】
【表6】
【0131】
比較例1
ホウ素化合物を欠いた唯一のエポキシ樹脂としてのエポキシフェノールノボラックに基づくコーティングに関する比較例
本比較例では、唯一のエポキシ樹脂としてエポキシフェノールノボラック(DEN 431)を使用して調製されたコーティングにおける多様な有機液体の比較的大きな吸収を例示する。DEN 431(Dow Chemicalsより;5.0g、0.0285エポキシ当量)をビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン(PACM;1.496g、0.0285N−H当量)の混合物と室温で完全に混合した。活性水素の、エポキシ基に対する当量比は1.00である。
【0132】
400ミクロン立方形塗布機を使用して、小数点以下4桁まで予め精秤された3個の顕微鏡用ガラススライドに対して混合物を適用した。次いで、コーティングされたスライドを23℃、相対湿度50%に保持された環境キャビネット中に入れ、24時間硬化させた。コーティングは、24時間以内に十分乾燥した。次いで、コーティングされたスライドを80℃に保持されたファン付オーブンに16時間入れた。オーブンから取り出して、スライドを室温まで冷却し、コーティングされたスライドを小数点以下4桁まで精秤した。それぞれのスライドを1,2−二塩化エチレン入りの個別のガラスジャーに入れた。ガラススライドをそのジャーから周期的に取り出し、コーティングされたスライドの表面を乾燥し、速やかにスライドを小数点以下4桁まで精秤することによって1,2−ジクロロエタンの吸収質量を観測した。吸収量を以下のように計算して、元のフィルムの質量に対する%として表した:
【0133】
【数5】
【0134】
以下の表に与えられた結果は、室温で1,2−ジクロロエタンに23日間浸漬後の3個のスライドの平均吸収を表す。1,2−ジクロロエタンに対して、このコーティングは、本発明による有機ホウ素化合物を含むコーティングよりかなり高い汚染物吸収量を示す。
【0135】
【表7】

なお、本発明には、以下の実施態様が包含される。
[1]化学設備の金属またはコンクリート表面にコーティングを施用するための方法であって、
− 第1液がエポキシ樹脂を含みかつ第2液がエポキシ樹脂用アミン硬化剤を含む2液型コーティング組成物を準備するステップであり、コーティング組成物が式
【化1】
(式中、Xは、炭素原子1〜24個を有する有機基であり、炭素−ホウ素結合を介してホウ素原子に結合しており、Yは、炭素原子2〜16個を有する少なくとも2価の有機基である)
の有機ホウ素化合物をさらに含む、ステップと、
− 第1液と第2液とを合わせることによってコーティング組成物を形成するステップと、
− コーティング組成物を化学設備の表面に施用することによってコーティング層を形成するステップと、
− コーティング層を−10〜50℃の範囲の温度で硬化させるステップと
を含む方法。
[2]コーティング層が、50℃超の温度で後硬化ステップにさらに供される、[1]に記載の方法。
[3]化学設備が、煙突、パイプ、またはタンク、積荷タンクもしくは貯蔵タンクである、[1]または[2]のいずれか一項に記載の方法。
[4]有機ホウ素化合物が、
− 硬化剤(複数可)中の活性水素の、組成物中に存在するエポキシ基に対する当量比が、1.00:1.00以上である場合、組成物中に存在する有機ホウ素化合物の量が、組成物中に存在するエポキシ基のモル量の1〜50%、より好ましくは、2〜20%、最も好ましくは、5〜15%に等しい、および
− 硬化剤(複数可)中の活性水素の、組成物中に存在するエポキシ基に対する当量比が、1.00:1.00未満である場合、組成物中に存在する有機ホウ素化合物の量が、硬化剤(複数可)中の活性水素のモル量の1〜50%、好ましくは、2〜20%、最も好ましくは、5〜15%に等しいような量で存在する、[1]から[3]のいずれか一項に記載の方法。
[5]Xが、C1〜C8アルキル基およびC6〜C8アリール基から選択される、[1]から[4]のいずれか一項に記載の方法。
[6]Yが、C2〜C8アルキレン基から選択される、[1]から[5]のいずれか一項に記載の方法。
[7]Yが、C2〜C5アルキレン基から選択される、[6]に記載の方法。
[8]コーティング組成物が、10重量%未満のRDGE(レゾルシノールジグリシジルエーテル)を含む、[1]から[7]のいずれか一項に記載の方法。
[9]コーティング組成物が、2重量%未満のRDGE(レゾルシノールジグリシジルエーテル)を含む、[8]に記載の方法。
[10]硬化コーティング組成物のライニングを施用された金属またはコンクリート表面を備える化学設備であって、コーティング組成物が、エポキシ樹脂とエポキシ樹脂用アミン硬化剤とを含むコーティング組成物に由来し、コーティング組成物が、式
【化2】
(式中、Xは、炭素原子1〜24個を有する有機基であり、炭素−ホウ素結合を介してホウ素原子に結合しており、Yは、炭素原子2〜16個を有する少なくとも2価の有機基である)
の有機ホウ素化合物をさらに含む化学設備。
[11]煙突、パイプ、またはタンク、積荷タンクもしくは貯蔵タンクである、[10]に記載の化学設備。
[12]Yが、C2〜C8アルキレン基から選択される、[10]または[11]に記載の化学設備。
[13]Yが、C2〜C5アルキレン基から選択される、[12]に記載の化学設備。
[14]化学設備の金属またはコンクリート表面にコーティングを施用するのに適したコーティング組成物であって、第1液がエポキシ樹脂を含みかつ第2液がエポキシ樹脂用アミン硬化剤を含む2液型コーティング組成物であり、式
【化3】
(式中、Xは、炭素原子1〜24個を有する有機基であり、炭素−ホウ素結合を介してホウ素原子に結合しており、Yは、炭素原子2〜16個を有する少なくとも2価の有機基である)
の有機ホウ素化合物をさらに含むコーティング組成物。