(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
製造すべきばねの内径が小さい場合、切断ツールを挿入する為の隙間も小さくなり、一方の切断ツールを、巻回された線材の内側に挿入させることができない。その結果、線材を切断する場合に、一方の切断ツールが、線材における切断すべき部位以外の部位に干渉し、精度よくばねを製造できないおそれがある。
【0005】
本開示は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、内径が小さいばねを製造する場合でもあっても、切断すべき線材の部位以外の部位への干渉を防止し、精度よくばねを製造することができるばね製造機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係るばね製造機は、壁に固定されており、前記壁から突出した芯金と、該芯金の軸心に対して傾斜した方向に移動可能なスライダ、及び該スライダに取り付けられた刃を有し、曲げ加工された線材を前記芯金と協働して切断する切断装置とを備える。
【0007】
本開示においては、壁に固定された芯金と切断装置とによって線材を切断する。内径が小さいばねを製造する場合、前記内径に対応させた寸法の芯金が使用される。そのため、内径が小さいばねを製造する場合でもあっても、線材における切断すべき部位以外の部位に刃が干渉しない。
内径が小さいばね、例えば、いわゆるばね指数が4以下であるようなばねに、芯金の寸法を対応させた場合、軸心に直交する切断面における芯金の先端部の断面積は小さくなり、切断時に芯金に作用する負荷が径方向に集中すると、芯金は破損し易い。本開示においては、スライダ及び刃は芯金の軸心に対して傾斜した方向に移動するので、線材の切断時に芯金に作用する負荷は、芯金の径方向のみならず、軸方向にも作用する。即ち、芯金に作用する負荷は径方向及び軸方向に分散される。
【0008】
本開示に係るばね製造機は、前記芯金は前記壁に対して直角に突出しており、前記壁に対して傾斜した姿勢で前記切断装置は前記壁に取り付けられており、前記壁に対する前記切断装置の傾斜角度は30度以下である。
【0009】
本開示においては、壁に対する切断装置の傾斜角度を30度以下にすることによって、線材を所望の位置にて切断し易くなる。また切断装置の端部と壁との間の距離が過大になり、ばね製造機全体の剛性が低下することを防止する。
【0010】
本開示に係るばね製造機は、前記切断装置の姿勢を調整する調整機構を備える。
【0011】
本開示においては、切断装置の姿勢を調整し、線材の種類及びばね指数に応じた適切な角度で線材を切断する。
【0012】
本開示に係るばね製造機は、前記芯金の軸心に平行な平行部分を前記刃は有し、前記平行部分と前記芯金との間に前記線材を挟んで切断する。
【0013】
本開示においては、切断装置の刃に平行部分を形成することによって、切断装置を円軌道に沿って移動させて線材を切断する場合、切断装置が芯金に干渉することを防止する。
【発明の効果】
【0014】
本開示に係るばね製造機にあっては、壁に固定された芯金と切断装置とによって線材を切断する。内径が小さいばねを製造する場合、前記内径に対応させた寸法の芯金が使用される。そのため、内径が小さいばねを製造する場合でもあっても、線材における切断すべき部位以外の部位に刃が干渉せず、精度よくばねを製造することができる。
内径が小さいばね、例えば、いわゆるばね指数が4以下であるようなばねに、芯金の寸法を対応させた場合、軸心に直交する切断面における芯金の先端部の断面積は小さくなり、切断時に芯金に作用する負荷が径方向に集中すると、芯金は破損し易い。本開示においては、スライダ及び刃は芯金の軸心に対して傾斜した方向に移動するので、線材の切断時に芯金に作用する負荷は、芯金の径方向のみならず、軸方向にも作用する。即ち、芯金に作用する負荷は径方向及び軸方向に分散される。芯金の軸心に直交する方向に切断装置が移動する場合に比べて、芯金の径方向に作用する負荷は小さくなり、芯金は破損し難くなる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(実施の形態1)
以下本発明を実施の形態1に係るばね製造機を示す図面に基づいて説明する。以下の説明では図に示す上下前後左右を使用する。
図1は、ばね製造機の略示斜視図、
図2は、ばね製造機の略示正面図である。
【0017】
ばね製造機は第一支持部1を備える。第一支持部1は、平面視矩形の底部1aと、該底部1aの前縁から上方に延びる前壁1bと、底部1aの左縁から上方に延びる左部1cと、該左部1c及び前壁1bの上端に連なり、底部1aに対向する上部1dとを備える。
【0018】
前壁1bの前面に、前後方向を回転軸方向とした複数の線材送りローラ3が回転可能に支持されている。線材送りローラ3は上下二列に並んでおり、上側の列のローラと、下側の列のローラとは対向する。線材送りローラ3の間、及び線材送りローラ3の隣には線材ガイド4が設けられている。線材ガイド4はブロック状をなし、線材20が通過する溝が形成されている。
【0019】
第一支持部1の左側には、線材送りローラ3に供給する線材20を供給する線材供給装置(図示略)が設けられており、第一支持部1の後側には、線材送りローラ3を駆動させるモータ(図示略)が設けられている。線材供給装置から線材送りローラ3に線材20は供給され、上下の線材送りローラ3の間に線材20は挟まれ、上側の線材送りローラ3は正面視反時計回りに回転し、下側の線材送りローラ3は正面視時計回りに回転する。線材20は、線材ガイド4に案内され、左から右に送られる。
【0020】
ばね製造機は第二支持部2を備える。第二支持部2は第一支持部1の右隣に配置されており、第一支持部1と第二支持部2とは左右方向に離れている。第二支持部2は、平面視矩形の底部2aと、該底部2aの前縁から上方に延びる前壁2bと、底部2aの右縁から上方に延びる右部2cと、該右部2c及び前壁2bの上端に連なり、底部2aに対向する上部2dとを備える。
【0021】
第二支持部2の前壁2bには第一ツール取付具5及び第二ツール取付具6が支持されている。第一ツール取付具5は、左右に延びるスライダ5aと、該スライダ5aの左端部に取り付けられた取付部5bとを備える。スライダ5aは左右方向に移動可能である。取付部5bにはツール、本実施例においては曲げダイス5cが取り付けられる。曲げダイス5cは線材20の曲げ加工を確実に行うようにするため、線材20を案内する溝を備える。第一ツール取付具5の取付部5bは最も右側に配置された線材ガイド4に対向する。
【0022】
第二ツール取付具6は、第一ツール取付具5の上側に配置されている。第二ツール取付具6は、左方に向かうに従って下降するように傾斜したスライダ6aと、該スライダ6aの下端部に取り付けられた取付部6bとを備える。スライダ6aは、傾斜方向に移動可能である。取付部6bにはツール、本実施例においては曲げダイス6cが取り付けられる。第二ツール取付具6の取付部6bは、最も右側に配置された線材ガイド4の右斜め上に配置される。なお曲げダイス5c、6c以外のツールが各取付部5b、6bに取り付けられてもよい。
【0023】
図3は、切断装置支持壁7及び切断装置8を略示する拡大右側面図である。
図3の一点鎖線は、切断装置支持壁7の前面からの延長線を示す。第一支持部1と第二支持部2との間に切断装置支持壁7が設けられている。切断装置支持壁7は上下に延びる。切断装置支持壁7の前面上部に切断装置8が支持されている。切断装置8はレール台9、クランク機構10、スライダ11及び刃13を備える。レール台9は上下に延びる。
図1及び
図3に示すように、レール台9は切断装置支持壁7の前面に対して、上方に向かうに従って前方に突出するように傾斜している。換言すれば、レール台9の姿勢は前傾姿勢である。レール台9の後面と切断装置支持壁7の前面との間に形成される角度θは30度以下、例えば20度に設定されている。
【0024】
レール台9の前面下部に、レール台9の傾斜方向に沿って上下に延びるレール9aが設けられている。レール9aには、摺動子12を介して、スライダ11が摺動可能に設けられている。レール台9の上端部にクランク機構10が設けられている。クランク機構10は、レール台9の上端部に取り付けられたモータ10dと、前後方向を回転軸方向とした回転円盤10aと、連結板10cとを備える。回転円盤10aの中心にはモータ10dの回転軸が同軸的に連結されている。連結板10cは上下に延び、連結板10cの上端部と回転円盤10aとは枢軸10bを介して連結されている。前記枢軸10bは回転円盤10aの回転中心から離れた位置に配されている。連結板10cの下端部とスライダ11とは枢軸(図示略)を介して連結されている。スライダ11の下端部に線材20を切断する刃13が取り付けられている。モータ10dの回転はクランク機構10によって上下動に変換され、スライダ11及び刃13はレール台9の傾斜方向に沿って、上下に直線移動する。
【0025】
図4は、線材送りローラ3、刃13、及び芯金15などを略示する拡大正面図、
図5は、切断装置8及び芯金15を略示する拡大右側面断面図である。
図5において、一点鎖線は半円柱部15aの軸心15dを示し、二点鎖線は軸心15dに直角な鉛直線Nを示す。切断装置8の下側に芯金15が設けられている。芯金15は柱状をなし、切断装置支持壁7の前面から前方に突出している。芯金15の前端部に半円柱部15aが形成されている。半円柱部15aの正面形状は、右方に突出するように膨らんだ円弧と、該円弧の上端及び下端を連結する弦とを有する半円形状をなす。なお半円形状は、弦の長さ(縦の長さ)と、弦に直角な方向の長さ(横の長さ)との比が2:1となる形状に限られず、2:1.3などの比を有する形状も含む。半円柱部15aの左側面(弦に対応する面)は、刃13が摺動する摺動面15bを形成する。半円柱部15aよりも後側の部分(以下、芯金15の後部)における芯金15は直方体状をなす。半円柱部15aの左側面と、芯金15の後部の左側面とは略面一である。軸心に直角な断面における芯金15の後部の断面積は、半円柱部15aの断面積よりも大きい。
【0026】
刃13は直方体状をなし、レール台9の傾斜方向に沿って上下に延びる。即ち、レール台9の姿勢と同様に、刃13の姿勢は前傾姿勢である。
図4に示すように、刃13の底面には、右側に向かうに従って下降するように傾斜した傾斜面13aが形成されている。
図5の矢印に示すように、刃13は斜め前上方向に上昇し、斜め下後方向に下降する。換言すれば、側面視において、切断装置8の刃13は軸心15dに対して傾斜した方向に移動可能である。軸心15dに直角な鉛直線Nに対する刃13の傾斜角度は、前述の角度θと略同じである。刃13の右側面と半円柱部15aの摺動面15bとが面一になるように、切断装置8は位置決めされている。
【0027】
線材送りローラ3によって右方に送出された線材20は、曲げダイス5c、6cの溝に当接し、半円柱部15aの周面を囲むように曲げ加工される。曲げ加工された線材20はコイル状をなし、前方に向けて成長する。スライダ11が下降し、刃13の傾斜面13aの先端と、摺動面15bの上縁15cとの間に、コイル状に形成された線材20の後端部上側が挟まれる(以下、コイル状に形成された線材20をコイル又はコイルばねとも称する。)。スライダ11は更に下降し、線材20を切断する。その後、スライダ11は上昇する。刃13はコイルの後端部のみ切断する。なお軸心15dは、コイルの軸心及び芯金15全体の軸心に対して略平行である。
【0028】
なお切断装置支持壁7は一つの部材によって構成されていてもよいし、複数の部材によって構成されていてもよい。例えば切断装置支持壁7は、芯金15を支持する部材と、切断装置8を支持する部材とを備えていてもよい。また切断装置8及び芯金15は上下方向に移動可能に構成されている。製造者は、製造するばねの直径に応じて、切断装置8及び芯金15の上下位置を変更する。
【0029】
実施の形態1に係るばね製造機にあっては、切断装置支持壁7に固定された芯金15と、スライダ11に取り付けた刃13とによって線材20を切断する。内径が小さいばねを製造する場合、前記内径に対応させた寸法の芯金15が使用される。そのため、内径が小さいばねを製造する場合でもあっても、線材20における切断すべき部位、例えば巻回された線材20の上端部を切断することができる。
【0030】
内径が小さいばね、例えば、いわゆるばね指数が4以下であるようなばねに、芯金15の寸法を対応させた場合、軸心15dに直交する切断面における芯金15の先端部(半円柱部15a)の断面積は小さくなり、切断時に芯金に作用する負荷が径方向に集中すると、芯金15は破損し易い。そのため、従来、強度を保ちつつ、半円柱部15aの断面積を小さくするように芯金15を設計する必要があった。上述のばね製造機においては、スライダ11及び刃13は芯金15の軸心15dに対して傾斜した方向に移動するので、線材20の切断時に切断装置8から芯金15に作用する負荷は、芯金15の径方向のみならず、軸方向にも作用する。即ち、芯金15に作用する負荷は径方向及び軸方向に分散される。芯金15の軸心15dに直交する方向にスライダ11及び刃13が移動する場合に比べて、芯金15の径方向に作用する負荷は小さくなり、芯金15は折損し難くなる。その結果、芯金15の設計時において、設計者の負担は軽減される。
【0031】
角度θが30度を超過した場合、コイルの後端部のみならず、コイルの中央側部分も切断するおそれがある。切断装置支持壁7に対する切断装置8の傾斜角度θを30度以下にすることによって、コイルの後端部のみを切断し易くなる。また切断装置8の上端部と切断装置支持壁7との間の距離が過大になり、ばね製造機全体の剛性が低下することを防止する。
【0032】
コイルばねの中心径(内径と外径の中間値)をDとし、線材20の直径をdとする。D/dはばね指数という。スライダ11を鉛直方向に移動させた場合、ばね指数D/d>4となるように、線材20を選定することが一般的である。D/d≦4となった場合、切断装置8から芯金15に作用する剪断力(芯金15の径方向に作用する力又は軸心15dに直角な方向に作用する力)が過大になり、芯金15が折損する可能性が高くなるからである。切断装置8の姿勢を斜めにすることによって、芯金15に作用する負荷は径方向及び軸方向に分散され、ばね指数D/d≦4となった場合であっても、切断装置8から芯金15に作用する剪断力は過大になりにくい。
【0033】
芯金15の材料には、例えば超硬合金又は高速度鋼が使用される。超硬合金を使用した場合、芯金15の硬度は非常に硬いので、例えば比較的硬度の高い熱処理材のオイルテンパー線を線材20に使用しても、バリの発生を抑えて線材20を切断することができる。ただ超硬合金は脆い性質を備えており、スライダ11を鉛直方向に移動させた場合、刃13から芯金15に作用する剪断力が過大になり、芯金15が破損するおそれがあった。そのため、従来、D/d≦4となる場合、即ちコイルばねの中心径Dが小さくなるか又は線材20の直径dが大きくなって、ばね指数が小さくなる場合には、芯金15の材料に高速度鋼を使用していた。高速度鋼は超硬合金よりも靱性が高く、破損しにくいからである。ただし、高速度鋼は、超硬合金に比べて塑性変形し易く、摩耗し易い性質を備えるので、芯金15に高速度鋼を使用して、上記硬度の高い線材20を切断した場合、芯金15に超硬合金を使用したときに比べて、線材20にバリが発生し易いという問題があった。なおオイルテンパー線は、ピアノ線、硬鋼線又はステンレス線などに比べて硬度が高い。
【0034】
実施の形態1においては、上述のように、切断装置8の姿勢を斜めにすることによって、芯金15に作用する負荷は径方向及び軸方向に分散されるので、ばね指数が所定値よりも小さくなる場合、具体的にはD/d≦4となる場合でも、芯金15の材料として超硬合金を選択し、バリの発生を抑えて硬度の高い線材20を切断し且つ芯金15の破損を防止することができる。バリの発生を抑えることによって、品質の高いコイルばねを継続生産することができる。
【0035】
上述したように、芯金15に作用する負荷は径方向及び軸方向に分散される。そのため、バリが発生したとしても、バリは軸方向に向きやすくなり、コイルの径方向内側にバリが突出し難くなって、コイルばねの品質低下を抑制することができる。
【0036】
実施の形態1においては、切断装置8は線材20の切断時に後斜め下方向に移動するが、切断装置8は前斜め下方向に移動してもよい。切断装置8が後斜め下方向に移動した場合、芯金15には軸方向後方への力が作用する。切断装置8が前斜め下方向に移動した場合、芯金15には軸方向前方への力が作用する。前述したように、芯金15の後部は前部(半円柱部15a)よりも断面積が大きく、前部よりも剛性が高い。そのため、芯金15には、軸方向前方への力が作用するよりも軸方向後方への力が作用する方が強度上好ましく、また芯金15が軸方向前方へ移動し難くなるので好ましい。芯金15が前方へ移動した場合、切断されたばねが芯金15に引っ掛かって、芯金15に残るおそれがある。
【0037】
特許第6403224号公報に記載の従来のばね製造機は、傾斜した切断ツール支持壁と、該切断ツール支持壁に支持された二つの切断ツールとを備える。二つの切断ツールを接近させて、線材の上端部を切断している。一方の切断ツールは、巻回された線材(コイル)の後端部付近の隙間を通って、コイルの内側に挿入され、他方の切断ツールは外側からコイルに接近し、二つの切断ツールに線材は挟まれ、コイルの上端部が切断される。しかし、コイルの内径が小さい場合、前記隙間も小さくなり、一方の切断ツールをコイルの内側に挿入させることができず、一方の切断ツールは、コイルの下部に干渉し、ばねを精度よく製造できないおそれがある。
【0038】
一方、実施の形態1に係るばね製造機は、切断すべき部位以外のコイルの部位、例えばコイルの下端部に刃13が干渉せず、精度良くばねを製造することができる。
【0039】
(実施の形態2)
以下本発明を実施の形態2に係るばね製造機を示す図面に基づいて説明する。実施の形態2に係る構成の内、実施の形態1と同様な構成については同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。
図6は、ばね製造機の略示正面図、
図7は、
図6に示すVII−VII線を切断線とした断面図である。
【0040】
切断装置支持壁7の前面に支持台14が固定されている。支持台14と、レール台9の下端部とは、左右方向を軸方向とした枢軸7aを介して連結されている。レール台9は枢軸7a回りに回転可能である。即ち、切断装置8は、切断装置支持壁7に対する傾斜角度を変更することができる。
【0041】
第二支持部2の上部2dにモータ16が取り付けられている。該モータ16の回転軸とレール台9とは回転板17を介して連結されている。回転板17は長円形をなし、その一端部にモータ16の回転軸が直角に連結されている。回転板17の他端部にはガイド穴17aが形成されている。ガイド穴17aは回転板17を貫通し、回転板17の長手方向に沿って延びた長孔状をなす。レール台9には、右方向に突出した突部9bが設けられており、該突部9bはガイド穴17aに挿入されている。
【0042】
モータ16の回転によって、回転板17は回転する。突部9bはガイド穴17aに案内され、突部9bの位置は変更され、切断装置支持壁7に対する切断装置8の傾斜角度が変更される。即ち、切断装置8の姿勢が調整される。所望の姿勢になるまで、切断装置8の傾斜角度を調整することができる。
【0043】
実施の形態2に係るばね製造機にあっては、切断装置8の姿勢を調整し、線材20の種類及びばね指数に応じた適切な角度で線材20を切断することができる。
【0044】
図8は、変更例に係るばね製造機を略示する斜視図である。変更例に係るばね製造機は回転板17に代えて調整板21を使用する。第一支持部1の上部1dと、レール台9とは調整板21を介して連結されている。調整板21は長円形をなし、その一端部にガイド穴21aが形成されている。ガイド穴21aは調整板21を貫通し、調整板21の長手方向に沿って延びた長孔状をなす。
【0045】
切断装置支持壁7の上端部には、右方に突出した突部7bが形成されている。突部7bは調整板21のガイド穴21aに挿入されている。調整板21の他端部は、左右方向を軸方向とした枢軸9cを介してレール台9に接続されている。ユーザは、枢軸7a(
図7参照)の軸回りにレール台9を回転させて、ガイド穴21aにて突部7bを固定させることによって、適切な角度に切断装置8を位置決めさせることができる。切断装置8の位置決めはモータを使用して自動的に行ってもよいし、手動で行ってもよい。
【0046】
(実施の形態3)
以下本発明を、実施の形態3に係るばね製造機を示す図面に基づいて説明する。実施の形態3に係る構成の内、実施の形態1又は2と同様な構成については同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。
図9は、切断装置支持壁7及び切断装置8を略示する拡大右側面図である。
【0047】
スライダ11は、後部11a及び前部11bを備える。後部11aはレール台9に沿って上下に延びる。後部11aの上端部と、回転円盤10aとは連結板10cを介して連結されている。後部11aは摺動子12を介して摺動可能にレール9aに設けられている。後部11aの前側に前部11bが設けられている。前部11b及び後部11aは枢軸11cによって連結されている。枢軸11cの軸方向は、レール台9の傾斜方向に直交する方向である。前部11bの下端部に刃13が取り付けられている。
【0048】
図10は、線材送りローラ3、刃13、及び芯金15などを略示する拡大正面図、
図11は、切断装置8及び芯金15を略示する拡大右側面断面図である。
図10及び
図11に示すように、刃13の底面の左部分には、右側に向かうに従って下降するように傾斜した傾斜面13aと、該傾斜面13aの右端に連なり、半円柱部15aの軸心15dに平行な平行面13bとが形成されている。平行面13bは、刃13の底面の右前端部にのみ形成されている。
【0049】
図12は、刃13の移動軌跡を説明する拡大正面説明図である。
図12において、実線矢印は刃13の移動軌跡を示す。スライダ11の後部11aは、クランク機構10の駆動によって、レール9aに沿って上下方向に直線的に移動する。スライダ11の前部11bは枢軸11cを介して後部11aに連結されているので、後部11aに対して左右方向に揺動する。そのため、刃13は上下移動及び左右移動を行い、
図12の実線矢印に示すように、刃13の移動軌跡(より詳細には平行面13bの移動軌跡)は、上下に延びた楕円となる。この楕円の下端部が、コイル状に形成された線材20の上端部に位置するように、切断装置8の位置は設定される。
【0050】
線材送りローラ3によって右方に送出された線材20は、曲げダイス5c、6cの溝に当接し、半円柱部15aの周面を囲むように曲げ加工される。曲げ加工された線材20はコイル状をなし、前方に向けて成長する。刃13は楕円軌道に沿って下降し、刃13の平行面13bと、摺動面15bの上縁15cとの間に、コイル状に形成された線材20の後端部上側が挟まれる。刃13は線材20を切断し、上昇する。平行面13bは、コイルの後端部のみ切断する。
【0051】
図12の破線矢印は、実施の形態1の刃13と同様な刃13、即ち平行面13bが形成されていない刃13を使用した場合における刃13の移動軌跡を示す。破線矢印に示すように、平行面13bを形成しない場合、移動軌跡は上下に延びた楕円になる。この楕円の下端部は芯金15の上端よりも下側に位置する。即ち、芯金15に干渉する。芯金15への干渉を防止すべく、刃13の位置を上方に移動させた場合、コイルの切断が不十分になり、コイルを切断できないおそれがある。
【0052】
実施の形態3に係るばね製造機にあっては、スライダ11の刃13に平行部分を形成することによって、刃13を円軌道、例えば楕円軌道に沿って移動させて線材20を切断する場合、刃13が芯金15に干渉することを防止し、且つ線材20を確実に切断することができる。また刃13が直線的に移動する場合に比べて、コイルにバリが発生し難くなり、コイルばねの品質低下を抑制することができる。
【0053】
(実施の形態4)
以下本発明を実施の形態4に係るばね製造機を示す図面に基づいて説明する。実施の形態4に係る構成の内、実施の形態1〜3と同様な構成については同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。
図13は、刃13の移動軌跡を説明する拡大右側面説明図である。
図13の矢印は刃13の移動軌跡を示す。スライダ11を上下方向に移動させながら、モータ16を駆動させて、レール台9を枢軸7a回りに前後方向に揺動させる。刃13は上下移動及び左右移動を行い、
図13の矢印に示すように、刃13の移動軌跡は上下に延びた楕円となる。
【0054】
なおスライダ11を右部及び左部の二つの部品によって構成し、両者を、左右方向を軸方向とした枢軸によって連結し、一方をレール9aに取り付け、他方に刃13を取り付けてもよい。この場合、モータ16を駆動させることなく、刃13を前後方向に揺動させることができる。
【0055】
上述のばね製造機は芯金15の上方に切断装置8を配置し、右巻きのコイルばねを製造する。左巻きのコイルばねを製造する場合には、切断装置8を芯金15の下方に配置すればよい。
【0056】
ばね製造機は、コイルばねのみならず、他の種類のばねを製造することもできる。例えば、リングばねを製造することもできる。リングばねを製造する場合、芯金の先端部は半円形状でなくてもよく、例えば直方体状でもよい。また切断装置支持壁7に対する切断装置8の傾斜角は30度以下でなくてもよく、例えば30度〜90度の範囲の任意の角度でもよい。また刃13の移動軌跡は円又は楕円でなくてもよく、例えば線でもよい。
【0057】
今回開示した実施の形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。各実施例にて記載されている技術的特徴は互いに組み合わせることができ、本発明の範囲は、特許請求の範囲内での全ての変更及び特許請求の範囲と均等の範囲が含まれることが意図される。
【解決手段】ばね製造機は、壁に固定されており、前記壁から突出した芯金と、該芯金の軸心に対して傾斜した方向に移動可能なスライダ、及び該スライダに取り付けられた刃を有し、曲げ加工された線材を前記芯金と協働して切断する切断装置とを備える。好ましくは、前記芯金は前記壁に対して直角に突出しており、前記壁に対して傾斜した姿勢で前記切断装置は前記壁に取り付けられている。