【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 ▲1▼発行日:平成27年8月1日 ▲2▼刊行物:土木学会平成27年度全国大会第70回年次学術講演会講演概要集(電子データをDVDに格納して配布 講演番号:VI−165)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、狭小遊間の壁面には、型枠の段差、釘などの突起物、経年によるエフロレッセンス、コケなどの付着物などの障害物が存在し、ラインセンサを安定して移動させることが困難である。また、仮にラインセンサを狭小遊間で移動できたとしても、狭小遊間の壁面を精度よく撮像するためには、(1)(2)に示す機構を備えることが不可欠である。
(1)ラインセンサを狭小遊間にある障害物の影響を最小にして安定して移動させる機構。
(2)ラインセンサを被写界深度が浅いため、ラインセンサと壁面との距離(撮影距離)を一定に保持し、ピントがずれないようにする機構。
【0007】
本発明の一側面に係る目的は、狭小遊間の壁面の撮像の精度を向上させる壁面撮像装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る一つの形態である壁面撮像装置は、第一の本体部、移動部とを備える。
第一の本体部は、狭小遊間の壁面を撮像する第一の撮像部と、壁面に接触するローラー部と、を有する。
【0009】
移動部は、第一の本体部を壁面に沿って安定して移動させる第一の機構と、ローラー部を壁面側に押し付け、第一の撮像部と壁面との距離を一定に保持させる第二の機構と、を備える。
【0010】
第一の機構は、壁面に固定した二本のワイヤをガイドとして、第一の本体部に連結された牽引ワイヤで牽引する。
第二の機構は、第一の本体部に設けられたワイヤガイドをワイヤに引っ掛け、ワイヤを壁面側に押し付ける。
【0011】
第一の本体部は、壁面の形状に応じて第一の撮像部の位置を調整する調整部を備える。
第一の撮像部の移動した距離を計測するエンコーダを備える。
第一の本体部の移動方向に取り付けられ、壁面を撮像する第二の撮像部を備える第二の本体部を備える。
【0012】
移動部は、ワイヤガイドに引っ掛けたワイヤを壁面側に押し付けて調整するワイヤ抑込部を備える。
ローラー部が有するローラーは、ローラー幅を所定幅とし、ローラー芯に間欠的に配置する。
【0013】
第一の本体部のワイヤガイド、及び、第二の本体部のワイヤガイドは、第一の本体部1及び第二の本体部の外側方向に設けられる外側溝と内側方向に設けられる内側溝とを備え、外側溝と内側溝の間には支持部があり、支持部は内部に滑車を有し、滑車は外側溝及び内側溝に突出するように配置され、ワイヤを滑車に通すと滑車にワイヤが乗る構造である。
【0014】
第一の本体部は、遠隔操作可能な点検ハンマ及び集音マイクを有する打音検査部を備える。
【発明の効果】
【0015】
狭小遊間の壁面の撮像の精度を向上させる壁面撮像装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
壁面撮像装置は、ラインセンサ(第一の撮像部)を壁面に沿って安定して移動させる機構(第一の機構)と、ラインセンサと狭小遊間の壁面との距離を一定に保持させる機構(第二の機構)と、を備えることにより狭小遊間の壁面を広範囲で精度よく撮像する。狭小遊間は、例えば、橋梁遊間部などが考えられる。
(A)ラインセンサを壁面に沿って安定して移動させる第一の機構は、狭小遊間の壁面に二本のワイヤを張り固定し、二本のワイヤをガイドとして、ラインセンサを搭載した装置(以降、第一の本体部と呼ぶ)を、牽引ワイヤで一定速度で牽引する機構である。
(B)ラインセンサと狭小遊間の壁面との距離を一定に保持させる第二の機構は、上記二本のワイヤを壁面側に押さえ付けることで、第一の本体部を壁面側に押し付け、ラインセンサと壁面との距離を一定に保持させる機構である。また、単にラインセンサを壁面に押し付けただけではラインセンサの撮影距離を保持できないため、ラインセンサの周辺には、壁面と接触してラインセンサの撮影距離を一定にする支持部を設ける。ただしラインセンサをスムーズに移動させるため、支持部は壁面に対して摩擦が少ないローラーなどを用いることが好適である。
【0018】
以上のように、(A)(B)の機構を用いることで、狭小遊間の壁面でも精度よく面的な正射画像(オルソ画像)を撮像することができる。
第一の本体部の構成について説明する。
【0019】
図1は、壁面撮像装置の第一の本体部1及び第二の本体部2の一実施例を示す斜視図である。
図1に示す第一の本体部1は、ラインセンサ3(第一の撮像部)、ローラー部4(支持部)、エンコーダ5(第一の計測部)、を有する調整部6、ワイヤガイド7a、7b、ローラー部8、9、ヒンジ10a、10b、ヒンジ11a、11bを備えている。
【0020】
ラインセンサ3は、例えば、CIS(Contact Image Sensor)タイプのラインセンサなどである。
ローラー部4は、調整部6のラインセンサ3の周辺に設けられ、壁面と接触してラインセンサ3の撮影距離を一定にする。
図1では二つのローラー部4がラインセンサ3の前後に設けられている。ここで、撮影距離はローラー部4が壁に接触する点からラインセンサ3の表面までの距離となる。また、ローラー部4を用いた理由は、壁面と接触した際、摩擦を低減し第一の本体部1をスムーズに移動できるようにするためである。なお、ラインセンサ3と同等の長さの円筒形のローラーを備えたローラー部4を用いても摩擦を低減できるが、狭小遊間内の凹凸は複雑であり、極小の突起物など(型枠の段差、釘などの突起物、経年によるエフロレッセンス、コケなどの付着物)でも撮影距離が変化してしまう。例えば、コンパネの釘穴の跡などの直径3[mm]程度で高さ5[mm]のモルタルの突起部が一箇所でも存在した場合、上記円筒形のローラーを用いると撮影距離は5[mm]以上となりピンボケの画像となる。そこで
図1の例ではローラー芯に対して、できる限りローラー幅を狭く(所定幅)した複数のローラーを間欠的に配置し、突起物の影響を受けにくくしている。なお、ローラーには摩擦低減効果の大きいベアリングを備えたものが好適である。なお、所定幅は、実験やシミュレーションにより定められ、4から6[mm]幅のローラーを30から50[mm]間隔で配置するのがよい。
【0021】
エンコーダ5は、ローラー部4のいずれかに設けられ、エンコーダ5と連動したローラー部4を第二の機構により壁面に押し当て、ラインセンサ3が壁面を移動した距離を計測する。なお、エンコーダ5はワイヤガイド7aに設けてもよい。
【0022】
調整部6はラインセンサ3の位置を壁面の形状に応じて調整する機構である。ラインセンサ3はピントが合う範囲が狭く、壁面の凹凸によって撮像画像にピンボケが生ずる可能性が高いため、ラインセンサ3が適正な撮影距離を保持できるようにする。例えば、バネなどの弾性体の押圧を利用して調整部6を壁面側に押し付けることで、壁面との距離を一定に保持する。調整部6の詳細については後述する。
【0023】
ワイヤガイド7a、7bは、第一の本体部1を上記ワイヤに引っ掛けるために用いる部材である。
図1では、ワイヤガイド7aは第一の本体部1の上面に設けられ、ワイヤガイド7bは第一の本体部1の下面に設けられている。ワイヤについては
図2のワイヤ206a、206bを参照。
【0024】
ワイヤガイド7a、7bの構造について説明にあたり、ワイヤガイド7a、7bの構造は同じであるので、ワイヤガイド7aを用いて説明する。ワイヤガイド7aは、第一の本体部1の外側方向に設けられる外側溝71aと内側方向に設けられる内側溝71bを備えている。また、外側溝71aと内側溝71bの間には支持部71cがあり、支持部71cは内部に滑車71dを有し、滑車71dは外側溝71aと内側溝71bに突出するように配置されている。そして、ワイヤを通すと滑車71d上にワイヤが乗る構造としている。
【0025】
壁面に対して第一の本体部1を配置したときに上側に位置するワイヤガイド7には内側溝71bにワイヤを通し、ワイヤにより第一の本体部1を吊り上げ、下側に位置するワイヤガイド7には外側溝71aにワイヤを通し、ワイヤにより第一の本体部1を支え上げる。
【0026】
なお、ワイヤ幅は滑車71dの周囲のワイヤを通す溝幅よりも狭くし、滑車71aに上下内向きに力がかかるようにし、ワイヤが滑車71dから脱輪しないようにする。
外側溝71aと内側溝71bを配置した理由は、第一の本体部1を移動させる方向を変える際には、第一の本体部1を上下反転させなければならないため、両方向兼用で使用できるようにするためである。
【0027】
ローラー部8、9は、狭小遊間をスムーズに第一の本体部1を移動させるために用いられる。
図1では、ローラー部9は第一の本体部1の右側面に設けられ、ローラー部8は左側面に設けられている。
【0028】
ローラー部8、9のローラーは、極小の突起物に影響されて撮影距離が頻繁に変動することを回避するために、ローラー幅を狭く(所定幅)し、ローラー芯に間欠的に配置される。例えば、ローラーは第一の本体部1より壁面側に0.5[mm]程度出すことにより、第一の本体部1と壁面との摩擦を低減させる。また、第一の本体部1の幅より狭い狭小遊間内に入り込み第一の本体部1が取れなくなることを回避するために設けられている。なお、所定幅は、実験やシミュレーションにより定められ、4から6[mm]幅のローラーを30から50[mm]間隔で配置するのがよい。
【0029】
ヒンジ10a、10bは、第一の本体部1と後述する第二の本体部2とを連結させる際に用いる。
図1では、ヒンジ10aは第一の本体部1の上面の右端部と、第二の本体部2の上面の左端部と、に連結される。ヒンジ10bは第一の本体部1の下面の右端部と、第二の本体部2の上面の左端部と、に連結される。
【0030】
ここで第二の本体部2はラインセンサ3以外の撮像装置や打音検査装置を搭載した装置であるため必ずしも必要ではないが、移動時の前方確認、壁面状態の確認、打音検査を行いたいという要望があるため、第一の本体部1と別に第二の本体部2を設けた。
【0031】
なお、打音検査装置を搭載する理由として、壁面の劣化を検査する際に用いる以外にも、ラインセンサ3を安定して移動させるために、剥落の危険性のある箇所を打音で確認しながら移動させることや、壁面の部分的な剥落により第一の本体部1及び第二の本体部2が狭小遊間に挟まり移動不能となることを回避させることなどが考えられる。
【0032】
また、第一の本体部1と別に設ける理由は、撮像装置や検査装置を第一の本体部1に一緒に搭載した場合、第一の本体部1の全長が長くなる。そうすると狭小遊間に突起物がある場合、全長が長くなった分第一の本体部1の筐体が壁面に接触しやすくなるので、第一の本体部1の進行を妨げられることとなる。そこで本発明では第一の本体部1と第二の本体部2とに分け、第一の本体部1と第二の本体部2とをヒンジ10で連結させることにより突起物などを柔軟に回避できる構造としている。
【0033】
ヒンジ11aは第一の本体部1の上面の左端部に連結され、ヒンジ11bは第一の本体部1の下面の左端部に連結され、ワイヤ12の両端がヒンジ11a、ヒンジ11bに連結されている。また、ワイヤ12に設けられている金具13には、第一の本体部1及び第二の本体部2を一定速度で牽引する第一の機構が有する後述する牽引ワイヤ204(
図2を参照)が連結されている。なお、第一の機構については後述する。
【0034】
第二の本体部2の構成について説明する。
図1に示す第二の本体部2は、CCDカメラ14と反射鏡収納部15(反射鏡16、保護板17)とを有する壁面状態撮像部(第二の撮像部)、CCDカメラ18(第二の撮像部)、照明部19、打音検査部20(点検ハンマ21、集音マイク22)、ワイヤガイド7c、7d、ローラー部23、24、ヒンジ25a、25bを備えている。
【0035】
第二の本体部2を設ける理由として、例えば、狭小遊間には雨水が侵入することが多くASR(アルカリシリカ反応)や鉄筋腐食によりかぶりコンクリートが剥落している箇所が散見されるため、かぶりコンクリートが剥落した狭小遊間内部の状況などの劣化現象を、ラインセンサ3で撮像する前に確認したいためである。ラインセンサ3で確認できない理由は、ラインセンサ3は被写界深度が浅いため、かぶりコンクリートが剥落した狭小遊間内部の状況などの劣化現象を確認できないためである。そこで第一の本体部1の前方(ラインセンサ3の前方)に第二の本体部2を設け、第二の本体部2に被写界深度の深いCCDカメラ14、CCDカメラ18を設けて、壁面に生じた上記劣化現象も撮像できるようにしている。更に、第一の本体部1及び第二の本体部2を移動させている際に、狭小遊間が狭くなりこれ以上進むことができない状況がある場合、あるいは、移動を阻む障害物が進行方向に存在する状況がある場合、それらの状況を早く知る必要があるため、CCDカメラ18で狭小遊間及びその壁面状況を撮像する。
【0036】
CCDカメラ14は、反射鏡収納部15に収納されている反射鏡16(ハッチング)に映された壁面を撮像する。
反射鏡収納部15は、壁面を映す反射鏡16、第二の本体部2の内部及び反射鏡16を保護する保護板17を有する。反射鏡16は反射鏡収納部15の右側端辺15aから反射鏡収納部15の左側端辺15bに傾斜して配置される。保護板17は、例えば、壁面を反射鏡16に映すことができる透明なアクリル板などを用いる。
【0037】
CCDカメラ18は、第二の本体部2の進行方向の狭小遊間及びその壁面状態を撮像する。
照明部19は
図1の第二の本体部2の右面に設けられ、CCDカメラ18が撮像する際に狭小遊間を照明する。照明部19は、例えば、LED((Light Emitting Diode)などである。
【0038】
打音検査部20は、遠隔操作可能な点検ハンマ21及び集音マイク22を有する。また、打音検査部20と後述する情報処理部403(
図4を参照)と連携することで、壁面の劣化位置で打音検査をする場合や、打音検査で劣化が判明した場合にその位置を特定することができる。点検ハンマ21は、情報処理装置403により遠隔操作することにより、壁面を叩かせ、その打音を集音マイク22が情報処理装置403に送信する。情報処理装置403は、打音を受信すると、受信した打音に基づいて信号処理を実行し、壁面の劣化を検査する。
【0039】
このように、従来は狭小遊間で打音検査をすることが困難であったが、第二の本体部2は壁面に近づけて用いるため、点検ハンマ21で壁面を叩くことが可能であるので、狭小遊間においても打音検査を実施することができる。なお、打音検査部20は第一の本体部1に設けてもよい。
【0040】
ワイヤガイド7c、7dは、第二の本体部2を上記ワイヤに引っ掛けるために用いる部材である。
図1では、ワイヤガイド7cは第二の本体部2の上面に設けられ、ワイヤガイド7dは第二の本体部2の下面に設けられている。また、ワイヤガイド7c、7dの構造は、ワイヤガイド7aと同様の構造で、第二の本体部2の外側と内側に二つの溝(ワイヤガイド7aの外側溝71a、内側溝71bに相当)があり、それぞれにワイヤを通すと内部の滑車(ワイヤガイド7aの滑車71dに相当)上にワイヤが乗る構造である。
【0041】
ローラー部23、24は、狭小遊間をスムーズに第二の本体部2を移動させるために用いられる。
図1では、ローラー部23は第二の本体部2の表面に複数設けられる。
ローラー部24は
図1では第二の本体部2の右面に設けられている。ローラー部24のローラーは、極小の突起物に影響されて撮影距離が頻繁に変動することを回避するために、ローラー幅を狭く(所定幅)し、ローラー芯に間欠的に配置される。例えば、ローラーは第二の本体部2より壁面側に0.5[mm]程度出すことにより、第二の本体部2と壁面との摩擦を低減させる。なお、所定幅は実験やシミュレーションにより定められ、例えば、4から6[mm]幅のローラーを30から50[mm]間隔で配置するのがよい。
【0042】
また、ローラー部23、24は、第二の本体部2の幅より狭い遊間内に入り込み第一の本体部1及び第二の本体部2が取れなくなることを回避するために設けられている。
ヒンジ25aは第二の本体部2の上面の右端部に連結され、ヒンジ25aは第二の本体部2の下面の右端部に連結され、ワイヤ26の両端がヒンジ25a、ヒンジ25bに連結されている。また、ワイヤ26に設けられている金具27には、第一の本体部1及び第二の本体部2を一定速度で牽引する第一の機構が有する牽引ワイヤが連結されている。
【0043】
(A)(B)の機構について説明する。
図2は、壁面撮像装置の上面図と側面図の一実施例を示す図である。
図2に示す第一の本体部1及び第二の本体部2は裏面側が示されている。すなわち、
図1で示したラインセンサ3などが設けられている表面と反対の面が示されている。
【0044】
図2は、第一の本体部1及び第二の本体部2を一定速度で牽引する第一の機構と、第一の本体部1及び第二の本体部2を壁面側に押し付け、ラインセンサ3と壁面との距離を一定に保持する第二の機構と、を備える移動部が示されている。移動部は、支持部200a、200b、牽引ワイヤ204、ワイヤ206a、206bを有する。
【0045】
支持部200aは、ワイヤ固定部201a、201c、ワイヤ抑込部202a、202c、滑車203を有する。支持部200bは、ワイヤ固定部201b、201d、ワイヤ抑込部202b、202d、巻取部205を有する。
【0046】
支持部200a、200bは、狭小遊間の壁面の撮像対象範囲の両側に固定される。
ワイヤ固定部201a、201b、201c、201dは狭小遊間の壁面に張ったワイヤ206a、206bを固定する。
【0047】
ワイヤ抑込部202a、202b、202c、202dは、ワイヤガイド7a、7cに引っ掛けたワイヤ206aと、ワイヤガイド7b、7dに引っ掛けたワイヤ206bを、壁面側に押し付ける。また、ワイヤ抑込部202a、202b、202c、202dは、第一の本体部1及び2第二の本体部2をワイヤ206a、206bへ取り付ける際、又は、取り外す際にワイヤ206a、206bを壁面から離す機能を有する。また、狭小遊間に突起物が存在した場合には、第一の本体部1及び第二の本体部2を、突起物から回避させる際にも機能する。
【0048】
牽引ワイヤ204はループをなし、牽引ワイヤ204の一方は第一の本体部1の金具13に連結され、他方は第一の本体部1の金具27に連結されている。
また、滑車203と巻取部205は、第一の本体部1及び第二の本体部2を移動させる際に用いられ、巻取部205を一定速度で回転させ、牽引ワイヤ204を巻き取るとともに滑車203側に戻すことで、一定速度で第一の本体部1及び第二の本体部2を移動させることができる。なお、巻取部205はモータなどにより回転させることで、牽引ワイヤ204を巻き取る。
【0049】
第一の機構は、二本のワイヤ206a、206bをガイドとして、牽引ワイヤ204を用いて第一の本体部1及び第二の本体部2を安定して移動させる機構である。
第二の機構は、ワイヤガイド7a、7cに引っ掛けたワイヤ206aと、ワイヤガイド7b、7dに引っ掛けたワイヤ206bと、をワイヤ抑込部202a、202b、202c、202dを用いて壁面側に押し付け、第一の本体部1及び第二の本体部2を壁面側に押さえ付ける機構である。
【0050】
また、壁面の大きな突起物から第一の本体部1及び第二の本体部2を回避する場合、又は、壁面の凹んでいる箇所に第一の本体部1及び第二の本体部2を押し付ける場合に、障害物の影響を最小にし、安定して移動をさせるため、ローラー部8、9、23、24、ヒンジ10a、10b、11a、11b、25a、25b、ワイヤ12、26、ワイヤ抑込部202a、202b、202c、202dなどを用いて、壁面からワイヤ206a、206bまでの距離を操作する。
【0051】
なお、狭小遊間にレールを設置し移動させる方法も考えられるが、レールを直線的に設置するためには壁面に堆積した土砂を除去して清掃をする必要がある。しかし本実施形態によれば壁面に堆積した土砂を除去して清掃の必要がない。
【0052】
調整部6について説明する。
ラインセンサ3はピントが合う範囲が狭く、壁面の凹凸によって撮像した画像にピンボケが生ずる可能性が高い。そこでラインセンサ3が適正な撮影距離を保持できる機構(調整部6)を設ける。
図3は、調整部6の構造の一実施例を示す断面図である。
図3の断面図は
図1のAA断面を示す図である。
【0053】
第一の本体部1をワイヤ206a、206bにより壁面に押し付け、更に調整部6をバネ301(弾性体)の押圧により壁面に押し付けることで、壁面からラインセンサ3の表面の距離を一定に保持している。すなわちラインセンサ3の前後に設けたローラー部4を壁面に密着させることで、撮影距離を一定に保つことができる。
【0054】
第一の本体部1と第二の本体部2と情報処理装置403との関係について説明する。
図4は、壁面撮像装置及び情報処理装置403の構成の一実施例を示す図である。
第一の本体部1又は第二の本体部2は処理部401と通信部402を有している。処理部401は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、マルチコアCPU、プログラマブルなデバイス(FPGA(Field Programmable Gate Array)やPLD(Programmable Logic Device)など)を用いた回路が考えられる。通信部402は、情報処理装置403の通信部404と通信をする。ただし、処理部401と通信部402は、第一の本体部1あるいは第二の本体部2それぞれが有していてもよい。
【0055】
処理部401は、ラインセンサ3、CCDカメラ14、CCDカメラ18、エンコーダ5、照明部19、打音検査部20と接続され、ラインセンサ3、CCDカメラ14、CCDカメラ18が撮像した画像情報、エンコーダ5が計測した計測情報、打音検査部20が検査した結果情報を、通信部402を介して情報処理装置403に送信する。
【0056】
情報処理装置403は処理部405と通信部404を有している。処理部405は、例えば、CPU、マルチコアCPU、プログラマブルなデバイスを用いた回路が考えられる。通信部404は、第一の本体部1又は第二の本体部2の通信部402と通信をする。
【0057】
処理部405は、通信部404を介して取得した画像情報に基づいて壁面画像を生成する。また、計測情報に基づいてラインセンサ3が移動した距離を求める。結果情報に基づいて劣化度などを求める。更に、処理部405は計測情報、撮像画像、劣化度などを関連付け、撮像画像とともに距離情報や劣化度を表示装置(不図示)に表示させるための表示情報を生成してもよい。
【0058】
図5は、壁面撮像装置の動作の一実施例を示すフロー図である。
ステップS1では、処理部401が情報処理装置403から撮像開始要求を取得したか否かを判定し、撮像開始要求を取得した場合(Yes)にはステップS2に移行し、撮像開始要求を取得していない場合(No)にはステップS1で待機する。
【0059】
ステップS2では、処理部401がラインセンサ3が起動したか否かを判定し、ラインセンサ3が起動している場合(Yes)にはステップS3に移行し、起動していない場合(No)にはステップS2で待機するか又はステップS1に移行する。
【0060】
ステップS3では、牽引ワイヤ204が牽引されて、エンコーダ5が計測を始めたことを処理部401が検出すると、ラインセンサ3に撮像を開始させる。
ステップS4では、ラインセンサ3が所定距離を移動したか否かを処理部401が判定し、所定距離移動した場合(Yes)にはステップS5に移行し、所定距離移動していない場合(No)にはステップS4で所定距離移動するまで待機する。なお、ラインセンサ3が移動した距離はエンコーダ5の計測したカウント値を用いて求める。
【0061】
ステップS5では、処理部401がラインセンサ3が所定距離において撮像した撮像画像を情報処理装置403に送信する。
ステップS3からステップS5の処理において、例えば撮像対象範囲の距離が10[m]である場合、ラインセンサ3が1[m]進むごとに1[m]分の撮像画像を10回に分けて情報処理装置403に送信してもよいし、ラインセンサ3が10[m]進んでから一度に10[m]分の撮像画像を情報処理装置403に送信してもよい。
【0062】
ステップS6では、処理部401が情報処理装置403から撮像停止要求を取得したか否かを判定し、撮像停止要求を取得した場合(Yes)には撮像を停止し、
図5に示す処理を終了する。撮像停止要求を取得していない場合(No)にはステップS4に移行して撮像を継続する。撮像停止要求は、例えば、エンコーダ5の計測したカウント値が、情報処理装置403に予め記憶しておいた距離(撮像対象範囲の距離)に対応するカウント値になると、情報処理装置403は処理部401に撮像停止要求を送信する。
【0063】
なお、情報処理装置403は撮像画像がずれた場合などには画像処理を実施して補正をしてもよい。例えば、ラインセンサ3の移動速度が変わっても、エンコーダ5が計測した壁面を移動した距離に関する情報と、連動して撮像された撮像画像と、を用いて補正ができるので、精度のよい壁面画像を作成できる。
【0064】
実施形態によれば、(A)ラインセンサを狭小遊間にある障害物の影響を最小にして安定して移動させる第一の機構、(B)ラインセンサと狭小遊間の壁面との距離を一定に保持させる第二の機構を用いることで、狭小遊間の壁面でも精度よく面的な正射画像(オルソ画像)を撮像することができる。その結果、精度のよい撮像画像を用いて狭小遊間の壁面の調査及び点検をすることができるため、調査及び点検の精度も向上する。
【0065】
また、実際の壁面に、型枠の段差(高さ約2.5[mm])や発泡スチロールの付着物(高さ約1[mm])を設け、壁面にメジャーを貼り付け、本撮像装置を用いて、メジャーとともに壁面を撮像する実験を実施した。そして撮像画像に撮像されたメジャーから基準となる区間10[mm]を切り出し、その区間10[mm]にあるピクセル数を求め、ピクセルの幅を0.08[mm]として、区間の長さ(0.08×ピクセル数)を求めた。実験の結果、次のようなピクセル数「126」「128」「131」「132」「124」「128」「120」が計測できた。上記ピクセル数の最大「132」に対応する長さは10.56[mm]であるので、実際の区間10[mm]との誤差は最大でも0.56[mm](誤差率:5.6[%])となる。従って、上記実験から分かるように壁面に障害物があっても、ラインセンサ3を安定して移動することで、微細なひび割れが分かるほど高精度な撮像をすることができた。
【0066】
また、本発明は、以上の実施の形態に限定されるものでなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変更が可能である。