【文献】
Kentarou Fukumoto,Kumi Adachi,Akihiro Kajiyama,Yuri Yamazaki,Fumika Yakushiji,Yoshio Hayashi,Development of a solid-supported biotinylation reagent for efficient biotin labeling of SH groups on,Tetrahedron Letters,2012年 2月 1日,Volume 53, Issue 5,Pages 535-538
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記SH基の保護基が、t−ブチル、トリチル、ベンズヒドリル、ベンジル、メチルベンジル、ジメチルベンジル、トリメチルベンジル、メトキシベンジル、ジメトキシベンジル、トリメトキシベンジル、ニトロベンジル、アセトアミドメチル、9−フルオレニルメチル、カルボニルベンジルオキシ、ジフェニルベンジル、エチルカルバモイル、ピコリル、スルホニル又はその塩から選択される、請求項4又は5に記載の方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、従来とは全く異なり、精製を必要としないという特長を有する新規ペプチド合成手法の提供、ならびに新規人工機能タンパク質の合成・創出、新規機能ペプチドの合成・創出を可能とする新規化合物、また、ペプチドに囚われない有機化合物、その製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
特許文献4に開示の化合物はSH選択的標識試薬として有用であるが、これ自体を新規ペプチドの合成手法として用いるものではない。
本発明者らは、更に研究を進め、S−S結合形成能を有する3−ニトロ−2−クロルスルフェニルピリジンに着目し、クロルスルフェニルピリジン構造を樹脂に担持した化合物を創出したところ、驚くべきことに、当該化合物を用いることにより異なったペプチドフラグメントが精製過程を経ることなく、至極簡単な方法で逐次いくつも繋いでいくことが可能であることを見出し、本発明に到達した。
【0012】
即ち、本発明は、
[1]以下の式(I)で表される化合物又はその塩。
【化1】
(式中、
Wは、他の環員原子と一緒になって、ピリジン、ピラジン、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、キノリン、イソキノリン、キノキサリン、フェナントロリン、プテリジン又はアゾシンから選択される含窒素複素環を形成し、
Xは、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素から選択されるハロゲン原子を表し、
Yは、前記含窒素複素環上に存在する水素原子又は電子吸引性の置換基を表し、
Rは、高分子担体を表し、
L
0、L
1は、それぞれ独立して存在してよく、存在する場合は、化学的に安定な構造を有するリンカーを表し、
A
a、A
bは、それぞれ独立して存在してよく、存在する場合は、それぞれ、L
0−L
1、L
1−Rを繋ぐ官能基を表し、
nは0〜10の整数を表す。)
[2]A
a、A
bは、存在する場合は、それぞれ独立に、アルケン、アルキン、カルボニル、エステル、エーテル、オキシアルキレン、アミド、ウレア、ヒドラジン、トリアゾール、スルホン、スルホキシド、スルホン酸エステル、スルホンアミド、スルフィン酸エステル、スルフィンアミド、ピペリジン、及びジオキサンからなる群から選択される、[1]に記載の化合物又はその塩
[3]前記含窒素複素環がピリジン環であり、L
1が存在せず、A
aがアミド基であり、A
bが存在せず、nが1である、以下の式(II)で表される、[1]に記載の化合物又はその塩。
【化2】
(式中、X、Y、R、L
0は、式(I)で定義した通りである。)
[4]前記含窒素複素環がピリジン環であり、A
aがアミド基であり、A
bがアミド基であり、nが1〜5であり、以下の式(II―a)で表される、[1]に記載の化合物又はその塩。
【化3】
(式中、X、Y、R、L
0、L
1は、式(I)で定義した通りである。)
[5]前記電子吸引性の置換基がニトロ基、トリフルオロメチル基、又はハロゲンである[1]〜[4]のいずれか1項に記載の化合物又はその塩。
[6]L
0及びL
1は、存在する場合は、各々独立して、直鎖又は分枝鎖のC1〜C20のアルキレン、C2〜C20のアルケニレン、C2〜C20のアルキニレン、3〜20の炭素原子を有するシクロアルキレン、3〜20の炭素原子を有するシクロアルケニレン、アリーレン、単環式ヘテロアリーレン、複素環、アミン、アミド、エーテル、エステル、スルフィド、ケトン、ポリエチレングリコール鎖及び以下の式(a)で表される基
【化4】
(式中、R
aは、置換されていてもよいC1〜C15のアルキレンを表す。)
からなる群から選択され、これらのアルキレン、アルケニレン、アルキニレン、シクロアルキレン、シクロアルケニレン、アリーレン及び単環式ヘテロアリーレンは置換基を有していてもよい、[1]〜[5]のいずれか1項に記載の化合物又はその塩。
[7]Rが、固相合成法に用いられる高分子担体である、[1]〜[6]のいずれか1項に記載の化合物又はその塩。
[8]Rが、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエーテル、ポリ塩化ビニル、デキストラン、アクリルアミド、ポリエチレングリコール、これらの共重合体及び架橋体、磁性ビーズ、並びにこれらの組み合わせからなる群から選択される、[7]に記載の化合物又はその塩。
[9][1]〜[8]のいずれか1項に記載の化合物又はその塩を含むSH基選択的反応性固相担持型試薬。
[10]以下の式(I)で表される化合物を
【化5】
(式中、Wは、他の環員原子と一緒になって、ピリジン、ピラジン、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、キノリン、イソキノリン、キノキサリン、フェナントロリン、プテリジン又はアゾシンから選択される含窒素複素環を形成し、
Xは、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素から選択されるハロゲン原子を表し、
Yは、水素原子又は電子吸引性の置換基を表し、
Rは、高分子担体を表し、
L
0、L
1は、存在する場合は、化学的に安定な構造を有するリンカーを表し、
A
a、A
bは、存在する場合は、それぞれ、L
0−L
1、L
1−Rを繋ぐ官能基を表し、
nは0〜10の整数を表す。)
式(III)で表される化合物と反応させて、
【化6】
(式中、
Q
1は有機化合物を表し、
L
2は、存在する場合は、化学的に安定な構造を有するリンカーを表し、
A
1は、存在する場合は、S−PGを有する官能基を表し、
PGは、SH基の保護基又は水素原子を表す。)
以下の式(IV)で表される化合物を製造する方法。
【化7】
(式中、W、Y、R、L
0、L
1、A
a、A
b、nは式(I)で定義した通りであり、Q
1、L
2、A
1は式(III)で定義した通りである。)
[11]L
2が、直鎖又は分枝鎖のC1〜C10のアルキレン、C2〜C10のアルケニレン、C2〜C10のアルキニレン、3〜10の炭素原子を有するシクロアルキレン、3〜10の炭素原子を有するシクロアルケニレン、アリーレン、単環式ヘテロアリーレン、複素環、アミン、アミド、エーテル、エステル、スルフィド、ケトン、ポリエチレングリコール鎖、ポリアミド及び以下の式(a)で表される基
【化8】
(式中、R
aは、置換されていてもよいC1〜C15のアルキレンを表す。)
からなる群から選択され、これらアルキレン、アルケニレン、アルキニレン、シクロアルキレン、シクロアルケニレン、アリーレン及び単環式ヘテロアリーレンは置換基を有していてもよい、[10]に記載の方法。
[12]Q
1が、アミノ酸、ペプチド、タンパク質、抗体、核酸塩基、ヌクレオチド又はヌクレオシドから選択される生体由来有機化合物、高分子化合物、低分子化合物、蛍光標識物質、酵素標識物質、ビオチン、キレート剤、及びそれらの同位体を含む誘導体からなる群から選択される、[10]又は[11]に記載の方法。
[13]前記SH基の保護基が、t−ブチル、トリチル、ベンズヒドリル、ベンジル、メチルベンジル、ジメチルベンジル、トリメチルベンジル、メトキシベンジル、ジメトキシベンジル、トリメトキシベンジル、ニトロベンジル、アセトアミドメチル、9−フルオレニルメチル、カルボニルベンジルオキシ、ジフェニルベンジル、エチルカルバモイル、ピコリル、スルホニル又はその塩から選択される、[10]〜[12]のいずれか1項に記載の方法。
[14]式(IV)で表される化合物を
【化9】
(式中、
Wは、他の環員原子と一緒になって、ピリジン、ピラジン、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、キノリン、イソキノリン、キノキサリン、フェナントロリン、プテリジン又はアゾシンから選択される含窒素複素環を形成し、
Yは、水素原子又は電子吸引性の置換基を表し、
Rは、高分子担体を表し、
L
0、L
1、L
2は、存在する場合は、化学的に安定な構造を有するリンカーを表し、
A
a、A
bは、存在する場合は、それぞれ、L
0−L
1、L
1−Rを繋ぐ官能基を表し、
A
1は、存在する場合は、S−PGを有する官能基を表し、
Q
1は有機化合物を表し、
nは0〜10の整数を表す)
式(V)で表される化合物と反応させて、
【化10】
(式中、
Q
2は有機化合物を表し、
L
3は、存在する場合は、化学的に安定な構造を有するリンカーを表し、A
2は、存在する場合は、S−PGを有する官能基を表し、PGは、SH基の保護基又は水素原子を表す)
式(VI)で表される化合物を製造する方法。
【化11】
(式中、Q
1、Q
2、L
2、L
3、A
1、A
2は、上記で定義したとおりである。)
[15]前記電子吸引性の置換基がニトロ基、トリフルオロメチル基又はハロゲンである[14]に記載の方法。
[16]L
2、L
3は、それぞれ独立して、直鎖又は分枝鎖のC1〜C10のアルキレン、C2〜C10のアルケニレン、C2〜C10のアルキニレン、3〜10の炭素原子を有するシクロアルキレン、3〜10の炭素原子を有するシクロアルケニレン、アリーレン、単環式ヘテロアリーレン、複素環、アミン、アミド、エーテル、エステル、スルフィド、ケトン、ポリエチレングリコール鎖、ポリアミド及び以下の式(a)で表される基
【化12】
(式中、R
aは、置換されていてもよいC1〜C15のアルキレンを表す。)
からなる群から選択され、これらアルキレン、アルケニレン、アルキニレン、シクロアルキレン、シクロアルケニレン、アリーレン及び単環式ヘテロアリーレンは置換基を有していてもよい、[14]又は[15]に記載の方法。
[17]Q
1、Q
2は、それぞれ独立して、アミノ酸、ペプチド、タンパク質、抗体、核酸塩基、ヌクレオチド又はヌクレオシドから選択される生体由来有機化合物、高分子化合物、低分子化合物、蛍光標識物質、酵素標識物質、キレート剤、ビオチン、及び安定同位体を含むそれらの誘導体からなる群から選択される、[14]〜[16]のいずれか1項に記載の方法。
[18](a)式(1)で表される化合物を、塩化チオニル、塩化オキサリル、ジクロロアルキルヒダントイン、オキシ塩化リン又は五塩化リンと反応させて、式(2)で表される化合物を調製する工程、
【化13】
(Yは、水素原子又は電子吸引性の置換基を表し、L
0は、存在する場合は、化学的に安定なリンカーを表す。)
【化14】
(b)式(2)で表される化合物を、R'OH(R'は、C1〜C10のアルキル基を表す)と反応させて、式(3)で表される化合物を調製する工程、
【化15】
(c)式(3)で表される化合物を、塩基条件下で1〜3級アルキルチオールと反応させて、式(4)で表される化合物を調製する工程、
【化16】
(R”は、脱離基となる1級〜3級炭素を表す。)
(d)式(4)で表される化合物を、塩基条件下で加水分解して、式(5)で表される化合物を調製する工程
【化17】
(e)式(5)で表される化合物を、塩基存在下でNH
2−R(Rは、高分子担体を表す。)と反応させて、式(6)で表される化合物を調製する工程、及び
【化18】
(f)式(6)で表される化合物を塩化スルフリル、塩素ガス、オキシ塩化リン、五塩化リン、臭素、フッ化アルキルピリジン、フッ化キヌクリジン又はヨウ素と反応させて式(II)で表される化合物を調製する工程
【化19】
(Xは、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素から選択されるハロゲン原子を表し、Yは、水素原子又は電子吸引性の置換基を表し、Rは、高分子担体を表し、L
0は、存在する場合は、化学的に安定な構造を有するリンカーを表す。)
を含む、式(II)で表される化合物を製造する方法。
[19](g)式(7)で表される化合物を、脱水縮合剤存在下でNH
2−R(Rは、高分子担体を表す。)と反応させて式(8)で表される化合物を調製する工程、
【化20】
(Aはアミノ基のウレタン構造を有する保護基を表し、L
1は、化学的に安定な構造を有するリンカーを表す)
【化21】
(h)式(8)で表される化合物をピペリジン、ジエチルアミン、ジアルキルアミン、トリフルオロ酢酸、塩酸又は塩化水素と反応させるか、又は接触水素還元により、式(9)で表される化合物を調製する工程、
【化22】
(i)式(9)の化合物を、脱水縮合剤の存在下で式(7)の化合物と反応させて、式(10)で表される化合物を調製する工程、
【化23】
(j)式(10)で表される化合物に対し、工程(h)及び(i)の操作を交互にn−2回繰り返すことにより、式(11)で表される化合物を調製する工程、
【化24】
(k)式(11)で表される化合物を、ピペリジン、ジエチルアミン、ジアルキルアミン、トリフルオロ酢酸、塩酸又は塩化水素と反応させるか、又は接触水素還元により、式(12)で表される化合物を調製する工程、
【化25】
(l)式(12)で表される化合物を、脱水縮合剤存在下で、式(5)で表される化合物と反応させて式(13)で表される化合物を調製する工程、
【化26】
(Yは、水素原子又は電子吸引性の置換基を表し、L
0は、存在する場合は、化学的に安定なリンカーを表し、R“は、脱離基となる1級〜3級炭素を表す。)
【化27】
(m)式(13)で表される化合物を塩化スルフリルもしくは塩素ガスと反応させて式(II−a’)で表される化合物を調製する工程
を含む、式(II−a’)で表される化合物を製造する方法。
【化28】
(式中、Xは、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素から選択されるハロゲン原子を表し、Yは、水素原子又は電子吸引性の置換基を表し、Rは、高分子担体を表し、L
0は存在するならば化学的に安定なリンカーを表し、L
1は、化学的に安定な構造を有するリンカーを表し、nは1〜10の整数を表す。)
を、提供するものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の化合物をペプチド合成に用いると、異なったペプチドフラグメントを逐次簡単な方法で、いくつも繋いでいくことが可能である。本発明の化合物ではスルフェニルピリジン構造の官能基が樹脂上に固定されているため、別のペプチドとジスルフィドカップリングの各ステップで特段精製しなくても、濾過するだけで、濾液から高純度の縮合ペプチドを得ることができる。また、樹脂上で形成される活性ジスルフィドの反応性はとても高く、かつ選択的であるため、ペプチド鎖の側鎖官能基を保護基で保護する必要はなく、理論的にはかなりの回数、無保護のペプチドフラグメントを繋いでいくことができ、所謂電車ペプチドを得ることができる。
【0014】
また、本発明の化合物は、従来の生理活性ペプチド合成とは異なる新規合成手法を提供することができる。即ち、従来のペプチド合成では、ペプチド結合を全て繋いでおいてから、最後にS−S結合を形成させるが、本発明の化合物を用いると、先ずペプチドフラグメントをS−S結合で繋いでおいてから、つまり、ジスルフィドライゲーションを行ったのちに特定のペプチド結合を分子内反応で形成するという、新しいペプチド合成手法を提供することができる。
【0015】
このように、本発明の化合物は、全く新しい化合物と言える「電車ペプチド」や「天然ペプチド」の新規合成手法を提供することが可能である。さらに、タンパク質の二次構造ドメインを小さなフラグメントペプチドとしてS−S結合で繋いでいくことでタンパク質、即ちds−プロテイン(ジスルフィドプロテイン)や、最終的には巨大な「人工酵素」の合成も可能である。
したがって、本発明は医薬および化学産業において新規分子を創出できる有効な技術の提供することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の1つの態様は、以下の式(I)で表される化合物又はその塩である。
【化29】
【0018】
式(I)において、Wは、他の環員原子と一緒になって、ピリジン、ピラジン、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、キノリン、イソキノリン、キノキサリン、フェナントロリン、プテリジン、アゾシンより選択される含窒素複素環を形成し、好ましくはピリジンである。
【0019】
式(I)において、Xは、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素から選択されるハロゲン原子を表し、好ましくは、塩素又は臭素である。
【0020】
式(I)において、Yは、水素原子又は電子吸引性の置換基を表す。電子吸引性の置換基としては、好ましくニトロ基、トリフルオロメチル基又はハロゲン(例えば、塩素)であり、より好ましくはニトロ基である。
【0021】
式(I)において、L
0は、含窒素複素環Wと化学的に結合し、安定な構造を有するリンカーを表す。L
0として表されるリンカーは、直鎖又は分枝鎖のC1〜C10のアルキレン、C2〜C10のアルケニレン、C2〜C10のアルキニレン、3〜10の炭素原子を有するシクロアルキレン、3〜10の炭素原子を有するシクロアルケニレン、アリーレン、単環式ヘテロアリーレン、複素環、アミン、アミド、エーテル、エステル、スルフィド、ケトン、ポリエチレングリコール鎖及び以下の式(a)で表される基:
【化30】
(式中、Raは、置換されていてもよいC1〜C15のアルキレンを表す。ここで、置換基としては任意の置換基が選択できるが、例えば、アルキル基、置換基(例えば、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン等)を有してもよいアリール基、アルコキシ基などが挙げられる。)
からなる群から選択される。
L
0として、好ましくは、C2〜C6のアルキレン、分子量100〜1000のポリエチレングリコール鎖、もしくはL
0自体が存在しないことである。L
0が存在しないときは、含窒素複素環Wが直接A
aと結合した構造となる。
上記のアルキレン、アルケニレン、アルキニレン、シクロアルキレン、シクロアルケニレン、アリーレン及び単環式ヘテロアリーレンは置換基を有していてもよく、置換基としては任意の置換基が選択できる。
【0022】
式(I)において、L
1は、化学的に安定な構造を有するリンカーを表す。L
1として表されるリンカーは、直鎖又は分枝鎖のC1〜C10のアルキレン、C2〜C10のアルケニレン、C2〜C10のアルキニレン、3〜10の炭素原子を有するシクロアルキレン、3〜10の炭素原子を有するシクロアルケニレン、アリーレン、単環式ヘテロアリーレン、複素環、アミン、アミド、エーテル、エステル、スルフィド、ケトン、ポリエチレングリコール鎖及び以下の式(a)で表される基:
【化31】
(式中、R
aは、置換されていてもよいC1〜C15のアルキレンを表す。ここで、置換基としては任意の置換基が選択できるが、例えば、アルキル基、置換基(例えば、アルキル基、アルコキシ基等)を有してもよいアリール基、アルコキシ基などが挙げられる。)
からなる群から選択される。
L
1として、好ましくは、C1〜C6のアルキレン、分子量100〜1000のポリエチレングリコール鎖、式(a)で表される基である。
上記のアルキレン、アルケニレン、アルキニレン、シクロアルキレン、シクロアルケニレン、アリーレン及び単環式ヘテロアリーレンは置換基を有していてもよい。置換基としては、置換又は無置換のアルキル基、置換又は無置換のアリール基、ハロゲン、ニトリル;カルボン酸、スルホン酸、スルフィン酸及びこれらの塩が挙げられる。ここで、アルキル基、アリール基が有することができる置換基としては、アルキル基、アリール基;カルボン酸、スルホン酸、スルフィン酸及びこれらの塩;アミノ基、ヒドロキシル基、グアニジノ基、アルコキシ基、単環式ヘテロアリール、カルバモイル基、チオール基、チオエーテル基、スルホキシド、スルホンなどが挙げられる。
【0023】
式(I)において、A
aは、存在する場合は、「L
0−L
1」を繋ぐ官能基を表す。ここで、リンカーL
0が存在しない場合は、A
aは含窒素複素環Wと化学的に結合した官能基を表す。A
aとして表される官能基は、アルケン、アルキン、カルボニル、エステル、エーテル、オキシアルキレン、アミド、ウレア、ヒドラジン、トリアゾール、スルホン、スルホキシド、スルホン酸エステル、スルホンアミド、スルフィン酸エステル、スルフィンアミド、ピペリジン、及びジオキサンからなる群から選択される。L
0として、好ましくは、カルボニル、エステル、アミド、エーテル、オキシアルキレンである。
【0024】
式(I)において、A
bは、存在する場合は、「L
1−R」を繋ぐ官能基を表す。ここで、リンカーL
1が存在しない場合は、A
bはRと化学的に結合した官能基を表す。A
bとして表される官能基は、アルケン、アルキン、カルボニル、エステル、エーテル、オキシアルキレン、アミド、ウレア、ヒドラジン、トリアゾール、スルホン、スルホキシド、スルホン酸エステル、スルホンアミド、スルフィン酸エステル、スルフィンアミド、ピペリジン、及びジオキサンからなる群から選択される。A
bとして、好ましくは、カルボニル、エステル、アミド、エーテル、オキシアルキレンである。
【0025】
式(I)において、nは0〜10の整数を表し、好ましくは0〜5の整数である。
【0026】
式(I)において、Rは、高分子担体を表し、典型的には、固相合成法に用いられる高分子担体である、このような高分子担体として、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエーテル、ポリ塩化ビニル、デキストラン、アクリルアミド、ポリエチレングリコール、これらの共重合体及び架橋体、磁性ビーズ、並びにこれらの組み合わせからなる群から選択され、より好ましくはポリスチレン、ポリエチレングリコール、及びポリエチレングリコールの架橋体である。これらの高分子担体は、A
bの置換基とメチル基などのアルキル基などを介して結合していてもよい。
樹脂の形状は球状がより望ましい。好ましい樹脂の平均粒径は、100〜400meshである。
【0027】
本発明の化合物の一つの実施形態は、式(I)において含窒素複素環Wがピリジン環であり、以下の式(I−a)で表される化合物である。
【化32】
式(I−a)において、X、Y、R、L
0、L
1、A
a、A
b、nは、式(I)について定義した通りである。
【0028】
本発明の化合物の一つの実施形態は、式(I)において含窒素複素環Wがピリジン環であり、L
1が存在せず、A
aがアミドであり、A
bが存在せず、nが1であり、以下の式(II)で表される化合物である。
【化33】
式(II)において、X、Y、R、L
0は、式(I)について定義した通りである。
【0029】
また、本発明の化合物のもう一つの実施形態は、含窒素複素環Wがピリジン環であり、A
aがアミドであり、A
bがアミドであり、nが1〜5であり、以下の式(II―a)で表される、以下の式(II−a)で表される化合物である。
【化34】
(式中、X、Y、R、L
0、L
1、nは、式(I)で定義した通りである。)
【0030】
本発明の式(I)、(II)及び式(II−a)の化合物として、具体的には、以下の化合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0031】
【化35】
化合物A
Resin:ポリエチレングリコールの架橋体(MethylChemMatrix(登録商標)樹脂)
【化36】
Resin:ポリエチレングリコールの架橋体(MethylChemMatrix(登録商標)樹脂)
【化37】
Resin:ポリエチレングリコールの架橋体(MethylChemMatrix(登録商標)樹脂)
【化38】
Resin:ポリスチレン樹脂
【化39】
Resin:ポリスチレン樹脂
【化40】
Resin:ポリスチレン樹脂
【化41】
Resin:ポリエチレン樹脂
【化42】
Resin:ポリスチレン樹脂
【化43】
Resin:ポリスチレン樹脂
【化44】
Resin:ポリスチレン樹脂
【化45】
Resin:ポリスチレン樹脂
【化46】
Resin:ポリスチレン樹脂
【化47】
Resin:ポリエチレングリコール・ポリスチレン複合樹脂
【化48】
Resin:ポリスチレン樹脂
【0032】
本発明の化合物の合成方法
次に、本発明の化合物の合成方法を示すが、まず、式(I)において含窒素複素環Wがピリジン環であり、L
1が存在せず、A
aがアミドであり、A
bが存在せず、nが1である式(II)で表される化合物の合成方法を以下に示す。
【0033】
化合物(II)の合成スキーム
【化49】
【0034】
工程(a)
式(1)の化合物をDMFなどの溶媒に溶解し、溶液を不活性ガス気流下氷浴などで冷却しながら塩化チオニル(SOCl
2)を添加し、その後80℃程度に加熱して15〜20時間反応させる。濃縮により、溶媒と塩化チオニルを留去し、ヘキサン等の溶媒を加え、3〜5回程度共沸を繰り替えし、減圧下乾燥することで化合物(2)が得られる。なお、式(1)の化合物は、例えば、Yが3−ニトロ基の場合は、2−ヒドロキシ−5−アルキルカルボキシ−ピリジンに発煙硝酸と反応させることで得ることができる。
【0035】
工程(b)
式(2)の化合物をR'OH(R'は、C1〜C6のアルキル基、例えばメチル基を表す)と反応させ、減圧下乾燥することにより式(3)の化合物を合成することができる。
【0036】
工程(c)
メタノール等の溶媒に式(3)の化合物とC4〜25程度の1級〜3級アルキルチオールを溶解し、トリエチルアミンなどの塩基を加え、50〜70℃程度で還流下数時間反応させる。反応液を室温まで放冷した後、溶媒を減圧下留去し得られる残渣に蒸留水を加え、酢酸エチルにより抽出を行い、無水硫酸ナトリウムなどにより乾燥した後、得られた固体を再結晶することにより式(4)の化合物を合成することができる。式(4)において、R”は、脱離基となる1級〜3級炭素であり、例えば、ベンジル、メトキシベンジル、ジメチルアミノベンジル、トリチル、クロロトリチル、メチルトリチル、メトキシトリチル、ターシャリーブチルを表す。
【0037】
工程(d)
式(4)の化合物をメタノール等の溶媒に溶解し、溶液を冷却し、次に水酸化リチウム・一水和物と純水を加え、室温で20時間程度反応させる。その後、減圧下溶媒を留去した後、水溶液に10%程度のクエン酸水溶液をpHが2〜3になるまで添加し、得られた水溶液に対し、酢酸エチルで抽出後、減圧下溶媒を留去し、真空下乾燥することで式(5)の化合物を合成することができる。
【0038】
工程(e)
容器に、式(5)の化合物、略等モルの(O−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N′,N′−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート)(HATU)、DMFなどの溶媒、ジイソプロピルエチルアミンを順次添加し、1〜2分間振とう撹拌を行う。次に、H
2N−R(Rは、固相合成法に用いられる高分子担体)をいれた別の容器に、上記の溶液を一度に添加し、マグネチックスターラーや、撹拌羽による撹拌、もしくは振とう攪拌固相合成機(例えば、国産化学株式会社製の振とう攪拌固相合成機KMS−3)で、振とう撹拌を行う。1〜2時間後撹拌を止め、溶媒を濾去し、DMFで10回程度、メタノールで5回程度、ジエチルエーテルで3回程度順次洗浄した後、得られた樹脂を1mg程度取り、Kaiser test(フェノール・エタノール溶液、シアン化カリウム水溶液・ピリジン溶液、ニンヒドリン・エタノール溶液の混液による遊離アミノ基呈色反応試験)に付し、陰性である事を確認する。得られた樹脂を減圧下乾燥することで式(6)の化合物を合成することができる。
【0039】
工程(f)
式(6)の化合物に1,2−ジクロロエタン等の溶媒を加え穏やかに数分間撹拌し固相担体を膨潤させる。溶媒を除去した後冷却し、ピリジン、塩化スルフリル及び1,2−ジクロロエタンの混合液を加え、氷冷下穏やかに1〜2時間程度撹拌する。撹拌後溶液を少量取り、
1H−NMRにてR’’由来のアルキル生成物の生成を確認した後、溶液を除去し、脱水ジクロロメタンを加え数回洗浄することで、式(II)の化合物を合成することができる。なお、塩化スルフリルに代えて塩素ガス、オキシ塩化リン、五塩化リン、臭素、フッ化アルキルピリジン、フッ化キヌクリジン又はヨウ素を用いることも可能である。
【0040】
式(II−a)の化合物の合成方法
式(I)において、含窒素複素環Wがピリジン環であり、L
1が存在し、A
aがアミドであり、A
bがアミドであり、nが1〜5である式(II―a)で表される化合物は、以下の合成スキームで製造することができる。なお、合成スキームの記載の便宜上、以下のスキームで式(II−a)の化合物を(II−a’)の式で表しているが、いずれの式も同じ化合物を表している。
【化50】
【0041】
工程(g)
容器に、式(7)の化合物、略等モルのHATUなどの脱水縮合剤、DMFなどの溶媒、ジイソプロピルエチルアミンを順次添加し、1〜2分間振とう撹拌を行う。式(7)において、Aはアミノ基のウレタン構造を有する保護基を表し、具体的には、アミノ基の保護基であり、9−フルオレニルメチルオキシカルボニル基、ターシャリーブチルオキシカルボニル基又はベンジルオキシカルボニル基等を表す。次に、H
2N−R(Rは、固相合成法に用いられる高分子担体)をいれた別の容器に、上記の溶液を一度に添加し、振とう攪拌固相合成機(例えば、国産化学株式会社製の振とう攪拌固相合成機KMS−3)で、振とう撹拌を行う。1〜2時間後撹拌を止め、溶媒を濾去し、DMFで10回程度、メタノールで5回程度、ジエチルエーテルで3回程度順次洗浄した後、得られた樹脂を1mg程度取り、Kaiser test(フェノール・エタノール溶液、シアン化カリウム水溶液・ピリジン溶液、ニンヒドリン・エタノール溶液の混液によるアミノ基呈色反応試験)に付し、陰性である事を確認する。得られた樹脂を減圧下乾燥することで式(8)の化合物を合成することができる。
【0042】
工程(h)
式(8)の化合物が入った容器に、20%ピペリジンDMF溶液を加え、振とう撹拌を行う。20分程度後に撹拌を止め、溶媒を濾去し、ジメチルホルムアミドで10回程度洗浄することで式(9)の化合物を得てそのまま次の反応に用いる。なお、ピペリジンに代えてジエチルアミン、ジアルキルアミン、トリフルオロ酢酸、塩酸又は塩化水素を用いることも可能である。
【0043】
工程(i)
式(9)の化合物が入った容器に、式(7)の化合物、DMF、脱水縮合剤(例えば、ジイソプロピルカルボジイミド、1−[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]1−H−ベンゾトリアゾリウム−3−オキシドヘキサフルオロホスファート(略称:HBTU)、1−[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]1H−1,2,3−トリアゾロ(4,5―b)ピリジニウム3−オキシドヘキサフルオロホスファート(略称:HATU)、ブロモトリス(ピロリジノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスファート(略称:PyBrop)ヒドロキシベンゾトリアゾール水和物)を順次添加し、振とう撹拌を行う。1〜2時間後撹拌を止め、溶媒を濾去し、ジメチルホルムアミドで10回程度洗浄することにより式(10)の化合物を得ることができる。この化合物はそのまま次の反応に用いる。別途、得られた化合物を1mg程度取り、Kaiser test(フェノール・エタノール溶液、シアン化カリウム水溶液・ピリジン溶液、ニンヒドリン・エタノール溶液の混液によるアミノ基呈色反応試験)に付し、陰性であることを確認する。
【0044】
工程(j)
式(10)の化合物に対し、上記の工程(h)と工程(i)の操作を交互にn−2回繰り返すことにより式(11)の化合物を得る。得られた式(11)の化合物はそのまま次の反応に用いる。なお、式(II−a)においてnが1の化合物を得る場合は、この工程は必要なく、式(10)の化合物が工程(k)に供される。
【0045】
工程(k)
式(11)の化合物が入った容器に、20%ピペリジンDMF溶液を加え、振とう撹拌を行う。20分程度後に撹拌を止め、溶媒を濾去し、ジメチルホルムアミドで10回程度洗浄することで式(12)の化合物を得てそのまま次の反応に用いる。なお、ピペリジンに代えてジエチルアミン、ジアルキルアミン、トリフルオロ酢酸、塩酸又は塩化水素をAの種類に応じて適宜用いることも可能である。
【0046】
工程(l)
容器に、式(5)の化合物、略等モルのHATU、DMF、略等モルのジイソプロピルエチルアミンを順次添加し、1分間程度振とう撹拌を行う。この溶液を、式(12)の化合物が入った容器に一度に添加し、振とう撹拌を行う。1〜2時間後撹拌を止め、溶媒を濾去し、ジメチルホルムアミドで10回程度、メタノールで5回程度、ジエチルエーテルで3回程度順次洗浄した後、減圧下乾燥することで式(13)の化合物を合成することができる。別途、得られた化合物を1mg程度取り、Kaiser testに付し、陰性であることを確認する。
【0047】
工程(m)
式(13)の化合物に1,2−ジクロロエタン等の溶媒を加え穏やかに数分間撹拌し固相担体を膨潤させる。溶媒を除去した後冷却し、ピリジン、塩化スルフリル及び1,2−ジクロロエタンの混合液を加え、氷冷下穏やかに1〜2時間程度撹拌する。撹拌後溶液を少量取り、
1H−NMRにてR’’由来のアルキル生成物の生成を確認した後、溶液を除去し、脱水ジクロロメタンを加え数回洗浄することで、式(II−a’)の化合物を合成することができる。
【0048】
本発明のSH基選択的反応性固相担持型試薬
本発明の化合物は、固相合成法に用いられる高分子担体に固定させることができるため、SH基を有する化合物と選択的に反応する固相担持型試薬として使用することができる。即ち、本発明の1つの態様は、式(I)、(II)又は(II−a)の化合物を含むSH基選択的反応性固相担持型試薬である。ここで、SH基選択的反応性とは、SH基を有する化合物のSH基と選択的に反応して結合することをいう。
【0049】
本発明のもう1つの態様は、式(I)、(II)又は(II−a)の化合物を、SH基を有する有機化合物又はSH基が保護基で保護された有機化合物と反応させて、S−S結合を導入する方法である。即ち、本発明の1つの実施形態は、式(I)で表される化合物を式(III)で表される化合物と反応させて、式(IV)で表される化合物を製造する方法である(以下「本発明の製造方法1」ともいう)。
【化51】
【0050】
式(III)及び(IV)において、Q
1は有機化合物を表す。Q
1としては、アミノ酸、ペプチド、タンパク質、抗体、核酸塩基、ヌクレオチド又はヌクレオシドから選択される生体由来有機化合物、高分子化合物、低分子化合物、蛍光標識物質、酵素標識物質、ビオチン、キレート剤、及びそれらの同位体を含む誘導体からなる群から選択される。
アミノ酸としては、必須アミノ酸、β−アラニンなどのβ−アミノ酸、γ−アミノ酪酸などのγアミノ酸、重水素化アミノ酸を含む安定同位体修飾されたアミノ酸などを用いることができる。存在する場合はA
1、存在する場合はL
1、及びS−PGは、アミノ酸の主鎖又は側鎖のいずれに結合してもよい。
ペプチドとしては、種々のオリゴペプチド、例えば、オリゴアルギニン、ポリリジン、アルギニル−グリシル−アスパラギンのような細胞接着因子ペプチド、リジル−ロイシル−アラニル−リジンのような細胞死誘発ペプチドなどが挙げられる。
タンパク質としては、例えば、ラミニン、CFP、GFP、YFP、アロフィコシアニン、フィコエリスリンなどが挙げられる。
抗体としては、例えば、モノクローナル抗体などが挙げられる。
核酸塩基、ヌクレオチド又はヌクレオシドとしては、例えば、アデニン、グアニン、チミン、ウラシル、シトシン、AMP、ADP,ATP、GTP、UTP、CTP、デオキシヌクレオチドdATPを含む誘導体などが挙げられる。
高分子化合物としては、例えば、合成ゴム、合成樹脂、合成繊維、天然ゴム、デンプン、糖鎖、油脂などが挙げられる。
低分子化合物としては、例えば、シアル酸、コレステロール、ビタミン、アルカロイド、ステロイド、シクロデキストリン、クラウンエーテル、EDTAなど、及びこれらの放射性同位体及び安定同位体などが挙げられる。
蛍光標識物質としては、フルオレセイン、クマリン、エオシン、フェナントロリン、ピレン、ローダミン、インドシアニン、キノキサリンやそれらの誘導体などが挙げられ、例えば、フルオレセインイソチオシアネートより誘導される物質が挙げられる。
酵素標識物質としては、β−ガラクトシダーゼ、アルカリホスファターゼ、グルコースオキシダーゼ、ペルオキシダーゼ等が挙げられる。
また、Q
1としては、アミノ酸、ペプチド、タンパク質、抗体、核酸塩基、ヌクレオチド又はヌクレオシドから選択される生体由来有機化合物、高分子化合物、低分子化合物、蛍光標識物質、酵素標識物質、ビオチン、キレート剤、及びそれらの同位体を含む誘導体からなる群から選択される有機化合物の2種類以上が結合したものであってもよい。2種類以上の有機化合物が結合する場合は、リンカー(直鎖又は分枝鎖のC1〜C10のアルキレン、C2〜C10のアルケニレン、C2〜C10のアルキニレン、3〜10の炭素原子を有するシクロアルキレン、3〜10の炭素原子を有するシクロアルケニレン、アリーレン、単環式ヘテロアリーレン、複素環、アミン、アミド、エーテル、エステル、スルフィド、カルボン酸、スルホン酸、スルホンアミド、ケトン、ポリエチレングリコール鎖、ポリアミド等)を介して結合させてもよい。
【0051】
式(III)及び(IV)において、L
2は、存在する場合は、化学的に安定な構造を有するリンカーを表す。L
2として表されるリンカーは、直鎖又は分枝鎖のC1〜C10のアルキレン、C2〜C10のアルケニレン、C2〜C10のアルキニレン、3〜10の炭素原子を有するシクロアルキレン、3〜10の炭素原子を有するシクロアルケニレン、アリーレン、単環式ヘテロアリーレン、複素環、アミン、アミド、エーテル、エステル、スルフィド、カルボン酸、スルホン酸、スルホンアミド、ケトン、ポリエチレングリコール鎖、ポリアミド及び以下の式(a)で表される基:
【化52】
(式中、R
aは、置換されていてもよいC1〜C15のアルキレンを表す。ここで、置換基としては任意の置換基が選択できるが、例えば、アルキル基、置換基(例えば、アルキル基、アルコキシ基等)を有してもよいアリール基、アルコキシ基などが挙げられる。)
からなる群から選択され、これらアルキレン、アルケニレン、アルキニレン、シクロアルキレン、シクロアルケニレン、アリーレン及び単環式ヘテロアリーレンは置換基を有していてもよく、置換基としては任意の置換基が選択できる。L
2として、好ましくは、C2〜C6のアルキレン、分子量100−1000のポリエチレングリコール、ポリアミドである。
【0052】
式(III)及び(IV)において、A
1は、存在する場合は、S−PGを有する官能基を表す。A
1は存在しなくてもよく、その場合、S−PGは、リンカーに直接結合するか、Q
1の有機化合物に直接結合してよい。
S−PGが結合しているA
1、即ち、A
1−S−PGとしては、例えば、システイン、SH基が保護基で保護されたシステイン、システインアミド、SH基が保護基で保護されたシステインアミド、システアミン、SH基が保護基で保護されたシステアミン、アセチルシステイン、SH基が保護基で保護されたアセチルシステイン、アミノアルキルチオール、SH基が保護基で保護されたアミノアルキルチオール、メルカプトエタノール、SH基が保護基で保護されたメルカプトエタノールが挙げられる。
【0053】
式(III)において、PGは、SH基の保護基又は水素原子を表す。SH基の保護基としては、t−ブチル、トリチル、ベンズヒドリル、ベンジル、メチルベンジル、ジメチルベンジル、トリメチルベンジル、メトキシベンジル、ジメトキシベンジル、トリメトキシベンジル、ニトロベンジル、アセトアミドメチル、9−フルオレニルメチル、カルボニルベンジルオキシ、ジフェニルベンジル、エチルカルバモイル、ピコリル、スルホニル又はその塩から選択される。
【0054】
本発明の1つの側面は、式(II)で表される化合物を式(III)で表される化合物と反応させて、式(IVa)で表される化合物を製造する方法である(以下「本発明の製造方法1a」ともいう)。
【化53】
L
0、Rは式(II)で定義した通りであり、Q
1、L
2、A
1は、式(III)で定義したとおりである。
【0055】
本発明のもう1つの側面は、式(II−a)で表される化合物を式(III)で表される化合物と反応させて、式(IVb)で表される化合物を製造する方法である(以下「本発明の製造方法1b」ともいう)。
【化54】
L
0、L
0、R、nは式(II−a)で定義した通りであり、Q
1、L
2、A
1は、式(III)で定義したとおりである。
【0056】
本発明の製造方法1、1a又は1bは、以下の手順により行うことができる。
式(I)、(II)又は(II−a)の化合物を容器にとり、固相担体上の官能基置換率に対して1.2〜50当量の式(III)化合物の溶液を加える、より好ましくは20〜50当量である。2〜8時間後、溶液を濾過により除き、用いた溶媒を用いて10回洗浄し、更にメタノールで5回、ジエチルエーテルで5回洗浄し減圧乾燥することで式(IV)、(IVa)又は(IVb)の化合物を得ることが出来る。尚、用いる溶媒は式(III)の化合物が十分溶解する溶媒であればよく、有機溶媒や水溶液を適宜選ぶ事ができる。例えばジクロロメタン、ジクロロエタン、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、酢酸エチル、メタノール、ヘキサン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、トリフルオロ酢酸、トリフルオロエタノール、蒸留水、緩衝液、酢酸、塩酸、ギ酸であり、好ましくはジクロロメタン、蒸留水、ギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸である。
【0057】
本発明の製造方法1、1a又は1bを用いて製造することができる化合物の非限定的例を以下に示す。
【化55】
Resin:ポリエチレングリコールの架橋体(MethylChemMatrix(登録商標)樹脂)
【化56】
Resin:ポリエチレングリコールの架橋体(MethylChemMatrix(登録商標)樹脂)
【化57】
Resin:ポリエチレングリコールの架橋体(MethylChemMatrix(登録商標))
【化58】
化合物R
Resin:ポリエチレングリコール、ポリスチレン複合樹脂
【化59】
Resin:ポリスチレン複合樹脂
【0058】
本発明のもう1つの態様は、式(IV)の化合物を、別のSH基を有する有機化合物又はSH基が保護基で保護された有機化合物と反応させて、S−S結合を有する化合物を製造する方法である。即ち、本発明の1つの実施形態は、式(IV)で表される化合物を式(V)で表される化合物と反応させて、式(VI)で表される化合物を製造する方法である(以下「本発明の製造方法2」ともいう)。
【化60】
【0059】
式(V)及び(VI)において、Q
2は、Q
1と同様に有機化合物を表し、Q
2としては、アミノ酸、ペプチド、タンパク質、抗体、核酸塩基、ヌクレオチド又はヌクレオシドから選択される生体由来有機化合物、高分子化合物、低分子化合物、蛍光標識物質、酵素標識物質、ビオチン、キレート剤、及びそれらの同位体を含む誘導体からなる群から選択される。Q
2について使用できる有機化合物は、Q
1について例示したものと同様である。
また、Q
2としては、アミノ酸、ペプチド、タンパク質、抗体、核酸塩基、ヌクレオチド又はヌクレオシドから選択される生体由来有機化合物、高分子化合物、低分子化合物、蛍光標識物質、酵素標識物質、ビオチン、キレート剤、及びそれらの同位体を含む誘導体からなる群から選択される有機化合物の2種類以上が結合したものであってもよく、2種類以上の有機化合物が結合する場合は、Q
1について例示したリンカーを介して結合させてもよい。
【0060】
式(V)及び(VI)において、L
3は、存在する場合は、化学的に安定な構造を有するリンカーを表す。L
3として表されるリンカーは、直鎖又は分枝鎖のC1〜C10のアルキレン、C2〜C10のアルケニレン、C2〜C10のアルキニレン、3〜10の炭素原子を有するシクロアルキレン、3〜10の炭素原子を有するシクロアルケニレン、アリーレン、単環式ヘテロアリーレン、複素環、アミン、アミド、エーテル、エステル、スルフィド、ケトン、ポリエチレングリコール鎖、ポリアミド及び以下の式(a)で表される基:
【化61】
(式中、R
aは、置換されていてもよいC1〜C15のアルキレンを表す。ここで、置換基としては任意の置換基が選択できるが、例えば、アルキル基、置換基(例えば、アルキル基、アルコキシル基等)を有してもよいアリール基、アルコキシ基などが挙げられる。)
からなる群から選択され、これらアルキレン、アルケニレン、アルキニレン、シクロアルキレン、シクロアルケニレン、アリーレン及び単環式ヘテロアリーレンは置換基を有していてもよく、置換基としては任意の置換基が選択できる。L
3として、好ましくは、C2〜C6のアルキレン、分子量100−1000のポリエチレングリコール、ポリアミドである。
【0061】
式(V)及び(VI)において、A
2は、存在する場合は、S−PGを有する官能基を表す。A
2は存在しなくてもよく、その場合、S−PGは、リンカーに直接結合するか、Q
2の有機化合物に直接結合してもよい。
S−PGが結合しているA
2、即ち、A
2−S−PGとしては、例えば、システイン、SH基が保護基で保護されたシステイン、システインアミド、SH基が保護基で保護されたシステインアミド、システアミン、SH基が保護基で保護されたシステアミン、アセチルシステイン、SH基が保護基で保護されたアセチルシステイン、アミノアルキルチオール、SH基が保護基で保護されたアミノアルキルチオール、メルカプトエタノール、SH基が保護基で保護されたメルカプトエタノールが挙げられる。好ましくはA
2が存在せず、SH基の保護基PGが水素原子若しくはメトキシトリチル基であり、すなわちL
3とPGが直接結合したQ
2−L
3−S−PGの構造を有するのが好ましい。また、より好ましくはPGが水素原子であり、Q
2−L
3−S−Hの構造を有するのが好ましい。
【0062】
式(V)において、PGは、SH基の保護基又は水素原子を表す。SH基の保護基としては、t−ブチル、トリチル、ベンズヒドリル、ベンジル、メチルベンジル、ジメチルベンジル、トリメチルベンジル、メトキシベンジル、ジメトキシベンジル、トリメトキシベンジル、ニトロベンジル、アセトアミドメチル、9−フルオレニルメチル、カルボニルベンジルオキシ、ジフェニルベンジル、エチルカルバモイル、ピコリル、スルホニル又はその塩から選択される。
【0063】
本発明の1つの側面は、式(IVa)で表される化合物を式(V)で表される化合物と反応させて、式(VI)で表される化合物を製造する方法である(以下「本発明の製造方法2a」ともいう)。
【0064】
本発明のもう1つの側面は、式(IVb)で表される化合物を式(V)で表される化合物と反応させて、式(VI)で表される化合物を製造する方法である(以下「本発明の製造方法2b」ともいう)。
【0065】
本発明の製造方法2、2a又は2bは、以下の手順により行うことができる。
(1)式(V)の化合物を溶媒に溶解させる。好ましい態様によれば、式(V)の化合物を水、又は1%以上の水を含む有機溶媒に溶解させる。また、この際のpHは中性付近が望ましく、pH6.5〜8.5が望ましい。また、水に代えて緩衝液を用いることができ、水、緩衝液及び有機溶媒のいずれかを組み合わせ用いることもできる。一方、有機溶媒を組み合わせ用いる場合は、水と混和する有機溶媒が望ましく、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、アセトン、ジメチルスルホキシド、アルコール、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサンなどが挙げられる。
(2)上記(1)で調製した式(V)の化合物の溶液と式(IV)、(IVa)又は(IVb)の化合物を混和する。この際、溶液の入った容器に式(IV)又は(IVa)の化合物を添加してもよいし、式(IV)、(IVa)又は(IVb)の化合物の入った容器に溶液を添加してもよい。尚、容器の形態、材質は限定されないが、好ましくはフィルター付きチューブ等の濾過用フィルターの付いた攪拌可能な容器が望ましい。混和は容器を静置しておいても良いが、振とうや、固相合成用振とう機、マグネチックスターラー、ボルテックスミキサー、スリーワンモーター等による攪拌により行う事が望ましい。
(3)上記(2)の混和により起こる反応により、通常5分〜2時間で反応を行うことが出来る。この反応で用いられる式(IV)、(IVa)又は(IVb)の化合物の添加量は、式(V)の化合物の量に応じて増減すればよい。例えば、式(V)の化合物1当量に対し、式(IV)、(IVa)又は(IVb)の化合物の量は過剰量用いるのが望ましく、より好ましくは1.2当量から10等量用いる。反応の完結は、溶液中の式(V)の化合物の消費を一般的な分析手法により判断する事が出来る。例えば、適用可能な分析手法として、適宜HPLC、NMR、TLC、IR、MSスペクトル、滴定等が挙げられ、式(V)及び(IV)の検出に適した手法が適宜利用できる。
(4)反応後、式(VI)の化合物、未反応の式(I)、(II)又は(IIa)の化合物、及び式(I)、(II)又は(IIa)が反応の進行と共に変化した化合物は濾過により分別され、濾液に式(VI)の化合物が溶液として得られる。濾過には使用器具、濾過手法にとらわれない。器具として濾紙、グラスファイバー、濾過助剤、濾布による濾過や、メンブランフィルター、グラスフィルター等が挙げられる。濾過手法としても、自然濾過、吸引ろ過、遠心分離、デカンテーション等があげられ、それぞれ用途や反応スケールに応じて適宜選択できる。
【0066】
本発明の製造方法2、2a又は2bを用いて製造することができる化合物の非限定的例を以下に示す。
【化62】
【化63】
化合物U
【0067】
化合物T及びUは、それぞれ、化合物O及びQとカプトプリルを反応させて非対称ジスルフィド合成により得られた化合物である。
【0068】
本発明の更にもう一つの実施形態は、式(I)で表される化合物を式(III)で表される化合物と反応させて式(IV)で表される化合物を製造し、式(IV)で表される化合物を式(V)で表される化合物と反応させて、式(VI)で表される化合物を製造する方法である。
【0069】
また、本発明のもう一つの側面は、式(II)で表される化合物を式(III)で表される化合物と反応させて式(IVa)で表される化合物を製造し、式(IVa)で表される化合物を式(V)で表される化合物と反応させて、式(VI)で表される化合物を製造する方法である。
【0070】
また、本発明のもう一つの側面は、式(IIa)で表される化合物を式(III)で表される化合物と反応させて式(IVb)で表される化合物を製造し、式(IVb)で表される化合物を式(V)で表される化合物と反応させて、式(VI)で表される化合物を製造する方法である。
【0071】
本発明の更にもう1つの態様は、式(IV)の化合物を、SH基を2つ有し、一方のSH基が保護基で保護された有機化合物と反応させて、S−S結合を有する化合物を製造する方法である。即ち、本発明の1つの実施形態は、式(IV)で表される化合物を式(Va)で表される化合物と反応させて、式(VIa)で表される化合物を製造する方法である(以下「本発明の製造方法3」ともいう)。
【化64】
(L
3’及びA
2’、夫々、L
3及びA
2について定義したのと同様である。)
【0072】
本発明の製造方法3を用いて製造することができる化合物の非限定的例を以下に示す。
【化65】
化合物V
化合物Vは、化合物PとH−Cys−Ser−Arg−Gly−Asp−Phe−Cys(tBu)−NH
2を反応させて得られた化合物である。
【0073】
更に、式(VIa)の化合物を式(I)の化合物と反応させて、得られた化合物を式(Va)又は式(V)で表される化合物と反応させることができる。この反応を繰り返すことにより、Qのフラグメントが繋がった以下に示すような化合物を得ることができる。
【化66】
(L
(n+1)はL
2について定義したのと同様であり、A
(n−1)、A
nはA
1について定義したのと同様であり、Q
nはQ
1について定義したのと同様である。)
【0074】
このように、式(I)の化合物を用いることにより、例えばQがペプチドの場合には、ペプチドフラグメントがいくつもつながった化合物(電車ペプチド)を製造することができる。電車ペプチドを合成するスキームを
図1に示す。
図1で示されるように、式(I)の化合物を用いることにより、ペプチド末端を保護しなくても、ペプチドフラグメントをつないでいくことができる。
また、従来のペプチド合成では、ペプチド結合を全て繋いでおいてから、最後にS−S結合を形成させるが、先ずペプチドフラグメントをS−S結合で繋いでおいてから、特定のペプチド結合を分子内反応で形成すると言う、新しいペプチド合成手法を提供することが可能である。
【実施例】
【0075】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではない。
【0076】
[実施例1]
本発明の化合物の一例として、化合物Aの合成を以下に示す。
化合物A(6−クロロスルフェニル−5−ニトロニコチンメチルアミド樹脂)の合成
以下のスキームにより化合物Aを合成した。
【化67】
Resin:ポリエチレングリコールの架橋体(MethylChemMatrix(登録商標)樹脂)
【0077】
(1)化合物2の合成
500 mlのナスフラスコに化合物1(25g、0.180mol)を入れ、発煙硝酸(1.52)(125ml)を加えた。攪拌を行いながら油浴を用いて徐々に加熱を行い、50℃の温度条件下5時間攪拌を行った。加熱を止め、室温まで放冷した後に反応溶液を減圧下で濃縮した。得られた残渣を氷浴にて冷却し、メタノールを溶媒として再結晶を行い、濾過により得られる固体を減圧下乾燥させることで化合物2(9.77g、0.053mmol)を得た。
1H NMR (300 MHz, CD
3OD) 8.44 (d, J = 2.6 Hz, 1H), 8.85 (d, J = 2.6 Hz, 1H) ; HRMS (ES+): m/z 185.0194 (M+H)
+ (calcd for C
6H
5N
2O
5: 185.0198).
【0078】
(2)化合物3の合成
500mlのナスフラスコにアルゴンガス気流下、化合物2(20.0g)、N,N−ジメチルホルムアミド(8.44ml、0.109mmol)を加え、氷浴にて冷却しながら塩化チオニル(158.3ml、2.18mmol)を加えた。塩化チオニルの全量を加えた後、室温へ戻した。続いて油浴を用いて徐々に加熱を行い、80℃の温度条件下16時間攪拌を行った。加熱を止め、室温まで放冷した後に反応溶液を減圧下で濃縮した。得られた残渣にジクロロメタン(50ml)を加え、再度濃縮し残留した塩化チオニルを共沸した。濃縮後、得られた残渣を氷浴にて冷却し、メタノール(50mL)加えた後、濃縮を行い、減圧下乾燥することで化合物3(18.2g、0.084mmol)を得た。
1H NMR (300 MHz, CD
3OD) 4.00 (s, 3H), 8.52 (d, J = 2.1Hz, 1H), 9.14 (d, J = 2.1 Hz, 1H); HRMS (ES+): m/z 217.0006 (M+H)
+ (calcd for C
7H
6N
2O
4Cl: 217.0016).
【0079】
(3)化合物4の合成
100mlのナスフラスコにメタノール(15ml)を入れ、攪拌しながら化合物3(2.54g、11.7mmol)とベンジルメルカプタン(2.18g、17.6mmol)を加え、溶解させた。原料が完全に溶解した事を確認した上でトリエチルアミン(2.46ml)を加えた。油浴を用いて外温60℃に設定し、還流下5時間攪拌した。反応液を室温まで放冷した後、溶媒を減圧下留去し得られる残渣に蒸留水を加え、酢酸エチルにより抽出を行った。有機相を蒸留水、飽和食塩水でそれぞれ洗浄し、無水硫酸ナトリウムにより乾燥した。無水硫酸ナトリウムを濾去した後、溶媒を減圧下留去し得られた固体をヘキサンと酢酸エチルから再結晶し化合物4(3.27g、10.7mmol)を得た。
1H NMR (300 MHz, CDCl
3) 4.00 (s, 3H), 4.52 (s, 2H), 7.18-7.36 (m, 3H), 7.38-7.48 (m, 2H), 9.02 (d, J = 1.9 Hz, 1H), 9.25 (d, J = 1.8 Hz, 1H); HRMS (ES+): m/z 305.0592 (M+H)
+ (calcd for C
14H
13N
2O
4S: 305.0596).
【0080】
(4)化合物5の合成
500mlのナスフラスコに化合物4(3.27g、10.7mmol)を入れ、メタノール(210ml)を加え氷浴を用いて冷却した。次に水酸化リチウム・一水和物(902mg、21.5mmol)と純水(180ml)を加え、氷浴下10分攪拌の後、室温へと昇温し15時間攪拌した。更に水酸化リチウム・一水和物(225mg、5.4mmol)を純水(5ml)に溶かした溶液を加え、4時間半攪拌した。溶液が澄明になったのを確認し、減圧下メタノールを留去した。残った水溶液に10%クエン酸水溶液をpHが3になるまで添加した。得られた水溶液に対し、酢酸エチルを用いて抽出を行い、有機相を水、飽和食塩水にて順次洗浄した後に無水硫酸ナトリウムを用いて乾燥した。無水硫酸ナトリウムを濾去し、次に減圧下溶媒を留去し、真空下乾燥する事で化合物5(3.1g、10.7mmol)を得た。
1H NMR (300 MHz, CD
3OD) 4.52 (s, 2H), 7.18-7.36 (m, 3H), 7.38-7.48 (m, 2H), 8.94 (d, J = 2.0 Hz, 1H), 9.22 (d, J = 2.0 Hz, 1H); HRMS (ES+): m/z 291.0442 (M+H)
+ (calcd for C
13H
11N
2O
4S: 291.0440).
【0081】
(5)化合物6の合成
15mlのポリプロピレン製チューブに化合物5(508.1mg、1.75mmol)、(O−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N′,N′−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート)(528.2mg、1.72mmol)、DMF(16ml)、ジイソプロピルエチルアミン(251.0μl)を順次添加し、1分間振とう撹拌を行った。別途用意した60mlポリプロピレン製濾過フリット付チューブに、500mgのアミノメチル−ChemMatrix樹脂(式中H
2N−Resin、官能基置換率0.70mmol/g)を取り、これに前述の15mlチューブ内の溶液を一度に添加し、振とう攪拌固相合成機KMS−3(国産化学株式会社製)に取り付け、振とう撹拌を行った。1.5時間後撹拌を止め、溶媒を濾去し、5mlのジメチルホルムアミドで10回、メタノールで5回、ジエチルエーテルで3回順次洗浄した後、得られた樹脂を1mg取り、Kaiser test(フェノール・エタノール溶液、シアン化カリウム水溶液・ピリジン溶液、ニンヒドリン・エタノール溶液の混液による遊離アミノ基呈色反応試験)に付し、陰性である事を確認した。得られた化合物を減圧下乾燥することで化合物6(560mg)を得た。
【0082】
(6)化合物Aの合成
10mlのガラス試験管に撹拌子と樹脂化合物(30.7mg)を取り、1,2−ジクロロエタン(2.0ml)を加え穏やかに撹拌し樹脂を膨潤させた。5分間の撹拌後、パスツールピペットにより溶媒を除去した。続いて氷浴を用いて試験管を冷却し、別途30ml三角フラスコに調製したピリジン(7.3μl)、塩化スルフリル(10μl)、1,2−ジクロロエタン(1.99ml)の混液を加え、氷冷下穏やかに撹拌した。1.5時間の撹拌後、パスツールピペットを用いて溶液を除去し、脱水ジクロロメタン(2ml)を加え樹脂化合物を洗浄した。パスツールピペットによる洗浄液の除去後再度ジクロロメタンを加え、同様の洗浄を5度行うことで化合物Aが得られた。
【0083】
[実施例2]
本発明の化合物の一例として、化合物Bの合成を以下に示す。
化合物B(5−((6−(メチルアミノ樹脂)−6−オキソヘキシル)アミノ)−6−オキソヘキシル)カルボニル)−3−ニトロピリジン−2−スルフェニルクロライド)の合成
以下のスキームにより化合物Bを合成した。
【化68】
Resin:ポリエチレングリコールの架橋体(MethylChemMatrix(登録商標)樹脂)
【0084】
(1)化合物8の合成
15mlのポリプロピレン製チューブに9−フルオレニルメチルオキシカルボニルアミノカプロン酸(化合物7,632.4mg、1.79mmol)、(O−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N′,N′−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート)(540.6mg、1.76mmol)、DMF(16ml)、ジイソプロピルエチルアミン(257.0μl、1.79mmol)を順次添加し、1分間振とう撹拌を行った。別途用意した60mlポリプロピレン製濾過フリット付チューブに、511.7mgのアミノメチル−ChemMatrix樹脂(式中H
2N−Resin、官能基置換率0.70mmol/g)を取り、これに前述の15mlチューブ内の溶液を一度に添加し、振とう攪拌固相合成機KMS−3(国産化学株式会社製)に取り付け、振とう撹拌を行った。1.5時間後撹拌を止め、溶媒を濾去し、5mlのジメチルホルムアミドで10回洗浄することで樹脂化合物8を得てそのまま次の反応に用いた。別途、得られた樹脂を1mg取り、Kaiser test(フェノール・エタノール溶液、シアン化カリウム水溶液・ピリジン溶液、ニンヒドリン・エタノール溶液の混液による遊離アミノ基呈色反応試験)に付し、陰性であることを確認した。
【0085】
(2)化合物9の合成
化合物8が入った60mlポリプロピレン製濾過フリット付チューブに対し、20%ピペリジンDMF溶液を16ml加え、振とう撹拌を行った。20分後撹拌を止め、溶媒を濾去し、5mlのジメチルホルムアミドで10回洗浄することで樹脂化合物9を得てそのまま次の反応に用いた。
【0086】
(3)化合物10の合成
化合物9が入った60mlポリプロピレン製濾過フリット付チューブに対し、9−フルオレニルメチルオキシカルボニルアミノカプロン酸(化合物7、632.4mg、1.79mmol)、DMF(16ml)、ジイソプロピルカルボジイミド(201.0mg、1.79mmol)、ヒドロキシベンゾトリアゾール水和物(274.2mg、1.79mmol)を順次添加し、振とう撹拌を行った。1.5時間後撹拌を止め、溶媒を濾去し、5mlのジメチルホルムアミドで10回洗浄することで化合物10を得てそのまま次の反応に用いた。別途、得られた樹脂を1mg取り、Kaiser test(フェノール・エタノール溶液、シアン化カリウム水溶液・ピリジン溶液、ニンヒドリン・エタノール溶液の混液による遊離アミノ基呈色反応試験)に付し、陰性であることを確認した。
【0087】
(4)化合物11の合成
化合物10が入った60mlポリプロピレン製濾過フリット付チューブに対し、20%ピペリジンDMF溶液を16ml加え、振とう撹拌を行った。20分後撹拌を止め、溶媒を濾去し、5mlのジメチルホルムアミドで10回洗浄することで化合物11を得てそのまま次の反応に用いた。
【0088】
(5)化合物12の合成
15mlのポリプロピレン製チューブに化合物5(519.9mg、1.79mmol)、(O−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N′,N′−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート)(540.6mg、1.76mmol)、DMF(16ml)、ジイソプロピルエチルアミン(257.0μl、1.79mmol)を順次添加し、1分間振とう撹拌を行った。この溶液を、化合物11が入った60mlポリプロピレン製濾過フリット付チューブに一度に添加し、振とう撹拌を行った。1.5時間後撹拌を止め、溶媒を濾去し、5mlのジメチルホルムアミドで10回、メタノールで5回、ジエチルエーテルで3回順次洗浄した後、得られた樹脂を減圧下乾燥することで化合物12(623.4mg)を得た。別途、得られた樹脂を1mg取り、Kaiser testに付し、陰性であることを確認した。
【0089】
(6)化合物Bの合成
10mlのガラス試験管に撹拌子と化合物12(17.6mg)を取り、1,2−ジクロロエタン(2.0ml)を加え穏やかに撹拌し樹脂を膨潤させた。5分間の撹拌後、パスツールピペットにより溶媒を除去した。続いて氷浴を用いて試験管を冷却し、別途30ml三角フラスコに調製したピリジン(3.7μl)、塩化スルフリル(5μl)、1,2−ジクロロエタン(995μl)の混液を加え、氷冷下穏やかに撹拌した。1.5時間の撹拌後、パスツールピペットを用いて溶液を除去し、脱水ジクロロメタン(2ml)を加え樹脂化合物を洗浄した。パスツールピペットによる洗浄液の除去後、再度ジクロロメタンを加え、同様の洗浄を5度行うことで化合物Bが得られた。
【0090】
[実施例3]
化合物Aを用いた、SH基を有する化合物カプトプリル(化合物13)に対するオクタアルギニン誘導体修飾を以下の合成スキームにより行った。
【化69】
Resin:ポリエチレングリコールの架橋体(MethylChemMatrix(登録商標)樹脂)
【0091】
化合物Aと撹拌子が入った10mlガラス試験管に、氷浴による冷却条件下90%ギ酸水溶液(2ml)を加え、穏やかに撹拌することで溶媒の置換を行った。パスツールピペットにより洗浄液を除去した後、再度90%ギ酸水溶液を加え、同様の洗浄を5回繰り返した。別途用意した30ml三角フラスコに10残基からなるオクタアルギニン含有ペプチドAc−Arg
8−Acp−Cys(tBu)−NH
2・TFA塩(143.37mg)を90%ギ酸(1ml)に溶解させ、得られた水溶液を上述の化合物Aが入った10mlガラス試験管に氷冷下加えた。氷冷下穏やかに2時間撹拌した後、パスツールピペットを用いて溶液を吸引し凍結乾燥処理することで、未反応のオクタアルギニン含有ペプチドを回収した。残った樹脂に超純水(2ml)を加え樹脂化合物を洗浄し、パスツールピペットによる洗浄液の除去後再度超純水を加え、同様の洗浄を5度繰り返すことで固相担持されたオクタアルギニン含有ペプチド化合物Oが得られた。氷浴を撤去し、得られた化合物Oに室温下カプトプリル(化合物13、0.99mg)の水溶液(500μl)を加え、穏やかに撹拌を行った。反応開始から30分後、固相担体を濾過し、濾液として得られた溶液を逆相HPLCにて分析すると原料であるカプトプリル由来ピークはほぼ消失し、HPLC純度95%にてオクタアルギニン修飾されたカプトプリル(化合物T)へ転換された事を確認した。更に、得られた溶液をTOF−MSにて分析する事で期待した化合物Tが得られた事を確かめた
(HRMS(ES
+)calcd for C
68H
133N
36O
14S
2 [M+3H]
3+ 580.6748. found m/z 580.6728.)。
【0092】
[実施例4]
化合物Aを用いた、ジスルフィドペプチドの新規合成を以下の合成スキームにより行った。
【化70】
Resin:ポリエチレングリコールの架橋体(MethylChemMatrix(登録商標)樹脂)
【0093】
化合物A(0.023mmol)と撹拌子が入った10mlガラス試験管に、氷浴による冷却条件下90%酢酸水溶液(1.5ml)を加え、穏やかに撹拌することで溶媒の置換を行った。パスツールピペットにより洗浄液を除去した後、再度90%酢酸水溶液を加え、同様の洗浄を5回繰り返した。別途用意した30ml三角フラスコに6残基からなるペプチドAc−Ser−Arg−Gly−Asp−Phe−Cys(tBu)−NH
2・TFA塩(6.18mg)を90%酢酸(0.75ml)に溶解させ、得られた水溶液を3等分して、上述の化合物Aが入った10mlガラス試験管に1時間毎に計3回氷冷下加えた。氷冷下穏やかに1時間撹拌した後、パスツールピペットを用いて溶液を吸引し除去した。残った樹脂に超純水(2ml)を加え樹脂化合物を洗浄し、パスツールピペットによる洗浄液の除去後再度超純水を加え、同様の洗浄を10度繰り返すことで固相担持されたアセチルヘキサペプチド化合物Wが得られた。氷浴を撤去し、得られた化合物Wに室温下7残基からなるペプチドAc−Cys−Ser−Arg−Gly−Asp−Phe−Cys(tBu)−NH
2(化合物13,1.53mg)の水溶液(0.25ml)を加え、穏やかに撹拌を行った。反応開始から30分後、固相担体を濾過し、濾液として得られた溶液を逆相HPLCにて分析すると原料であるアセチルヘプタペプチド由来ピークはほぼ消失し、HPLC純度71%にて13残基からなるペプチド(化合物V)へ転換された事を確認した。更に、得られた溶液をTOF−MSにて分析する事で期待した化合物Vが得られた事を確かめた
(HRMS(ES
+)calcd for C
65H
100N
21O
21S
3 [M+2H]
2+ 803.8322. found m/z 803.8383.)。
【0094】
[実施例5]
化合物Aを用いた、SH基を有する化合物カプトプリル(化合物13)に対するアセチルシステイン修飾を以下の合成スキームにより行った。
【化71】
Resin:ポリエチレングリコールの架橋体(ChemMatrix(登録商標)樹脂)
【0095】
化合物A(0.018mmol)と撹拌子が入った10mlガラス試験管に、氷浴による冷却条件下90%ギ酸水溶液(1.5ml)を加え、穏やかに撹拌することで溶媒の置換を行った。パスツールピペットにより洗浄液を除去した後、再度90%ギ酸水溶液を加え、同様の洗浄を5回繰り返した。別途用意した2mlポリプロピレンチューブにN−アセチルシステイン(15.0mg)を90%ギ酸(1ml)に溶解させ、上述の化合物Aが入った10mlガラス試験管に氷冷下加えた。氷冷下穏やかに2時間撹拌した後、パスツールピペットを用いて溶液を吸引し除去した。残った樹脂に超純水(2ml)を加え樹脂化合物を洗浄し、パスツールピペットによる洗浄液の除去後再度超純水を加え、同様の洗浄を10度繰り返すことで固相担持されたN−アセチルシステインペプチド化合物Xが得られた。氷浴を撤去し、室温下カプトプリル(化合物13、1.00mg)の水溶液(900μl)を加え、穏やかに撹拌を行った。反応開始から48時間後、固相担体を濾過し、濾液として得られた溶液を逆相HPLCにて分析すると原料であるカプトプリル由来ピークはほぼ消失し、HPLC純度92%にてアセチルシステイン−カプトプリルジスルフィド(化合物Y)へ転換された事を確認した。更に、得られた溶液をTOF−MSにて分析する事で期待した化合物Yが得られた事を確かめた
(HRMS(ES
+)calcd for C
14H
22N
2O
6S
2Na [M+Na]
+ 401.0817. found m/z 401.0801.)。
【0096】
[実施例6]
本発明の化合物の一例として、化合物Aによるジスルフィドライゲーションを用いる、生理活性ペプチドであるオキシトシン(化合物Z)の合成を以下の合成スキームにより行った。
【化72】
Resin:ポリエチレングリコールの架橋体(ChemMatrix(登録商標)樹脂)
【0097】
まず、次の通り化合物Z
1の合成を行った。化合物A(0.012mmol)が入った3mlポリプロピレン製フィルター付カラムに、氷浴により冷却条件下90%ギ酸水溶液(0.5ml)を加え、穏やかに撹拌することで溶媒の置換を行った。濾過により洗浄液を除去した後、再度氷冷した90%ギ酸水溶液(0.5ml)を加え、同様の洗浄を5回繰り返した。続いて、氷浴による冷却条件下ペプチドH−Asn−Cys(tBu)−Pro−Leu−Gly−NH
2(1.54mg,0.0023mmol)の90%ギ酸水溶液(0.248ml)を加え、氷冷下穏やかに2時間撹拌した後、逆相HPLC(gradient: milliQ (0.1 % TFA)/CH
3CN = 95 : 5 to 45 : 55 over 25 min, flow rate: 0.9 mL/min, UV: 230 nm, column: Sunfire
TM C18 5 μm, 4.6 x 150 mmn Column.)によりH−Asn−Cys(tBu)−Pro−Leu−Gly−NH
2に対応するピークが消失した事を確認した。
反応に用いたペプチドH−Asn−Cys(tBu)−Pro−Leu−Gly−NH
2の90%ギ酸水溶液の逆相HPLCチャートを
図2に示した、また、反応開始より2時間経過後の反応溶液の逆相HPLCチャートを
図3に示した。
反応溶液を濾過により除去し、氷冷した超純水(0.5ml)を加え、穏やかに撹拌することで樹脂の洗浄を行った。濾過により洗浄液を除去した後、再度氷冷した超純水(0.5ml)を加え、同様の洗浄を5回繰り返すことで化合物Z
1を得た。続いて得られた化合物Z
1をそのまま用いて次の通り化合物Z
2の合成を行った。反応系より氷浴を撤去し、室温下ペプチドFmoc−Cys−Tyr−Ile−Gln−OH(1.43mg,0.0019mmol)の50%N,N−ジメチルホルムアミド水溶液(415μl)を加え、穏やかに撹拌を行った。反応開始から30分後、逆相HPLC(gradient: milliQ (0.1 % TFA)/CH
3CN = 80 : 20 to 30 : 70 over 25 min, flow rate: 0.9 mL/min, UV: 230 nm, column: Sunfire
TM C18 5 μm, 4.6 x 150 mmn Column.)によりFmoc−Cys−Tyr−Ile−Gln−OHに対応するピークが消失し、新たなピークが純度97%の純度で観察された。
反応に用いたペプチドFmoc−Cys−Tyr−Ile−Gln−OHの50%N,N−ジメチルホルムアミド水溶液の逆相HPLCチャートを
図4に示した、また、反応開始より30分経過後の反応溶液の逆相HPLCチャートを
図5に示した。
固相担体を濾過し、得られた溶液をTOF−MSにて分析する事で期待したジスルフィドペプチド化合物Z
2が得られた事を確かめた(HRMS(ES
+)calcd for C
58H
79N
12O
15S
2 [M+H]
+ 1247.5229. found m/z 1247.5229.)。
次に得られた化合物Z
2を用いて、化合物Z
3の合成を行った。化合物Z
2 (1.50mg, 1.12μmol) のN,N−ジメチルホルムアミド溶液 (1.12ml) に氷冷撹拌下、HATU(0.514mg,1.67μmol)、N,N−ジイソプロピルエチルアミン (0.474μL,2.79μmol) を加え、室温で終夜撹拌した。終夜撹拌後、反応溶液の一部を逆相HPLC(gradient: milliQ (0.1 % TFA)/CH
3CN = 80 : 20 to 30 : 70 over 25 min, flow rate: 0.9 mL/min, UV: 230 nm, column: Sunfire
TM C18 5 μm, 4.6 x 150 mmn Column.)により分析することで、Z
2に対応するピークは消失し、新たなピークが観察された。終夜反応後の反応溶液の逆相HPLCチャートを
図6に示した。主ピークである15.99分に検出された画分をTOF−MSにて分析する事で期待した化合物Z
3が得られた事を確認した(HRMS(ES
+)calcd for C
58H
77N
12O
14S
2 [M+H]
+ 1229.5124. found m/z 1229.5181.)。
次に得られた化合物Z
3を用いて生理活性ペプチドであるオキシトシン(化合物Z)の合成を行った。化合物Z
3(1.52mg, 1.24μmol)をガラス容器に取り、室温にて20%ピペリジン/DMF溶液(0.4ml)を加え、室温で終夜撹拌した。終夜撹拌後、反応溶液の一部を逆相HPLC(gradient: milliQ (0.1 % TFA)/CH
3CN = 95 : 5 to 45 : 55 over 25 min, flow rate: 0.9 mL/min, UV: 230 nm, column: Sunfire
TM C18 5 μm, 4.6 x 150 mmn Column.)により分析することで、Z
3に対応するピークは消失し、新たなピークが観察された。終夜反応後の反応溶液の逆相HPLCチャートを
図7に示した。12.40分に検出された画分をTOF−MSにて分析する事で期待したオキシトシン(化合物Z)が得られた事を確認した(HRMS(ES
+)calcd for C
43H
67N
12O
12S
2 [M+H]
+ 1007.4443. found m/z 1007.4418.)。
【0098】
[実施例7]
本発明の化合物の一例として、化合物Aによるジスルフィドライゲーションを用いる電車ペプチド(化合物V
1)の合成を以下スキームにより行った。
【化73】
Resin:ポリエチレングリコールの架橋体
(ChemMatrix(登録商標)樹脂)【0099】
まず、次の通り化合物Wの合成を行った。
化合物A(11.5μmol)が入った3mlフィルター付きポリプロピレン製カラムに、氷浴により冷却条件下50%TFA水溶液(250μl)を加え、穏やかに撹拌することで溶媒の置換を行った。濾過により洗浄液を除去した後、再度氷冷した50%TFA水溶液(250μl)を加え、同様の洗浄を5回繰り返した。続いて、氷浴による冷却条件下ペプチドAc−Ser−Arg−Gly−Asp−Phe−Cys(tBu)−NH
2(2.06mg,2.30μmol)の50%TFA水溶液(250μl)を加え、氷冷下穏やかに2時間撹拌した後、反応溶液を濾過により除去し、氷冷した2%アスコルビン酸ナトリウム水溶液(250μl)を加え、穏やかに撹拌することで樹脂の洗浄を行った。濾過により洗浄液を除去した後、再度氷冷した2%アスコルビン酸ナトリウム水溶液(250μl)を加え、同様の洗浄を10回繰り返すことで化合物Wを得た。
続いて、得られた化合物Wをそのまま用いて次の通り化合物Vの合成を行った。
反応系より氷浴を撤去し、室温下ペプチドAc−Cys−Ser−Arg−Gly−Asp−Phe−Cys(tBu)−NH
2(1.53mg,1.53μmol)の2%アスコルビン酸ナトリウム水溶液(250μl)を加え、穏やかに撹拌を行った。反応開始から30分後に固相担体を濾過し、95%TFA水溶液(250μl)を加え、穏やかに撹拌することで樹脂の洗浄を行った。同様の洗浄を2度繰り返し、濾液と洗浄液を合わせて化合物Vを溶液として得た。この化合物Vの溶液をそのまま用いて次のとおり化合物W
1の合成を行った。
氷冷下、化合物Vの溶液を別途用意した化合物A(11.5μmol)が入った3mlフィルター付ポリプロピレン製カラムに直接加え、氷冷下5時間撹拌した。続いて濾過により反応溶液を除去し、氷冷した2%アスコルビン酸ナトリウム水溶液(250μl)を加え、穏やかに撹拌した。濾過により洗浄液を除去した後、再度氷冷した2%アスコルビン酸ナトリウム水溶液(250μl)を加え、同様の洗浄を10回繰り返した。洗浄液にpH試験紙を用いることでpH=5となった事を確認し化合物W
1を得た。
続いて、得られた化合物W
1をそのまま用いて次の通り化合物V
1の合成を行った。
反応系より氷浴を撤去し、室温下Ac−Cys−Ser−Arg−Gly−Asp−Phe−Cys(tBu)−NH
2(1.02mg,10.2μmol)の2%アスコルビン酸ナトリウム水溶液(250μl)を加え、穏やかに撹拌を行った。反応開始から30分後に固相担体を濾過し、濾液を逆相HPLC(gradient:water(0.1%TFA)/CH
3CN=10:90 to 65:35 over 25min. flow rate:0.9 mL/min,UV:230nm, column:Sunfire
TM C18 5μm, 4.6 x 150mm Column.)により分析したところ、Ac−Cys−Ser−Arg−Gly−Asp−Phe−Cys(tBu)−NH
2に対応するピークは消失し、新たなピークが観察された。主ピークである17.04分の画分を分取し、TOF−MSにより分析することで期待した化合物V
1が得られた事を確認した(HRMS(ES
+)calcd for C
97H
146N
32O
32S
5[M+3H]
3+ 811.3206. found m/z 811.3179.) 。