特許第6661083号(P6661083)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6661083
(24)【登録日】2020年2月14日
(45)【発行日】2020年3月11日
(54)【発明の名称】単結晶酸化亜鉛ナノ粒子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C30B 29/16 20060101AFI20200227BHJP
   C30B 7/14 20060101ALI20200227BHJP
   C01G 9/02 20060101ALI20200227BHJP
   B82Y 30/00 20110101ALI20200227BHJP
   B82Y 40/00 20110101ALI20200227BHJP
【FI】
   C30B29/16
   C30B7/14
   C01G9/02 B
   B82Y30/00
   B82Y40/00
【請求項の数】16
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2016-534437(P2016-534437)
(86)(22)【出願日】2015年7月14日
(86)【国際出願番号】JP2015070105
(87)【国際公開番号】WO2016010018
(87)【国際公開日】20160121
【審査請求日】2018年7月3日
(31)【優先権主張番号】特願2014-144526(P2014-144526)
(32)【優先日】2014年7月14日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】595111804
【氏名又は名称】エム・テクニック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086346
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 武信
(72)【発明者】
【氏名】榎村 眞一
【審査官】 安齋 美佐子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/127669(WO,A1)
【文献】 特開2009−082902(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/128273(WO,A1)
【文献】 国際公開第2013/008706(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C30B 1/00−35/00
B82Y 30/00
B82Y 40/00
C01G 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸性物質を少なくともアルコールを含む溶媒に回転式分散機を用いて混合させることで酸化亜鉛析出溶媒を調製し、
記酸化亜鉛析出溶媒と、
酸化亜鉛ナノ粒子原料を塩基性溶媒に混合した原料溶液又は酸化亜鉛ナノ粒子原料を溶媒に混合、溶解することによって結果的に塩基性となる原料溶液とを、
対向して配設された、接近離反可能な相対的に回転する処理用面間で混合させ、
酸化亜鉛ナノ粒子が析出した混合流動体を上記処理用面間から吐出させる酸化亜鉛ナノ粒子の製造方法であって、
上記酸化亜鉛析出溶媒の調製時に投下される撹拌エネルギーを制御するとともに、
上記混合流動体が塩基性となるように、
上記酸化亜鉛析出溶媒と上記原料溶液とを上記処理用面間で混合させ、
上記処理用面間での上記混合に伴う酸塩基反応によるエネルギーを、上記処理用面間における上記酸化亜鉛ナノ粒子の析出の際に、上記酸化亜鉛ナノ粒子に対して瞬時に投下することにより、上記処理用面間で単結晶の酸化亜鉛ナノ粒子を生成することを特徴とする単結晶酸化亜鉛ナノ粒子の製造方法。
【請求項2】
上記混合流動体のpHが8.6以上14以下であることを特徴する、請求項1に記載の単結晶酸化亜鉛ナノ粒子の製造方法。
【請求項3】
上記混合流動体のpHが12以上14以下であることを特徴する、請求項2に記載の単結晶酸化亜鉛ナノ粒子の製造方法。
【請求項4】
上記酸化亜鉛析出溶媒のpHが1未満であり、かつ、上記原料溶液のpHが14を超えることを特徴する、請求項1〜3の何れかに記載の単結晶酸化亜鉛ナノ粒子の製造方法。
【請求項5】
上記酸性物質が、塩酸、硝酸、硫酸のうち、いずれか1種より選ばれたことを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の単結晶酸化亜鉛ナノ粒子の製造方法。
【請求項6】
上記アルコールが、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、tert−ブタノールのうち、いずれか1種より選ばれたことを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の単結晶酸化亜鉛ナノ粒子の製造方法。
【請求項7】
上記原料溶液が50℃以上で調製されたことを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の単結晶酸化亜鉛ナノ粒子の製造方法。
【請求項8】
上記塩基性溶媒は、塩基性水酸化物を溶媒に混合及び/又は溶解したものであることを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載の単結晶酸化亜鉛ナノ粒子の製造方法。
【請求項9】
上記塩基性水酸化物がアルカリ金属水酸化物であることを特徴とする、請求項8に記載の単結晶酸化亜鉛ナノ粒子の製造方法。
【請求項10】
上記アルカリ金属水酸化物が、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムのいずれか1種であることを特徴とする、請求項9に記載の単結晶酸化亜鉛ナノ粒子の製造方法。
【請求項11】
上記酸化亜鉛ナノ粒子原料が、上記塩基性溶媒に可溶である亜鉛化合物であることを特徴とする、請求項1〜10のいずれかに記載の単結晶酸化亜鉛ナノ粒子の製造方法。
【請求項12】
上記亜鉛化合物が、酸化亜鉛、塩化亜鉛、硝酸亜鉛、水酸化亜鉛、硫酸亜鉛のうち、少なくともいずれか1種より選ばれたことを特徴とする、請求項11に記載の単結晶酸化亜鉛ナノ粒子の製造方法。
【請求項13】
上記酸化亜鉛析出溶媒と上記原料溶液との何れか一方が、薄膜流体を形成しながら上記処理用面間を通過し、
上記酸化亜鉛析出溶媒と上記原料溶液との何れか他方が、上記酸化亜鉛析出溶媒と上記原料溶液との何れか一方が上記処理用面間に導入される流路とは独立した別途の導入路を経て、上記処理用面の少なくとも何れか一方に形成された開口部から上記処理用面間に導入され、
上記酸化亜鉛析出溶媒と上記原料溶液とが、上記処理用面間で混合されることを特徴とする、請求項1〜12のいずれかに記載の単結晶酸化亜鉛ナノ粒子の製造方法。
【請求項14】
記回転式分散機は、複数の羽根を備えたローターと、上記ローターの周囲に敷設されると共に複数のスリットを有するスクリーンとを備え、上記ローターと上記スクリーンとは、相対的に回転することによって、スリットを含むスクリーンの内壁と羽根との間の微小な間隙において流体のせん断が行われると共に、上記スリットを通じて断続ジェット流としてスクリーンの内側から外側に流体が吐出されるものであることを特徴とする、請求項1〜13のいずれかに記載の単結晶酸化亜鉛ナノ粒子の製造方法。
【請求項15】
上記酸化亜鉛析出溶媒の調製温度を上げることによって、上記生成される酸化亜鉛ナノ粒子の単結晶比率を増加させるように制御することを特徴とする、請求項1〜14のいずれかに記載の単結晶酸化亜鉛ナノ粒子の製造方法。
【請求項16】
上記酸化亜鉛析出溶媒の調製時に投下される撹拌エネルギーを増加させることによって、上記生成される酸化亜鉛ナノ粒子の単結晶比率を増加させるように制御することを特徴とする、請求項1〜15のいずれかに記載の単結晶酸化亜鉛ナノ粒子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、単結晶酸化亜鉛ナノ粒子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
酸化亜鉛ナノ粒子は、半導体、触媒、光学デバイス、センサー、顔料、化粧品、医薬品等の幅広い範囲で使用されている。単結晶化によって、酸化亜鉛そのものの持つ特性が顕著に表れることにより、これらの特性を活用して、さまざまな分野での活用が期待されている。
【0003】
単結晶の酸化亜鉛ナノ粒子の製造方法は、スパッタリング装置を用いる方法(特許文献1)や、酸化亜鉛前駆体溶液を混合室に噴霧し、それをパルス燃焼ガスに接触させると同時に高温雰囲気下で熱処理させることによって、単結晶の酸化亜鉛ナノ粒子を得る方法(特許文献2)、金属含有材料を含む結晶面を有する基板を酸化亜鉛が析出可能な反応溶液中に浸漬させて単結晶酸化亜鉛を析出させ、析出した単結晶酸化亜鉛を基板から分離させて、酸化亜鉛粒子を製造する方法(特許文献3)が知られている。
【0004】
特許文献1、2においては、所謂、気相法によるものであり、ナノ粒子の時間あたりの生成量が少なく、原料を蒸発させるために電子ビーム、プラズマ、レーザー、誘導加熱などの高エネルギー装置が必要であり、また歩留まりも低いため生産コスト上大量生産に適しているとは言えない。しかもこれらの気相法により得られるナノ粒子は純粋物質の微粒子であるので凝集、融合しやすく、また粒子の大きさがばらつくという問題がある。
【0005】
また、特許文献3においては、単結晶ナノ粒子を得るためには、基板上に析出した酸化亜鉛結晶をレーザー照射、振動、超音波、ナノカッターを用いて、根元から切断するか、もしくは酸化亜鉛結晶が析出した基板のみを溶解除去するための後工程が必要であり、製造効率が悪い。
【0006】
一方、接近離反可能な相対的に回転する処理用面間でナノ粒子を析出させることにより、単結晶の生体摂取物ナノ粒子を得ること(特許文献4)も知られている。
特許文献4においては、接近離反可能な相対的に回転する処理用面間で、2種類以上の被処理流動体の強制薄膜を形成し、この強制薄膜中において単結晶の生体摂取物微粒子を生成させる点について示されている。ところが、物性の全く異なる酸化亜鉛ナノ粒子について単結晶のものを製造する際に、特許文献4に開示の発明を適応することは不可能であった。
【0007】
さらに、特許文献5、特許文献6においては、接近離反可能な相対的に回転する処理用面間で、2種類以上の被処理流動体の強制薄膜を形成し、ナノ粒子を含んだ流動体を吐出させる際に、被処理流動体のpHを調整することが開示されている。しかしながら、両者とも、混合前の流動体のpHを調整するものであって、混合後の流動体のpHを調整するものではない。そのため、たとえ、混合前の流動体のpHを調整したとしても、他の反応条件によって、混合後の流動体のpH値が塩基性から外れてしまうと、単結晶酸化亜鉛ナノ粒子は析出されない。
【0008】
特許文献7には、対向して配設された、接近・離反可能な、少なくとも一方が他方に対して回転する処理用面間において、結晶性を制御されたセラミックス微粒子を生成させることが開示されている。
この場合、処理用面間において、まず、セラミックス原料を塩基性溶媒に混合及び/または溶解したセラミックス原料液を含む流体と、セラミックス微粒子析出用溶媒を含む流体とを混合してセラミックス微粒子を析出させる。そして、次工程では、析出させたセラミックス微粒子を含む流体と酸性物質とを混合することによって発生する反応熱を利用して、最初の工程で析出されたセラミックス微粒子の結晶性を制御することが示されている。
しかしながら、特許文献7では、微粒子の析出の際に反応熱を利用することは示されておらず、単結晶の酸化亜鉛ナノ粒子を安定的に製造することは不可能であった。特許文献7の実施例では、図5に示されている通り格子縞が不明瞭であり、単結晶であるとは言えない。また、特許文献7の実施例2に記載されている反応条件は、処理用面間で単結晶の酸化亜鉛ナノ粒子が生成されるほど、大きなエネルギーが投下されるものではない 。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2010−120786号公報
【特許文献2】特開2008−303111号公報
【特許文献3】特開2011−84465号公報
【特許文献4】国際公開第WO2009/008391号パンフレット
【特許文献5】特開2009−82902号公報
【特許文献6】国際公開第WO2009/008392号パンフレット
【特許文献7】国際公開第WO2012/127669号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
対向して配設された、接近・離反可能な、少なくとも一方が他方に対して相対的に回転する少なくとも2つの処理用面の間にできる薄膜流体から単結晶酸化亜鉛ナノ粒子を析出させることにより、安定して大量生産に適した単結晶酸化亜鉛ナノ粒子の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願発明は、酸性物質を少なくともアルコールを含む溶媒に均質に混合させることで酸化亜鉛析出溶媒を調製し、上記調製した酸化亜鉛析出溶媒と、酸化亜鉛ナノ粒子原料を塩基性溶媒に混合した原料溶液又は酸化亜鉛ナノ粒子原料を溶媒に混合、溶解することによって結果的に塩基性となる原料溶液とを、対向して配設された、接近離反可能な相対的に回転する処理用面間で混合させ、酸化亜鉛ナノ粒子が析出した混合流動体を上記処理用面間から吐出させる酸化亜鉛ナノ粒子の製造方法であって、上記混合流動体が塩基性となるように、上記酸化亜鉛析出溶媒と上記原料溶液とを上記処理用面間で混合させ、上記酸性物質と上記塩基性溶媒の混合による酸塩基反応により、酸化亜鉛ナノ粒子を生成する単結晶酸化亜鉛ナノ粒子の製造方法を提供する。
なお、本発明において、ナノ粒子とは100nmオーダー以下の微小な粒子をいう。その形状は特に限定されないが、たとえば、略球状、略円盤状、略三角柱状、略四角柱状、略多面体状、楕円球状、略円柱状などであってもよい。
【0012】
また、本願発明は、上記混合流動体のpHが8.6以上14以下、好ましくはpHが12以上14以下であるものとして実施することができる。
また、本願発明は、上記酸化亜鉛析出溶媒のpHが1未満であり、かつ、上記原料溶液のpHが14を超えるものとして実施することができる。
【0013】
また、本願発明は、上記酸性物質が、塩酸、硝酸、硫酸のうち、いずれか1種より選ばれたものを用いて実施してもよく、上記アルコールが、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、tert−ブタノールのうち、いずれか1種より選ばれたものを用いて実施してもよい。
【0014】
また、本願発明は、上記原料溶液を50℃以上で調製するようにしてもよい。
【0015】
また、本願発明は、上記塩基性溶媒は、塩基性水酸化物を溶媒に混合及び/又は溶解したものとして実施することができ、上記塩基性水酸化物がアルカリ金属水酸化物であって、上記アルカリ金属水酸化物として、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムのいずれか1種を用いて実施してもよい。
【0016】
また、本願発明は、上記酸化亜鉛ナノ粒子原料が、上記塩基性溶媒に可溶である亜鉛化合物であるものとして実施することができ、上記亜鉛化合物として、酸化亜鉛、塩化亜鉛、硝酸亜鉛、水酸化亜鉛、硫酸亜鉛のうち、少なくともいずれか1種より選ばれたものを用いて実施してもよい。
【0017】
また、本願発明は、上記原料溶液が、薄膜流体を形成しながら上記処理用面間を通過し、上記酸化亜鉛析出溶媒が、上記原料溶液が上記処理用面間に導入される流路とは独立した別途の導入路を経て、上記処理用面の少なくとも何れか一方に形成された開口部から上記処理用面間に導入され、上記酸化亜鉛析出溶媒と上記原料溶液とが、上記処理用面間で混合されるものとして実施することができる。また、反対に、上記酸化亜鉛析出溶媒が、薄膜流体を形成しながら上記処理用面間を通過し、上記原料溶液が、上記酸化亜鉛析出溶媒が上記処理用面間に導入される流路とは独立した別途の導入路を経て、上記処理用面の少なくとも何れか一方に形成された開口部から上記処理用面間に導入され、上記酸化亜鉛析出溶媒と上記原料溶液とが、上記処理用面間で混合されるものとして実施することもできる。
【0018】
また、本願発明は、回転式分散機を用いて上記酸性物質を少なくとも上記アルコールを含む溶媒に均質に混合させるものであり、上記回転式分散機は、複数の羽根を備えたローターと、上記ローターの周囲に敷設されると共に複数のスリットを有するスクリーンとを備え、上記ローターと上記スクリーンとは、相対的に回転することによって、スリットを含むスクリーンの内壁と羽根との間の微小な間隙において流体のせん断が行われると共に、上記スリットを通じて断続ジェット流としてスクリーンの内側から外側に流体が吐出されるものであるものとして実施することができる。
また、上記酸化亜鉛析出溶媒の調製温度によって、上記生成される酸化亜鉛ナノ粒子の単結晶比率を制御してもよく、上記酸化亜鉛析出溶媒の調製時に投下される撹拌エネルギーによって、上記生成される酸化亜鉛ナノ粒子の単結晶比率を制御してもよい。ここで、単結晶比率とは、生成された酸化亜鉛ナノ粒子を電子顕微鏡で観察し、観察した酸化亜鉛ナノ粒子の数A(個)とそのうち単結晶として観察された酸化亜鉛ナノ粒子の数B(個)から単結晶比率=B/A×100(%)により算出したものである。
そして、上記酸化亜鉛析出溶媒を40℃以上で調製するようにしてもよく、上記酸化亜鉛析出溶媒の調製時間を20分以上としてもよい。
【発明の効果】
【0019】
本願発明は、原料を蒸発させるための電子ビーム、プラズマ、レーザー、誘導加熱などの高エネルギー装置を必要とせず、安定して大量生産に適した単結晶酸化亜鉛ナノ粒子の製造方法を提供することができたものである。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】同流体処理方法の実施に用いられる回転式分散機の使用状態を示す正面図である。
図2】同回転式分散機の要部拡大縦断面図である。
図3】本発明の実施の形態に係る流体処理方法の実施に用いられる流体処理装置の略断面図である。
図4】(A)は図3に示す流体処理装置の第1処理用面の略平面図であり、(B)は同装置の処理用面の要部拡大図である。
図5】(A)は同装置の第2導入部の断面図であり、(B)は同第2導入部を説明するための処理用面の要部拡大図である。
図6】(A)〜(C)は実施例1において作製された酸化亜鉛ナノ粒子のTEM像である。
図7】実施例1において作製された酸化亜鉛ナノ粒子のSTEM像である。
図8】実施例1において作製された酸化亜鉛ナノ粒子のXRD測定結果である。
図9】実施例2において作製された酸化亜鉛ナノ粒子のSTEM像である。
図10】実施例3において作製された酸化亜鉛ナノ粒子のSTEM像である。
図11】原料溶液の調製温度と単結晶比率との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面に基づき本願発明の実施の形態の一例をとりあげて説明する。
【0022】
(酸性物質)
酸性物質としては、王水、塩酸、硝酸、発煙硝酸、硫酸、発煙硫酸などの無機酸や、ギ酸、酢酸、クロロ酢酸、ジクロロ酢酸、シュウ酸、トリフルオロ酢酸、トリクロロ酢酸などの有機酸が挙げられる。
【0023】
(少なくともアルコールを含む溶媒)
酸化亜鉛析出溶媒を調製するために、上記酸性物質を少なくともアルコールを含む溶媒に均質に混合させる。
アルコールとしては、例えばメタノール、エタノール、n−プロパノール、n−ブタノールなどの直鎖アルコール、イソプロパノール、2−ブタノール、tert−ブタノール、1−メトキシ−2−プロパノール等の分枝状アルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール等の多価アルコール等が挙げられる。
【0024】
(酸化亜鉛析出溶媒)
酸化亜鉛析出溶媒は、酸性物質を少なくとも上記アルコールを含む溶媒に均質に混合して実施することができる。なお、酸性物質を少なくとも上記アルコールを含む溶媒に均質に混合させることで酸化亜鉛析出溶媒を調製するための工程(以下、調製ステップ)については、後述する。その際、酸化亜鉛析出溶媒を40℃以上で調製することが望ましく、酸化亜鉛析出溶媒の調製時間を20分以上とすることが望ましい。また、酸化亜鉛析出溶媒のpHは1未満であることが望ましい。
【0025】
(酸化亜鉛ナノ粒子原料)
酸化亜鉛ナノ粒子原料は、特に限定されないが、亜鉛単体やその化合物を用いることができる。一例として、亜鉛の酸化物、窒化物、硫化物、塩(硝酸塩、硫酸塩、塩化物、リン酸塩、炭酸塩など)、水酸化物、錯体や、それらの水和物や有機溶媒和物などが挙げられ、後述する塩基性溶媒に可溶な亜鉛化合物が望ましく、酸化亜鉛、塩化亜鉛、硝酸亜鉛、水酸化亜鉛、硝酸亜鉛やそれらの水和物を用いることが望ましい。これらの酸化亜鉛ナノ粒子原料は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0026】
(塩基性溶媒)
塩基性溶媒としては、以下の塩基性物質を溶媒に溶解させて本発明を実施することが望ましい。
塩基性物質としては、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどの金属水酸化物、ナトリウムメトキシドやナトリウムイソプロポキシドのような金属アルコキシド、さらにトリエチルアミンやジエチルアミノエタノール、ジエチルアミンなどのアミン系化合物などが挙げられる。
塩基性物質を混合、溶解させるための溶媒としては、例えば水や有機溶媒、またはそれらの複数からなる混合溶媒が挙げられる。上記水としては、水道水やイオン交換水、純水や超純水、RO水などが挙げられ、有機溶媒としては、アルコール化合物溶媒、アミド化合物溶媒、ケトン化合物溶媒、エーテル化合物溶媒、芳香族化合物溶媒、二硫化炭素、脂肪族化合物溶媒、ニトリル化合物溶媒、スルホキシド化合物溶媒、ハロゲン化合物溶媒、エステル化合物溶媒、イオン性液体、カルボン酸化合物、スルホン酸化合物などが挙げられる。上記の溶媒はそれぞれ単独で使用しても良く、または複数以上を混合して使用しても良い。
塩基性溶媒としては、上記の塩基性物質を上記の溶媒に混合、溶解して塩基性溶媒としたものであっても良いし、酸化亜鉛ナノ粒子原料を上記の溶媒に混合、溶解することによって、結果的に原料溶液が塩基性となる場合であっても実施できるが、塩基性溶媒として、アルカリ金属の水酸化物やアルカリ土類金属の水酸化物などの塩基性水酸化物を上記の溶媒に混合、溶解することが望ましい。そして、塩基性水酸化物としては、アルカリ金属水酸化物が望ましく、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム又は水酸化リチウムであることがより望ましい。
【0027】
(原料溶液)
酸化亜鉛ナノ粒子原料を塩基性溶媒に溶解して原料溶液とすることが望ましい。なお、混合や溶解の際に、酸化亜鉛析出溶媒同様、後述する調製ステップにより、両者を均質に混合させる。その際、原料溶液を50℃以上で調製することが望ましく、さらに、75℃以上で調製することがより望ましい。また、原料溶液のpHは14を超えることが望ましい。
【0028】
(分散剤等)
本発明においては、目的や必要に応じて各種の分散剤や界面活性剤を用いる事ができる。特に限定されないが、界面活性剤及び分散剤としては一般的に用いられる様々な市販品や、製品または新規に合成したものなどを使用できる。一例として、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤や、各種ポリマーなどの分散剤などを挙げることができる。これらは単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0029】
上記の界面活性剤及び分散剤は、原料流体と酸化亜鉛析出溶媒のいずれか、または双方に含まれていてもよい。また、上記の界面活性剤及び分散剤は、原料溶液流体とも酸化亜鉛析出溶媒とも異なる第3の流体に含まれていてもよい。
【0030】
(調製ステップ)
酸化亜鉛析出溶媒を調製するための調製ステップは、以下に示す回転式分散機を用いて、酸性物質を少なくともアルコールを含む溶媒に均質に混合させることが望ましい。回転式分散機を用いることにより、均質な混合を容易に行うことが可能となる。
【0031】
回転式分散機は、棒状、板状、プロペラ状等の種々の形状の攪拌子を槽内で回転させるものや、攪拌子に対して相対的に回転するスクリーンを備えたものなど、流体にせん断力を加えるなどして、均質な混合を実現するものを用いることが望ましい。回転式分散機の好ましい例としては、特許第5147091号に開示されている撹拌機を適用することができる。
【0032】
また、回転式分散機はバッチ式で行うものであってもよく、連続式で行うものであってもよい。連続式で行う場合には、攪拌槽に対する流体の供給と排出とを連続的に行うものであってもよく、攪拌槽を用いずに連続式のミキサーを用いて行うものであってもよい。
【0033】
図1図2の説明)
図1及び図2に示すように、この実施の形態に係る回転式分散機100の流体容器104には、被処理流動体である、酸性物質と少なくともアルコールを含む溶媒の混合物が収納されている。また、回転式分散機100は、被処理流動体中に配される処理部101と、処理部101内に配置されたローター102とを備えるものである。
【0034】
処理部101は、中空のハウジングであり、支持管103に支持されることによって、被処理流動体を収納する流体容器104に配設される。この例では、処理部101は支持管103の先端に設けられ、流体容器104の上部から内部下方へ挿入されたものを示しているが、この例に限定するものではなく、処理部101は流体容器104の底面から上方へ突出するように支持されるものであっても実施可能である。
【0035】
処理部101は、被処理流動体を外部から内部へ吸入する吸入口105を有する吸入室106と、吸入室106に導通する攪拌室107とを備える。攪拌室107は、吐出口であるスリット108を複数有するスクリーン109によって、その外周が規定されている。
【0036】
この吸入室106と攪拌室107とは、両室106、107間の区画部である隔壁110によって区画されると共に、隔壁110に設けられた導入用の開口部111を介して導通している。
【0037】
なお、図2の例では、支持管103の先端(図の下端)に吸入室106の基端(図の上端)が螺合され、吸入室106の先端に攪拌室107(スクリーン109)の基端が螺合されており、隔壁110は吸入室106の下端に一体に形成されているが、これらの部材の構成や結合状態は種々変更して実施することができる。
【0038】
上記ローター102は、周方向に複数枚の攪拌羽根112を備えた回転体であり、攪拌羽根112とスクリーン109との間に微小なクリアランスを保ちつつ、回転する。ローター102を回転させる構造には種々の回転駆動構造が採用できるが、この例では、回転軸113の先端にローター102が設けられ、攪拌室107内に回転可能に収容されている。より詳しくは、回転軸113は、支持管103の内部に挿通されている。さらに、回転軸113は、吸入室106から、隔壁110の開口部111を通って攪拌室107に達するように配設されており、その先端(図では下端)にローター102が取り付けられている。従って、この回転軸113が、開口部111を貫通する貫通部となる。
【0039】
回転軸113の基端は、モータ114などの回転駆動装置に接続されている。モータ114は数値制御などの制御系統を有するもの或はコンピュータの制御下に置かれるものを用いることが好適である。
【0040】
この回転式分散機100は、ローター102が回転することによって、回転する攪拌羽根112がスクリーン109の内壁面を通過する際、両者間に存在する被処理流動体に加えられるせん断力によって、混合がなされる。これと共に、ローター102の回転によって、被処理流動体に運動エネルギーが与えられ、この被処理流動体がスリット108を通過することで、さらに加速されて、断続ジェット流を形成しながら攪拌室107の外部に流出する。この断続ジェット流により、速度界面で液−液のせん断力が発生することでもより均一な分散或は混合の処理が行われる。
詳細なメカニズムは不明であるが、酸化亜鉛析出溶媒を調製する際に、酸性物質を少なくともアルコールを含む溶媒に均質に混合させないと、単結晶でない酸化亜鉛ナノ粒子が析出されてしまう。
【0041】
(析出ステップ)
本願発明では、調製された酸化亜鉛析出溶媒と原料溶液とを、対向して配設された、接近離反可能な相対的に回転する処理用面を備えた流体処理装置によって混合させることにより単結晶酸化亜鉛ナノ粒子を析出させる工程(以下、析出ステップ)を実行することにより、単結晶の酸化亜鉛ナノ粒子を製造する。以下、析出ステップを実行する際に適用できる上記の流体処理装置の実施の形態について説明する。
【0042】
図3図5に示す流体処理装置は、特許文献4に記載の装置と同様である。
図3においてUは上方を、Sは下方をそれぞれ示しているが、本発明において上下前後左右は相対的な位置関係を示すに止まり、絶対的な位置を特定するものではない。図4(A)、図5(B)においてRは回転方向を示している。図5(B)においてCは遠心力方向(半径方向)を示している。
【0043】
この流体処理装置は、対向する第1及び第2の、2つの処理用部10、20を備え、少なくとも一方の処理用部が回転する。両処理用部10、20の対向する面が、夫々処理用面となる。第1処理用部10は第1処理用面1を備え、第2処理用部20は第2処理用面2を備える。
【0044】
両処理用面1、2は、被処理流動体の流路に接続され、被処理流動体の流路の一部を構成する。この両処理用面1、2間の間隔は、適宜変更して実施することができるが、通常は、1mm以下、例えば0.1μmから50μm程度の微小間隔に調整される。これによって、この両処理用面1、2間を通過する被処理流動体は、両処理用面1、2によって強制された強制薄膜流体となる。
【0045】
この装置を用いて複数の被処理流動体を処理する場合、この装置は、第1の被処理流動体の流路に接続され、当該第1被処理流動体の流路の一部を形成する。さらにこの装置は、第1被処理流動体とは別の、第2被処理流動体の流路の一部を形成する。そして、この装置は、両流路を合流させて、処理用面1、2間において、両被処理流動体を混合し、反応させて微粒子の析出を行う流体処理を行なう。
【0046】
具体的に説明すると、この装置は、上記の第1処理用部10を保持する第1ホルダ11と、第2処理用部20を保持する第2ホルダ21と、接面圧付与機構と、回転駆動機構と、第1導入部d1と、第2導入部d2と、流体圧付与機構pとを備える。
【0047】
図4(A)に示す通り、この実施の形態において、第1処理用部10は、環状体であり、より詳しくはリング状のディスクである。また、第2処理用部20もリング状のディスクである。第1、第2処理用部10、20の材質は、金属の他、カーボン、セラミック、焼結金属、耐磨耗鋼、サファイア、その他金属に硬化処理を施したものや、硬質材をライニングやコーティング、メッキなどを施工したものを採用することができる。この実施の形態において、両処理用部10、20は、互いに対向する第1、第2の処理用面1、2が鏡面研磨されており、算術平均粗さは、特に限定されないが、好ましくは0.01〜1.0μm、より好ましくは0.03〜0.3μmとする。
【0048】
第1ホルダ11、第2ホルダ21のうち、少なくとも一方のホルダは、電動機などの回転駆動機構(図示せず)にて、他方のホルダに対して相対的に回転することができる。
この実施の形態において、第2ホルダ21が装置に固定されており、同じく装置に固定された回転駆動機構の回転軸50に取り付けられた第1ホルダ11が回転し、この第1ホルダ11に支持された第1処理用部10が第2処理用部20に対して回転する。もちろん、第2処理用部20を回転させるようにしてもよく、双方を回転させるようにしてもよい。
【0049】
この実施の形態では、第1処理用部10に対して、第2処理用部20が回転軸50の方向に接近・離反するもので、第2ホルダ21に設けられた収容部41に、第2処理用部20の処理用面2側と反対側の部位が出没可能に収容されている。但し、これとは、逆に、第1処理用部10が、第2処理用部20に対して接近・離反するものであってもよく、両処理用部10、20が互いに接近・離反するものであってもよい。
【0050】
この収容部41は、第2処理用部20の、処理用面2側と反対側の部位を収容する凹部であり、環状に形成された溝である。この収容部41は、第2処理用部20の処理用面2側と反対側の部位を出没させ得る十分なクリアランスを持って、第2処理用部20を収容する。なお、第2処理用部20は軸方向に平行移動のみが可能なように配置してもよいが、上記クリアランスを大きくすることにより、第2処理用部20は、収容部41に対して、処理用部20の中心線を、上記収容部41の軸方向と平行の関係を崩すように傾斜して変位できるようにしてもよく、さらに、第2処理用部20の中心線と収容部41の中心線とが半径方向にずれるように変位できるようにしてもよい。このように、3次元的に変位可能に保持するフローティング機構によって、第2処理用部20を保持することが望ましい。
【0051】
上記の被処理流動体は、後述するポンプや位置エネルギーなどによって構成される流体圧付与機構pによって圧力が付与された状態で、第1導入部d1と、第2導入部d2から両処理用面1、2間に導入される。この実施の形態において、第1導入部d1は、環状の第2ホルダ21の中央に設けられた通路であり、その一端が、環状の両処理用部10、20の内側から、両処理用面1、2間に導入される。第2導入部d2は、第1の被処理流動体との反応がなされる第2の被処理流動体を処理用面1、2へ供給する。この実施の形態において、第2導入部d2は、第2処理用部20の内部に設けられた通路であり、その一端は、第2処理用面に形成された開口部d20である。
流体圧付与機構pにより加圧された第1の被処理流動体は、第1導入部d1から、両処理用部10、20の内側の空間に導入され、第1処理用面1と第2処理用面2との間を通り、両処理用部10、20の外側に通り抜けようとする。
これらの処理用面1、2間において、第2導入部d2から流体圧付与機構pにより加圧された第2の被処理流動体が供給され、第1の被処理流動体と合流し、両被処理流動体が混合した際の酸塩基反応によって、酸化亜鉛ナノ粒子を含む流動体が、両処理用面1、2から、両処理用部10、20の外側に排出される。なお、減圧ポンプにより両処理用部10、20の外側の環境を負圧にすることもできる。
【0052】
上記の接面圧付与機構は、第1処理用面1と第2処理用面2とを接近させる方向に作用させる力を、処理用部に付与する。この実施の形態では、接面圧付与機構は、第2ホルダ21に設けられ、第2処理用部20を第1処理用部10に向けて付勢する。
【0053】
上記の接面圧付与機構は、第1処理用部10の第1処理用面1と第2処理用部20の第2処理用面2とが接近する方向に押す力(以下、接面圧力という)を発生させるための機構である。この接面圧力と、流体圧力による両処理用面1、2間を離反させる力との均衡によって、両処理用面1、2間の間隔を所定の微小間隔に保ち、nm単位ないしμm単位の微小な膜厚を有する薄膜流体を発生させる。
【0054】
図3に示す実施の形態において、接面圧付与機構は、上記の収容部41と第2処理用部20との間に配位される。
具体的には、その一端が第2ホルダ21の穴部に係止され、他端が第2処理用部の穴部に係止されたスプリング43の弾性力によって、第2処理用部20を第1処理用部10に近づく方向に付勢されるとともに、付勢用流体導入部44へ導入された空気や油などの付勢用流体の圧力によって、第2処理用部20を第1処理用部10に近づく方向に付勢され、上記の接面圧力を付与する。スプリング43による弾性力と上記付勢用流体の流体圧力とは、いずれか一方が付与されるものであればよく、磁力や重力などの他の力であってもよい。
この接面圧付与機構の付勢力に抗して、流体圧付与機構pにより加圧された被処理流動体の圧力や粘性などによって生じる離反力によって、第2処理用部20は、第1処理用部10から遠ざかり、両処理用面間に微小な間隔を開ける。このように、この接面圧力と離反力とのバランスによって、第1処理用面1と第2処理用面2との間隔は、μm単位の精度で設定される。
なお、離反力としては、被処理流動体の流体圧や粘性の他、処理用部の回転による遠心力、付勢用流体導入部44に負圧を掛けた場合の当該負圧、スプリング43を引っ張りスプリングとした場合の弾性力などを挙げることができる。この接面圧付与機構は、第2処理用部20ではなく、第1処理用部10に設けてもよく、双方に設けてもよい。
【0055】
さらに、第2処理用部20の内側には、第2処理用面2に隣接する離反用調整面23を備える。離反用調整面23は逆円錐面形状に構成され、第1導入部d1から導入された被処理流動体の圧力が、離反用調整面23に作用して、第2処理用部20を第1処理用部10から離反させる方向への力を発生させる。
【0056】
一方、第2処理用部20の内側には、第2処理用面2と反対側に近接用調整面24を備えている。近接用調整面24も逆円錐面形状に構成され、第1導入部d1から導入された被処理流動体の圧力が、近接用調整面24に作用して、第2処理用部20を第1処理用部10へ近接させる方向への力を発生させる。
近接用調整面24の面積を調整することにより、第2処理用部20を第1処理用部10へ近接させる方向への力を調整し、それによって処理用面1、2間を所望の微小隙間量にし、被処理流動体による流動体膜を形成させる。
【0057】
なお、図示は省略するが、近接用調整面24を離反用調整面23よりも広い面積を持ったものとして実施することも可能である。
【0058】
被処理流動体は、上記の微小な隙間を保持する両処理用面1、2によって強制された薄膜流体となり、環状の両処理用面1、2の外側に移動しようとする。ところが、第1処理用部10は回転しているので、混合された被処理流動体は、環状の両処理用面1、2の内側から外側へ直線的に移動するのではなく、環状の半径方向への移動ベクトルと周方向への移動ベクトルとの合成ベクトルが被処理流動体に作用して、内側から外側へ略渦巻き状に移動する。
【0059】
尚、回転軸50は、鉛直に配置されたものに限定するものではなく、水平方向に配位されたものであってもよく、傾斜して配位されたものであってよい。被処理流動体は両処理用面1、2間の微細な間隔にて処理がなされるものであり、実質的に重力の影響を排除あるいは軽減できるからである。また、この接面圧付与機構は、前述の第2処理用部20を変位可能に保持するフローティング機構と併用することによって、微振動や回転アライメントの緩衝機構としても機能する。
【0060】
図4に示すように、第1処理用部10の第1処理用面1には、第1処理用部10の中心側から外側に向けて、即ち径方向について伸びる溝状の凹部13を形成して実施してもよい。この凹部13の平面形状は、図4(B)へ示すように、第1処理用面1上をカーブしてあるいは渦巻き状に伸びるものや、図示はしないが、真っ直ぐ外方向に伸びるもの、L字状などに屈曲あるいは湾曲するもの、連続したもの、断続するもの、枝分かれするものであってもよい。また、この凹部13は、第2処理用面2に形成するものとしても実施可能であり、第1及び第2の処理用面1、2の双方に形成するものとしても実施可能である。この様な凹部13を形成することによりマイクロポンプ効果を得ることができ、被処理流動体を第1及び第2の処理用面1、2間に吸引することができる効果がある。
【0061】
この凹部13の基端は第1処理用部10の内周に達することが望ましい。この凹部13の先端は、第1処理用部面1の外周面側に向けて伸びるもので、その深さは、基端から先端に向かうにつれて、漸次減少するものとしている。
この凹部13の先端と第1処理用面1の外周面との間には、凹部13のない平坦面16が設けられている。
【0062】
前述の開口部d20は、第1処理用面1の平坦面16と対向する位置に設けることが好ましい。
特に、マイクロポンプ効果によって導入される際の流れ方向が、処理用面間で形成されるスパイラル状で層流の流れ方向に変換される点よりも下流側(この例では外側)の平坦面16に対向する位置に設置することが望ましい。
具体的には、図4(B)において、第1処理用面1に設けられた凹部13の先端から、半径方向への距離nを、約0.5mm以上とするのが好ましい。これによって、層流条件下にて複数の被処理流動体の混合と、微粒子の析出とが可能となる。
【0063】
開口部d20の形状は、図4(B)や図5(B)に示すように円形状であってもよく、図4(B)に点線で示すように、リング状ディスクである処理用面2の中央の開口を取り巻く同心円状の円環形状であってもよい。
【0064】
この第2導入部d2は方向性を持たせることができる。例えば、図5(A)に示すように、上記の第2処理用面2の開口部d20からの導入方向が、第2処理用面2に対して所定の仰角(θ1)で傾斜している。この仰角(θ1)は、0度を超えて90度未満に設定されており、さらに反応速度が速い反応の場合には1度以上45度以下で設置されるのが好ましい。
【0065】
また、図5(B)に示すように、上記の第2処理用面2の開口部d20からの導入方向が、上記の第2処理用面2に沿う平面において、方向性を有するものである。この第2被処理流動体の導入方向は、処理用面の半径方向の成分にあっては中心から遠ざかる外方向であって、且つ、回転する処理用面間における流体の回転方向に対しての成分にあっては順方向である。言い換えると、開口部d20を通る半径方向であって外方向の線分を基準線gとして、この基準線gから回転方向Rへの所定の角度(θ2)を有するものである。この角度(θ2)についても、0度を超えて90度未満に設定されることが好ましい。
【0066】
この角度(θ2)は、流体の種類、反応速度、粘度、処理用面の回転速度などの種々の条件に応じて、変更して実施することができる。また、第2導入部d2に方向性を全く持たせないこともできる。
【0067】
上記の被処理流動体の種類とその流路の数は、図3の例では、2つとしたが、3つ以上であってもよい。図3の例では、第2導入部d2から処理用面1、2間に第2被処理流動体を導入したが、この導入部は、第1処理用部10に設けてもよく、双方に設けてもよい。また、一種類の被処理流動体に対して、複数の導入部を用意してもよい。また、各処理用部に設けられる導入用の開口部は、その形状や大きさや数は特に制限はなく適宜変更して実施し得る。また、上記第1及び第2の処理用面間1、2の直前あるいはさらに上流側に導入用の開口部を設けてもよい。
【0068】
なお、処理用面1、2間にて上記処理を行う事が出来れば良いので、上記とは逆に、第1導入部d1より第2被処理流動体を導入し、第2導入部d2より第1被処理流動体を導入するものであっても良い。つまり、各流体における第1、第2という表現は、複数存在する流体の第n番目であるという、識別のための意味合いを持つに過ぎないものであり、第3以上の流体も存在し得る。
【0069】
上記装置において、図3に示す処理用面1、2の間で酸化亜鉛析出溶媒と原料溶液とを強制的に混合することにより、処理用面間で析出した酸化亜鉛ナノ粒子に、酸塩基反応による大きなエネルギーが瞬時に投下されるため、単結晶酸化亜鉛ナノ粒子が生成されるものと考えられる。そのため、酸化亜鉛析出溶媒は強酸性であり、かつ原料溶液は強塩基性であることが好ましく、さらに、酸化亜鉛析出溶媒のpHが1未満であり、かつ原料溶液のpHが14を超えることが、より好ましい。
【0070】
上記装置は、両処理用部10、20の対向する第1処理用面1と第2処理用面2とが共に環状であり、これにより両処理用面1、2間が環状の空間を構成するものである。但し、一方のみ(例えば第2処理用面2のみ)を環状とし、他方(例えば第1処理用面1)を平板状とするなどしてもよい。また、第1の被処理流動体は両処理用面1、2間の環状の空間の内側を第1導入部d1として導入され、導入された第1の被処理流動体は第1導入部d1を上流として、環状の外側を下流として流されているが、その逆に、環状の外側を上流として、環状の内側を下流として流してもよい。同様に、第2の被処理流動体は、第2導入部d2の開口部d20から導入されて、環状の外側を下流として流されているが、その逆に、環状の内側を下流として流してもよい。
【0071】
上記流体処理装置を用いて原料流体と酸化亜鉛析出溶媒とを混合した後の混合流動体は塩基性であり、好ましくはpH8.6〜14、より好ましくはpH12〜14である。
また、原料流体と酸化亜鉛析出溶媒とを混合した後の混合流動体のpHが8.6より大きい場合には、酸化亜鉛とは異なる亜鉛化合物(硫酸亜鉛、水酸化亜鉛等)が析出する場合が少なくなる。
特に、混合流動体のpHが12以上14以下である場合には、得られる酸化亜鉛ナノ粒子の全てが単結晶化されたものとなり、望ましい。
また、混合流動体のpHの調整方法については特に限定されない。混合流動体のpHが上記範囲となるように、酸化亜鉛析出溶媒及び/又は原料溶液の処方を調整することや、流体処理装置への導入流量、導入温度、流体処理装置の運転条件を変更することによって実施できる。
【0072】
本発明では、酸性物質を少なくともアルコールを含む溶媒に均質に混合させることで酸化亜鉛析出溶媒を調製することを必須とする。均質な混合は、回転式分散機を用いた撹拌によって行っているが、一般に撹拌エネルギーは、式1により定義される。
攪拌エネルギー = Np・ρ・n3 ・d5 ・t (式1)
Np:動力係数(実験データから算出される無次元の定数)
ρ:酸化亜鉛析出溶媒の密度
n:ローターの回転数
d:ローター径
t:撹拌時間
式1のパラメータρ、n、d、tの少なくともいずれか1つを変更することによって、生成される酸化亜鉛ナノ粒子の単結晶比率を制御することができる。
【実施例】
【0073】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。しかし、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0074】
以下の実施例において、A液とは、図3に示す装置の第1導入部d1から導入される第1の被処理流動体を指し、B液とは、同じく装置の第2導入部d2から導入される第2の被処理流動体を指す。
【0075】
(実施例1)
図1に示す回転分散機100として、クレアミックス(エム・テクニック製)を用いて、酸化亜鉛析出溶媒と原料溶液とを調製した。
具体的には、表1の実施例1に示す酸化亜鉛析出溶媒の処方に基づいて酸性物質とアルコールをクレアミックスに投入し、窒素雰囲気において、調製温度50℃、ローターの回転数10000rpmにて30分間攪拌することにより均質に混合し、酸化亜鉛析出溶媒を調製した。
また、表1の実施例1に示す原料溶液の処方に基づいて酸化亜鉛ナノ粒子原料と塩基性溶媒をクレアミックスに投入し、窒素雰囲気において、表1に示す調製温度にて、ローターの回転数20000rpmにて30分間攪拌することにより均質に混合し、酸化亜鉛ナノ粒子原料を塩基性溶媒に溶解させて、原料溶液を調製した。
【0076】
なお、表1の表中における略記号は、ZnOは酸化亜鉛、ZnClは塩化亜鉛、MeOHはメタノール、EtOHはエタノール、IPAはイソプロパノール、KOHは水酸化カリウム、NaOHは水酸化ナトリウム、Li(OH)は水酸化リチウム、HSOは硫酸、HNOは硝酸、HClは塩酸である。
【0077】
【表1】
【0078】
次に、調製した酸化亜鉛析出溶媒と、調製した原料溶液とを、図3に示す流体処理装置にて混合した。具体的には、流体処理装置を、処理用部10の回転数1700rpm、背面圧0.02MPaGで運転しながら、第1被処理流動体として酸化亜鉛析出溶媒を第2被処理流動体として原料溶液を処理用面1、2間に導入し薄膜流体中で混合した。酸化亜鉛ナノ粒子を含む吐出液(以下、酸化亜鉛ナノ粒子分散液)が流体処理装置の処理用面1、2間から吐出された。
なお、第1被処理流動体並びに第2被処理流動体の導入温度は、それぞれの温度を処理装置導入直前(より詳しくは、処理用面1、2間に導入される直前)にて測定した。
また、原料流体と酸化亜鉛析出溶媒との混合直後の混合流動体のpHを測定することは困難なため、流体処理装置の処理用面1、2間から吐出した酸化亜鉛ナノ粒子分散液のpHを測定し、吐出液のpHが塩基性となるように調製した。
pH測定には、HORIBA製の型番D−51のpHメーターを用いた。各被処理流動体を流体処理装置に導入する前に、その被処理流動体のpHを室温にて測定した。また、同装置から吐出された酸化亜鉛ナノ粒子分散液のpHを室温にて測定した。
【0079】
流体処理装置から吐出された酸化亜鉛ナノ粒子分散液から、乾燥粉体とウェットケーキサンプルを作製した。作製方法は、この種の処理の常法に従い行ったもので、吐出された酸化亜鉛ナノ粒子分散液を回収し、硬質濾紙を敷いたヌッチェによる濾過を行い、その後、洗浄と濾過とを繰り返し7回行うことで分離し、一方を乾燥させて乾燥粉体とした。他方はMeOH置換を行った後に硬質濾紙を敷いたヌッチェにて濾過し、ウェットケーキサンプルとした。
【0080】
(TEM観察用試料作製とTEM観察結果)
実施例で得られた洗浄処理後の酸化亜鉛ナノ粒子ウェットケーキをエチレングリコールに分散させ、さらにメチルエチルケトン(MEK)で100倍に希釈した。得られた希釈液をコロジオン膜に滴下して乾燥させて、TEM観察用試料とした。
【0081】
(STEM観察用試料作製とTEM観察結果)
実施例で得られた洗浄処理後の酸化亜鉛ナノ粒子ウェットケーキをエチレングリコールに分散させた分散液を、マイクログリッドに滴下して乾燥し、STEM観察用試料とした。
【0082】
図6(A)〜(C)に実施例1において作製された酸化亜鉛ナノ粒子のTEM像を、図7に実施例1において作製された酸化亜鉛ナノ粒子のSTEM像を示す。TEM、STEM観察の結果、一次粒子径が3〜8nm程度の酸化亜鉛ナノ粒子が見られた。
【0083】
(透過電子顕微鏡)
透過電子顕微鏡(TEM)観察には、透過型電子顕微鏡、JEM−2100(JEOL製)を用いた。観察条件としては、加速電圧を80kVとした。
なお、表1に記載した粒子径は、TEM観察にて、100個の粒子について粒子径を測定した結果の平均値を示した。
【0084】
(走査透過型電子顕微鏡察)
走査透過型電子顕微鏡察(STEM)観察には、走査透過型電子顕微鏡JEM−ARM200F(UHR)、日本電子製を使用した。観察条件は、加速電圧を80kVで観察した。なお、図7(実施例1)においてはTEMモード、図9(実施例2)、図10(実施例3)においては暗視野測定モードにて観察した。
【0085】
(X線回折測定)
X線回折(XRD)測定には、粉末X線回折測定装置X'Pert PRO MPD(XRD スペクトリス PANalytical事業部製)を使用した。測定条件は、測定範囲:10~100[°2Theta] Cu対陰極、管電圧45kV、管電流40mA、走査速度1.6°/minであった。
【0086】
(XRD測定結果)
各実施例で得られた酸化亜鉛ナノ粒子の乾燥粉体を用いてXRD測定を行った。実施例1のXRD測定結果を図8に示す。XRD測定の結果、酸化亜鉛に一致するピークが見られ、酸化亜鉛が作製されていることを確認した。また、得られた47°付近のピークを使用して、シリコン多結晶板の測定結果を用いたシェラーの式より結晶子径を算出した。
【0087】
(単結晶であることの評価)
実施例によって得られた酸化亜鉛ナノ粒子が単結晶であることを評価する方法としては、透過型電子顕微鏡(TEM)や走査型電子顕微鏡(SEM)による電子顕微鏡観察やTEM観察にて得られた粒子径と、XRDを用いた結晶子の測定結果とを比較する方法等が挙げられるが、ここでは、得られた酸化亜鉛ナノ粒子をSTEMにより観察し、観察した酸化亜鉛ナノ粒子の数A(個)とそのうち単結晶として観察された酸化亜鉛ナノ粒子の数B(個)から単結晶比率=B/A×100(%)により算出し、その比率を評価した。なお、電子顕微鏡観察に際しては、個々の粒子が、単結晶であるか否かの判断基準は、格子縞(結晶中の原子配列)が一方向に観測されるものを単結晶と認定し、格子縞が乱れていたり粒界が見られたものは単結晶ではないと認定したものである。
【0088】
(実施例2〜10、比較例1〜2)
実施例1と同様に、表1に記載されている酸化亜鉛析出溶媒と原料溶液の各処方、導入流量、導入温度にて実施し、流体処理装置から吐出された酸化亜鉛ナノ粒子分散液から、乾燥粉体とウェットケーキサンプルを作製し、実施例1と同様の手順で試料を作成し、観察、測定したところ、表1に記載の通りの結果を得た。なお、表1に記載されていない条件については実施例1と同様である。
表1に示されている通り、吐出液が塩基性である実施例2〜10においては、吐出された酸化亜鉛ナノ粒子分散液には、単結晶酸化亜鉛ナノ粒子が含まれていることが判明した。すなわち、実施例2〜10において単結晶酸化亜鉛ナノ粒子が生成された。
【0089】
一方、比較例1、比較例2に示されている通り、吐出液が塩基性で無い場合には、吐出された酸化亜鉛ナノ粒子分散液には、単結晶酸化亜鉛ナノ粒子が含まれていなかった。
【0090】
各実施例において、吐出液のpHが高くなるほど、単結晶比率が高くなる傾向が見られ、実施例1、実施例2、実施例3、実施例4、実施例6、実施例8に見られる様に、吐出液のpHが8.6以上の場合には、単結晶化比率が比較的高くなった。
特に、実施例1、実施例2、実施例3、実施例6に見られる様に、吐出液のpHが12以上の場合には、観察された酸化亜鉛ナノ粒子全てが単結晶であった。
【0091】
また、原料溶液の調製温度と単結晶比率との関係は、図11の通りであり、原料溶液の調製温度が50℃以上の場合、単結晶比率が向上し、原料溶液の調製温度が75℃の場合には、単結晶比率がより一層向上した。なお、図11に記載した数字は表1の実施例番号を示す。
【0092】
(酸化亜鉛析出溶媒の調製)
本発明においては、酸性物質を少なくともアルコールを含む溶媒に均質に混合させることで酸化亜鉛析出溶媒を調製することが必須であるが、この点に関して以下に詳述する。
【0093】
酸化亜鉛析出溶媒と原料溶液の各処方、原料溶液の調製、流体処理装置への導入流量、導入温度、流体処理装置の運転条件に関しては、先述の実施例1と同じ条件とし、酸化亜鉛析出溶媒の調製条件のうち調製時間と調製温度のみを変化させてナノ粒子を析出させ、実施例1〜10と同様に単結晶比率を算出したところ、表2に示す通り、Rank1からRank4の結果が得られた。なお、表2において、調製時間30分かつ調製温度50℃の条件で得られた酸化亜鉛ナノ粒子が表1における実施例1である。
【0094】
【表2】
【0095】
表2の結果から、酸化亜鉛析出溶媒の調製時間を20分以上あるいは調製温度を40℃以上とすることにより、酸性物質が少なくともアルコールを含む溶媒に均質に混合され、その結果、単結晶酸化亜鉛ナノ粒子の生成に寄与することが分かる。また、調製時間を25分かつ調製温度を70℃とした場合には単結晶比率は70%以上となり、調製時間を30分以上でかつ調製温度を50℃以上とした場合にあっては、得られた酸化亜鉛ナノ粒子は全て単結晶となった。このように、酸化亜鉛析出溶媒の調製が単結晶酸化亜鉛ナノ粒子の生成に寄与することを確認した。
【0096】
以上述べた様に、酸化亜鉛析出溶媒を調製する際に、酸性物質を少なくともアルコールを含む溶媒に均質に混合させることにより、単結晶酸化亜鉛ナノ粒子を析出可能としている。その詳細なメカニズムは不明ではあるものの、処理用面間に導入される酸化亜鉛析出溶媒の状態が、単結晶酸化亜鉛ナノ粒子の析出にあたって大きく影響していることは、上記表2の実施例(Rank1、Rank2、Rank3)及び比較例(Rank4)及びその考察から明らかである。
【0097】
上記表2は、調製時間tによって、攪拌エネルギーを増減させた一例である。表2から分かるように、酸化亜鉛析出溶媒の調製時に投下した撹拌エネルギーの量によって、得られた単結晶酸化亜鉛ナノ粒子の単結晶比率を制御することが可能である。なお、ここで、全て単結晶である酸化亜鉛ナノ粒子を析出させる、言い換えると単結晶比率が100%であるということも上記制御の一例である。
【0098】
次に、制御の別の例を示す。実施例1においては、単結晶比率100%とするために、酸化亜鉛析出溶媒を、ローターの回転数10000rpm、30分間の攪拌により調製したが、例えば、ローターの回転数を実施例1の半分である5000rpmに設定して調製する場合には、式1に従って、調製時間を2=8倍の240分に設定する、あるいは、ローター径を25/3=3.17倍することで、酸化亜鉛析出溶媒の調製時に投下される撹拌エネルギーが等しくなり、実施例1と同じ結果が得られる。なお、式1を満足するのであれば、調製時間とローター径の両者を設定しても良いのは言うまでもない。
【0099】
なお、式1には、調製温度が顕に含まれていないことからも分かる様に、単結晶比率を制御するにあたっては、調製温度は、上述の式1のパラメータρ、n、d、tと独立して設定する必要がある。
【0100】
(付記)
以下に、本願明細書に開示されている発明を付記する。
上記酸化亜鉛析出溶媒が40℃以上で調製されたことを特徴とする、請求項1〜16のいずれかに記載の単結晶酸化亜鉛ナノ粒子の製造方法。
上記酸化亜鉛析出溶媒の調製時間を20分以上とすることを特徴とする、請求項1〜16のいずれかに記載の単結晶酸化亜鉛ナノ粒子の製造方法。
【0101】
1 第1処理用面
2 第2処理用面
10 第1処理用部
11 第1ホルダ
20 第2処理用部
21 第2ホルダ
d1 第1導入部
d2 第2導入部
d20 開口部
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