【実施例1】
【0032】
(本発明の斜面安定化工法)
従来工法の上記問題を解消可能な本発明の斜面安定化工法を以下に詳述する。本工法では、補強材4を含んだ部分(補強材アセンブリ40)の地盤への定着と、支圧板部分の設置と、に二分し、必要最小限の部材を用いて補強材4の定着工程(後述の工程S4)を、支圧板10の設置(後述の工程S5)よりも先行して完了する点にある。これにより、後述するように、短時間で作業員身体への負担の少ない作業を実現することができる。
【0033】
図3は、本発明の斜面安定化工法の各工程を示したフローチャートである。
図4は、本発明の支圧板設置方法の概略(挿絵)を示したものである。
図5(a)は、補強材アセンブリ40の分解斜視図を示し、
図6(a)及び(b)は、補強材アセンブリ40と支圧板10とを含んだ、組立式反力体6の分解斜視図を示す。
図6(c)は、ロープ以外の構成部品が組み付いた状態の組立式反力体6の斜視図である。
【0034】
本発明の方法も、最初の部分の幾つかの工程は、従来方法と同様である。つまり、
図3に示すように、地盤1の表面から地中に向かって縦穴2を形成し(工程S1)、縦穴2内の空間を埋めるようにグラウト3を注入し(工程S2)、縦穴2の中心軸を通るように、補強材4(例えば、ロックボルト等の鋼材)を縦穴2に挿入する(工程S3)。
【0035】
(補強材の地盤への定着(工程S4))
次に、定着板41を補強材4に通し、縦穴2の開口部に蓋をするように地盤に設置する(工程S4a)。その定着板41の上に、球面ワッシャー42を補強材4に通していき、ナット43で螺着する(工程S4b及び工程S4c)。本発明では、上述の定着板41、球面ワッシャー42、及びナット43の各部材を補強材4への定着部材とも呼び、補強材4へ組付けられた状態を補強材アセンブリ40とも呼ぶ。つまり、補強材4の組付け部分(つまり、補強材アセンブリ40)だけを先行して地盤1に定着させてしまうのである。これにより、この部分だけの定着や傾斜具合等の確認試験を先に実行することができる。
【0036】
(連結ソケットの設置)
その後、中空円筒状の連結ソケット44を補強材4の上端に設置する(工程S4d)。ここで、
図5(b)の左側部分に球面ワッシャー42の斜視図を示し、同図の右側部分に球面ワッシャー42を破断した場合の一方の半部42Hの斜視図(つまり断面状態)を示す。同様に、
図5(c)の左側部分に連結ソケット44の斜視図を示し、同図の右側部分に連結ソケット44を破断した場合の一方の半部44Hの斜視図(つまり断面状態)を示す。
図5(b)及び(c)に示すように、球面ワッシャー42の外周面と連結ソケット44の内周面下部とには対応する螺子形状42a,44aが形成されているため、連結ソケット44は、定着プレート41上に立設した状態で補強材アセンブリ40に固定され、これと一体化する。
【0037】
(支圧板の設置(工程S5))
その後、
図6(a)及び
図6(b)に示すように、中空円筒11を有した支圧板10を補強材アセンブリ40上に設置する(工程S5)。中空円筒11は、連結ソケット44の外径に対応した(若干大きな)内径を有した中央孔12が設けられている。これにより、地盤1に定着された補強材アセンブリ40の連結ソケット44を中央孔12に差し込み、支圧板10を補強材アセンブリ40上に確実に設置することができる。
【0038】
(支圧板設置の際の本発明の長所)
このように、補強材4に設置された球面ワッシャー42に螺着した連結ソケット44は、支圧板10を地面へ設置するための案内部材として使用されるため、支圧板10の中心部に補強材4(補強材アセンブリ40)が自動的かつ確実に収まるようになる。このため、作業員は、支圧板10の調整(例えば、その設置位置や傾斜・回転具合等の調整)を一切しなくとも済む。言い換えれば、本発明の支圧板設置工程S5は、補強材アセンブリ40上に支圧板10の設置と位置決めとを同時に行うことを特徴とする。
【0039】
(軽量な支圧板)
なお、本発明の支圧板10に形成される補強リブ20や基盤30には、
図6(a)等に示すように、軽量化用の孔21,31が多数設けられている。
図7(a)は実施例1の補強リブ20を示し、
図7(b)及び
図7(c)に変形例に係る補強リブ20A,20Bを示す。
【0040】
(軽量な基盤)
なお、基盤30は、中空円筒11の中央孔12に対応した寸法の貫通孔が中央に形成された扁平板体を成し、その基盤30の上面に補強リブ20や中空円筒11が設置(例えば、溶接)される。支圧板10の更なる軽量化のため、基盤30の外周部は、補強リブ20間の平板領域32(つまり、補強リブ20が設置されない部分)に軽量化用の孔31が形成されるとともに、外周部外縁が中心に向かって削除又は湾曲した切落し部33が形成されることが好ましい。また、切落し部33の近くの平板領域32の外縁部には、回転防止孔34が設けられることが好ましい。この回転防止孔34に、例えば、細長い金属製棒材(図示せず)を回転防止孔34に挿通させながら地盤1に突き刺しておくことで、基盤30を含む支圧板10の回転が抑制される。
【0041】
(軽量な補強リブ)
この他、補強リブ20には、後述するように、ワイヤーロープ5の挿通・取付用の孔22,23,24も多数形成されている。従って、本発明の支圧板10は、従来製品に比べ非常に軽量であり、作業員にとって運搬・取扱いが容易なものとなる。
【0042】
(斜面への複数の支圧板の設置)
上記工程S1〜S5を繰り返し行い、安定化させたい斜面に複数の支圧板10を千鳥状に離間して配置する(工程S6)。
【0043】
(ロープ掛け及びロープの固定・緊張)
隣接する複数の支圧板10にロープ5を掛けていき、支圧板10の間をロープで連結する(工程S7)。その後、各支圧板10にてロープ5を引き締めた状態でロープを固定する(工程S8a)。なお、これらの工程S7及びS8aについては、追って詳しく説明する。
【0044】
上述の工程S8aまで終了すると、各々の支圧板10は、斜面に確実に固定され、斜面安定化のための支圧効果が付与される。この後で、各支圧板10に防錆対策を施しておくことが好ましい(工程S9)。具体的には、支圧板10内の中央孔12内に図示しない防錆油(例えば、グリース)を充填する。この防錆油で溢れそうなった中央孔12の上端部を覆うために、
図6(b)及び
図6(c)に示すように、キャップベース13を設置し(工程S9a)、防錆キャップ14を被せてこれを連結ソケット44(具体的には、上端の螺子溝44b)に螺着する(工程S9b)。キャップベース13の外周縁部は、これを収容するように補強リブ20に切り欠かれた係合端27(例えば、
図7(a)参照)で着座する。
【0045】
また、防錆キャップ14の頭部に螺子孔14aを更に設け、この螺子孔14aにキャップ螺子15を更に螺着してもよい。これにより、防錆キャップ14を連結ソケット44に螺着して締め付けていく際に、中央孔12内に充填された必要以上の防錆油(防錆キャップ14と中央孔12とによって仕切られた空間以上の容積を有した防錆油)を、螺子孔14aを通して防錆キャップ14の外部へ排出することができる。これにより、補強材4の頭部は、防錆油で完全に充たされた中央孔12と防錆キャップ14によって密封されることになり、防錆性能が一段と強化される。なお、
図5(d)の左側部分に防錆キャップ14及びキャップ螺子15を外側から示した斜視図を示し、同図の右側部分に防錆キャップ14を内側から示した斜視図を示す。防錆キャップ14内側に設けられた螺子溝14bは、連結ソケット44上端の螺子溝44bに螺合する。
【0046】
なお、本発明の斜面安定化構造体では、補強材4に作用する荷重は、球面ワッシャー42、連結ソケット44及び中空円筒11、防錆キャップ14、キャップベース13、補強リブ20、支圧板基盤30の順に伝達するようにして斜面を安定化させている。また、補強材4の頭部が支圧板10の外部へ突出しない構造にもなっているため、落石等の直撃の可能性が減り、補強材4自体に破壊や損傷が生じにくい。
【0047】
(補強リブの構造)
次に、図面を参照しながら上述の本工法を実現可能な組立式反力体6の構造を説明する。支圧板10には、
図6(c)に示すように、薄板状の補強リブ20が合計6枚設けられている。具体的には、補強リブ20は基盤30上で、一端(基端)が中空円筒11に当接し、他端(先端)が中空円筒11を基点に放射状(径方向外側)に延びるように配置されている。
【0048】
各補強リブ20にはロープ5を挿通又は固定するための複数の孔22,23,24が設けられている(
図7(a)参照)。より具体的には、ロープ5の端末51を固定するための第1孔22と、ロープ5の中間部53を固定するための第2孔23と、複数リブ20の基端側に設けられかつ中空円筒11周りにロープ5を挿通させるための第3孔24とが補強リブ20に設けられている。また、補強リブ20には、補強リブ20ひいてはこれらを含んだ組立式反力体6を軽量化するための軽量孔21も設けられている。
【0049】
(支圧板による様々なロープ固定機能)
このように、本発明の支圧板10は、補強材4の受圧板として働くだけでなく、上記構造の補強リブ20を備えているため、近隣の支圧板10間を連結するロープ5に対して様々な固定及び緊結の機能を提供する。
【0050】
(第1孔を用いたロープ端末の固定)
ロープ5の端末51は、例えば、
図8(a)に示すような端末固定金具60を用いて、補強リブ20の第1孔22に固定可能である。端末固定金具60は、
図8(b)に示すように、2本のボルト61と、2枚の座金62と、ボルト61が挿通する孔63aを有した2枚の固定プレート63と、中空円筒状を成す2本のスペーサ64と、皿バネ座金65と、ナット66とで構成可能である。
【0051】
(支圧板への端末固定金具の取付手順)
次に、
図8(c)を参照しながら、支圧板10の補強リブ20への端末固定金具60の取付手順を説明する。先ず、ボルト61を座金62、一方の固定プレート63、スペーサ64(64a)の順に挿通して一体化する。そして、一体化した一方のスペーサ64aを補強リブ20の先端(外縁)側の第1孔22に挿通する。そして、この状態のまま、スペーサ64aの先端側を、他方の固定プレート63、皿バネ座金65の順に挿通して、最後にナット66を螺着する。これだけの手順で端末固定金具60を補強リブ20に取り付けることができる。
【0052】
(端末固定金具を用いたロープ端末の取付手順)
補強リブ20に取り付けられた端末固定金具60のうち、第1孔22に挿通されたスペーサ64aとは別のスペーサ64bは支圧板10より外周方向に張り出した格好となっている。従って、
図8(c)に示すように、巻付グリップ52を有したロープ端末51を使用すれば、端末固定金具60の一部を一旦分解し、巻付グリップ52の環部にスペーサ64bを挿通した上で、分解した部品を再度取り付けることで、ロープ端末51と、補強リブ20に取り付けた端末固定金具60とを連結すること、ひいては、端末固定金具60を介してロープ5と支圧板10とを連結することが可能となる。
【0053】
(短時間で効率的なロープ端末の取付作業)
なお、支圧板10を現場(地盤1)へ運搬・設置する際には、固定端末金具60を支圧板10の補強リブ20に予め取り付けておくことが好ましい。これにより、現場では、上述したロープ端末51(巻付グリップ52の環部)の取付作業のみ行うだけで済むため、短時間で効率的な取付作業となる。
【0054】
(第2孔を用いたロープ中間部の固定)
また、本発明の工法では、補強リブ20の第2孔23を使用して、ロープ5の中間部53を固定することができる。
図9(a)に示すように、本発明の工法では、仮にロープ5を矢印Tの方向から支圧板10の中空円筒11の外周部に引き入れ、この外周部にて方向を変えて(湾曲させて)、矢印Dの方向へ引き出すようにロープ5を支圧板10に設置可能である。
【0055】
具体的には、矢印T方向に延びた補強リブ20に沿ってロープ5の一端(端末51)を円筒11の外周部に近づけていき、補強リブ20に隣接した別の補強リブ20の第3孔24に該端末51を挿通し、最後に挿通された補強リブ20に隣接しかつ矢印D方向に延びた補強リブ20に沿って該端末51を引き出し、所定の張力でロープ5を緊張して該補強リブ20に設置する。
【0056】
(中間部固定金具を用いたロープ中間部の取付手順)
補強リブ20にロープ5を掛けた後、後述する部材71〜74から構成された中間部固定金具70(
図9(a)を参照)を用いて、ロープ5の中間部53を補強リブ20に固定することができる。
【0057】
具体的には、
図9(a)に示すように、Uボルト71と、このUボルト71の先端が挿通可能な孔を有した台座72と、を用意し、このUボルト71と台座72とでロープ5の中間部53を挟み込みながら、Uボルト71の各先端を補強リブ20の第2孔23に挿通する。そして、ロープ5の中間部53が存在する側とは反対側に配置した皿バネ座金73に、Uボルト71の先端を挿通したうえで、該先端にナット74を螺着する。なお、各支圧板10におけるロープ5の中間部53の固定箇所は、
図9(a)に示す実施例の場合、ロープ1本に対して4箇所(1枚の補強リブ20につき2箇所)であるが、必ずしもこれに限定されず、2箇所又は6箇所であってもよい。
【0058】
(ロープ配置パターン1(菱形))
このロープ5の中間部53に対して上記固定方法を使用することにより、
図10の各図に示したロープ配置でもって近接した支圧板10同士をロープ5で連結・固定することができるようになる。
図10(a)に示す実施例では、支圧板10(支圧板10を含んだ組立式反力体6)を千鳥状に配列し、1つの支圧板10に2本のロープ5が交差するようにジグザグに掛けられており、中間部固定金具70でもって各支圧板10の補強リブ20に固定することができる。つまり、各ロープ5の交差により、菱形模様(菱形の各頂点に支圧板10が配置されかつ各辺にロープ5が配置された模様)が連続したロープ配置となる。
【0059】
(ロープ配置パターン2(三角形))
また、
図10(b)に示す実施例のように、支圧板10を千鳥状に配列し、3本のロープ5が各支圧板10に交差した形で掛けられても良く、この場合、三角形模様が連続したロープ配置となる。
【0060】
この変形例の具体的なロープ掛けの方法としては、先ず、上記実施例と同様に2本のロープ5(
図10(b)に示す実線)を使用して
図10(a)の菱形模様のロープ配列を形成した後、各列(図示の上下方向)に別の追加ロープ5a(同図に示す破線)を直線状に渡すように、各支圧板10(支圧板10を含んだ組立式反力体6)に該追加ロープ5aを掛けていくだけで良い。このように、初心者の作業員にとってもロープ掛け作業は単純・明解で、短時間で済むようものとなる。また、本変形例では、各菱形の半部を通過する領域をも追加ロープ5aで緊結するため、支圧板10敷設された領域での地盤支圧効果及び斜面安定化が一層促進できる。
【実施例2】
【0061】
(ロープ固定方法の変形例(圧縮変形状態でのロープ固定))
支圧板10へのロープ5の固定方法及び固定器具は上記実施例に限定されない。次に、別の好適な変形例も紹介する。
図7(b)及び
図7(c)に複数の変形例に係る補強リブ20A,20Bを示す。これらの補強リブ20A,20Bの第3孔24A,24Bは、実施例1のような丸孔24に限らず、上方が開口した切欠きであってもよい。この切欠きを有した変形例の場合は、実施例1で必須であったロープ5の端末51を第3孔24に順に通していく作業(つまり、挿通作業)は必要無く、各支圧板10の中央円筒11の外周側にロープ5(の中間部53)を上から掛けていく(つまり、載置作業)だけで良い。
【0062】
なお、切欠き(第3孔)24A,24Bの開口部の付近には、上述の係合端27が形成されているため、キャップベース13や防錆キャップ14を中空円筒11に設置する際にこれらが開口部を塞ぐように覆い被さるため、中空円筒11の外周付近でもロープ5は確実に拘束され、上方に逃げることは無い。
【0063】
また、2つ目の変形例に係る補強リブ20Bにもロープ5の中間部53を固定するための第2孔23Bが設けられている。しかしながら、実施例2に係る第2孔23Bは、実施例1に係る第2孔(丸孔)23と異なり、長孔形状23B(より好ましくは、2つの長孔23B
1,23B
2が中心で直交した「+」字状の孔形状)を成す。
【0064】
また、上記補強リブ20Bに対応する変形例に係る中間部固定金具70Bは、
図9(c)に示すように、Uボルト71Bと、Uボルト71Bの先端を挿通可能な台座72Bと、2本のナット74Bとから構成される。この変形例の場合、ロープ5の中間部53は、
図9(b)に示すように、Uボルト71Bと補強リブ20Bとに挟まれる。補強リブ20Bの反対側に突き出たUボルト71Bの先端を台座72Bの孔に通し、これらの孔から突き出た各先端にナット74Bを螺着する。
【0065】
こうすることで、ロープ5の一部が圧縮して(入り込んで)長孔23B内で「くの字」状に変形するため(
図9(b)参照)、実施例1に比べ、ロープ5を補強リブ20Bにさらに堅く固定することができるようになる。従って、地盤1の変動によりロープ5に引張力が掛った場合には、この中間部固定金具70Bにて大きな抵抗力が生ずるため斜面の安定化を図ることができる。
【実施例3】
【0066】
(ロープ固定方法の変形例(ロープ緊張治具によるロープの追加的緊張))
本発明の工法では、
図11に示すロープ緊張治具80を用いて支圧板10に掛けられたロープ5を追加的に緊張することが好ましい。
【0067】
(ロープ緊張治具)
ロープ緊張治具80は、例えば、
図11の各図に示すように、治具本体81を有する。治具本体81は、中心孔82aが設けられた2枚の扁平円盤82と、扁平円盤82を平行に離間する中空円筒体を成す軸受83と、を有する。
【0068】
(治具本体内の構造)
なお、扁平円盤82には、夫々、径方向外側に延びた突出板82bが左右に形成されており、この突出板82bの先端には、対向する扁平円盤82を接続する円柱状のロープ押さえ体84が設けられている。また、一方の扁平円盤82の外周縁内側(突出板82bが設けられていない部分)には、扁平円盤82の半径より短い仮想半径を有した仮想円周上に沿って扁平円盤82を貫通する位置決め孔82cが複数個(図示では、一枚の扁平円盤82の一方の径方向側に3個、他方の径方向側(つまり、線対称の対応した位置)に3個)設けられている。また、一方の扁平円盤82の外側には、中心孔85aを有した立方体を成す回転ツマミ85が設けられている。
【0069】
上記部材82〜85で構成された治具本体81として、鋳造により一体化されたものを利用してもよい。
【0070】
ロープ緊張治具80は、治具本体81の他に、回転用軸ボルト86a及びこれに対応するナット86bと、位置決め用軸ボルト87a及びこれに対応するナット87bとをさらに備える。
【0071】
ここで、回転用軸ボルト86aは治具本体81に挿通される。具体的には、回転用軸ボルト86aの先端側を、回転ツマミ85の中心孔85a、一方の扁平円盤82の中心孔82a、軸受83内、他方の扁平円盤82の中心孔82aの順に挿通していき、回転用軸ボルト86aの頭部86hが回転ツマミ85に当接するまで治具本体81内に差し込む。そして、治具本体81から突き出た、回転用軸ボルト86aの先端部にナット86bを螺着する。また、位置決め用軸ボルト87aは、一方の扁平円盤82に設けられた位置決め孔82cに挿通し、その先端側にナット87bを螺着する。
【0072】
(補強リブへのロープ緊張治具の取付け)
次に、上記構成のロープ緊張治具80を補強リブ20Bに取り付ける方法を説明する。支圧板10に設置された補強リブ20Bには、ロープ追加緊張用の第4孔25(
図7(c)及び
図9(b)を参照)が設けられる。第4孔25は、軸挿通孔25aと、この軸挿通孔25aを中心とした仮想円の円周上に沿って離間して配置された複数(図示では12個)の位置決め孔25bと、が設けられている。
【0073】
この軸挿通孔25aに、ロープ緊張治具80の回転用軸ボルト86aの先端を挿通し、治具本体81を補強リブ20Bの一方の面にあてがう。このあてがった面の反対側から軸ボルト86aの先端にナット86bを螺着する。これにより、ロープ緊張治具80は補強リブ20Bに回転可能に取り付けられる(
図12(d)を参照)。
【0074】
(ロープ緊張治具を用いたロープの追加緊張)
このロープ緊張治具80を用いて支圧板10に掛けられたロープ5を追加的に緊張する方法を説明する。
図12(a)は、ロープ緊張治具80を使用する前の状態で、支圧板10へのロープ5だけを取り付けた状態を示す。
図12(a)から判るように、ロープ5は地面(地盤1)から浮いた状態になるため、斜面に対する支圧効果(ロープ5が支圧板10を介して地面を押し付ける効果)は思った以上に期待できない懸念がある。また、極めて長いロープ5を使用した場合には、水平方向にも充分に緊張されていない可能性がある。
【0075】
そこで、本実施例(変形例)では、
図12(d)に示すように、ロープ5を上述したように、支圧板10上の補強リブ20Bの周囲に掛けた状態にし、図示しないレバーブロック(登録商標)等を用いて、ロープ5に所定の緊張力を掛ける。そして、中間部固定金具70Bを用いてロープ5の中間部53を補強リブ20Bに固定する。その後、補強リブ20Bの第4孔25を横切るロープ5の一部をロープ緊張金具80の軸受83で下側(地面側)に押し付けて変形させて、ロープ緊張金具80の回転用軸ボルト86aを、補強リブ20Bの第4孔25(の軸挿通孔25a)に通す。これにより、ロープ5の一部は、ロープ押さえ体84及び軸受83の下側に配置されるため、緩やかに屈曲するようになる。
【0076】
その後、図示しないトルクレンチやパイプレンチを用いて、回転ツマミ85を回転させる。この際、内側(補強リブ20Bの基端側)のロープ押さえ体84が水平位置からより下方位置へ、外側(補強リブ20Bの先端側)のロープ押さえ体84が水平位置より上方位置へ移動するように回転ツマミ85を回転させる。
【0077】
これにより、中間部固定金具70Bと内側のロープ押さえ体84との間に延びたロープ5の中間部53は、更に下方に折り曲げられた状態となる。これは言い換えれば、ロープ5は折り曲げられた分だけロープ5内の緊張力が高まるとともに、ロープ5の折り曲げ部分と地盤1との間の隙間は略無くなるため、ロープ5からも地面方向への充分な支圧効果が発揮されることになる。また、別の見方をすれば、このロープ緊張金具80は、中間部固定金具70Bによるロープ5と支圧板10との間の締結力を更に補強する器具であるともいえよう。