特許第6661130号(P6661130)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 筑波重工株式会社の特許一覧 ▶ 水野 雅夫の特許一覧 ▶ 有限会社丸大県北農林の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6661130
(24)【登録日】2020年2月14日
(45)【発行日】2020年3月11日
(54)【発明の名称】伐倒練習装置および伐倒練習方法
(51)【国際特許分類】
   G09B 9/00 20060101AFI20200227BHJP
   G09B 19/00 20060101ALI20200227BHJP
【FI】
   G09B9/00 Z
   G09B19/00 Z
【請求項の数】15
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-97635(P2017-97635)
(22)【出願日】2017年5月16日
(65)【公開番号】特開2018-194657(P2018-194657A)
(43)【公開日】2018年12月6日
【審査請求日】2019年5月17日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】515266603
【氏名又は名称】筑波重工株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】517172355
【氏名又は名称】水野 雅夫
(73)【特許権者】
【識別番号】517172366
【氏名又は名称】有限会社丸大県北農林
(74)【代理人】
【識別番号】100119264
【弁理士】
【氏名又は名称】富沢 知成
(72)【発明者】
【氏名】小田 直樹
(72)【発明者】
【氏名】水野 雅夫
(72)【発明者】
【氏名】大粒来 仁孝
【審査官】 上田 泰
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−015213(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2017/0011660(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0143324(US,A1)
【文献】 特開平11−276656(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09B 1/00−9/56,17/00−19/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
伐倒練習者の足場とする足場台と、該足場台に設けられていて伐倒練習用の樹木を固定する樹木ホルダーと、該足場台を傾斜駆動する足場台傾斜駆動手段とからなることを特徴とする、伐倒練習装置。
【請求項2】
伐倒練習者の足場とする足場台と、該足場台に設けられていて伐倒練習用の樹木を固定する樹木ホルダーと、該樹木ホルダーを任意方向に傾斜駆動可能な樹木ホルダー傾斜駆動手段と、該足場台を傾斜駆動する足場台傾斜駆動手段とからなることを特徴とする、伐倒練習装置。
【請求項3】
前記樹木ホルダー傾斜駆動手段には油圧シリンダーを用いることを特徴とする、請求項に記載の伐倒練習装置。
【請求項4】
前記樹木ホルダー傾斜駆動手段は背圧が設定されて用いられることを特徴とする、請求項に記載の伐倒練習装置。
【請求項5】
前記足場台傾斜駆動手段には油圧シリンダーを用いることを特徴とする、ことを特徴とする、請求項1、2のいずれかに記載の伐倒練習装置。
【請求項6】
前記樹木ホルダーにおける伐倒練習用樹木の固定は油圧シリンダーによりなされることを特徴とする、請求項1、2、3、4、5のいずれかに記載の伐倒練習装置。
【請求項7】
前記樹木ホルダー内壁には伐倒練習用樹木を固定するための突起が設けられていることを特徴とする、請求項1、2、3、4、5、6のいずれかに記載の伐倒練習装置。
【請求項8】
可動の構成要素を駆動する手段(以下、「駆動手段」)は油圧駆動され、該駆動手段を駆動操作するための入力手段を備えていることを特徴とする、請求項1、2、3、4、5、6、7のいずれかに記載の伐倒練習装置。
【請求項9】
前記入力手段はジョイスティックレバーであることを特徴とする、請求項に記載の伐倒練習装置。
【請求項10】
前記樹木ホルダーの姿勢を検知する姿勢計測センサーを備えていることを特徴とする、請求項8、9のいずれかに記載の伐倒練習装置。
【請求項11】
前記足場台を傾斜駆動する足場台傾斜駆動手段、または該足場台の少なくともいずれかの姿勢を検知する角度センサーを備えていることを特徴とする、請求項10に記載の伐倒練習装置。
【請求項12】
伐倒練習者の足場とする足場台と、該足場台に設けられていて伐倒練習用の樹木を固定する樹木ホルダーと、該樹木ホルダーを傾斜駆動可能な樹木ホルダー傾斜駆動手段とからなり、
可動の構成要素を駆動する手段(駆動手段)は油圧駆動され、該駆動手段を駆動操作するためのジョイスティックレバーまたはその他の入力手段を備えており、
該樹木ホルダーの姿勢を検知する姿勢計測センサーを備えており、かつ、
該足場台を傾斜駆動する足場台傾斜駆動手段、または該足場台の少なくともいずれかの姿勢を検知する角度センサーを備えている
ことを特徴とする、伐倒練習装置。
【請求項13】
前記樹木ホルダー傾斜駆動手段は前記樹木ホルダーを任意方向に傾斜駆動可能に構成されていることを特徴とする、請求項12に記載の伐倒練習装置。
【請求項14】
可動の構成要素の姿勢を設定することができ、該可動の構成要素において検知された実際の姿勢によるフィードバック制御を行う駆動制御手段を備えていることを特徴とする、請求項10、11、12、13のいずれかに記載の伐倒練習装置。
【請求項15】
請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14のいずれかに記載の伐倒練習装置を用いて行うことを特徴とする、伐倒練習方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は伐倒練習装置および伐倒練習方法に係り、特に、樹木の伐倒技術を効果的に習得することのできる、伐倒練習装置および伐倒練習方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
チェーンソーを用いた樹木の伐倒作業には、伐り方、倒し方技術の習得を要する。しかし、技術講習を実施できる教習者数は少なく、初心者もほとんど実地で作業を行っている例が多い。その上、練習のために樹木を伐倒することは森林資源を無駄にすることになるため、なかなか場数を踏むことができず、初心者でなくとも技術向上を図りにくい。したがって、伐倒技術が未熟な初心者を初め、作業中の事故が多発している現状である。
【0003】
樹木の伐倒については従来、若干の技術的提案もなされている。たとえば後掲特許文献1には、作業者が樹木から離れた状態で伐倒できる装置として、自転しながら樹木を切削可能な切削具、切削具を回転させながら移動可能に動作するマニピュレータ、マニピュレータの動作を制御する制御盤とを備え、切削具は、回転軸の延出方向に移動して樹木を切削するドリル切削と、横方向に移動して樹木を切削するエンドミル切削とを可能にする刃形状に設けられた構成が開示されている。そして制御盤では、予め設定された樹木の伐倒手順に従い樹木の所定の表面部分に切削具の先端が接触した後に、切削具を自転させた状態で樹木の内部に向かって回転軸の延出方向に移動してから横方向に移動するようにマニピュレータの動作を制御する、としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014−187884号公報「樹木の伐倒装置」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記文献開示技術のように、実際の伐倒作業に用いるための技術は従来存在する。一方、伐倒技術を練習するための技術としては、土管に丸太を固定して伐倒の練習をする程度のものに留まっている。しかしこの程度の簡便な方法では、林地・山林における地面の傾斜、地面に対する樹木の角度、それらの状況を模して練習することは、容易にはできない。実際の伐倒作業現場におけるあらゆる状況を再現して伐倒の技術を学び、体験できるような方式が求められている。
【0006】
そこで本発明が解決しようとする課題は、かかる従来技術の問題点をなくし、実際の伐倒作業現場における状況を再現して伐倒技術を効果的に習得することのできる、伐倒練習装置および伐倒練習方法を提供することである。また本発明の課題は、樹木資源を無駄にすることなく、十分な練習を行うことのできる伐倒練習装置等を提供することである。それにより、作業者の伐倒技術を向上させることができ、伐倒作業における事故発生を低減し、林業振興に資することのできる、伐倒練習装置等を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明者は上記課題について検討した結果、地面を模した足場台や、それに設けた樹木固定用のホルダーを、傾斜可能に調節できる装置とすることによって解決できることを見出し、これに基づいて本発明を完成するに至った。すなわち、上記課題を解決するための手段として本願で特許請求される発明、もしくは少なくとも開示される発明は、以下の通りである。
【0008】
〕 基台と、該基台上に設けられていて伐倒練習者の足場とする足場台と、該足場台に設けられていて伐倒練習用の樹木を固定する樹木ホルダーと、該足場台を傾斜駆動する足場台傾斜駆動手段とからなることを特徴とする、伐倒練習装置。
【0009】
〕 伐倒練習者の足場とする足場台と、該足場台に設けられていて伐倒練習用の樹木を固定する樹木ホルダーと、該樹木ホルダーを任意方向に傾斜駆動可能な樹木ホルダー傾斜駆動手段と、該足場台を傾斜駆動する足場台傾斜駆動手段とからなることを特徴とする、伐倒練習装置。
〕 前記樹木ホルダー傾斜駆動手段には油圧シリンダーを用いることを特徴とする、〔〕のいずれかに記載の伐倒練習装置。
〕 前記樹木ホルダー傾斜駆動手段は背圧が設定されて用いられることを特徴とする、〔〕に記載の伐倒練習装置。
【0010】
〕 前記足場台傾斜駆動手段には油圧シリンダーを用いることを特徴とする、ことを特徴とする、〔1〕、〔2〕のいずれかに記載の伐倒練習装置。
〕 前記樹木ホルダーにおける伐倒練習用樹木の固定は油圧シリンダーによりなされることを特徴とする、〔1〕、〔2〕、〔3〕、〔4〕、〔5〕のいずれかに記載の伐倒練習装置。
〕 前記樹木ホルダー内壁には伐倒練習用樹木を固定するための突起が設けられていることを特徴とする、〔1〕、〔2〕、〔3〕、〔4〕、〔5〕、〔6〕のいずれかに記載の伐倒練習装置。
【0011】
〕 可動の構成要素を駆動する手段(以下、「駆動手段」)は油圧駆動され、該駆動手段を駆動操作するための入力手段を備えていることを特徴とする、〔1〕、〔2〕、〔3〕、〔4〕、〔5〕、〔6〕、〔7〕のいずれかに記載の伐倒練習装置。
〕 前記入力手段はジョイスティックレバーであることを特徴とする、〔〕に記載の伐倒練習装置。
【0012】
10〕 前記樹木ホルダーの姿勢を検知する姿勢計測センサーを備えていることを特徴とする、〔8〕、〔9〕のいずれかに記載の伐倒練習装置。
11〕 前記足場台を傾斜駆動する足場台傾斜駆動手段、または該足場台の少なくともいずれかの姿勢を検知する角度センサーを備えていることを特徴とする、〔10〕に記載の伐倒練習装置。
〔12〕 伐倒練習者の足場とする足場台と、該足場台に設けられていて伐倒練習用の樹木を固定する樹木ホルダーと、該樹木ホルダーを傾斜駆動可能な樹木ホルダー傾斜駆動手段とからなり、可動の構成要素を駆動する手段(駆動手段)は油圧駆動され、該駆動手段を駆動操作するためのジョイスティックレバーまたはその他の入力手段を備えており、該樹木ホルダーの姿勢を検知する姿勢計測センサーを備えており、かつ、該足場台を傾斜駆動する足場台傾斜駆動手段、または該足場台の少なくともいずれかの姿勢を検知する角度センサーを備えていることを特徴とする、伐倒練習装置。
〔13〕 前記樹木ホルダー傾斜駆動手段は前記樹木ホルダーを任意方向に傾斜駆動可能に構成されていることを特徴とする、〔12〕に記載の伐倒練習装置。
【0013】
〔14〕 可動の構成要素の姿勢を設定することができ、該可動の構成要素において検知された実際の姿勢によるフィードバック制御を行う駆動制御手段を備えていることを特徴とする、〔10〕、〔11〕、〔12〕、〔13〕のいずれかに記載の伐倒練習装置。
〔15〕 〔1〕、〔2〕、〔3〕、〔4〕、〔5〕、〔6〕、〔7〕、〔8〕、〔9〕、〔10〕、〔11〕、〔12〕、〔13〕、〔14〕、〔15〕のいずれかに記載の伐倒練習装置を用いて行うことを特徴とする、伐倒練習方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明の伐倒練習装置および伐倒練習方法は上述のように構成されるため、これらによれば、実際の伐倒作業現場における状況を再現して伐倒技術を効果的に習得することができる。また、樹木資源を無駄にすることなく、十分な練習を行うことができる。そして、作業者の伐倒技術を向上させることができ、伐倒作業における事故発生を低減し、林業振興に資することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1A】本発明伐倒練習装置の基本構成例を示す側面視の説明図である(足場台の傾斜なし)。
図1B】本発明伐倒練習装置の基本構成例を示す側面視の説明図である(足場台傾斜 その1)。
図1C】本発明伐倒練習装置の基本構成例を示す側面視の説明図である(足場台傾斜 その2)。
図1D】本発明伐倒練習装置の基本構成例を示す側面視の説明図である(足場台傾斜 その3)。
図2A図1A等に示す伐倒練習装置の樹木ホルダーおよび周辺の構成を示す平面図(U)である。
図2B図2Aに示す樹木ホルダーのユニバーサルジョイント側からの正面図(F)、および左側面図(L)、右側面図(R)である。
図3A図1A等に示す伐倒練習装置において練習用樹木を手前側(正面側)に傾斜させた状態を示す説明図である。
図3B図1A等に示す伐倒練習装置において練習用樹木を奥側に傾斜させた状態を示す説明図である。
図4A図1A等に示す伐倒練習装置の正面視(ユニバーサルジョイント側から視た)説明図である。
図4B図1A等に示す伐倒練習装置の正面視説明図である(練習用樹木を右方へ傾斜させた状態)。
図5】本発明伐倒練習装置における油圧システムの構成例を示す説明図である(樹木ホルダーを左方へ傾斜させる場合)。
図6図5に示す作用による樹木ホルダーの傾斜駆動の例を示す説明図である(樹木ホルダーを左方へ傾斜させる場合)。
図7】折り畳み式足場台を備える構成の本発明伐倒練習装置の構成を示す正面視の説明図である。
図8】本発明伐倒練習装置の実施例を示す写真図である。
図9図8に示す実施例の樹木ホルダーおよびその周辺の構成を示す写真図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面により本発明を詳細に説明する。
図1Aは、本発明伐倒練習装置の基本構成例を示す側面視の説明図である(足場台の傾斜なし)。また、
図1B、1C、1Dは図1Aに示す伐倒練習装置において足場台を徐々に傾斜させた状態の側面視の説明図である。これらに示すように本伐倒練習装置10は、伐倒練習者の足場とする足場台1と、足場台1に設けられていて伐倒練習用の樹木Tを固定する樹木ホルダー2と、足場台1を傾斜駆動する足場台傾斜駆動手段4とからなることを、基本的な構成とする。そして、樹木ホルダー2内に練習用樹木Tを固定するための樹木固定手段6が備えられている。また、樹木ホルダー2は、ユニバーサルジョイント5により足場台1に設置される構成とすることができる。
【0017】
かかる構成の本伐倒練習装置10の使用方法を説明する。伐倒練習用の樹木Tは樹木ホルダー2内に立てられ、樹木固定手段6によって押圧されて固定される。足場台1は、足場台傾斜駆動手段4によって、水平状態(図1A)から傾斜した状態(図1B〜1D)に変化させ、固定することができる。伐倒練習者は足場台1の上に立ち、樹木ホルダー2に固定された練習用樹木Tを用い、チェーンソー等による伐倒の練習を行う。
【0018】
足場台1の傾斜角度調節(制御)は、所定の一以上の角度への調節方式、連続的な角度調節方式、いずれでもよいが、空圧や油圧を用いての後者の方式が、本発明には望ましい。なお、足場台傾斜駆動のみならず、以降説明する全ての駆動方式において、空圧や油圧の方式、殊に油圧方式が望ましく、以後は油圧駆動方式の利用を前提にして説明する。
【0019】
実際に樹木伐倒を行う林地では、足場の状態はさまざまであり、傾斜角度も一様ではない。本伐倒練習装置10では特に油圧駆動方式を用い、足場台1の傾斜角度を無段階で連続的に調節可能である。したがって練習者は、さまざまな状況での伐倒練習を行うことができる。また、一本の練習用樹木Tで練習伐倒を複数回行うことができる。つまり、伐倒された練習用樹木を再び樹木ホルダー2に固定して次の伐倒練習に供することができるからである。これにより、資源を無駄にせず、有効利用することができる。
【0020】
足場台1の形態・仕様などは、練習者がその上に立って伐倒練習をするのに支障がないものである限り、特に限定されない。たとえば、平坦でも、凹凸のある状態でも、固くても、林地の土のようにある程度柔軟性の構造であっても、金属製でも、木製でも、樹脂製でもよい。
【0021】
また、樹木ホルダー2の大きさは、練習対象である樹木の幹のサイズに対応できる限り、特に限定されない。また、多様な太さの樹木の伐倒練習が可能なように、たとえば適宜個数の入れ子式のホルダーとし、固定する樹木の幹の太さに合わせて内側にスペーサー用ホルダーを入れて用いる方式としてもよい。
【0022】
各図に示すように本伐倒練習装置10の樹木ホルダー2を、ユニバーサルジョイント5によって足場台1に設置されている構成とすることにより、樹木ホルダー2はその姿勢を自在に変化させ得る。つまり、あらゆる方向にあらゆる角度で傾斜させ得る。そうすると、練習用樹木Tを、さまざまな方向にさまざまな傾斜角度で固定された状態にすることができる。実際の林地においては、樹木は地面に対してさまざまな傾斜角度をもって立っている。本装置10の樹木ホルダー2が傾斜調節可能であることにより、現場状況を再現した伐倒練習を行うことができる。このことについて説明する。
【0023】
図2Aは、図1A等に示す伐倒練習装置の樹木ホルダーおよび周辺の構成を示す平面図(U)、同じく図2Bは樹木ホルダーのユニバーサルジョイント側からの正面図(F)、および左側面図(L)、右側面図(R)である。本伐倒練習装置10は、図1A等により説明した構成に加えて、樹木ホルダー2を傾斜駆動可能な樹木ホルダー傾斜駆動手段3a、3b、・・・を備えた構成とすることができる。これら樹木ホルダー傾斜駆動手段3a等にも、油圧駆動方式が最適である。図示する樹木ホルダー傾斜駆動手段3a等は一例ではあるが、樹木ホルダー2を任意方向に傾斜駆動可能とするための構成として過不足のない望ましい構成である。
【0024】
すなわち、ユニバーサルジョイント5によって姿勢自在に設置された樹木ホルダー2の所定箇所に、四つの樹木ホルダー傾斜駆動手段3a、3b、3c、3dを設ける。設ける箇所は、樹木ホルダー2の姿勢を容易に変化させやすい作用点となる箇所であり、図示する例では、樹木ホルダー2の一方先端部の上下位置に樹木ホルダー傾斜駆動手段3a、3b、他方先端部の対向位置に樹木ホルダー傾斜駆動手段3c、3dを取付けた構成である。なおこれらの樹木ホルダー傾斜駆動手段3a等としては、具体的には油圧シリンダーを好適に用いることができる。
【0025】
図3Aは、図1A等に示す伐倒練習装置において練習用樹木をユニバーサルジョイント側から視て手前側(正面側)に傾斜させた状態を示す説明図である。また、図3Bは、図1A等に示す伐倒練習装置において練習用樹木を奥側に傾斜させた状態を示す説明図である。これらに図示するように、樹木ホルダー傾斜駆動手段3a等を操作することによって、樹木ホルダー2を手前側または奥側に自在に傾斜させることができ、したがって練習用樹木Tを手前側または奥側に自在に傾斜させた状態にして、伐倒練習に供することができる。
【0026】
図1Dに示す水平状態から図3Aに示す手前側への傾斜状態へと樹木ホルダー2を傾斜させるには、樹木ホルダー2の上部側に作用する樹木ホルダー傾斜駆動手段3a、3cを伸長駆動させればよい。駆動させる量に応じて樹木ホルダー2は手前側へと傾斜する。一方、水平状態から図3Bに示す奥側への傾斜状態へと樹木ホルダー2を傾斜させるには、樹木ホルダー2の下部側に作用する樹木ホルダー傾斜駆動手段3b、3dを伸長駆動させればよい。駆動させる量に応じて樹木ホルダー2は奥側へと傾斜する。
【0027】
図4Aは、図1A等に示す伐倒練習装置の正面視(ユニバーサルジョイント側から視た)説明図である。また、図4Bは、図1A等に示す伐倒練習装置の正面視説明図である(練習用樹木を右方へ傾斜させた状態)。これらに図示するように、樹木ホルダー傾斜駆動手段3a等を操作することによって、樹木ホルダー2を右側または図示しない左側に自在に傾斜させることができ、したがって練習用樹木Tを右側または左側に自在に傾斜させた状態にして、伐倒練習に供することができる。
【0028】
図4Aに示す水平状態から図4Bに示す右側への傾斜状態へと樹木ホルダー2を傾斜させるには、樹木ホルダー2上で点対称の位置で作用する樹木ホルダー傾斜駆動手段3a、3dを伸長駆動させればよい。駆動させる量に応じて樹木ホルダー2は右側へと傾斜する。一方、図示しない左側への傾斜状態へと樹木ホルダー2を傾斜させるには、樹木ホルダー2上でもう一方の点対称の位置で作用する樹木ホルダー傾斜駆動手段3b、3cを伸長駆動させればよい。駆動させる量に応じて樹木ホルダー2は左側へと傾斜する。
【0029】
樹木ホルダー2の手前側/奥側(―Y/+Y)駆動、および、左側/右側(―X/+X)駆動は、組み合わせて用いて、Y成分とX成分の合成された方向への傾斜駆動を行うこともできる。特に油圧駆動方式では、容易にかかるシステムを構成することができる。これにより、樹木ホルダー2をあらゆる方向へと傾斜させることができ、したがって練習用樹木Tを任意の方向に任意の角度で傾斜させて、伐倒練習に供することができる。
【0030】
本発明伐倒練習装置10の樹木ホルダー2を傾斜駆動する油圧駆動方式ないし油圧システムは、従来公知の油圧駆動方式を用いて適宜に設計することができる。ここでは、樹木ホルダーを左側へ傾斜させる場合を用いて説明する。
図5は、本発明伐倒練習装置における油圧システムの構成例を示す説明図である。また、図6は、図5に示す作用による樹木ホルダーの傾斜駆動の例を示す説明図である。油圧システム30において、駆動制御手段8により樹木ホルダー2を左方へと傾斜させるための操作を行う。駆動制御手段8としては適宜のものを使用可能だが、図に例示するジョイスティックレバーは操作性に優れるため、好適に用いることができる。この場合、樹木ホルダー2を傾斜させたい方向と同一方向にレバーを倒す操作を行うことで、所望の駆動を行うことができる。
【0031】
駆動制御手段8のレバーを左に倒すと、ポンプPから、樹木ホルダー傾斜駆動手段(以下、図5、6を用いた本説明では「油圧シリンダー」とする)A(3a)、B(3b)の外室、および油圧シリンダーC(3c)、D(3d)の内室に油が入り込む。油圧シリンダーA、Bの外室のピストンに油圧がかかると、次のように動作する。すなわち、樹木ホルダー2の支点(重心)から油圧シリンダーAの作用点までの距離と、支点Oから油圧シリンダーBの作用点までの距離とを比べると、後者の方が長いことにより、油圧シリンダーBの方が油圧シリンダーAの作用に打ち勝ち、油圧シリンダーAは反発しながらも押し戻される。
【0032】
一方、油圧シリンダーC、Dの内室のピストンに油圧がかかると、次のように動作する。すなわち、樹木ホルダー2の支点(重心)から油圧シリンダーCの作用点までの距離と、支点(重心)から油圧シリンダーDの作用点までの距離とを比べると、後者の方が長いことにより、油圧シリンダーDの方が油圧シリンダーCの作用に打ち勝ち、油圧シリンダーCは反発しながらも押し戻される。
【0033】
油圧シリンダーA、Bのピストン容積(油が入り込んだ外室における油の容積)に比べて、油圧シリンダーC、Dのピストン容積(油が入り込んだ内室における油の容積)の方が小さいため、油圧シリンダーA、Bの作用の方が、油圧シリンダーC、Dの作用よりも大きくなり、したがって樹木ホルダー2は左廻りに回転する。
【0034】
全ての油圧シリンダーA、B、C、Dは反発し合っているため、作動時にはガタがなくスムーズな作用が得られる。また、油圧シリンダーA、B、C、Dの低圧側は、流量調整部7(絞り弁)により背圧が残るため、本装置ではゆっくりと落ち着いた作動が得られる。このように本伐倒練習装置においては、樹木ホルダー傾斜駆動手段は、背圧が設定されて用いられることとすることができる。背圧が設定されることにより、ガタがなくスムーズな駆動がなされる。
【0035】
上述したように、樹木ホルダー2の傾斜を駆動する樹木ホルダー傾斜駆動手段3a等の駆動には油圧駆動方式が適しており、また当該駆動手段を駆動操作するための入力手段、駆動制御手段としてはジョイスティックレバーを好適に用いることができる。樹木ホルダー2のみならず、足場台傾斜駆動手段4や、練習用樹木Tを樹木ホルダー2内に固定するための樹木固定手段6にも油圧シリンダーを用いることができる。
【0036】
図7は、折り畳み式足場台を備える構成の本発明伐倒練習装置の構成を示す正面視の説明図である。すなわち、収納時や運搬時には足場台1の折り畳み部1L、1Rを折り畳んでコンパクトな形態とし、使用時にはこれらを展開して用いる。足場台折り畳み部は図示するように二箇所設けてもよいが、一箇所でも、また三箇所以上設けることとしてもよい。
【0037】
なお、本発明伐倒練習装置10は、樹木ホルダー2の姿勢を検知するための姿勢計測センサー(図示せず)を備えた構成とすることができる。すなわち、樹木ホルダー2の傾斜方向、傾斜角度を検知することにより、練習用樹木Tの傾斜方向、傾斜角度を検知することができ、所定の足場における樹木の方向・傾斜角度を認識した上での練習を行える。これにより練習者は、自分の課題を把握しながら練習することができ、伐倒練習の質を高められる。姿勢計測センサーとしては、角度センサー、角速度センサー、慣性計測装置等を適宜用いることができる。
【0038】
これに加えて本発明伐倒練習装置10は、足場台を1傾斜駆動する足場台傾斜駆動手段4、または足場台1の少なくともいずれかの姿勢を検知する角度センサー(図示せず)を備えた構成とすることもできる。すなわち、足場台1等の傾斜角度を検知できることにより、足場の傾斜角度を認識した上での練習を行える。これにより練習者は、自分の課題を把握しながら練習することができ、伐倒練習の質を高められる。
【0039】
また本発明伐倒練習装置10は、樹木ホルダー2など可動の構成要素の姿勢を設定することができるとともに、センサーにより可動の構成要素において実際の姿勢を検知し、設定値に対して検知値をフィードバックし、それに基づきフィードバック制御を行う駆動制御手段を備えた構成とすることもできる。かかる構成により、予め角度設定(足場台、樹木ホルダー)や方向の設定(樹木ホルダー)のなされた一または複数の伐倒練習カリキュラムを作成して、それに応じた練習プログラムを提供することも可能となる。
【0040】
また、より精密な角度設定(足場台、樹木ホルダー)や方向の設定(樹木ホルダー)を行える。これにより練習者は、伐倒練習の質を一層高めることができる。なお、以上説明した伐倒練習装置を用いて行う伐倒練習方法もまた、本発明の範囲内である。
【実施例】
【0041】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明がかかる実施例に限定されるものではない。
図8は、本発明伐倒練習装置の実施例を示す写真図である。また、
図9は、図8に示す実施例の樹木ホルダーおよびその周辺の構成を示す写真図である。本伐倒練習装置310は、次のように用いられる。
1)クレーンで練習用樹木3Tを樹木ホルダー32に差し込み、油圧方式の樹木固定手段にて固定する。図9に示すように樹木ホルダー32は、その内壁に練習用樹木3Tを固定するための樹木固定用突起32tを設けたものとすることができる。これにより、練習用樹木3Tは確実・強固に固定され、チェーンソーを用いた伐倒練習中にぐらついたりすることがない。
【0042】
2)樹木ホルダー32の油圧駆動は、ジョイスティックレバー38を用いて行う。練習用樹木3Tを前後左右、全方向に、自在に傾斜させることができ、また、傾斜角度も自在に設定できる。
3)足場台31の傾斜も油圧駆動される。なお、樹木ホルダー32の姿勢設定、足場台31の傾斜の設定、いずれを先に行ってもよい。
【0043】
図9に示すように、4本の油圧シリンダー33a、33b、33c、33dで樹木ホルダー32の角度を前後左右、全方向に調節できるとともに傾斜角度も調節できる。図示するように樹木ホルダー32の左右に2本ずつ設けられた油圧シリンダー33a等で傾斜をつける。また、反対側の油圧シリンダー33b等は、背圧を残しながら作動する。
【0044】
背圧の制御は流動制御弁により行う。たとえば、一方の油圧シリンダー:反対側の油圧シリンダーの油圧が、10:1であれば、背圧は9である。背圧の設定により、ぐらつき、ガタのない、スムースな動作が可能となる。
【0045】
本伐倒練習装置310では、3〜4m程度の高さの樹木で複数回の伐倒練習が可能である。伐倒技術は、樹木を伐る本数を重ねなくては習得できない。したがって、実際の山林等で伐倒練習を行うことは、資源を無駄にすることになる。しかし本発明装置によれば資源を有効利用することができる。
【0046】
効率的な倒し方、事故に遭わない安全な倒し方、倒したい方向への倒し方など、本発明装置を用いれば効果的な伐倒練習を実現することができる。本装置は、斜面や樹木の傾きを人工的に作り山林の地形や状況の中で、伐倒を体験できる装置であり、林業従事者の安全教育、新人研修やベテラン伐倒者の高度な技術研修にも有用であることが、装置を製作、試験した結果、確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明の伐倒練習装置および伐倒練習方法によれば、実際の伐倒作業現場における状況を再現して伐倒技術を効果的に習得でき、樹木資源を無駄にすることなく、十分な練習を行うことができる。したがって、林業分野および関連する全分野において、産業上利用性が高い発明である。
【符号の説明】
【0048】
1、31…足場台
1L、1R…足場台折り畳み部
2、32…樹木ホルダー
3a、3b、3c、3d、33a、33b、33c、33d…樹木ホルダー傾斜駆動手段(油圧シリンダー)
4、34…足場台傾斜駆動手段
5、35…ユニバーサルジョイント
6、36…樹木固定手段
7…流量調整部
8、38…駆動制御手段
9、39…基台
10、310…伐倒練習装置
30…油圧システム
31x…足場台骨格
32t…樹木固定用突起
O…支点
P…ポンプ
T、3T…伐倒練習用の樹木
図1A
図1B
図1C
図1D
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9