【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 施工日:平成30年7月6日 施工場所:(仮称)東山区芳野町新築工事現場(京都府京都市東山区建仁寺町五条下る一丁目) 施工者:大和ハウス工業株式会社
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、鉄筋の同一個所に本溶接と焼き戻しの2回のスポット溶接を行うことは非効率的であり、さらに、焼き戻し条件等の溶接の仕様を細かく指定するため製造工程が煩雑になるという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、前述したような従来技術の問題を解決するものであって、すなわち、本発明の目的は、構造鉄筋の必要部に熱劣化を生じさせずに簡便に製造することができるユニット鉄筋を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本請求項1に係る発明は、相互に平行に配設された複数の構造鉄筋と、該構造鉄筋に直交する固定鉄筋とが
スポット溶接により一体となっているユニット鉄筋であって、
前記構造鉄筋が、
該構造鉄筋の長手方向に延長して規格範囲内の強度を有する必要部と
該必要部から延長して線状に構成されてスポット溶接により発生する熱を散逸させて該必要部を所定温度以下に保つ放熱部と
前記必要部と放熱部との境界線を示す境界表示部とからなり、
前記固定鉄筋が、
前記放熱部の先端部分の近傍に溶着されていることにより、前述した課題を解決するものである。
【0007】
本請求項2に係る発明は、前記放熱部が、前記複数の必要部の配設面内に位置していることにより、前述した課題をさらに解決するものである。
【0008】
本請求項3に係る発明は、前記放熱部が、前記必要部
から延長
して線状に一連一体に構成されていることにより、前述した課題を解決するものである。
【0009】
本請求項4に係る発明は、前記放熱部が、J字状に屈曲していることにより、前述した課題をさらに解決するものである。
【0010】
本請求項5に係る発明は、前記放熱部が、前記必要部に対し直交するように構成されていることにより、前述した課題をさらに解決するものである。
【0011】
本請求項6に係る発明は、前記
境界表示部が、所定の温度に達すると外観が変化する素材
からなることにより、前述した課題をさらに解決するものである。
【0012】
本請求項7に係る発明は、
規格範囲内の強度を有する必要部と
該必要部から延長して線状に構成されてスポット溶接により発生する熱を散逸させて該必要部を所定温度以下に保つ放熱部と
該必要部と該放熱部との境界線を示す境界表示部とからなる複数の構造鉄筋を平行に配置した後に、複数の該構造鉄筋と直交する固定鉄筋を複数の該放熱部の先端部分の近傍に接触させ、複数の該構造鉄筋と該固定鉄筋とをスポット溶接により溶着して一体化することにより、前述した課題をさらに解決するものである。
【発明の効果】
【0013】
本請求項1に係る発明のユニット鉄筋によれば、相互に平行に配設された複数の構造鉄筋と、構造鉄筋に直交する固定鉄筋とが
スポット溶接により一体となっているユニット鉄筋であって、構造鉄筋が、
構造鉄筋の長手方向に延長して規格範囲内の強度を有する必要部と
必要部から延長して線状に構成されてスポット溶接により発生する熱を散逸させて必要部を所定温度以下に保つ放熱部と
必要部と放熱部との境界線を示す境界表示部とからなり、固定鉄筋が、放熱部の先端部分の近傍に溶着されていることにより、
スポット溶接により発生する熱が放熱部を伝導する間に熱伝達により空気中に散逸するため、構造鉄筋の必要部に熱劣化
が生じ
ておらず規格範囲内の強度を保ったまま、同一個所に対し1回のスポット溶接を行うのみで簡便に製造することができる
ユニット鉄筋を提供することができる。
【0014】
本請求項2に係る発明のユニット鉄筋によれば、放熱部が、複数の必要部の配設面内に位置していることにより、固定鉄筋が必要部に対して壁体表面に近づく向きにはみ出す寸法が、最大でも固定鉄筋の直径寸法となるため、コンクリートの強度への影響を小さくすることができる。
【0015】
本請求項3に係る発明のユニット鉄筋によれば、放熱部が、必要部
から延長
して線状に一連一体に構成されていることにより、固定鉄筋が、各構造鉄筋全体の先端を結ぶ位置に溶着されて構造鉄筋の突出量が小さいため、各構造鉄筋の先端にキャップを被せなくても安全性を確保することができる。
【0016】
本請求項4に係る発明のユニット鉄筋によれば、放熱部が、J字状に屈曲していることにより、必要部に対して突出する長さが放熱部の長さよりも短く、壁体上面に近づく向きに放熱部がはみ出す寸法がさらに小さくなるため、コンクリートの強度への影響をさらに小さくすることができる。
【0017】
本請求項5に係る発明のユニット鉄筋によれば、放熱部が、必要部に対し直交するように構成されていることにより、放熱部と固定鉄筋とが、いずれも必要部の長手方向に突出しないため、壁体上面に近づく向きに放熱部と固定鉄筋がはみ出す寸法が極めて小さくなり、コンクリートの強度への影響を極めて小さくすることができる。
【0018】
本請求項6に係る発明のユニット鉄筋によれば、
境界表示部が、所定の温度に達すると外観が変化する素材
からなることにより、
境界表示部としての境界線が所定の温度になった
場合には外観の変化によって示されるため、必要部に熱劣化が生じていないことを容易に確認することができる。
【0019】
本請求項7に係る発明のユニット鉄筋の製造方法によれば、
規格範囲内の強度を有する必要部と
必要部から延長して線状に構成されてスポット溶接により発生する熱を散逸させて必要部を所定温度以下に保つ放熱部と
必要部と放熱部との境界線を示す境界表示部とからなる複数の構造鉄筋を平行に配置した後に、複数の構造鉄筋と直交する固定鉄筋を複数の放熱部の先端部分の近傍に接触させ、固定鉄筋と複数の構造鉄筋とをスポット溶接により溶着して一体化することにより、発生する熱が放熱部を伝導する間に熱伝達により空気中に散逸して、必要部が熱劣化を起こさないため、
同一個所に対し1回のスポット溶接を行うのみで、簡便にユニット鉄筋を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は、
スポット溶接により発生する熱が放熱部を伝導する間に熱伝達により空気中に散逸するため、構造鉄筋の必要部に熱劣化が生じ
ておらず規格範囲内の強度を保ったまま、同一個所に対し1回のスポット溶接を行うのみで簡便に製造することができるユニット鉄筋及びその製造方法であれば、その具体的な実施態様は、如何なるものであっても構わない。
【0022】
すなわち、本発明に係る構造鉄筋及び固定鉄筋としては、丸鋼及び各種の異形棒鋼を用いることができる。
【0023】
本発明に係る構造鉄筋の必要部の形状は、直線状、矩形状、U字状その他の形状であってよい。したがって、壁体施工時の縦筋又は横筋、梁用のあばら筋又は柱用の帯筋若しくは木造建築基礎用鉄筋等の形状をそのまま採用することができる。
すなわち、必要部は構造鉄筋の長手方向に延長する形状である。
【0024】
本発明に係る複数の構造鉄筋の配置は、ユニット化されていない通常の複数の構造鉄筋が施工時に配置される場合と同様に配置することができ、その配置を維持したまま固定鉄筋により相互に固定されて一体化することができる。
【0025】
本発明に係る固定鉄筋の形状は、直線状であるものを用いることができるが、配置された複数の構造鉄筋の放熱部に接する形であれば他の形状であっても構わない。
【0026】
本発明に係る固定鉄筋の溶着位置は、構造鉄筋の放熱部の先端部分の近傍であるが、この場合の近傍とは、先端部分からの距離が15ミリメートル以下であることを意味する。溶接時の熱が必要部に伝達されて熱劣化が生じるのを防ぐためである。
【0027】
ただし、放熱部の長さを十分に長く設定することができるのであれば、溶接時の熱による劣化が必要部に生じない限り、先端部分からより離れた位置、すなわち放熱部と必要部との境界線により近い位置に溶着しても構わない。
【0028】
本発明に係る放熱部の長さは、その先端部分の近傍に固定鉄筋をスポット溶接する際に発生したジュール熱が、放熱部内の熱伝導により必要部まで移動しても、必要部に熱劣化が生じない長さとすることができる。
【0029】
スポット溶接によっても必要部に熱劣化を生じさせないために必要な放熱部の長さは、発生するジュール熱の量と放熱部に用いる鉄筋の直径に依存し、ジュール熱の量は、構造鉄筋と固定鉄筋の直径、電流の大きさと通電時間、加圧力等の条件により変化する。
【0030】
放熱部の長さは、抵抗溶接機のメーカーが提唱するスポット溶接条件等所与の条件下で、少なくとも必要部の温度が鉄の融解温度であるとされる摂氏750度以下に保たれる長さに設定することができ、安全を見て、必要部がこれよりも低い基準温度(例えば摂氏350度)以下に保たれるように、より長く設定することができる。
すなわち、放熱部は線状に構成されてスポット溶接により発生する熱を散逸させて必要部を所定温度以下に保つものである。
【0031】
本発明に係るユニット鉄筋を製造する際に行う溶接方法としては、公知の溶接方法を用いることができるが、特に、相互に接触する鉄筋を接触部で溶着して一体化するスポット溶接を用いることができる。本明細書では、スポット溶接を用いてユニット鉄筋を製造することを前提に説明する。
【0032】
また、溶接を行う溶接機としては、一度の操作で一か所の溶接を行うものでも、同時に複数個所の溶接を行うものでもよい。特に、同時に複数か所のスポット溶接を行う溶接機を用いれば、本発明のユニット鉄筋を効率的に製造することができる。
【0033】
本発明のユニット鉄筋の必要部と放熱部との境界線は、所定の温度に達すると外観が変化する素材によって示すことができる。そのような素材とは、例えば所定温度で色が変化する塗料、テープ又はラベル若しくは所定温度で融解し又は透明になる物質である。
境界線の示し方は、構造鉄筋の表面にそのような素材によって線又は点を描き若しくはテープ又はラベルを貼付してもよく、境界線の放熱部側又は必要部側のいずれか一方をそのような塗料によってコートし、もしくはテープ又はラベルを貼付して示してもよい。
すなわち、本発明のユニット鉄筋は、必要部と放熱部との境界線を描く線又は点として、あるいは境界線に隣接する放熱部側又は必要部側の領域として境界線を表す境界表示部を備えるものである。
【実施例1】
【0034】
以下に、本発明の第一の実施例に係るユニット鉄筋について、
図1A及び
図1Bに基づいて説明する。
ここで、
図1Aは、本発明の第一の実施例に係るユニット鉄筋を構造鉄筋の長手方向からみた模式図であり、
図1Bは、本発明の第一の実施例に係るユニット鉄筋を構造鉄筋の長手方向に直交する方向からみた模式図である。
【0035】
本実施例のユニット鉄筋は、壁体施工時の縦筋として用いることができる壁用ユニット鉄筋100である。
【0036】
壁用ユニット鉄筋100は、複数の構造鉄筋110と固定鉄筋120とから構成されている。
【0037】
構造鉄筋110は、直線状の鉄筋であって必要部111と放熱部112
と境界表示部としての境界線BLとから構成されており、放熱部112は必要部111の延長状に一連一体に構成され、必要部111と放熱部112とは、
境界表示部としての境界線BLによって区分されている。
すなわち、放熱部112は必要部111から延長して線状に構成されている。複数の構造鉄筋110は、互いに平行に整列して配置されており、全体として仮想的な配設平面を形成している。したがって、複数の必要部111が形成している配設平面内に放熱部112が位置していると言うことができる。
【0038】
放熱部112は、その先端部分TPの近傍、具体的には先端部分TPから10ミリの位置に溶接位置WPが設定されている。このため、境界線BLから溶接位置WPまでの距離L1と境界線BLから先端部分TPまでの距離L2との間には、以下の式が成り立っている。
L2=L1+10(ミリメートル)
【0039】
固定鉄筋120は、直線状の鉄筋であって、複数の構造鉄筋110に直交するように配置されている。固定鉄筋120は、複数の溶接位置WPにおいて複数の放熱部112と溶着されていることにより、すべての構造鉄筋110と一体化している。
【0040】
なお、固定鉄筋120と放熱部112とが溶着している溶接位置WPの周囲には、スポット溶接によって生じた溶融物の塊であるナゲットNGが付着している場合がある。
【0041】
次に、本実施例に係る壁用ユニット鉄筋100の製造方法を説明する。
【0042】
壁用ユニット鉄筋100を製造する場合、まず、複数の構造鉄筋110を平行かつ等間隔に並べる。構造鉄筋110同士の間隔は、壁体の施工時の仕様として指定された間隔に合わせる。
【0043】
いったん並べた複数の構造鉄筋110の配置が乱れないように、複数の構造鉄筋110に仮止め用の鉄筋を差し渡して、鉄筋用クリップ等で仮止めしてもよい。
【0044】
次に、複数の構造鉄筋110の複数の放熱部112と固定鉄筋120とが各溶接位置WPにおいて接するように固定鉄筋120を差し渡す。このとき、各構造鉄筋110と固定鉄筋120とは互いに直交する配置となる。
【0045】
その後、構造鉄筋110と固定鉄筋120とが交差している溶接位置WPにおいて、市販のスポット溶接機を用いて、構造鉄筋110と固定鉄筋120とを溶着することにより、壁用ユニット鉄筋100を簡便に製造することができる。なお、スポット溶接の条件は、構造鉄筋110と固定鉄筋120とが溶着により一体化するように定めることができる。
【0046】
溶接位置WPにおいてスポット溶接を行うことにより発生したジュール熱は、熱伝導により放熱部112内を境界線BLの方向に移動する。また、熱伝導により放熱部112内を移動するジュール熱は、放熱部112の表面から熱伝達により空気中に散逸する。
【0047】
この結果、溶接位置WPの温度が、スポット溶接により発生したジュール熱により例えば摂氏1000度程度になったとしても、ジュール熱が境界線BLの方向に移動するにしたがって空気中に散逸するため、放熱部112には温度勾配が生じ、構造鉄筋110の温度は、境界線BLの付近では例えば摂氏200度程度までしか上昇しない。
【0048】
以上の作用により、構造鉄筋110の必要部111には熱劣化が生じないため、構造鉄筋110の強度が所要の規格から外れることはない。
すなわち、必要部111が構造鉄筋として規格範囲内の強度を有する状態を保ちながら、各溶接位置WPに対し1回のスポット溶接を行うのみで、壁用ユニット鉄筋100を簡便に製造することができる。
【0049】
なお、必要部111と放熱部112との境界線BLが、構造鉄筋110が熱劣化する所定の温度に達すると外観が変化する素材によって示されているため、境界線BLが所定の温度になったことが外観の変化によって示されるため、必要部111に熱劣化が生じていないことを容易に確認することができる。
【0050】
以上のように、必要部111と放熱部112とからなる複数の構造鉄筋110を平行に配置した後に、複数の構造鉄筋110と直交する固定鉄筋120を複数の放熱部112の先端部分TPの近傍に接触させ、固定鉄筋120と複数の構造鉄筋110とをスポット溶接により溶着して一体化することにより、スポット溶接により発生する熱が放熱部112を伝導する間に熱伝達により空気中に散逸して、必要部111が熱劣化を起こさないため、構造鉄筋110の強度が規格範囲内に保たれたまま、
同一個所に対し1回のスポット溶接により簡便に壁用ユニット鉄筋100を製造することができる。
【0051】
次に、本実施例の壁用ユニット鉄筋100を用いてコンクリート製の壁体を施工する場合の手順を説明する。
【0052】
壁用ユニット鉄筋100は、複数の構造鉄筋110が平行に配列する構造を有しているため、コンクリート製壁体の補強用縦筋として用いることができる。
【0053】
壁体のベースとなる位置に壁用ユニット鉄筋100を構造鉄筋110が垂直で、放熱部112が必要部111よりも上になるように配置してコンクリートを打設し、固化させることで、壁用ユニット鉄筋100がコンクリート打設空間CS内に構造鉄筋110が縦筋として配設された状態となる。
【0054】
壁用ユニット鉄筋100をコンクリート打設空間CS内に配置する際には、必要部111と壁体表面WSとの距離、すなわち壁体表面WSまでのカブリDSが仕様を満たし、かつ、必要部111と壁体の上面WTとの距離、すなわち壁体の上面WTまでのカブリDTが仕様を満たす位置に配置する必要がある。
【0055】
このとき、固定鉄筋120が、構造鉄筋110の最上部にある放熱部112の先端部分TPの近傍に溶着されているため、ベースのコンクリートを養生する期間に構造鉄筋110の先端にキャップを被せなくても安全性を確保することができる。
【0056】
また、放熱部112が、複数の必要部111の配設面内に位置していることにより、固定鉄筋120が必要部111に対して壁体表面WSに近づく向きにはみ出す寸法が、最大でも固定鉄筋120の直径寸法となるため、コンクリートの強度への影響を小さくすることができる。
【実施例2】
【0057】
次に、本発明の第二の実施例に係るユニット鉄筋について、
図2A及び
図2Bに基づいて説明する。
ここで、
図2Aは、本発明の第二の実施例に係るユニット鉄筋を構造鉄筋の長手方向からみた模式図であり、
図2Bは、本発明の第二の実施例に係るユニット鉄筋を構造鉄筋の長手方向に直交する方向からみた模式図である。
【0058】
本実施例のユニット鉄筋は、壁体施工時の縦筋として用いることができる壁用ユニット鉄筋200である。
【0059】
壁用ユニット鉄筋200は、複数の構造鉄筋210と固定鉄筋220とから構成されている。
構造鉄筋210は、必要部211と放熱部212
と境界表示部としての境界線BLとから構成されており、必要部211と放熱部212とは、
境界表示部としての境界線BLによって区分されている。
【0060】
本実施例の壁用ユニット鉄筋200は、放熱部112がJ字状に屈曲している以外は、第一の実施例と同様に構成されている。
【0061】
本実施例の壁用ユニット鉄筋200を用いて壁体を施工する場合には、放熱部212が、J字状に屈曲していることにより、必要部211に対して壁体上面WTの向きに突出する長さが放熱部212の長さよりも短く、壁体上面WTに近づく向きに放熱部212がはみ出す寸法が第一の実施例の場合よりもさらに小さくなるため、コンクリートの強度への影響をさらに小さくすることができる。
【実施例3】
【0062】
次に、本発明の第三の実施例に係るユニット鉄筋について、
図3A及び
図3Bに基づいて説明する。
ここで、
図3Aは、本発明の第三の実施例に係るユニット鉄筋を構造鉄筋の長手方向からみた模式図であり、
図3Bは、本発明の第三の実施例に係るユニット鉄筋を構造鉄筋の長手方向に直交する方向からみた模式図である。
【0063】
本実施例のユニット鉄筋は、壁体施工時の縦筋として用いることができる壁用ユニット鉄筋300である。
【0064】
壁用ユニット鉄筋300は、複数の構造鉄筋310と固定鉄筋320
と境界表示部としての境界線BLとから構成されている。
構造鉄筋310は、必要部311と放熱部312
と境界表示部としての境界線BLとから構成されており、必要部311と放熱部312とは、
境界表示部としての境界線BLによって区分されている。
【0065】
本実施例の壁用ユニット鉄筋300は、放熱部312が必要部311に対し直交するように配置されている以外は、第一の実施例と同様に構成されている。
【0066】
本実施例の壁用ユニット鉄筋300を用いて壁体を施工する場合には、放熱部312が、必要部311に対し直交するように構成されていることにより、放熱部312と固定鉄筋320とが、いずれも必要部311の長手方向に突出しないため、構造体の表面、具体的には壁体の上面WTに近づく向きに放熱部312と固定鉄筋320がはみ出す寸法が、これらの直径程度の極めて小さい寸法となり、コンクリートの強度への影響を極めて小さくすることができる。
【実施例4】
【0067】
次に、本発明の第四の実施例に係るユニット鉄筋について、
図4に基づいて説明する。
ここで、
図4は、本発明の第四の実施例に係るユニット鉄筋を固定鉄筋の長手方向からみた模式図である。
【0068】
本実施例のユニット鉄筋は、梁体施工時のあばら筋として用いることができる梁体用ユニット鉄筋400である。
【0069】
梁体用ユニット鉄筋400は、複数の構造鉄筋410と固定鉄筋420
と境界表示部としての境界線BLとから構成されている。
構造鉄筋410は、必要部411と放熱部412から構成されており、必要部411と放熱部412とは、
境界表示部としての境界線BLによって区分されている。
【0070】
本実施例の梁体用ユニット鉄筋400は、必要部411が公知のあばら筋と同様に矩形状に屈曲形成されている以外は、第一の実施例と同様に構成されている。
【0071】
本実施例の梁体用ユニット鉄筋400は、溶接により発生する熱が放熱部412を伝導する間に熱伝達により空気中に散逸するため、構造鉄筋410の必要部411に熱劣化を生じさせずに簡便に製造することができる。
【0072】
なお、本実施例のユニット鉄筋は、梁体施工時のあばら筋として用いるものとして説明したが、コンクリート工事の施工時の配置の向きを変えることにより、柱体施工時の帯筋として用いることもできる。
【実施例5】
【0073】
次に、本発明の第五の実施例に係るユニット鉄筋について、
図5に基づいて説明する。
ここで、
図5は、本発明の第五の実施例に係るユニット鉄筋を固定鉄筋の長手方向からみた模式図である。
【0074】
本実施例のユニット鉄筋は、梁体施工時のあばら筋として用いることができる梁体用ユニット鉄筋500である。
【0075】
梁体用ユニット鉄筋500は、複数の構造鉄筋510と固定鉄筋520
と境界表示部としての境界線BLとから構成されている。
構造鉄筋510は、必要部511と放熱部512から構成されており、必要部511と放熱部512とは、
境界表示部としての境界線BLによって区分されている。
【0076】
本実施例の梁体用ユニット鉄筋500は、必要部511が公知のあばら筋と同様に両上端が内向きのフックになっているU字状に屈曲形成されている以外は、第四の実施例と同様に構成されている。
【0077】
本実施例の梁体用ユニット鉄筋500は、溶接により発生する熱が放熱部512を伝導する間に熱伝達により空気中に散逸するため、構造鉄筋510の必要部511に熱劣化を生じさせずに簡便に製造することができる。
【実施例6】
【0078】
次に、本発明の第六の実施例に係るユニット鉄筋について、
図6に基づいて説明する。
ここで、
図6は、本発明の第六の実施例に係るユニット鉄筋を固定鉄筋の長手方向からみた模式図である。
【0079】
本実施例のユニット鉄筋は、木造建築のベタ基礎の施工時に補強筋として用いることができる基礎用ユニット鉄筋600である。
【0080】
基礎用ユニット鉄筋600は、複数の構造鉄筋610と固定鉄筋620
と境界表示部としての境界線BLとから構成されている。
構造鉄筋610は、必要部611と放熱部612から構成されており、必要部611と放熱部612とは、
境界表示部としての境界線BLによって区分されている。
【0081】
本実施例の基礎用ユニット鉄筋600は、必要部611が、垂直部と第一水平部と第二水平部と傾斜接続部からなり、垂直部、第一水平部、傾斜接続部、第二水平部の配置順序で一連一体に構成されている以外は、第一の実施例と同様に構成されている。
【0082】
本実施例の基礎用ユニット鉄筋600は、溶接により発生する熱が放熱部612を伝導する間に熱伝達により空気中に散逸するため、構造鉄筋610の必要部611に熱劣化を生じさせずに簡便に製造することができる。
【0083】
以上説明したように、本発明のユニット鉄筋によれば、相互に平行に配設された複数の構造鉄筋と、該構造鉄筋に直交する固定鉄筋とが一体となっているユニット鉄筋であって、
前記構造鉄筋が、
該構造鉄筋の長手方向に延長して規格範囲内の強度を有する必要部と
該必要部から延長して線状に構成されてスポット溶接により発生する熱を散逸させて該必要部を所定温度以下に保つ放熱部と
前記必要部と放熱部との境界線を示す境界表示部とからなり、
前記固定鉄筋が、
前記放熱部の先端部分の近傍に溶着されていることにより、
スポット溶接により発生する熱が放熱部を伝導する間に熱伝達により空気中に散逸するため、構造鉄筋の必要部に熱劣化
が生じ
ておらず規格範囲内の強度を保ったまま、同一個所に対し1回のスポット溶接を行うのみで簡便に製造することができる
ユニット鉄筋を提供することができる。
【0084】
また、本発明のユニット鉄筋の製造方法によれば、必要部と放熱部とからなる複数の構造鉄筋を平行に配置した後に、複数の構造鉄筋と直交する固定鉄筋を複数の放熱部の先端部分の近傍に接触させ、固定鉄筋と複数の構造鉄筋とをスポット溶接により溶着して一体化することにより、発生する熱が放熱部を伝導する間に熱伝達により空気中に散逸して、必要部が熱劣化を起こさないため、
同一個所に対し1回のスポット溶接を行うのみで、簡便にユニット鉄筋を製造することができる。
相互に平行に配設された複数の構造鉄筋と、該構造鉄筋に直交する固定鉄筋とが一体となっているユニット鉄筋であって、該構造鉄筋が、必要部と放熱部とを有し、該固定鉄筋が、該放熱部の先端部分の近傍に溶着されていることを特徴とするユニット鉄筋。