特許第6661146号(P6661146)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6661146
(24)【登録日】2020年2月14日
(45)【発行日】2020年3月11日
(54)【発明の名称】育成補助装置及び植物育成装置
(51)【国際特許分類】
   A01G 9/20 20060101AFI20200227BHJP
   A01G 7/00 20060101ALI20200227BHJP
   A01G 22/05 20180101ALI20200227BHJP
【FI】
   A01G9/20 A
   A01G7/00 601Z
   A01G22/05 A
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-35929(P2016-35929)
(22)【出願日】2016年2月26日
(65)【公開番号】特開2017-148020(P2017-148020A)
(43)【公開日】2017年8月31日
【審査請求日】2019年1月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000243803
【氏名又は名称】未来工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504180239
【氏名又は名称】国立大学法人信州大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】特許業務法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】堀 信夫
(72)【発明者】
【氏名】加納 一啓
(72)【発明者】
【氏名】石井 隆之
(72)【発明者】
【氏名】藤縄 克之
【審査官】 田辺 義拓
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−176338(JP,A)
【文献】 特開平01−217134(JP,A)
【文献】 特開2014−030403(JP,A)
【文献】 実開平04−100512(JP,U)
【文献】 特開2007−300908(JP,A)
【文献】 特開2010−004740(JP,A)
【文献】 特開2012−200252(JP,A)
【文献】 韓国登録特許第10−1224110(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 7/00
A01G 9/20,9/24
A01G 22/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
培地に植栽された植物を局所的に冷却又は加温するための育成補助装置であって、
内部に環境温度よりも低温又は高温の液体が流れる1又は複数の通水管を備え、
前記通水管は断面四角形状を有する長尺体であり、前記通水管の断面四角形状の少なくとも1辺が前記植物に培地上で近接又は接触する位置に配置され
前記通水管は、可撓性を有する波付管で形成され、外面において前記植物の少なくとも一部を配置する凹部を備えてなり、前記通水管の長手方向に沿って前記凹部が複数形成されていることを特徴とする育成補助装置。
【請求項2】
培地に植栽された植物を局所的に冷却又は加温するための育成補助装置であって、
内部に環境温度よりも低温又は高温の液体が流れる1又は複数の通水管を備え、
前記通水管は断面四角形状を有する長尺体であり、前記通水管の断面四角形状の一辺が前記培地表面に接触するように配置され
前記通水管は、可撓性を有する波付管で形成され、外面において前記植物の少なくとも一部を配置する凹部を備えてなり、前記通水管の長手方向に沿って前記凹部が複数形成されていることを特徴とする育成補助装置。
【請求項3】
前記通水管の断面四角形状の他の1辺が前記植物に近接又は接触するように配置されることを特徴とする請求項2に記載の育成補助装置。
【請求項4】
培地に植栽された植物を局所的に冷却又は加温して育成するための植物育成装置であって、
植物が植栽された、又は、植物が植栽される培地と、
環境温度よりも低温又は高温の液体を供給可能な給水装置に接続され、前記液体が内部を通過する通水管と、を備え、
前記通水管は断面四角形状を有する長尺体であり、前記通水管の断面四角形状の少なくとも1辺が前記植物に培地上で近接又は接触する位置に配置され
前記通水管は、可撓性を有する波付管で形成され、外面において前記植物の少なくとも一部を配置する凹部を備えてなり、前記通水管の長手方向に沿って前記凹部が複数形成されていることを特徴とする植物育成装置。
【請求項5】
培地に植栽された植物を局所的に冷却又は加温して育成するための植物育成装置であって、
植物が植栽された、又は、植物が植栽される培地と、
環境温度よりも低温又は高温の液体を供給可能な給水装置に接続され、前記液体が内部を通過する通水管と、を備え、
前記通水管は断面四角形状を有する長尺体であり、前記通水管の断面四角形状の1辺が前記培地表面に接触するように配置され
前記通水管は、可撓性を有する波付管で形成され、外面において前記植物の少なくとも一部を配置する凹部を備えてなり、前記通水管の長手方向に沿って前記凹部が複数形成されていることを特徴とする植物育成装置。
【請求項6】
前記植物はイチゴであり、前記イチゴのクラウン部が前記通水管によって加温又は冷却されることを特徴とする請求項4又は5に記載の植物育成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、培地に植栽された植物を局所的に冷却又は加温することにより、植物の育成を補助する育成補助装置及び植物育成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
野菜、果物等の植物をビニールハウスや工場等の屋内の栽培空間で栽培する際、植物を効果的に育成又は収穫すべく、栽培空間の温度調整が一般的に行われている。従来、夏季及び冬季において、栽培空間を冷却又は加温して栽培空間内の気温を植物の成長に適切な温度に維持するために冷暖房設備が用いられていた。しかしながら、このような冷暖房設備は、植物のみならず栽培空間全体を冷却又は加温するものであるので非常に効率が悪いとされる。そこで、植物を効率的に温度管理すべく、植物を局所的に冷却又は加温して植物の育成を補助する種々の試みが為されている。
【0003】
例えば、特許文献1は、培土温度の調整を行うことにより、収穫量増加を図った培土温度調整システムを開示する。該培土温度調整システム(5)は、複数のイチゴ(4)が並べて植えられた培土の温度を調整する。培土温度調整システム(5)は、内部に水が流れ、断面円形状を有する第1及び第2のパイプ(6,7)と、該第1及び第2のパイプ(6,7)の端部同士を連結する連結部(8)とを備えている。第1のパイプ(6)が、培土上に複数のイチゴ(4)の並び方向に沿って配置され、第2のパイプ(7)が第1のパイプ(6)下側の培土内に並び方向に沿って配置される。そして、第1のパイプ(6)及び第2のパイプ(7)に流す水の温度を調整することにより、培土温度の調整が行われる。なお、()内に特許文献1の符号を示した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014−176338号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のシステム(装置)では、パイプ(通水管)の断面形状が円形であるので、培土上に配置された通水管(第1のパイプ)が、培土表面又は植物(例えば、イチゴのクラウン部)に周方向の一点でしか接触又は最接近することができない。このように断面円形状の通水管を用いたことにより、植物への接触面積又は近接面積が極めて小さくなることから、培地上に配置される通水管のみでは、培土又は植物を効率良く加温又は冷却することができない。それ故、従来のシステムは、少なくとも2本の通水管を準備し、一方の通水管(第1のパイプ)を培地上に配置するとともに、他方の通水管(第2のパイプ)を地中に埋設することを必要としていた。すなわち、従来技術では、2つの役割を有する通水管を配設することが必要であった。そのため、システムが複雑化し、ランニングコスト等の負担が比較的大きくなることが従来のシステムの課題であった。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、より効率的に植物を冷却又は加温して植物の育成を補助する育成補助装置、及び、該育成補助装置を備える植物育成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の育成補助装置は、培地に植栽された植物を局所的に冷却又は加温するための育成補助装置であって、
内部に環境温度よりも低温又は高温の液体が流れる1又は複数の通水管を備え、
前記通水管は断面四角形状を有する長尺体であり、前記通水管の断面四角形状の少なくとも1辺が前記植物に培地上で近接又は接触する位置に配置され
前記通水管は、可撓性を有する波付管で形成され、外面において前記植物の少なくとも一部を配置する凹部を備えてなり、前記通水管の長手方向に沿って前記凹部が複数形成されていることを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の育成補助装置は、培地に植栽された植物を局所的に冷却又は加温するための育成補助装置であって、
内部に環境温度よりも低温又は高温の液体が流れる1又は複数の通水管を備え、
前記通水管は断面四角形状を有する長尺体であり、前記通水管の断面四角形状の一辺が前記培地表面に接触するように配置され
前記通水管は、可撓性を有する波付管で形成され、外面において前記植物の少なくとも一部を配置する凹部を備えてなり、前記通水管の長手方向に沿って前記凹部が複数形成されていることを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の育成補助装置は、請求項2に記載の育成補助装置において、前記通水管の断面四角形状の他の1辺が前記植物に近接又は接触するように配置されることを特徴とする。
【0010】
【0011】
【0012】
【0013】
請求項に記載の植物育成装置は、培地に植栽された植物を局所的に冷却又は加温して育成するための植物育成装置であって、
植物が植栽された、又は、植物が植栽される培地と、
環境温度よりも低温又は高温の液体を供給可能な給水装置に接続され、前記液体が内部を通過する通水管と、を備え、
前記通水管は断面四角形状を有する長尺体であり、前記通水管の断面四角形状の少なくとも1辺が前記植物に培地上で近接又は接触する位置に配置され
前記通水管は、可撓性を有する波付管で形成され、外面において前記植物の少なくとも一部を配置する凹部を備えてなり、前記通水管の長手方向に沿って前記凹部が複数形成されていることを特徴とする。
【0014】
請求項に記載の植物育成装置は、培地に植栽された植物を局所的に冷却又は加温して育成するための植物育成装置であって、
植物が植栽された、又は、植物が植栽される培地と、
環境温度よりも低温又は高温の液体を供給可能な給水装置に接続され、前記液体が内部を通過する通水管と、を備え、
前記通水管は断面四角形状を有する長尺体であり、前記通水管の断面四角形状の1辺が前記培地表面に接触するように配置され
前記通水管は、可撓性を有する波付管で形成され、外面において前記植物の少なくとも一部を配置する凹部を備えてなり、前記通水管の長手方向に沿って前記凹部が複数形成されていることを特徴とする。
【0015】
【0016】
請求項に記載の植物育成装置は、請求項4又は5に記載の植物育成装置において、前記植物はイチゴ苗であり、前記イチゴ苗のクラウン部が前記通水管によって加温又は冷却されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明の請求項1に記載の育成補助装置によれば、通水管は断面四角形状を有する長尺体であり、通水管の断面四角形状の少なくとも1辺が植物に近接又は接触する位置に配置されることを特徴とする。すなわち、本発明の育成補助装置は、断面四角形状に形成された通水管が辺(側面)で植物に近接又は接触するので、植物への近接面積又は接触面積を比較的大きく確保し、簡易な構成で植物を効率的に冷却又は加温することができる。また、通水管が可撓性を有する波付管で形成されてなることにより、例えば、屈曲又は屈折するように植栽された植物の配列に沿って、波付管を適宜配置することが可能である。さらに、通水管の凹部に植物の少なくとも一部を配置することにより、通水管と植物との近接面積及び接触面積を効果的に増加させ、植物をより一層、効率的に冷却又は加温することができる。そして、通水管の長手方向に沿って凹部が連続的に形成されているので、通水管の長手方向に沿って植栽された複数の植物を各凹部に収容し、より効率的な冷却又は加温を提供することができる。
【0018】
本発明の請求項2に記載の育成補助装置によれば、通水管は断面四角形状を有する長尺体であり、通水管の断面四角形状の一辺が培地表面に接触するように配置されることを特徴とする。すなわち、本発明の育成補助装置は、断面四角形状に形成された通水管が辺(側面)で培地表面に接触するので、培地への接触面積を比較的大きく確保し、培地を簡易な構成で効率的に冷却又は加温することができる。その結果、植物の温度調節を培地を介して効率的に行うことが可能となる。また、通水管が可撓性を有する波付管で形成されてなることにより、例えば、屈曲又は屈折するように植栽された植物の配列に沿って、波付管を適宜配置することが可能である。さらに、通水管の凹部に植物の少なくとも一部を配置することにより、通水管と植物との近接面積及び接触面積を効果的に増加させ、植物をより一層、効率的に冷却又は加温することができる。そして、通水管の長手方向に沿って凹部が連続的に形成されているので、通水管の長手方向に沿って植栽された複数の植物を各凹部に収容し、より効率的な冷却又は加温を提供することができる。
【0019】
本発明の請求項3に記載の育成補助装置によれば、請求項2に記載の発明に加え、断面四角形状に形成された通水管の辺(側面)で植物に近接又は接触するので、植物への近接面積又は接触面積を比較的大きく確保し、植物をより一層、効率的に冷却又は加温することができる。
【0020】
【0021】
【0022】
【0023】
本発明の請求項に記載の植物育成装置によれば、通水管は断面四角形状を有する長尺体であり、通水管の断面四角形状の少なくとも1辺が植物に近接又は接触する位置に配置されることを特徴とする。すなわち、本発明の植物育成装置は、断面四角形状に形成された通水管が辺(側面)で植物に近接又は接触するので、植物への近接面積又は接触面積を比較的大きく確保し、簡易な構成で植物を効率的に冷却又は加温し、植物をより望ましい温度環境で育成することができる。また、通水管が可撓性を有する波付管で形成されてなることにより、例えば、屈曲又は屈折するように植栽された植物の配列に沿って、波付管を適宜配置することが可能である。さらに、通水管の凹部に植物の少なくとも一部を配置することにより、通水管と植物との近接面積及び接触面積を効果的に増加させ、植物をより一層、効率的に冷却又は加温することができる。そして、通水管の長手方向に沿って凹部が連続的に形成されているので、通水管の長手方向に沿って植栽された複数の植物を各凹部に収容し、より効率的な冷却又は加温を提供することができる。
【0024】
本発明の請求項に記載の植物育成装置によれば、通水管は断面四角形状を有する長尺体であり、通水管の断面四角形状の一辺が培地表面に接触するように配置されることを特徴とする。すなわち、本発明の植物育成装置は、断面四角形状に形成された通水管が辺(側面)で培地表面に接触するので、培地への接触面積を比較的大きく確保し、簡易な構成で培地を効率的に冷却又は加温することができる。その結果、植物をより望ましい温度環境で育成することができる。また、通水管が可撓性を有する波付管で形成されてなることにより、例えば、屈曲又は屈折するように植栽された植物の配列に沿って、波付管を適宜配置することが可能である。さらに、通水管の凹部に植物の少なくとも一部を配置することにより、通水管と植物との近接面積及び接触面積を効果的に増加させ、植物をより一層、効率的に冷却又は加温することができる。そして、通水管の長手方向に沿って凹部が連続的に形成されているので、通水管の長手方向に沿って植栽された複数の植物を各凹部に収容し、より効率的な冷却又は加温を提供することができる。
【0025】
【0026】
本発明の請求項に記載の植物育成装置によれば、請求項4又は5に記載の発明に加え、イチゴ育成における温度管理をより効率的に行うことが可能とである。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の一実施形態の植物育成装置の概略斜視図。
図2図1の植物育成装置の平面図。
図3図2の植物育成装置の(a)A−A断面図及び(b)その部分拡大図。
図4図3(b)の植物育成装置のB−B断面図。
図5図1の植物育成装置を構成する育成補助装置の分解斜視図。
図6】本発明の一実施形態の植物育成装置の全体構成を示す模式図。
図7】本発明の別実施例の植物育成装置の概略断面図。
図8】本発明の別実施例の植物育成装置の概略断面図。
図9】本発明の別実施例の植物育成装置の概略断面図。
図10】本発明の別実施例の植物育成装置の概略斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、以下の説明において参照する各図の形状は、好適な形状寸法を説明する上での概念図又は概略図であり、寸法比率等は実際の寸法比率とは必ずしも一致しない。つまり、本発明は、図面における寸法比率に限定されるものではない。
【0029】
本発明の一実施形態の植物育成装置10は、培地に植栽された植物を局所的に冷却又は加温して育成するものである。そして、該植物育成装置10に備えられた育成補助装置100は、植物の温度管理を効率的に行うことで、その育成を補助及び促進するように構成されている。本実施形態では、植物は、ハウス環境にて架台上で高所栽培されたイチゴ苗Pである。一般に、イチゴ苗Pのハウス栽培において、高温となる夏場にはイチゴ苗Pを冷やし、低温となる冬場にはイチゴ苗Pを温めることが重要である。そして、イチゴ苗Pを局所的に温度管理するには、株元付近のクラウン部(生長点)P1(図4参照)を重点的に冷却又は加温することが効率的であることが知られている。ただし、本発明の技術的思想は、他の果物、野菜、草花等の植物や異なる植栽環境に対する温度管理にも応用可能であり、本発明は以下に説明する実施形態に限定されないことは云うまでもない。
【0030】
図1は、本発明の一実施形態の植物育成装置10の概略斜視図である。図2は、該植物育成装置10の概略平面図である。図3(a)(b)は、該植物育成装置10の横(A−A)断面図及びその部分拡大図である。図4は、該植物育成装置10の水平(B−B)断面図である。
【0031】
図1に示すとおり、植物育成装置10は、ビニールハウス等の屋内で地面から離隔して高所設置されたコンテナ11と、イチゴ苗Pを植栽するために該コンテナ11に形成された培地12と、該培地12上に設置された育成補助装置100とを備えてなる。
【0032】
コンテナ11は、上方に開口した矩形状の筐体であり、所定量の培土を保持可能である。また、コンテナ11は、一辺が長い略直方体状に構成されており、平面視(図2参照)において幅方向及び長手方向を有している。そして、コンテナ11に培土が充填されることにより、コンテナ11の上面に培地12が定められる。本実施形態では、コンテナ11の幅は、幅方向に2つのイチゴ苗Pを配列可能な寸法(例えば、約0.4m)で定められている。他方、コンテナ11の全長は、長手方向に沿って多数のイチゴ苗Pを配置可能な寸法(例えば、約10m)で定められている。さらに、コンテナ11は、複数の脚からなる架台13によって地面から浮いた状態で高所にて支持されている(図6参照)。これにより、栽培者は、腰を曲げることなく作業可能である。なお、本実施形態のコンテナ11は、発泡スチロール等の発泡樹脂からなるが、他の硬質の合成樹脂や木材等の任意の材料で構成されてもよい。
【0033】
培地12は、所定幅で長手方向に延在する領域である。図2に示すように、培地12には、複数のイチゴ苗Pがコンテナ11の長手方向に沿って所定間隔で連続して植栽されている。そして、2つのイチゴ苗Pが培地12の幅方向の両端近傍に配置されている。つまり、植物育成装置10の培地12上には、2列のイチゴ苗Pの苗列がそれぞれ直線状に配置されている。図3(b)及び図4に示すように、各イチゴ苗Pは、クラウン部P1が培土中に隠れないように浅く植え付けられている。
【0034】
育成補助装置100は、各イチゴ苗Pを局所的に冷却又は加温可能であるように培地12上に設置されている。特には、育成補助装置100は、イチゴ苗Pのクラウン部P1を直接的に冷却又は加温するとともに、培地12自体を冷却又は加温することによってイチゴ苗Pを間接的に冷却又は加温するように設置されている。具体的には、育成補助装置100は、内部に冷水又は温水(環境温度よりも低温又は高温の液体)が流れる通水管101と、該通水管101に冷水又は温水を給水するための給水装置103とを備えてなる。本実施形態では、2本の通水管101が、イチゴ苗Pの苗列に沿って略直線的に延在しているとともに、各イチゴ苗Pに近接又は接触するように培地12上に載置されている。各通水管101は、継手部102を介して給水装置103の配管103aに接続されている。そして、該配管103aによって冷水又は温水が通水管101に供給されて、通水管101内部を液体が流れている。なお、冷水又は温水は、環境温度又は外気温に対して相対的に低温又は高温の液体を意味し、特定の温度の液体を差し示すものではない。また、本実施形態では、通水管内部に水が供給されるが、水に替えてオイル等の他の液体が採用されてもよい。
【0035】
通水管101は、断面四角形状を有する可撓性の長尺体である。より具体的には、該通水管101は、凹部101a及び凸部101bが長尺方向に交互に連続した角形の波付可撓管からなる。図3に示すように、通水管101の横断面は略正方形状に形成されている。そして、各通水管101がイチゴ苗Pの各苗列に添うように長手方向に沿って直線的に培地12上に配置されている。この植物育成装置10の横断面において、通水管101の一辺がイチゴ苗Pのクラウン部P1に近接又は接触するとともに、通水管101の他の一辺が培地12表面に接触している。すなわち、該通水管101は、イチゴ苗Pのクラウン部P1及び培地12の両方を冷却又は加温するように機能している。なお、上記「近接」するとは、温度調節の対象となる植物が、液体によって冷却又は加温された通水管の冷気又は熱気が伝達可能な距離を隔てて通水管及び植物が配置された状態を示している。
【0036】
図4に示すように、該植物育成装置10の平面視(水平断面)において、通水管101の凹部101a内にイチゴ苗Pの一部(クラウン部P1)が配置されている。すなわち、通水によって冷却又は加温された通水管101の管壁が3方向からクラウン部P1に近接又は接触している。これにより、クラウン部P1が効率的に冷却又は加温され得る。また、本実施形態では、凹部101a及び凸部101bが交互に連続的に形成されているので、各イチゴ苗Pを収容する凹部101aが任意に選択され得る。さらに、通水管101の管壁に凹凸が形成されていることにより、直状の管と比較して、培地12表面に接触及び近接する管壁の面積が比較的大きく確保されている。これにより、培地12が効率的に冷却又は加温され得る。
【0037】
なお、本実施形態の通水管101は、(限定されないが)ポリエチレン、塩化ビニル等の合成樹脂で形成されたものである。そして、本実施形態では、凸部101bの一辺が凹部101aの一辺の約1.35倍となるように定められている。さらに、本実施形態では、凹部101aの一辺が約100mmの通水管101が採用された。しかしながら、本発明の通水管の寸法形状は、本発明の技術的範囲内であれば任意に変更可能であり、植物の種類や培地の面積に応じて適宜選択される。
【0038】
図5は、育成補助装置100の通水管101、継手部102及び配管103aの分解斜視図である。図5に示すとおり、通水管101の給水側の角形の端部は、継手部102を介して円形の配管103a端部に接続されている。具体的には、継手部102は、小径から大径へと変換する第1及び第2の継手102a、102bと、円形を角形に変換する第3の継手102cとからなる。これら第1,第2,第3の継手102a,102b,102cを介することで、径及び形状が異なる通水管101及び配管103aが互いに接続されている。これにより、配管103aから通水管101へと冷水、温水等の液体を供給することが可能となっている。
【0039】
図6は、本実施形態の植物育成装置10のシステム全体を示す模式図である。図6に示すように、給水装置103は、継手部102を介して通水管101に接続された配管103aと、該配管103aが接続された循環ポンプ103bとを備える。循環ポンプ103bは吐出口及び吸入口を備え、それぞれに上流側及び下流側の配管103aが接続されている。そして、吐出口側の配管103aが通水管101の上流端に接続され、吸入口側の配管103aが通水管101の下流端に接続されている。すなわち、循環ポンプ103bの吐出口から送り出された液体が吐出口側の配管103aを通って通水管101に通水される。そして、通水管101の下流端から流出した液体が、吸入口側の配管103aを通って循環ポンプ103bの吸入口に流入する。循環ポンプ103bに流入した液体は、再び吐出口から通水管101に向けて送り出される。このようにして、本実施形態の植物育成装置10では、液体(冷水又は温水)の循環システムが構成されている。
【0040】
夏季において、植物育成装置10は循環ポンプ103bにより冷水を循環させるように動作する。他方、冬季において、植物育成装置10は循環ポンプ103bにより温水を循環させるように動作する。本実施形態では、通水管101の一部(水平部分)が地中に埋設されている。一般に、地中の温度は、年間を通して約15℃程度とほぼ一定であり、夏季においては地中の方が環境温度(外気温)よりも低温であり、冬季においては地中の方が環境温度よりも高温である。よって、地中に埋設された配管103a内において、夏季には、液体が地中で放熱して外気よりも低温となることで冷水が生成される。他方、冬季には、液体が地中で採熱して外気よりも高温となることで温水が生成される。すなわち、本実施形態の植物育成装置10は、水温の調整に地中熱を効果的に利用することにより、冷水又は温水を生成してイチゴ苗Pの温度調節を行っている。
【0041】
以下、本発明に係る一実施形態の植物育成装置10及び育成補助装置100の作用効果について説明する。
【0042】
本実施形態の植物育成装置10及び育成補助装置100によれば、通水管101は断面四角形状を有する波付可撓管であり、通水管101の断面四角形状の少なくとも1辺がイチゴ苗P及び培地12に近接又は接触する位置に配置されることを特徴とする。すなわち、断面四角形状に形成された通水管101が辺(側面)でイチゴ苗P及び培地12に近接又は接触するので、丸型(断面円形)の通水管を使用した従来技術と比べて、イチゴ苗P及び培地12への近接面積又は接触面積を比較的大きく確保することができる。なぜなら、従来の断面円形の通水管がイチゴ苗及び培地に対して(横断面において)点でしか接触又は最近接することが出来ないのに対し、断面矩形状の通水管101は、辺(線)でイチゴ苗P及び培地12に近接又は接触できるからである。さらに、通水管101には、イチゴ苗Pのクラウン部P1を収容可能な複数の凹部101aが設けられている。クラウン部P1が凹部101a内に配置されることにより、管壁がクラウン部P1に3方向から近接又は接触している。すなわち、通水管101の凹部101aにイチゴ苗Pの一部を配置することにより、加温又は冷却された通水管101とイチゴ苗Pとの近接面積及び接触面積をより一層増加させることができる。したがって、本実施形態の植物育成装置10は、イチゴ苗Pの育成に重要な直接的又は間接的な温度調整をより効率的に行うことが可能である。
【0043】
[変形例]
本発明は、上記実施形態に限定されず、種々の変形例を取り得る。以下、本発明の変形例を説明する。なお、各変形例において、三桁で示される構成要素において下二桁が共通する構成要素は、説明がない限り、同一又は類似の特徴を有し、その説明を一部省略する。
【0044】
(1)上記実施形態の植物育成装置10及び育成補助装置100では、冷却又は加温された通水管101の管壁が植物(イチゴ苗P)に近接又は接触すると同時に培地12に接触するように配置されたが、本発明は上記実施形態に限定されない。例えば、図7に示す植物育成装置20及び育成補助装置200では、1本の通水管201が培地22に接触しているが、イチゴ苗Pとは接触及び近接しないように配置されている。通水管201は、断面長方形状の波付可撓管であり、高さよりも幅が大きくなっている。本変形例の植物育成装置20及び育成補助装置200は、通水管201の断面四角形状の一辺が培地22表面に接触するように配置されることを特徴とする。これにより、断面四角形状に形成された通水管201が辺(側面)で培地22表面に接触するので、培地22への接触面積を比較的大きく確保し、培地22を効率的に冷却又は加温することができる。その結果、イチゴ苗Pの温度調節を培地22を介して効率的に行うことが可能である。
【0045】
(2)上記実施形態の植物育成装置10及び育成補助装置100では、冷却又は加温された通水管101の管壁が植物(イチゴ苗P)に近接又は接触すると同時に培地12に接触するように配置されたが、本発明は上記実施形態に限定されない。例えば、図8に示す植物育成装置30及び育成補助装置300では、通水管301は、イチゴ苗Pに接触又は近接しているが、培地32とは接触しないように配置されている。通水管301は、実施形態の通水管101と同様の構成を有しているが、脚部304によって培地32から離隔して支持されている。本変形例は、図8に示すように、コンテナ31又は培地32の幅が狭く、通水管301を培地32上に載置できない場合に採用され得る。そして、本変形例においても、上記実施形態と同様に、断面四角形状に形成された通水管301が辺(側面)でイチゴ苗Pに近接又は接触するので、イチゴ苗Pへの近接面積又は接触面積を比較的大きく確保することができる。その結果、イチゴ苗Pの温度調節を効率的に行うことが可能である。
【0046】
(3)上記実施形態の植物育成装置10及び育成補助装置100では、角形の波付可撓管からなる通水管101が採用されたが、本発明は上記実施形態に限定されない。例えば、通水管は、断面矩形状であれば、外面に凹凸がない直状の管材であってもよい。または、図9に示した植物育成装置40及び育成補助装置400のように、イチゴ苗Pの植栽位置に合わせて、意図的に凹部401aを通水管401に形成してもよい。
【0047】
(4)上記実施形態の植物育成装置10では、液体が循環装置によって循環されているとともに、地中熱により温度調整されているが、本発明は実施形態に限定されない。すなわち、配管から供給された液体が通水管を通った後に排水されてもよい。また、地中熱を利用せずに、通水管の上流に冷却器又は加熱器を別途設けるなどして、冷却又は加温した液体を通水管に送り込んでもよい。
【0048】
(5)上記実施形態の植物育成装置10では、複数のイチゴ苗Pが直線状に配列されているが、複数のイチゴ苗Pを屈曲又は屈折するようにランダムに配置してもよい。このような場合であっても、本実施形態の育成補助装置100の通水管101が、可撓性を有する波付可撓管を屈曲又は屈折配置することにより、複数のイチゴ苗Pに添って通水管101を配置することが可能である。
【0049】
(6)本発明の育成補助装置は、他の温度調節装置と併用して使用可能である。例えば、図10は、本発明の変形例の植物育成装置50を示している。図10に示すように、植物育成装置50は、(育成補助装置100と同様の)育成補助装置500に加えて、イチゴ苗Pの局所に温度調節された気体を吹き付けて温度管理を補助する温度調節装置55を備えてなる。温度調節装置55は、内部に冷風又は温風が通過するとともに、該冷風又は温風をイチゴ苗Pの局所に向けて吹き付けるように複数の吹き出し口55cを有するダクト55aと、該ダクト55a内部で延在し、内部に冷却液又は加温液が流れる管55bとを備える。管55bは、ダクト55a内部の気体を長尺方向に亘って冷却又は加温し、各吹き出し口55cから吹き出される気体の温度を調節するように構成されている。この温度調節装置55では、ダクト55aの上流側と下流側との間において、各吹き出し口55cから吐出される気体に温度差が生じることが抑えられている。すなわち、該温度調整装置55を育成補助装置500に組み合わせて用いることにより、より効率的にイチゴ苗Pの温度管理が可能となる。
【0050】
本発明は上述した実施形態や変形例に限定されるものではなく、本発明の技術的範囲に属する限りにおいて種々の態様で実施しうるものである。
【符号の説明】
【0051】
10 植物育成装置
11 コンテナ
12 培地
13 架台
100 育成補助装置
101 通水管(波付可撓管)
101a 凹部
101b 凸部
102 継手部
103 給水装置
103a 配管
103b 循環ポンプ
P イチゴ苗(植物)
P1 クラウン部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10