(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般に、E84通信シーケンスにおける載置ポートと天井走行台車との通信は、片方向で8bit(双方向の合計で16bit)のパラレルインタフェースが使用されている。一方、コスト削減等のため、パラレルインタフェースに代えて、LAN(Local Area Network)などのネットワークによって、入出力ポート(以下IOポートという)の情報を伝達する構成を採用し得る。この構成においては、IOポートの情報であるパラレル信号が通信パケット(以降、単にパケットという)に変換され、ネットワークを経由して伝達される。
【0006】
パラレルインタフェースによって情報を伝達する場合は、パラレルインタフェースのIOポートの情報が常時接続先に伝達される。一方、ネットワーク通信を用いる構成においては、所定のタイミングでパケットがネットワーク経由で送信される。パラレルインタフェースの入出力ポートの情報をリアルタイムにパケットに含めて送信する場合、比較的短い時間(例えば50msec)間隔でパケットを送信する必要があり、ネットワークにおける通信量の増大を招く。ネットワークにおける通信量の増大は、通信遅延又は通信ロスを引き起こしインターロックのエラーを招くという問題がある。
【0007】
本発明は、上記問題を解決するためのものであり、インターロックシーケンスにおける通信に係る通信量の増大を抑制する通信装置等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の一態様に係る通信装置は、被搬送物が載置される載置ポートとの間で通信するパラレルインタフェースと、前記載置ポートとの間で前記被搬送物を移載する搬送装置とネットワークを介して通信するネットワーク通信部と、前記パラレルインタフェース及び前記ネットワーク通信部を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、(a)前記載置ポートと前記搬送装置との間で前記被搬送物を移載するためのインターロックシーケンスに係る処理の実行コマンドを前記ネットワーク通信部により受信すると、前記処理の実行に必要なコマンドを順次に選定し、選定した前記コマンドの前記載置ポートへの送信と、前記載置ポートからの応答の受信とを複数回行うことで前記処理を実行させ、(b)前記処理の実行結果を前記実行コマンドの応答として、前記ネットワーク通信部により前記搬送装置に送信する。
【0009】
これによれば、通信装置は、搬送装置からの実行コマンドの受信をトリガとして、この実行コマンドにより実行されるべき処理に必要なコマンドを載置ポートに送信する。また、送信したコマンドに対する応答を載置ポートから受信し、受信した応答の内容に基づいて上記処理に必要なコマンドを順次に選定して載置ポートに送信する。このようにして通信装置は、コマンドの選定及び送信と、送信したコマンドに対する応答の受信とを複数回行うことにより上記処理を完了させ、その結果を示す情報を搬送装置に送信する。このとき、通信装置は、載置ポートから受信した応答を搬送装置に送信することを抑制している。これにより、通信装置は、処理中における載置ポートと搬送装置との通信を抑制し、通信量を削減することができる。よって、通信装置は、インターロックシーケンスにおける通信に係る通信量の増大を抑制することができる。
【0010】
また、前記制御部は、前記(a)及び前記(b)を行う代理モードと、(c)前記処理の実行コマンドを含むパケットを前記ネットワーク通信部により受信すると、受信した前記パケットをパラレル信号に変換して前記パラレルインタフェースから出力することと、前記パラレルインタフェースにより受信したパラレル信号をパケットに変換して前記ネットワーク通信部から出力することとを複数回行うことで前記処理を実行させる中継モードと、のそれぞれにより前記処理を実行可能であり、前記制御部は、さらに、前記代理モードと前記中継モードとを切り替えてもよい。
【0011】
これによれば、通信装置は、通信量を抑制しない通常の動作モードである中継モードと、通信量を抑制する動作モードである代理モードとを必要に応じて切り替える。具体的には、インターロックシーケンスに係る通信量の増減に応じて動作モードを切り替えたり、インターロックシーケンスの処理に万が一の不具合が生じたときに動作モードを切り替えたりする。このようにして、通信装置は、インターロックシーケンスの適切な実現と、通信量の抑制とを抑制することができる。
【0012】
また、前記処理は、前記搬送装置が前記被搬送物を移載する処理を含んでもよい。
【0013】
これによれば、通信装置は、インターロックシーケンスにおいて、特に、搬送装置が被搬送物を移載する処理における通信量を抑制することができる。
【0014】
また、前記載置ポートは、半導体製造装置に搭載されており、前記パラレルインタフェースは、SEMI E84規格に基づく構成を有してもよい。
【0015】
これによれば、通信装置は、SEMI E84規格に基づくパラレルインタフェースを用いたインターロックシーケンスにおいて、通信量を抑制することができる。
【0016】
また、前記ネットワーク通信部は、ポーリングによるアクセス制御がなされた無線ネットワークを含む前記ネットワークを介して通信してもよい。
【0017】
これによれば、通信装置は、ポーリングによるアクセス制御によって通信ロスがより削減されたネットワークによってインターロックシーケンスに係る通信を行うことで、インターロックシーケンスのエラーの発生を回避することができる。
【0018】
また、本発明の一態様に係る搬送装置は、通信装置とネットワークを介して通信するネットワーク通信部と、前記ネットワーク通信部を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、(d)載置ポートと前記搬送装置との間で被搬送物を移載するためのインターロックシーケンスに係る処理の実行コマンドを前記ネットワーク通信部により送信することで、前記通信装置のパラレルインタフェースによる前記載置ポートとの複数回の通信により前記処理を実行させ、(e)前記処理の実行結果を、送信した前記実行コマンドの応答として、前記ネットワーク通信部により受信する。
【0019】
これによれば、搬送装置は、インターロックシーケンスに係る処理の実行コマンドを送信した後、搬送装置からの応答に逐一応答することなく、当該処理が完了した後に通信装置が送信する処理の実行結果に基づいて、インターロックシーケンスに係る処理が正常に終了したことを認知し得る。これにより、搬送装置は、通信量を抑制することができる。
【0020】
また、本発明の一態様に係る搬送システムは、上記の通信装置と、前記通信装置の前記パラレルインタフェースが通信する相手である前記載置ポートと、前記通信装置の前記ネットワーク通信部が前記ネットワークを介して通信する相手である前記搬送装置とを備える。
【0021】
これによれば、搬送システムは、上記通信装置と同様の効果を奏する。
【0022】
また、本発明の一態様に係る通信装置の制御方法では、前記通信装置は、被搬送物が載置される載置ポートとの間で通信するパラレルインタフェースと、前記載置ポートとの間で前記被搬送物を移載する搬送装置とネットワークを介して通信するネットワーク通信部と、前記パラレルインタフェース及び前記ネットワーク通信部を制御する制御部と、を備え、前記制御方法は、(a)前記載置ポートと前記搬送装置との間で前記被搬送物を移載するためのインターロックシーケンスに係る処理の実行コマンドを前記ネットワーク通信部により受信すると、前記処理の実行に必要なコマンドを順次に選定し、選定した前記コマンドの前記載置ポートへの送信と、前記載置ポートからの応答の受信とを複数回行うことで前記処理を実行させるステップと、(b)前記処理の実行結果を前記実行コマンドの応答として、前記ネットワーク通信部により前記搬送装置に送信するステップとを含む。
【0023】
これによれば、上記通信装置と同様の効果を奏する。
【発明の効果】
【0024】
本発明にかかる通信装置は、インターロックシーケンスにおける通信に係る通信量の増大を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、実施の形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0027】
以下で説明する実施の形態は、いずれも本発明の好ましい一具体例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、本発明の最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、より好ましい形態を構成する任意の構成要素として説明される。なお、同一の構成要素には同一の符号を付し、説明を省略する場合がある。
【0028】
(実施の形態)
本実施の形態において、インターロックシーケンスにおける通信に係る通信量の増大を抑制する通信装置などについて説明する。
【0029】
まず、本発明に係る通信装置を含む搬送システム1の実施の形態の概要を説明する。
図1は、搬送システム1の概要を示す外観図である。
図1に示される搬送システム1は、より具体的には、半導体製造システムである。
【0030】
図1に示されるように、搬送システム1は、通信装置10、半導体製造装置50、載置ポート20、走行ルート2、搬送台車30及びアクセスポイント40を備える。
【0031】
図1に示される半導体製造装置50は、ウェハを加工する装置であり、ウェハが格納されたFOUP(Front Opening Unified Pod)100を搬入及び搬出するためのFOUP搬入搬出口51を備える。なお、FOUP100は、搬送システム1により搬送される被搬送物に相当する。
【0032】
載置ポート20は、被搬送物であるFOUP100が載置されるポートであり、半導体製造装置50のFOUP搬入搬出口51付近に配置されて、半導体製造装置50との間でFOUP100を受け渡しする。また、載置ポート20は、搬送台車30との間で、FOUP100を移載する。また、載置ポート20は、パラレルインタフェース21を有し、パラレルケーブル60を介して、通信装置10との間で信号を送受信する。
【0033】
搬送台車30は、載置ポート20との間でFOUP100を移載し、走行ルート2に沿って搬送する台車であり、内部にFOUP100を把持する把持部31を備える。把持部31は、昇降可能に設けられており、FOUP100を載置ポート20との間で移載する際には、載置ポート20付近まで降下される。搬送台車30は、搬送装置に相当する。
【0034】
通信装置10は、載置ポート20と搬送台車30との間のインターロックシーケンスに係る信号の送受信を仲介する通信装置である。通信装置10は、パラレルインタフェース11を備え、パラレルケーブル60を介して、載置ポート20のパラレルインタフェース21との間でパラレル信号を送受信する。また、通信装置10は、LANポート12を備え、LANケーブル70及びアクセスポイント40を介して、搬送台車30との間でパケットを送受信する。
【0035】
アクセスポイント40は、搬送台車30と通信装置10との間でパケットの送受信を仲介する基地局である。アクセスポイント40は、通信装置10からLANケーブル70を介して受信したパケットを、無線通信(例えばIEEE802.11a、b、g、n準拠の無線LAN(Local Area Network))の無線通信リンクLを介して搬送台車30に送信し、搬送台車30から無線通信によって受信したパケットを、LANケーブル70を介して通信装置10に送信する。
【0036】
次に、本実施の形態の半導体製造装置50の機能構成を説明する。
図2は、通信装置10を含む半導体製造装置50の特徴的な機能構成を示すブロック図である。
【0037】
まず、
図2に示される搬送台車30の機能構成について説明する。
図2に示されるように、搬送台車30は、機能的には、台車制御部32及び台車通信部33を含む。
【0038】
台車通信部33は、通信装置10とネットワークを介して通信する通信インタフェースである。台車通信部33は、台車制御部32から送信された搬送台車30の状態を示すパケットを、無線通信によってアクセスポイント40に送信する。また、台車通信部33は、アクセスポイント40から送信されたパケットを受信して、台車制御部32に送信する。台車通信部33は、搬送装置のネットワーク通信部に相当する。
【0039】
台車制御部32は、台車通信部33を制御する処理部である。台車制御部32は、台車通信部33から載置ポート20の情報を示す信号を受信して、搬送台車30の動作を制御する。また、台車制御部32は、搬送台車30の状態を示すパケットを台車通信部33に送信する。台車制御部32は、搬送装置の制御部に相当する。
【0040】
台車制御部32は、具体的には、載置ポート20と搬送台車30との間で被搬送物を移載するためのインターロックシーケンスに含まれる処理の実行コマンドを台車通信部33により送信することで、通信装置10のパラレルインタフェース11による載置ポート20との複数回の通信により上記処理を実行させる。また、台車制御部32は、上記処理の実行結果を、送信した実行コマンドの応答として台車通信部33により受信する。
【0041】
次に、
図2に示される載置ポート20の機能構成について説明する。
図2に示されるように、載置ポート20は、機能的には、ポート制御部22とパラレルインタフェース21とを含む。
【0042】
ポート制御部22は、パラレルインタフェース21から搬送台車30の状態を示すパラレル信号を受信して、載置ポート20を制御する。また、ポート制御部22は、載置ポート20の状態を示すパラレル信号をパラレルインタフェース21に送信する。
【0043】
パラレルインタフェース21は、パラレル信号を入出力する入出力部であって、パラレルケーブル60が備えるコネクタ(Dsub−25pin)を接続するためのレセプタクルを含む。パラレルインタフェース21は、SEMI E84規格に基づく構成を有する。パラレルインタフェース21が入出力するパラレル通信は、例えば、セントロニクス、IEEE1284通信規格などの方式に適合するものである。
【0044】
次に、
図2に示される通信装置10の機能構成について説明する。
図2に示されるように、通信装置10は、機能的には、パラレルインタフェース11、LANポート12、制御部13及びネットワーク通信部14を含む。
【0045】
パラレルインタフェース11は、載置ポート20との間で通信するインタフェースであって、片方向で8bit(双方向の合計で16bit)のIOポートを含み、パラレルケーブル60が接続される。パラレルインタフェース11の通信規格は、パラレルインタフェース21と同じものが用いられる。
【0046】
制御部13は、パラレルインタフェース21及びネットワーク通信部14を制御する処理部である。制御部13は、載置ポート20と搬送台車30との間でFOUP100を移載するためのインターロックシーケンスに含まれる一連の処理を、載置ポート20及び搬送台車30との通信処理を複数回行うことで実行させる。制御部13は、上記一連の処理を実行させる実行モードとして、代理モードと中継モードとを有する。
【0047】
制御部13は、代理モードにおいて、載置ポート20と搬送台車30との間で被搬送物を移載するためのインターロックシーケンスに含まれる処理の実行コマンドをネットワーク通信部14により受信すると、上記処理の実行に必要なコマンドを順次に選定し、選定したコマンドの載置ポート20への送信と、載置ポート20からの応答の受信とを複数回行うことで上記処理を実行させる。また、制御部13は、上記処理の実行結果を実行コマンドの応答として、ネットワーク通信部14により搬送台車30に送信する。
【0048】
また、制御部13は、中継モードにおいて、上記処理の実行コマンドを含むパケットをネットワーク通信部14により受信すると、受信したパケットをパラレル信号に変換してパラレルインタフェース21から出力することと、パラレルインタフェース21により受信したパラレル信号をパケットに変換してネットワーク通信部14から出力することとを複数回行うことで上記処理を実行させる。なお、中継モードでの処理の実行だけを行う通信装置が従来の通信装置に相当する。
【0049】
制御部13は、所定の条件が成立すると、実行モードを代理モード及び中継モードの一方から他方に切り替えてもよい。例えば、アクセスポイント40が送受信する無線通信の通信量が所定の閾値を超えると、実行モードを中継モードから代理モードへ切り替えてもよい。無線通信の通信量を削減するためである。また、代理モードでインターロックシーケンスの処理を実行している時に何らかの不具合又は不都合が生じたときに中継モードに切り替えてもよい。インターロックシーケンスは、搬送台車30と載置ポート20との間で信号の送受信が行われる中継モードが前提として設計されているので、代理モードで何らかの不具合が生じた場合には、その前提である中継モードに戻すことで不具合を解消できる可能性があるからである。また、実行モードを切り替える命令を外部から受信した場合に、当該命令に従って、実行モードを代理モード及び中継モードの一方から他方に切り替えてもよい。この命令の一例は、後述する
図5のステップS211で送信される、エラーの発生を示す情報に対して送信される命令である。
【0050】
なお、制御部13は、プロセッサが所定のプログラムを実行することで実現されてもよいし、専用のハードウェアにより実現されてもよい。
【0051】
ネットワーク通信部14は、ネットワークを介して搬送台車30と通信する通信部である。LANポート12は、パケットを入出力する入出力部であって、LANケーブル70が接続される。ネットワーク通信部14と搬送台車30とを接続するネットワークは、LANポート12を用いて接続される有線ネットワーク(例えばIEEE802.3準拠の有線LAN)を含み、また、無線ネットワーク(例えばIEEE802.11a、b、g、n準拠の無線LAN)を含んでよい。無線ネットワークは、ポーリングによるアクセス制御(例えば、IEEE802.11で規定されるPCF(Point Coordination Function))がなされていることが望ましい。自律分散的なアクセス制御(例えば、IEEE802.11で規定されるDCF(Distributed Coordination Function))がなされている場合と比較して、無線ネットワークでのパケット衝突が回避され、インターロックシーケンスにおけるエラーの発生を回避し得る利点がある。
【0052】
図3は、本実施の形態に係る搬送システム1におけるパラレル信号の時間変化の説明図である。
図3に示されるパラレル信号の時間変化は、インターロックシーケンスに含まれる荷掴み時のハンドシェイクに係るパラレル信号の時間変化の一例である。なお、荷降ろし時のハンドシェイクにもこれと同様のパラレル信号の時間変化がある。より一般的には、搬送台車30がインターロックシーケンスにおいて被搬送物を移載する処理が本発明に係る技術の適用対象となり得る。ここで、
図3および
図4では、載置ポート20がE84インターロックシーケンスにおけるPassive側であり、搬送台車30がActive側であるとして説明する。
【0053】
図3に示されるパラレル信号は、搬送システム1におけるインターロックシーケンスに含まれる荷掴み時のハンドシェイクに係るパラレル信号の一例である。
図3には、Passive側からActive側へ伝達される5つの信号(HO_AVBLなど)と、Active側からPassive側へ伝達される7つの信号(CS_0など)との信号値(High又はLow)の変化の様子が、経過時間(横軸)に対して示されている。
【0054】
図3に示される例では、インターロック通信の開始から、FOUP100の移載の開始までに1〜2秒程度を要する。この時間内に、E84インターロック通信に規定されるT0〜T3タイムアウトチェック等が行われる。例えば、T0タイムアウトチェックは、ES及びHO_AVBLがONで他の入力信号が全てOFFとなるのを待つことである。その他、各信号の意味などについてはE84インターロック通信にて規定されている通りであるので詳細な説明を省略する。
【0055】
また、
図3に示される例では、さらに、移載の開始から終了までに6〜9秒程度、移載の完了からインターロック通信の終了までに1〜2秒程度の時間を要する。これらの時間内に含まれる処理についてもE84インターロック通信にて規定されている通りであるので詳細な説明を省略する。
【0056】
図4は、本実施の形態に係る搬送システム1におけるインターロックシーケンスに含まれる荷掴み時の処理ステップと経過時間との関係を示すグラフである。
【0057】
このインターロックシーケンスは、載置ポート20と搬送台車30との間でFOUP100の移載を行う際に、E84インターロックシーケンスに基づいて通信装置10が通信処理を行う場合の処理手順の一例である。E84インターロックシーケンスは、複数の工程を含み、Active側及びPassive側の各工程がエラーなく完了する毎に、Active側8bit又はPassive側8bitのパラレル信号が更新される。
【0058】
図4に示されるグラフは、インターロックシーケンスのシーケンス番号(横軸)に対して、経過時間をプロットしたものである。
図4に示されるように、インターロックシーケンスの開始からFOUP100の移載の開始までの期間と、移載の完了からインターロックシーケンスの終了までの期間とには、比較的多くのステップが含まれているが、これらのステップの処理の実行に要する時間は比較的短い。一方、移載開始から移載完了までの期間(つまり、移載中の期間)に含まれるステップの数は比較的少ないが、これらのステップの処理の実行に比較的長い時間を要する。
【0059】
図5は、本実施の形態に係るネットワーク通信部14と搬送台車30との間で送受信されるパケット80の説明図である。なお、ここではパケット80のトランスポート層のプロトコルとしてUDP(User Datagram Protoco)が用いられる場合を例として説明するが、UDPの代わりにTCP(Transmission Control Protocol)が用いられてもよいし、トランスポート層のプロトコルを用いなくてもよい。
【0060】
図5に示されるように、パケット80は、MACヘッダ81と、IPヘッダ82と、UDPヘッダ83と、データフィールド84とを含む。データフィールド84は、通信装置10(ネットワーク通信部14)から搬送台車30(台車通信部33)に対して送信される場合と、搬送台車30(台車通信部33)から通信装置10(ネットワーク通信部14)に送信される場合とで内容が異なる。
【0061】
MACヘッダ81は、IEEE802.3又はIEEE802.11a等準拠の周知のMACヘッダであり、パケット80の宛先MACアドレス及び送信元MACアドレスを含む。
【0062】
IPヘッダ82は、周知のIPヘッダであり、パケット80の送信元IPアドレス及び宛先IPアドレスを含む。
【0063】
UDPヘッダ83は、周知のUDPヘッダであり、送信元ポート番号及び宛先ポート番号等を含む。なお、トランスポート層のプロトコルとしてTCPが用いられる場合には、UDPヘッダ83の代わりにTCPヘッダが採用される。トランスポート層のプロトコルが用いられない場合には、UDPヘッダ83に相当するフィールドは存在しない。
【0064】
データフィールド84は、インターロックシーケンスの通信の内容が記載されるフィールドである。通信装置10から搬送台車30に対して送信されるパケット80に含まれるデータフィールド84は、コマンドフィールド86を含む(
図5の(a)参照)。コマンドフィールド86は、インターロックシーケンスに含まれる一連の処理を進めるための実行コマンドであり、具体的には、「荷掴み要求」、「荷降し要求」などを開始させるコマンドである。
【0065】
また、搬送台車30から通信装置10に送信されるパケット80は、応答フィールド88を含む(
図5の(b)参照)。応答フィールド88は、コマンドの実行結果、無線通信リンクLの状態(受信信号強度及び通信状況など)を示す情報、パラレル信号を示す情報などを含む。
【0066】
図4に示されるように、通信装置10は、パラレル信号(パラレルインタフェース11の入出力ポートの情報)をリアルタイムに搬送台車30に伝達しようとする場合、比較的短時間(例えば50msec)間隔でネットワーク通信部14に出力することを要する。これは、通信装置10が、パラレル信号の情報をパケット80の応答フィールド88にのせて、中継モードで処理を実行することに相当する。
【0067】
そのため、比較的長い時間を要するステップ、つまり
図3及び
図4における移載中のステップにおいて、特にネットワークの通信量が増大し得る。通信量が増大すると、パケットの通信遅延又は通信ロスが生じる確率が増大し、インターロックシーケンスのエラーの発生につながるという問題が生じ得る。
【0068】
そこで、通信装置10は、代理モードを利用してインターロックシーケンスにおける通信に係る通信量の増大を抑制する。
【0069】
以降において、中継モードと代理モードとについて詳細に説明する。
【0070】
(1)中継モード
図6は、本実施の形態に係る通信装置10による中継モードの処理を示すフロー図である。
図7は、本実施の形態に係る通信装置10による中継モードの処理を示すシーケンス図である。
【0071】
ステップS101において、制御部13は、搬送台車30から、インターロック通信に含まれる処理の実行コマンドを含むパケットを受信したか否かを判定する。制御部13が上記パケットを受信した場合(ステップS101でYes)にはステップS102に進み、そうでない場合(ステップS101でNo)にはステップS103に進む。
【0072】
ステップS102において、制御部13は、ステップS101で受信したパケットをパラレル信号に変換して、パラレルインタフェース11により出力する。
【0073】
ステップS103において、制御部13は、載置ポート20からパラレル信号により応答を受信したか否かを判定する。制御部13がパラレル信号により応答を受信した場合(ステップS103でYes)にはステップS104に進み、そうでない場合(ステップS103でNo)にはステップS105に進む。
【0074】
ステップS104において、制御部13は、ステップS103で受信したパラレル信号をパケットに変換して、ネットワーク通信部14により出力する。
【0075】
ステップS105において、制御部13は、インターロックシーケンスに含まれる一連の処理が完了したか否かを判定する。上記一連の処理が完了していないと制御部13が判定した場合(ステップS105でNo)には、ステップS101へ戻って処理を実行し、そうでない場合(ステップS105でYes)には、
図6に示される一連の処理を終了する。
【0076】
このように、通信装置10は、中継モードにおいて、搬送台車30と載置ポート20との間でのインターロックシーケンスに含まれる一連の処理に係る通信を、パラレル信号とパケットとの相互変換によって実現する(
図7参照)。
【0077】
(2)代理モード
図8は、本実施の形態に係る通信装置10による代理モードの処理を示すフロー図である。
図9は、本実施の形態に係る通信装置10による代理モードの処理を示すシーケンス図である。
【0078】
ステップS201において、制御部13は、搬送台車30から、インターロックシーケンスに含まれる処理に係るコマンドを含むパケットを受信したか否かを判定する。制御部13が上記パケットを受信した場合(ステップS201でYes)にはステップS202に進み、そうでない場合(ステップS201でNo)にはステップS201を再び実行する。
【0079】
ステップS202において、制御部13は、ステップS201で受信したパケットをパラレル信号に変換して、パラレルインタフェース11により出力する。
【0080】
ステップS203において、制御部13は、載置ポート20からパラレル信号により応答を受信したか否かを判定する。制御部13がパラレル信号により応答を受信した場合(ステップS203でYes)にはステップS204に進み、そうでない場合(ステップS203でNo)にはステップS203を再び実行する。
【0081】
ステップS204において、制御部13は、ステップS203で受信した応答がエラーの発生を示しているか否かを判定する。上記応答がエラーの発生を示していると判定した場合(ステップS204でYes)には、ステップS211に進み、そうでない場合(ステップS204でNo)には、ステップS205に進む。
【0082】
ステップS205において、制御部13は、ステップS203で受信した応答に応じて、インターロックシーケンスに含まれる一連の処理を進めるためのコマンドを選定する。このとき、制御部13は、インターロックシーケンスに含まれる一連の処理の内容に基づいて、次に載置ポート20に送信すべきコマンドを選定する。
【0083】
ステップS206において、制御部13は、ステップS205で選定したコマンドをパラレルインタフェース11により出力する。
【0084】
ステップS207において、制御部13は、インターロックシーケンスに含まれる一連の処理が完了したか否かを判定する。上記一連の処理が完了したと制御部13が判定した場合には、ステップS203へ戻って処理を実行し、そうでない場合には、ステップS208に進む。
【0085】
ステップS208において、制御部13は、インターロックシーケンスに含まれる一連の処理の実行結果を搬送台車30に送信する。
【0086】
ステップS211において、制御部13は、インターロックシーケンスに係る通信中にエラーが発生したことを示す情報を搬送台車30に送信する。本ステップでこの情報を搬送台車30に送信すると、送信した情報に対して搬送台車30(又は、搬送台車30と通信可能に接続された、搬送システム1の制御装置(不図示))により、制御部13の実行モードを切り替える命令が送信され得る。
【0087】
ステップS208又はS211の処理を終えたら、本フロー図に示された一連の処理を終了する。
【0088】
このように、通信装置10は、代理モードにおいて、搬送台車30と載置ポート20との間でのインターロックシーケンスに要する処理の一部を代理することでインターロックを実現する(
図9参照)。すなわち、通信装置10(制御部13)は、ステップS203でパラレルインタフェース11により受信した応答を搬送台車30に送信するのではなく、上記応答の内容を解釈してインターロックシーケンスを次に進める。つまり、通信装置10(制御部13)は、搬送台車30を代理して載置ポート20にコマンドを送信する。これにより、通信装置10と搬送台車30との間の通信を省略することができ、ネットワークにおける通信量の増大を抑制し得る。
【0089】
以上のように、本実施の形態に係る通信装置は、搬送装置からの実行コマンドの受信をトリガとして、この実行コマンドにより実行されるべき処理に必要なコマンドを載置ポートに送信する。また、当該通信装置は、代理モードにおいて、送信したコマンドに対する応答を載置ポートから受信し、受信した応答の内容に基づいて上記処理に必要なコマンドを順次に選定して載置ポートに送信する。このようにして通信装置は、コマンドの選定及び送信と、送信したコマンドに対する応答の受信とを複数回行うことにより上記処理を完了させ、その結果を示す情報を搬送装置に送信する。このとき、通信装置は、載置ポートから受信した応答を搬送装置に送信することを抑制している。これにより、通信装置は、処理中における載置ポートと搬送装置との通信を抑制し、通信量を削減することができる。よって、通信装置は、インターロックシーケンスにおける通信に係る通信量の増大を抑制することができる。
【0090】
また、通信装置は、通信量を抑制しない通常の動作モードである中継モードと、通信量を抑制する動作モードである代理モードとを必要に応じて切り替える。具体的には、インターロックシーケンスに係る通信量の増減に応じて動作モードを切り替えたり、インターロックシーケンスの処理に万が一の不具合が生じたときに動作モードを切り替えたりする。このようにして、通信装置は、インターロックシーケンスの適切な実現と、通信量の抑制とを抑制することができる。
【0091】
また、通信装置は、インターロックシーケンスにおいて、特に、搬送装置が被搬送物を移載する処理における通信量を抑制することができる。
【0092】
また、通信装置は、SEMI E84規格に基づくパラレルインタフェースを用いたインターロックシーケンスにおいて、通信量を抑制することができる。
【0093】
また、通信装置は、ポーリングによるアクセス制御によって通信ロスがより削減されたネットワークによってインターロックシーケンスに係る通信を行うことで、インターロックシーケンスのエラーの発生を回避することができる。
【0094】
また、搬送装置は、インターロックシーケンスに係る処理の実行コマンドを送信した後、搬送装置からの応答に逐一応答することなく、当該処理が完了した後に通信装置が送信する処理の実行結果に基づいて、インターロックシーケンスに係る処理が正常に終了したことを認知し得る。これにより、搬送装置は、通信量を抑制することができる。
【0095】
以上、本発明の通信装置などについて、実施の形態に基づいて説明したが、本発明は、この実施の形態に限定されるものではない。本発明の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を本実施の形態に施したものや、異なる実施の形態における構成要素を組み合わせて構築される形態も、本発明の範囲内に含まれる。