特許第6661175号(P6661175)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6661175-加工媒体、加工組成物及び加工方法 図000009
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6661175
(24)【登録日】2020年2月14日
(45)【発行日】2020年3月11日
(54)【発明の名称】加工媒体、加工組成物及び加工方法
(51)【国際特許分類】
   C09K 3/14 20060101AFI20200227BHJP
   C09G 1/02 20060101ALI20200227BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20200227BHJP
   B24B 37/00 20120101ALI20200227BHJP
【FI】
   C09K3/14 550Z
   C09K3/14 550C
   C09G1/02
   H01L21/304 622C
   B24B37/00 H
【請求項の数】6
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2018-564602(P2018-564602)
(86)(22)【出願日】2018年1月24日
(86)【国際出願番号】JP2018002150
(87)【国際公開番号】WO2018139492
(87)【国際公開日】20180802
【審査請求日】2019年10月28日
(31)【優先権主張番号】特願2017-13617(P2017-13617)
(32)【優先日】2017年1月27日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】391045668
【氏名又は名称】パレス化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001612
【氏名又は名称】きさらぎ国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼梨 慎也
(72)【発明者】
【氏名】▲会▼田 圭佑
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 桂
【審査官】 横山 敏志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−285944(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0011362(US,A1)
【文献】 特開昭49−097393(JP,A)
【文献】 特開平10−022241(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第103555410(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 3/14
C09G 1/02
H01L 21/304
B24B 37/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素数が2以上6以下の多価カルボン酸と、
p−tert−ブチル安息香酸と、
複数のアミン化合物を含む塩基性物質と、
水と、をpHが7より大きくなるよう配合されるラッピング用研磨液であって、
前記複数のアミン化合物は、モノエタノールアミン、N−エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、ポリ(プロピレングリコール)ジアミン及びトリメチロールプロパンポリ(オキシプロピレン)トリアミンから選択される少なくとも2つを含むラッピング用研磨液
【請求項2】
前記塩基性物質は、ナトリウム化合物及びカリウム化合物のいずれかをさらに含む請求項1記載のラッピング用研磨液
【請求項3】
前記多価カルボン酸及び前記p−tert−ブチル安息香酸の合計が0.05wt%以上かつ15wt%以下、
前記塩基性物質が0.1wt%以上かつ20wt%以下、
前記水が50wt%以上かつ99.7wt%以下である、請求項1又は2記載のラッピング用研磨液
【請求項4】
前記多価カルボン酸及び前記芳香族モノカルボン酸の配合比が1:4以上かつ2:1未満である、請求項3記載のラッピング用研磨液
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一に記載のラッピング用研磨液と、
砥粒と、を含む、研磨用組成物。
【請求項6】
請求項1乃至4のいずれか一に記載のラッピング用研磨液、若しくは、請求項5に記載の研磨用組成物を工具と被研磨物との接触部分に供給して前記被研磨物を研磨する、研磨方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工媒体、加工組成物及び加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インゴッド(鋳塊)等の被加工物をウェハ状に切断する加工や、被加工物の切断面を研磨(研削)する加工や、さらに被加工物の切断面を鏡面に研磨する加工を行うときには、工具(例えば、ワイヤソー、バンドソー、内周刃ブレード、ラップ定盤等)と被加工物との接触部分に加工媒体(加工液、切削液、クーラント)が供給される。加工媒体は、水などの溶媒で希釈して用いたり、さらに砥粒を配合して加工組成物(研削液、研磨液、スラリー)として用いられる。加工媒体には、工具と被加工物との間で発生する熱を冷却する冷却作用、工具と被加工物との間を潤滑にする潤滑作用、加工時に発生したパーティクル(切屑、研削屑、研磨屑)と工具や被加工物との溶着を防護する溶着防護作用等がある。
【0003】
加工によって発生したパーティクル由来の金属酸化物の微粒子状のスラッジは、被加工物の表面に付着(固着、再付着)しやすい。スラッジが被加工物の表面に付着すると、被加工物の金属汚染につながる。また、加工時に、工具、配管等の金属との接触によって加工媒体に溶出した金属イオンが被加工物の表面に吸着(又は浸透、拡散)しやすい。金属イオンは被加工物の表面で動きやすく、金属イオンの動きが原因で、被加工物(例えば、ウェハ)に形成されたトランジスタ等の素子の誤作動、リーク電流(漏れ電流)等の問題が発生することがある。そこで、被加工物に対するスラッジや金属イオンの悪影響を抑制するために、様々な加工媒体、加工組成物が提案されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、防錆性の低下を抑えるものとして、第1級アルカノールアミン、カルボン酸、ジアミンとを含有する水溶性切削油材が開示されている。また、特許文献2には、各種金属に対して優れた防錆能を有するものとして、テトラゾール化合物及びその水溶性塩からなる水溶性金属防食剤が開示されている。
【0005】
また、特許文献3には、金属不純物によるウェハの汚染を効果的に抑制するものとして、キレート剤、アルカリ化合物、二酸化ケイ素及び水を含有する研磨用組成物が開示されている。また、特許文献4には、ニッケル、クロム、鉄、銅等の金属汚染を効果的に防止するものとして、シリカ、塩基性物質、アミノポリホスホン酸及び水を含む研磨組成物が開示されている。また、特許文献5には、金属汚染、特に銅汚染を防止することができるものとして、シリカ、塩基性物質、アミノ酸誘導体、その塩、水を含む研磨組成物が開示されている。また、特許文献6には、金属汚染、特に銅汚染を防止することができるものとして、シリカ、塩基性物質、水酸基を有するポリアミノポリカルボン酸化合物、水を含む研磨組成物が開示されている。また、特許文献7には、金属不純物によるウェハの汚染を効果的に抑制するものとして、二酸化ケイ素、アルカリ化合物、ホスホン酸基を有するキレート剤を含有する研磨用組成物が開示されている。さらに、特許文献8には、銅汚染を効果的に防止できるものとして、単斜晶ジルコニウムと、カルボン酸と、水酸化第4級アルキルアンモニウムと、を含有する研磨スラリーが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭64−43598号公報
【特許文献2】特開平7−145491号公報
【特許文献3】国際公開第2004/042812号パンフレット
【特許文献4】特開2005−347737号公報
【特許文献5】国際公開第2006/046641号パンフレット
【特許文献6】国際公開第2006/126432号パンフレット
【特許文献7】特開2014−82509号公報
【特許文献8】特許第5002175号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の加工組成物等において防錆性及び金属汚染防止を兼ね備えるものが見当たらなかった。
【0008】
本発明の主な課題は、防錆性能及び金属汚染防止性能を兼ね備えた加工媒体、加工組成物及び加工方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る加工媒体は、炭素数が2以上かつ7以下の多価カルボン酸と、芳香族モノカルボン酸と、塩基性物質と、を含有ないし中和した状態で含有する。
【0010】
本発明に係る加工組成物は、前記加工媒体と、砥粒と、を含む。
【0011】
本発明に係る加工方法は、前記加工媒体、又は、前記加工組成物を、工具と被加工物との接触部分に供給して前記被加工物を加工する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、防錆性能及び金属汚染防止性能を兼ね備えた加工媒体、加工組成物及び加工方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】シリコンウェハの金属汚染評価の判定方法を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、実施形態について説明する。なお、本出願において図面参照符号を付している場合は、それらは、専ら理解を助けるためのものであり、図示の態様に限定することを意図するものではない。また、下記の実施形態は、あくまで例示であり、本発明を限定するものではない。
【0015】
実施形態に係る加工媒体は、シリコン、炭化ケイ素、サファイア、窒化ガリウムのインゴット等の被加工物を切断する加工、ウェハ等の被加工物の切断表面を研磨する加工、さらに切断表面を鏡面に研磨する加工等の加工を行うときに、工具(例えば、ワイヤソー、バンドソー、内周刃ブレード、ラップ定盤(例えば、片面定盤、両面定盤、鋳鉄定盤、銅定盤等)等)と被加工物との接触部に供給される媒体(加工液、切削液、クーラント等)である。加工媒体は、水で希釈して用いることができる。加工媒体は、さらに砥粒(例えば、ダイヤモンド、ジルコニア、アルミナ、炭化ケイ素、立方晶窒化ホウ素等)を任意で配合して加工組成物(例えば、研削液、研削組成物、研磨液、研磨組成物、スラリー、懸濁液等)として用いることができる。加工媒体は、例えば、切断装置(スライシング装置、カッター機)、研削装置(ラッピング装置)、研磨装置(ポリッシング装置)等の加工装置において用いられる。なお、加工装置においては、加工媒体のタンクから供給部までの配管に銅が用いられていることが多い。
【0016】
加工媒体は、加工媒体中に銅を浸したときに加工媒体中の銅イオン濃度が好ましくは70ppm以下であり、より好ましくは60ppm以下であり、特に好ましくは50ppm以下である。70ppmより大きくなると、被加工物に形成されたトランジスタ等の素子の誤作動、リーク電流等が発生しやすくなる。
【0017】
加工媒体は、多価カルボン酸と、芳香族モノカルボン酸と、塩基性物質と、水と、を含有ないし中和した状態において含有される。ここで、含有ないし中和した状態とは、酸及び塩基が中和していない状態、酸及び塩基がイオンの状態、酸及び塩基が中和した状態のいずれか又はすべての状態にあることをいう。
【0018】
多価カルボン酸は、炭素数が2以上かつ7以下の多価カルボン酸である。多価カルボン酸は、主に被加工物の金属汚染を抑制する作用がある。多価カルボン酸として、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸等のジカルボン酸;アニコット酸等のトリカルボン酸;リンゴ酸、クエン酸等のヒドロキシ酸;オキサロ酢酸等を用いることができる。多価カルボン酸の炭素数は、好ましくは2以上かつ6以下である。炭素数が7より大きくなると被加工物の金属汚染を抑制できなくなる。上記の多価カルボン酸の中でも、シュウ酸は、工具に一般に用いられる鉄の溶出を防止する効果に優れる。また、クエン酸は、銅の溶出を防止する効果に優れる。
【0019】
芳香族モノカルボン酸は、少なくとも1つの芳香環と、1つのカルボキシル基とを有する化合物である。芳香族モノカルボン酸として、例えばp−tert−ブチル安息香酸、о−tert−ブチル安息香酸、m−tert−ブチル安息香酸、ニトロ安息香酸、フェニル酢酸、ナフタレンカルボン酸等を用いることができる。中でも、p−tert−ブチル安息香酸は、主に工具に用いられている金属材料の酸化を抑える(防錆性を確保する)作用があるため好ましい。
【0020】
ここで、金属の腐食を防止するためにp−tert−ブチル安息香酸及び塩基を用いることは知られているが(例えば、特許文献2の[0002]参照)、炭素数が2〜7の分子量の小さい多価カルボン酸とp−tert−ブチル安息香酸とを組み合わせて用いたものは開示及び示唆されていない。
【0021】
なお、被加工物の加工で留意すべき点は、工具や、加工装置の配管等に用いられる銅がイオン化し被加工物に吸着(又は浸透、拡散)して汚染することである。銅の腐食や溶出を防止するためにベンゾトリアゾール類を用いることはよく知られているが(例えば、特許文献2の[0002]参照)、ベンゾトリアゾールを用いる場合、配合量が多すぎると銅以外の金属に対する被加工物の金属汚染を抑制することができないことがあるので、ベンゾトリアゾールは、配合量を微量にとどめておくことが好ましく、使用しないことがより好ましい。
【0022】
多価カルボン酸及び芳香族モノカルボン酸の合計の配合量は、加工媒体において、好ましくは0.05wt%以上かつ15wt%以下であり、より好ましくは0.1wt%以上かつ4wt%以下であり、さらに好ましくは0.2wt%以上かつ2wt%以下である。0.05wt%より濃度が低いと被加工物の金属汚染を抑制しにくく、一方、15wt%より濃度が高いとこれを中和するための塩基が多く必要となり、塩基性物質が不足すると銅イオンが溶出しやすくなる。
【0023】
多価カルボン酸及び芳香族モノカルボン酸の配合比は、好ましくは1:4以上かつ2:1未満であり、より好ましくは1:1.8以上かつ1.8:1以下であり、さらに好ましくは1:1.5以上かつ1.5:1以下である。1:4未満になると銅イオンの溶出量が多くなり、一方、2:1以上でも銅イオンの溶出量が多くなる。
【0024】
塩基性物質は、ナトリウム化合物、カリウム化合物、アンモニウム化合物、アミン化合物のいずれか1以上である。塩基性物質は、ナトリウム化合物又はカリウム化合物と、アミン化合物とを含むことが好ましく、複数種のアミン化合物を含むことがさらに好ましい。塩基性物質として、その水溶液が塩基性(アルカリ性;pH7より大きい)を示す化合物を用いることができ、例えば、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム等のナトリウム化合物;水酸化カリウム、炭酸カリウム等のカリウム化合物;水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化アンモニウム等のアンモニウム化合物;メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、モノエタノールアミン、N−エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ジイソプロパノールアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ポリ(プロピレングリコール)ジアミン、トリメチロールプロパンポリ(オキシプロピレン)トリアミン、エチレンジアミン、テトラメチルエチレンジアミン、2−アミノ−2−メチルプロパノール、ラウリルアミノプロピルアミン、エチルアミノエチルアミン、オレイルアミノプロピルアミン、ジエチルアミノブチルアミン、エチルアミノヘキシルアミン、シクロヘキシルアミノプロピルアミン、ヘキサメチレンジアミン、スペルミジン、アニリン、フェネチルアミン、トルイジン、ピロリジン、ピペリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、オキサゾール、チアゾール、N,N−ジメチル−4−アミノピリジン、エーテルアミン、無水ピペラジン、ピペラジン六水和物、1−ピペラジン、N−メチルピペラジン等のアミン化合物を用いることができる。
【0025】
本発明に係る加工媒体は、塩基性物質を含有することにより、芳香族モノカルボン酸が水に可溶となるため、均一で安定した溶液を得ることができる。塩基性物質の配合量は、加工媒体において、好ましくは0.1wt%以上かつ20wt%以下であり、より好ましくは0.2wt%以上かつ10wt%以下であり、さらに好ましくは0.5wt%以上かつ5wt%以下である。0.1wt%より濃度が低いと、被加工物の金属汚染に悪影響を与え、塩基性物質が不足しpHが7以下となると防錆性が失われる。一方、20wt%よりも濃度が高い場合は、銅イオンが溶出しやすくなる。塩基性物質は、多価カルボン酸及び芳香族モノカルボン酸の両方を中和する分量以上とし、加工媒体のpHが7より大きくなることように配合することが好ましく、より好ましくは8以上かつ12.5以下、さらに好ましくは8.5以上かつ10以下となるように配合することができる。加工媒体のハンドリング及びコストを考慮すると、pHが12.5以下とすることが好ましい。
【0026】
水は、原液成分となる多価カルボン酸、芳香族モノカルボン酸及び塩基性物質の希釈媒体である。水の配合量は、水で原液を任意の濃度に希釈することができれば特に限定されないが、ハンドリング及びコストを考慮すると、好ましくは50wt%以上かつ99.7wt%以下であり、より好ましくは80wt%以上かつ99.5wt%以下であり、さらに好ましくは90wt%以上かつ98wt%以下である。
【0027】
また、加工媒体には、必要に応じて、界面活性剤、消泡剤、防腐剤、香料、染料等を添加することができる。
【0028】
界面活性剤は、砥粒の分散性や液の浸透性を考慮して配合することができる。界面活性剤として、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、両性界面活性剤等を用いることができ、例えば、ラウリン酸グリセリン、モノステアリン酸グリセリン等のエステル型ノニオン系界面活性剤、ポリアルキレングリコールモノブチルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル等のエーテル型ノニオン系界面活性剤;ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヘキシタン脂肪酸エステル等のエステルエーテル型ノニオン系界面活性剤;ラウリン酸ジエタノールアミド、オレイン酸ジエタノールアミド等のアルカノールアミド型ノニオン系界面活性剤;オクチルグルコシド、デシルグルコシド等のアルキルグルコシド型ノニオン系界面活性剤;セタノール、ステアリルアルコール等の高級アルコール型ノニオン系界面活性剤;塩化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラメチルアンモニウム等の第4級アンモニウム塩型カチオン系界面活性剤;モノメチルアミン塩酸塩、ジメチルアミン塩酸塩等のアルキルアミン塩型カチオン系界面活性剤;塩化ブチルピリジニウム、塩化ドデシルピリジニウム等のピリジン環型カチオン系界面活性剤;オクタン酸ナトリウム、デカン酸ナトリウム等のカルボン酸型アニオン系界面活性剤;1−ヘキサンスルホン酸ナトリウム、1−オクタンスルホン酸ナトリウム等のスルホン酸型アニオン系界面活性剤;ラウリル硫酸ナトリウム、ミリスチル硫酸ナトリウム等の硫酸エステル型アニオン系界面活性剤;ラウリルリン酸、ラウリルリン酸ナトリウム等のリン酸エステル型アニオン系界面活性剤;ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ステアリルジメチルアミノ酢酸ベタイン等のアルキルベタイン型両性界面活性剤;コカミドプロピルベタイン、コカミドプロピルヒドロキシスルタイン等の脂肪酸アミドプロピルベタイン型両性界面活性剤;2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン等のアルキルイミダゾール型両性界面活性剤;ラウロイルグルタミン酸ナトリウム、ラウロイルグルタミン酸カリウム等のアミノ酸型両性界面活性剤;ラウリルジメチルアミンN−オキシド、オレイルジメチルアミンN−オキシド等のアミンオキシド型両性界面活性剤等を用いることができる。界面活性剤の配合量は、加工媒体100wt%に対し0.01wt%以上かつ5wt%以下とすることができ、好ましくは0.02wt%以上かつ3wt%以下であり、より好ましくは0.05wt%以上かつ1wt%以下である。
【0029】
消泡剤は、加工媒体のタンクからのオーバーフローやリサイクル時の取り扱いを考慮して配合することができる。消泡剤として、例えば、シリコーン油、変性シリコーン、HLB(Hydrophilic−Lipophilic Balance)が7以上のノニオン系界面活性剤;2−エチルヘキサノール、ジイソオクチルエーテル等の有機極性化合物;ソルビタンエステル類、プルロニックL−61等の低親水性界面活性剤;脂肪酸金属塩を添加した鉱物油等を用いることができる。消泡剤の配合量は、加工媒体100wt%に対し0.001wt%以上かつ1wt%以下とすることができ、好ましくは0.002wt%以上かつ0.5wt%以下であり、より好ましくは0.005wt%以上かつ0.1wt%以下である。
【0030】
防腐剤として、例えば、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、パラオキシ安息香酸エステル類、及びフェノキシエタノール等を用いることができる。
【0031】
香料として、例えば、マスティック油、パセリ油、アニス油等の天然香料、カルボン、アネトール、サリチル酸メチル等の合成香料、調合香料等を用いることができる。
【0032】
染料として、例えば、アトラスレッドR、アゾブルー、アゾモーブAM等の直接染料、オーラミンG、オーラミンII、ビスマルクブラウン等の塩基性染料;ヤーヌスブルーG、ヤーヌスグリーンB、ヤーヌスブルーR等の塩基性ヤーヌス染料;ロッグウッド、フスチック、マダー、アリザリン等の媒染染料;アントラキノン、インジゴイド等の建染め染料等を用いることができる。
【0033】
なお、上記多価カルボン酸、芳香族モノカルボン酸及び塩基性物質については、それら混合物の代わりに、多価カルボン酸及び芳香族モノカルボン酸と塩基性物質とが中和した状態の塩を原料として用いることができる。
【0034】
上記加工媒体の製造方法として、例えば、水に塩基性物質を溶解し、さらに多価カルボン酸及び芳香族モノカルボン酸を加えて攪拌することで中和塩水溶液となる加工媒体を得ることができる。必要に応じて、加工媒体に界面活性剤、防腐剤、消泡剤、香料、染料等を加えて、水を加えて濃度を調整することができる。加工組成物を得る場合には、加工媒体に砥粒を任意で配合して攪拌することができる。なお、加工媒体及び加工組成物の製造方法は上記に限るものではない。このようにして得られた加工媒体又は加工組成物は、加工装置のタンクに注入され、加工媒体又は加工組成物を当該加工装置の工具と被加工物との接触部に供給され、当該被加工物を加工することになる。
【0035】
本実施形態によれば、多価カルボン酸により加工媒体に溶解した金属イオンの被加工物への吸着(又は浸透、拡散)を防止(抑制)することができるので、被加工物の金属汚染を防止(抑制)することができる。また、本実施形態によれば、芳香族モノカルボン酸により工具に用いられている金属材料の酸化を防止(抑制)することができるので、被加工物へのスラッジの付着を防止(抑制)することができる。さらに、本実施形態によれば、多価カルボン酸、芳香族モノカルボン酸及び塩基性物質の組合せにより、工具や、加工装置の工具等に用いられる銅のイオン化を防止(抑制)することができるので、被加工物の銅汚染を防止(抑制)することができる。
【実施例】
【0036】
次に、加工媒体の実施例及び比較例について説明する。
【0037】
[試料の作製]
まず、実施例1−24及び比較例1−11に係る加工媒体(試料)を、表1−表7に示す配合成分の組成で作製した。ここでは、水に塩基性物質を溶解し、多価カルボン酸、及び芳香族モノカルボン酸としてp−tert−ブチル安息香酸を加えて攪拌し、必要に応じて、界面活性剤、1,2,3−ベンゾトリアゾールを加えて、水を加えて濃度を調整することで加工媒体を得た。なお、ここでは、防腐剤、消泡剤、香料、染料等は含まれていない。
【0038】
なお、表1−表7に記載の配合成分の商品名、メーカー名は以下の通りである
配合成分:商品名、メーカー名
・シュウ酸:シュウ酸二水和物、菱江化学(株)
・リンゴ酸:DL−Malic Acid、東京化成工業(株)
・フマル酸:フマル酸、扶桑化学工業(株)
・クエン酸:クエン酸(結晶)H、扶桑化学工業(株)
・カプリル酸:ルナック(登録商標) 8−98、花王(株)
・セバシン酸:セバシン酸SR、伊藤製油(株)
・p−tert−ブチル安息香酸:4−tert−Butylbenzoic acid(PTBBA)、扶桑化学工業(株)
・水酸化ナトリウム:苛性ソーダ(固型)、鶴見曹達(株)
・モノイソプロパノールアミン:モノイソプロパノールアミン(MIPA)、NANJING HBL ALKYLOL AMINES CO., LTD.
・ジイソプロパノールアミン:ジイソプロパノールアミン85% GTグレード、ダウ・ケミカル日本(株)
・トリエタノールアミン:TEA(トリエタノールアミン)99、ジャパンケムテック(株)
・トリメチロールプロパンポリ(オキシプロピレン)トリアミン:JEFFAMINE(登録商標) T−403、ハンツマン・ジャパン(株)
・ポリアルキレングリコールモノブチルエーテル:ユニルーブ(登録商標) 50MB−5、日油(株)
・1,2,3−ベンゾトリアゾール:サンライト 123.BTA、サンワ化成(株)
・水:水道水(銅イオン溶解量が測定限界以下の水)
【0039】
[加工組成物の作製]
実施例及び比較例に係る加工媒体100wt%に対し砥粒(アルミナベースラッピング材:FO#1000、(株)フジミインコーポレーテッド)30wt%を加えて攪拌して加工組成物(スラリー)を得た。
【0040】
[研磨加工方法]
実施例及び比較例に係る加工組成物を鋳鉄定盤(工具)とシリコンウェハ(被加工物)との接触部に供給して、シリコンウェハを研磨加工した。研磨加工条件は、以下の通りである。
【0041】
[研磨加工条件]
研磨加工機:ラボテスターGP1(株式会社マルトー)
定盤:鋳鉄製 直径250mm
定盤溝形状:格子状(格子1辺25mm×25mm)
定盤回転速度:100rpm
試験片への面圧:0.6g/mm
試験片:単結晶シリコンウェハ直径125mm
加工組成物供給量:1L/min
【0042】
[鋳鉄定盤防錆性評価]
加工組成物と鋳鉄定盤は常に触れていることから、鋳鉄定盤の錆びの発生によってシリコンウェハを汚染されることを想定し、鋳鉄定盤の防錆性の評価を次のように行った。実施例及び比較例に係る加工組成物を用いてシリコンウェハの研磨加工を行った鋳鉄定盤(材料:FC200)の試片を加工組成物に浸漬させた状態で30℃で10分間静置し、鋳鉄定盤表面の発錆の有無を目視にて評価した。鋳鉄定盤(面積:70mm×50mm)に、錆の発生がない場合を○、10個以下の個数の錆の発生がある場合を△、10個より大きい個数の錆の発生がある場合を×と評価した。
【0043】
[シリコンウェハの金属汚染評価]
研磨加工後のシリコンウェハを目視で観察し、鋳鉄定盤の溝に沿ったパーティクルによるシリコンウェハ表面の金属汚染(スラッジによる汚れ)が生じているか否かの試験を行った。シリコンウェハ1に金属汚染物がない場合を○(図1の判定:○の写真を参照)、金属汚染物2があるが乾燥する前にティッシュで1回拭いて金属汚染物2(変色)が除去できた場合を△、金属汚染物2があり乾燥する前にティッシュで1回拭いても金属汚染が除去できない場合を×(図1の判定:×の写真を参照)と評価した。
【0044】
[銅イオン溶出量評価]
研磨加工機の配管類やシリコンウェハを切り出す前の工程で付着する銅またはその合金から銅イオンが溶出し、溶出した銅イオンによってシリコンウェハ表面が汚染されることを想定し、銅試片を用いた銅イオン溶出量を測定した。実施例及び比較例に係る加工媒体50g(砥粒を含んでいないもの)にJIS K 2513(石油製品−銅板腐食試験方法)用の銅板(材料:C1100P)を試片(長さ約75mm、幅約12.5mm、厚さ1.5−3.0mm)の半分が浸漬するようにして、25℃において18時間静置してから加工媒体を取り出し、ICP(Inductively Coupled Plasma;発光分光分析法)装置によって加工媒体中の銅イオン溶出量を測定した。ICP装置の詳細は、以下の通りである。
【0045】
[ICP装置]
製造者:AMETEK(MATERIALS ANALYSIS DIVISION)
装置名:SPECTRO ARCOS(登録商標)
型式:FHM22
タイプ:MV130(マルチビュー)
測定条件:原液測定
測定方法:SOP(Side On Plasma)側面方向(ラジアル)
【0046】
[pH測定]
pH測定器(堀場製作所製、「ガラス電極式水素イオン濃度計 pH METER F−11」、「pH電極 LAQUA(登録商標) 6377」)を用いてpHを測定した。
【0047】
【表1】

【0048】
【表2】

【0049】
【表3】

【0050】
【表4】

【0051】
【表5】

【0052】
【表6】

【0053】
【表7】

【0054】
[多価カルボン酸とモノカルボン酸との組合せの評価]
多価カルボン酸を含有せず、かつ、p−tert−ブチル安息香酸を含有する比較例1では、多価カルボン酸及びp−tert−ブチル安息香酸の両方の作用の存在を欠くので、鋳鉄定盤の防錆性がなく、シリコンウェハの金属汚染、及び、銅イオンの溶出量を抑えることができなかった。ただし、多価カルボン酸を含有せず、かつ、p−tert−ブチル安息香酸を含有する比較例3では、多価カルボン酸及びp−tert−ブチル安息香酸の両方の作用がなくとも、銅溶出防止剤となる1,2,3−ベンゾトリアゾールの作用により、鋳鉄定盤の防錆性があり、かつ、銅イオンの溶出量は抑えることができたが、シリコンウェハの金属汚染を抑えることができなかった。このことから、1,2,3−ベンゾトリアゾールには、鋳鉄定盤の防錆性はあるが、シリコンウェハの金属汚染を抑える作用がないことがわかった。
【0055】
多価カルボン酸としてクエン酸(炭素数6)を含有し、かつ、p−tert−ブチル安息香酸を含有しない比較例2では、多価カルボン酸及びp−tert−ブチル安息香酸の両方の作用の存在を欠くので、鋳鉄定盤の防錆性がなく、シリコンウェハの金属汚染、及び、銅イオンの溶出量も抑えることができなかった。
【0056】
多価カルボン酸を含有せず、かつ、p−tert−ブチル安息香酸を含有する比較例4では、他のモノカルボン酸(カプリル酸)の作用により、鋳鉄定盤の防錆性があったが、多価カルボン酸及びp−tert−ブチル安息香酸の両方の作用の存在を欠くので、シリコンウェハの金属汚染、及び、銅イオンの溶出量も抑えることができなかった。
【0057】
多価カルボン酸としてセバシン酸(炭素数10)を含有し、かつ、p−tert−ブチル安息香酸を含有する比較例5では、多価カルボン酸における炭素数が多すぎて、炭素数7以下の多価カルボン酸及びp−tert−ブチル安息香酸の両方の存在に基づく作用がなくなり、鋳鉄定盤の防錆性がなく、シリコンウェハの金属汚染、銅イオン溶出量を抑制することができなかった。
【0058】
多価カルボン酸としてクエン酸及びセバシン酸(炭素数6及び10)を含有し、かつ、p−tert−ブチル安息香酸を含有しない比較例6では、多価カルボン酸の作用により、鋳鉄定盤の防錆性があったが、多価カルボン酸及びp−tert−ブチル安息香酸の両方の作用の存在を欠くので、シリコンウェハの金属汚染、及び、銅イオンの溶出量も抑えることができなかった。
【0059】
多価カルボン酸としてクエン酸(炭素数6)を含有し、かつ、p−tert−ブチル安息香酸を含有しない比較例7では、モノカルボン酸(カプリル酸)の作用により、鋳鉄定盤の防錆性があったが、多価カルボン酸及びp−tert−ブチル安息香酸の両方の作用の存在を欠くので、シリコンウェハの金属汚染、及び、銅イオンの溶出量も抑えることができなかった。
【0060】
多価カルボン酸としてイソフタル酸(炭素数8)を含有し、かつ、p−tert−ブチル安息香酸を含有する比較例8では、鋳鉄定盤の防錆性があり、シリコンウェハの金属汚染を抑制することができたので、炭素数7以下の多価カルボン酸及びp−tert−ブチル安息香酸の両方存在に基づく作用と同様な作用があったが、銅イオン溶出量については抑制する傾向は見られたものの合格基準には届かなかった。
【0061】
一方、実施例1−9では、p−tert−ブチル安息香酸の作用により鋳鉄定盤の防錆性があり、炭素数2〜7の多価カルボン酸の作用によりシリコンウェハの金属汚染を抑えることができ、多価カルボン酸及びp−tert−ブチル安息香酸の両方の作用の存在により銅イオンの溶出量も抑えることができた(表1参照)。なお、実施例6のように、多価カルボン酸及びp−tert−ブチル安息香酸の合計の配合量が減少すると、鋳鉄定盤の防錆性が小さくなった。
【0062】
[多価カルボン酸及びp−tert−ブチル安息香酸の配合比の評価]
多価カルボン酸(クエン酸:炭素数6)及びp−tert−ブチル安息香酸の配合比について、表3を参照すると、1:4以上かつ2:1未満の実施例10−12では、鋳鉄定盤の防錆性があり、シリコンウェハの金属汚染、及び、銅イオンの溶出量も抑えることができた。また、多価カルボン酸(シュウ酸:炭素数2)及びp−tert−ブチル安息香酸の配合比について、表5を参照すると、2:1未満である実施例19−21では鋳鉄定盤の防錆性があり、シリコンウェハの金属汚染、及び銅イオンの溶出量を抑えることができた。
【0063】
[多価カルボン酸及びp−tert−ブチル安息香酸の合計の配合量の評価]
多価カルボン酸(クエン酸:炭素数6)及びp−tert−ブチル安息香酸の合計の配合量について、表4を参照すると、0.05wt%以上かつ15wt%以下の範囲内にある実施例13−17では、鋳鉄定盤の防錆性があり、シリコンウェハの金属汚染、及び、銅イオンの溶出量も抑えることができた。0.05wt%や15wt%に近付くにつれて鋳鉄定盤の防錆性が小さくなり、シリコンウェハの金属汚染が大きくなる傾向があった。また、多価カルボン酸(シュウ酸:炭素数2)及びp−tert−ブチル安息香酸の合計の配合量について、表6を参照すると、0.05wt%以上かつ15wt%以下の範囲内にある実施例22−24では、鋳鉄定盤の防錆性があり、シリコンウェハの金属汚染を抑えることができた。
【0064】
[塩基性物質の評価]
表7を参照すると、塩基性物質を含有しない比較例11においては、p−tert−ブチル安息香酸が水に溶解せず、安定した加工媒体を得ることができなかった。
【0065】
(付記)
本発明では、前記加工媒体の形態が可能である。
【0066】
前記加工媒体において、前記多価カルボン酸の炭素数は、好ましくは2以上かつ6以下、3以上かつ7以下、より好ましくは3以上かつ6以下である。
【0067】
前記加工媒体において、前記塩基性物質は、ナトリウム化合物、カリウム化合物、アンモニウム化合物及びアミン化合物のいずれか1以上である。
【0068】
前記加工媒体において、前記塩基性物質は、ナトリウム化合物及びアミン化合物を含む。
【0069】
前記加工媒体において、前記塩基性物質は、複数種のアミン化合物を含む。
【0070】
前記加工媒体において、さらに、水を含む。
【0071】
前記加工媒体において、前記多価カルボン酸及び前記芳香族モノカルボン酸の合計が0.05wt%以上かつ15wt%以下、前記塩基性物質が0.1wt%以上かつ20wt%以下、前記水が50wt%以上かつ99.7wt%以下である。多価カルボン酸及び芳香族モノカルボン酸の合計の配合量は、より好ましくは0.1wt%以上かつ4wt%以下であり、さらに好ましくは0.2wt%以上かつ2wt%以下である。前記塩基性物質の配合量は、より好ましくは0.2wt%以上かつ10wt%以下であり、さらに好ましくは0.5wt%以上かつ5wt%以下である。水の配合量は、より好ましくは80wt%以上かつ99.5wt%以下であり、さらに好ましくは90wt%以上かつ98wt%以下である。
【0072】
前記加工媒体において、前記多価カルボン酸及び前記芳香族モノカルボン酸の配合比が1:4以上かつ2:1未満である。前記多価カルボン酸及び芳香族モノカルボン酸の配合比は、より好ましくは1:1.8以上かつ1.8:1以下であり、さらに好ましくは1:1.5以上かつ1.5:1以下である。
【0073】
前記加工媒体において、pHが7より大きい。前記pHは、より好ましくは8以上かつ12.5以下、さらに好ましくは8以上かつ10以下である。
【0074】
前記加工媒体において、界面活性剤、消泡剤、防腐剤、香料及び染料の少なくとも1種を含む。
【0075】
前記加工媒体において、請求項5乃至7のいずれか一に記載の加工媒体100wt%に対し界面活性剤が0.01wt%以上かつ5wt%以下配合されている。前記界面活性剤の配合量は、好ましくは0.02wt%以上かつ3wt%以下であり、より好ましくは0.05wt%以上かつ1wt%以下である。
【0076】
前記加工媒体において、請求項5乃至7のいずれか一に記載の加工媒体100wt%に対し消泡剤が0.001wt%以上かつ1wt%以下配合されている。前記消泡剤の配合量は、好ましくは0.002wt%以上かつ0.5wt%以下であり、より好ましくは0.005wt%以上かつ0.1wt%以下である。
【0077】
前記加工媒体において、ベンゾトリアゾールを含まない。
【0078】
前記加工媒体において、前記加工媒体中に銅を浸したときに前記加工媒体中の銅イオンが70ppm以下である。前記加工媒体中に銅を浸したときに前記加工媒体中の銅イオンは、好ましくは60ppm以下であり、より好ましくは50ppm以下である。
【0079】
本発明では、前記加工組成物の形態が可能である。
【0080】
前記加工組成物において、前記加工組成物を鋳鉄定盤とシリコンウェハとの接触部に供給して前記シリコンウェハを研磨加工したときに、前記シリコンウェハ表面に金属汚染物がない、又は、前記シリコンウェハ表面にある金属汚染物が乾燥する前に拭いて取れる。
【0081】
前記加工組成物において、前記加工組成物を用いてシリコンウェハの研磨加工を行った鋳鉄定盤を前記加工組成物に浸漬させた状態で30℃で10分間静置したときに、前記鋳鉄定盤の表面に、錆の発生がない、又は、70mm×50mmの面積において錆の発生が10個以下である。
【0082】
本発明では、前記加工方法の形態が可能である。
【0083】
なお、上記の特許文献の開示を、本書に引用をもって繰り込むものとする。本発明の全開示(特許請求の範囲及び図面を含む)の枠内において、さらにその基本的技術思想に基づいて、実施形態ないし実施例の変更・調整が可能である。また、本発明の全開示の枠内において種々の開示要素(各請求項の各要素、各実施形態ないし実施例の各要素、各図面の各要素等を含む)の多様な組み合わせないし選択(必要により不選択)が可能である。すなわち、本発明は、請求の範囲及び図面を含む全開示、技術的思想にしたがって当業者であればなし得るであろう各種変形、修正を含むことは勿論である。また、本願に記載の数値及び数値範囲については、明記がなくともその任意の中間値、下位数値、及び、小範囲が記載されているものとみなされる。
【符号の説明】
【0084】
1 シリコンウェハ
2 金属汚染物
図1