特許第6661207号(P6661207)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社タカノの特許一覧

<>
  • 特許6661207-全卵液および全卵液の製造方法 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6661207
(24)【登録日】2020年2月14日
(45)【発行日】2020年3月11日
(54)【発明の名称】全卵液および全卵液の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 15/00 20160101AFI20200227BHJP
   A23B 5/005 20060101ALI20200227BHJP
   A23L 3/00 20060101ALN20200227BHJP
【FI】
   A23L15/00 Z
   A23B5/005
   !A23L3/00
【請求項の数】1
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2019-149909(P2019-149909)
(22)【出願日】2019年8月19日
【審査請求日】2019年8月21日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】598007090
【氏名又は名称】株式会社タカノ
(74)【代理人】
【識別番号】100122426
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 清志
(72)【発明者】
【氏名】高野 敦司
(72)【発明者】
【氏名】舘野 敬次
【審査官】 坂崎 恵美子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−304359(JP,A)
【文献】 特開2012−125230(JP,A)
【文献】 特開平07−289157(JP,A)
【文献】 特許第5934422(JP,B2)
【文献】 特開2002−165583(JP,A)
【文献】 特開2016−202096(JP,A)
【文献】 特開2015−202095(JP,A)
【文献】 特開平10−248532(JP,A)
【文献】 厚生労働省ウェブサイト「食品、添加物等の規格基準」食鳥卵(昭和34年厚生省告示第370号),1959年,URL,http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/iyaku/syoku-anzen/jigyousya/shokuhin_kikaku/dl/07.pdf
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 15/00
A23B 5/005
A23L 3/00
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/WPIDS/FSTA/BIOSIS(STN)
日経テレコン
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホール卵を充填したナイロン袋をボイル殺菌槽に入れ、前記ボイル殺菌槽の設定温度を58.4℃として温度制御を35分間の比例制御とし、
前記ボイル殺菌槽の温度を58.4℃〜58.8℃に維持して、
前記ボイル殺菌槽に並べた複数のナイロンポリ袋に均等に熱が加わるように、お湯を対流させ24分間、前記ホール卵の温度を58.0〜58.6℃で維持させ、
その後、8℃以下でインキュベータ冷却保存する全卵液の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、生卵を使用した調理品に好適な全卵液および全卵液の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、割卵して卵殻から分離されたばかり、または、その後の殺菌処理を特段施していない全卵液は、製造時の環境状態にも左右されるが一般生菌数が10〜10/g、大腸菌群数が10〜10/g程度あり、8℃程度の温度に保管しても2〜3日間しか保存できないことが知られている。
【0003】
上記の事実に対応すべく、卵由来の食中毒菌であるサルモネラ・エンティリティディスが25gあたり陰性であり大腸菌群も1gあたり10未満であると同時に、全卵液が加熱殺菌前に有していた機能の低下が起きていない、新規な加工全卵液(加糖したものを除く)及びその製造方法が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3560910号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の事項は、加工全卵液(加糖したものを除く)に関する加熱殺菌後の特性およびその製造方法を示したものである。
つまり、特許文献1に開示された事項は、当該出願人が審査における意見書でも記載のように、全卵液に関するものではなく、全卵液に加糖を除く何らかの添加物を含む加工全卵液に関するものであり、加熱殺菌後に同等の特性を有する全卵液およびその製造方法については、何ら開示はない。
【0006】
そのため、卵由来の食中毒菌であるサルモネラ・エンティリティディスが25gあたり陰性であり大腸菌群も1gあたり10未満であると同時に、全卵液が加熱殺菌前に有していた機能の低下が起きていない、新規な全卵液及びその製造方法については、添加物の有無に起因する加熱条件等について改善の余地がある。
【0007】
そこで、本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、一般生菌数が減少し、サルモネラ(SE菌)、大腸菌群などの有害細菌も死滅して、かつ、全卵液が加熱殺菌前に有していた機能の低下を起こさない全卵液および全卵液の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
形態1;本発明の1またはそれ以上の実施形態は、サルモネラ(SE菌)数が陰性/25g、大腸菌群が10未満/gであり、卵白に白濁が認められない加熱殺菌前の全卵液と同等の機能性を有する全卵液を提案している。
【0009】
形態2;本発明の1またはそれ以上の実施形態は、全卵液を、58.0〜58.6℃で24分間加熱する全卵液の製造方法を提案している。
【発明の効果】
【0010】
本発明の1またはそれ以上の実施形態によれば、食品衛生法に規定される「食鳥卵の製造基準」にも合致しつつ、一般生菌数が減少し、サルモネラ(SE菌)、大腸菌群などの有害細菌も死滅して、かつ、全卵液が加熱殺菌前に有していた機能の低下を起こさない全卵液を提供および製造できるという効果がある。
【0011】
また、本発明の1またはそれ以上の実施形態における全卵液および全卵液の製造方法によれば、生卵の物性を維持しつつ、調理現場における作業効率の悪化や卵殻の廃棄処理問題、衛生問題を解決することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施例に係るボイル殺菌槽内における全卵液の加熱温度プロファイルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明において、全卵液とは、殻付卵を割卵して、卵殻を除いて得た卵内容物であって、卵白液と卵黄液との混合の比率が前記卵内容物の比率に近い限り、若干異なっても差し支えない。態様としては、例えば割卵したままのもの、割卵後ろ過したもの、卵白液と卵黄液を混合したものなどを挙げることができる。
【0014】
また、本発明において、加熱前の全卵液と同等の機能性とは、加熱殺菌処理の前後において、全卵液の蛋白質の一部に変性がないことをいう。
【0015】
本発明は、生卵を使用した、例えば、カツ丼等の調理品において、市販されている未殺菌の全卵液ロカ(割卵後、ストレーナーを通過させたもの)あるいは殺菌液全卵ロカ(割卵後、ストレーナーを通過させ殺菌したもの)等においては実現できなかったサルモネラ(SE菌)が陰性/25g、大腸菌群が10未満/gであり、卵白に白濁が認められない加熱殺菌前の全卵液と同等の機能性を有し、調理後に卵白のぷりぷり感を実現するものである。
【0016】
上記を実現する製造条件として、本発明においては、全卵液を所定温度で、所定時間加熱する。
【0017】
ここで、所定温度は、58.0〜58.6℃が望ましい。
これは、58.0℃未満であると全卵液に含まれるサルモネラ・エンティリティディスなどの食中毒菌にストレスを与え難く、また、58.6℃を越えると全卵液の蛋白質の一部が変性して機能性が低下するためである。
【0018】
加熱の時間は24分間程度が望ましい。
これは24分を越えると、たとえ58.0℃であっても全卵液の蛋白質の一部に変性が認められるためである。
【0019】
なお、図1は、ボイル殺菌槽内における全卵液の加熱温度プロファイルを示す図である。
【0020】
ボイル殺菌槽の設定温度を58.4℃として温度制御を35分間の比例制御とすると、図1に示すように、24分間、全卵液の加熱温度を58.0〜58.6℃にできることがわかる。
【0021】
以上の製造工程は、従来法に基づき行えば良い。
【0022】
また、全行程終了後の全卵液は、二次的な微生物汚染の無い条件下で容器に充填することが望ましい。
【0023】
容器は密閉可能であればその材質や形態は問わない。
【0024】
一般に、生卵を使用した場合には、割卵作業の手間、割卵作業による作業効率の悪化、卵殻の廃棄処理、サルモネラ(SE菌)等の衛生問題等が課題となる。
しかしながら、本発明の全卵液および全卵液の製造方法によれば、生卵の物性を維持しつつ、調理現場における作業効率の悪化や卵殻の廃棄処理問題、衛生問題を解決することができる。
【0025】
以下、本発明の実施例と試験例について、説明する。
【実施例1】
【0026】
以下の工程では、ボイル殺菌槽(菱熱工業株式会社製)を用いて実施した。
鶏卵を割卵し、ホール卵を潰さないように、微生物による2次汚染のない環境下でナイロンポリ袋に充填した。
【0027】
ホール卵を充填したナイロンポリ袋をボイル殺菌槽に入れ、ボイル殺菌槽の設定温度を58.4℃、35分間とする。
【0028】
ボイル殺菌槽の温度を58.4℃〜58.8℃に維持し、ボイル殺菌槽に並べた複数のナイロンポリ袋に均等に熱が加わるように、お湯を対流させ24分間、加熱処理を行い、ホール卵の温度を58.0〜58.6℃で維持させ、その後、8℃以下でインキュベータ冷却保存した。
【0029】
この全卵液は、一般生菌数が10未満/gで、大腸菌群および大腸菌がともに陰性で、サルモネラ(SE菌)数が陰性/25gであり、卵白に白濁が認められない加熱殺菌前の全卵液と同等の機能性を有していることが確認された。
【0030】
<サンプル1(発明品)>
鶏卵を割卵して得られた全卵液(一般性菌数104/g)に有害細菌の指標菌としてサルモネラ・エンティリティディス10レベルを卵黄に接種し、3日間保存した全液卵(サンプル全卵液1)、サルモネラ・エンティリティディス105レベルを全体に接種し、7日間保存した全液卵(サンプル全卵液2)を作成した。
【0031】
上記菌を添加した全卵液を実施例1と同様の方法および装置で加熱して検証を行った。
このサンプルでの検証結果を以下、表1に示す。
【0032】
【表1】
NT;ノートライ
【0033】
なお、本サンプルでは、卵白が白濁する現象は観察されなかった。
【0034】
<サンプル2>
鶏卵を割卵して得られた全卵液(一般性菌数104/g)に有害細菌の指標菌としてサルモネラ・エンティリティディス106レベルを全体に接種し、3日間保存した全液卵(サンプル全卵液3)、サルモネラ・エンティリティディス105レベルを全体に接種し、7日間保存した全液卵(サンプル全卵液4)を作成した。
【0035】
上記作成したホール卵(全卵液)を充填したナイロンポリ袋をボイル殺菌槽に入れ、設定温度を57.7℃、35分間とする。
【0036】
ボイル殺菌槽の温度を57.7℃〜58.1℃に維持し、ボイル殺菌槽に並べた複数のナイロンポリ袋に均等に熱が加わるように、お湯を対流させ24分間、加熱処理を行い、ホール卵の温度を57.3〜57.9℃で維持させ、その後、8℃以下でインキュベータ冷却保存した。
このサンプルでの検証結果を以下、表2に示す。
【0037】
【表2】
【0038】
なお、本サンプルでは、卵白が白濁する現象は観察されなかった。
【0039】
<サンプル3>
鶏卵を割卵して得られた全卵液(一般性菌数104/g)に有害細菌の指標菌としてサルモネラ・エンティリティディス106レベルを全体に接種し、3日間保存した全液卵(サンプル全卵液5)、サルモネラ・エンティリティディス105レベルを全体に接種し、7日間保存した全液卵(サンプル全卵液6)を作成した。
【0040】
上記作成したホール卵(全卵液)を充填したナイロンポリ袋をボイル殺菌槽に入れ、設定温度を59.1℃、35分間とする。
【0041】
ボイル殺菌槽の温度を59.1℃〜59.4℃に維持し、ボイル殺菌槽に並べた複数のナイロンポリ袋に均等に熱が加わるように、お湯を対流させ24分間、加熱処理を行い、ホール卵の温度を58.7〜59.3℃で維持させ、その後、8℃以下でインキュベータ冷却保存した。
このサンプルでの検証結果を以下、表3に示す。
【0042】
【表3】
【0043】
但し、本サンプルでは、卵白が白濁する現象が観察された。
【0044】
<サンプル4>
鶏卵を割卵して得られた全卵液(一般性菌数104/g)に有害細菌の指標菌として大腸菌群105ベルを全体に接種し、3日間保存した全液卵(サンプル全卵液7)を作成した。
【0045】
上記菌を添加した全卵液を実施例1と同様の方法および装置で加熱して検証を行った。
このサンプルでの検証結果を以下、表4に示す。
【0046】
【表4】
【0047】
なお、本サンプルでは、卵白が白濁する現象は観察されなかった。
【0048】
<試験結果>
試験結果のまとめを下記表5に示す。
なお、各サンプルの一般生菌数、大腸菌群、大腸菌、サルモネラ(SE菌)については、相対的に結果が良くなかったサンプル全卵液1、サンプル全卵液3、サンプル全卵液5、サンプル全卵液7の結果を示した。
【0049】
下記表5に示すように、サンプル1(発明品)では、一般性菌数が減少しており、サルモネラ(SE菌)数が陰性/25g、大腸菌群が10/gであり、加熱殺菌前の全卵液と同等の機能性を有しており、卵白の白濁も見られず、極めて良好な結果であった。
【0050】
サンプル2では、一般生菌数は減少しているものの、他のサンプルに比べて残存数が多く、サルモネラ(SE菌)も残存しているが、卵白の白濁は見られなかった。
【0051】
つまり、ホール卵の温度が57.9℃以下の温度では、少なくとも一般生菌数およびサルモネラ(SE菌)数を食品衛生法に定めるレベルまで減少させるには不十分であることが認められる。
【0052】
そのため、一般生菌数、サルモネラ(SE菌)数を食品衛生法に定めるレベルまで減少させるためのホール卵の温度は、57.9℃よりも高い温度が適切であることが認められる。
【0053】
サンプル3では、一般生菌数は減少し、サルモネラ(SE菌)の残存も認められなかったが、卵白の白濁が確認された。
【0054】
そのため、一般生菌数、サルモネラ(SE菌)数を食品衛生法に定めるレベルまで減少させ、かつ、卵白の白濁が見られないホール卵の温度は、58.7℃よりも低い温度が適切であることが認められる。
【0055】
サンプル4では、一般生菌数、大腸菌群がともに食品衛生法に定めるレベルまで減少し、卵白の白濁も確認されなかった。
【0056】
この結果と、サンプル1(発明品)の結果とから、設定温度を58.4℃、35分間とすること、ボイル殺菌槽の温度を58.4℃〜58.8℃に維持すること、ホール卵の温度を24分間、58.0〜58.6℃で維持することの妥当性が確認された。
【0057】
【表5】
【0058】
なお、細菌数は、サンプル1gあたりの個数で表示した。
【0059】
大腸菌群の<10は、1gあたり10個未満を表す。
【0060】
一般生菌数の測定は、標準寒天培地で検出した。
【0061】
サルモネラ(SE菌)数の測定は、イムノクロマト法で判定した。
【0062】
大腸菌群数の測定は、XM−G培地で検出した。
【0063】
以上述べたように、本発明によると、一般生菌数が減少していると同時に、サルモネラ(SE菌)、大腸菌群、大腸菌などの有害細菌も死滅しており、かつ、全卵液が加熱殺菌前に有していた機能の低下が起こらない例えば、生卵を使用した調理品に好適な全卵液および全卵液の製造方法を提供することができる。
また、本発明の全卵液および全卵液の製造方法は、食品衛生法に規定される「食鳥卵の製造基準」にも合致するものである。
【要約】
【課題】一般生菌数が減少し、サルモネラ(SE菌)、大腸菌群などの有害細菌も死滅して、かつ、全卵液が加熱殺菌前に有していた機能の低下を起こさない全卵液および全卵液の製造方法を提供する。
【解決手段】全卵液を、58.0〜58.6℃で24分間加熱する。
【選択図】図1
図1