特許第6661215号(P6661215)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6661215
(24)【登録日】2020年2月14日
(45)【発行日】2020年3月11日
(54)【発明の名称】位置検出装置およびカメラモジュール
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/245 20060101AFI20200227BHJP
   G01D 5/16 20060101ALI20200227BHJP
   G01R 33/02 20060101ALI20200227BHJP
   G01R 33/09 20060101ALI20200227BHJP
   G01B 7/00 20060101ALI20200227BHJP
   H01L 43/08 20060101ALI20200227BHJP
   G02B 7/04 20060101ALI20200227BHJP
   G03B 5/00 20060101ALI20200227BHJP
【FI】
   G01D5/245 110B
   G01D5/16 M
   G01R33/02 L
   G01R33/09
   G01B7/00 102M
   H01L43/08 Z
   G02B7/04 E
   G03B5/00 A
【請求項の数】10
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2017-210918(P2017-210918)
(22)【出願日】2017年10月31日
(65)【公開番号】特開2019-82445(P2019-82445A)
(43)【公開日】2019年5月30日
【審査請求日】2018年9月18日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002907
【氏名又は名称】特許業務法人イトーシン国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100166257
【弁理士】
【氏名又は名称】城澤 達哉
(74)【代理人】
【識別番号】100076233
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 進
(72)【発明者】
【氏名】内田 圭祐
(72)【発明者】
【氏名】梅原 剛
(72)【発明者】
【氏名】須藤 俊英
(72)【発明者】
【氏名】平林 啓
【審査官】 吉田 久
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−208252(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2016/0231528(US,A1)
【文献】 国際公開第2016/017490(WO,A1)
【文献】 特開2007−218700(JP,A)
【文献】 特開2010−197399(JP,A)
【文献】 特開2016−102751(JP,A)
【文献】 特開2008−209311(JP,A)
【文献】 特開平11−97765(JP,A)
【文献】 特開2009−133751(JP,A)
【文献】 特開2015−190880(JP,A)
【文献】 特開2007−101252(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/00−5/252
G01B 7/00−7/34
G01R 33/00−33/18
G02B 7/02−7/16
G03B 5/00−5/08
H01L 43/00−43/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の磁界を発生する第1の磁界発生部と、
前記第1の磁界発生部に対する相対的な位置が変化可能に設けられ、第2の磁界を発生する第2の磁界発生部と、
基準平面内の検出位置における検出対象磁界の方向に対応した検出信号を生成する磁気センサとを備えた位置検出装置であって、
前記磁気センサは、少なくとも1つの磁気抵抗効果素子を含み、
前記少なくとも1つの磁気抵抗効果素子は、方向が固定された磁化を有する磁化固定層と、前記検出対象磁界の方向に応じて方向が変化可能な磁化を有する自由層とを含み、
前記基準平面は、前記磁化固定層の磁化の方向および前記検出対象磁界の方向を含む平面であり、
前記検出位置における、前記基準平面に平行な前記第1の磁界の成分を第1の磁界成分とし、前記検出位置における、前記基準平面に平行な前記第2の磁界の成分を第2の磁界成分としたときに、前記第1の磁界発生部に対する前記第2の磁界発生部の相対的な位置が変化すると、前記第1の磁界成分の強度および方向と前記第2の磁界成分の方向は変化しないが、前記第2の磁界成分の強度は変化し、
前記検出対象磁界は、前記第1の磁界成分と前記第2の磁界成分との合成磁界であり、
前記基準平面内において、前記磁化固定層の磁化の方向に直交する2方向の各々は、前記第1の磁界成分の方向と前記第2の磁界成分の方向のいずれとも異なり、
前記第2の磁界成分の方向は、前記第1の磁界成分の方向に直交し
前記磁化固定層の磁化の方向に直交する2方向のうちの一方は、前記第1の磁界発生部に対する前記第2の磁界発生部の相対的な位置の可動範囲に対応する前記検出対象磁界の方向の可変範囲に含まれていることを特徴とする位置検出装置。
【請求項2】
前記第1の磁界発生部に対する前記第2の磁界発生部の相対的な位置の変化により、前記検出位置と前記第2の磁界発生部との間の距離が変化することを特徴とする請求項1記載の位置検出装置。
【請求項3】
前記磁化固定層の磁化の方向に直交する2方向のうちの一方は、前記検出対象磁界の方向の可変範囲の中間の方向と同じ方向であることを特徴とする請求項1または2記載の位置検出装置。
【請求項4】
前記第1の磁界発生部に対する前記第2の磁界発生部の相対的な位置が、前記第1の磁界発生部に対する前記第2の磁界発生部の相対的な位置の可動範囲の中間位置であるときに、前記検出対象磁界の方向は、前記磁化固定層の磁化の方向に直交する2方向のうちの一方と同じ方向であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の位置検出装置。
【請求項5】
前記少なくとも1つの磁気抵抗効果素子は、少なくとも1つの第1の磁気抵抗効果素子と、少なくとも1つの第2の磁気抵抗効果素子であり、
前記磁気センサは、更に、所定の電圧が印加される電源ポートと、グランドに接続されるグランドポートと、出力ポートとを含み、
前記少なくとも1つの第1の磁気抵抗効果素子は、前記電源ポートと前記出力ポートの間に設けられ、
前記少なくとも1つの第2の磁気抵抗効果素子は、前記出力ポートと前記グランドポートの間に設けられ、
前記少なくとも1つの第1の磁気抵抗効果素子の前記磁化固定層の磁化の方向は、第1の方向であり、
前記少なくとも1つの第2の磁気抵抗効果素子の前記磁化固定層の磁化の方向は、前記第1の方向とは反対の第2の方向であり、
前記検出信号は、前記出力ポートの電位に依存することを特徴とする請求項1ないしのいずれかに記載の位置検出装置。
【請求項6】
前記少なくとも1つの磁気抵抗効果素子は、少なくとも1つの第1の磁気抵抗効果素子と、少なくとも1つの第2の磁気抵抗効果素子と、少なくとも1つの第3の磁気抵抗効果素子と、少なくとも1つの第4の磁気抵抗効果素子であり、
前記磁気センサは、更に、所定の電圧が印加される電源ポートと、グランドに接続されるグランドポートと、第1の出力ポートと、第2の出力ポートとを含み、
前記少なくとも1つの第1の磁気抵抗効果素子は、前記電源ポートと前記第1の出力ポートの間に設けられ、
前記少なくとも1つの第2の磁気抵抗効果素子は、前記第1の出力ポートと前記グランドポートの間に設けられ、
前記少なくとも1つの第3の磁気抵抗効果素子は、前記電源ポートと前記第2の出力ポートの間に設けられ、
前記少なくとも1つの第4の磁気抵抗効果素子は、前記第2の出力ポートと前記グランドポートの間に設けられ、
前記少なくとも1つの第1の磁気抵抗効果素子の前記磁化固定層の磁化の方向と、前記少なくとも1つの第4の磁気抵抗効果素子の前記磁化固定層の磁化の方向は、第1の方向であり、
前記少なくとも1つの第2の磁気抵抗効果素子の前記磁化固定層の磁化の方向と、前記少なくとも1つの第3の磁気抵抗効果素子の前記磁化固定層の磁化の方向は、前記第1の方向とは反対の第2の方向であり、
前記検出信号は、前記第1の出力ポートと前記第2の出力ポートの電位差に依存することを特徴とする請求項1ないしのいずれかに記載の位置検出装置。
【請求項7】
前記第1の磁界発生部は、互いに異なる位置に配置された2つの磁石を有し、
前記第1の磁界は、前記2つの磁石がそれぞれ発生する2つの磁界が合成されたものであることを特徴とする請求項1ないしのいずれかに記載の位置検出装置。
【請求項8】
更に、前記第1の磁界発生部を保持する第1の保持部材と、前記第1の保持部材に対して一方向に位置変更可能に設けられ、前記第2の磁界発生部を保持する第2の保持部材とを備えたことを特徴とする請求項1ないしのいずれかに記載の位置検出装置。
【請求項9】
前記第2の保持部材は、レンズを保持するものであり、且つ前記第1の保持部材に対して前記レンズの光軸方向に位置変更可能に設けられていることを特徴とする請求項記載の位置検出装置。
【請求項10】
請求項9記載の位置検出装置と、
前記レンズと、
前記第2の保持部材を移動させる駆動装置とを備えたことを特徴とするカメラモジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気センサおよびこれを用いた位置検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、種々の用途で、磁気センサを用いた位置検出装置が利用されている。以下、磁気センサを用いた位置検出装置を、磁気式の位置検出装置と言う。磁気式の位置検出装置は、例えば、スマートフォンに内蔵された、オートフォーカス機構を備えたカメラモジュールにおいて、レンズの位置を検出するために用いられている。
【0003】
特許文献1には、レンズが基板に対して移動可能に設けられたオートフォーカス機構において、第1の方向の一定の大きさの第1の磁界と、レンズと共に移動する磁石によって生成された第2の方向の第2の磁界との相互作用によって生じる合成ベクトルを位置センサによって検出する技術が記載されている。第2の方向は、第1の方向に対して直交している。この技術では、レンズの位置に応じて第2の磁界の大きさが変化し、その結果、合成ベクトルが第2の方向に対してなす角度(以下、合成ベクトルの角度と言う。)も変化する。
【0004】
特許文献2には、スピンバルブ構造の磁気抵抗効果素子を用いた磁界検出装置であって、バイアス磁界を磁気抵抗効果素子に印加し、磁気抵抗効果素子の外部磁界に対する抵抗値の特性を変化させるバイアス部を備えた磁界検出装置が記載されている。
【0005】
特許文献3には、矩形状の基板と、基板上に形成され、互いに接続される第1および第2の磁気抵抗効果素子とを備え、第1の磁気抵抗効果素子の電流経路は、基板の辺に対して所定の角度を有する第1の方向に形成され、第2の磁気抵抗効果素子の電流経路は、第1の方向に直交する第2の方向に形成された磁気センサが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許出願公開第2016/0231528号明細書
【特許文献2】特開2007−64813号公報
【特許文献3】特開2016−223894号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載された技術によれば、合成ベクトルの角度を検出することによって、レンズの位置を検出することができる。
【0008】
ところで、特許文献2に記載されているように、スピンバルブ構造の磁気抵抗効果素子では、磁気抵抗効果素子の線形領域を用いないと、正確に磁界を検出することができない。ここで、磁気抵抗効果素子の線形領域とは、磁気抵抗効果素子に対する印加磁界と磁気抵抗効果素子の抵抗値の関係を表す特性図において、印加磁界の変化に対して磁気抵抗効果素子の抵抗値が直線的またはほぼ直線的に変化する領域である。特許文献2には、バイアス磁界を磁気抵抗効果素子に印加することによって、磁気抵抗効果素子の外部磁界に対する抵抗値の特性を変化させる技術が記載されている。
【0009】
ここで、特許文献1に記載されているような、合成ベクトルの角度を検出することによってレンズ等の対象物の位置を検出する位置検出装置であって、合成ベクトルの角度を、磁気抵抗効果素子を用いた磁気センサによって検出する位置検出装置を考える。この位置検出装置では、対象物の可動範囲に応じて合成ベクトルの角度の可変範囲が決まる。従来、この合成ベクトルの角度の可変範囲において、磁気抵抗効果素子を用いた磁気センサの検出精度を高めることは考慮されていなかった。
【0010】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、磁気センサを用いた位置検出装置であって、精度の高い位置検出を行うことができるようにした位置検出装置、ならびにこの位置検出装置に適した磁気センサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の位置検出装置は、第1の磁界を発生する第1の磁界発生部と、第1の磁界発生部に対する相対的な位置が変化可能に設けられ、第2の磁界を発生する第2の磁界発生部と、基準平面内の検出位置における検出対象磁界の方向に対応した検出信号を生成する磁気センサとを備えている。
【0012】
磁気センサは、少なくとも1つの磁気抵抗効果素子を含んでいる。少なくとも1つの磁気抵抗効果素子は、方向が固定された磁化を有する磁化固定層と、検出対象磁界の方向に応じて方向が変化可能な磁化を有する自由層とを含んでいる。基準平面は、磁化固定層の磁化の方向および検出対象磁界の方向を含む平面である。
【0013】
検出位置における、基準平面に平行な第1の磁界の成分を第1の磁界成分とし、検出位置における、基準平面に平行な第2の磁界の成分を第2の磁界成分としたときに、第1の磁界発生部に対する第2の磁界発生部の相対的な位置が変化すると、第1の磁界成分の強度および方向と第2の磁界成分の方向は変化しないが、第2の磁界成分の強度は変化する。検出対象磁界は、第1の磁界成分と第2の磁界成分との合成磁界である。基準平面内において、磁化固定層の磁化の方向に直交する2方向の各々は、第1の磁界成分の方向と第2の磁界成分の方向のいずれとも異なる。
【0014】
本発明の位置検出装置において、第2の磁界成分の方向は、第1の磁界成分の方向に直交していてもよい。
【0015】
また、本発明の位置検出装置において、第1の磁界発生部に対する第2の磁界発生部の相対的な位置の変化により、検出位置と第2の磁界発生部との間の距離が変化してもよい。
【0016】
また、本発明の位置検出装置において、磁化固定層の磁化の方向に直交する2方向のうちの一方は、第1の磁界発生部に対する第2の磁界発生部の相対的な位置の可動範囲に対応する検出対象磁界の方向の可変範囲に含まれていてもよい。この場合、磁化固定層の磁化の方向に直交する2方向のうちの一方は、検出対象磁界の方向の可変範囲の中間の方向と同じ方向であってもよい。また、第1の磁界発生部に対する第2の磁界発生部の相対的な位置が、第1の磁界発生部に対する第2の磁界発生部の相対的な位置の可動範囲の中間位置であるときに、検出対象磁界の方向は、磁化固定層の磁化の方向に直交する2方向のうちの一方と同じ方向であってもよい。
【0017】
また、本発明の位置検出装置において、第1の磁界発生部は、互いに異なる位置に配置された2つの磁石を有していてもよい。この場合、第1の磁界は、2つの磁石がそれぞれ発生する2つの磁界が合成されたものであってもよい。
【0018】
また、本発明の位置検出装置は、更に、第1の磁界発生部を保持する第1の保持部材と、第1の保持部材に対して一方向に位置変更可能に設けられ、第2の磁界発生部を保持する第2の保持部材とを備えていてもよい。この場合、第2の保持部材は、レンズを保持するものであり、且つ第1の保持部材に対してレンズの光軸方向に位置変更可能に設けられていてもよい。
【0019】
本発明の磁気センサは、基準平面内の検出位置において、基準平面内において180°未満の可変範囲内で変化する検出対象磁界の方向に対応した検出信号を生成するものである。本発明の磁気センサは、少なくとも1つの磁気抵抗効果素子を備えている。少なくとも1つの磁気抵抗効果素子は、方向が固定された磁化を有する磁化固定層と、検出対象磁界の方向に応じて方向が変化可能な磁化を有する自由層とを含んでいる。基準平面は、磁化固定層の磁化の方向および検出対象磁界の方向を含む平面である。磁化固定層の磁化の方向に直交する2方向のうちの一方は、検出対象磁界の方向の可変範囲に含まれている。
【0020】
本発明の磁気センサにおいて、磁化固定層の磁化の方向に直交する2方向のうちの一方は、検出対象磁界の方向の可変範囲の中間の方向と同じ方向であってもよい。また、検出対象磁界の方向の可変範囲は、90°未満であってもよい。
【0021】
また、本発明の位置検出装置および磁気センサにおいて、少なくとも1つの磁気抵抗効果素子は、少なくとも1つの第1の磁気抵抗効果素子と、少なくとも1つの第2の磁気抵抗効果素子であってもよい。また、磁気センサは、更に、所定の電圧が印加される電源ポートと、グランドに接続されるグランドポートと、出力ポートとを含んでいてもよい。この場合、少なくとも1つの第1の磁気抵抗効果素子は、電源ポートと出力ポートの間に設けられている。また、少なくとも1つの第2の磁気抵抗効果素子は、出力ポートとグランドポートの間に設けられている。また、少なくとも1つの第1の磁気抵抗効果素子の磁化固定層の磁化の方向は、第1の方向であり、少なくとも1つの第2の磁気抵抗効果素子の磁化固定層の磁化の方向は、第1の方向とは反対の第2の方向である。検出信号は、出力ポートの電位に依存する。
【0022】
また、本発明の位置検出装置および磁気センサにおいて、少なくとも1つの磁気抵抗効果素子は、少なくとも1つの第1の磁気抵抗効果素子と、少なくとも1つの第2の磁気抵抗効果素子と、少なくとも1つの第3の磁気抵抗効果素子と、少なくとも1つの第4の磁気抵抗効果素子であってもよい。また、磁気センサは、更に、所定の電圧が印加される電源ポートと、グランドに接続されるグランドポートと、第1の出力ポートと、第2の出力ポートとを含んでいてもよい。この場合、少なくとも1つの第1の磁気抵抗効果素子は、電源ポートと第1の出力ポートの間に設けられている。少なくとも1つの第2の磁気抵抗効果素子は、第1の出力ポートとグランドポートの間に設けられている。少なくとも1つの第3の磁気抵抗効果素子は、電源ポートと第2の出力ポートの間に設けられている。少なくとも1つの第4の磁気抵抗効果素子は、第2の出力ポートとグランドポートの間に設けられている。
【0023】
少なくとも1つの第1の磁気抵抗効果素子の磁化固定層の磁化の方向と、少なくとも1つの第4の磁気抵抗効果素子の磁化固定層の磁化の方向は、第1の方向である。少なくとも1つの第2の磁気抵抗効果素子の磁化固定層の磁化の方向と、少なくとも1つの第3の磁気抵抗効果素子の磁化固定層の磁化の方向は、第1の方向とは反対の第2の方向である。検出信号は、第1の出力ポートと第2の出力ポートの電位差に依存する。
【発明の効果】
【0024】
本発明の位置検出装置において、検出対象磁界の方向は、第1の磁界成分の方向と第2の磁界成分の方向のいずれとも異なり、これらの間の方向である。また、本発明の位置検出装置では、基準平面内において、磁化固定層の磁化の方向に直交する2方向の各々は、第1の磁界成分の方向と第2の磁界成分の方向のいずれとも異なる。これらのことから、本発明の位置検出装置では、磁化固定層の磁化の方向に直交する2方向のうちの一方を、検出対象磁界の方向の可変範囲に近づけたり含めたりすることが可能である。これにより、本発明の位置検出装置によれば、検出対象磁界の方向の可変範囲内において、少なくとも1つの磁気抵抗効果素子の検出精度を高めることが可能になり、その結果、精度の高い位置検出を行うことが可能になるという効果を奏する。
【0025】
また、本発明の磁気センサでは、磁化固定層の磁化の方向に直交する2方向のうちの一方は、180°未満の検出対象磁界の方向の可変範囲に含まれている。これにより、本発明の磁気センサによれば、検出対象磁界の方向を精度よく検出することが可能になるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の一実施の形態に係る位置検出装置を含むカメラモジュールを示す斜視図である。
図2図1に示したカメラモジュールの内部を模式的に示す説明図である。
図3】本発明の一実施の形態に係る位置検出装置と駆動装置を示す斜視図である。
図4図1における駆動装置の複数のコイルを示す斜視図である。
図5図1における駆動装置の要部を示す側面図である。
図6】本発明の一実施の形態に係る位置検出装置の要部を示す斜視図である。
図7】本発明の一実施の形態における磁気センサの構成を示す回路図である。
図8図7における1つの抵抗部の一部を示す斜視図である。
図9】本発明の一実施の形態における磁化固定層の磁化の方向と第1および第2の磁界成分の方向を示す説明図である。
図10】本発明の一実施の形態における相対位置と対象角度との関係を示す特性図である。
図11】比較例における磁化固定層の磁化の方向と第1および第2の磁界成分の方向を示す説明図である。
図12】比較例における印加磁界角度と規格化検出信号との関係を示す特性図である。
図13】比較例における温度の変化に伴う規格化検出信号の変化を説明するための特性図である。
図14】本発明の一実施の形態における印加磁界角度と規格化検出信号との関係を示す特性図である。
図15】本発明の一実施の形態における温度の変化に伴う規格化検出信号の変化を説明するための特性図である。
図16】本発明の一実施の形態における直線性パラメータについて説明するための説明図である。
図17】比較例における相対位置および対象角度と規格化検出信号との関係を示す特性図である。
図18】比較例における相対位置および対象角度と直線性パラメータとの関係を示す特性図である。
図19】本発明の一実施の形態における相対位置および対象角度と規格化検出信号との関係を示す特性図である。
図20】本発明の一実施の形態における相対位置および対象角度と直線性パラメータとの関係を示す特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。始めに、図1および図2を参照して、本発明の一実施の形態に係る位置検出装置を含むカメラモジュールの構成について説明する。図1は、カメラモジュール100を示す斜視図である。図2は、カメラモジュール100の内部を模式的に示す説明図である。なお、図2では、理解を容易にするために、カメラモジュール100の各部を、図1における対応する各部とは異なる寸法および配置で描いている。カメラモジュール100は、例えば、光学式手振れ補正機構とオートフォーカス機構とを備えたスマートフォン用のカメラの一部を構成するものであり、CMOS等を用いたイメージセンサ200と組み合わせて用いられる。
【0028】
カメラモジュール100は、本実施の形態に係る位置検出装置1と、駆動装置3と、レンズ5と、筐体6と、基板7とを備えている。本実施の形態に係る位置検出装置1は、磁気式の位置検出装置であり、自動的に焦点合わせを行う際にレンズ5の位置を検出するために用いられる。駆動装置3は、レンズ5を移動させるものである。筐体6は、位置検出装置1と駆動装置3を保護するものである。基板7は、上面7aを有している。なお、図1では基板7を省略し、図2では筐体6を省略している。
【0029】
ここで、図1および図2に示したように、U方向、V方向、Z方向を定義する。U方向、V方向、Z方向は、互いに直交する。本実施の形態では、基板7の上面7aに垂直な一方向(図2では上側に向かう方向)をZ方向とする。U方向とV方向は、いずれも、基板7の上面7aに対して平行な方向である。また、U方向とは反対の方向を−U方向とし、V方向とは反対の方向を−V方向とし、Z方向とは反対の方向を−Z方向とする。また、以下、基準の位置に対してZ方向の先にある位置を「上方」と言い、基準の位置に対して「上方」とは反対側にある位置を「下方」と言う。
【0030】
レンズ5は、その光軸方向がZ方向に平行な方向に一致するような姿勢で、基板7の上面7aの上方に配置されている。また、基板7は、レンズ5を通過した光を通過させる図示しない開口部を有している。図2に示したように、カメラモジュール100は、レンズ5および図示しない開口部を通過した光がイメージセンサ200に入射されるように、イメージセンサ200に対して位置合わせされている。
【0031】
次に、図2ないし図5を参照して、本実施の形態に係る位置検出装置1と駆動装置3について詳しく説明する。図3は、位置検出装置1と駆動装置3を示す斜視図である。図4は、駆動装置3の複数のコイルを示す斜視図である。図5は、駆動装置3の要部を示す側面図である。
【0032】
位置検出装置1は、第1の保持部材14と、第2の保持部材15と、複数の第1のワイヤ16と、複数の第2のワイヤ17とを備えている。第2の保持部材15は、レンズ5を保持するものである。図示しないが、第2の保持部材15は、例えば、その内部にレンズ5を装着できるように構成された筒状の形状を有している。
【0033】
第2の保持部材15は、第1の保持部材14に対して一方向、具体的にはレンズ5の光軸方向すなわちZ方向に平行な方向に位置変更可能に設けられている。本実施の形態では、第1の保持部材14は、その内部にレンズ5と第2の保持部材15を収容できるように構成された箱状の形状を有している。複数の第2のワイヤ17は、第1の保持部材14と第2の保持部材15とを接続し、第2の保持部材15が第1の保持部材14に対してZ方向に平行な方向に移動できるように、第2の保持部材15を支持している。
【0034】
第1の保持部材14は、基板7の上面7aの上方において、基板7に対してU方向に平行な方向とV方向に平行な方向に位置変更可能に設けられている。複数の第1のワイヤ16は、基板7と第1の保持部材14とを接続し、第1の保持部材14が基板7に対してU方向に平行な方向とV方向に平行な方向に移動できるように、第1の保持部材14を支持している。基板7に対する第1の保持部材14の相対的な位置が変化すると、基板7に対する第2の保持部材15の相対的な位置も変化する。
【0035】
駆動装置3は、磁石31A,31B,32A,32B,33A,33B,34A,34Bと、コイル41,42,43,44,45,46を備えている。磁石31Aは、レンズ5の−V方向の先に配置されている。磁石32Aは、レンズ5のV方向の先に配置されている。磁石33Aは、レンズ5の−U方向の先に配置されている。磁石34Aは、レンズ5のU方向の先に配置されている。磁石31B,32B,33B,34Bは、それぞれ、磁石31A,32A,33A,34Aの上方に配置されている。また、磁石31A,31B,32A,32B,33A,33B,34A,34Bは、第1の保持部材14に固定されている。
【0036】
図3に示したように、磁石31A,31B,32A,32Bは、それぞれU方向に長い直方体形状を有している。磁石33A,33B,34A,34Bは、それぞれV方向に長い直方体形状を有している。磁石31A,32Bの磁化の方向は、V方向である。磁石31B,32Aの磁化の方向は、−V方向である。磁石33A,34Bの磁化の方向は、U方向である。磁石33B,34Aの磁化の方向は、−U方向である。図5において、磁石31A,31B内に描かれた矢印は、磁石31A,31Bの磁化の方向を表している。
【0037】
コイル41は、磁石31Aと基板7の間に配置されている。コイル42は、磁石32Aと基板7との間に配置されている。コイル43は、磁石33Aと基板7との間に配置されている。コイル44は、磁石34Aと基板7との間に配置されている。コイル45は、磁石31A,31Bとレンズ5との間に配置されている。コイル46は、磁石32A,32Bとレンズ5との間に配置されている。また、コイル41,42,43,44は、基板7に固定されている。コイル45,46は、第2の保持部材15に固定されている。
【0038】
コイル41には、主に、磁石31Aから発生される磁界が印加される。コイル42には、主に、磁石32Aから発生される磁界が印加される。コイル43には、主に、磁石33Aから発生される磁界が印加される。コイル44には、主に、磁石34Aから発生される磁界が印加される。
【0039】
また、図2図4および図5に示したように、コイル45は、磁石31Aに沿ってU方向に延びる第1の導体部45Aと、磁石31Bに沿ってU方向に延びる第2の導体部45Bと、第1および第2の導体部45A,45Bを接続する2つの第3の導体部とを含んでいる。また、図2および図4に示したように、コイル46は、磁石32Aに沿ってU方向に延びる第1の導体部46Aと、磁石32Bに沿ってU方向に延びる第2の導体部46Bと、第1および第2の導体部46A,46Bを接続する2つの第3の導体部とを含んでいる。
【0040】
コイル45の第1の導体部45Aには、主に、磁石31Aから発生される磁界のV方向の成分が印加される。コイル45の第2の導体部45Bには、主に、磁石31Bから発生される磁界の−V方向の成分が印加される。コイル46の第1の導体部46Aには、主に、磁石32Aから発生される磁界の−V方向の成分が印加される。コイル46の第2の導体部46Bには、主に、磁石32Bから発生される磁界のV方向の成分が印加される。
【0041】
位置検出装置1は、更に、第1の磁界を発生する第1の磁界発生部11と、第2の磁界を発生する第2の磁界発生部12と、磁気センサ20とを備えている。本実施の形態では、第1の磁界発生部11は、互いに異なる位置に配置された2つの磁石を有している。本実施の形態では特に、第1の磁界発生部11は、上記2つの磁石として、磁石31A,34Aを有している。第1の磁界は、磁石31A,34Aがそれぞれ発生する磁界が合成されたものである。前述のように、磁石31A,34Aは、第1の保持部材14に固定されている。従って、第1の磁界発生部11は、第1の保持部材14によって保持されている。
【0042】
図3に示したように、磁石31Aは、磁石31AのU方向の端に位置する端面31A1を有している。磁石34Aは、磁石34Aの−V方向の端に位置する端面34A1を有している。
【0043】
第2の磁界発生部12は、第1の磁界発生部11に対する相対的な位置が変化可能に設けられている。本実施の形態では、第2の磁界発生部12は、磁石13を有している。第2の磁界は、磁石13が発生する磁界である。磁石13は、直方体形状を有している。また、磁石13は、磁石31Aの端面31A1および磁石34Aの端面34A1の近傍の空間において、第2の保持部材15に固定されている。これにより、第2の磁界発生部12は、第2の保持部材15によって保持されている。第1の保持部材14に対する第2の保持部材15の相対的な位置がZ方向に平行な方向に変化すると、第1の磁界発生部11に対する第2の磁界発生部12の相対的な位置もZ方向に平行な方向に変化する。
【0044】
磁気センサ20は、少なくとも1つの磁気抵抗効果素子を含んでいる。以下、磁気抵抗効果素子をMR素子と記す。磁気センサ20は、基準平面内の検出位置における検出対象磁界を検出し、検出対象磁界の方向に対応した検出信号を生成する。以下、検出対象磁界を対象磁界MFと言う。磁気センサ20は、磁石31Aの端面31A1と磁石34Aの端面34A1の近傍において基板7に固定されている。磁石31Aから磁気センサ20までの距離と、磁石34Aから磁気センサ20までの距離は、互いに等しい。磁石13は、磁気センサ20の上方に配置されている。
【0045】
検出位置は、磁気センサ20が第1の磁界と第2の磁界を検出する位置である。本実施の形態では、基準平面は、検出位置を含み、Z方向に垂直な平面である。第1の磁界発生部11に対する第2の磁界発生部12の相対的な位置が変化すると、検出位置と第2の磁界発生部12との間の距離が変化する。
【0046】
ここで、検出位置における、基準平面に平行な第1の磁界の成分を第1の磁界成分MF1とし、検出位置における、基準平面に平行な第2の磁界の成分を第2の磁界成分MF2とする。対象磁界MFは、第1の磁界成分MF1と第2の磁界成分MF2との合成磁界である。なお、第1および第2の磁界成分MF1,MF2と対象磁界MFは、後で説明する図6および図9に示されている。
【0047】
第1の磁界発生部11、第2の磁界発生部12および磁気センサ20の位置関係と、磁気センサ20の構成については、後で更に詳しく説明する。
【0048】
駆動装置3は、更に、コイル41,42の一方の内側において基板7に固定された磁気センサ30と、コイル43,44の一方の内側において基板7に固定された磁気センサ30を備えている。ここでは、2つの磁気センサ30は、それぞれコイル41の内側とコイル44の内側に配置されているものとする。後で説明するように、この2つの磁気センサ30は、手振れの影響を低減するためにレンズ5の位置を変化させる際に用いられる。
【0049】
コイル41の内側に配置された磁気センサ30は、磁石31Aから発生される磁界を検出し、磁石31Aの位置に対応した信号を生成する。コイル44の内側に配置された磁気センサ30は、磁石34Aから発生される磁界を検出し、磁石34Aの位置に対応した信号を生成する。磁気センサ30は、例えば、ホール素子等の磁界を検出する素子によって構成されている。
【0050】
次に、図3および図6を参照して、第1の磁界発生部11、第2の磁界発生部12および磁気センサ20の位置関係について詳しく説明する。図6は、位置検出装置1の要部を示す斜視図である。ここで、図6に示したように、X方向とY方向を定義する。X方向とY方向は、いずれも、基板7の上面7a(図2参照)に対して平行な方向である。X方向は、U方向からV方向に向かって45°だけ回転した方向である。Y方向は、V方向から−U方向に向かって45°だけ回転した方向である。また、X方向とは反対の方向を−X方向とし、Y方向とは反対の方向を−Y方向とする。
【0051】
図6において、符号MF1を付した矢印は、第1の磁界成分MF1を表している。本実施の形態では、第1の磁界発生部11と磁気センサ20は、第1の磁界成分MF1の方向が、−Y方向になるように設けられている。第1の磁界成分MF1の方向は、例えば、磁気センサ20に対する磁石31A,34Aの位置関係と、磁石31A,34Aの姿勢によって調整することができる。磁石31A,34Aは、検出位置を含むYZ平面に対して対称に配置されていることが好ましい。
【0052】
図6において、符号MF2を付した矢印は、第2の磁界成分MF2を表している。また、磁石13内に描かれた矢印は、磁石13の磁化の方向を表している。第2の磁界成分MF2の方向は、第1の磁界成分MF1の方向とは異なる。対象磁界MFの方向は、第1の磁界成分MF1の方向と第2の磁界成分MF2の方向のいずれとも異なり、これらの間の方向である。対象磁界MFの方向の可変範囲は、180°未満である。本実施の形態では特に、第2の磁界成分MF2の方向は、第1の磁界成分MF1の方向に直交する−X方向である。この場合、対象磁界MFの方向の可変範囲は、90°未満である。
【0053】
次に、図7を参照して、磁気センサ20の構成の一例について説明する。図7は、磁気センサ20の構成を示す回路図である。本実施の形態では、磁気センサ20は、対象磁界MFの方向に対応した検出信号として、対象磁界MFの方向が基準方向に対してなす角度に対応した検出信号を生成するように構成されている。本実施の形態では、基準方向は、X方向である。
【0054】
図7に示したように、磁気センサ20は、ホイートストンブリッジ回路21と、差分検出器22とを有している。ホイートストンブリッジ回路21は、所定の電圧が印加される電源ポートVと、グランドに接続されるグランドポートGと、第1の出力ポートE1と、第2の出力ポートE2とを含んでいる。
【0055】
ホイートストンブリッジ回路21は、更に、第1の抵抗部R1と、第2の抵抗部R2と、第3の抵抗部R3と、第4の抵抗部R4とを含んでいる。第1の抵抗部R1は、電源ポートVと第1の出力ポートE1との間に設けられている。第2の抵抗部R2は、第1の出力ポートE1とグランドポートGとの間に設けられている。第3の抵抗部R3は、電源ポートVと第2の出力ポートE2との間に設けられている。第4の抵抗部R4は、第2の出力ポートE2とグランドポートGとの間に設けられている。
【0056】
第1の抵抗部R1は、少なくとも1つの第1のMR素子を含んでいる。第2の抵抗部R2は、少なくとも1つの第2のMR素子を含んでいる。第3の抵抗部R3は、少なくとも1つの第3のMR素子を含んでいる。第4の抵抗部R4は、少なくとも1つの第4のMR素子を含んでいる。
【0057】
本実施の形態では特に、第1の抵抗部R1は、直列に接続された複数の第1のMR素子を含み、第2の抵抗部R2は、直列に接続された複数の第2のMR素子を含み、第3の抵抗部R3は、直列に接続された複数の第3のMR素子を含み、第4の抵抗部R2は、直列に接続された複数の第4のMR素子を含んでいる。
【0058】
ホイートストンブリッジ回路21に含まれる複数のMR素子の各々は、スピンバルブ型のMR素子である。このスピンバルブ型のMR素子は、方向が固定された磁化を有する磁化固定層と、対象磁界の方向に応じて方向が変化可能な磁化を有する自由層と、磁化固定層と自由層の間に配置されたギャップ層とを有している。スピンバルブ型のMR素子は、TMR(トンネル磁気抵抗効果)素子でもよいし、GMR(巨大磁気抵抗効果)素子でもよい。TMR素子では、ギャップ層はトンネルバリア層である。GMR素子では、ギャップ層は非磁性導電層である。スピンバルブ型のMR素子では、自由層の磁化の方向が磁化固定層の磁化の方向に対してなす角度に応じて抵抗値が変化し、この角度が0°のときに抵抗値は最小値となり、角度が180°のときに抵抗値は最大値となる。図7において、塗りつぶした矢印は、MR素子における磁化固定層の磁化の方向を表し、白抜きの矢印は、MR素子における自由層の磁化の方向を表している。
【0059】
抵抗部R1,R4に含まれる複数のMR素子における磁化固定層の磁化の方向は第1の方向である。抵抗部R2,R3に含まれる複数のMR素子における磁化固定層の磁化の方向は、第1の方向とは反対の第2の方向である。以下、第1の方向を符号MP1で表し、第2の方向を符号MP2で表す。図6には、第1の方向MP1と第2の方向MP2を示している。後で詳しく説明するが、本実施の形態では、基準平面内において、第1の方向MP1に直交する2方向の各々は、第1の磁界成分MF1の方向と第2の磁界成分MF2の方向のいずれとも異なる。基準平面内において、第2の方向MP2に直交する2方向は、第1の方向MP1に直交する2方向と同じである。従って、基準平面内において、第2の方向MP2に直交する2方向の各々も、第1の磁界成分MF1の方向と第2の磁界成分MF2の方向のいずれとも異なる。
【0060】
出力ポートE1の電位と、出力ポートE2の電位と、出力ポートE1,E2の電位差は、対象磁界MFの方向が第1の方向MP1に対してなす角度の余弦に応じて変化する。差分検出器22は、出力ポートE1,E2の電位差に対応する信号を検出信号として出力する。検出信号は、出力ポートE1の電位と、出力ポートE2の電位と、出力ポートE1,E2の電位差に依存する。また、検出信号は、対象磁界MFの方向に応じて変化するため、対象磁界MFの方向に対応した信号である。
【0061】
ここで、図8を参照して、抵抗部R1,R2,R3,R4の構成の一例について説明する。図8は、抵抗部R1,R2,R3,R4のうちの1つの抵抗部の一部を示す斜視図である。この例では、1つの抵抗部は、複数の下部電極162と、複数のMR素子150と、複数の上部電極163とを有している。複数の下部電極162は図示しない基板上に配置されている。個々の下部電極162は細長い形状を有している。下部電極162の長手方向に隣接する2つの下部電極162の間には、間隙が形成されている。図8に示したように、下部電極162の上面上において、長手方向の両端の近傍に、それぞれMR素子150が配置されている。MR素子150は、下部電極162側から順に積層された自由層151、ギャップ層152、磁化固定層153および反強磁性層154を含んでいる。自由層151は、下部電極162に電気的に接続されている。反強磁性層154は、反強磁性材料よりなり、磁化固定層153との間で交換結合を生じさせて、磁化固定層153の磁化の方向を固定する。複数の上部電極163は、複数のMR素子150の上に配置されている。個々の上部電極163は細長い形状を有し、下部電極162の長手方向に隣接する2つの下部電極162上に配置されて隣接する2つのMR素子150の反強磁性層154同士を電気的に接続する。このような構成により、図8に示した抵抗部は、複数の下部電極162と複数の上部電極163とによって直列に接続された複数のMR素子150を有している。
【0062】
なお、MR素子150における層151〜154の配置は、図8に示した配置とは上下が反対でもよい。また、MR素子150は、反強磁性層154を含まない構成であってもよい。この構成は、例えば、反強磁性層154および磁化固定層153の代わりに、2つの強磁性層とこの2つの強磁性層の間に配置された非磁性金属層と含む人工反強磁性構造の磁化固定層を含む構成であってもよい。
【0063】
次に、図2ないし図5を参照して、駆動装置3の動作について説明する。始めに、光学式手振れ補正機構とオートフォーカス機構について簡単に説明する。駆動装置3は、光学式手振れ補正機構およびオートフォーカス機構の一部を構成する。駆動装置3、光学式手振れ補正機構およびオートフォーカス機構は、カメラモジュール100の外部の図示しない制御部によって制御される。
【0064】
光学式手振れ補正機構は、例えば、カメラモジュール100の外部のジャイロセンサ等によって、手振れを検出できるように構成されている。光学式手振れ補正機構が手振れを検出すると、図示しない制御部は、手振れの態様に応じて基板7に対するレンズ5の相対的な位置が変化するように、駆動装置3を制御する。これにより、レンズ5の絶対的な位置を安定化させて、手振れの影響を低減することができる。なお、基板7に対するレンズ5の相対的な位置は、手振れの態様に応じて、U方向に平行な方向またはV方向に平行な方向に変化する。
【0065】
オートフォーカス機構は、例えば、イメージセンサ200またはオートフォーカスセンサ等によって、被写体に焦点が合った状態を検出できるように構成されている。図示しない制御部は、被写体に焦点が合った状態になるように、駆動装置3によって、基板7に対するレンズ5の相対的な位置をZ方向に平行な方向に変化させる。これにより、自動的に被写体に対する焦点合わせを行うことができる。
【0066】
次に、光学式手振れ補正機構に関連する駆動装置3の動作について説明する。図示しない制御部によってコイル41,42に電流が流されると、磁石31A,32Aから発生される磁界とコイル41,42から発生される磁界との相互作用によって、磁石31A,32Aが固定された第1の保持部材14は、V方向に平行な方向に移動する。その結果、レンズ5も、V方向に平行な方向に移動する。また、図示しない制御部によってコイル43,44に電流が流されると、磁石33A,34Aから発生される磁界とコイル43,44から発生される磁界との相互作用によって、磁石33A,34Aが固定された第1の保持部材14は、U方向に平行な方向に移動する。その結果、レンズ5も、U方向に平行な方向に移動する。図示しない制御部は、2つの磁気センサ30によって生成される磁石31A,34Aの位置に対応した信号を測定することによって、レンズ5の位置を検出する。
【0067】
次に、オートフォーカス機構に関連する駆動装置3の動作について説明する。基板7に対するレンズ5の相対的な位置をZ方向に移動させる場合、図示しない制御部は、第1の導体部45AにU方向の電流が流れ、第2の導体部45Bに−U方向の電流が流れるように、コイル45に電流を流し、第1の導体部46Aに−U方向の電流が流れ、第2の導体部46BにU方向の電流が流れるように、コイル46に電流を流す。これらの電流と磁石31A,31B,32A,32Bから発生される磁界によって、コイル45の第1および第2の導体部45A,45Bとコイル46の第1および第2の導体部46A,46Bに、Z方向のローレンツ力が作用する。これにより、コイル45,46が固定された第2の保持部材15は、Z方向に移動する。その結果、レンズ5も、Z方向に移動する。
【0068】
基板7に対するレンズ5の相対的な位置を−Z方向に移動させる場合には、図示しない制御部は、コイル45,46に、Z方向に移動させる場合とは逆方向に電流を流す。
【0069】
次に、本実施の形態に係る位置検出装置1の作用および効果について説明する。本実施の形態に係る位置検出装置1は、レンズ5の位置を検出するために用いられる。本実施の形態では、基板7に対するレンズ5の相対的な位置が変化する場合、基板7および第1の保持部材14に対する第2の保持部材15の相対的な位置も変化する。前述のように、第1の保持部材14は第1の磁界発生部11を保持し、第2の保持部材15は第2の磁界発生部12を保持している。従って、上述のようにレンズ5の相対的な位置が変化すると、第1の磁界発生部11に対する第2の磁界発生部12の相対的な位置が変化する。以下、第1の磁界発生部11に対する第2の磁界発生部12の相対的な位置を、相対位置と言う。本実施の形態では、相対位置の変化の方向は、レンズ5の光軸方向すなわちZ方向に平行な方向である。
【0070】
相対位置が変化すると、基板7に対する第1の磁界発生部11の相対的な位置は変化しないが、基板7に対する第2の磁界発生部12の相対的な位置は変化する。そのため、相対位置が変化すると、第1の磁界成分MF1の強度および方向と第2の磁界成分MF2の方向は変化しないが、第2の磁界成分MF2の強度は変化する。第2の磁界成分MF2の強度が変化すると、対象磁界MFの方向と強度も変化し、それに伴い、磁気センサ20が生成する検出信号の値も変化する。検出信号の値は、相対位置に依存して変化する。図示しない制御部は、検出信号を測定することによって、相対位置を検出する。基板7に対するレンズ5の相対的な位置の変化の方向および大きさは、相対位置の変化の方向および大きさと同じである。従って、相対位置は、基板7に対するレンズ5の相対的な位置を表すものとも言える。
【0071】
ここで、図9を参照して、第1および第2の方向MP1,MP2と第1および第2の磁界成分MF1,MF2について詳しく説明する。図9において、符号RPは基準平面を表し、符号Pは検出位置を表している。図9では、符号MF1を付した矢印で第1の磁界成分MF1を表し、符号MF2を付した矢印で第2の磁界成分MF2を表し、符号MFを付した矢印で対象磁界を表している。また、図9において、X方向の軸はX方向の磁界の強度Hxを示し、Y方向の軸はY方向の磁界の強度Hyを示している。
【0072】
対象磁界MFは、第1の磁界成分MF1と第2の磁界成分MF2との合成磁界であることから、対象磁界MFの方向は、第1の磁界成分MF1の方向と第2の磁界成分MF2の方向のいずれとも異なり、これらの間の方向である。
【0073】
図9には、基準平面RP内において第1の方向MP1に直交する2方向を、符号PP1,PP2で表している。基準平面RP内において第2の方向MP2に直交する2方向は、2方向PP1,PP2と同じである。前述の通り、本実施の形態では、2方向PP1,PP2の各々は、第1の磁界成分MF1の方向と第2の磁界成分MF2の方向のいずれとも異なる。
【0074】
以下、図9において基準方向(X方向)から反時計回り方向に見て、対象磁界MFの方向が基準方向(X方向)に対してなす角度を、対象角度と言い、記号θで表す。対象角度θは、対象磁界MFの方向を表す。本実施の形態では、磁気センサ20は、対象角度θに対応した検出信号を生成する。
【0075】
ここで、図10を参照して、本実施の形態における相対位置と対象角度θとの関係について説明する。図10は、相対位置と対象角度θとの関係を示す特性図である。図10において、横軸は相対位置を示し、縦軸は対象角度θを示している。
【0076】
本実施の形態では、検出位置Pに対して第2の磁界発生部12が最も近いときの検出位置Pと第2の磁界発生部12との間の距離を最短距離とし、相対位置を、任意の位置にある第2の磁界発生部12と検出位置Pとの間の距離から最短距離を引いた値で表す。また、本実施の形態では、相対位置の可動範囲を、0〜0.3mmの範囲としている。
【0077】
本実施の形態では、図10に示したように、相対位置が0〜0.3mmの可動範囲で変化するとき、対象角度θは207°〜240°の可変範囲で変化する。相対位置の変化に対する対象角度θの変化は直線的である。対象角度θは、対象磁界MFの方向を表す。従って、対象角度θの可変範囲は、相対位置の可動範囲に対応する対象磁界MFの方向の可変範囲に対応する。図9において、符号θRで示した範囲は、対象角度θの可変範囲を表している。
【0078】
図9に示したように、本実施の形態では、基準平面RP内において、磁化固定層の磁化の方向に直交する2方向PP1,PP2の各々は、第1の磁界成分MF1の方向と第2の磁界成分MF2の方向のいずれとも異なる。これにより、本実施の形態に係る位置検出装置1によれば、精度の高い位置検出を行うことが可能になる。以下、これについて、比較例の位置検出装置と比較しながら説明する。
【0079】
始めに、図11を参照して、比較例の位置検出装置について説明する。比較例の位置検出装置では、磁化固定層の磁化の方向が、本実施の形態に係る位置検出装置1と異なっている。比較例では、抵抗部R1,R4に含まれる複数のMR素子における磁化固定層の磁化の方向である第1の方向MP1は、−Y方向である。また、抵抗部R2,R3に含まれる複数のMR素子における磁化固定層の磁化の方向である第2の方向MP2は、Y方向である。比較例の位置検出装置におけるその他の構成は、本実施の形態に係る位置検出装置1と同じである。
【0080】
図11は、図9に対応する図であって、比較例における第1および第2の方向MP1,MP2と第1および第2の磁界成分MF1,MF2を示している。比較例では、基準平面RP内において、磁化固定層の磁化の方向に直交する2方向PP1,PP2のうちの一方の方向PP1は第2の磁界成分MF2の方向と一致し、他方の方向PP2は第2の磁界成分MF2の方向とは反対方向である。
【0081】
次に、比較例の位置検出装置の問題点について説明する。ここで、本実施の形態に係る位置検出装置1および比較例の位置検出装置に関して、基準平面RP内において、検出位置Pに印加される任意の印加磁界の方向が基準方向に対してなす角度を、印加磁界角度と言う。図12は、比較例の位置検出装置における印加磁界角度と規格化検出信号との関係を示す特性図である。規格化検出信号は、印加磁界角度を0°〜360°の範囲で変化させたときの最大値と最小値がそれぞれ1と−1に対応するように検出信号を規格化した信号である。第1の出力ポートE1と第2の出力ポートE2の電位差が0のとき、規格化検出信号は0である。
【0082】
比較例において、第1の出力ポートE1と第2の出力ポートE2の電位差が0になるのは、印加磁界の方向が2方向PP1,PP2のうちの一方と一致するとき、すなわち、印加磁界角度が0°のときと印加磁界角度が180°のときである。
【0083】
ここで、図12のような、印加磁界角度と規格化検出信号との関係を表す特性図において、印加磁界角度の変化に対する検出信号の変化がより直線的である度合いを検出信号の直線性と言う。
【0084】
図12に示されるように、比較例では、0°を含む0°近傍の印加磁界角度の範囲と、180°を含む180°近傍の印加磁界角度の範囲では、検出信号の直線性は高い。また、比較例では、印加磁界角度が90°または270°に近づくほど、検出信号の直線性は低くなる。
【0085】
図12には、対象角度θの可変範囲θRを示している。比較例では、この可変範囲θRが、0°または180°を含まず、0°または180°から離れている。そのため、この可変範囲θRでは、検出信号の直線性は低い。
【0086】
比較例において、対象磁界MFの方向は、第1の磁界成分MF1の方向と第2の磁界成分MF2の方向のいずれとも異なり、これらの間の方向である。また、比較例では、基準平面RP内において、磁化固定層の磁化の方向に直交する2方向PP1,PP2のうちの一方の方向PP1は第2の磁界成分MF2の方向と一致し、他方の方向PP2は第2の磁界成分MF2の方向とは反対方向である。これらのことから、比較例では、対象磁界MFの方向が2方向PP1,PP2のうちの一方と一致することはあり得ない。すなわち、比較例では、可変範囲θRが、0°または180°を含むことはあり得ない。従って、比較例では、可変範囲θRを、検出信号の直線性の高い範囲に設定することができない。そのため、比較例では、精度の高い位置検出を行うことができないという問題点がある。
【0087】
ここで、検出信号から求まる相対位置を位置検出値と言う。比較例では、温度変化に伴う位置検出値の誤差が大きいという問題点もある。以下、これについて、図13を参照して説明する。図13は、図12と同様の特性図である。図13において、符号111を付した曲線と符号112を付した曲線は、いずれも比較例の位置検出装置における印加磁界角度と規格化検出信号との関係を示している。符号111を付した曲線は、例えば室温である第1の温度における上記の関係を示している。符号112を付した曲線は、第1の温度よりも高い第2の温度における上記の関係を示している。符号112を付した曲線における規格化検出信号は、第1の温度における検出信号に対する規格化検出信号の比率を、第2の温度における検出信号に掛けて求めたものである。
【0088】
図13に示したように、印加磁界角度と規格化検出信号との関係は、温度の変化に伴って変化する。比較例では、可変範囲θRにおいて、温度の変化に伴う上記の関係の変化が大きい。そのため、比較例では、温度変化に伴う位置検出値の誤差が大きいという問題点がある。
【0089】
以上説明した比較例の問題点は、基準平面RP内において、2方向PP1,PP2の一方が、第1の磁界成分MF1の方向と一致する場合にも当てはまる。
【0090】
本実施の形態に係る位置検出装置1では、対象磁界MFの方向は、第1の磁界成分MF1の方向と第2の磁界成分MF2の方向のいずれとも異なり、これらの間の方向である。また、本実施の形態では、基準平面RP内において、磁化固定層の磁化の方向に直交する2方向PP1,PP2の各々は、第1の磁界成分MF1の方向と第2の磁界成分MF2の方向のいずれとも異なる。
【0091】
これらのことから、本実施の形態では、2方向PP1,PP2のうちの一方を、比較例に比べて、対象磁界MFの方向の可変範囲に近づけることが可能である。言い換えると、本実施の形態では、規格化検出信号が0になるときの印加磁界角度を、比較例に比べて、可変範囲θRに近づけることが可能である。これにより、本実施の形態によれば、比較例に比べて、対象磁界MFの方向の可変範囲内において、MR素子の検出精度、具体的には検出信号の直線性を高めることが可能になり、その結果、精度の高い位置検出を行うことが可能になる。
【0092】
本実施の形態において、位置検出の精度をより高めるためには、対象磁界MFの方向の可変範囲が2方向PP1,PP2のうちの一方を含むこと、すなわち、可変範囲θRが、規格化検出信号が0になるときの印加磁界角度を含むことが好ましい。
【0093】
また、本実施の形態において、位置検出の精度をより高めるためには、対象磁界MFの方向の可変範囲の中間の方向が、2方向PP1,PP2のうちの一方と同じ方向であることがより好ましい。同様の趣旨で、相対位置が、相対位置の可動範囲の中間位置であるときに、対象磁界MFの方向が、2方向PP1,PP2のうちの一方と同じ方向であることがより好ましい。
【0094】
図10に示したように、相対位置の可動範囲が0〜0.3mmで、対象角度θの可変範囲θRが207°〜240°である場合には、相対位置の可動範囲の中間位置は0.15mmである。そして、相対位置がその可動範囲の中間位置であるときの対象磁界MFの方向、ならびに対象磁界MFの方向の可変範囲の中間の方向は、いずれも223.5°の対象角度θで表される方向である。この場合、2方向PP1,PP2のうちの一方が基準方向に対してなす角度は、207°〜240°の範囲内であることが好ましく、223.5°であることがより好ましい。
【0095】
図14は、本実施の形態に係る位置検出装置1における印加磁界角度と規格化検出信号との関係の一例を示す特性図である。この例では、2方向PP1,PP2のうちの一方の方向PP1が基準方向に対してなす角度を、223.5°としている。
【0096】
図14から理解されるように、本実施の形態によれば、対象角度θの可変範囲θRを、検出信号の直線性の高い範囲に設定することができる。これにより、磁気センサ20によって対象磁界MFの方向を精度よく検出することが可能になり、位置検出装置1によって精度の高い位置検出を行うことが可能になる。
【0097】
図15は、図14と同様の特性図である。図15において、符号113を付した曲線と符号114を付した曲線は、いずれも本実施の形態に係る位置検出装置1における印加磁界角度と規格化検出信号との関係を示している。符号113を付した曲線は、例えば室温である第1の温度における上記の関係を示している。符号114を付した曲線は、第1の温度よりも高い第2の温度における上記の関係を示している。符号114を付した曲線における規格化検出信号は、第1の温度における検出信号に対する規格化検出信号の比率を、第2の温度における検出信号に掛けて求めたものである。
【0098】
図15に示したように、本実施の形態では、図13に示した比較例の特性に比べて、対象角度θの可変範囲θRにおいて、温度の変化に伴う、印加磁界角度と規格化検出信号との関係の変化が小さい。そのため、本実施の形態によれば、温度変化に伴う位置検出値の誤差を小さくすることができる。
【0099】
次に、比較例の位置検出装置と本実施の形態に係る位置検出装置1について、位置検出の精度を比較した結果について説明する。
【0100】
始めに、図16を参照して、位置検出の精度を表すパラメータである直線性パラメータについて説明する。図16は、検出信号と相対位置との関係を模式的に示す特性図である。図16において、横軸は検出信号を示し、縦軸は相対位置を示している。
【0101】
図16において、符号121を付した曲線は、相対位置の可動範囲内における検出信号と相対位置との関係の一例を示している。また、符号122を付した直線は、曲線121の両端の2点を結ぶ直線である。ここで、任意の検出信号の値に対応する曲線121上の相対位置と直線122上の相対位置をそれぞれZr、Ziとする。そして、Zr−Ziを、Ziに対応する直線性パラメータLの値とする。相対位置の可動範囲の全体にわたって直線性パラメータLの絶対値が小さいほど、位置検出の精度が高いと言える。
【0102】
図17は、比較例における相対位置および対象角度θと規格化検出信号との関係を示す特性図である。図17において、横軸は相対位置および対象角度θを示し、縦軸は規格化検出信号を示している。
【0103】
図18は、比較例における相対位置および対象角度θと直線性パラメータLとの関係を示す特性図である。図18において、横軸は相対位置および対象角度θを示し、縦軸は直線性パラメータLを示している。
【0104】
図19は、本実施の形態における相対位置および対象角度θと規格化検出信号との関係を示す特性図である。図19において、横軸は相対位置および対象角度θを示し、縦軸は規格化検出信号を示している。
【0105】
図20は、本実施の形態における相対位置および対象角度θと直線性パラメータLとの関係を示す特性図である。図20において、横軸は相対位置および対象角度θを示し、縦軸は直線性パラメータLを示している。
【0106】
図18図20を比較すると分かるように、本実施の形態では、比較例に比べて、相対位置の可動範囲の全体にわたって直線性パラメータLの絶対値が小さくなっている。このことから、本実施の形態によれば、精度の高い位置検出を行うことができることが分かる。
【0107】
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されず、種々の変更が可能である。例えば、請求の範囲の要件を満たす限り、第1および第2の磁界発生部の形状および配置と、磁気センサ20の配置は、各実施の形態に示した例に限られず、任意である。
【0108】
また、請求の範囲の要件を満たす限り、第1および第2の磁界成分の方向は任意である。例えば、第1の磁界成分の方向をY方向または−Y方向とし、第2の磁界成分の方向をZ方向または−Z方向としてもよい。この場合、基準平面は、X方向に垂直な平面となる。
【0109】
また、磁気センサ20の構成は、ホイートストンブリッジ回路21と差分検出器22を有する構成に限られない。例えば、磁気センサ20は、電源ポートV、グランドポートG、第1の出力ポートE1、第1の抵抗部R1および第2の抵抗部R2を含むが、第2の出力ポートE2、第3の抵抗部R3、第4の抵抗部R4および差分検出器22を含まない構成であってもよい。この場合、検出信号は、第1の出力ポートE1の電位に依存する信号である。
【0110】
また、本発明の位置検出装置は、レンズに限らず、所定の方向に移動する対象物の位置を検出するために用いることができる。
【符号の説明】
【0111】
1…位置検出装置、3…駆動装置、5…レンズ、6…筐体、7…基板、11…第1の磁界発生部、12…第2の磁界発生部、13…磁石、14…第1の保持部材、15…第2の保持部材、20…磁気センサ、31A,31B,32A,32B,33A,33B,34A,34B…磁石、41〜46…コイル、100…カメラモジュール。
図1
図2
図3
図4
図5
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図7
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