特許第6661242号(P6661242)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6661242アッセイの変化の定量化のための測定装置および方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6661242
(24)【登録日】2020年2月14日
(45)【発行日】2020年3月11日
(54)【発明の名称】アッセイの変化の定量化のための測定装置および方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/59 20060101AFI20200227BHJP
   G01N 21/78 20060101ALI20200227BHJP
【FI】
   G01N21/59 Z
   G01N21/78 Z
【請求項の数】26
【全頁数】38
(21)【出願番号】特願2016-556816(P2016-556816)
(86)(22)【出願日】2015年3月12日
(65)【公表番号】特表2017-512986(P2017-512986A)
(43)【公表日】2017年5月25日
(86)【国際出願番号】US2015020158
(87)【国際公開番号】WO2015138712
(87)【国際公開日】20150917
【審査請求日】2018年2月26日
(31)【優先権主張番号】61/952,076
(32)【優先日】2014年3月12日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/952,082
(32)【優先日】2014年3月12日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511088449
【氏名又は名称】エムシー10 インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】MC10,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】ガファリ、ルーズベ
(72)【発明者】
【氏名】アラニョシ、アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】リー、スティーブン
【審査官】 藤田 都志行
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2013/0184188(US,A1)
【文献】 特表2012−503170(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0262321(US,A1)
【文献】 特開2008−232664(JP,A)
【文献】 特開2011−064596(JP,A)
【文献】 特開2007−139781(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/59
G01N 21/78
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)試料を受け付けるための試料受器であって、診断基板内に少なくとも部分的に形成され又は前記診断基板上に少なくとも部分的に配置される、試料受器、(b)前記試料受器に接続される流路、(c)前記診断基板内に少なくとも部分的に形成され又は前記診断基板上に少なくとも部分的に配置される検出領域であって、前記流路によって前記試料受器に結合される、検出領域、(d)前記診断基板内に少なくとも部分的に形成され又は前記診断基板上に少なくとも部分的に配置される制御領域であって、前記流路によって前記検出領域に結合される、制御領域を含む、診断基板と、
(e)ベース基板内に少なくとも部分的に形成され又は前記ベース基板上に少なくとも部分的に配置される近距離無線通信(NFC)用のアンテナ、(f)前記アンテナに接続され、前記ベース基板内に少なくとも部分的に形成され又は前記ベース基板上に少なくとも部分的に配置される電子回路であって、前記試料又はその派生物からの出力信号に応じてデータを生成する、電子回路、(g)前記電子回路に接続され、第1の部分内に少なくとも部分的に形成され又は前記第1の部分上に少なくとも部分的に配置される第1の光検出器及び第2の光検出器を含む第1の部分、(h)前記電子回路に接続され、第2の部分内に少なくとも部分的に形成され又は前記第2の部分上に少なくとも部分的に配置される第1の光源及び第2の光源を含む第2の部分であって、前記第1の光源からの光が前記検出領域を通過して前記第1の光検出器によって検出され、前記第2の光源からの前記光が前記制御領域を通過して前記第2の光検出器によって検出されるように前記光検出器及び前記光源を位置合せするために前記第1の部分及び前記第2の部分が配置される、第2の部分、並びに(i)前記電子回路に接続され、少なくとも1つの光検出器及び光源に給電するように構成される薄膜電池を含む、ベース基板と
を含む、測定装置。
【請求項2】
前記診断基板が、前記試料又は前記試料の派生物と反応する試薬を更に含む、請求項1に記載の測定装置。
【請求項3】
前記試薬が複数の染色ナノ粒子である、請求項2に記載の測定装置。
【請求項4】
前記電子回路に接続され、前記データを記憶するように構成されるデータ記憶装置を更に含む、請求項1に記載の測定装置。
【請求項5】
前記試料の存在を検出するために前記試料受器に結合されるセンサを更に含む、請求項1に記載の測定装置。
【請求項6】
前記センサを周期的に又は予め設定したスケジュールに従ってポーリングし、前記試料の有無を判定する、請求項5に記載の測定装置。
【請求項7】
前記センサ及び前記光検出器に結合されるタイマを更に含み、前記タイマは試料検出時に所定の時間にわたって活性化され、前記所定の時間は前記試料を読み取る時間を表し、前記タイマは前記所定の時間に到達した後前記光検出器を活性化し、前記光検出器は測定値を出力する、請求項5に記載の測定装置。
【請求項8】
前記所定の時間後に前記センサが非活性化される、請求項7に記載の測定装置。
【請求項9】
前記測定装置の少なくとも一部を囲うためのハウジングを更に含む、請求項1に記載の測定装置。
【請求項10】
前記測定装置が、第1のNFCトランザクションにより外部装置によって始動される、請求項1に記載の測定装置。
【請求項11】
前記測定装置が第2のNFCトランザクションによって前記データを前記外部装置に伝送し、それにより前記外部装置が前記データを処理して前記試料に関係する定量的情報を提供する、請求項10に記載の測定装置。
【請求項12】
前記外部装置が携帯型装置又はウェアラブルデバイスである、請求項10又は11に記載の測定装置。
【請求項13】
前記定量的情報が、グルコース値、T細胞濃度、微生物濃度、水系病原菌濃度、ウシ血清アルブミン(BVA)濃度、細菌濃度、ウイルス量、抗原量、抗体量、結核の診断、デング熱の診断、心筋酵素濃度、及びマラリアの診断の少なくとも1つを含む、請求項11に記載の測定装置。
【請求項14】
前記第1の部分及び前記第2の部分が前記診断基板を挟み込むように前記第1の部分を前記第2の部分上に折り重ねる、請求項1に記載の測定装置。
【請求項15】
前記第1の部分及び前記第2の部分が前記診断基板を挟み込むように前記第2の部分を前記第1の部分上に折り重ねる、請求項1に記載の測定装置。
【請求項16】
前記試料が流体試料である、請求項1に記載の測定装置。
【請求項17】
前記流体試料が、血液、血清、唾液、及び尿から成るグループから選択される、請求項16に記載の測定装置。
【請求項18】
前記診断基板が紙ベースの部分を含む、請求項1に記載の測定装置。
【請求項19】
請求項1に記載の測定装置を使用して試料に関する定量的情報を与える方法であって、(i)第1の近距離無線通信(NFC)トランザクションにより、外部装置を使って前記測定装置を始動するステップであって、前記測定装置は検出領域及び制御領域に対して第1の透過率測定を行い第1のデータを作成する、始動するステップと、
(ii)前記測定装置の前記試料受器に前記試料を接触させるステップであって、前記測定装置は、前記接触後の第1の所定期間において前記検出領域及び前記制御領域に対して第2の透過率測定を行い第2のデータを作成する、接触させるステップと、
(iii)前記第2の透過率測定後の第2の所定期間において前記検出領域及び前記制御領域に対して第3の透過率測定を行い第3のデータを作成するステップと、
(iv)前記第1のデータ、前記第2のデータ、及び前記第3のデータを第2のNFCトランザクションによって前記測定装置から前記外部装置に転送するステップと、
(v)前記第1のデータ、前記第2のデータ、及び前記第3のデータの解析に基づく定量的情報を提供するステップと
を含む、方法。
【請求項20】
前記試料が流体試料である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記解析が、前記第1のデータ及び前記第2のデータに対して前記第3のデータを正規化することを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記第1のデータ、前記第2のデータ、及び前記第3のデータを前記転送前にデータ記憶装置内に記憶するステップを更に含む、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
前記外部装置が携帯型装置又はウェアラブルデバイスである、請求項19に記載の方法。
【請求項24】
前記定量的情報が、グルコース値、T細胞濃度、微生物濃度、水系病原菌濃度、ウシ血清アルブミン(BVA)濃度、細菌濃度、ウイルス量、抗原量、抗体量、結核の診断、デング熱の診断、心筋酵素濃度、及びマラリアの診断の少なくとも1つを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項25】
前記流体試料が、血液、血清、唾液、及び尿から成るグループから選択される、請求項20に記載の方法。
【請求項26】
前記第1の光源及び前記第2の光源が前記透過率測定のそれぞれの間光強度をそれぞれ徐々に上げ、前記第1の光検出器及び前記第2の光検出器が前記光強度の上昇に応答して光透過率をそれぞれ検出する、請求項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、参照によりそのそれぞれの全内容を本明細書に援用する、2014年3月12日に出願された米国仮特許出願第61/952,076号明細書、及び2014年3月12日に出願された米国仮特許出願第61/952,082号明細書の利益を米国特許法第119条(e)の下で主張する。
【0002】
本発明は、一般にポイントオブケア診断及び紙ベースの診断装置に関する。
【背景技術】
【0003】
微量栄養素欠乏症は発展途上国における一般的な健康上のリスクであり、世界人口のかなりの部分に影響している。例えば鉄欠乏性貧血は精神発達を害し、エネルギを低下させ、出産の際の死をもたらし得る。微量栄養素欠乏症は、欠乏症の種類に応じてフェリチン、レチノール結合タンパク質(RBP)、C反応性タンパク質(CRP)、及びアルファ−1−アシッドグリコプロテイン(AGP)等のタンパク質の濃度を測定することによって評価することができる。
【0004】
微量栄養素欠乏症の診断は、電力や他の資源へのアクセスが限られている辺地で特に必要である。安価な携帯型試験は、測定精度を妨げる低い分解能を有する傾向がある。高品質の定量試験は、適切な器具を使って試料を集め、施設に送ることを必要とする。約1カ月の待ち時間が一般的である。
【0005】
微小流体測定装置は、安価、ポイントオブケア、且つ迅速な診断ツールとして人気を得ている(非特許文献1及び2)。科学者は、肝臓の酵素量の迅速なポイントオブケア測定から貯水池の水中の重金属汚染の定期的評価に至るまで多岐にわたる機能のための微小流体測定装置を開発している(非特許文献3及び4)。多くの微小流体測定装置は、標的分析物の濃度に相関する色変化を作り出すために化学反応又は抗原−抗体結合を使用する(非特許文献1)。それらのラテラルフローアッセイ(LFA)の前身とは異なり、これらの装置は複雑な幾何学的形状及び多色の読出しと高度に多重化されることが多い。更に、色変化は時間、温度、及び湿度に依存し得る(非特許文献5)。全体として、これらの複雑さは、利用者が色変化を視覚的に解釈し、濃度値を正確に割り当てるのを困難にする。
【0006】
微小流体測定装置の複雑さが増すことは、アッセイの客観性を保ち、定量的測定を得るために、データの取得及び管理のための新規の方法を開発することを必要とする。比色アッセイを読み取るための幾つかの方法が存在するが、様々な制約がその有用性を限定する。ESEQuant Lateral Flow System(Qiagen,CA,USA)等のラインスキャンリーダはLFAから成功裏にデータを集める。しかし、それらは微小流体測定装置にしばしば見られる複雑な幾何学的形状に適合しない。電荷結合素子(CCD)ベースのリーダは、広域にわたってデータを素早く捕捉するが、多くの場合に高価であり、熟練を要する画像解析を必要とする(非特許文献6)。スマートフォンのカメラ及び対応するアプリケーションはアッセイ画像を捕捉し、アッセイの発色を随伴するカラーチャートと比較する(非特許文献4)。これらはポイントオブケアアッセイに関する単純で経済的な解決策を提供するが、結果が環境照明の変化、撮影の角度や奥行、及び電話の型式/モデルの違いの影響を受け易い。同様に、携帯電話に取り付けられ密閉されたLFAリーダ(携帯電話の背面に付加され、照明に内蔵LEDを使用する)は、携帯電話のカメラを引き続き使用し、かかるLFAリーダを電話の型式/モデルに依存したものにする(非特許文献7)。最後に、それらの微小流体測定装置の一部は紙ベースなので、アッセイの表面から反射される光を測定することによって信号強度に関するデータを集める携帯光反射率リーダは、紙の厚さ全体にわたって吸収体の密度をサンプリングできないので感度を欠く(非特許文献8〜10)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Hu et al.,Biosensors and Bioelectronics 2014,54,585−597
【非特許文献2】Martinez et al.,Angew.Chem.Int.Ed.2007,46,1318−1320
【非特許文献3】Pollock et al.,PLoS ONE 2013,8,e75616
【非特許文献4】Wang et al.2014,Anal Bioanal Chem 406,2799−2807
【非特許文献5】Pollock et al.,PLoS ONE 2013,8,e75616
【非特許文献6】Gui et al.,Nanoscale Res Lett 2014,9,1−8
【非特許文献7】Mudanyali et al.,Lab Chip 2012,12,2678
【非特許文献8】Lee et al.,Lab Chip 2010,11,120
【非特許文献9】Li et al.,ELECTROPHORESIS 2014,35,1152−1159
【非特許文献10】Yamaguchi et al.,Bioelectronics 2005,21,426−432
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記に鑑みて、微小流体測定装置から定量的情報を抽出するための新規の装置及び/又は方法について満たされていない需要が当技術分野にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本明細書に記載の技術は、測定を行うための組込構成要素を有する測定装置に関する。データは、解析を行うために及び定量的結果、例えば血液試料中の標的タンパク質の濃度を表示するために外部装置に伝送することができる。
【0010】
一態様では、本明細書に記載の技術は、(a)試料を受け付けるための試料受器であって、診断基板内に少なくとも部分的に形成され又は診断基板上に少なくとも部分的に配置される、試料受器、(b)試料受器に接続される流路、(c)診断基板内に少なくとも部分的に形成され又は診断基板上に少なくとも部分的に配置される検出領域であって、流路によって試料受器に結合される、検出領域、(d)診断基板内に少なくとも部分的に形成され又は診断基板上に少なくとも部分的に配置される制御領域であって、流路によって検出領域に結合される、制御領域を含む(1)診断基板と、(e)ベース基板内に少なくとも部分的に形成され又はベース基板上に少なくとも部分的に配置される近距離無線通信(NFC)用のアンテナ、(f)アンテナに接続され、ベース基板内に少なくとも部分的に形成され又はベース基板上に少なくとも部分的に配置される電子回路であって、試料又はその派生物からの出力信号に応じてデータを生成する、電子回路、(g)電子回路に接続され、第1の部分内に少なくとも部分的に形成され又は第1の部分上に少なくとも部分的に配置される第1の光検出器及び第2の光検出器を含む第1の部分、(h)電子回路に接続され、第2の部分内に少なくとも部分的に形成され又は第2の部分上に少なくとも部分的に配置される第1の光源及び第2の光源を含む第2の部分であって、第1の光源からの光が検出領域を通過して第1の光検出器によって検出され、第2の光源からの光が制御領域を通過して第2の光検出器によって検出されるように光検出器及び光源を位置合せするために第1の部分及び第2の部分が配置される、第2の部分、並びに(i)電子回路に接続され、少なくとも1つの光検出器及び光源に給電するように構成される薄膜電池を含む(2)ベース基板とを含む、測定装置に関する。
【0011】
本発明の一部の実施形態によれば、診断基板が試料又は試料の派生物と反応する試薬を更に含む。
本発明の一部の実施形態によれば、試薬が複数の染色ナノ粒子である。
【0012】
本発明の一部の実施形態によれば、測定装置が、電子回路に接続され、データを記憶するように構成されるデータ記憶装置を更に含む。
本発明の一部の実施形態によれば、測定装置が、試料の存在を検出するために試料受器に結合されるセンサを更に含む。本発明の一部の実施形態によれば、そのセンサを周期的に又は予め設定したスケジュールに従ってポーリングし、試料の有無を判定する。本発明の一部の実施形態によれば、所定の時間後にセンサが非活性化される。
【0013】
本発明の一部の実施形態によれば、測定装置がセンサ及び光検出器に結合されるタイマを更に含み、タイマは試料検出時に所定の時間にわたって活性化され、所定の時間は試料を読み取る時間を表し、タイマは所定の時間に到達した後光検出器を活性化し、光検出器は測定値を出力する。
【0014】
本発明の一部の実施形態によれば、測定装置が、測定装置の少なくとも一部を囲うためのハウジングを更に含む。
本発明の一部の実施形態によれば、測定装置が、第1のNFCトランザクションにより外部装置によって始動され又は活性化される。
【0015】
本発明の一部の実施形態によれば、測定装置が第2のNFCトランザクションによって外部装置にデータを伝送し、それにより外部装置がデータを処理して試料に関係する定量的情報を提供する。
【0016】
本発明の一部の実施形態によれば、外部装置が携帯型装置又はウェアラブルデバイスである。
本発明の一部の実施形態によれば、定量的情報が、グルコース値、T細胞濃度、微生物濃度、水系病原菌濃度、ウシ血清アルブミン(BVA)濃度、細菌濃度、ウイルス量、抗原量、抗体量、結核の診断、デング熱の診断、心筋酵素濃度、及びマラリアの診断の少なくとも1つを含む。
【0017】
本発明の一部の実施形態によれば、第1の部分及び第2の部分が診断基板を挟み込むように第1の部分を第2の部分上に折り重ねる。
本発明の一部の実施形態によれば、第1の部分及び第2の部分が診断基板を挟み込むように第2の部分を第1の部分上に折り重ねる。
【0018】
本発明の一部の実施形態によれば、試料が流体試料である。
本発明の一部の実施形態によれば、流体試料が、血液、血清、唾液、及び尿から成るグループから選択される。
【0019】
本発明の一部の実施形態によれば、診断基板が紙ベースの部分を含む。
別の態様では、本明細書に記載の技術は、試料から値を測定するための測定装置に関し、この装置は、(1)試料を受け付けるための試料受器と、(2)試料の存在を検出するために試料受器に結合されるセンサと、(3)流路によって試料受器に流体結合され、それにより試料又はその派生物を試料受器から得る検出領域と、(4)検出領域に結合され、試料又はその派生物の特性を読み取るように構成される検出器と、(5)センサ及び検出器に結合されるタイマであって、試料検出時に所定の時間にわたって活性化され、所定の時間は試料を読み取る時間を表し、所定の時間に到達した後タイマが検出器を活性化し、検出器は測定値を出力する、タイマとを含む。
【0020】
本発明の一部の実施形態によれば、試料が流体試料である。
本発明の一部の実施形態によれば、センサが光源及び光検出器を含み、光源からの光が試料受器を通過して光検出器によって検出されるように光源及び光検出器が配置される。
【0021】
本発明の一部の実施形態によれば、センサによって検出される透過率の変化が試料の存在を示す。
本発明の一部の実施形態によれば、センサが、試料からの電気信号を検出するように構成される電気部品を含む。
【0022】
本発明の一部の実施形態によれば、センサによって検出される導電率の変化が試料の存在を示す。
本発明の一部の実施形態によれば、センサを周期的に又は予め設定したスケジュールに従ってポーリングし、試料の有無を判定する。
【0023】
本発明の一部の実施形態によれば、所定の時間後にセンサが非活性化される。
本発明の一部の実施形態によれば、測定装置が、試料受器に結合される通信インタフェースを更に含み、通信インタフェースは外部装置からコマンド信号を受信して試料の受け入れを開始する。本発明の一部の実施形態によれば、通信インタフェースが測定値を示す信号を送信する。
【0024】
本発明の一部の実施形態によれば、外部装置が携帯型装置又はウェアラブルデバイスである。
本発明の一部の実施形態によれば、測定装置が検出器に結合されるデータ記憶装置を更に含み、検出器は測定値をデータ記憶装置内に記憶する。
【0025】
本発明の一部の実施形態によれば、流体試料が、血液、血清、唾液、及び尿から成るグループから選択される。
更に別の態様では、本明細書に記載の技術が、本明細書で開示する測定装置を使用して試料に関する定量的情報を与える方法に関し、その方法は、(i)第1の近距離無線通信(NFC)トランザクションにより、外部装置を使って測定装置を始動するステップであって、測定装置は検出領域及び制御領域に対して第1の透過率測定を行い第1のデータを作成する、始動するステップと、(ii)測定装置の試料受器に試料を接触させるステップであって、測定装置は、接触後の第1の所定期間において検出領域及び制御領域に対して第2の透過率測定を行い第2のデータを作成する、接触させるステップと、(iii)第2の透過率測定後の第2の所定期間において検出領域及び制御領域に対して第3の透過率測定を行い第3のデータを作成するステップと、(iv)第1のデータ、第2のデータ、及び第3のデータを第2のNFCトランザクションによって測定装置から外部装置に転送するステップと、(v)第1のデータ、第2のデータ、及び第3のデータの解析に基づく定量的情報を提供するステップとを含む。
【0026】
本発明の一部の実施形態によれば、試料が流体試料である。
本発明の一部の実施形態によれば、解析が、第1のデータ及び第2のデータに対して第3のデータを正規化することを含む。
【0027】
本発明の一部の実施形態によれば、この方法が、第1のデータ、第2のデータ、及び第3のデータを転送前にデータ記憶装置内に記憶するステップを更に含む。
本発明の一部の実施形態によれば、外部装置が携帯型装置又はウェアラブルデバイスである。
【0028】
本発明の一部の実施形態によれば、定量的情報が、グルコース値、T細胞濃度、微生物濃度、水系病原菌濃度、ウシ血清アルブミン(BVA)濃度、細菌濃度、ウイルス量、抗原量、抗体量、結核の診断、デング熱の診断、心筋酵素濃度、及びマラリアの診断の少なくとも1つを含む。
【0029】
本発明の一部の実施形態によれば、流体試料が、血液、血清、唾液、及び尿から成るグループから選択される。
本発明の一部の実施形態によれば、第1の光源及び第2の光源が透過率測定のそれぞれの間光強度をそれぞれ徐々に上げ、第1の光検出器及び第2の光検出器が光強度の上昇に応答して光透過率をそれぞれ検出する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1A】本発明の一部の実施形態による装置100を示す。
図1B】本発明の一部の実施形態による診断基板200の断面を示す。
図1C】装置300の上面図を示す。
図2A】測定装置の動作の一定入力モードを示すグラフである。LED信号が一定に保たれ、透過率と共に増加する光検出器(PD)信号が出力値である。透過率が高い場合、PD信号も高くなる。
図2B】測定装置の動作の一定出力モードを示すグラフである。PD信号が一定に保たれ、透過率と共に減少するLED信号が出力値である。透過率が低い場合、LED信号が高くなる。
図3】試料内の分析物の濃度を定量化することができる方法を示すグラフである。
図4A】紙アッセイの設計を示す図表及び化学反応式である。(図4A)アッセイが上下のラミネート層によって密閉される単一の紙の層で構成される。(図4B)ワックスプリントされた紙の層が、試料ポート及び4つの個々のアームで構成される。各アームは、試薬を紙上で乾燥させた貯蔵域と、発色した読取域との2つの円形部を有する。試料ポートに血清を加えた後、紙の中の毛管力が血清を素早くアッセイの4つの個々のアームに分散させ、貯蔵域及び読取域を続けて満たす。(図4C)加えられる血清中のALT濃度に対応する速度で青色色素複合体を形成するために使用する化学反応の方程式(1〜3)。アラニントランスアミナーゼ(ALT)、ピルビン酸オキシダーゼ(PO)、チアミン二リン酸(TPP)、4−アミノアンチピリン(4−AAP)、及びN−エチル−N−(2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル)−3,5−ジメトキシアラニン(DAOS)。
図4B】紙アッセイの設計を示す図表及び化学反応式である。(図4A)アッセイが上下のラミネート層によって密閉される単一の紙の層で構成される。(図4B)ワックスプリントされた紙の層が、試料ポート及び4つの個々のアームで構成される。各アームは、試薬を紙上で乾燥させた貯蔵域と、発色した読取域との2つの円形部を有する。試料ポートに血清を加えた後、紙の中の毛管力が血清を素早くアッセイの4つの個々のアームに分散させ、貯蔵域及び読取域を続けて満たす。(図4C)加えられる血清中のALT濃度に対応する速度で青色色素複合体を形成するために使用する化学反応の方程式(1〜3)。アラニントランスアミナーゼ(ALT)、ピルビン酸オキシダーゼ(PO)、チアミン二リン酸(TPP)、4−アミノアンチピリン(4−AAP)、及びN−エチル−N−(2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル)−3,5−ジメトキシアラニン(DAOS)。
図4C】紙アッセイの設計を示す図表及び化学反応式である。(図4A)アッセイが上下のラミネート層によって密閉される単一の紙の層で構成される。(図4B)ワックスプリントされた紙の層が、試料ポート及び4つの個々のアームで構成される。各アームは、試薬を紙上で乾燥させた貯蔵域と、発色した読取域との2つの円形部を有する。試料ポートに血清を加えた後、紙の中の毛管力が血清を素早くアッセイの4つの個々のアームに分散させ、貯蔵域及び読取域を続けて満たす。(図4C)加えられる血清中のALT濃度に対応する速度で青色色素複合体を形成するために使用する化学反応の方程式(1〜3)。アラニントランスアミナーゼ(ALT)、ピルビン酸オキシダーゼ(PO)、チアミン二リン酸(TPP)、4−アミノアンチピリン(4−AAP)、及びN−エチル−N−(2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル)−3,5−ジメトキシアラニン(DAOS)。
図5A】手持式携帯リーダの設計を示す図表である。(図5A)リーダは、剛性の金属板上に配置される光検出器で構成される。ヒンジにより、LEDを含む蓋が取り付けられる。このヒンジは、LEDとPDとの間に紙アッセイを容易に配置できるようにし、LED及びPDを繰り返し位置合せすることを可能にする。LED/PDによって解析される紙領域を制御し、LED/PDが紙に圧入して繊維構造を損傷するのを防ぐために、紙アッセイと電子機器との間に2つのプラスチック製のスペーサを加えている。全システムがUSBポートによってラップトップに接続され、ラップトップではシステムからのデータをソフトウェアが集めて解析する。(図5B)LED/PDの対が、アッセイの各アーム上の読取域を取り囲む。ALT濃度が低く、青色色素複合体の形成が殆どない場合、赤色LEDからの殆どの光が読取域を通過し、PDによって検出される。ALT濃度が高く、青色色素複合体の形成が多くある場合、赤色LEDからの殆どの光が読取域によって吸収され又は散乱され、殆どの光がPDによって検出されない。(図5C)内部電子機器の図。
図5B】手持式携帯リーダの設計を示す図表である。(図5A)リーダは、剛性の金属板上に配置される光検出器で構成される。ヒンジにより、LEDを含む蓋が取り付けられる。このヒンジは、LEDとPDとの間に紙アッセイを容易に配置できるようにし、LED及びPDを繰り返し位置合せすることを可能にする。LED/PDによって解析される紙領域を制御し、LED/PDが紙に圧入して繊維構造を損傷するのを防ぐために、紙アッセイと電子機器との間に2つのプラスチック製のスペーサを加えている。全システムがUSBポートによってラップトップに接続され、ラップトップではシステムからのデータをソフトウェアが集めて解析する。(図5B)LED/PDの対が、アッセイの各アーム上の読取域を取り囲む。ALT濃度が低く、青色色素複合体の形成が殆どない場合、赤色LEDからの殆どの光が読取域を通過し、PDによって検出される。ALT濃度が高く、青色色素複合体の形成が多くある場合、赤色LEDからの殆どの光が読取域によって吸収され又は散乱され、殆どの光がPDによって検出されない。(図5C)内部電子機器の図。
図5C】手持式携帯リーダの設計を示す図表である。(図5A)リーダは、剛性の金属板上に配置される光検出器で構成される。ヒンジにより、LEDを含む蓋が取り付けられる。このヒンジは、LEDとPDとの間に紙アッセイを容易に配置できるようにし、LED及びPDを繰り返し位置合せすることを可能にする。LED/PDによって解析される紙領域を制御し、LED/PDが紙に圧入して繊維構造を損傷するのを防ぐために、紙アッセイと電子機器との間に2つのプラスチック製のスペーサを加えている。全システムがUSBポートによってラップトップに接続され、ラップトップではシステムからのデータをソフトウェアが集めて解析する。(図5B)LED/PDの対が、アッセイの各アーム上の読取域を取り囲む。ALT濃度が低く、青色色素複合体の形成が殆どない場合、赤色LEDからの殆どの光が読取域を通過し、PDによって検出される。ALT濃度が高く、青色色素複合体の形成が多くある場合、赤色LEDからの殆どの光が読取域によって吸収され又は散乱され、殆どの光がPDによって検出されない。(図5C)内部電子機器の図。
図6A】経時的な光透過率の安定性を考察するグラフ。(図6A)15分間にわたり装置から失われた液量。(図6B)15分間にわたる読取域における光透過率の変化。値は、最初の湿潤ゲインから乾燥状態のゲインを引いた差に対する測定時のゲインによって計算される光透過率のパーセンテージを示す。バーは標準誤差を示す。
図6B】経時的な光透過率の安定性を考察するグラフ。(図6A)15分間にわたり装置から失われた液量。(図6B)15分間にわたる読取域における光透過率の変化。値は、最初の湿潤ゲインから乾燥状態のゲインを引いた差に対する測定時のゲインによって計算される光透過率のパーセンテージを示す。バーは標準誤差を示す。
図7】ALTアッセイの持続時間にわたる計算ゲインの変化を示すグラフである。乾燥状態にある全流路のゲインを1に正規化する。試料ポートから読取域に血清が流れると、血清が読取域を完全に濡らして紙の光透過率を大幅に高め、それがゲインの大幅な上昇として視覚化される。ALTがある場合、青色色素複合体が読取域において形成され、徐々に増加する。青色色素複合体は光を吸収し、紙を透過する光の量を減らす。これは経時的なゲインの低下として認められる。
図8A】携帯型透過率リーダを用いたALT濃度の測定値を示すグラフである。様々なALT濃度の血清をアッセイに加え、各読取域におけるゲインの変化を15分間にわたって15秒ごとに記録した。(図8A)各読取域についてゲイン値を300秒の値に正規化した。所与の濃度における全ての値を平均した。(図8B)300秒から600秒の間の読取域ごとの時間に対する正規化済みのゲインとして反応速度を計算した。様々なALT濃度における傾斜値の平均及び標準誤差をプロットした。n=≧4。***はp値<0.001を示す。
図8B】携帯型透過率リーダを用いたALT濃度の測定値を示すグラフである。様々なALT濃度の血清をアッセイに加え、各読取域におけるゲインの変化を15分間にわたって15秒ごとに記録した。(図8A)各読取域についてゲイン値を300秒の値に正規化した。所与の濃度における全ての値を平均した。(図8B)300秒から600秒の間の読取域ごとの時間に対する正規化済みのゲインとして反応速度を計算した。様々なALT濃度における傾斜値の平均及び標準誤差をプロットした。n=≧4。***はp値<0.001を示す。
図9A】スキャナによるALT濃度の測定値を示すグラフである。携帯型透過率リーダ内の解析の16分後にそれぞれのALTアッセイを走査した。(図9A)ALT濃度ごとの読取域の代表的画像。(図9B)読取域の画素強度をImageJ内で解析した。ALT濃度ごとに平均画素強度及び標準誤差をプロットした。n=≧4。N.S.は有意でないことを示す。**は<0.01のp値を示し、***はp値<0.001を示す。様々な濃度の青色色素を紙アッセイに加え、Analyte Tester II及びスキャナ/ImageJを使って測定値を読み取った。
図9B】スキャナによるALT濃度の測定値を示すグラフである。携帯型透過率リーダ内の解析の16分後にそれぞれのALTアッセイを走査した。(図9A)ALT濃度ごとの読取域の代表的画像。(図9B)読取域の画素強度をImageJ内で解析した。ALT濃度ごとに平均画素強度及び標準誤差をプロットした。n=≧4。N.S.は有意でないことを示す。**は<0.01のp値を示し、***はp値<0.001を示す。様々な濃度の青色色素を紙アッセイに加え、Analyte Tester II及びスキャナ/ImageJを使って測定値を読み取った。
図10】1つのテスタの8つの流路についてLEDを駆動するデジタル−アナログ変換器(DAC)入力に応じたPDからのアナログ−デジタル変換器(ADC)出力をプロットしたグラフである。
図11】DAC値を流路ごとに別々に線形スケーリングした結果を示すグラフである。
図12】値の全範囲にわたって密接に重なる補正曲線を示すグラフである。
図13】測定装置の一例の一連の作業例を示す図である。
図14】受器1420における試料1410の存在を検出するために、受器1420における比色変化を使用する実装形態例を示す図である。
図15】受器における試料の存在を検出するために受器における電位変化を使用するシステム内の実装形態例を示す図である。
図16】感知すること、アナログデータを増幅すること、サンプリングすること、及びNFC対応スマートフォンに伝送することに関与する主要モジュールを強調するブロック図である。電圧レギュレータは、LED、光検出器、及び関連回路を駆動するのに十分な、スマートフォンから集めた電力を貯蔵する。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本明細書で開示するシステム、方法、及び機器の例によれば、本明細書に記載の技術の一態様は、これだけに限定されないが測定装置の一例の検出領域や他の部分等、測定装置の一部における比色変化を定量化することに関する。非限定的な例として、測定装置の一例の一部において測定される比色変化は、試料受器部分上に配置される所定量の試料を検出すること、又は流体管(これだけに限定されないが流路等)の測定線若しくは制御線に到達する所定量の試料を検出することに基づき得る。測定装置の一例は、これだけに限定されないが生体試料や他の化学的試料等の試料の少なくとも1つの成分を検出すること及び/又は定量化することによる比色変化を検出するように構成され得る。
【0032】
本明細書に記載のシステム、方法、及び機器の例の実施形態は、これだけに限定されないが(測定線又は制御線を含む)測定装置の一例の試料受器や他の部分等、測定装置の一部に試料を配置する効果の物理的性質を活用する。例えば、微小流体流路の試料受器部分内に血液を落とすことは、正確な測定結果を得るのにかかる時間のモニタリング開始を決定するために使用される比色変化を引き起こし得る。
【0033】
本明細書に記載の原理による方法のどの例も、血液や他の種類の生物学的、化学的、又は環境的試料を含む所定量の試料を受け付けるための受器を含む定量装置を使用して実施することができる。
【0034】
これらのシステム、方法、及び機器の例は、これだけに限定されないが測定装置の一例の試料受器や他の部分等、試料管の任意の膜部分を含む測定装置の一部の光学透過率の変化を測定するように構成され得る。本明細書のどの例でも、試料管は微小流体流路等の流路とすることができる。比色特性の変化は、色変化又は不透過率の変化を含む測定装置の一部における生化学分析に起因し得る。
【0035】
本明細書のどの例でも、アッセイに対する試料の反応の化学的性質(例えば反応時間、反応による色変化の波長、及び/又は反応が生じた領域の光学的応答の変化)に応じて比色変化の化学的性質は異なり得る。本明細書のどの例でも、これだけに限定されないが任意の紙ベースの部分、ガラスベースの部分、任意の高分子ベースの部分等、測定装置の関心領域を形成する基板又は他の膜の種類に応じて比色変化の化学的性質は異なり得る。例えば、材料の種類がアッセイに対する試料の反応の化学的性質に影響を及ぼす場合があり、又は検出器に伝わる電磁放射量を遮断することができる。別の例では、電磁放射源の種類及び/又は使用する検出器の種類がシステムの検出範囲に影響し得る。
【0036】
一実装形態例では、試料の存在を検出するために比色変化を使用することができる。測定装置の一部に血液や他の試料がない場合、測定装置の部分の色及び/又は不透過率は、例えばその装置の部分にある基板の材料に基づく。測定装置は、これだけに限定されないが、測定装置の一部を照らすためのLED等の電磁放射源を含み得る。測定装置の一部を通過し、検出器によって検出される電磁信号の強度、電磁波長、又は他の定量化可能な測度を測定するために、これだけに限定されないが光検出器(例えば能動ピクセルセンサ、電荷結合素子、フォトダイオード、光抵抗器、光電池、光電子増倍管、又は光電管)等の検出器を使用することができる。所定量の血液や他の試料が測定装置のその部分に到達すると、その部分の色及び/又は不透過率が変わるように構成される。測定装置の一部を照らすために、これだけに限定されないがLED等の電磁放射源が使用される。血液や他の試料の存在に基づいて測定装置の一部の強度、電磁波長、又は他の定量化可能な測度の任意の差を測定するために、これだけに限定されないが光検出器等の検出器を使用することができる。本明細書のシステム、方法、及び機器の例は、ノイズが低減した改善信号を検出器に与える。
【0037】
本明細書のシステム、方法、及び機器の例は、生化学的結合反応から生じる光透過率の変化の検出を容易にする。非限定的な例として、反応は、関心のある成分が試料内に多く存在するとき色が暗くなるサンドイッチアッセイ、関心のある成分が試料内に少なく存在するとき色が暗くなる競合アッセイ、又は経時的な色変化率が関心のあるタンパク質若しくは酵素の濃度と共に変化する酵素アッセイであり得る。
【0038】
図1Aは、本発明の一部の実施形態による測定装置100の説明図である。装置100は、診断基板110と、第1の部分130及び第2の部分140を含むベース基板120とを含み得る。装置100は持ち運びができても良い。本発明の一部の実施形態によれば、測定装置100が使い捨てである。本発明の一部の実施形態によれば、診断基板110が使い捨てであり、ベース基板120が複数回(例えば2、3、4、5、6、7回、又はそれ以上)使用され得る。
【0039】
診断基板110は、その上に形成される1つ又は複数(例えば2、3、4、5、6、7、又はそれ以上)の流路112と、流路112内に形成される検出領域114と、流路112に流体結合される試料受器116とを含み得る。本発明の一部の実施形態によれば、診断基板110は紙ベースの部分を含むことができ、流路112及び試料受器116は紙ベースの部分内に少なくとも部分的に形成され、又は紙ベースの部分上に少なくとも部分的に配置される。
【0040】
ベース基板120は、ベース基板120内に少なくとも部分的に形成され、又はベース基板120上に少なくとも部分的に配置される近距離無線通信(NFC)用のアンテナ(不図示)を含み得る。NFCのアンテナ設計は当技術分野で知られており、ここでは詳しくは説明しない。ベース基板120は、アンテナに接続され、ベース基板120内に少なくとも部分的に形成され、又はベース基板120上に少なくとも部分的に配置される電子回路(不図示)を含み得る。電子回路は、試料又はその派生物からの出力信号に応じてデータを生成することができる。ベース基板120は、電子回路に接続される電源(不図示、例えば薄膜電池)を含み得る。薄膜電池の代わりに、装置100内には他の種類の電源が含まれ得る。かかる電源は、例えば電池、コンデンサ、超コンデンサ、有機光電池等の太陽電池、及び/又は誘導結合コイル等のエネルギハーベスティングデバイス等を含み得る。
【0041】
第1の部分130は、第1の部分130内に少なくとも部分的に形成され、又は第1の部分130上に少なくとも部分的に配置される1つ又は複数(例えば2、3、4、5、6、7、又はそれ以上)の光検出器132を含み得る。光検出器132は、電子回路に接続され得る。光検出器が2つ以上ある場合、それらをこれだけに限定されないが無作為、円、五角形、及び六角形を含む任意の所定パターンに配置することができる。第2の部分140は、その上に形成される1つ又は複数(例えば2、3、4、5、6、7、又はそれ以上)の光源142を含み得る。光源が2つ以上ある場合、それらをこれだけに限定されないが無作為、円、五角形、及び六角形を含む任意の所定パターンに配置することができる。光検出器132及び光源142の位置は、第1の部分130と第2の部分140との間に診断基板110を挟み込むために第2の部分140を折り重ねるとき、光源142が放つ光が検出領域114を通過して光検出器132によって検出され得るように配置される。第2の部分140は、試料が試料受器116と接触することを可能にする切抜き144を含み得る。本発明の一部の実施形態によれば、第1の部分130、第2の部分140、及び診断基板110は、位置合せ過程を容易にするための1つ又は複数の位置合せマーカをそれぞれ含み得る。本発明の一部の実施形態によれば、位置合せマーカは、外部のポストを使用して正確に位置合せできるようにする切抜きとすることができる。それらのポストは、装置から物理的に切り離されていても良く、又は基板110を間に保持しながら部分140と部分130とを正確な距離隔てるメカニカルスペーサに組み込まれても良い。図1Aでは、光源142が折り重ねる側の部分上に示されているが、光検出器132が折り重ねる側の部分上にあっても良いことを予期する。
【0042】
この折り重ね機構は、光検出器132と光源142との間の距離を制御できるようにする。折り重ねた後、第2の部分140の折り重ね前の位置に薄膜電池(例えば紙ベースの電池)を配置し、装置100の電子回路に接続することができる。
【0043】
本発明の一部の実施形態によれば、第2の部分140が第1の部分130に物理的に連結しない。それらの実施形態では、折り重ねは不要である。
光源は、これだけに限定されないが有機又は無機発光ダイオードやレーザを含む任意の半導体発光素子とすることができる。本発明の一部の実施形態によれば、装置100は、ほぼ単色の透過光を得るために試料と光検出器との間に配置される第1のフィルタを更に含み得る。一例では、装置100が光源と試料との間に配置される第2のフィルタを更に含み得る。光源として単色光源を使用する場合、第2のフィルタは不要である。
【0044】
一部の例では、試料を照らすための光のマルチチャネルスペクトルを得るために、広帯域光源と試料との間に複数の第2のフィルタを配置する。このようにして試料のスペクトル情報を得ることができる。或いは、複数の第2のフィルタを使用することなく、複数の狭帯域光源を取り入れることができる。
【0045】
概して、光源及び光検出器は、光発生器及び検出器のほぼ一致した対を形成し得る。光検出器は、光源が発生させる放射の色帯/波長に概ね敏感であるように選択することができる。例えば、照射LEDからの光をできるだけ多く検出するために、照射LEDと同じ色に敏感なフォトダイオードを使用することができる。
【0046】
光源及び光検出器の特定の対象色/波長は、測定/解析される試料の性質、使用する試薬、予期される分析物の濃度、及び使用する特定の試薬に基づく予期される反応度のうちの1つ又は複数に少なくとも部分的に基づき得る。従って、本明細書に記載の概念の一部の実装形態例では、装置が定量的情報を与えるように構成される特定の種類の試料に基づく特定の色/波長帯に敏感な光検出流路を提供するために、定量分析及び診断用の一体型装置がLED−光検出器の対と電子回路とを含み得る。
【0047】
電源は、定電流源、制御及び省エネのためのパルス幅変調(PWM)、バックブーストパワー設定等の様々な駆動設定で電子回路、光源、及び光検出器を駆動することができる。
【0048】
本発明の一部の実施形態によれば、装置100は、電子回路に接続され、データを記憶するように構成されるデータ記憶装置を更に含み得る。データ記憶装置は、コンピュータ可読命令、データ構造、プログラムモジュールや他のデータ等の情報を記憶するための任意の方法又は技術によって実装される揮発性、不揮発性、可換型、及び固定型の有形媒体を含み得る。該当するデータ記憶装置の例は、これだけに限定されないがRAM(ランダムアクセスメモリ)、ROM(読取専用メモリ)、EPROM(消去プログラム可能ROM)、EEPROM(電気的消去可能PROM)、及びフラッシュメモリや他のメモリ技術を含む。
【0049】
図1Bは、本発明の一部の実施形態による診断基板200の断面を示す。診断基板200は、診断基板200内に少なくとも部分的に形成され又は診断基板200上に少なくとも部分的に配置される、試料250を受け付けるための試料受器216と、流路212の流れ方向に沿った試薬領域215と、検出領域214と、任意選択的な制御領域218とを含み得る。流れ方向は、毛管現象の結果としての流路212内の試料250の移動方向である。
【0050】
試薬領域215は、試料250内の分析物と反応する、又は試料250内の分析物と複合体を形成する1つ又は複数の化学物質を含み得る。本発明の一部の実施形態によれば、試薬領域215は、ナノ粒子の表面上に抗体が結合された複数の染色ナノ粒子を含むことができ、抗体は試料内の標的タンパク質に固有である。
【0051】
制御領域218内で行う較正測定を使用し、検出領域214内で行われる測定を較正することができる。制御領域218は、較正測定を行うための光源及び光検出器の対を備え得る。較正測定は、湿潤状態及び乾燥状態の両方で行うことができる。この較正ステップは、試料ごとのばらつきによる測定誤差を減らすことができる。本発明の一部の実施形態によれば、検出領域214における較正済みの透過率(Tcalibrated)は公式
【0052】
【数1】
【0053】
を使用して計算することができ、Tdet_wetは検出領域が湿潤時の透過率値であり、Tdet_dryは検出領域が乾燥しているときの透過率値であり、Tcont_wetは制御領域が湿潤時の透過率値であり、Tcont_dryは制御領域が乾燥しているときの透過率値である。
【0054】
装置100はハウジングを更に含み得る。図1Cは、装置100を囲うことができる装置300を示す。装置300は、ハウジング310及び試料を受け付けるための開口部320を含み得る。試料が診断基板110と接触できるように、開口部320を診断基板110の試料受器116と位置合せすることができる。
【0055】
本明細書に記載の測定装置は、流体試料内の分析物の濃度を定量化するために使用することができる。制限なしに、流体試料は、生体試料、化学試料、又は環境試料とすることができる。本明細書に記載の測定装置は、これだけに限定されないが酵素免疫測定法(ELISA)を含むリガンド結合法を使用し、試料内の標的タンパク質の濃度を定量化するために使用することができる。
【0056】
本発明の一部の実施形態によれば、標的タンパク質の濃度はサンドイッチリガンド結合法を使用して測定することができる。それらの実施形態では、診断基板の試薬領域215が、試料内にある標的タンパク質又はその一部に固有の第1の抗体を含み得る。第1の抗体は、複数の染色ナノ粒子の表面上にあり得る。標的タンパク質がナノ粒子上の第1の抗体に結合して複合体を形成すると、それらの複合体が検出領域214に向けて流れ方向に沿って移動し得る。検出領域は、標的タンパク質に固有の第2の抗体を含み得る。第2の抗体は複合体に結合し、それらの複合体を検出領域内に保つことができる。第2の抗体に結合しない他のものは検出領域から離れて移動し続ける。従って、検出領域内に保たれるナノ粒子の量が標的タンパク質の濃度に比例する。酵素及び基板を含むもの等、他の種類のサンドイッチリガンド結合法を使用することもできる。
【0057】
本発明の一部の実施形態によれば、競合リガンド結合法を使用して標的タンパク質の濃度を測定することができる。それらの実施形態では、診断基板の試薬領域215が、試料内にある標的タンパク質又はその一部に固有の第1の抗体を含み得る。第1の抗体は、複数の染色ナノ粒子の表面上にあり得る。標的タンパク質がナノ粒子上の第1の抗体に結合して複合体を形成すると、それらの複合体が検出領域214に向けて流れ方向に沿って移動し得る。検出領域は、ナノ粒子上の第1の抗体に結合可能な第2の抗体を含み得る。この第2の抗体は、ナノ粒子上の抗体に結合するために標的タンパク質と競合する。標的タンパク質にまだ結合していない抗体/ナノ粒子の複合体だけが第2の抗体に結合する。従って、検出領域内に保たれるナノ粒子の量が標的タンパク質の濃度に反比例する。酵素及び基板を含むもの等、他の種類のサンドイッチリガンド結合法を使用することもできる。
【0058】
本明細書に記載の装置は、標的分析物を含む反応に基づき、試料内の標的分析物の濃度を定量化することもできる。それらの実施形態の一部では、標的分析物を含む反応が、特定の波長において光を吸収する化合物を作り出すことができる。例えば、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)は、Lアラニン及びアルファケトグルタル酸からのピルビン酸塩及びグルタミン酸塩の形成に触媒作用を及ぼし得る。ピルビン酸塩は、ピルビン酸オキシダーゼがある状態で過酸化水素を形成するように反応する。過酸化水素を使用し、西洋わさびペルオキシダーゼは、4−アミノアンチピリン及びN−エチル−N−(2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル)−3,5−ジメトキシアラニンを酸化させて青色色素複合体を形成する。
【0059】
試料内の分析物の濃度を定量化するために、検出領域の透過率の変化を使用することができる。外部装置(例えば腕時計等のウェアラブルデバイスやスマートフォン等の携帯型装置)による第1の近距離無線通信(NFC)トランザクションが、本明細書に記載の測定装置を始動させることができる。測定装置を始動させた後、検出領域及び制御領域における乾燥時の光透過率を測定するために乾燥較正ステップを実行する。次いで、利用者が測定装置の試料受器に試料(例えば血液、血清、尿、唾液)を接触させる。測定装置は、検出領域及び制御領域における光透過率を継続的に又は断続的に測定することができる。本発明の一部の実施形態によれば、測定装置は、検出領域及び制御領域における光透過率を接触後の2つ以上の所定期間において測定することができる(例えば約1〜30分)。それらの測定で得たデータをデータ記憶装置内に記憶することができる。
【0060】
本発明の一部の実施形態によれば、透過率測定のそれぞれは、一定入力モード又は一定出力モードによって行うことができる。例えば図2A及び図2Bに図示する例の中で示すように、測定装置の一定入力モード又は一定出力モードの動作を使用し、透過率の変化と共に信号が単調且つ反復可能に変化し得る。電磁放射源からの電磁波が、測定装置の色に敏感な領域を通過し且つ/又は色に敏感な領域から散乱し、検出器に到達する。この非限定的な例では、電磁放射源をLEDとして示し、検出器を光検出器として示す。他の例では、他の種類の励起光源及び検出器を使用することができる。
【0061】
本明細書のシステム、方法、及び機器の例によれば、基礎をなす生化学的特徴を定量化するために、測定装置の一部(これだけに限定されないが膜)の透過率の変化をより正確に読み取ることができる。透過率の変化が電子システムの全感応範囲に及ぶようにシステムの一例の特性を適合させる。膜の両側に配置したLED及び光検出器を使用して透過率の変化を測定する方法の非限定的な2つの例を図2A及び図2Bに関連して説明する。
【0062】
図2Aでは、LED信号がほぼ一定に保たれ、光検出器信号(PD信号として示す)が測定出力値である。例えば、LEDに定電流を与え、光検出器において測定される電圧を透過率の測度として使用する。この例では、透過率が上昇するにつれてPD信号も増加して示されている。このグラフは線形として示されているが、他の例では検出器の反応が曲線、単調増加、又は(信号飽和により)横ばいであり得る。透過率が高い場合、PD信号も高い。この方法の例は透過率が高い場合に実施できるが、光検出器における信号がノイズフロアに到達し得るので、透過率が低い場合は実施できない。
【0063】
図2Bでは、PD信号がほぼ一定に保たれ、LED信号が測定出力値である。例えば、光検出器において測定される定電圧を発生させるためにLEDに与えられる電流が変えられ、LEDへの電流を透過率の測度として使用する。この例では、透過率が上昇するにつれてLED信号が低下して示されている。透過率が低い場合、LED信号は高い。この方法の例は透過率が低い場合に実施できるが、LEDを駆動するのに使用する電流がノイズフロアに到達し得るので、透過率が高い場合は実施できない。
【0064】
一例では、図2A及び/又は図2Bに関して説明した方法を測定装置が使用する単一の測定セッションへと組み合わせ、検出システムの全範囲にわたり透過率をより正確に測定するのを助けることができる。
【0065】
本明細書のシステム、方法、及び機器の例によれば、適切なモードが透過率及びアッセイの種類に基づいて選択され、検出システムの測定出力値のほぼ全範囲にわたり比較的大きい信号を測定できるようにする。
【0066】
これらの方法の例は、所与の状況においてどの方法を使用するのかを選ぶ方法について如何なる制約も加えない。一実装形態例では、図2Aに関して説明した方法は透過率の値が高い測定についてより正確な結果をもたらすことができ、図2Bに関して説明した方法は透過率の値が低い測定についてより正確な結果をもたらすことができる。図2A又は図2Bに関して説明した方法を使用することができる中域の透過率がある。
【0067】
図2A及び/又は図2Bに関して説明した方法は、これだけに限定されないが複数の入力電流及び/又は出力電圧を使用して透過率を測定すること、及び/又はアッセイが進捗するにつれて経時的な透過率の変化を測定すること等、精度を改善するために他の方法と組み合わせることができる。
【0068】
一例では、電気ノイズ及び量子化ノイズが全体的な測定ノイズに著しく寄与しないように、図2A及び/又は図2Bに関して説明した方法を単一の測定セッションへと組み合わせ、透過率の全範囲にわたり検出システムの電気ノイズフロアよりもはるかに高く測定を保つのを助ける複数の測定様式をもたらすことができる。
【0069】
本発明の一部の実施形態によれば、透過率測定のそれぞれは、光源からの光強度を上げることに応じて光検出器の出力を記録することによって行うことができる。別の言い方をすれば、光源が透過率測定のそれぞれの間光強度を徐々に上げ、光検出器が光強度の上昇に応じて光透過率を検出する。本明細書で「ゲイン」と呼ぶ値を導出するために、光源の光強度(又は光源の電流)と光検出器の出力との間の関係を使用することができる。標的分析物の濃度を定量化するために、ゲインと時間との間の関係を使用することができる。図3は、ゲイン値の経時変化についてのグラフの一例を示す。点Aは、検出領域が乾燥している(即ち検出領域が試料と接触する前である)ことを示す。点Bは、検出領域内の標的分析物の濃度が安定した定常状態を示す。標的分析物の濃度は、点Aと点Bとのゲインの差から抽出することができる。データ記憶装置内に記憶されたデータを第2のNFCトランザクションによって外部装置に伝送することができる。外部装置はそのデータを解析し、試料に関する定量的情報(例えば分析物の濃度)を提示することができる。
【0070】
非限定的な実装形態例では、測定装置は、これだけに限定されないが血液等の生体由来試料を解析するために使用することができる。測定装置から集められるデータを解析し、血液中の特定の栄養素の有無を検出することができる。例えば、これだけに限定されないが血一滴等の試料を対象者又は別の貯蔵源から取ることができ、測定装置の一例の測定部分上にある又は測定部分に投入されるアッセイ又は他の化学物質を使用して解析する。別の例では、測定装置の一例の測定部分への投入前に試料を処理することができる。血漿を導出するために血液試料をフィルタにかけることができ、血漿が測定装置の一例の測定部分に投入される。測定装置から集められるデータを解析してHIVやマラリアを検出することができ、又はかかるデータを使用し、コレステロール値若しくはこれだけに限定されないが鉄分、亜鉛、ヨウ素、ビタミンA値等の微量養素の濃度を評価することができる。
【0071】
本明細書の原理による測定装置の一例は、搭載電源を必要としない安価のグルコースリーダとして構成することができる。グルコース値を解析するための分析物を含むグルコースリーダの一例の指定された部分に、血液試料又は血液から導出した試料を投入することができる。本明細書に記載の原理によれば、反応解析を完了するのに十分な時間が経過したとき、利用者に指示を与えるようにプロセッサ実行可能命令(アプリケーションソフトウェアを含む)を構成することができる。更に、グルコースリーダ装置の一例にデータ読出し機能が組み込まれなくても良い。グルコースリーダの一例は、計算装置若しくは他のデータ記憶域に対して、又は取得システムにとって十分な時間が経過したとき、例えば通信プロトコルを使用してデータを伝送するように構成することができる。一部の実施形態では、グルコースリーダの一例が使い捨てであり、限られた回数再利用可能であり、又は限られた期間にわたって(例えば約2週間や約1ヵ月にわたって)再利用可能であり得る。安価な使い捨てのグルコースリーダは、血液試料を解析してグルコース値の測定を行うためにそれぞれ使用可能な複数の流路を含み得る。
【0072】
本発明の一部の実施形態によれば、解析物がフェリチンである。フェリチンとは、細胞内で認められる鉄分を貯蔵するタンパク質である。フェリチン濃度は対象者の血中鉄分量を示し得る。本発明の一部の実施形態によれば、分析物がレチノール結合タンパク質(RBP)である。RBP濃度はビタミンAの量を示すことができる。本発明の一部の実施形態によれば、分析物がC反応性タンパク質(CRP)である。高いCRP濃度は炎症を示すことが分かっている。他の分析物の非限定的な例は、コレステロール、ヨウ素、トロポニン、及び他のタンパク質を含む。本発明の一部の実施形態によれば、分析物がアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)である。ALTは、典型的には肝臓に損傷又は病気があるかどうかを見るために測定される。通常は低いALT濃度が血中に見られる。しかし肝臓に損傷又は病気があると、それがALTを血流内に放ち、ALT濃度が上昇する。
【0073】
本明細書の原理による測定装置の一例は、試料内のトロポニン濃度を検出するように構成することができる。一例では、試料は血液試料とすることができ又は血液試料から導出され得る。試料内のトロポニン濃度の上昇は、検出可能な量に過ぎなくても、心筋に対する損傷又はこれだけに限定されないが心筋梗塞等の心疾患のバイオマーカの役割を果たすことができる。例えば、トロポニン濃度の僅かな上昇でさえ、心筋細胞死の指標の役割を果たし得る。非限定的な例として、胸痛が心臓発作によるものかどうかを判定するために、この実装形態を使用することができる。この測定装置の例を使用し、トロポニン濃度を定量化することができ、トロポニン濃度が心筋梗塞と合致する心筋壊死を示すかどうかを測定の解析に基づいて判定することができる。この解析は、測定装置の一例のプロセッサ又は外部計算装置のプロセッサを使用して実行することができる。
【0074】
本明細書に記載の原理によれば、反応解析を完了するのに十分な時間が経過したとき、利用者に指示を与えるようにプロセッサ実行可能命令(アプリケーションソフトウェアを含む)を構成することができる。測定装置の一例は、計算装置若しくは他のデータ記憶域に対して、又は取得システムにとって十分な時間が経過したとき、例えば通信プロトコルを使用してデータを伝送するように構成することができる。
【0075】
一実装形態例では、測定装置の一例が、試料に関する定量的情報を与えるように構成され得る。測定装置の一例は、少なくとも1つの紙ベースの部分を有する基板と、基板の紙ベースの部分内に少なくとも部分的に形成され又は基板の紙ベースの部分上に少なくとも部分的に配置される試料受器と、電子回路とを含み得る。電子回路は、基板内に少なくとも部分的に形成され又は基板上に少なくとも部分的に配置される。電子回路は、試料又は試料の派生物からの出力信号に基づいて解析結果を生成する。
【0076】
試料を解析することによる定量的情報は、例えばグルコース値を明らかにするために、又は病気、例えばHIVやマラリア等を診断するために使用することができる。これだけに限定されないが血液等の試料が本明細書に記載の測定装置上に配置されると、予め堆積させたアッセイを使用してその試料を解析することができる。非限定的な例として、試料の少なくとも1つの成分を示すデータ又は他の情報を与えるように、本明細書に記載の測定装置の一例に基づく測定プラットフォームを構成することができる。一例では、そのデータ又は他の情報を測定装置のメモリに記憶することができ、又は無線伝送することができる。別の例では、これだけに限定されないが色変化の指示、記号、及び/又はデジタル読出し等の定量的測定に由来するデータ又は他の情報の指示を与えるように、本明細書に記載の測定装置の一例に基づく測定プラットフォームを構成することができる。これだけに限定されないがグルコース値、ビタミンD値の指示、病気(これだけに限定されないがHIVやマラリア等)の陽性若しくは陰性の指示、及び/又は病気の進行度等、個人の状態についての指示を与えるために定量的測定の結果を使用することができる。一部の例では、これだけに限定されないがマラリアやHIVの診断等、タンパク質又は抗体の存在を明らかにし且つ/又はそれらを定量化することを含め、医療診断に使用することができる電気的な定量的測定を行うように装置を構成することができる。
【0077】
この測定装置は当技術分野で知られている方法を使用して製造することができる。例えば、電子回路及び他の構成要素をプリント工程内で紙上に形成することができる。微小流体装置は、例えばMartinez et al:Proc.Natl.Acad.Sci.USA 105,19606−11(2008);Lab.Chip.8,2146−50(2008)、及びAngew.Chem.Int.Ed.Engl.46,1318−20(2007)が開発した技法を使用して構築することができ、これらの参考文献のそれぞれは、参照によりその全体を本明細書に援用する。マイクロLED及びマイクロフォトダイオードはどちらも市販されている。
【0078】
集積された電子装置及び微小流体装置を形成するために、装置用の適切なパターン化紙プラットフォームを設計し、開発することができる。紙ベースの基板は、吸上げ速度、試料保持、所要のアッセイ(例えばグルコースオキシダーゼ)との統一性及び親和性に基づいて選択することができる。アッセイ内で使用する酵素を安定させるために、スクロースやトレハロース等の生体適合性賦形剤を使用することができる。所望の診断のために血漿分離膜を選択することもできる。
【0079】
微小流体装置又は装置層を作成するために他の多くの基板を使用することができる。装置層は、多孔質ポリマやエラストマ、剛性又は可撓性のナノファイバ複合体、生物学的に選択的な膜(例えば流動モザイクモデル)等、多岐にわたる半透水性材料で構成され得る。紙と同様の吸上げ効果を助け得る他の材料も使用することができる。それらの材料は、吸上げ特性を有するジェル、並びに分析物及び他の流体を試験ウェル(test well)に律動的に送る蠕動運動を作り出すように設計され得る電磁材料を含み得る。
【0080】
本明細書の原理によるどの例でも、測定装置は、変調された形状適合性を有する柔軟なコンフォーマル電子装置として構成することができる。形状適合性を操作することは、測定装置の機能上の又は電子的な特性を乱すことなしに表面の凸凹に適合できる測定装置を作り出すことを可能にする。全体的なコンフォーマル装置の形状適合性は、構造の柔軟度及び/又は伸縮度に基づいて操作し変調することができる。コンフォーマル電子装置の構成要素の非限定的な例は、処理装置、メモリ(これだけに限定されないが読取専用メモリ、フラッシュメモリ、ランダムアクセスメモリ等)、入力インタフェース、出力インタフェース、通信モジュール、受動回路部品、能動回路部品等を含む。一例では、コンフォーマル電子装置が、少なくとも1つのマイクロコントローラ及び/又は他の集積回路部品を含み得る。一例では、コンフォーマル電子装置が、これだけに限定されないが近距離無線通信(NFC)対応コイル等の少なくとも1つのコイルを含み得る。別の例では、コンフォーマル電子装置が、無線認証(RFID)コンポーネントを含み得る。
【0081】
本発明の別の態様は、測定装置、例えば上記の測定装置に組み込まれるタイマ又は他のカウンタ機構に関する。本明細書に記載のシステム、方法、及び機器の例によれば、測定装置の一例を活性化するための技術が提供される。非限定的な例として、測定装置の一例の活性化の例は、定量的測定装置の一例の受器部分上に配置される所定量の試料を検出することに基づき得る。例えば、測定装置の一例は、比色変化、導電率の変化、又はこれだけに限定されないが生体試料や他の化学試料等の試料の少なくとも1つの成分の他の検出及び/若しくは定量化による定量化可能な他の変化を検出するように構成することができる。比色変化は、例えば光源及び光検出器を使用することによって検出することができる。導電率の変化は、例えば一定の閾値を上回る電流を検出することによって検出することができる。
【0082】
本発明の一部の実施形態によれば、タイマを備える測定装置を本明細書で提供し、この装置は、(a)試料を受け付けるための試料受器と、(b)試料の存在を検出するために試料受器に結合されるセンサと、(c)流路によって試料受器に流体結合され、それにより試料又はその派生物を試料受器から得る検出領域と、(d)検出領域に結合され、試料又はその派生物の特性を読み取るように構成される検出器と、(e)センサ及び検出器に結合されるタイマであって、試料検出時に所定の時間にわたって活性化され、所定の時間は試料を読み取る時間を表し、所定の時間に到達した後タイマが検出器を活性化し、検出器は測定値を出力する、タイマとを含む。
【0083】
本発明の一部の実施形態によれば、センサによって検出される透過率の変化が試料の存在を示す。それらの実施形態の一部では、センサが光源及び光検出器を含む。
本発明の一部の実施形態によれば、センサによって検出される導電率の変化が試料の存在を示す。それらの実施形態の一部では、センサが試料受器内で試料受器に接続される電子部品を含む。例えば、試料受器内に試料を加えると、試料の存在を示す電子回路内の電流をもたらすことができる。
【0084】
本発明の一部の実施形態によれば、測定装置が試料受器に結合される通信インタフェースを更に含み、通信インタフェースは外部装置からコマンド信号を受信して試料の受け入れを開始する。
【0085】
本発明の一部の実施形態によれば、所定の時間後にセンサが非活性化される。
本明細書に記載のシステム、方法、及び機器の例によれば、開始時間及び停止時間の自動モニタリングによって測定の持続時間を制御することにより、測定装置の正確な読取りを得るのを助ける測定を開始するための技術が提供される。本明細書に記載のシステム、方法、及び機器の例は、開始ボタンによる利用者の関与若しくは他の入力、又は電話上のモバイルアプリケーションを用いたソフトウェアによって制御される開始と共に使用できるが、それらは必須ではない。本明細書に記載のシステム、方法、及び機器の例は、例えばこれだけに限定されないが正確な測定結果を得るのにかかる時間をモニタリングする開始を決定するために、微小流体流路内に血液を落とすこと等、試料を受器に配置する効果の物理的性質を活用する。
【0086】
本明細書に記載のシステム、方法、及び機器の例は、より優れた精度を促進し、利用者による間違いの可能性をなくし若しくは著しく減らし、且つ/又は測定装置を使い易くする。
【0087】
本明細書に記載の原理による方法のどの例も、予め設定したスケジュール及び/又は一定時間間隔で受器をポーリングし、本明細書に記載の原理による測定装置の一例の受器に所定量の試料が配置されているかどうかを検出するために使用可能な電子部品又は他の構成要素を含む定量装置を使用して実施することができる。受器に試料があるという指示は、測定装置の他の構成要素に伝送し又は他の方法で伝えることができる。
【0088】
本明細書に記載の原理による方法のどの例も、受器に試料があるという指示を受信し、タイマ又は他のカウンタ機構を活性化させるための電子部品を含む測定装置を使用して実施することができる。タイマ又は他のカウンタ機構の例は、受器のアッセイと試料内の1つ又は複数の分析物とが反応し、結果を発生させるのにかかると予期される時間(T1)をモニタするように予め設定することができる。結果は、任意の比色変化及び/又は電位変化を含む測定し得る任意の変化とすることができる。
【0089】
本明細書に記載のシステム、方法、及び機器の例によれば、測定装置の一例の受器は、測定装置の一例の受器から貯蔵域に通じる微小流体流路又は他の導管に結合され得る。一例では、受器を試料ウェル又は他の受口として構成することができる。試料の少なくとも一部が、微小流体流路又は他の導管を通って受器から貯蔵域に流れ、さもなければ移動することができる。貯蔵域は、貯蔵域に到達する試料の一部と反応するアッセイを含み得る。貯蔵域における反応を測定し且つ/又は解析することで、試料の少なくとも1つの成分を示すデータ又は他の定量化可能な情報をもたらすことができる。
【0090】
一例では、本明細書に記載のシステム、方法、及び機器の例を使用し、運営費を抑えた再利用可能且つ安価なシステムを作り出すことができる。他の例では、測定装置の一例の少なくとも一部を使い捨てとすることができる。例えば、受器及び/又は微小流体流路若しくは他の導管が、少なくとも1つの紙ベースの部分及び/又は少なくとも1つの高分子ベースの部分を含み得る。
【0091】
別の例では、タイマ又は他のカウンタ機構の例は、試料の少なくとも一部が受器から貯蔵域に流れさもなければ移動するのにかかると予期される時間(T2)、及び/又は貯蔵域のアッセイと貯蔵域に到達する試料の一部との間の反応の少なくとも一部が貯蔵域において起きる時間(T3)をモニタするように構成することができる。タイマ又は他のカウンタ機構の例は、受器に血液又は他の試料があるという指示に基づいて時間間隔T2及び/又はT3をモニタし始めるようにトリガされ得る。
【0092】
本明細書のシステム、方法、又は機器の例によれば、測定装置は、利用者からの入力なしに、試料内の分析物の量を測定するために自動で動作するように構成することができる。例えば、受器に所定量の試料が配置されると、測定装置の一例は、試料の存在に基づき、受器における比色変化や電位変化を含む変化を自動検出するように構成され得る。測定装置の一例は、タイマ(又は他のカウンタ機構)を自動で開始するように構成され得る。タイマ(又は他のカウンタ機構)の一例は、例えば試料の少なくとも一部が受器から貯蔵域に流れさもなければ移動するのにかかると予期される時間(T2)、及び/又は貯蔵域のアッセイと貯蔵域に到達する試料の一部との間の反応の少なくとも一部が貯蔵域において起きると予期される時間(T3)をモニタするように予め設定することができる。予期される時間間隔に達すると、これだけに限定されないが貯蔵域のアッセイと試料の一部との間で貯蔵域において起きる反応の結果の測定等、測定を自動で行うように測定装置の一例を構成することができる。従って、期間T1、T2、及び/又はT3の経過に基づいて測定装置の一例の任意の構成要素をトリガするためにユーザ入力は必要ない。どの実装形態例でも、任意の構成要素をトリガするためのユーザ入力を含むユーザ入力を求めるように測定装置を構成することができる。
【0093】
図13は、測定装置の一例の一連の作業例を示す。所定量の血液又は他の試料1310を受器1320上に配置する。受器1320の一例は、測定線1332及び任意選択的に制御線1334を含む流路1330に結合することができる。測定装置の構成要素1340を使用し、予め設定したスケジュール及び/又は一定時間間隔でポーリングし、血液又は他の試料1310が受器1320上に配置されているかどうかを判定する。試料内の1つ又は複数の分析物に対する受器1320にあるアッセイの反応が、これだけに限定されないが比色変化や電位変化等の変化を引き起こし得る。行われるポーリングは、比色変化、電位変化、及び/又は他の変化が受器1320において検出されたかどうかをシステムの構成要素における信号から判定することを含み得る。節電のために、ポーリング又は受器1320における変化の定量化に関与しない電子部品を休止状態又はオフ状態にしておくことができるように測定装置の一例を構成することができる。受器1320に血液又は他の試料があるという指示を受信すると、少なくとも1つの予め設定したタイマ(又は他のカウンタ機構)1350を活性化することができる。少なくとも1つのタイマ(又は他のカウンタ機構)1350は、アッセイと分析物とが反応して結果を発生させるのにかかると予期される任意の時間(T)をモニタするように設定することができる。任意の比色変化及び/又は電位変化を含む如何なる変化もモニタすることができる。他の例では、本明細書に記載の原理の何れかに従って任意の期間T1、T2、及び/又はT3をモニタするように、少なくとも1つのタイマ(又は他のカウンタ機構)1350を設定することができる。
【0094】
図14は、受器1420における試料1410の存在を検出するために、受器1420における比色変化を使用する実装形態例を示す。血液又は他の試料1410が受器1420に配置されない場合、受器1420の色及び/又は不透過率は、例えば受器1420の基板及び受器1420にあるアッセイの任意の分析物に基づく。測定装置は、受器1420の少なくとも一部を照らすための、これだけに限定されないがLED等の電磁放射源を含み得る。受器1420の強度、電磁波長、又は他の定量化可能な測度を血液や他の試料がない状態で測定するために、これだけに限定されないが光検出器等の検出器を使用することができる。所定量の血液又は他の試料が受器1420上に配置されると、受器1420における色及び/又は不透過率が変わるように構成される。受器1420の少なくとも一部を照らすために、これだけに限定されないがLED等の電磁放射源を使用する。血液又は他の試料の存在に基づいて受器1420の強度、電磁波長、又は他の定量化可能な測度の任意の差を測定するために、これだけに限定されないが光検出器等の検出器を使用することができる。測定データの差が、受器1420における血液又は他の試料1410の存在に基づくかどうかを判定するために比較1460を行う。比較の結果に基づき、別の構成要素をトリガするための時間間隔のモニタリングを少なくとも1つのタイマ(又は他のカウンタ機構)に開始させることができる。例えば、貯蔵域に到達する分析物/アッセイを測定するための状態機械をタイマ(又は他のカウンタ機構)に始動させることができる。一例では、測定装置は比較を行うための解析エンジンを含み得る。別の例では、比較を行うために、測定を示すデータを外部の計算装置に伝達することができる。
【0095】
一例では、受器に試料があることは、受器における色変化、不透過率の変化(半透明性の増減)、又は他の比色変化を引き起こし得る。受器において比色変化が生じたかどうかを判定するために、受器を断続的に又は一定時間間隔でポーリングするように測定装置を構成することができる。ポーリングは、照明光源に断続的に電源投入して電磁放射を使用して照らすこと、及び検出器に電源投入して照射による受器における光学特性を検出することを含み得る。変化が検出されない場合、構成要素をオフ状態又は休止状態に戻すことができる。受器における比色変化が検出される場合、測定装置の1つ又は複数の他の電子部品を活性化し又は電源投入し、これだけに限定されないが、タイマ又は他のカウンタ機構において予め設定された時間間隔後に、又は受器における比色変化の定量化に基づいて決定される時間間隔後に、貯蔵域における反応の結果を測定すること等の他の操作を実行することができる。貯蔵域における測定を示すデータは測定装置のメモリに記憶し、又は外部の計算装置に伝送することができる。
【0096】
図15は、受器における試料の存在を検出するために受器における電位変化を使用するシステム内の実装形態例を示す。この測定装置は、受器に血液又は他の試料がない場合、例えば受器の或る部分から別の部分への電気路がないように構成することができる。例えば、受器に又は他の試料がない場合、高電圧側(図15の例では約+3.3V)から低電圧側(この例ではVout)に電流が流れる電気路がない。図15の例では、接地(GND)からの経路があり、そのためVoutは接地されている。この測定装置は、所定量の血液又は他の試料が受器に配置されると、例えば受器の或る部分から別の部分への電気路が作られるように構成することができる。例えば、血液又は他の試料が受器に配置されると、血液又は他の試料の塩分又は他の伝導成分が、受器を横断して(例えば血液又は他の試料及び受器の膜の一部を横断して)電流が流れることを可能にする。受器の電気(インピーダンスを含む)特性の変化を測定し、血液又は他の試料の存在を示すことができる。例えば、抵抗器を適切に選択することに基づき、Voutを測定可能な約3.3Vに到達させることができる。別の例では、試料がない受器の電気特性の測定値を試料がある受器の電気特性の測定値と比較することに基づいて変化を明らかにすることができる。
【0097】
一例では、受器における試料の存在は、受器におけるインピーダンス測定を用いた電気特性の変化を引き起こし得る。例えば、貯蔵域の一部におけるインピーダンス差の指標として電気特性の差を測定し、試料内の電解質の存在を示すことができる。受器において電気特性の変化が生じたかどうかを判定するために、受器を断続的に又は一定時間間隔でポーリングするように測定装置を構成することができる。ポーリングは、受器の一部にわたり電位差を加えるために電圧源を断続的に電源投入することを含むことができ、インピーダンス測定を行うことができる。インピーダンスの変化が検出されない場合、構成要素をオフ状態又は休止状態に戻すことができる。受器におけるインピーダンスの変化が検出される場合、測定装置の1つ又は複数の他の電子部品を活性化し又は電源投入し、これだけに限定されないが、タイマ又は他のカウンタ機構において予め設定された時間間隔後に、又は受器における比色変化の定量化に基づいて決定される時間間隔後に、貯蔵域における反応の結果を測定すること等の他の操作を実行することができる。貯蔵域における測定を示すデータは測定装置のメモリに記憶し、又は外部の計算装置に伝送することができる。
【0098】
本明細書に記載のシステム、方法、及び機器による測定装置のどの例でも、分析物とのアッセイの反応を示すデータ又は他の任意のデータをシステムのメモリに伝送し、且つ/又は外部メモリや他の記憶装置、ネットワーク、及び/若しくは外部の計算装置に伝達(伝送)することができる。本明細書のどの例でも、外部記憶装置は、データセンタ内のサーバを含むサーバとすることができる。本明細書の原理によるシステム、機器、又は方法のどの例にも適用可能な計算装置の非限定的な例は、スマートフォン、タブレット、ラップトップ、スレート、電子書籍リーダ、他の電子リーダ、手持式若しくは着用式計算装置、Xbox(登録商標)、Wii(登録商標)、又は他のゲームシステムを含む。
【0099】
本明細書に記載のシステム、方法、及び機器による測定装置のどの例も、不連続使用のために構成され得る。
本明細書に記載のシステム、方法、及び機器による測定装置のどの例も、センサユニット、センサパッチ、診断装置、又は本明細書に記載の通りに動作され得る他の任意の測定装置として構成され得る。非限定的な例として、測定装置の一例はグルコースモニタ又は他のグルコース測定装置とすることができる。
【0100】
本明細書に記載のシステム、方法、及び機器の例によれば、装置は多くの異なる種類の感知様式について構成され得る。感知様式の非限定的な例は、圧力、インピーダンス、静電容量、血流、及び/又はこれだけに限定されないが化学物質、タンパク質、抗体等の特定の物質の存在を検出すること及び/又は定量化することを含む。一部の例では、環境状態の電気測定を行うために装置を実装することができる。
【0101】
本発明は本明細書で開示する特定の方法、プロトコル、及び試薬等に限定されず、それらは変わり得ることを理解すべきである。本明細書で使用する用語は特定の実施形態を説明するためのものに過ぎず、特許請求の範囲によってのみ定められる本発明の範囲を限定することは意図しない。
【0102】
本明細書及び特許請求の範囲で使用するとき、文脈上別段の定めがない限り単数形は複数の言及を含み、その逆も同様である。動作例以外に、又は別段の定めがある場合、本明細書で使用する成分又は反応条件の量を表す全ての数字は全ての例において「約」という用語で修飾されるものとして理解すべきである。
【0103】
本明細書の実践又は試験では知られている任意の方法、装置、及び材料を使用できるが、その関連でそれらの方法、装置、及び材料を本明細書で開示する。
本発明の一部の実施形態を以下の番号付けした段落内に列挙する。
【0104】
1.(a)試料を受け付けるための試料受器であって、診断基板内に少なくとも部分的に形成され又は診断基板上に少なくとも部分的に配置される、試料受器、(b)試料受器に接続される流路、(c)診断基板内に少なくとも部分的に形成され又は診断基板上に少なくとも部分的に配置される検出領域であって、流路によって試料受器に結合される、検出領域、(d)診断基板内に少なくとも部分的に形成され又は診断基板上に少なくとも部分的に配置される制御領域であって、流路によって検出領域に結合される、制御領域を含む診断基板と、(e)ベース基板内に少なくとも部分的に形成され又はベース基板上に少なくとも部分的に配置される近距離無線通信(NFC)用のアンテナ、(f)アンテナに接続され、ベース基板内に少なくとも部分的に形成され又はベース基板上に少なくとも部分的に配置される電子回路であって、試料又はその派生物からの出力信号に応じてデータを生成する、電子回路、(g)電子回路に接続され、第1の部分内に少なくとも部分的に形成され又は第1の部分上に少なくとも部分的に配置される第1の光検出器及び第2の光検出器を含む第1の部分、(h)電子回路に接続され、第2の部分内に少なくとも部分的に形成され又は第2の部分上に少なくとも部分的に配置される第1の光源及び第2の光源を含む第2の部分であって、第1の光源からの光が検出領域を通過して第1の光検出器によって検出され、第2の光源からの光が制御領域を通過して第2の光検出器によって検出されるように光検出器及び光源を位置合せするために第1の部分及び第2の部分が配置される、第2の部分、及び(i)電子回路に接続され、少なくとも1つの光検出器及び光源に給電するように構成される薄膜電池を含むベース基板とを含む、測定装置。
【0105】
2.診断基板が、試料又は試料の派生物と反応する試薬を更に含む、段落1に記載の測定装置。
3.試薬が複数の染色ナノ粒子である、段落2に記載の測定装置。
【0106】
4.電子回路に接続され、データを記憶するように構成されるデータ記憶装置を更に含む、段落1に記載の測定装置。
5.試料の存在を検出するために試料受器に結合されるセンサを更に含む、段落1に記載の測定装置。
【0107】
6.そのセンサを周期的に又は予め設定したスケジュールに従ってポーリングし、試料の有無を判定する、段落5に記載の測定装置。
7.センサ及び光検出器に結合されるタイマを更に含み、タイマは試料検出時に所定の時間にわたって活性化され、所定の時間は試料を読み取る時間を表し、タイマは所定の時間に到達した後光検出器を活性化し、光検出器は測定値を出力する、段落5に記載の測定装置。
【0108】
8.所定の時間後にセンサが非活性化される、段落7に記載の測定装置。
9.測定装置の少なくとも一部を囲うためのハウジングを更に含む、段落1に記載の測定装置。
【0109】
10.第1のNFCトランザクションにより外部装置によって始動される、段落1に記載の測定装置。
11.測定装置が第2のNFCトランザクションによって外部装置にデータを伝送し、それにより外部装置がデータを処理して試料に関係する定量的情報を提供する、段落10に記載の測定装置。
【0110】
12.外部装置が携帯型装置又はウェアラブルデバイスである、段落10又は11に記載の測定装置。
13.定量的情報が、グルコース値、T細胞濃度、微生物濃度、水系病原菌濃度、ウシ血清アルブミン(BVA)濃度、細菌濃度、ウイルス量、抗原量、抗体量、結核の診断、デング熱の診断、心筋酵素濃度、及びマラリアの診断の少なくとも1つを含む、段落11に記載の測定装置。
【0111】
14.第1の部分及び第2の部分が診断基板を挟み込むように第1の部分を第2の部分上に折り重ねる、段落1に記載の測定装置。
15.第1の部分及び第2の部分が診断基板を挟み込むように第2の部分を第1の部分上に折り重ねる、段落1に記載の測定装置。
【0112】
16.試料が流体試料である、段落1に記載の測定装置。
17.流体試料が、血液、血清、唾液、及び尿から成るグループから選択される、段落16に記載の測定装置。
【0113】
18.診断基板が紙ベースの部分を含む、段落1に記載の測定装置。
19.試料から値を測定するための測定装置であって、試料を受け付けるための試料受器と、試料の存在を検出するために試料受器に結合されるセンサと、流路によって試料受器に流体結合され、それにより試料又はその派生物を試料受器から得る検出領域と、検出領域に結合され、試料又はその派生物の特性を読み取るように構成される検出器と、センサ及び検出器に結合されるタイマであって、試料検出時に所定の時間にわたって活性化され、所定の時間は試料を読み取る時間を表し、所定の時間に到達した後タイマが検出器を活性化し、検出器は測定値を出力する、タイマとを含む、測定装置。
【0114】
20.試料が流体試料である、段落19に記載の装置。
21.センサが光源及び光検出器を含み、光源からの光が試料受器を通過して光検出器によって検出されるように光源及び光検出器が配置される、段落19に記載の装置。
【0115】
22.センサによって検出される透過率の変化が試料の存在を示す、段落21に記載の装置。
23.センサが、試料からの電気信号を検出するように構成される電気部品を含む、段落19に記載の装置。
【0116】
24.センサによって検出される導電率の変化が試料の存在を示す、段落23に記載の装置。
25.センサを周期的に又は予め設定したスケジュールに従ってポーリングし、試料の有無を判定する、段落19に記載の装置。
【0117】
26.所定の時間後にセンサが非活性化される、段落19に記載の装置。
27.試料受器に結合される通信インタフェースを更に含み、通信インタフェースは外部装置からコマンド信号を受信して試料の受け入れを開始する、段落19に記載の装置。
【0118】
28.外部装置が携帯型装置又はウェアラブルデバイスである、段落27に記載の装置。
29.検出器に結合されるデータ記憶装置を更に含み、検出器は測定値をデータ記憶装置内に記憶する、段落19に記載の装置。
【0119】
30.通信インタフェースが測定値を示す信号を送信する、段落27に記載の装置。
31.流体試料が、血液、血清、唾液、及び尿から成るグループから選択される、段落20に記載の装置。
【0120】
32.段落1に記載の測定装置を使用して試料に関する定量的情報を与える方法であって、
(i)第1の近距離無線通信(NFC)トランザクションにより、外部装置を使って測定装置を始動するステップであって、測定装置は検出領域及び制御領域に対して第1の透過率測定を行い第1のデータを作成する、始動するステップと、
(ii)測定装置の試料受器に試料を接触させるステップであって、測定装置は、接触後の第1の所定期間において検出領域及び制御領域に対して第2の透過率測定を行い第2のデータを作成する、接触させるステップと、
(iii)第2の透過率測定後の第2の所定期間において検出領域及び制御領域に対して第3の透過率測定を行い第3のデータを作成するステップと、
(iv)第1のデータ、第2のデータ、及び第3のデータを第2のNFCトランザクションによって測定装置から外部装置に転送するステップと、
(v)第1のデータ、第2のデータ、及び第3のデータの解析に基づく定量的情報を提供するステップとを含む、方法。
【0121】
33.試料が流体試料である、段落32に記載の方法。
34.解析が、第1のデータ及び第2のデータに対して第3のデータを正規化することを含む、段落32に記載の方法。
【0122】
35.第1のデータ、第2のデータ、及び第3のデータを転送前にデータ記憶装置内に記憶するステップを更に含む、段落32に記載の方法。
36.外部装置が携帯型装置又はウェアラブルデバイスである、段落32に記載の方法。
【0123】
37.定量的情報が、グルコース値、T細胞濃度、微生物濃度、水系病原菌濃度、ウシ血清アルブミン(BVA)濃度、細菌濃度、ウイルス量、抗原量、抗体量、結核の診断、デング熱の診断、心筋酵素濃度、及びマラリアの診断の少なくとも1つを含む、段落32に記載の方法。
【0124】
38.流体試料が、血液、血清、唾液、及び尿から成るグループから選択される、段落33に記載の方法。
39.第1の光源及び第2の光源が透過率測定のそれぞれの間光強度をそれぞれ徐々に上げ、第1の光検出器及び第2の光検出器が光強度の上昇に応答して光透過率をそれぞれ検出する、段落32に記載の方法。
【0125】
定義
別段の定めがない限り、又は文脈上明らかな場合を除き、以下の用語及び語句は下記に示す意味を含む。別段の定めがない限り、又は文脈上明らかな場合を除き、以下の用語及び語句は、それらの用語又は語句が関係する技術分野内で得た意味を除外しない。本発明の範囲は特許請求の範囲によってのみ限定されるので、これらの定義は特定の実施形態の説明を支援するために示し、特許請求の範囲に記載の本発明を限定することは意図しない。更に、文脈上必要とされない限り、単数形の用語は複数形を含むものとし、複数形の用語は単数形を含むものとする。
【0126】
本明細書で使用するとき、「含んでいる」又は「含む」という用語は、実施形態にとって有用な構成、方法、及びそのそれぞれの構成要素に関して使用するが、有用であろうとなかろうと、明記されていない要素も含む余地がある。
【0127】
本明細書で使用するとき、「〜から実質的に構成される」という用語は、所与の実施形態に必要な要素を指す。この用語は、本発明のその実施形態の基本的且つ新規の、又は機能上の特性に物質的に影響しない要素があることを認める。
【0128】
「NFC」という用語は、短い(例えば20センチ以下の)距離にわたって装置間のデータのやり取りを可能にする近距離無線通信、短距離の高周波無線通信技術を指す。
本明細書では「分析物」という用語は、本明細書に記載の測定装置を使用して解析(例えば検出及び定量化)し、モニタすることができる試料(例えば生体液や工業用流体)中の物質又は化学成分を指すために使用する。分析物の例は、これだけに限定されないが、無機又は有機小分子、イオン、核酸(例えばDNAやRNA)、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、単糖類、多糖類、代謝産物、ホルモン、抗原、抗体、生体細胞、ウイルス、及びリポソームを含む。
【0129】
文脈上明らかな場合を除き、単数形の用語「a」、「an」、及び「the」は複数形の言及を含む。同様に、文脈上明らかな場合を除き「又は」という語は「及び」を含むことを意図する。
【0130】
動作例以外に、又は別段の定めがある場合、本明細書で使用される成分又は反応条件の量を表す全ての数字は全ての例において「約」という用語で修飾されるものとして理解すべきである。パーセンテージと共に使用するとき、「約」という用語は述べられている値の±1%を意味し得る。例えば約100は、99から101までを意味する。
【0131】
本明細書に記載のものと同様の又は等価の方法及び材料を本開示の実践又は試験で使用できるが、適切な方法及び材料を以下に記載する。「備える(comprises)」という用語は「含む(includes)」を意味する。略語「e.g.」はラテン語の例えば(exempli gratia)に由来し、本明細書では非限定的な例を示すために使用する。従って、略語「e.g.」は「例えば」という用語と同義である。
【0132】
本明細書では好ましい実施形態を図示し詳しく説明してきたが、様々な修正、追加、置換等を本発明の趣旨から逸脱することなく行うことができ、従ってそれらの形態も添付の特許請求の範囲の中で定める本発明の範囲に含まれると見なされることが当業者には明らかである。更に、まだ示されていない限りにおいて、本明細書で説明し図示した様々な実施形態の何れかを更に修正し、本明細書で開示する他の実施形態の何れかの中で示す特徴を組み込むことができることを当業者なら理解されよう。
【0133】
本願の全体にわたって引用される文献参照、交付済み特許、公開特許出願、及び同時係属特許出願を含む全ての特許及び他の刊行物を、例えば本明細書で開示する技術に関連して使用され得るかかる刊行物内に記載の方法を説明し開示するために、参照により本明細書に明確に援用する。それらの刊行物は、本願の出願日以前のその開示について専ら提供される。この点において如何なるものも、先行発明や他の任意の理由により、本発明者らがかかる開示に先行する資格がないと認めることだと解釈すべきではない。それらの文献の日付又は内容に関する表現についての全ての記述は出願人が入手可能な情報に基づき、それらの文献の日付又は内容の正しさに関する如何なる承認も構成しない。
【0134】
本開示の実施形態の説明は網羅的であることも、本開示を開示した厳密な形態に限定することも意図しない。本開示の具体的実施形態及び例を例示目的で本明細書に開示したが、当業者なら認識するように様々な等価の修正形態が本開示の範囲内であり得る。例えば、方法ステップ又は機能を所与の順序で示したが、代替的実施形態では機能を異なる順序で実行することができ、又は機能をほぼ同時に実行することができる。本明細書で示した本開示の教示は、必要に応じて他の手順又は方法に適用することができる。本明細書で開示した様々な実施形態を組み合わせて更なる実施形態をもたらすことができる。本開示の態様を必要に応じて修正し、上記の参考文献及び出願の構成、機能、及び概念を採用して本開示のまた更なる実施形態をもたらすことができる。
【0135】
他の実施形態では上記の実施形態の何れかの特定の要素を組み合わせ、又は置換することができる。更に、本開示の特定の実施形態に関連する利点をこれらの実施形態に関して説明してきたが、他の実施形態もかかる利点を示すことができ、本開示の範囲に含まれるために全ての実施形態が必ずしもかかる利点を示す必要はない。
【実施例】
【0136】
以下の例は本発明の幾つかの実施形態及び態様を示す。本発明の趣旨又は範囲を変えることなく様々な修正、追加、置換等を行うことができ、かかる修正形態及び改変形態も添付の特許請求の範囲の中で定める本発明の範囲に含まれることが当業者には明らかになる。本明細書で開示する技術を以下の例によって更に示し、これらの例は決して更に限定的であると解釈すべきではない。
【0137】
実施例1:酵素による紙ベースの微小流体装置からデータを素早く取得するための携帯型透過率比色計
本明細書で開示するのは、微小流体紙解析装置における色変化を客観的且つ使い易い方法で集めて解析するための、高感度の携帯型リーダである。マイクロ発光ダイオードとマイクロ光検出器との間に紙アッセイを挟み込むことにより、リーダが周辺光の状態とは無関係に紙を通る光透過率を定量化する。リーダの実用性を例証するために、血中の肝臓健康指標であるアラニンアミノトランスフェラーゼを測定するための使い捨ての紙ベースの微小流体アッセイを作成した。この紙アッセイ及びリーダシステムは、人間の基準範囲にわたるアラニンアミノトランスフェラーゼ濃度を正確に区別した。結果は10分以内にもたらされ、複雑な画像解析なしに自動生成された。更にこのリーダは、反射光を測定する卓上型スキャナよりも低い濃度を区別することができた。このポイントオブケア診断の性能は、研究所によるスペクトロメータ検査の精度並びに低い精度をこれまで示してきた安価な携帯型アッセイの適時性に比肩する。これらの特徴を組み合わせることは、資源の乏しい環境に極めて重要な診断を柔軟に展開できるようにする。
【0138】
材料及び方法
微小流体測定装置は、血漿及び血液中のALT濃度を測定するために過去に開発されてきたが、それらの装置は複数の層を含み、結果を視覚的に解釈し解析するために最適化された(Pollock et al.,Sci Transl Med 2012,4,152,152ra129)。我々の透過率ベースのリーダに適合するALTアッセイを作成するために、単一層の紙から成る装置(図4A)を本明細書で開発した。新たな配置では、各装置が単一の試料ポート域と、円形貯蔵域及び円形読取域につながる流路をそれぞれ含む4つのアームとで構成される。試薬を十分に配置できるようにするために、及び1.5mmx1.5mmのLED/PDを十分に取り囲むように、貯蔵域及び読取域の直径はどちらも3mmである(図4B)。
【0139】
この装置を製造するために、Adobe Illustrator CS3によって装置のパターンを作成し、ColorQube 8870プリンタ(Xerox)を使ってそのパターンをWhatman No.1ろ紙(GE Healthcare)上にプリントした。アッセイの各シートをEconRedIオーブン(Vastex International)に204℃でかけ、紙の中にワックスを溶かして疎水性バリアを作成した。試薬を追加できるようにするために、装置の背面を粘着シート(Fellowes)で密閉した。
【0140】
血清中のALT濃度を明らかにするために、一連の化学反応を使用して赤色光を強く吸収する濃い青色を作り出した(図4C)。これらの反応では、Lアラニン及びアルファケトグルタル酸からのピルビン酸塩及びグルタミン酸塩の形成にALTが触媒作用を及ぼす。ピルビン酸塩は、ピルビン酸オキシダーゼがある状態で過酸化水素を形成するように反応する。過酸化水素を使用し、西洋わさびペルオキシダーゼは、4−アミノアンチピリン及びN−エチル−N−(2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル)−3,5−ジメトキシアラニン(DAOS)を酸化させて青色色素複合体を形成する。
【0141】
ワックスのプリント及び紙の密閉後、貯蔵域及び読取域に発色試薬を加えた。貯蔵域内に、−アラニン及びアルファケトグルタル酸で構成される試薬1を0.50μL落とした。読取域内には、ピルビン酸オキシダーゼ及び西洋わさびペルオキシダーゼで構成される試薬2を0.50μL落とした。全ての装置を室温で5分間乾燥させた。陽性の制御アームを作るために、西洋わさびペルオキシダーゼ及び過酸化水素で構成される試薬3をアーム3の読取域上に0.50μL落とし、アッセイを室温で更に5分間乾燥させた。
【0142】
装置を密閉して蒸発による水分喪失を最小限にするために、ナイフプロッタ(Craftrobo Silhouette CC330L−20SD)を使用して直径7.5mmの孔を有するラミネートの正方形区画を切った。装置ごとに、乾燥させた紙アッセイの中心上に卓上ラミネータを使ってラミネートを直に施した。リーダ内のピンと位置合せするために、予め印付けした特定の位置に1.5mmの孔を各装置内に3つ穿孔した。アッセイは、使用するまで乾燥箱内に室温で保管した。
【0143】
オプトエレクトロニクス
アッセイの定量化は、BioStampDx(商標)オプトエレクトロニクスプラットフォームとの一体化によって可能にされる(図5A)。紙装置は、紙を通る光透過率を調べるように設計される電気回路の2つの部分の間に挟み込まれる。オプトエレクトロニクス回路が、中心波長λ=642nmの発光ダイオード(LED)を使って試験位置を照らす(図5B図5C)。光がろ紙基板を透過し、最大感度λ=620nmのフォトダイオードによって検出される(図5B)。これらの波長は、600nm未満で光を強く吸収するヘモグロビン等のあり得る血中夾雑物による吸収を最小限にしながら、青色色素複合体による光の吸収を最大限にするように選択した(Zijlstra et al.,1991)。励起LED及びフォトダイオードの各対によってそれぞれの試験サイト及び制御サイトを測定した。励起の強度は電圧調整電流源によって制御され、その電圧調整電流源は10ビットデジタル−アナログ変換器によって制御される。トランスインピーダンス増幅器回路が、フォトダイオードからの電流を10ビットアナログ−デジタル変換器によって読み取られる電圧に変換する(図5C)。
【0144】
診断は、状態機械の設計パターンを使用し、C言語で書かれたファームウェアを有するマイクロコントローラ(MSP430,Texas Instruments)によって操作される。状態機械は、増幅器及びアナログ−デジタル変換器に対して正確且つ高信頼の測定を得るのに十分な整定時間を与えるようにプログラムされる。状態機械は、LEDを励起し、透過光をサンプリングし、次の測定流路に切り替えるシーケンスを経る。最後に、状態機械は不揮発性メモリ及び/又はコンピュータへのデータ転送を処理する。クロックトデータ試料の間、マイクロコントローラを節電のためにスリープ状態にする。本システムは、デスクトップ又はラップトップコンピュータへのユニバーサルシリアルバス(USB)接続によって給電され、付随のデスクトップアプリケーションを使用して制御され、又は後で取得するためにデータを不揮発性メモリ内に記憶した状態で電池から給電される。
【0145】
流路間のばらつきは、全てのLEDチャネル間で励起増幅器を多重化することによって低減され、同様にフォトダイオード増幅器も測定流路間で多重化される。このことは、流路のばらつきの大部分をLED及びフォトダイオードの許容差にしておく。残りの誤差は、制御測定に基づくソフトウェア較正によって軽減される。
【0146】
電圧調整電流源もトランスインピーダンス増幅器も、構成要素の数及び費用を低減する帰還トポロジを活用する。更に、本システムをラップトップのUSB接続又は安価な電池を使用する現場で導入できるように、低供給レール上で動作するように電圧調整電流源及びトランスインピーダンス増幅器を設計した。供給電圧を10%変化させることが、測定結果の1%未満のばらつきを発生させることを試験が示した。電圧調整電流源及びトランスインピーダンス増幅器におけるそれぞれのマルチプレクサは、各流路上の独立した測定を保証する。低消費電力を維持しながらオフセット及び1/fノイズによる誤差を減らすために、レールツーレール低出力オートゼロ増幅器を選択した。
【0147】
位置合せ、較正、及び誤差原因
アッセイを貫通して穿孔される位置合せの柱及び孔を使用し、紙アッセイのマイクロチャネル及び読取域を位置合せする。位置合せの問題による誤差を減らすために、1.5mmの光検出器窓に容易に適合するように、直径3mmの読取域を設計した。従って、アッセイは全ての側面上で最大0.75mmずれても良く、結果は同様のままになる。更に、アッセイを意図的に0.5mm移動させることは、試験結果に著しい変化をもたらさなかった。
【0148】
各測定位置において、一連のLED電流についてフォトダイオードの出力を測定した。LED電流とフォトダイオードの出力との間の関係は非線形方程式によって特徴付けられる。加重最小二乗法を使用してデータに対するこの方程式の最良適合を計算し、アッセイを通る光透過率の測度としてその適合のゲインを解釈する。試料を加える前又はその直後、各アッセイについてアッセイの乾燥時にゲインをまず測定する。この時点では血清は読取域に流れていない。この較正は、オプトエレクトロニクスの特性、アッセイの寸法及び位置合せ、紙繊維の密度、塵等におけるばらつきを補正する。その後の全ての測定をこの乾燥ゲインに正規化する。この乾燥較正後、各読取域を通る光透過率を15分間にわたって15秒ごとに測定した。血清によって読取域を濡らすとアッセイの透明性が高まり、ゲインが上昇する。この湿潤後、それぞれの読取域内に形成される青色色素複合体の量がランベルトベールの法則(Beer.1852)に従って光の透過率を下げ、経時的なゲインの低下を引き起こす。次いで、この低下の傾斜として反応速度を計算する。
【0149】
結果
本明細書に記載の紙の設計により、光透過率に対する蒸発の影響を試験した。或る期間にわたりどの程度の流体がアッセイから蒸発するのかを明らかにするために、アッセイの試料ポートに血清を12.5mL加え、その重さの変化を15分間(本明細書に記載の酵素アッセイの通常の持続時間)追跡した。21℃及び15%の相対湿度の試験条件では、アッセイが1分ごとに平均0.3μLの流体を失った(図6A)。これはアッセイの期間にわたる著しい(36%の)液量の減少のため、オープン試料ポート域からのこの蒸発が読取域における光透過率に影響を及ぼしたかどうかを調べた。各アッセイについて、血清を12.5μL加え、読取域における光透過率の変化を15分間測定した。蒸発の測定とは対照的に、読取域における光透過率の変化は15分間で1%未満であった(図6B)。総合して、これらの測定は、読取域をラミネートで密閉することでこの特定の領域からの蒸発を防ぎ、その光透過特性を保つことを示す。
【0150】
我々の携帯型透過率リーダの機能を例証するために、ヒト血清内の広範なALT濃度にわたるALTアッセイからデータを集めた。濃度ごとに、2つのアッセイ内の4つの読取域によって光透過率を追跡した。各ALTアッセイを実行するために、アッセイをリーダ内に配置し、スパイク血清を12.5μL加えた。テスタの蓋を閉じ、乾燥アッセイに対して初期較正を行ってLEDの強度及び位置合せのばらつきを補正し、その後、光透過率の測定を15分間にわたって15秒ごとに行った。
【0151】
15分の読取時間にわたり、流路ごとの測定ゲインが予測可能な方法で変化した。最初に、乾燥状態にある全ての読取域についてゲインを1に正規化した。毛管力が血清を4つの流路及び読取域に引き込むと、読取域が完全に湿潤し、その光透過率が大幅に上昇した。これは乾燥状態に比べたゲインの大幅な増加として見られる(図7)。ALTがある場合、青色色素複合体が読取域内で形成され、経時的に濃度が上昇する。青色色素複合体の増成が赤色光を吸収し、透過される光量を減らし、経時的にゲインを減少させる(図7)。
【0152】
ALT濃度ごとに、300秒から900秒まで測定したゲイン値を300秒の値に正規化した。読取域が300秒までに完全に湿潤したが、著しい発色はなかったので300秒の値への正規化を選択した。経時的なこれらのゲイン値の平均がプロットされ、様々なALT濃度間で強い区別を示した(図8A)。300秒から600秒の間の測定の各組の傾斜として反応速度を計算し、ALT濃度に対してプロットした。反応速度はALT濃度に対して線形に変化した(y=−0.002421x+0.03822,R=0.9104)。ALT濃度ごとの反応速度の変化が著しく異なるかどうかを判定するために、スチューデントt検定を行って各濃度を6IU/Lと比較した。25IU/L以上の全ての値は、p値が0.001未満の状態で6IU/Lと著しく異なった(図8B)。
【0153】
各ALTアッセイの光透過率データを集めることに加え、血清を追加してから16分後にフラットベッドスキャナを使って各アッセイを更に走査した。各ALT濃度の典型的な走査は、低濃度のALTを区別するのが視覚的に困難だと示した(図9A)。反射率リーダによって集められるデータを模倣するために、ImageJソフトウェアを使い読取域内の平均画素強度を定量化し(Schneider et al,Nature Methods 2012,9,671−675)、ALT濃度ごとにそれらの値をプロットした。光透過率リーダと同様に、平均画素強度はALT濃度の範囲にわたり線形に変化した(y=0.1747x+191.8,R=0.9242)。ALT濃度ごとの平均画素強度の変化が著しく異なるかどうかを判定するために、スチューデントt検定を行って各濃度における画素強度を6IU/Lにおける画素強度と比較した。25IU/Lを上回る値は6IU/Lと著しく異なったが、25IU/Lの値はそうではなかった(図9B)。従って、本明細書に記載の光透過率リーダは、フラットベッドスキャナよりも小さいALT濃度の変化を検出することができた。
【0154】
解説
本明細書に示した診断システムは、指腹での採血による血一滴等、僅かな試料容量からのALT濃度の迅速なポイントオブケア測定を可能にする。紙アッセイは、血漿を分散させるための流路、乾燥させた基板、及び酵素を含む。様々な濃度のALTによる色形成が経時的に蓄積し、10分以内の定量化を可能にする。リーダは多重化されたマイクロLED、及び各試験領域にわたる光透過率の動的変化を捕捉するためのPDを含む。経時的な光透過率の変化として計算される測定済みの反応速度はALTの濃度と共に単調変化する。診断は、通常の人間の範囲である6IU/Lから300IU/Lまでの試料内のALT濃度を測定することができる。更にこの診断は、走査及び画像解析よりも優れた低濃度のALTの区別を示した。
【0155】
この診断には既存の解決策に勝る幾つかの利点がある。この診断では少量の血清しか必要ではなく、そのため血液試料を静脈注射ではなく指腹での採血から取ることができる。診断の紙ベースの部分は小さく、安価且つ使い捨てであり、医療従事者が大量のアッセイを遠隔地に運ぶことを可能にする。過去の透過率に基づくシステムとは異なり、植物油での事前湿潤が不要なので本システムの方が使い易い(Ellerbee et al.,2009)。代わりに、紙アッセイの読取域をプラスチックフィルムで密閉して蒸発を最小限に抑え、測定期間の全体を通して紙が湿潤したままになる。
【0156】
リーダは携帯型且つロバストである。他の多くの紙ベースのポイントオブケア診断と異なり、本明細書に記載の手法は高度に小型化され定量的であり、少濃度のALTを高精度で感度良く検出できるようにする。リーダは自らのプロセッサを有する独立型であり、電力を入手できない環境内で使用され得る。リーダは、電池又はラップトップや他の携帯型装置へのUSB接続によって動作させることができる。リーダは自己較正式であり、外部標準又は中央検査室設備との比較を必要としない。最後に、リーダは無限に再利用可能だが、必要に応じて容易に交換するのに十分安価でもある。
【0157】
傾斜に基づく測定は2つの理由からデータの精度を高める。まず、実験期間中に多くのデータ点が集められる。それらのデータ点の全てから傾斜を計算し、最終的な測定を個々の読取誤差及び外れ値に対してより許容力のあるものにする。第2に、終点ではなく傾斜を測定することにより、様々な箇所における紙の厚さの僅かな違いが測定に著しく影響することがない。
【0158】
ラテラルフローアッセイを定量化するための代替的手法は、スキャナ又は携帯電話のカメラを使用することを含む。これらの手法では、面の光学特性による影響を著しく受ける反射光を測定する。その結果、それらの手法はアッセイ内の吸収体の密度を正確にサンプリングしない場合がある。更に、これらの手法は計算コストが高くことによると手動且つ主観的な画像処理技法を必要とする。具体的には、個人間の血漿内のばらつきが結果に著しく影響する可能性がある。血漿を加えることによる光学特性の変化を正確に測定するには更なる処理が必要である。走査及び撮像方法は更に、本明細書に示す手法よりも著しく多くの電力を使用し、このことは資源の乏しい環境でのかかる方法の実用性を限定する。最後に、とりわけ携帯電話の画像は周辺光の状態、並びに電話自体によるゲイン、露光、及び他の画像パラメータの制御されていない調節に敏感である一方、スキャナは時間及び環境に依存する光源の特性の影響をしばしば受ける。分かっている光条件下で吸収の変化を自動測定することにより、本明細書に記載の診断はこれらの問題を回避し、より優れた正確さ及び精度をもたらす。
【0159】
我々の診断の制限は、ニトロセルロース基板の微小規模の厚さ/湿潤パターンのばらつき、並びに光検出器及びLEDの出力信号のばらつきによって引き起こされる光散乱の差異を含む。より管理されていない実地調査においてこれらの問題に対処するために、これらの摂動を考慮し、個々の装置間のばらつきを正規化するために較正測定を取り入れている。その結果生じるハードウェア及びアッセイ内のばらつきは、測定に対して取るに足らない影響しか有さない。
【0160】
本明細書で示した測定は、給電及びデータ転送のためにコンピュータへのUSB接続を使用したが、1.5Vの電池がシステムに給電することもできる。更にマイクロコントローラは、結果を定量化し、様々な方法の何れかによって後で取得するためにそれを不揮発性メモリ内に記憶するのに十分な計算能力を有する。本システムは比較的低いスループットを有し、単一のアッセイを約10分で測定する。しかし、紙アッセイ及びオプトエレクトロニクスの安さ及び小ささは、資源が限られた環境内で一連の診断を展開できるようにする。
【0161】
本明細書で示したのは、資源が乏しい、及び他のポイントオブケア環境内で展開するために設計されたポイントオブケアALT測定のための診断である。この診断の精度は、研究所による分光光度試験の精度に比肩する。試料を現地外に送る必要なしに定量的結果が分単位で得られる。大量生産では、この読出し電子機器の価格は20米ドル未満であることが予期される一方、個々の紙アッセイの価格は1ドル未満である。
【0162】
全体的にこの診断システムは非常に柔軟であり、比色アッセイからデータを集めることについて将来の大いなる可能性を示す。小型化した形態で、2cmの紙アッセイ上に多数の反応を配置し、様々な色を紙上で発生させることができる。それらの反応のそれぞれについて、特定のLED/PDの対を選択して光透過率の測定を最適化することができる。特定の濃度範囲を対象にするために、紙の厚さ、試薬の濃度、及び電子機器の設計を適合させることができる。総合して、このことは数多くの血液分析物を同時に評価する使い捨ての迅速で安価な装置を可能にすることができ、インフラがない世界の奥地に展開することができる。
【0163】
実施例2:実施例1の装置に関する流路固有の較正
構成要素のばらつき、位置決めのばらつき、及びニトロセルロース膜の不均一性を含む複数の理由により、光検出器(PD)における信号が同じ診断基板上の流路間で異なることがある。本明細書で示したのは、このばらつきにも関わらず、吸収変化の正確な測定を行うためにシステムを較正するための手順である。
【0164】
LED−PDの入出力関係
図10は、1つのテスタの8つの流路についてLEDを駆動するDAC入力に応じたPDからのADC出力をプロットする。LEDとPDとは、ニトロセルロース膜を配置することなしに空隙によって隔てられる。このプロットには3つの領域がある。原点付近に、非ゼロADC出力を発生させる最小DAC値がある。この領域の幅は試料に依存し、PDの閾値を表すことを示唆し、即ちPDがオンになるまでに一定量の光がPDに当たらなければならない。その領域を上回ると単調領域があり、この領域ではADC出力がDAC値と共に上昇する。最後に飽和領域があり、この領域ではADC出力が最大化される。
【0165】
本システムのゲインは流路間で異なる。このばらつきは、構成要素のばらつきやマザーボード及びドータボードの位置合せを含む幾つかの要因による。その結果、ゲインをテスタごとに別々に較正しなければならない。DAC値がスケーリングされる。
【0166】
図11は、DAC値を流路ごとに別々に線形スケーリングした結果を示す。曲線は重なるが厳密にではない。低いDAC値のローサイドで逸脱する曲線は、高いDAC値のハイサイドでも逸脱する。このパターンはスケーリングが非線形であるべきことを示す。
【0167】
log−logスケールでは、約1.2の傾斜を有する直線上に測定値が殆ど入る。低いDAC値では、PDの閾値が原因で曲線が逸脱する。ADC値をDAC値に関係させる方程式は
【0168】
【数2】
【0169】
であり、VADCはPDの出力電圧であり、VDACはLEDを駆動する電圧電流変換器への電圧であり、VはPDの閾値における値であり、bはゲインパラメータである。指数を1.2で固定した場合、V及びbを見出すだけで良い。様々な条件下で(例えば乾燥試料対湿潤試料)ゲインeを比較することは、透過性の相対的変化を知らせる。
【0170】
方程式が非線形なので、最小二乗誤差の式への閉形式解はない。しかし、Vの値が選択される場合、bの閉形式解を見つけることができる。つまり、入力電圧オフセットを所与として最良適合ゲインを見つけることができる。
【0171】
【数3】
【0172】
但し、W(VADC)は加重項である。ゲインは小さい標本値よりも大きい標本値によってきつく抑制されるので、この重みはVADCと共に上昇する。入力電圧を量子化するので、bV0をVの量子値について計算し、最も小さい平方和誤差(sum−squared error)を与えるものを選ぶ。
【0173】
曲線が同じゲインを有するように、各曲線の横軸を補正することができる。補正の方程式は
【0174】
【数4】
【0175】
によって与えられ、水平バーは平均化を示す。図12は、その結果生じる曲線を示し、これらの曲線は値の全範囲にわたって密に重複する。
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図3
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図7
図8A
図8B
図9A
図9B
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16