特許第6661256号(P6661256)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6661256シリンダブロックおよびこれを備える内燃機関
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6661256
(24)【登録日】2020年2月14日
(45)【発行日】2020年3月11日
(54)【発明の名称】シリンダブロックおよびこれを備える内燃機関
(51)【国際特許分類】
   F02F 7/00 20060101AFI20200227BHJP
   F16C 9/00 20060101ALI20200227BHJP
【FI】
   F02F7/00 301F
   F16C9/00
【請求項の数】8
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2018-510572(P2018-510572)
(86)(22)【出願日】2017年3月31日
(86)【国際出願番号】JP2017013522
(87)【国際公開番号】WO2017175670
(87)【国際公開日】20171012
【審査請求日】2019年1月25日
(31)【優先権主張番号】特願2016-77365(P2016-77365)
(32)【優先日】2016年4月7日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390009896
【氏名又は名称】愛知機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100131406
【弁理士】
【氏名又は名称】福山 正寿
(72)【発明者】
【氏名】草野 正道
(72)【発明者】
【氏名】戸倉 光一
(72)【発明者】
【氏名】北村 真史
【審査官】 櫻田 正紀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−127433(JP,A)
【文献】 特開2010−210036(JP,A)
【文献】 特開2006−242150(JP,A)
【文献】 実開平03−062217(JP,U)
【文献】 実開平02−137548(JP,U)
【文献】 中国実用新案第202065083(CN,U)
【文献】 独国特許出願公開第102012204481(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02F 7/00
F16C 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベアリングキャップを嵌合可能な嵌合凹部と、該嵌合凹部の底面に形成された軸受部と、を有する軸受本体を備え、該軸受本体と前記ベアリングキャップとの間でクランクシャフトを回転可能に軸支するよう構成されたシリンダブロックであって、
前記嵌合凹部は、前記ベアリングキャップの角部が当接される底面隅角部を有しており、
該底面隅角部には、前記クランクシャフトの軸線方向から見て円弧状を有する凹溝が前記軸線方向に延在するよう形成されており、
前記凹溝は、該凹溝に作用する応力の大きさに応じて該凹溝の延在方向において異なる深さを有するよう構成されている
シリンダブロック。
【請求項2】
前記凹溝は、前記延在方向の略中央部において最も深くなるよう構成されている
請求項1に記載のシリンダブロック。
【請求項3】
前記凹溝は、前記延在方向の両端部から前記延在方向の略中央部まで深さが漸増するよう構成されている
請求項2に記載のシリンダブロック。
【請求項4】
前記凹溝は、該凹溝を前記延在方向から見たときの該凹溝の最深部を前記延在方向に沿って結んだ仮想連結線を含む仮想平面で該凹溝を切ったときの断面形状が略円弧状となるよう形成されている
請求項3に記載のシリンダブロック。
【請求項5】
前記凹溝は、円板状の切削工具によって加工されることにより形成され、
前記断面形状は、該切削工具の形状が転写されることにより形成される
請求項4に記載のシリンダブロック。
【請求項6】
シリンダボアを有する請求項1ないし5のいずれか1項に記載のシリンダブロックと、
該シリンダブロックに締結されるシリンダヘッドと、
前記シリンダブロックの前記軸受本体に締結されるベアリングキャップと、
前記軸受本体と前記ベアリングキャップとの間で回転可能に支持されるクランクシャフトと、
該クランクシャフトに連結されると共に前記シリンダボア内を摺動するよう構成されたピストンと、
を備え、
前記シリンダボア、前記シリンダヘッドおよび前記ピストンによって燃焼室が構成され、
該燃焼室で生じる燃焼圧力によって前記ピストンを往復運動させ、該ピストンの往復運動を前記クランクシャフトの回転運動に変換することにより動力を出力するよう構成された
内燃機関。
【請求項7】
前記シリンダブロックは、前記軸受本体を複数有しており、
前記クランクシャフトは、複数の前記軸受本体それぞれに支持される複数のジャーナル部と、前記クランクシャフトの回転を安定化させるための少なくとも一つの円板状慣性体と、前記クランクシャフトの回転アンバランスを補正するための少なくとも一つの錘部材と、を有しており、
前記ジャーナル部は、該ジャーナル部の軸線方向両端部に前記錘部材が配置された第1ジャーナル部を有しており、
複数の前記軸受本体は、前記第1ジャーナル部を支持する第1軸受本体を有しており、
少なくとも前記第1軸受本体における前記嵌合凹部の前記底面隅角部に前記凹溝が形成されている
請求項6に記載の内燃機関。
【請求項8】
前記シリンダブロックは、前記軸受本体を複数有しており、
前記クランクシャフトは、複数の前記軸受本体それぞれに支持される複数のジャーナル部と、前記クランクシャフトの回転を安定化させるための少なくとも一つの円板状慣性体と、前記クランクシャフトの回転アンバランスを補正するための少なくとも一つの錘部材と、を有しており、
前記ジャーナル部は、該ジャーナル部の軸線方向一端部に前記錘部材が配置されると共に該ジャーナル部の軸線方向他端部に前記円板状慣性体が配置された第2ジャーナル部を有しており、
複数の前記軸受本体は、前記第2ジャーナル部を支持する第2軸受本体を有しており、
少なくとも前記第2軸受本体における前記嵌合凹部の前記底面隅角部に前記凹溝が形成されている
請求項6または7に記載の内燃機関。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベアリングキャップを嵌合可能な嵌合凹部と、当該嵌合凹部の底面に形成された軸受部と、を有する軸受本体を備え、当該軸受本体とベアリングキャップとの間でクランクシャフトを回転可能に軸支するように構成されたシリンダブロックおよびこれを備える内燃機関に関する。
【背景技術】
【0002】
実開昭62−102019号公報(特許文献1)には、半割型軸受部を有するベアリングキャップを嵌合可能なように構成された嵌合凹部と、当該嵌合凹部の底面に形成された半割型軸受部と、を有する軸受本体を備え、当該軸受本体とベアリングキャップとの間でクランクシャフトのジャーナル部を挟み込むことによって、当該クランクシャフトを回転可能に軸支するように構成されたシリンダブロックが記載されている。
【0003】
当該シリンダブロックでは、ベアリングキャップの角部が当接される軸受本体の嵌合凹部の隅角部に、クランクシャフトの軸線方向から見て略半円状の凹溝を形成することによって、クランクシャフトおよびベアリングキャップを介して軸受本体に作用する燃焼圧力の反力に起因して当該軸受本体の嵌合凹部の隅角部に生じる応力集中の緩和を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭62−102019号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、本発明者らが軸受本体の嵌合凹部の隅角部に生じる応力について鋭意研究を行った結果、軸受本体の嵌合凹部の隅角部に生じる応力の大きさは、クランクシャフトの軸線方向において異なっていることが判明し、上述した公報に記載のシリンダブロックのように軸受本体の嵌合凹部の隅角部に単に凹溝を形成するのみでは当該隅角部に生じる応力集中を十分に緩和できないことが判明した。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、軸受本体の嵌合凹部の隅角部に作用する応力集中を十分に緩和し得て、シリンダブロックの耐久性をより一層向上させることができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のシリンダブロックおよびこれを備える内燃機関は、上述の目的を達成するために以下の手段を採った。
【0008】
本発明に係るシリンダブロックの好ましい形態によれば、ベアリングキャップを嵌合可能な嵌合凹部と、当該嵌合凹部の底面に形成された軸受部と、を有する軸受本体を備えるシリンダブロックが構成される。当該シリンダブロックは、軸受本体とベアリングキャップとの間でクランクシャフトを回転可能に軸支するように構成されている。軸受本体の嵌合凹部は、ベアリングキャップの角部が当接される底面隅角部を有している。また、当該底面隅角部には、クランクシャフトの軸線方向から見て円弧状を有する凹溝がクランクシャフトの軸線方向に延在するように形成されている。そして、凹溝は、当該凹溝に作用する応力の大きさに応じて当該凹溝の延在方向において異なる深さを有するように構成されている。
【0009】
本発明によれば、軸受本体の嵌合凹部の底面隅角部に設ける凹溝が、当該凹溝に作用する応力の大きさに応じて当該凹溝の延在方向において異なる深さを有するように構成されている、即ち、大きな応力が生じる箇所ほど凹溝の深さを深く形成する構成であるため、クランクシャフトおよびベアリングキャップを介して軸受本体に作用する燃焼圧力の反力に起因して当該軸受本体の嵌合凹部の底面隅角部に生じる応力集中を十分かつ良好に緩和することができる。
【0010】
本発明に係るシリンダブロックの更なる形態によれば、凹溝は、凹溝の延在方向の略中央部において最も深くなるように構成されている。
【0011】
本発明者らは、軸受本体の嵌合凹部の隅角部に生じる応力について鋭意研究を行った結果、軸受本体の嵌合凹部の底面隅角部に生じる応力は、凹溝の延在方向の略中央部において最も高くなることを見出した。本形態によれば、軸受本体の嵌合凹部の底面隅角部に生じる応力が最も高くなる凹溝の延在方向の略中央部において、凹溝の深さが最も深くなるように構成されるため、底面隅角部に生じる応力集中を効果的に緩和することができる。
【0012】
本発明に係るシリンダブロックの更なる形態によれば、凹溝は、当該凹溝の延在方向の両端部から当該凹溝の延在方向の略中央部まで深さが漸増するように構成されている。
【0013】
本形態によれば、凹溝の延在方向に亘って凹溝の深さが急変することがないため、深さの急変に伴い生じる形状変化に起因する応力集中を効果的に回避することができる。
【0014】
本発明に係るシリンダブロックの更なる形態によれば、凹溝は、当該凹溝の深さが最も深くなる点を結んだ仮想連結線を含む仮想平面で当該凹溝を切ったときの断面形状が略円弧状となるように形成されている。
【0015】
本形態によれば、凹溝の延在方向における深さ変化をより滑らかなものとすることができるため、深さの変化に伴い生じる形状変化に起因する応力集中をより一層効果的に回避することができる。
【0016】
断面形状が略円弧状に形成された凹溝を有する本発明に係るシリンダブロックの更なる形態によれば、凹溝は、円板状の切削工具によって加工されることにより形成される。そして、凹溝の断面形状は、切削工具の形状が転写されることにより形成される。
【0017】
本形態によれば、円板状の切削工具で凹溝を加工するのみであるため、断面形状が略円弧状の凹溝を簡易に確保することができる。
【0018】
本発明に係る内燃機関の好ましい形態によれば、シリンダボアを有する上述したいずれかの態様の本発明に係るシリンダブロックと、当該シリンダブロックに締結されるシリンダヘッドと、シリンダブロックの軸受本体に締結されるベアリングキャップと、軸受本体とベアリングキャップとの間で回転可能に支持されるクランクシャフトと、当該クランクシャフトに連結されると共にシリンダボア内を摺動するように構成されたピストンと、 を備えている。なお、シリンダボア、シリンダヘッドおよびピストンによって燃焼室が構成される。そして、当該燃焼室で生じる燃焼圧力によってピストンを往復運動させ、当該ピストンの往復運動をクランクシャフトの回転運動に変換することにより動力を出力するように構成されている。
【0019】
本発明によれば、上述したいずれかの態様の本発明に係るシリンダブロックを備える構成であるため、本発明のシリンダブロックが奏する効果と同様の効果、例えば、シリンダブロックの耐久性をより一層向上することができる効果などを奏することができる。これにより、内燃機関の品質向上を図ることができる。
【0020】
本発明に係る内燃機関の更なる形態によれば、シリンダブロックは、軸受本体を複数有している。また、クランクシャフトは、複数の軸受本体それぞれに支持される複数のジャーナル部と、クランクシャフトの回転を安定化させるための少なくとも一つの円板状慣性体と、クランクシャフトの回転アンバランスを補正するための少なくとも一つの錘部材と、を有している。さらに、ジャーナル部は、当該ジャーナル部の軸線方向両端部に錘部材が配置された第1ジャーナル部を有している。また、複数の軸受本体は、第1ジャーナル部を支持する第1軸受本体を有している。そして、少なくとも第1軸受本体における嵌合凹部の底面隅角部に凹溝が形成されている。
【0021】
ここで、本発明における「錘部材」とは、典型的には、クランクジャーナルとクランクピンとを接続するクランクアームに一体に形成されたカウンターウェイトがこれに該当する。また、本発明における「円板状慣性体」とは、典型的には、フライホイールやドライブレートがこれに該当する。
【0022】
本形態によれば、燃焼圧力に加えて二つの錘部材の慣性力が第1ジャーナル部を介して作用する第1軸受本体における嵌合凹部の底面隅角部に凹溝を形成する構成であるため、合理的かつ効果的に応力集中を緩和することができる。
【0023】
本発明に係る内燃機関の更なる形態によれば、シリンダブロックは、軸受本体を複数有している。また、クランクシャフトは、複数の軸受本体それぞれに支持される複数のジャーナル部と、クランクシャフトの回転を安定化させるための少なくとも一つの円板状慣性体と、クランクシャフトの回転アンバランスを補正するための少なくとも一つの錘部材と、を有している。さらに、ジャーナル部は、当該ジャーナル部の軸線方向一端部に錘部材が配置されると共に当該ジャーナル部の軸線方向他端部に円板状慣性体が配置された第2ジャーナル部を有している。また、複数の軸受本体は、第2ジャーナル部を支持する第2軸受本体を有している。そして、少なくとも第2軸受本体における嵌合凹部の底面隅角部に凹溝が形成されている。
【0024】
ここで、本発明における「錘部材」とは、典型的には、クランクジャーナルとクランクピンとを接続するクランクアームに一体に形成されたカウンターウェイトがこれに該当する。また、本発明における「円板状慣性体」とは、典型的には、フライホイールやドライブレートがこれに該当する。
【0025】
本形態によれば、燃焼圧力に加えて錘部材の慣性力および円板状慣性体の重力が第2ジャーナル部を介して作用する第2軸受本体における嵌合凹部の底面隅角部に凹溝を形成する構成であるため、合理的かつ効果的に応力集中を緩和することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、シリンダブロックの耐久性をより一層向上することができる技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の実施の形態に係る内燃機関1の構成の概略を示す構成図である。
図2】本発明の実施の形態に係る内燃機関1の内部構成の概略を示す断面図である。
図3】本発明の実施の形態に係るシリンダブロック20の構成の概略を示す斜視図である。
図4】本発明の実施の形態に係るシリンダブロック20を図3の矢印A方向から見た平面図である。
図5】本発明の実施の形態に係るシリンダブロック20を図3の矢印B方向から見た正面図である。
図6図5のC部を拡大して示す要部拡大図である。
図7図6のD−D断面を示す断面図である。
図8】本発明の実施の形態に係るシリンダブロック20にクランクシャフト10が支持された状態を図3の矢印B方向に対応する方向から見た説明図である。
図9】凹溝32の延在方向における凹溝32に作用する応力の様子を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
次に、本発明を実施するための最良の形態を実施例を用いて説明する。
【実施例】
【0029】
本発明の実施の形態に係る内燃機関1は、図1に示すように、シリンダヘッド2と、当該シリンダヘッド2の上部に取り付けられたロッカーカバー4と、シリンダヘッド2の下部に取り付けられた本発明の実施の形態に係るシリンダブロック20と、当該シリンダブロック20の下部に取り付けられたアッパーオイルパン6と、当該アッパーオイルパン6の下部に取り付けられたロアオイルパン8と、シリンダブロック20に回転可能に支持されたクランクシャフト10と、を備えている。
【0030】
内燃機関1は、本実施の形態では、図2に示すように、4つの気筒が直列に配置された直列4気筒エンジンとして構成されており、シリンダヘッド2、後述するシリンダボア24aおよびピストン60によって構成される燃焼室CCで生じる燃焼圧力によってピストン60をシリンダボア24a内で往復運動させ、当該ピストン60の往復運動をクランクシャフト10の回転運動に変換することにより動力を出力する。
【0031】
シリンダブロック20は、図3に示すように、シリンダブロック20の外郭を構成する外壁部22と、4つのシリンダボア24aを有するシリンダボア壁部24と、クランクシャフト10を回転可能に支持する支持壁部26と、を備えており、外壁部22とシリンダボア壁部24との間には、ブロック用ウォータジャケットBWJが形成されている。
【0032】
シリンダボア壁部24は、図3に示すように、4つのシリンダボア24aが直列に配置されるように構成されており、互いに隣接する各シリンダボア壁部24が互いに連結されたサイヤミーズシリンダを構成している。なお、シリンダボア24a内には、図2に示すように、ピストン60が摺動する。
【0033】
支持壁部26は、図4に示すように、外壁部22のうちシリンダボア24aの配列方向に沿って延在する両側壁22a,22bを下方(図3において下方)において接続するように構成されており、クランク室CRを各シリンダボア24a毎に仕切るようにシリンダボア24aの配列方向に五つ設けられている。なお、支持壁部26のうちシリンダボア24aの配列方向の両端に位置する二つの支持壁部26は、外壁部22のうちシリンダボア24aの配列方向に交差する方向に延在する前壁22cおよび後壁22dに一体に形成されている。支持壁部26は、本発明における「軸受本体」に対応する実施構成の一例である。
【0034】
ここで、説明の便宜上、各支持壁部26を図4における左側から順に第1支持壁部26a、第2支持壁部26b、第3支持壁部26c、第4支持壁部26dおよび第5支持壁部26eと規定し、以下、必要に応じて支持壁部26を第1支持壁部26a、第2支持壁部26b、第3支持壁部26c、第4支持壁部26d、あるいは、第5支持壁部26eとも言う。なお、第3支持壁部26cは、本発明における「第1軸受本体」に対応し、第5支持壁部26eは、本発明における「第2軸受本体」に対応する実施構成の一例である。
【0035】
各支持壁部26には、図5および図6に示すように、ベアリングキャップ50がインロー嵌合される嵌合凹部28が形成されており、当該嵌合凹部28は、ベアリングキャップ50の上面50aが当接する底面28aと、ベアリングキャップ50の側面50bが当接するインロー面28bと、から構成されている。支持壁部26の底面28aには、図5に示すように、半割型の軸受部30が形成されている。なお、ベアリングキャップ50には、支持壁部26の軸受部30に対向する位置に半割型の軸受部52を有しており、ベアリングキャップ50が支持壁部26の嵌合凹部28にボルト(図示せず)によって締結されたときに、図5に示すように、軸受部30,52によって円形の軸受が構成される。
【0036】
また、第3および第5支持壁部26c,26eの嵌合凹部28の底面28aとインロー面28bとが交差する左右(図5の左右、軸受部30を挟んで両側)の隅角部には、図5および図6に示すように、正面視(クランクシャフト10の軸線方向、図5および図6の紙面に垂直方向から見て)略円弧状を有する切欠溝29が形成されている。図6に示すように、当該切欠溝29によってベアリングキャップ50の角部の面取部50cと嵌合凹部28との直接当接が回避されている。切欠溝29は、本発明における「凹溝」に対応する実施構成の一例である。
【0037】
切欠溝29は、図7に示すように、シリンダボア24aの配列方向に延在している。言い換えると、切欠溝29は、第3および第5支持壁部26c,26eの厚さ方向(図7の左右方向)を貫通するように形成されているとも言える。切欠溝29は、当該切欠溝29の延在方向におけるほぼ中央部において、その深さが最も深くなるように形成されている。
【0038】
なお、切欠溝29を延在方向から見たときの当該切欠溝29の最深部を当該切欠溝29の延在方向に結んだ仮想連結線を含む仮想平面で当該切欠溝29を切ったときの断面形状は、図7に示すように、略円弧状となるように形成されている。ここで、切欠溝29は、図7に示すように、円板状のカッター90によって切削加工される。このとき、当該カッター90の形状が切欠溝29に転写されることによって、断面形状が略円弧状となる。カッター90は、本発明における「切削工具」に対応する実施構成の一例である。
【0039】
クランクシャフト10は、図2に示すように、第1ないし第5支持壁部26a,26b,26c,26d,26eそれぞれに支持される第1ないし第5クランクジャーナル12a,12b,12c,12d,12eと、ピストン60を回転可能に支持するための4つのクランクピン14と、第1ないし第5クランクジャーナル12a,12b,12c,12d,12eのそれぞれと各クランクピン14とを連結するクランクアーム16と、カウンターウェイト18と、から主に構成されている。第3および第5クランクジャーナル部は、それぞれ本発明における「第1ジャーナル部」および「第2ジャーナル部」に対応する実施構成の一例である。また、カウンターウェイト18は、本発明における「錘部材」に対応する実施構成の一例である。
【0040】
クランクシャフト10の軸線方向両端部は、図2に示すように、外壁部22の前壁22cおよび後壁22dから突出しており、クランクシャフト10の軸線方向端部のうち前壁22c側には、図1に示すように、クランクプーリーPが取り付けられ、クランクシャフト10の軸線方向端部のうち後壁22d側には、図2に示すように、フライホイール11が取り付けられる。フライホイール11は、本発明における「円板状慣性体」に対応する実施構成の一例である。
【0041】
カウンターウェイト18は、図2に示すように、第1クランクジャーナル12aとクランクピン14とを連結するクランクアーム16、第3クランクジャーナル12cとクランクピン14とを連結する2つのクランクアーム16、および、第5クランクジャーナル12eとクランクピン14とを連結するクランクアーム16のそれぞれに一体形成されている。カウンターウェイト18は、第1,第3および第5クランクジャーナル12a,12c,12eに対するクランクピン14のオフセット方向とは概ね反対方向に突出するように構成されている。
【0042】
次に、こうして構成された内燃機関1の運転に伴って第3および第5支持壁部26c,26eの切欠溝29に生じる応力の様子について説明する。本発明の実施の形態に係る内燃機関1が運転されると、燃焼室CC内では空気と燃料の混合気の点火による燃焼爆発が発生し、シリンダボア24a内でピストン60が往復直線運動を行う。当該ピストン60の往復直線運動はクランクシャフト10によって回転運動に変換される。
【0043】
ここで、燃焼室CC内での燃焼爆発による燃焼圧力は、ピストン60およびクランクシャフト10を介してベアリングキャップ50をシリンダブロック20の各支持壁部26から引き離す方向の力として当該ベアリングキャップ50に作用する(図8参照)。即ち、燃焼圧力は、各支持壁部26を下方(図8の下方)に引っ張る引っ張り力(図8の符号F)として作用する。
【0044】
当該引っ張り力に起因して各支持壁部26の嵌合凹部28の底面28aとインロー面28bとが交差する左右(図5の左右、軸受部30を挟んで両側)の隅角部には応力集中が生じる。ところで、第3支持壁部26cには、上述した燃焼圧力に加えて二つのカウンターウェイト18の慣性力が当該第3支持壁部26cを下方(図8の下方)に引っ張る引っ張り力として作用し、第5支持壁部26eには、上述した燃焼圧力に加えて一つのカウンターウェイト18の慣性力およびフライホイール11の重力が当該第5支持壁部26eを下方(図8の下方)に引っ張る引っ張り力として作用するため、当該第3および第5支持壁部26c,26eの嵌合凹部28の底面28aとインロー面28bとが交差する左右(図5の左右、軸受部30を挟んで両側)の隅角部に生じる応力集中は、他の支持壁部26a,26b,26dの嵌合凹部28の底面28aとインロー面28bとが交差する左右(図5の左右、軸受部30を挟んで両側)の隅角部に生じる応力集中よりも大きなものとなる。
【0045】
しかしながら、本実施の形態によれば、第3および第5支持壁部26c,26eの嵌合凹部28の底面28aとインロー面28bとが交差する左右(図5の左右、軸受部30を挟んで両側)の隅角部には、正面視(クランクシャフト10の軸線方向、図5および図6の紙面に垂直方向から見て)略円弧状を有する切欠溝29が形成されているため、当該隅角部に生じる応力集中は良好に緩和され得る。
【0046】
しかも、当該切欠溝29が、シリンダボア24aの配列方向におけるほぼ中央部において、その深さが最も深くなるような円弧状に形成されているため、図9に示すように、切欠溝29の延在方向の中央部ほど大きな値となる応力を当該切欠溝29の延在方向においてほぼ均一にすることができ、応力集中を効果的に緩和することができる。
【0047】
本実施の形態では、第3および第5支持壁部26c,26eの嵌合凹部28の底面28aとインロー面28bとが交差する左右(図5の左右、軸受部30を挟んで両側)の隅角部に、正面視(クランクシャフト10の軸線方向、図5および図6の紙面に垂直方向から見て)略円弧状を有する切欠溝29を形成する構成としたが、これに限らない。
【0048】
例えば、第3および第5支持壁部26c,26eに加えて第1支持壁部26aの嵌合凹部28の底面28aとインロー面28bとが交差する左右(図5の左右、軸受部30を挟んで両側)の隅角部に、正面視(クランクシャフト10の軸線方向、図5および図6の紙面に垂直方向から見て)略円弧状を有する切欠溝29を形成する構成としても良い。
【0049】
第1支持壁部26aには、燃焼圧力に加えて一つのカウンターウェイト18の慣性力が当該第1支持壁部26aを下方(図8の下方)に引っ張る引っ張り力として作用するため、当該隅角部に生じる応力集中が良好に緩和され得る。
【0050】
また、第3支持壁部26cの左右の隅角部のみに正面視略円弧状を有する切欠溝29を形成する構成や、第5支持壁部26eの左右の隅角部のみに正面視略円弧状を有する切欠溝29を形成する構成、あるいは、他の支持壁部26a,26b,26dのいずれかの隅角部のみに正面視略円弧状を有する切欠溝29を形成する構成、さらには、全ての支持壁部26a,26b,26c,26d,26eの全ての左右の隅角部に正面視略円弧状を有する切欠溝29を形成する構成としても良い。
【0051】
本実施の形態では、切欠溝29は、シリンダボア24aの配列方向におけるほぼ中央部において、その深さが最も深くなる構成としたが、これに限らない。切欠溝29の深さは、切欠溝29の延在方向に生じる応力集中の程度に応じて応力集中を効果的に緩和できるように適宜設定することができる。
【0052】
本実施の形態では、切欠溝29を断面略円弧状に形成したが、切欠溝29の延在方向において異なる大きさで生じる応力集中を緩和することができれば円弧状に限らず、他の形状に形成しても良い。
【0053】
本実施の形態では、クランクシャフト10の軸線方向端部のうち後壁22d側にはフライホイール11が取り付けられる構成としたが、これに限らない。クランクシャフト10の軸線方向端部のうち後壁22d側にはドライブプレートが取り付けられる構成でも良い。
【0054】
本実施の形態では、円板状のカッター90の形状を転写することによって切欠溝29を断面略円弧状に形成したが、これに限らない。例えば、エンドミルによって切欠溝29を断面略円弧状に形成しても良い。
【0055】
本実施形態は、本発明を実施するための形態の一例を示すものである。したがって、本発明は、本実施形態の構成に限定されるものではない。なお、本実施形態の各構成要素と本発明の各構成要素の対応関係を以下に示す。
【符号の説明】
【0056】
1 内燃機関(内燃機関)
2 シリンダヘッド
4 ロッカーカバー
6 アッパーオイルパン
8 ロアオイルパン
10 クランクシャフト(クランクシャフト)
11 フライホイール(円板状慣性体)
12a 第1クランクジャーナル(ジャーナル部)
12b 第2クランクジャーナル(ジャーナル部)
12c 第3クランクジャーナル(ジャーナル部、第1ジャーナル部)
12d 第4クランクジャーナル(ジャーナル部)
12e 第5クランクジャーナル(ジャーナル部、第2ジャーナル部)
14 クランクピン
16 クランクアーム
18 カウンターウェイト(錘部材)
20 シリンダブロック(シリンダブロック)
22 外壁部(外壁部)
22a 側壁
22b 側壁
22c 前壁
22d 後壁
24 シリンダボア壁部(シリンダボア壁部)
24a シリンダボア(シリンダボア)
26 支持壁部(軸受本体)
26a 第1支持壁部(軸受本体)
26b 第2支持壁部(軸受本体)
26c 第3支持壁部(軸受本体、第1軸受本体)
26d 第4支持壁部(軸受本体)
26e 第5支持壁部(軸受本体、第2軸受本体)
28 嵌合凹部(嵌合凹部)
28a 底面
28b インロー面
29 切欠溝(凹溝)
30 軸受部(軸受部)
50 ベアリングキャップ(ベアリングキャップ)
50a 上面
50b 側面
50c 面取部
52 軸受部
60 ピストン(ピストン)
90 カッター(切削工具)
CC 燃焼室(燃焼室)
BWJ ブロック用ウォータジャケット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9