【実施例】
【0029】
本発明の実施の形態に係る内燃機関1は、
図1に示すように、シリンダヘッド2と、当該シリンダヘッド2の上部に取り付けられたロッカーカバー4と、シリンダヘッド2の下部に取り付けられた本発明の実施の形態に係るシリンダブロック20と、当該シリンダブロック20の下部に取り付けられたアッパーオイルパン6と、当該アッパーオイルパン6の下部に取り付けられたロアオイルパン8と、シリンダブロック20に回転可能に支持されたクランクシャフト10と、を備えている。
【0030】
内燃機関1は、本実施の形態では、
図2に示すように、4つの気筒が直列に配置された直列4気筒エンジンとして構成されており、シリンダヘッド2、後述するシリンダボア24aおよびピストン60によって構成される燃焼室CCで生じる燃焼圧力によってピストン60をシリンダボア24a内で往復運動させ、当該ピストン60の往復運動をクランクシャフト10の回転運動に変換することにより動力を出力する。
【0031】
シリンダブロック20は、
図3に示すように、シリンダブロック20の外郭を構成する外壁部22と、4つのシリンダボア24aを有するシリンダボア壁部24と、クランクシャフト10を回転可能に支持する支持壁部26と、を備えており、外壁部22とシリンダボア壁部24との間には、ブロック用ウォータジャケットBWJが形成されている。
【0032】
シリンダボア壁部24は、
図3に示すように、4つのシリンダボア24aが直列に配置されるように構成されており、互いに隣接する各シリンダボア壁部24が互いに連結されたサイヤミーズシリンダを構成している。なお、シリンダボア24a内には、
図2に示すように、ピストン60が摺動する。
【0033】
支持壁部26は、
図4に示すように、外壁部22のうちシリンダボア24aの配列方向に沿って延在する両側壁22a,22bを下方(
図3において下方)において接続するように構成されており、クランク室CRを各シリンダボア24a毎に仕切るようにシリンダボア24aの配列方向に五つ設けられている。なお、支持壁部26のうちシリンダボア24aの配列方向の両端に位置する二つの支持壁部26は、外壁部22のうちシリンダボア24aの配列方向に交差する方向に延在する前壁22cおよび後壁22dに一体に形成されている。支持壁部26は、本発明における「軸受本体」に対応する実施構成の一例である。
【0034】
ここで、説明の便宜上、各支持壁部26を
図4における左側から順に第1支持壁部26a、第2支持壁部26b、第3支持壁部26c、第4支持壁部26dおよび第5支持壁部26eと規定し、以下、必要に応じて支持壁部26を第1支持壁部26a、第2支持壁部26b、第3支持壁部26c、第4支持壁部26d、あるいは、第5支持壁部26eとも言う。なお、第3支持壁部26cは、本発明における「第1軸受本体」に対応し、第5支持壁部26eは、本発明における「第2軸受本体」に対応する実施構成の一例である。
【0035】
各支持壁部26には、
図5および
図6に示すように、ベアリングキャップ50がインロー嵌合される嵌合凹部28が形成されており、当該嵌合凹部28は、ベアリングキャップ50の上面50aが当接する底面28aと、ベアリングキャップ50の側面50bが当接するインロー面28bと、から構成されている。支持壁部26の底面28aには、
図5に示すように、半割型の軸受部30が形成されている。なお、ベアリングキャップ50には、支持壁部26の軸受部30に対向する位置に半割型の軸受部52を有しており、ベアリングキャップ50が支持壁部26の嵌合凹部28にボルト(図示せず)によって締結されたときに、
図5に示すように、軸受部30,52によって円形の軸受が構成される。
【0036】
また、第3および第5支持壁部26c,26eの嵌合凹部28の底面28aとインロー面28bとが交差する左右(
図5の左右、軸受部30を挟んで両側)の隅角部には、
図5および
図6に示すように、正面視(クランクシャフト10の軸線方向、
図5および
図6の紙面に垂直方向から見て)略円弧状を有する切欠溝29が形成されている。
図6に示すように、当該切欠溝29によってベアリングキャップ50の角部の面取部50cと嵌合凹部28との直接当接が回避されている。切欠溝29は、本発明における「凹溝」に対応する実施構成の一例である。
【0037】
切欠溝29は、
図7に示すように、シリンダボア24aの配列方向に延在している。言い換えると、切欠溝29は、第3および第5支持壁部26c,26eの厚さ方向(
図7の左右方向)を貫通するように形成されているとも言える。切欠溝29は、当該切欠溝29の延在方向におけるほぼ中央部において、その深さが最も深くなるように形成されている。
【0038】
なお、切欠溝29を延在方向から見たときの当該切欠溝29の最深部を当該切欠溝29の延在方向に結んだ仮想連結線を含む仮想平面で当該切欠溝29を切ったときの断面形状は、
図7に示すように、略円弧状となるように形成されている。ここで、切欠溝29は、
図7に示すように、円板状のカッター90によって切削加工される。このとき、当該カッター90の形状が切欠溝29に転写されることによって、断面形状が略円弧状となる。カッター90は、本発明における「切削工具」に対応する実施構成の一例である。
【0039】
クランクシャフト10は、
図2に示すように、第1ないし第5支持壁部26a,26b,26c,26d,26eそれぞれに支持される第1ないし第5クランクジャーナル12a,12b,12c,12d,12eと、ピストン60を回転可能に支持するための4つのクランクピン14と、第1ないし第5クランクジャーナル12a,12b,12c,12d,12eのそれぞれと各クランクピン14とを連結するクランクアーム16と、カウンターウェイト18と、から主に構成されている。第3および第5クランクジャーナル部は、それぞれ本発明における「第1ジャーナル部」および「第2ジャーナル部」に対応する実施構成の一例である。また、カウンターウェイト18は、本発明における「錘部材」に対応する実施構成の一例である。
【0040】
クランクシャフト10の軸線方向両端部は、
図2に示すように、外壁部22の前壁22cおよび後壁22dから突出しており、クランクシャフト10の軸線方向端部のうち前壁22c側には、
図1に示すように、クランクプーリーPが取り付けられ、クランクシャフト10の軸線方向端部のうち後壁22d側には、
図2に示すように、フライホイール11が取り付けられる。フライホイール11は、本発明における「円板状慣性体」に対応する実施構成の一例である。
【0041】
カウンターウェイト18は、
図2に示すように、第1クランクジャーナル12aとクランクピン14とを連結するクランクアーム16、第3クランクジャーナル12cとクランクピン14とを連結する2つのクランクアーム16、および、第5クランクジャーナル12eとクランクピン14とを連結するクランクアーム16のそれぞれに一体形成されている。カウンターウェイト18は、第1,第3および第5クランクジャーナル12a,12c,12eに対するクランクピン14のオフセット方向とは概ね反対方向に突出するように構成されている。
【0042】
次に、こうして構成された内燃機関1の運転に伴って第3および第5支持壁部26c,26eの切欠溝29に生じる応力の様子について説明する。本発明の実施の形態に係る内燃機関1が運転されると、燃焼室CC内では空気と燃料の混合気の点火による燃焼爆発が発生し、シリンダボア24a内でピストン60が往復直線運動を行う。当該ピストン60の往復直線運動はクランクシャフト10によって回転運動に変換される。
【0043】
ここで、燃焼室CC内での燃焼爆発による燃焼圧力は、ピストン60およびクランクシャフト10を介してベアリングキャップ50をシリンダブロック20の各支持壁部26から引き離す方向の力として当該ベアリングキャップ50に作用する(
図8参照)。即ち、燃焼圧力は、各支持壁部26を下方(
図8の下方)に引っ張る引っ張り力(
図8の符号F)として作用する。
【0044】
当該引っ張り力に起因して各支持壁部26の嵌合凹部28の底面28aとインロー面28bとが交差する左右(
図5の左右、軸受部30を挟んで両側)の隅角部には応力集中が生じる。ところで、第3支持壁部26cには、上述した燃焼圧力に加えて二つのカウンターウェイト18の慣性力が当該第3支持壁部26cを下方(
図8の下方)に引っ張る引っ張り力として作用し、第5支持壁部26eには、上述した燃焼圧力に加えて一つのカウンターウェイト18の慣性力およびフライホイール11の重力が当該第5支持壁部26eを下方(
図8の下方)に引っ張る引っ張り力として作用するため、当該第3および第5支持壁部26c,26eの嵌合凹部28の底面28aとインロー面28bとが交差する左右(
図5の左右、軸受部30を挟んで両側)の隅角部に生じる応力集中は、他の支持壁部26a,26b,26dの嵌合凹部28の底面28aとインロー面28bとが交差する左右(
図5の左右、軸受部30を挟んで両側)の隅角部に生じる応力集中よりも大きなものとなる。
【0045】
しかしながら、本実施の形態によれば、第3および第5支持壁部26c,26eの嵌合凹部28の底面28aとインロー面28bとが交差する左右(
図5の左右、軸受部30を挟んで両側)の隅角部には、正面視(クランクシャフト10の軸線方向、
図5および
図6の紙面に垂直方向から見て)略円弧状を有する切欠溝29が形成されているため、当該隅角部に生じる応力集中は良好に緩和され得る。
【0046】
しかも、当該切欠溝29が、シリンダボア24aの配列方向におけるほぼ中央部において、その深さが最も深くなるような円弧状に形成されているため、
図9に示すように、切欠溝29の延在方向の中央部ほど大きな値となる応力を当該切欠溝29の延在方向においてほぼ均一にすることができ、応力集中を効果的に緩和することができる。
【0047】
本実施の形態では、第3および第5支持壁部26c,26eの嵌合凹部28の底面28aとインロー面28bとが交差する左右(
図5の左右、軸受部30を挟んで両側)の隅角部に、正面視(クランクシャフト10の軸線方向、
図5および
図6の紙面に垂直方向から見て)略円弧状を有する切欠溝29を形成する構成としたが、これに限らない。
【0048】
例えば、第3および第5支持壁部26c,26eに加えて第1支持壁部26aの嵌合凹部28の底面28aとインロー面28bとが交差する左右(
図5の左右、軸受部30を挟んで両側)の隅角部に、正面視(クランクシャフト10の軸線方向、
図5および
図6の紙面に垂直方向から見て)略円弧状を有する切欠溝29を形成する構成としても良い。
【0049】
第1支持壁部26aには、燃焼圧力に加えて一つのカウンターウェイト18の慣性力が当該第1支持壁部26aを下方(
図8の下方)に引っ張る引っ張り力として作用するため、当該隅角部に生じる応力集中が良好に緩和され得る。
【0050】
また、第3支持壁部26cの左右の隅角部のみに正面視略円弧状を有する切欠溝29を形成する構成や、第5支持壁部26eの左右の隅角部のみに正面視略円弧状を有する切欠溝29を形成する構成、あるいは、他の支持壁部26a,26b,26dのいずれかの隅角部のみに正面視略円弧状を有する切欠溝29を形成する構成、さらには、全ての支持壁部26a,26b,26c,26d,26eの全ての左右の隅角部に正面視略円弧状を有する切欠溝29を形成する構成としても良い。
【0051】
本実施の形態では、切欠溝29は、シリンダボア24aの配列方向におけるほぼ中央部において、その深さが最も深くなる構成としたが、これに限らない。切欠溝29の深さは、切欠溝29の延在方向に生じる応力集中の程度に応じて応力集中を効果的に緩和できるように適宜設定することができる。
【0052】
本実施の形態では、切欠溝29を断面略円弧状に形成したが、切欠溝29の延在方向において異なる大きさで生じる応力集中を緩和することができれば円弧状に限らず、他の形状に形成しても良い。
【0053】
本実施の形態では、クランクシャフト10の軸線方向端部のうち後壁22d側にはフライホイール11が取り付けられる構成としたが、これに限らない。クランクシャフト10の軸線方向端部のうち後壁22d側にはドライブプレートが取り付けられる構成でも良い。
【0054】
本実施の形態では、円板状のカッター90の形状を転写することによって切欠溝29を断面略円弧状に形成したが、これに限らない。例えば、エンドミルによって切欠溝29を断面略円弧状に形成しても良い。
【0055】
本実施形態は、本発明を実施するための形態の一例を示すものである。したがって、本発明は、本実施形態の構成に限定されるものではない。なお、本実施形態の各構成要素と本発明の各構成要素の対応関係を以下に示す。