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前記主層下部の波長365nmにおける屈折率は2.50以上であり、且つ、前記主層上部の波長365nmにおける屈折率は、2.45以下であることを特徴とする請求項1記載の位相シフトマスクブランク。
前記主層上部の波長365nmにおける屈折率と前記主層下部の波長365nmにおける屈折率との差が、0.05以上0.25以下であることを特徴とする請求項1又は2記載の位相シフトマスクブランク。
透明基板上にクロムと酸素と窒素とを含有する位相シフト膜をインライン型スパッタリング装置によるスパッタリング法により形成する位相シフトマスクブランクの製造方法であって、
前記位相シフト膜は、クロムと酸素と窒素と炭素からなる主層と、表面酸化の最表面層と、を有し、
前記主層の膜深さ方向の各元素の組成比は、クロムの変動幅がクロムの中心的な含有量に対して±5.0原子%、酸素の変動幅が酸素の中心的な含有量に対して±6.5原子%、窒素の変動幅が窒素の中心的な含有量に対して±4.5原子%、炭素の変動幅が炭素の中心的な含有量に対して±4.0原子%以内であって、
前記主層の成膜は、クロムを含むスパッタターゲットを使用し、不活性ガスと、二酸化炭素(CO2)ガスと窒素(N2)ガスの活性ガスを含む混合ガスによる反応性スパッタリングにおいて、前記混合ガスを、前記スパッタターゲットの近傍における前記透明基板の搬送方向の、該スパッタターゲットに対して川下側より供給して行い、
分光エリプソメーターによる前記最表面層側の前記主層上部の波長365nmにおける屈折率が、前記透明基板側の前記主層下部の波長365nmにおける屈折率よりも小さくなるようにすることを特徴とする位相シフトマスクブランクの製造方法。
前記成膜工程の後、前記位相シフト膜の最表面に対して真空紫外線照射処理を行う真空紫外線照射工程を行うことにより、前記位相シフト膜の前記最表面の膜密度を2.0g/cm3以上とすることを特徴とする請求項5記載の位相シフトマスクブランクの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施の形態に係る位相シフトマスクブランク及びその製造方法、並びに当該位相シフトマスクブランクを用いた位相シフトマスクの製造方法を詳細に説明する。
【0033】
実施の形態1.
実施の形態1では、表示装置製造用の位相シフトマスクブランク(透明基板/位相シフト膜)及びその製造方法について説明する。
図1は本発明の実施の形態1による位相シフトマスクブランクの構成を示す断面図であり、
図2は位相シフトマスクブランクの成膜に使用可能なインライン型スパッタリング装置を示す模式図である。
【0034】
実施の形態1の位相シフトマスクブランク1は、
図1に示すように、透明基板2上に、クロムと酸素と窒素とを含有する位相シフト膜3が形成された構成を有する。
【0035】
このように構成される実施の形態1の位相シフトマスクブランク1の製造方法は、透明基板2を準備する準備工程と、透明基板2の主表面上に、スパッタリングにより、クロムと酸素と窒素とを含有する位相シフト膜3を成膜する成膜工程(以下、位相シフト膜形成工程という場合がある)を含む。
以下、各工程を詳細に説明する。
【0036】
1.準備工程
先ず、透明基板2を準備する。
透明基板2の材料は、使用する露光光に対して透光性を有する材料であれば、特に制限されない。例えば、合成石英ガラス、ソーダライムガラス、無アルカリガラスが挙げられる。
【0037】
2.位相シフト膜形成工程
次に、
図1に示すように、透明基板2の主表面上に、インライン型スパッタリング装置によるスパッタリング法により、クロムと酸素と窒素とを含有する位相シフト膜3を形成する。
詳細には、この位相シフト膜形成工程では、クロムを含むスパッタターゲットを使用し、スパッタパワーを印加し、不活性ガスと、位相シフト膜を酸化及び窒化させる活性ガスを、スパッタターゲットの近傍における透明基板2の搬送方向の、そのスパッタターゲットに対して川下側より供給して、不活性ガスと活性ガスを含む混合ガスによる反応性スパッタリングにより、クロムと酸素と窒素とを含有する位相シフト膜3を成膜する成膜工程を行う。
ここで、スパッタターゲットに対して川下側より供給される不活性ガスと活性ガスは、供給前に混合されているか否かを問わない。例えば、所定の流量で、不活性ガスと活性ガスを予め混合した上で、その混合ガスを一つのガス導入口から供給してもよく、又は、所定の流量の不活性ガスと活性ガスをそれぞれ専用のガス導入口から供給してもよい。
【0038】
位相シフト膜3は、露光光の位相を変える性質(位相シフト効果)を有する。この性質により、位相シフト膜3を透過した露光光と透明基板2のみを透過した露光光との間に所定の位相差が生じる。露光光が300nm以上500nm以下の波長範囲の光を含む複合光である場合、位相シフト膜3は、代表波長の光に対して、所定の位相差を生じるように形成する。例えば、露光光がi線、h線及びg線を含む複合光である場合、位相シフト膜3は、i線、h線及びg線のいずれかに対して、180度の位相差を生じるように形成する。また、位相シフト効果を発揮するために、例えば、i線における位相シフト膜3の位相差は、180度±10度の範囲に設定され、好ましくは略180度に設定される。また、例えば、i線における位相シフト膜3の透過率は、1%以上20%以下の範囲に設定されることが好ましい。特に、後述の実施の形態2で説明するような真空紫外線(以下、VUVという場合がある)照射処理により位相シフト膜3の最表面の膜質に影響を与え、その結果、ウェットエッチングによる位相シフト膜のパターニングで十分に位相効果を発揮できる断面形状とする点においては、i線における位相シフト膜3の透過率が、3%以上15%以下の範囲に設定された膜組成とすることが好ましい。
【0039】
位相シフト膜3は、少なくともクロム(Cr)と酸素(O)と窒素(N)とを含有するクロム系材料から構成される。このクロム系材料には、上記三つの元素の他、必要に応じて、更に炭素(C)が含有されてもよい。炭素を含むクロム系材料とした場合、位相シフト膜3の耐薬性、洗浄耐性を向上させることができる。
具体的には、位相シフト膜3を構成するクロム系材料として、例えば、クロム酸化窒化物(CrON)、クロム炭化酸化窒化物(CrOCN)が挙げられる。さらに、これらのクロム系材料は、本発明の効果を逸脱しない範囲で、水素(H)、フッ素(F)を含んでいてもよい。
【0040】
位相シフト膜3は、例えば、以下のようなスパッタターゲット、スパッタガス雰囲気により成膜することができる。
位相シフト膜3の成膜に使用されるスパッタターゲットとしては、クロム(Cr)を含むものが選択される。具体的には、クロム(Cr)、クロムの窒化物、クロムの酸化物、クロムの炭化物、クロムの酸化窒化物、クロムの炭化窒化物、クロムの酸化炭化物、及び、クロムの酸化炭化窒化物が挙げられる。
位相シフト膜3の成膜時におけるスパッタガス雰囲気は、不活性ガスと、位相シフト膜を酸化及び窒化させる活性ガスを含む。不活性ガスとしては、成膜された位相シフト膜3を構成することとなる膜組成成分を含まないガスであり、ヘリウム(He)ガス、ネオン(Ne)ガス、アルゴン(Ar)ガス、クリプトン(Kr)ガス、及びキセノン(Xe)ガスが挙げられ、これらのガスの少なくとも一種のガスが選択される。活性ガスとしては、成膜された位相シフト膜3を構成することとなる膜組成成分を含むガスであり、酸素(O
2)ガス、窒素(N
2)ガス、一酸化窒素(NO)ガス、二酸化窒素(NO
2)ガス、及び亜酸化窒素(N
2O)ガスが挙げられ、これらのガスの少なくとも一種のガスが選択される。また、上記スパッタガスには、位相シフト膜を炭化させる活性ガスを含めることができる。炭化させる活性ガスとしては、一酸化炭素(CO)ガス、二酸化炭素(CO
2)ガス、及び炭化水素系ガスが挙げられ、これらのガスの少なくとも一種のガスが選択される。炭化水素系ガスとしては、例えば、メタンガス、ブタンガス、プロパンガス、スチレンガスが挙げられる。さらに、上記スパッタガスには、本発明の効果を逸脱しない範囲の供給量で、活性ガスとしてフッ素系ガスを含めてもよい。フッ素系ガスとしては、例えば、CF
4ガス、CHF
3ガス、SF
6ガスや、これらのガスにO
2ガスを混合したものが挙げられる。
上述したスパッタターゲットの形成材料とスパッタガス雰囲気のガスの種類との組み合わせや、スパッタガス雰囲気中の活性ガスと不活性ガスとの含有割合は、位相シフト膜3を構成する材料の種類や組成に応じて、適宜決められる。
【0041】
位相シフト膜3の膜厚は、所望の光学特性(位相差)が得られるように、80nm以上180nm以下の範囲で適宜調整される。
【0042】
位相シフト膜3は、
図1に示すように、同一材料からなる主層3aと、成膜後の表面酸化により、その主層3aの最表面から深さ方向に形成された最表面層3bを有する。主層3aは、膜深さ方向の各元素の組成比が略均一である(少なくともX線光電子分光分析法による分析結果において略均一と言える)という特性を示し、且つ、位相シフト膜3の位相シフト効果を発揮する、位相シフト膜3の本体領域である。
位相シフト膜3は単層膜及び積層膜のいずれであってもよい。位相シフト膜3を積層膜で構成する場合、各層の界面間で組成及び組成比を一致させた上で、例えばウェットエッチング時のエッチング速度を一定にすることで、被エッチング断面における、いわゆる喰われ現象の発生を防止することが好ましい。また、積層膜の場合、位相シフト膜3の成膜工程は同一の成膜条件で複数回行われることが好ましい。複数回の成膜工程は、同一のインライン型スパッタリング装置において連続的に行われることが好ましい。複数回の成膜工程を連続的に行う場合、例えば、後述のようなインライン型スパッタリング装置を用いる。尚、成膜工程が複数回行われる場合、位相シフト膜3の成膜時にスパッタターゲットに印加するスパッタパワーを小さくすることができる。
尚、最表面層3bの膜厚は、例えば、0.1nm以上10nm以下であることが好ましいが、この範囲に限定されるものではない。
【0043】
上述した位相シフト膜形成工程により、位相シフト膜3の主層3aのうち、最表面層3b側の上部(以下、主層上部という場合がある)の波長365nmにおける屈折率を、主層3aのうち、透明基板2側の下部(以下、主層下部という場合がある)の波長365nmにおける屈折率よりも小さくすることができる。このような構成を有する位相シフト膜3を、ウェットエッチングによるパターニングで十分に位相効果を発揮できる断面形状とすることができる。
また、主層下部の波長365nmにおける屈折率は2.50以上であり、且つ、主層上部の波長365nmにおける屈折率は、2.45以下であることが望ましい。さらに、主層上部の波長365nmにおける屈折率と主層下部の波長365nmにおける屈折率との差は、0.05以上0.25以下であることが好ましい。波長365nmにおける屈折率の差が0.05未満である場合や0.25を超える場合には、ウェットエッチングによる位相シフト膜3のパターニングで位相効果を発揮できる程度の断面形状とすることが困難となる可能性がある。
尚、上述した位相シフト膜形成工程により、波長365nmに限らず、例えば、波長190nm〜波長1000nmの範囲でも、その測定波長における、主層上部の屈折率を主層下部の屈折率よりも小さくすることができる(後述の
図7及び
図13参照)。
【0044】
位相シフト膜3を構成する各元素の含有量は、所望の光学特性(露光光に対する透過率、位相差)となるように適宜調整される。
また、位相シフト膜3を構成する材料をCrONとした場合、主層3aの各元素の含有量は、X線光電子分光分析法(X-ray Photoelectron Spectroscopy:以下、XPSという場合がある)にて分析した結果で示すと、クロムが35原子%以上65原子%以下であり、酸素が16原子%以上50原子%以下であり、窒素が6原子%以上30原子%以下の範囲で調整される。好ましくは、クロムが41原子%以上58原子%以下であり、酸素が21原子%以上43原子%以下であり、窒素が11原子%以上24原子%以下である。
位相シフト膜3を構成する材料をCrCOCNとした場合、主層3aの各元素の含有量は、XPSにて分析した結果で示すと、クロムが35原子%以上60原子%以下であり、酸素が15原子%以上45原子%以下であり、窒素が5原子%以上25原子%以下であり、炭素が2原子%以上15原子%以下の範囲で調整される。好ましくは、クロムが40原子%以上55原子%以下であり、酸素が20原子%以上40原子%以下であり、窒素が10原子%以上20原子%以下であり、炭素が3原子%以上10原子%以下である。
また、位相シフト膜3の主層3aでは、上述したように、膜深さ方向の各元素の組成比が略均一である。ここで、膜深さ方向の各元素の組成比が略均一であるとは、上記の成膜工程における成膜条件で得られる位相シフト膜3の膜深さ方向の各元素の含有量の中心的な値を基準とし、その中心的な含有量に対する所定の変動幅の範囲内に主層3aの各元素の含有量が収まっていることをいう。例えば、位相シフト膜3を構成する材料をCrONとした場合、クロムの変動幅がクロムの中心的な含有量に対して±5.0原子%、酸素の変動幅が酸素の中心的な含有量に対して±6.5原子%、窒素の変動幅が窒素の中心的な含有量に対して±4.5原子%である。好ましくは、クロムの変動幅が±3.5原子%、酸素の変動幅が±5.5原子%、窒素の変動幅が±3.5原子%である。また、位相シフト膜3を構成する材料をCrCOCNとした場合、クロムの変動幅がクロムの中心的な含有量に対して±5.0原子%、酸素の変動幅が酸素の中心的な含有量に対して±6.5原子%、窒素の変動幅が窒素の中心的な含有量に対して±4.5原子%、炭素の変動幅が炭素の中心的な含有量に対して±4.0原子%である。好ましくは、クロムの変動幅が±3.5原子%、酸素の変動幅が±5.5原子%、窒素の変動幅が±3.5原子%、炭素の変動幅が±3.0原子%である。
尚、位相シフト膜3の主層3aにおける膜深さ方向の各元素の組成比の略均一は、膜厚方向の段階的又は連続的な組成変化を与えることを目的として、成膜工程中に、スパッタ原料やスパッタガスの供給方法や供給量を変化させる操作を行わずに、位相シフト膜3を成膜することで達成される。
【0045】
このような位相シフト膜形成工程は、例えば、
図2に示すインライン型スパッタリング装置11を用いて行うことができる。
【0046】
スパッタリング装置11はインライン型であり、搬入チャンバーLL、第1スパッタチャンバーSP1、バッファーチャンバーBU、第2スパッタチャンバーSP2、及び搬出チャンバーULLの5つのチャンバーから構成されている。これら5つのチャンバーが順番に連続して配置されている。
【0047】
トレイ(図示せず)に搭載された透明基板2は、所定の搬送速度で、矢印Sの方向に、搬入チャンバーLL、第1スパッタチャンバーSP1、バッファーチャンバーBU、第2スパッタチャンバーSP2、及び搬出チャンバーULLの順番に搬送されることができる。また、トレイ(図示せず)に搭載された透明基板2は、矢印Sと逆の方向に、搬出チャンバーULL、第2スパッタチャンバーSP2、バッファーチャンバーBU、第1スパッタチャンバーSP1、及び搬入チャンバーLLの順番に戻されることができる。
【0048】
搬入チャンバーLLと第1スパッタチャンバーSP1との間、及び、第2スパッタチャンバーSP2と搬出チャンバーULLとの間は、それぞれ仕切板により仕切られている。また、搬入チャンバーLL及び搬出チャンバーULLは、仕切板によりスパッタリング装置11の外部から仕切られることができる。
搬入チャンバーLL、バッファーチャンバーBU、及び搬出チャンバーULLは、排気を行う排気装置(図示せず)に接続されている。
【0049】
第1スパッタチャンバーSP1には、搬入チャンバーLL側に、位相シフト膜3を形成するためのクロムを含む第1スパッタターゲット13が配置され、第1スパッタターゲット13近傍における透明基板2の矢印Sで示す搬送方向の、第1スパッタターゲット13に対して川上側の位置に第1ガス導入口GA11が配置され、第1スパッタターゲット13に対して川下側の位置に第2ガス導入口GA12が配置されている。また、第1スパッタチャンバーSP1には、バッファーチャンバーBU側に、位相シフト膜3を形成するためのクロムを含む第2スパッタターゲット14が配置され、第2スパッタターゲット14近傍における透明基板2の矢印Sで示す搬送方向の、第2スパッタターゲット14に対して川上側の位置に第3ガス導入口GA21が配置され、第2スパッタターゲット14に対して川下側の位置に第4ガス導入口GA22が配置されている。
ここで、第1スパッタターゲット13と川下側の第2ガス導入口GA12との間隔は、第1スパッタターゲット13と川上側の第1ガス導入口GA11との間隔よりも広く設定されている。これは、後に説明するように、スパッタターゲットと川下側ガス導入口との間に距離を設けることで、スパッタガス雰囲気に変化をつけるためである。これと同様に、第2スパッタターゲット14と川下側の第4ガス導入口GA22との間隔は、第2スパッタターゲット14と川上側の第3ガス導入口GA21との間隔よりも広く設定されている。
尚、第1スパッタチャンバーSP1において、スパッタターゲットと川下側のガス導入口との間隔は、例えば、15cm以上50cm以下に設定され、スパッタターゲットと川上側のガス導入口との間隔は、例えば、1cm以上5cm以下に設定されることが好ましい。
【0050】
第2スパッタチャンバーSP2には、バッファーチャンバーBU側に、位相シフト膜3を形成するためのクロムを含む第3スパッタターゲット15が配置され、第3スパッタターゲット15近傍における透明基板2の矢印Sで示す搬送方向の、第3スパッタターゲット15に対して川上側の位置に第5ガス導入口GA31が配置され、第3スパッタターゲット15に対して川下側の位置に第6ガス導入口GA32が配置されている。
ここで、第1スパッタチャンバーSP1と同様に、第3スパッタターゲット15と川下側の第6ガス導入口GA32との間隔は、第3スパッタターゲット15と川上側の第5ガス導入口GA31との間隔よりも広く設定されている。
尚、第2スパッタチャンバーSP2においても、第1スパッタチャンバーSP1と同様に、スパッタターゲットと川下側のガス導入口との間隔は、例えば、15cm以上50cm以下に設定され、スパッタターゲットと川上側のガス導入口との間隔は、例えば、1cm以上5cm以下に設定されることが好ましい。
図2では、第1スパッタターゲット13、第2スパッタターゲット14、及び第3スパッタターゲット15に、ハッチングを付して示している。
【0051】
ここで、単層膜からなる位相シフト膜3を成膜する場合(1回成膜)を説明する。
先ず、スパッタリング装置11の搬入チャンバーLLに、トレイ(図示せず)に搭載された透明基板2を搬入する。
次に、スパッタリング装置11の内部を所定の真空度にした後、例えば、第1スパッタターゲット13の川下側の第2ガス導入口GA12から所定の流量のスパッタガスを、不活性ガスと活性ガスを含む混合ガスとして、第1スパッタチャンバーSP1に導入し、第1スパッタターゲット13に所定のスパッタパワーを印加する。スパッタパワーの印加、スパッタガスの導入は、透明基板2が搬出チャンバーULLに搬送されるまで継続する。
このようなスパッタガスの川下側からの供給によって、チャンバーの川上側(第2ガス導入口GA12から遠い箇所)では、飛翔距離が相対的に長い不活性ガスの存在率が高くなり、従って当該不活性ガスの含有量が所定の含有量よりも多い不活性ガス・リッチのスパッタガス雰囲気になると考えられる。また、川上側から川下側に移動するにかけて、不活性ガスの含有量が所定の含有量まで徐々に低下する(飛翔距離の相違の影響が徐々になくなる)傾向を有するスパッタガス雰囲気となり、第2ガス導入口GA12に近い位置では、所定の含有量の不活性ガスと活性ガスを含むスパッタガス雰囲気となると考えられる。
【0052】
その後、トレイ(図示せず)に搭載された透明基板2を、所定の搬送速度で、矢印Sの方向に、搬入チャンバーLL、第1スパッタチャンバーSP1、バッファーチャンバーBU、第2スパッタチャンバーSP2、及び搬出チャンバーULLの順番に搬送する。透明基板2が第1スパッタチャンバーSP1の第1スパッタターゲット13付近を通過する際に、反応性スパッタリングにより、透明基板2の主表面上に、同一のクロム系材料から構成される、単層膜からなる位相シフト膜3が所定の膜厚で成膜される。このような位相シフト膜3の成膜は、上述のスパッタガス雰囲気中で行われる。このため、位相シフト膜3の主層下部の成膜は、チャンバーの川上側において、主に、不活性ガス・リッチのスパッタガス雰囲気中で行われ、主層上部の成膜は、川下側において、主に、所定の含有量の不活性ガスと活性ガスを含むスパッタガス雰囲気中で行われる。このようなスパッタガス雰囲気中での反応性スパッタリングにより、透明基板2が川下寄りを通過する際の成膜後半を中心に、位相シフト膜3の主層3aの成膜が進むと考えられる。このため、主層下部から主層上部にかけて、波長365nmにおける屈折率が低下すると考えられ、主層上部の波長365nmにおける屈折率を主層下部の波長365nmにおける屈折率よりも小さくすることができる。このようにして成膜された位相シフト膜3によれば、ウェットエッチングによりパターニングして得られる位相シフト膜パターン3´のエッジ部分の被エッチング断面の断面形状を、位相シフト効果を十分に発揮できる、垂直断面形状又は垂直に近い断面形状とすることができる。
ここで、位相シフト膜パターン3´のエッジ部分の被エッチング断面の断面形状の垂直化の要因について言及する。断面形状の垂直化は、主に、位相シフト膜パターン3´とレジスト膜との密着性(エッチング液の浸み込み程度)、エッチングの等方性・異方性、膜の深さ方向のエッチング速度の相違、等が要因となる。
本実施形態におけるスパッタガスの川下供給条件で成膜する場合、深さ方向の波長365nmにおける屈折率は、主層上部で小さく、主層下部で大きい。このため、位相シフト膜パターン3´のエッジ部分の被エッチング断面における主層上部ではエッチング速度が遅くなり、主層下部ではエッチング速度が速くなる。これにより、主層下部に等方性エッチングが及ぶまでの間、主層上部への等方性エッチングが進みすぎることが抑止され、その被エッチング断面の断面形状が垂直化すると考えられる。
【0053】
一方、スパッタガスを第1スパッタターゲット13の川上側に配置された第1ガス導入口
GA11から供給して位相シフト膜を成膜する場合、その川上側から川下側にかけて、所定の含有量の不活性ガスと活性ガスを含むスパッタガス雰囲気となるため、透明基板2が第1スパッタターゲット13の上方を通過する前の成膜前半から通過した後の成膜後半にかけて、位相シフト膜の主層の成膜が進むと考えられる。スパッタガスの川上供給条件で成膜する場合、主層下部から主層上部にかけて、波長365nmにおける屈折率が上昇するので、主層上部の波長365nmにおける屈折率が主層下部の波長365nmにおける屈折率よりも大きくなる。このように成膜された位相シフト膜をウェットエッチングによりパターニングして得られる位相シフト膜パターンのエッジ部分の被エッチング断面の断面形状はテーパー化してしまう。
ここで、位相シフト膜パターンのエッジ部分の被エッチング断面の断面形状がテーパー化する理由は、波長365nmにおける屈折率が主層上部で大きく、主層下部で小さいため、位相シフト膜パターンのエッジ部分の被エッチング断面における主層上部ではエッチング速度が速くなり、主層下部ではエッチング速度が遅くなる。これにより、主層下部に等方性エッチングが及ぶ前に、主層上部への等方性エッチングが進むため、その被エッチング断面の断面形状がテーパー化すると考えられる。
【0054】
尚、位相シフト膜3の成膜中、バッファーチャンバーBUに接続された排気装置(図示せず)のメインバルブ(図示せず)を閉じて排気を停止した状態としてもよい。また、メインバルブ(図示せず)を閉じた状態で、第2スパッタチャンバーSP2内にスパッタガスを流さずに、透明基板2を搬送させてもよい。
さらに、上記の第1スパッタターゲット13に代えて、第2スパッタターゲット14を用いて単層膜からなる位相シフト膜3の成膜を行ってもよい。この場合、第2スパッタターゲット14の川下側の第4ガス導入口GA22から所定の流量のスパッタガスを第1スパッタチャンバーSP1に導入し、第2スパッタターゲット14に所定のスパッタパワーを印加する。また、第1スパッタチャンバーSP1の第1スパッタターゲット13又は第2スパッタターゲット14に代えて、第2スパッタチャンバーSP2の第3スパッタターゲット15を用いて単層膜からなる位相シフト膜3の成膜を行ってもよい。この場合、第3スパッタターゲット15の川下側の第6ガス導入口GA32から所定の流量のスパッタガスを第2スパッタチャンバーSP2に導入し、第3スパッタターゲット15に所定のスパッタパワーを印加する。
【0055】
積層膜からなる位相シフト膜3を成膜する場合(複数回成膜)を説明する。
この場合、透明基板2の矢印Sの方向の搬送と矢印Sと逆の方向の搬送とを繰り返し、矢印Sの方向の搬送中ごとに、位相シフト膜3の一部を構成するクロム系単層膜を順次積層することで、位相シフト膜3を成膜する第1の成膜方法と、透明基板2の矢印Sの方向への1回の搬送中に、第1スパッタターゲット13、第2スパッタターゲット14、及び、第3スパッタターゲット15のうち、少なくとも2つを用いて、位相シフト膜3の一部を構成するクロム系単層膜を順次積層して位相シフト膜3を成膜する第2の成膜方法と、第1の成膜方法と第2の成膜方法を組み合わせた第3の成膜方法がある。これらの成膜方法は、位相シフト膜3の層数に応じて、適宜選択される。
尚、これらの成膜方法では、単層膜からなる位相シフト膜3の成膜と同様に、透明基板2を矢印Sの方向に搬送する際には、所定の流量のスパッタガスを、成膜に使用されるスパッタターゲットの川下側より供給して、位相シフト膜3の成膜を行う。
【0056】
第1の成膜方法では、例えば、以下の手順に従う。
上述のように成膜された単層膜を、位相シフト膜3の一部を構成するクロム系単層膜の1層目とし、その後に、透明基板2を、矢印Sと逆の方向に、搬出チャンバーULLから搬入チャンバーLLまで、順番に戻し、再度、上述の1層目のクロム系単層膜の成膜と同様に、位相シフト膜3の一部を構成するクロム系単層膜の2層目の成膜を行う。
位相シフト膜3の一部を構成するクロム系単層膜の3層目以降の成膜を行う場合も、同様に行う。
このような第1の成膜方法を用いた成膜工程により、透明基板2の主表面上に、所定の膜厚の、同一のクロム系材料から構成される、2層又は3層以上の積層構造の積層膜からなる位相シフト膜3が成膜される。
【0057】
第2の成膜方法では、例えば、以下の手順に従う。
先ず、スパッタリング装置11の搬入チャンバーLLに、透明基板2を搬入する。
次に、スパッタリング装置11の内部を所定の真空度にした後、第1スパッタターゲット13の川下側の第2ガス導入口GA12から所定の流量のスパッタガスを第1スパッタチャンバーSP1に導入し、第3スパッタターゲット15の川下側の第6ガス導入口GA32から、第1スパッタチャンバーSP1に導入されたスパッタガスと同一成分のスパッタガスを所定の流量で第2スパッタチャンバーSP2に導入し、第1スパッタターゲット13及び第3スパッタターゲット15にそれぞれ所定のスパッタパワーを印加する。スパッタパワーの印加、スパッタガスの導入は、透明基板2が搬出チャンバーULLに搬送されるまで継続する。
その後、透明基板2を、所定の搬送速度で、矢印Sの方向に、搬入チャンバーLLから搬出チャンバーULLまで、順番に搬送する。透明基板2が第1スパッタチャンバーSP1の第1スパッタターゲット13付近を通過する際に、反応性スパッタリングにより、透明基板2の主表面上に、所定の膜厚のクロム系単層膜の1層目が成膜される。
その後、透明基板2が第2スパッタチャンバーSP2の第3スパッタターゲット15付近を通過する際に、反応性スパッタリングにより、1層目のクロム系単層膜上に、所定の膜厚のクロム系単層膜の2層目が成膜される。
3層構造の積層膜からなる位相シフト膜3の成膜を行う場合、上記のスパッタターゲットに加えて、第1スパッタチャンバーSP1の第2スパッタターゲット14をさらに用い、その第2スパッタターゲット14の川下側の第4ガス導入口GA22から所定の流量でスパッタガスを供給し、第2スパッタターゲット14に所定のスパッタパワーを印加する。この場合、第2スパッタターゲット14付近の通過の際に成膜されるクロム系単層膜は位相シフト膜3の2層目となり、第3スパッタターゲット15付近の通過の際に成膜されるクロム系単層膜は位相シフト膜3の3層目となる。
このような第2の成膜方法を用いた成膜工程により、透明基板2の主表面上に、所定の膜厚の、同一のクロム系材料から構成される、2層又は3層以上の積層構造の積層膜からなる位相シフト膜3が成膜される。
【0058】
第3の成膜方法では、上述した第1の成膜方法及び第2の成膜方法のいずれを先に行ってもよい。
例えば、先に第2の成膜方法を行って、1回の透明基板2の搬送中に多層のクロム系単層膜を積層し、その後に、第1の成膜方法を行って、さらに必要な層数のクロム系単層膜を積層することで、積層予定数の層数を有する積層膜からなる位相シフト膜3の成膜を行うことができる。
このような第3の成膜方法を用いた成膜工程により、透明基板2の主表面上に、所定の膜厚の、同一のクロム系材料から構成される、3層以上の多数の層を有する積層膜からなる位相シフト膜3が成膜される。
【0059】
このようにして透明基板2の主表面上に位相シフト膜3を形成した後、スパッタリング装置11の外部に透明基板2を取り出す。
【0060】
実施の形態1の位相シフトマスクブランク1は、このような準備工程と、位相シフト膜形成工程とにより製造される。
【0061】
このようにして製造された実施の形態1の位相シフトマスクブランク1によれば、透明基板2上にクロムと酸素と窒素とを含有する位相シフト膜3が形成されている。この位相シフト膜3は、同一材料からなる主層3aと、その主層3aの表面酸化層である最表面層3bを有する。最表面層3b側の主層上部の波長365nmにおける屈折率は、透明基板2側の主層下部の波長365nmにおける屈折率よりも小さい。このような構成を有する位相シフトマスクブランク1は、その位相シフト膜3が、ウェットエッチングにより、位相シフト効果を十分に発揮できる断面形状にパターニングされることが可能である。この位相シフトマスクブランク1は、その位相シフト膜3をパターニングすることで得られる位相シフト膜パターン3´のエッジ部分の被エッチング断面の断面形状を、位相シフト効果を十分に発揮できる断面形状とすることができるものであるので、解像度を向上させ、良好なCD特性をもつ位相シフト膜パターン3´を有する位相シフトマスクの製造用原版とすることができる。
【0062】
また、実施の形態1の位相シフトマスクブランク1の製造方法によれば、透明基板2上にクロムと酸素と窒素とを含有し、且つ同一材料からなる主層3aと、その主層3aの表面酸化層である最表面層3bを有する位相シフト膜3を、インライン型スパッタリング装置によるスパッタリング法により成膜する位相シフト膜形成工程を含む。この位相シフト膜形成工程では、クロムを含む第1スパッタターゲット13を使用し、不活性ガスと、位相シフト膜3を酸化及び窒化させる活性ガスを、第1スパッタターゲット13の近傍における透明基板2の搬送方向の、その第1スパッタターゲット13に対して川下側より供給して、不活性ガスと活性ガスを含む混合ガスによる反応性スパッタリングにより行う。このようにして成膜された位相シフト膜3を、ウェットエッチングにより、位相シフト効果を十分に発揮できる断面形状にパターニング可能な位相シフトマスクブランク1を製造することができる。位相シフト膜パターン3´のエッジ部分の被エッチング断面の断面形状を、位相シフト効果を十分に発揮できる断面形状とすることができるので、解像度を向上させ、良好なCD特性をもつ位相シフト膜パターン3´へのパターニングが可能な位相シフトマスクブランク1を製造することができる。
【0063】
尚、実施の形態1では、不活性ガスと活性ガスを予め混合した混合ガスを一つのガス導入口(例えば、第1スパッタターゲット13を用いる場合、第2ガス導入口GA12)から供給して行う、位相シフト膜形成工程を説明したが、これに限定されるものではなく、予め混合せずに、不活性ガスと活性ガスをそれぞれ専用のガス導入口から供給しながら位相シフト膜形成工程を行ってもよい。
【0064】
また、実施の形態1では、成膜工程に上述した構成のインライン型スパッタリング装置11を用いた場合を説明したが、他の構成を有するインライン型スパッタリング装置を用いてもよい。他のインライン型スパッタリング装置としては、例えば、第2スパッタチャンバーSP2内に、搬出チャンバーULL側に、位相シフト膜3を形成するためのクロムを含む第4スパッタターゲット(図示せず)を配置し、第4スパッタターゲット近傍における透明基板2の矢印Sで示す搬送方向の、第4スパッタターゲットに対して川上側の位置に第7ガス導入口(図示せず)を配置し、第4スパッタターゲットに対して川下側の位置に第8ガス導入口(図示せず)を配置した構成が挙げられる。このように、第4スパッタターゲット(図示せず)を配置する場合においても、他のスパッタターゲットとその搬送方向の両側に配置されるガス導入口との配置関係と同様に、第4スパッタターゲット(図示せず)と川下側の第8ガス導入口(図示せず)との間隔は、第4スパッタターゲット(図示せず)と川上側の第7ガス導入口(図示せず)との間隔よりも広く設定されることが好ましい。
【0065】
さらに、
図2に示したインライン型スパッタリング装置において、第1スパッタターゲット13の川下側に配置された第2ガス導入口GA12、第2スパッタターゲット14の川下側に配置された第4ガス導入口GA22、及び、第3スパッタターゲット15の川下側に配置された第6ガス導入口GA32のうち、少なくとも一つが設けられていれば、実施の形態1における位相シフト膜3の成膜を行うことができるので、あえて、第1スパッタターゲット13の川上側に配置された第1ガス導入口GA11、第2スパッタターゲット14の川上側に配置された第3ガス導入口GA21、及び、第3スパッタターゲット15の川上側に配置された第5ガス導入口GA31の全部又は一部を設けなくてもよい。
【0066】
実施の形態2.
実施の形態2では、実施の形態1とは別の、表示装置製造用の位相シフトマスクブランク(透明基板/位相シフト膜)の製造方法について説明する。
【0067】
実施の形態2の位相シフトマスクブランク1は、透明基板2上に、クロムと酸素と窒素とを含有し、且つ、VUVが照射された位相シフト膜3が形成された構成を有する。尚、この実施の形態2の位相シフトマスクブランク1は、外観上は、
図1に示した実施の形態1の位相シフトマスクブランク1と同一の膜構成を有するものである。
【0068】
このように構成された、実施の形態2の位相シフトマスクブランク1の製造方法は、実施の形態1で説明した位相シフトマスクブランク1、又は、実施の形態1で説明した位相シフトマスクブランクの製造方法によって得られた位相シフトマスクブランク1の位相シフト膜3に対して行うVUV照射工程を含む。
以下、VUV照射工程を詳細に説明する。
【0069】
VUV照射工程では、位相シフト膜3の最表面に対してVUV照射処理を行う。
ここで、VUV照射処理とは、被照射体としての位相シフト膜3の最表面上を、その面方向に沿って、所定の間隔をもって、VUV照射装置(図示せず)の照射部(図示せず)を走査させながら、その照射部(図示せず)から最表面に対してVUVを照射して行う改質処理をいう。
VUV照射処理に用いられるVUVとは、紫外線の中でも波長が短いものをいう。VUVは、主として大気中では吸収により減衰するが、真空中では減衰を防げることが知られている。本発明では、VUVとは波長が10nm〜200nmである紫外線をいい、波長100nm〜200nmのものを使用することが好ましい。具体的には、VUVとしては、例えば、波長126nm(アルゴン)、波長146nm(クリプトン)、波長172nm(キセノン)のエキシマ光の使用が可能であるが、本発明では、波長172nmのキセノンエキシマ光を用いることが好ましい。尚、上記VUV照射に伴い、あるいはVUV照射後に、加熱処理を行ってもよい。但し、特段、高温(例えば、200℃以上)の加熱を行わなくても、改質効果は得られる。
【0070】
VUV照射処理におけるVUV照射条件については、以下のようにすることが好ましい。
照射雰囲気には特に制約はなく、窒素などの不活性ガスや真空とすることができるが、大気中でも改質効果は得られる。但し、大気中でVUV照射処理を行う場合には、VUVの減衰率を考慮し、VUV照射装置の照射部(図示せず)と位相シフト膜3の最表面との距離を小さくすることが好ましい。
VUV照射エネルギーとしては、位相シフト膜3の改質処理に十分なエネルギーとすることが肝要である。例えば、位相シフト膜3の最表面に対し、20J/cm
2以上とし、好ましくは30J/cm
2以上、より好ましくは40J/cm
2以上とする。また、照射効率の観点から、60J/cm
2以下であることが好ましい。
VUV照射は、例えば、照度30W/cm
2〜50W/cm
2の光源(図示せず)を備えた照射部(図示せず)を用い、位相シフト膜3の最表面に対し、20分以上の照射(走査により最表面の同一箇所に対して複数回の照射を行う場合には、その合計時間での照射)とすることができる。具体的には、光源(図示せず)を照度40W/cm
2とし、照射領域の長さを200mmとし、走査速度を10mm/秒とし、減衰率を70%とした場合、20分程度のVUV照射によって、最表面に対して45J/cm
2の照射エネルギーを与えることができる。ここで、減衰率とは、照射部(図示せず)からの照射量に対する減衰後の残存量の割合をいう。
尚、VUV照射は、透明基板2の減衰率や照射効率の観点から、透明基板2側からではなく、位相シフト膜3の最表面側から行うことが好ましい。
【0071】
このようにして製造された実施の形態2の位相シフトマスクブランク1は、その位相シフト膜3がVUV照射工程により改質され、その位相シフト膜3の最表面の膜密度が2.0g/cm
3以上である。最表面の膜密度が2.0g/cm
3以上であることは、耐薬性及び洗浄耐性の向上の観点から好ましく、2.2g/cm
3以上であることがより好ましい。
【0072】
位相シフト膜3は、VUV照射工程により、以下のような特性を有する。
(1)VUV照射工程は、VUV照射工程を行っていない場合と比べて、位相シフト膜3の最表面層3bの、例えば波長365nmにおける屈折率の最大値を小さくし、その屈折率の深さ方向の減少傾向を小さくし、主層3aの、例えば波長365nmにおける屈折率の深さ方向の上昇傾向を小さくすることで、位相シフト膜3の深さ方向の屈折率差を小さくするという改質を行うことができる(例えば、後述の実施例1(
図9)と実施例2(
図15)参照)。ここで、最表面層3bの屈折率が低下する理由は、VUV照射工程により表面ラフネスが増加することで、見かけの屈折率が低下するためであると考えられる。このような改質処理により、位相シフト膜3の主層上部の屈折率が低く、主層下部の屈折率が高い位相シフト膜3を得ることができるので、位相シフト膜3をパターニングして得られる位相シフト膜パターン3´のエッジ部分の被エッチング断面における主層上部でエッチング速度が遅くなり、主層下部でエッチング速度が速くなるため、その被エッチング断面の断面形状のテーパー化が抑制され、位相シフト効果を十分に発揮できる断面形状になる。尚、VUV照射工程により、最表面層3bの屈折率の最大値及び減少傾向を小さくし、且つ、主層3aの屈折率の上昇傾向を小さくすることは、位相シフト膜3内において屈折率の変化が小さいため、上記パターニングにおける等方性エッチングが進み易くなる結果、上記被エッチング断面の断面形状のテーパー化の抑制に寄与すると考えられる。
これに対し、クロムを含むスパッタターゲットを使用し、不活性ガスと、該位相シフト膜を酸化及び窒化させる活性ガスを、前記スパッタターゲットの近傍における前記透明基板の搬送方向の、該スパッタターゲットに対して川上側より供給して成膜した位相シフト膜を有する、従来の位相シフトマスクブランクでは、VUV照射工程は、VUV照射工程を行っていない場合と比べて、位相シフト膜の最表面層の、例えば波長365nmにおける屈折率の最大値を小さくし、その屈折率の深さ方向の上昇傾向を大きくし、主層の、例えば波長365nmにおける屈折率の深さ方向の減少傾向を小さくするか、あるいは、略フラットにすることで、位相シフト膜3の深さ方向の屈折率差を大きくするという改質を行う(例えば、後述の比較例1(
図9)、比較例2(
図15)参照)。
(2)VUV処理工程は、最表面の濡れ性を改善する効果があるため、位相シフト膜3とレジスト膜の密着性向上することができる。したがって、VUV処理によってレジスト膜と位相シフト膜3の界面へのエッチング液の浸み込みを遅くすることでテーパー化が抑制される。
(3)VUV照射工程は、最表面の膜密度を高く変化させるという改質を行うことができる。位相シフト膜3の最表面の膜密度が上昇する理由としては、VUV照射処理により、最表面に存在するクロム原子の周辺の空孔に他の原子が供給され空孔が埋められるためであると考えられる。他の原子としては、例えば酸素原子が挙げられる。この場合、空孔が酸素原子により埋められることで、最表面における「CrO」の密度が上昇する結果、最表面の膜密度が上昇するものと考えられる。
具体的には、VUV照射工程により、最表面の膜密度を2.0g/cm
3以上に変えることができる。尚、最表面の膜密度の上昇は、位相シフト膜3に対するパターニングの際に用いられるレジスト膜5との密着性を向上させる一因となる可能性があると考えられる。
さらに、最表面の膜密度の上昇が上述のように「CrO」の密度の上昇に由来すると仮定すると、その仮定は、位相シフト膜パターン3´のエッジ部分の被エッチング断面の断面形状を、位相シフト効果を十分に発揮できる断面形状にすることができるという効果によって裏付けられるものと考えられる。すなわち、最表面に酸素(O)が供給されると、エッチング速度を速くさせる窒素(N)の含有量が相対的に減少するため、位相シフト膜3に対するパターニングの際の等方エッチング(ウェットエッチング)において、当該エッジ部分の被エッチング断面のうち、レジスト膜5近傍の被エッチング断面(最表面近傍)部分のエッチング速度が遅くなる。このため、そのレジスト膜5近傍の被エッチング断面部分は、エッチングにより透明基板2の主表面が露出した後、エッジ部分の下側部分に及ぶまで持ち堪えることができ、レジスト膜5近傍の被エッチング断面部分には、エッチング液による、いわゆる喰われ現象の発生が少なくなると考えられるからである。
尚、最表面の膜密度は、例えば、X線反射率分析法(XRR)にて測定することができる。実施例、比較例における最表面の膜密度の値は、位相シフト膜3の膜厚方向に複数分割してシミュレーションすることでフィッティングした際のフィッティングの妥当性を示す数値指標Fit Rが0.025以下となるシミュレーション条件により得た。
(4)VUV照射工程は、主層3aの膜深さ方向の各元素の組成比を変化させない。このため、主層3aの膜深さ方向の各元素の組成比は、VUV照射工程を行っていない場合と同様に、略均一のままである。つまり、VUV照射工程を行っても、VUV照射工程前における位相シフト膜3の主層3aの膜深さ方向の各元素の組成比に大きな変化を与えることがないため、位相シフト膜3は、所望の光学特性(透過率、位相差)を維持できる。
(5)VUV照射工程は、上述したように、成膜時の位相シフト膜3の透過率を殆ど変えることがなく、位相シフト膜3をパターニングして得られる位相シフト膜パターン3´のエッジ部分の被エッチング断面の断面形状を、VUV照射工程を行っていない場合とは全く異なり、位相シフト効果を十分に発揮できる断面形状にすることができる。また、VUV照射工程は、成膜時の位相シフト膜3の殆ど反射率を変えない。このことは、位相シフト膜パターン3´のCDばらつきを非常に狭い範囲に制御できる可能性を示すものであり、この点でも、VUV照射工程は有効であると考えられる。
【0073】
実施の形態2の位相シフトマスクブランク1は、準備工程と、位相シフト膜形成工程と、VUV照射工程とにより製造される。
【0074】
このようにして製造された実施の形態2の位相シフトマスクブランク1によれば、透明基板2上にクロムと酸素と窒素とを含有し、且つ、VUV照射処理された位相シフト膜3が形成されている。この位相シフト膜3は、実施の形態1と同様に、同一材料からなる主層3aと、その主層3aの表面酸化層である最表面層3bを有する。最表面層3b側の主層上部の波長365nmにおける屈折率は、透明基板2側の主層下部の波長365nmにおける屈折率よりも小さく、また、最表面の膜密度が2.0g/cm
3以上である。このため、この位相シフトマスクブランク1は、その位相シフト膜3が、ウェットエッチングにより、位相シフト効果を十分に発揮できる断面形状に位相シフト膜をパターニングすることが可能である。この位相シフトマスクブランク1は、その位相シフト膜3をパターニングすることで得られる位相シフト膜パターンのエッジ部分の被エッチング断面の断面形状を、位相シフト効果を十分に発揮できる断面形状とすることができるものであるので、解像度を向上させ、良好なCD特性をもつ位相シフト膜パターンを有する位相シフトマスクの製造用原版とすることができる。
【0075】
また、実施の形態2の位相シフトマスクブランク1の製造方法によれば、透明基板2上にクロムと酸素と窒素とを含有し、且つ、同一材料からなる主層3aと、その主層3aの表面酸化層である最表面層3bを有する位相シフト膜3をインライン型スパッタリング装置によるスパッタリング法により成膜する位相シフト膜形成工程と、成膜された位相シフト膜3の最表面に対してVUV照射処理を行うVUV照射工程を含む。この位相シフト膜形成工程では、実施の形態1と同様に、第1スパッタターゲット13を使用し、不活性ガスと、活性ガスを、第1スパッタターゲット13に対して川下側より供給して、不活性ガスと活性ガスを含む混合ガスによる反応性スパッタリングにより行う。これにより、成膜された位相シフト膜3の最表面層3b側の主層上部の波長365nmにおける屈折率を、透明基板2側の主層下部の波長365nmにおける屈折率よりも小さくすることができる。また、VUV照射工程は、位相シフト膜3の最表面層3bの、例えば波長365nmにおける屈折率の最大値を小さくし、その屈折率の減少傾向を小さくし、主層3aの、例えば波長365nmにおける屈折率の上昇傾向を小さくし、また、最表面の膜密度を2.0g/cm
3以上に変える。このため、ウェットエッチングにより、位相シフト効果を十分に発揮できる断面形状に位相シフト膜3をパターニング可能な位相シフトマスクブランク1を製造することができる。位相シフト膜パターンのエッジ部分の被エッチング断面の断面形状を、位相シフト効果を十分に発揮できる断面形状とすることができるので、解像度を向上させ、良好なCD特性をもつ位相シフト膜パターンへのパターニングが可能な位相シフトマスクブランク1を製造することができる。
【0076】
尚、実施の形態2における位相シフト膜形成工程により成膜された透明基板2の位相シフト膜3に対して、その成膜直後に、後工程としてのVUV照射工程を行ってもよく、あるいは、成膜後の所定の期間、所定のケース内に保管した後に、VUV照射工程を行ってもよい。保管は、例えば1か月程度の期間であってもよいが、これに限定されるものではない。保管前にVUV処理工程を行うと、例えば、1か月程度の保管後であっても、洗浄の有無(硫酸洗浄を除く)に関わらず、レジストパターンをマスクにしてウェットエッチングにより形成される位相シフト膜パターンの断面形状は、VUV処理なされていない断面形状と比べて良好になる。保管後にVUV照射工程を行う際には、所定の膜洗浄を行う必要はない。保管中に位相シフト膜3の最表面等の露出部分が若干汚染される可能性はあるが、仮に汚染された状態であっても、VUV照射工程による改質効果に影響を与えない。好ましくは、レジスト膜形成の直前にVUV照射工程を行うことが望ましい。また、フォトマスクブランクの製造過程において、位相シフト膜3の表面を硫酸洗浄し、その後に位相シフト膜3上にレジストパターンを形成すると、位相シフト膜パターンの断面形状はテーパー形状となるが、位相シフト膜3の硫酸洗浄後、レジスト膜形成前にVUV照射を行うことで、位相シフト膜パターンの断面形状はテーパー形状になりにくく、垂直化できる可能性がある。すなわち、位相シフト膜3の表面を硫酸洗浄すると、レジスト膜と位相シフト膜3の膜表面の密着性が著しく低下するため、レジストパターンをマスクにしたウェットエッチングプロセス後の断面形状が非常に大きなテーパー形状となってしまうので、位相シフト膜の解像度を有効に活用できない。位相シフト膜3の硫酸洗浄後であってもVUV照射工程を行うことによって、大幅に位相シフト膜パターンの断面形状を改善することができる。さらに、位相シフト膜3への硫酸洗浄後のリンスを強化し、硫黄成分を極力低減した後にVUV照射工程を行うことで位相シフト膜パターンの断面形状を垂直化できる可能性がある。
【0077】
VUV照射工程を行った実施の形態2の位相シフトマスクブランク1は、そのVUV照射工程直後に、位相シフトマスクの製造方法における製造用原版として用いてもよい。また、位相シフトマスクブランク1を所定の期間、所定のケース内に保管しても、位相シフト膜3に対するVUV照射処理による改質効果が維持される。このため、保管後に、位相シフトマスクの製造方法における製造用原版として用いることができる。このように、位相シフトマスクブランク1を保管できるので、一定量の位相シフトマスクブランク1をストックしておき、出荷時や位相シフトマスクの製造時などに利用でき、その取扱い性を向上させることができる。尚、保管は、例えば2週間程度の期間であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0078】
実施の形態3.
実施の形態3では、表示装置製造用の位相シフトマスク(透明基板/位相シフト膜パターン)の製造方法について説明する。
図3(a)〜
図3(e)は本発明の実施の形態3による位相シフトマスクの製造方法の各工程を示す断面図であり、
図1及び
図2と同一構成要素には同一符号を付して重複説明を省略する。
【0079】
実施の形態3の位相シフトマスク30は、透明基板2上に位相シフト膜パターン3´が形成された構成を有する。
【0080】
このように構成された、実施の形態3の位相シフトマスクの製造方法では、先ず、実施の形態1あるいは2で説明した位相シフトマスクブランク1(
図1参照)、又は、実施の形態1あるいは2で説明した位相シフトマスクブランクの製造方法によって得られた位相シフトマスクブランク1の位相シフト膜3上に、レジスト膜パターン5´を形成するレジスト膜パターン形成工程を行う。
詳細には、このレジスト膜パターン形成工程では、先ず、
図3(a)に示すように、透明基板2上にクロム系材料からなる位相シフト膜3が形成された位相シフトマスクブランク1を準備する。その後、
図3(b)に示すように、位相シフト膜3上にレジスト膜5を形成する。その後、
図3(c)に示すように、レジスト膜5に対して所定のサイズのパターンを描画した後、レジスト膜5を所定の現像液で現像して、レジスト膜パターン5´を形成する。
レジスト膜5に描画するパターンとして、ラインアンドスペースパターンやホールパターンが挙げられる。
【0081】
次に、
図3(d)に示すように、レジスト膜パターン5´をマスクにして位相シフト膜3をウェットエッチングして、位相シフト膜パターン3´を形成する位相シフト膜パターン形成工程を行う。
位相シフト膜3をウェットエッチングするエッチング液は、クロム系材料から構成された位相シフト膜3を選択的にエッチングできるものであれば、特に制限されない。具体的には、硝酸第二セリウムアンモニウムと過塩素酸とを含むエッチング液が挙げられる。
【0082】
位相シフト膜パターン3´の形成後、
図3(e)に示すように、レジスト膜パターン5´を剥離する。
【0083】
実施の形態3の位相シフトマスク30は、このようなレジスト膜パターン形成工程と、位相シフト膜パターン形成工程とにより製造される。
【0084】
位相シフト膜パターン3´は、位相シフトマスクブランク1の位相シフト膜3と同様に、露光光の位相を変える性質を有する。この性質により、位相シフト膜パターン3´を透過した露光光と透明基板2のみを透過した露光光との間に所定の位相差が生じる。露光光が300nm以上500nm以下の波長範囲の光を含む複合光である場合、位相シフト膜パターン3´は、代表波長の光に対して、所定の位相差を生じるように形成する。例えば、露光光がi線、h線及びg線を含む複合光である場合、位相シフト膜パターン3´は、i線、h線及びg線のいずれかに対して、180度の位相差を生じるように形成する。また、位相シフト効果を発揮するために、例えば、i線における位相シフト膜パターン3´の位相差は、180度±10度の範囲に設定され、好ましくは略180度に設定される。また、例えば、i線における位相シフト膜パターン3´の透過率は、1%以上20%以下、特に好ましくは、3%以上15%以下の範囲に設定されることが好ましい。
【0085】
位相シフト膜パターン3´の各元素の組成比は、位相シフト膜パターン3´の最表面から膜深さ方向に向かって形成された最表面層3b及び位相シフト膜パターン3´と透明基板2との界面領域を除く主層3aにおいて略均一である。但し、位相シフト膜パターン3´の最表面から膜深さ方向に向かって形成された最表面層3b及び透明基板2に近い界面領域では、組成は均一ではない。
【0086】
このような位相シフト膜パターン3´のエッジ部分の被エッチング断面の断面形状は、位相シフト膜3の最表面が上述したVUV照射処理を受けているため、テーパー形状になりにくい。
ここで、位相シフト膜パターン3´のエッジ部分の被エッチング断面の断面角度(θ)(後述の
図12参照)は、位相シフト効果を十分に発揮させる上で、できる限り、90度又はこの90度に近い角度であることが望ましい。
但し、断面角度(θ)が90度又はこの90度に近い角度でなくても、位相シフト効果を十分に発揮させることが可能である。例えば、位相シフト膜パターン3´のエッジ部分の被エッチング断面のうち、透明基板2に近いエッジ部分の被エッチング断面部分に若干、裾部分があったとしても、レジスト膜パターン5´に近い位相シフト膜パターン3´のエッジ部分の被エッチング断面の多くの部分が90度又はこの90度に近い角度であれば、位相シフト効果を十分に発揮させることが可能である。
【0087】
このように製造された表示装置製造用の位相シフトマスク30は、等倍露光のプロジェクション露光に使用されて位相シフト効果を十分に発揮する。特に、その露光環境としては、開口数(NA)は、好ましくは0.06〜0.15、より好ましくは0.08〜0.10であり、コヒーレンスファクター(σ)は好ましくは0.5〜1.0である。
【0088】
実施の形態3の位相シフトマスク30の製造方法によれば、実施の形態1あるいは2で説明した位相シフトマスクブランク1、又は、実施の形態1あるいは2で説明した位相シフトマスクブランクの製造方法によって得られた位相シフトマスクブランク1を用いて位相シフトマスク30を製造する。このため、位相シフト効果を十分に発揮できる位相シフト膜パターン3´を有する位相シフトマスク30を製造することができる。位相シフト膜パターン3´が位相シフト効果を十分に発揮できるので、解像度を向上させ、良好なCD特性をもつ位相シフト膜パターン3´を有する位相シフトマスク30を製造することができる。この位相シフトマスク30は、ラインアンドスペースパターンやコンタクトホールの微細化に対応することができる。
【0089】
尚、実施の形態3では、位相シフトマスク30の製造用原版として、透明基板/位相シフト膜の構成を有する位相シフトマスクブランク1を用いて説明したが、これに限定されるものではない。例えば、透明基板/位相シフト膜/レジスト膜の構成(
図3(b)参照)を有する位相シフトマスクブランクを位相シフトマスク30の製造用原版としてもよい。
【0090】
また、実施の形態3では、レジスト膜パターン形成工程前において、位相シフトマスクブランク1の位相シフト膜3に対して、必要に応じて、膜洗浄を行ってもよい。膜洗浄には、公知の洗浄方法を用いることができる。但し、硫黄(S)成分を含む洗浄液(例えば、硫酸過水)を用いる洗浄方法以外の洗浄方法を用いることが好ましい。硫黄(S)成分を含む洗浄液を用いた膜洗浄では、その硫黄(S)成分が位相シフト膜3上に残留する。このため、その残留した硫黄(S)成分により、位相シフト膜3をパターニングして位相シフト膜パターン3´を得る際に、そのエッジ部分の被エッチング断面の断面形状がテーパー形状になり易くなるからである。
【0091】
実施の形態4.
実施の形態4では、表示装置製造用の位相シフトマスクブランク(透明基板/遮光膜パターン/位相シフト膜)及びその製造方法について説明する。
図4は本発明の実施の形態4による位相シフトマスクブランクの構成を示す断面図であり、
図5(a)〜
図5(f)は
図4に示した位相シフトマスクブランクの製造方法の各工程を示す断面図であり、
図1〜
図3と同一構成要素には同一符号を付して重複説明を省略する。
【0092】
実施の形態4の位相シフトマスクブランク10は、透明基板2と、この透明基板2の主表面上に形成された遮光膜パターン4´と、この遮光膜パターン4´及び透明基板2の主表面上に形成された位相シフト膜3とから構成されている。
【0093】
このように構成された、実施の形態4の位相シフトマスクブランク10の製造方法は、透明基板2を準備する準備工程と、透明基板2の主表面上に、スパッタリングにより、遮光膜4を成膜する成膜工程(以下、遮光膜形成工程という場合がある)と、遮光膜4をパターニングして遮光膜パターン4´を形成する遮光膜パターン形成工程と、遮光膜パターン4´上に、クロムと酸素と窒素とを含有する位相シフト膜3を成膜する位相シフト膜形成工程を含む。
以下、各工程を詳細に説明する。
【0094】
1.準備工程
先ず、透明基板2を準備する。
この準備工程は、実施の形態1における準備工程と同様に行う。
【0095】
2.遮光膜形成工程
次に、
図5(a)に示すように、透明基板2の主表面上に、スパッタリングにより、遮光膜4を形成する。
詳細には、この遮光膜形成工程では、スパッタガス雰囲気でスパッタパワーを印加して所定の材料から構成される遮光膜4を成膜する成膜工程を行う。
【0096】
遮光膜4は、位相シフト膜3との合計で、露光光に対する光学濃度が2.8以上、好ましくは3.0以上となるように、遮光膜4を構成する材料や膜厚が調整される。
【0097】
遮光膜4を構成する材料は、特に限定されないが、マスクブランクに使用されている材料であることが好ましい。マスクブランクに使用されている材料としては、例えば、クロムを含む材料、タンタルを含む材料、及び、金属とケイ素(Si)とを含む材料(金属シリサイド材料)が挙げられる。クロムを含む材料としては、クロム(Cr)を含むものであれば、特に制限されないが、例えば、クロム(Cr)、クロムの酸化物、クロムの窒化物、クロムの炭化物、及び、クロムのフッ化物が挙げられる。タンタルを含む材料としては、タンタル(Ta)を含むものであれば、特に制限されないが、例えば、タンタル(Ta)、タンタルの酸化物、及び、タンタルの窒化物が挙げられる。金属シリサイド材料として、例えば、金属シリサイドの窒化物、金属シリサイドの酸化物、金属シリサイドの酸化窒化物、金属シリサイドの炭化窒化物、金属シリサイドの酸化炭化物、及び、金属シリサイドの酸化炭化窒化物が挙げられる。金属としては、モリブデン(Mo)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、チタン(Ti)などの遷移金属が挙げられる。金属とケイ素の組成は、遮光膜4の光学特性の観点から調整される。金属とケイ素の比率は、金属の種類や遮光膜に要求される光学特性に応じて、適宜選択され、金属:ケイ素=1:1以上1:9以下が好ましい。
尚、遮光膜4を構成する材料は、必要に応じて、酸素(O)、窒素(N)、炭素(C)等の他の元素を含んでいてもよい。
【0098】
遮光膜4は、1つの層から構成される場合及び複数の層から構成される場合のいずれであってもよい。遮光膜4が複数の層から構成される場合、例えば、位相シフト膜3側に形成される遮光層と遮光層上に形成される反射防止層とから構成される積層構造の場合がある。遮光層は1つの層から構成される場合及び複数の層から構成される場合のいずれであってもよい。遮光層として、例えば、クロム窒化膜(CrN)、クロム炭化膜(CrC)、クロム炭化窒化膜(CrCN)が挙げられる。反射防止層は、露光光の反射率を低減させる目的で、遮光膜の表面に設けられ、反射防止層は1つの層から構成される場合及び複数の層から構成される場合のいずれであってもよい。反射防止層として、例えば、クロム酸化窒化膜(CrON)が挙げられる。
【0099】
遮光膜4の成膜には、クラスター型スパッタリング装置、インライン型スパッタリング装置などのスパッタリング装置が用いられる。
【0100】
遮光膜4は、例えば、以下のようなスパッタターゲット、スパッタガス雰囲気により成膜することができる。
クロムを含む材料からなる遮光膜4の成膜に使用されるスパッタターゲットとしては、クロム(Cr)又はクロム化合物を含むものが選択される。具体的には、クロム(Cr)、クロムの窒化物、クロムの酸化物、クロムの炭化物、クロムの酸化窒化物、クロムの炭化窒化物、クロムの酸化炭化物、及び、クロムの酸化炭化窒化物が挙げられる。
クロムを含む材料からなる遮光膜4の成膜時におけるスパッタガス雰囲気は、窒素(N
2)ガス、一酸化窒素(NO)ガス、二酸化窒素(NO
2)ガス、亜酸化窒素(N
2O)ガス、一酸化炭素(CO)ガス、二酸化炭素(CO
2)ガス、酸素(O
2)ガス、炭化水素系ガス及びフッ素系ガスからなる群より選ばれる少なくとも一種を含む活性ガスと、ヘリウム(He)ガス、ネオン(Ne)ガス、アルゴン(Ar)ガス、クリプトン(Kr)ガス及びキセノン(Xe)ガスからなる群より選ばれる少なくとも一種を含む不活性ガスとの混合ガスからなる。炭化水素系ガスとしては、例えば、メタンガス、ブタンガス、プロパンガス、スチレンガスが挙げられる。
上述したスパッタターゲットの形成材料とスパッタガス雰囲気のガスの種類との組み合わせや、スパッタガス雰囲気中の活性ガスと不活性ガスとの混合割合は、遮光膜4を構成するクロム系材料の種類や組成に応じて、適宜決められる。
【0101】
タンタルを含む材料からなる遮光膜4の成膜に使用されるスパッタターゲットとしては、タンタル(Ta)又はタンタル化合物を含むものが選択される。具体的には、タンタル(Ta)、タンタルの酸化物、及び、タンタルの窒化物が挙げられる。
タンタルを含む材料からなる遮光膜4の成膜時におけるスパッタガス雰囲気は、窒素(N
2)ガス、一酸化窒素(NO)ガス、二酸化窒素(NO
2)ガス、亜酸化窒素(N
2O)ガス、一酸化炭素(CO)ガス、二酸化炭素(CO
2)ガス及び酸素(O
2)ガスからなる群より選ばれる少なくとも一種を含む活性ガスと、ヘリウム(He)ガス、ネオン(Ne)ガス、アルゴン(Ar)ガス、クリプトン(Kr)ガス及びキセノン(Xe)ガスからなる群より選ばれる少なくとも一種を含む不活性ガスとの混合ガスからなる。
上述したスパッタターゲットの形成材料とスパッタガス雰囲気のガスの種類との組み合わせや、スパッタガス雰囲気中の活性ガスと不活性ガスとの混合割合は、遮光膜4を構成するタンタルを含む材料の種類や組成に応じて、適宜決められる。
【0102】
金属シリサイド材料からなる遮光膜4の成膜に使用されるスパッタターゲットとしては、金属と、ケイ素(Si)を含むものが選択される。具体的には、金属シリサイド、金属シリサイドの窒化物、金属シリサイドの酸化物、金属シリサイドの炭化物、金属シリサイドの酸化窒化物、金属シリサイドの炭化窒化物、金属シリサイドの酸化炭化物、及び、金属シリサイドの酸化炭化窒化物が挙げられる。
金属シリサイド材料からなる遮光膜4の成膜時におけるスパッタガス雰囲気は、窒素(N
2)ガス、一酸化窒素(NO)ガス、二酸化窒素(NO
2)ガス、亜酸化窒素(N
2O)ガス、一酸化炭素(CO)ガス、二酸化炭素(CO
2)ガス及び酸素(O
2)ガスからなる群より選ばれる少なくとも一種を含む活性ガスと、ヘリウム(He)ガス、ネオン(Ne)ガス、アルゴン(Ar)ガス、クリプトン(Kr)ガス及びキセノン(Xe)ガスからなる群より選ばれる少なくとも一種を含む不活性ガスとの混合ガスからなる。
上述したスパッタターゲットの形成材料とスパッタガス雰囲気のガスの種類との組み合わせや、スパッタガス雰囲気中の活性ガスと不活性ガスとの混合割合は、遮光膜4を構成する金属シリサイド材料の種類や組成に応じて、適宜決められる。
【0103】
遮光膜形成工程は、例えば、
図2に示すスパッタリング装置11を用いて行うことができる。
ここでは、クロムを含む材料からなる遮光膜4を形成する場合を例にして説明する。
先ず、例えば、遮光層と反射防止層とから構成される積層構造の遮光膜4を形成する場合、第1スパッタチャンバーSP1に、遮光膜4の遮光層を形成するためのクロムを含む第1スパッタターゲット13を配置し、第2スパッタチャンバーSP2に、遮光膜4の反射防止層を形成するためのクロムを含む第3スパッタターゲット15を配置する。
【0104】
その後、遮光膜4を形成するため、トレイ(図示せず)に搭載された透明基板2を搬入チャンバーLLに搬入する。
【0105】
その後、スパッタリング装置11の内部を所定の真空度にした状態で、第2ガス導入口GA12から所定の流量のスパッタガスを導入し、第1スパッタターゲット13に所定のスパッタパワーを印加する。また、第6ガス導入口GA32から所定の流量のスパッタガスを導入し、第3スパッタターゲット15に所定のスパッタパワーを印加する。スパッタパワーの印加、スパッタガスの導入は、透明基板2が搬出チャンバーULLに搬送されるまで継続する。
【0106】
その後、トレイ(図示せず)に搭載された透明基板2を、所定の搬送速度で、矢印Sの方向に、搬入チャンバーLL、第1スパッタチャンバーSP1、バッファーチャンバーBU、第2スパッタチャンバーSP2、及び搬出チャンバーULLの順番に搬送する。透明基板2が第1スパッタチャンバーSP1の第1スパッタターゲット13付近を通過する際に、反応性スパッタリングにより、透明基板2の主表面上に、所定の膜厚のクロム系材料から構成される遮光層が成膜される。また、透明基板2が第2スパッタチャンバーSP2の第3スパッタターゲット15付近を通過する際に、反応性スパッタリングにより、遮光層上に、所定の膜厚のクロム系材料から構成される反射防止層が成膜される。
【0107】
透明基板2の主表面上に、遮光層と反射防止層とから構成される積層構造の遮光膜4を形成した後、透明基板2をスパッタリング装置11の外部に取り出す。
【0108】
3.遮光膜パターン形成工程
次に、透明基板2の主表面上に、遮光膜パターン4´を形成する遮光膜パターン形成工程を行う。
詳細には、この遮光膜パターン形成工程では、先ず、
図5(b)に示すように、遮光膜4上にレジスト膜5を形成する。その後、
図5(c)に示すように、レジスト膜5に対して所定のサイズのパターンを描画した後、レジスト膜5を所定の現像液で現像して、レジスト膜パターン5´を形成する。
レジスト膜5に描画するパターンとして、ラインアンドスペースパターンやホールパターンが挙げられる。
【0109】
次に、
図5(d)に示すように、レジスト膜パターン5´をマスクにして遮光膜4をウェットエッチングして、遮光膜パターン4´を形成する遮光膜パターン形成工程を行う。
遮光膜4がクロム系材料から構成される場合、その遮光膜4をウェットエッチングするエッチング液は、遮光膜4を選択的にエッチングできるものであれば、特に制限されない。具体的には、硝酸第二セリウムアンモニウムと過塩素酸とを含むエッチング液が挙げられる。
遮光膜4が金属シリサイド材料から構成される場合、その遮光膜4をウェットエッチングするエッチング液は、遮光膜4を選択的にエッチングできるものであれば、特に制限されない。例えば、弗化水素酸、珪弗化水素酸、および弗化水素アンモニウムから選ばれた少なくとも一つの弗素化合物と、過酸化水素、硝酸、および硫酸から選ばれた少なくとも一つの酸化剤とを含むエッチング液が挙げられる。具体的には、フッ化水素アンモニウムと過酸化水素の混合溶液を純水で希釈したエッチング液が挙げられる。
遮光膜4がタンタル系材料から構成される場合、その遮光膜4をウェットエッチングするエッチング液は、遮光膜4を選択的にエッチングできるものであれば、特に制限されない。具体的には、水酸化ナトリウムと過酸化水素とを含むエッチング液が挙げられる。
遮光膜パターン4´の形成後、
図5(e)に示すように、レジスト膜パターン5´を剥離する。
【0110】
4.位相シフト膜形成工程
次に、
図5(f)に示すように、透明基板2上の遮光膜パターン4´上に、位相シフト膜3を成膜する位相シフト膜形成工程を行う。
この位相シフト膜形成工程は、実施の形態1における位相シフト膜形成工程と同様に行う。
【0111】
実施の形態4の位相シフトマスクブランク10は、このような準備工程と、遮光膜形成工程と、遮光膜パターン形成工程と、位相シフト膜形成工程とにより製造される。
【0112】
このようにして製造された実施の形態4の位相シフトマスクブランク10によれば、透明基板2の主表面上に遮光膜パターン4´を介して、及び、透明基板2の主表面上に直接、クロムと酸素と窒素とを含有する位相シフト膜3が形成されている。この位相シフト膜3は、同一材料からなる主層3aと、その主層3aの表面酸化層である最表面層3bを有する。最表面層3b側の主層上部の波長365nmにおける屈折率は、透明基板2側の主層下部の波長365nmにおける屈折率よりも小さい。このような構成を有する位相シフトマスクブランク10は、その位相シフト膜3が、ウェットエッチングにより、位相シフト効果を十分に発揮できる断面形状にパターニングされることが可能である。この位相シフトマスクブランク10は、その位相シフト膜3をパターニングすることで得られる位相シフト膜パターン3´のエッジ部分の被エッチング断面の断面形状を、位相シフト効果を十分に発揮できる断面形状とすることができるものであるので、解像度を向上させ、良好なCD特性をもつ位相シフト膜パターンを有する位相シフトマスクの製造用原版とすることができる。
【0113】
また、実施の形態4の位相シフトマスクブランク10の製造方法によれば、透明基板2の主表面上に遮光膜パターン4´を介して、及び、透明基板2の主表面上に直接、クロムと酸素と窒素とを含有し、且つ、同一材料からなる主層3aと、その主層3aの表面酸化層である最表面層3bを有する位相シフト膜3を、インライン型スパッタリング装置によるスパッタリング法により成膜する成膜工程を含む。この位相シフト膜形成工程では、クロムを含む第1スパッタターゲット13を使用し、不活性ガスと、位相シフト膜3を酸化及び窒化させる活性ガスを、第1スパッタターゲット13の近傍における透明基板2の搬送方向の、その第1スパッタターゲット13に対して川下側より供給して、不活性ガスと活性ガスを含む混合ガスによる反応性スパッタリングにより行う。このようにして成膜された位相シフト膜3を、ウェットエッチングにより、位相シフト効果を十分に発揮できる断面形状にパターニング可能な位相シフトマスクブランク10を製造することができる。位相シフト膜パターンのエッジ部分の被エッチング断面の断面形状を、位相シフト効果を十分に発揮できる断面形状とすることができるので、解像度を向上させ、良好なCD特性をもつ位相シフト膜パターンへのパターニングが可能な位相シフトマスクブランク10を製造することができる。
【0114】
尚、実施の形態4においても、実施の形態2と同様に、位相シフト膜形成工程後に、位相シフト膜3の最表面に対してVUV照射工程を行ってもよい。
【0115】
実施の形態5.
実施の形態5では、表示装置製造用の位相シフトマスク(透明基板/遮光膜パターン/位相シフト膜パターン)の製造方法について説明する。
図6(a)〜
図6(e)は
図4に示した位相シフトマスクブランクを用いた本発明の実施の形態5による位相シフトマスクの製造方法の各工程を示す断面図であり、
図1〜
図5と同一構成要素には同一符号を付して重複説明を省略する。
【0116】
実施の形態5の位相シフトマスクブランクの製造方法で製造される位相シフトマスク31は、透明基板2の主表面上に遮光膜パターン4´を介して、及び、透明基板2の主表面上に直接、クロムと酸素と窒素とを含有する位相シフト膜パターン3´が形成された構成を有する。
【0117】
このように構成された、実施の形態5の位相シフトマスクの製造方法では、先ず、実施の形態4で説明した位相シフトマスクブランク10(
図4参照)、又は、実施の形態4で説明した位相シフトマスクブランクの製造方法によって得られた位相シフトマスクブランク10(
図5(f)参照)の位相シフト膜3上に、レジスト膜パターン5´を形成するレジスト膜パターン形成工程を行う。
詳細には、このレジスト膜パターン形成工程では、先ず、
図6(a)に示すように、透明基板2の主表面上に遮光膜パターン4´を介して、及び、透明基板2の主表面上に直接、クロムと酸素と窒素とを含有する位相シフト膜3が形成された位相シフトマスクブランク10を準備する。その後、
図6(b)に示すように、位相シフト膜3上にレジスト膜5を形成する。その後、
図6(c)に示すように、レジスト膜5に対して所定のサイズのパターンを描画した後、レジスト膜5を所定の現像液で現像して、レジスト膜パターン5´を形成する。
レジスト膜5に描画するパターンとして、ラインアンドスペースパターンやホールパターンが挙げられる。
【0118】
次に、
図6(d)に示すように、レジスト膜パターン5´をマスクにして位相シフト膜3をウェットエッチングして、位相シフト膜パターン3´を形成する位相シフト膜パターン形成工程を行う。
位相シフト膜3をウェットエッチングするエッチング液は、クロム系材料から構成された位相シフト膜3を選択的にエッチングできるものであれば、特に制限されない。具体的には、硝酸第二セリウムアンモニウムと過塩素酸とを含むエッチング液が挙げられる。
得られた位相シフト膜パターン3´は、実施の形態2における位相シフト膜パターン3´と同様に、露光光の位相を変える性質を有し、そのエッジ部分の被エッチング断面の断面形状は、本発明に係る位相シフト膜が形成され且つ位相シフト膜3の最表面が上述したVUV照射処理を受けているため、テーパー形状になりにくい。
【0119】
位相シフト膜パターン3´の形成後、
図6(e)に示すように、レジスト膜パターン5´を剥離する。
【0120】
実施の形態5の位相シフトマスク31は、このようなレジスト膜パターン形成工程と、位相シフト膜パターン形成工程とにより製造される。
このように製造された表示装置製造用の位相シフトマスク31は、等倍露光のプロジェクション露光に使用されて位相シフト効果を十分に発揮する。特に、その露光環境としては、開口数(NA)は、好ましくは0.06〜0.15、より好ましくは0.08〜0.10であり、コヒーレンスファクター(σ)は好ましくは0.5〜1.0である。
【0121】
実施の形態5の位相シフトマスク31の製造方法によれば、実施の形態4で説明した位相シフトマスクブランク10、又は、実施の形態4で説明した位相シフトマスクブランクの製造方法によって得られた位相シフトマスクブランク10を用いて位相シフトマスク31を製造する。このため、位相シフト効果を十分に発揮できる位相シフト膜パターン3´を有する位相シフトマスク31を製造することができる。位相シフト膜パターン3´が位相シフト効果を十分に発揮できるので、解像度を向上させ、良好なCD特性をもつ位相シフト膜パターン3´を有する位相シフトマスク31を製造することができる。この位相シフトマスク31は、ラインアンドスペースパターンやコンタクトホールの微細化に対応することができる。
【0122】
尚、実施の形態5では、位相シフトマスク31の製造用原版として、透明基板/遮光膜パターン/位相シフト膜の構成(
図6(a)参照)を有する位相シフトマスクブランク10を用いて説明したが、これに限定されるものではない。例えば、透明基板/遮光膜パターン/位相シフト膜/レジスト膜の構成(
図6(b)参照)を有する位相シフトマスクブランクを位相シフトマスク31の製造用原版としてもよい。
【0123】
また、実施の形態5では、実施の形態3と同様に、上記レジスト膜パターン形成工程前において、位相シフトマスクブランク10の位相シフト膜3に対して、必要に応じて、膜洗浄を行ってもよい。膜洗浄には、公知の洗浄方法を用いることができる。但し、硫黄(S)成分を含む洗浄液(例えば、硫酸過水)を用いる洗浄方法以外の洗浄方法を用いることが好ましい。
【実施例】
【0124】
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明する。
【0125】
実施例1及び比較例1.
実施例1及び比較例1では、位相シフト膜(材料:CrOCN)を有する位相シフトマスクブランク及びこの位相シフトマスクブランクを用いて製造される位相シフトマスクについて説明する。
尚、実施例1の位相シフトマスクブランク1は、その位相シフト膜3をクロムからなるスパッタターゲットの川下側に配置されたガス導入口から反応性のガス(スパッタガス)を導入し、反応性スパッタリングにより成膜して(このとき、バッファーチャンバーBUのメインバルブ(図示せず)を閉じ、第2スパッタチャンバーSP2にはガスを流していない。)製造されるのに対し、比較例1の位相シフトマスクブランクは、その位相シフト膜をクロムからなるスパッタターゲットの川上側に配置されたガス導入口から反応性のガス(スパッタガス)を導入し、反応性スパッタリングにより成膜して(このとき、バッファーチャンバーBUのメインバルブ(図示せず)を開け、第2スパッタチャンバーSP2には同様のガスを流している。)製造される点で、両者は異なる。
【0126】
A.位相シフトマスクブランク及びその製造方法
上述した構成の実施例1及び比較例1の位相シフトマスクブランク1を製造するため、先ず、透明基板2として、8092サイズ(800mm×920mm)の合成石英ガラス基板を準備した。
【0127】
その後、透明基板2を、
図2に示すクロムからなるスパッタターゲットが配置されたインライン型スパッタリング装置11に搬入し、
図1に示すように、透明基板2の主表面上にクロム酸化炭化窒化物(CrOCN)からなる位相シフト膜3(膜厚125nm)を成膜した。
位相シフト膜3は、第1スパッタチャンバーSP1内に、クロムからなる第1スパッタターゲット13の川下側に配置された第2ガス導入口GA12から、アルゴン(Ar)ガスと二酸化炭素(CO
2)ガスと窒素(N
2)ガスを含む混合ガス(Ar:46sccm、N
2:46sccm、CO
2:45sccm)を導入し、スパッタパワーを3.5kwとし、透明基板2の搬送速度を200mm/分として、反応性スパッタリングにより、透明基板2上に成膜した。1回成膜にて、位相シフト膜3(膜厚125nm)を形成した。
尚、実施例1の位相シフト膜3の成膜は、バッファーチャンバーBUに接続された排気装置(図示せず)のメインバルブ(図示せず)を閉じて排気を停止し、第2スパッタチャンバーSP2内にスパッタガスを導入しない条件下で行った。この条件下で位相シフト膜3を成膜した場合、位相シフト膜パターンのエッジ部分の断面形状がテーパー化する可能性が予想されるので、そのテーパー化を回避するため、位相シフト膜3の透過率を5%未満となるように上記成膜条件を調整した。
【0128】
一方、透明基板2上に形成する位相シフト膜(膜厚125nm)を、クロムからなる第1スパッタターゲット13の川上側に配置された第1ガス導入口GA11から、実施例1と同じ成分の混合ガスを、実施例1とは異なる流量(Ar:46sccm、N
2:46sccm、CO
2:35sccm)で導入し、且つ、スパッタパワーを3.40kwとした以外は、実施例1と同様に1回成膜にて形成し、比較例1の位相シフトマスクブランクを得た。
【0129】
実施例1の位相シフトマスクブランク1の位相シフト膜3及び比較例1の位相シフトマスクブランクの位相シフト膜について、X線光電子分光法(XPS)による深さ方向の組成分析を行った。
その結果、実施例1、比較例1ともに位相シフト膜の最表面層には、膜表面側に向かって酸素の含有量が多くなっている膜厚約8nmの表面酸化層が形成されており、合成石英ガラス基板(透明基板2)との界面付近を除き、深さ約8nm〜約115nmは、各元素(Cr,C,O,N)の含有量に殆ど変化がない主層が形成されていた。
実施例1および比較例1のいずれにおいても、主層では、クロム(Cr)、酸素(O)、窒素(N)及び炭素(C)の各元素の含有量の変動幅が小さく、略均一である。位相シフト膜の主層における各元素の含有量は、Crが50±3原子%、Oが29±5原子%、Nが15±3原子%、Cが6±3原子%であった。
【0130】
次に、実施例1及び比較例1の位相シフト膜の屈折率(n)、消衰係数(k)の値を分光エリプソメータで測定した。分光走査は55°および65°で行い、シミュレーションは、平均二乗誤差(Mean Squared Error:MSE)が5.0以下となる、以下の条件で行った。
主層:積層膜(Gradedlayer)
最表面層:酸化膜(Cauchy)
【0131】
実施例1のMSEは4.852であり、比較例1のMSEは4.867であった。
【0132】
図7は実施例1の位相シフトマスクブランク1の位相シフト膜3の主層上部と主層下部に対する波長190nm〜1000nmにおける屈折率(n)の関係を示す図であり、
図8は比較例1の位相シフトマスクブランクの位相シフト膜の主層上部と主層下部に対する波長190nm〜1000nmにおける屈折率(n)の関係を示す図であり、
図9は実施例1及び比較例1の位相シフトマスクブランクの位相シフト膜の最表面層から主層下部までに対する波長365nmにおける屈折率を示す図である。
【0133】
図7に示すように、当該波長範囲において、実施例1の位相シフトマスクブランク1における位相シフト膜3の主層上部の屈折率は、主層下部の屈折率よりも小さいことが分かった。特に、表示装置を製造する際に使用する露光光源(超高圧水銀ランプ:i線、h線、g線の混合光)の波長の一つであるi線(波長365nm)において、主層上部の屈折率は、主層下部の屈折率よりも小さく、主層上部の屈折率は2.41であり、主層下部の屈折率は2.60であった。
一方、
図8に示すように、当該波長範囲において、比較例1の位相シフトマスクブランクにおける位相シフト膜の主層上部の屈折率は、主層下部の屈折率よりも大きいことが分かった。特に、i線(波長365nm)において、主層上部の屈折率は2.60であり、主層下部の屈折率は2.53であった。
尚、実施例1及び比較例1のいずれにおいても、屈折率の測定位置を、主層上部では、位相シフト膜の最表面からの深さ約10nmとし、主層下部では、位相シフト膜の最表面からの深さ約100nmとした。
また、
図9に示すように、実施例1では、位相シフト膜3の最表面層3bにおいて、波長365nmにおける屈折率が減少し、主層3aにおいて、波長365nmにおける屈折率が上昇する傾向を示すのに対し、比較例1では、位相シフト膜の最表面層において、波長365nmにおける屈折率が上昇し、主層において、波長365nmにおける屈折率が減少する傾向を示した。これらの結果から明らかなように、スパッタガスの川下供給条件を採用して位相シフト膜3を成膜した実施例1は、スパッタガスの川上供給条件を採用して位相シフト膜を成膜した比較例1と比べて、位相シフト膜の深さ方向の屈折率の変化傾向が正反対となることが分かった。
【0134】
実施例1及び比較例1の位相シフトマスクブランクの位相シフト膜について、X線反射率分析法(XRR)により最表面の膜密度を測定した。
尚、最表面の膜密度は、表層から深さ方向2.2nmにおける位相シフト膜3の膜密度を測定した。その結果、実施例1の位相シフト膜3の最表面の膜密度は、2.36g/cm
3、比較例1の位相シフト膜の最表面の膜密度は、2.28g/cm
3であった。尚、膜密度を算出した際のフィッティングの妥当性を示す数値指標Fit Rは、実施例1は0.012であり、比較例1は0.013であった。
【0135】
尚、実施例1及び比較例1の各位相シフトマスクブランクの位相シフト膜について、日立ハイテクノロジー社製の分光光度計U−4100により透過率を測定し、レーザーテック社製のMPM−100により位相差を測定した。尚、実施例1及び比較例1における透過率の値は、いずれもAir基準の値である。
位相シフト膜3の透過率及び位相差の測定には、同一の基板ホルダー(図示せず)にセットされた6025サイズ(152mm×152mm)の透明基板2の主表面上に、位相シフト膜3(膜厚125nm)が成膜された位相シフト膜付き基板(ダミー基板)を用いた。
その結果、実施例1の波長365nmにおける透過率は3.0%であり、比較例1の波長365nmにおける透過率は5.3%であった。
また、実施例1の波長365nmにおける位相差は185度であり、比較例1の波長365nmにおける位相差は181.8度であった。この結果から、位相シフト膜をスパッタガスの川下供給条件で成膜しても、所望の位相差を得られることが分かった。
【0136】
また、実施例1及び比較例1の位相シフトマスクブランクの位相シフト膜について、日立ハイテクノロジー社製の分光光度計U−4100により反射率を測定した。
その結果、波長200nm〜800nmにおける実施例1の反射率スペクトルは、比較例1の反射率スペクトルと略同様であった。この結果から、位相シフト膜をスパッタガスの川下供給条件で成膜しても、所望の反射率スペクトルを得られることが分かった。
【0137】
B.位相シフトマスク及びその製造方法
上述のようにして製造された実施例1及び比較例1の位相シフトマスクブランクを用いて、実施例1及び比較例1の位相シフトマスクを製造するため、先ず、実施例1及び比較例1の位相シフトマスクブランクの位相シフト膜3上に、レジスト塗布装置を用いてフォトレジスト膜5を塗布した。
その後、加熱・冷却工程を経て、膜厚1000nmのフォトレジスト膜5を形成した。
その後、レーザー描画装置を用いてフォトレジスト膜5を描画し、現像・リンス工程を経て、位相シフト膜3上に、ラインパターンの幅が2.0μm及びスペースパターンの幅が2.0μmのラインアンドスペースパターンのレジスト膜パターン5´を形成した。
【0138】
その後、レジスト膜パターン5´をマスクにして、硝酸第二セリウムアンモニウムと過塩素酸とを含むクロムエッチング液により位相シフト膜3をウェットエッチングして、位相シフト膜パターン3´を形成した。
【0139】
その後、レジスト膜パターン5´を剥離した。
【0140】
このようにして、透明基板2の上に、VUV照射処理を受けていない位相シフト膜3をパターニングした位相シフト膜パターン3´が形成された実施例1の位相シフトマスク30(透明基板/位相シフト膜パターン)及び、比較例1の位相シフトマスク(透明基板/位相シフト膜パターン)を得た。
【0141】
実施例1の位相シフトマスク30及び比較例1の位相シフトマスクの各位相シフト膜パターン3´のエッジ部分の被エッチング断面を、レジスト膜パターン5´の剥離前に、走査型電子顕微鏡により観察した。
図10は実施例1の位相シフトマスクの位相シフト膜パターン3´のエッジ部分の断面写真であり、
図11は比較例1の位相シフトマスクの位相シフト膜パターンのエッジ部分の断面写真であり、
図12はエッジ部分の断面形状の判断指標となる断面角度(θ)を説明するための断面図である。
図12において、位相シフト膜3の膜厚をTとし、最表面からT/10の深さに引いた補助線をL1とし、透明基板2の主表面側からT/10の高さに引いた補助線をL2とし、位相シフト膜3の被エッチング断面Fと補助線L1との交点をC1とし、被エッチング断面Fと補助線L2との交点をC2とする。ここで、断面角度(θ)は、交点C1と交点C2を結んだ連絡線と透明基板2の主表面がなす角度である。
また、レジスト界面角度は、レジスト近傍の被エッチング断面Fと最表面がなす角度であり、透明基板界面角度は、透明基板近傍の被エッチング断面Fと透明基板の主表面がなす角度である。
さらに、テーパー下面長さは、レジスト近傍の被エッチング断面Fと最表面との交差部の一点を透明基板の主表面上にそのまま垂直方向に投影した地点と、透明基板近傍の被エッチング断面Fの裾部分の先端部の一点との長さである。
【0142】
図10に示す実施例1のエッジ部分の被エッチング断面のレジスト界面角度は100度であり、透明基板界面角度は50度であり、テーパー下面長さは50nmであり、断面角度(θ)は80度であった。
一方、
図11に示す比較例1のエッジ部分の被エッチング断面のレジスト界面角度は155度であり、透明基板界面角度は25度であり、テーパー下面長さは200nmであり、断面角度(θ)は25度であった。また、比較例1の被エッチング断面は、実施例1の被エッチング断面よりも長い裾を引くテーパー形状になった。
これらの結果から明らかなように、実施例1における被エッチング断面は、比較例1における被エッチング断面よりも格段に大きな断面角度(θ)を有し、より垂直断面形状に近いことが分かった。つまり、位相シフト膜をスパッタガスの川下供給条件で成膜することによって、エッジ部分の被エッチング断面の断面角度(θ)が大きくなる。
【0143】
次に、実施例1の位相シフトマスクの位相シフト膜パターンのCDばらつきを、セイコーインスツルメンツナノテクノロジー社製SIR8000により測定した。CDばらつきの測定は、基板の周縁領域を除外した740mm×860mmの領域について、5×5の地点で測定した。CDばらつきは、目標とするラインアンドスペースパターン(ラインパターンの幅:2.0μm、スペースパターンの幅:2.0μm)からのずれ幅である。以下の実施例及び比較例において、CDばらつきの測定には、同じ装置を用いた。
CDばらつきは0.087μmと非常に良好であった。
【0144】
比較例1の位相シフトマスクの位相シフト膜パターンのCDばらつきは、0.205μmとなり、実施例1よりも大きいことが分かった。
【0145】
次に、2.5μm四方のコンタクトホールパターンを有する位相シフト膜パターンが形成された位相シフトマスクを通過した光の空間像をシミュレーションした実施例1及び比較例1の波長365nmにおける光強度分布曲線(透過率プロファイル)を比較した。
実施例1の光強度分布曲線は、比較例1と比べて、コンタクトホール中心に鋭いピーク強度をもち、パターン境界部分では、光強度変化が大きく、パターン境界部分の外側の周辺領域では、光強度変化が小さいことを示していた。したがって、実施例1の位相シフトマスクでは、比較例1と比べて、強い光強度傾斜を示し、解像度が高いことが分かった。
【0146】
実施例2及び比較例2.
実施例2及び比較例2では、実施例1及び比較例1とは異なり、位相シフト膜3の成膜後に行うVUV照射処理を受けた位相シフト膜(材料:CrOCN)を有する位相シフトマスクブランク及びこの位相シフトマスクブランクを用いて製造される位相シフトマスクについて説明する。
尚、実施例2の位相シフトマスクブランク1は、その位相シフト膜3を、実施例1と同様に、スパッタガスの川下供給条件で成膜し、その後に、VUV照射処理して製造されるのに対し、比較例2の位相シフトマスクブランクは、その位相シフト膜を、比較例1と同様に、スパッタガスの川上供給条件で成膜し、その後に、VUV照射処理して製造される点で、両者は異なる。
【0147】
A.位相シフトマスクブランク及びその製造方法
透明基板2として、実施例1と同じサイズの合成石英ガラス基板を準備した。
実施例2では、位相シフト膜形成工程において、
図2に示すスパッタリング装置11の、クロムからなる第1スパッタターゲット13の川下側に配置された第2ガス導入口GA12から、実施例1と同じ成分の混合ガスを、比較例1と同様の流量(Ar:46sccm、N
2:46sccm、CO
2:35sccm)で導入し、且つ、スパッタパワーを3.55kwとした。これ以外の成膜条件は、実施例1と同様に1回成膜にて、位相シフト膜3(膜厚125nm)を形成した。
一方、比較例2では、比較例1と同様の成膜条件で、位相シフト膜形成工程を行い、1回成膜にて、位相シフト膜(膜厚125nm)を形成した。
【0148】
その後、実施例2及び比較例2の位相シフト膜の最表面に対してVUV照射処理を行った。
VUV照射処理には、VUV(キセノンエキシマ光、波長172nm)を40mW/cm
2のエネルギーで照射する照射装置(図示せず)を用い、位相シフト膜3の最表面に対し照射エネルギー45J/cm
2に相当する照射を行った。
このようにして、VUV照射処理を受けた位相シフト膜3が形成された実施例2の位相シフトマスクブランク1及びVUV照射処理を受けた位相シフト膜が形成された比較例2の位相シフトマスクブランクを得た。
【0149】
実施例2及び比較例2の位相シフトマスクブランクの位相シフト膜について、X線光電子分光法(XPS)による深さ方向の組成分析を行ったところ、実施例2及び比較例2の深さ方向の各元素(Cr,C,O,N)の含有量は、実施例1と同様の変化傾向を示すことが分かった。
【0150】
次に、実施例1と同様に、実施例2の位相シフト膜の屈折率(n)、消衰係数(k)の値を分光エリプソメータで測定した。尚、実施例2のMSEは4.498であり、比較例2のMSEは4.505であった。
【0151】
図13は実施例2の位相シフト膜3の主層上部と主層下部に対する波長190nm〜1000nmにおける屈折率(n)の関係を示す図であり、
図14は比較例2の位相シフト膜の主層上部と主層下部に対する波長190nm〜1000nmにおける屈折率(n)の関係を示す図であり、
図15は実施例2及び比較例2の位相シフトマスクブランクの位相シフト膜の最表面層から主層下部までに対する波長365nmにおける屈折率を示す図である。
図13に示すように、当該波長範囲において、実施例2の位相シフトマスクブランク1における位相シフト膜3の主層上部の屈折率は、主層下部の屈折率よりも小さいことが分かった。特に、表示装置を製造する際に使用する露光光源(超高圧水銀ランプ:i線、h線、g線の混合光)の波長の一つであるi線(波長365nm)において、主層上部の屈折率は2.43であり、主層下部の屈折率は2.57であった。
一方、
図14に示すように、当該波長範囲において、比較例2の位相シフトマスクブランクにおける位相シフト膜の主層上部の屈折率は、主層下部の屈折率と略同一であることが分かった。特に、i線(波長365nm)において、主層上部の屈折率は2.59であり、主層下部の屈折率は2.57であった。
また、
図15に示すように、実施例2では、実施例1と同様に、位相シフト膜3の最表面層3bにおいて、波長365nmにおける屈折率が減少し、主層3aにおいて、波長365nmにおける屈折率が上昇する傾向を示すのに対し、比較例2では、比較例1と同様に、位相シフト膜の最表面層において、波長365nmにおける屈折率が上昇し、主層において、波長365nmにおける屈折率が減少する傾向を示した。これらの結果から明らかなように、スパッタガスの川下供給条件を採用して位相シフト膜3を成膜した実施例2は、スパッタガスの川上供給条件を採用して位相シフト膜を成膜した比較例2と比べて、VUV照射処理を行っても、実施例1と比較例1との関係と同様に、位相シフト膜の深さ方向の屈折率の変化傾向が正反対となることが分かった。
さらに、
図15に示す実施例2では、VUV照射工程を行っていない
図9の実施例1と比べて、位相シフト膜3の最表面層3bの、波長365nmにおける屈折率の最大値を約2.77から約2.70へと小さくし、その屈折率の減少傾向を小さくし、主層3aの、波長365nmにおける屈折率の上昇傾向を小さくすることが分かった。
一方、
図15に示す比較例2では、VUV照射工程を行っていない
図9の比較例1と比べて、位相シフト膜の最表面層の、例えば波長365nmにおける屈折率の最大値を約2.5から約2.38へと小さくし、その屈折率の上昇傾向を大きくし、主層の、例えば波長365nmにおける屈折率の減少傾向を小さくするか、あるいは、略フラットにすることが分かった。
【0152】
実施例2及び比較例2の位相シフトマスクブランクの位相シフト膜について、実施例1と同様に、X線反射率分析法(XRR)により最表面の膜密度を測定した。実施例2の最表面の膜密度は2.33g/cm
3であり、比較例2の最表面の膜密度は2.29g/cm
3であった。尚、膜密度を算出した際のフィッティングの妥当性を示す数値指標Fit Rは、実施例2は0.013であり、比較例2は0.012であった。
【0153】
次に、実施例1と同様に、実施例2及び比較例2の位相シフトマスクブランクの位相シフト膜について、透過率、反射率及び位相差を測定した。
その結果、実施例2の波長365nmにおける透過率は5.1%であり、実施例2の波長365nmにおける位相差は182.0度であり、実施例2の反射率スペクトルは、実施例1と略同様であった。
一方、比較例2の波長365nmにおける透過率は5.4%であり、比較例2の波長365nmにおける位相差は181.5度であり、比較例2の反射率スペクトルは、実施例1と略同様であった。
【0154】
B.位相シフトマスク及びその製造方法
上述のようにして製造された実施例2及び比較例2の位相シフトマスクブランクを用いて、実施例1と同様に、実施例2及び比較例2の位相シフトマスクを製造した。
【0155】
このようにして、透明基板2の上に、VUV照射処理を受けた位相シフト膜3をパターニングした位相シフト膜パターン3´が形成された実施例2の位相シフトマスク30(透明基板/位相シフト膜パターン)を得た。
一方、実施例2と同様の方法で、透明基板2の上に、VUV照射処理を受けた位相シフト膜をパターニングした位相シフト膜パターンが形成された比較例2の位相シフトマスク(透明基板/位相シフト膜パターン)を得た。
【0156】
実施例2及び比較例2の位相シフトマスクの位相シフト膜パターンのエッジ部分の被エッチング断面を、レジスト膜パターンの剥離前に、走査型電子顕微鏡により観察した。
【0157】
図16に示す実施例2のエッジ部分の被エッチング断面のレジスト界面角度は90度であり、透明基板界面角度は90度であり、テーパー下面長さは0nmであり、断面角度(θ)は90度であった。
この結果から明らかなように、実施例2における被エッチング断面は、実施例1における被エッチング断面よりも更に大きな断面角度(θ)を有し、より垂直断面形状に近いことが分かった。つまり、VUV照射処理によって、エッジ部分の被エッチング断面の断面角度(θ)が大きくなる。
【0158】
図17に示す比較例2のエッジ部分の被エッチング断面のレジスト界面角度は130度であり、透明基板界面角度は50度であり、テーパー下面長さは80nmであり、断面角度(θ)は50度であった。
この結果から明らかなように、比較例2における被エッチング断面は、比較例1における被エッチング断面よりも大きな断面角度(θ)を有し、テーパー下面長さが短くなり、若干、垂直断面形状に近づくことが分かった。つまり、VUV照射処理によって、エッジ部分の被エッチング断面の断面角度(θ)が大きくなる。
【0159】
次に、実施例2及び比較例2の位相シフトマスクの位相シフト膜パターンのCDばらつきを、実施例1と同様に、測定した。
実施例2のCDばらつきは0.059μmと良好であった。この結果から明らかなように、実施例2のCDばらつきは、VUV照射工程を受けていない実施例1のCDばらつきよりも更に小さいことが分かった。
一方、比較例2のCDばらつきは0.156μmとなった。この結果から明らかなように、比較例2のCDばらつきは、VUV照射工程を受けていない比較例1のCDばらつきより小さいが、スパッタガスの川下供給条件の実施例1及び2のCDばらつきよりも格段に大きいことが分かった。
【0160】
次に、実施例1と同様に、波長365nmにおける光強度分布曲線(透過率プロファイル)を検討した。
実施例2の光強度分布曲線は、比較例2と比べて、コンタクトホール中心に鋭いピーク強度をもち、パターン境界部分では、光強度変化が大きく、パターン境界部分の外側の周辺領域では、光強度変化が小さいことを示していた。したがって、実施例2の位相シフトマスクでは、比較例2と比べて、強い光強度傾斜を示し、解像度が高いことが分かった。
【0161】
実施例3及び比較例3.
実施例3及び比較例3では、位相シフト膜3(材料:CrON)を有する位相シフトマスクブランク及びこの位相シフトマスクブランクを用いて製造される位相シフトマスクについて説明する。
尚、実施例3の位相シフトマスクブランク1は、その位相シフト膜3を、実施例1と同様に、スパッタガスの川下供給条件で成膜して製造されるのに対し、比較例3の位相シフトマスクブランクは、その位相シフト膜を、比較例1と同様に、スパッタガスの川上供給条件で成膜して製造される点で、両者は異なる。
【0162】
A.位相シフトマスクブランク及びその製造方法
透明基板2として、実施例1と同じサイズの合成石英ガラス基板を準備した。
その後、透明基板2を
図2に示すインライン型スパッタリング装置11に導入し、透明基板2の主表面上にクロム酸化窒化物(CrON)からなる位相シフト膜3(膜厚157nm)を1回成膜にて形成して位相シフトマスクブランク1を得た。
位相シフト膜3は、クロムからなる第1スパッタターゲット13の川下側の第2ガス導入口GA12から、アルゴン(Ar)ガスと一酸化窒素(NO)ガスを含む混合ガス(Ar:46sccm、NO:50sccm)を導入し、スパッタパワーを3.5kwとし、透明基板2の搬送速度を400mm/分として反応性スパッタリングにより、1回成膜にて透明基板2上に成膜した。
【0163】
一方、比較例3では、位相シフト膜形成工程において、
図2に示すスパッタリング装置11の、クロムからなる第1スパッタターゲット13の川上側に配置された第1ガス導入口GA11から、実施例3と同じ成分の混合ガスを導入し、スパッタパワーを7.85kwとした。これ以外の成膜条件は、実施例3と同様にして、1回成膜にて位相シフト膜3(膜厚157nm)を形成し、比較例3の位相シフトマスクブランクを得た。
【0164】
実施例3及び比較例3の位相シフトマスクブランクの位相シフト膜について、XPSによる深さ方向の組成分析を行ったところ、実施例3及び比較例3のいずれにおいても、深さ方向の各元素(Cr,O,N)の含有量は、主層内では略一定であり、最表面層及び透明基板2に近い界面領域では、実施例1と同様の傾向で変化することが分かった。
【0165】
次に、実施例1と同様に、実施例3及び比較例3の位相シフト膜3の屈折率(n)、消衰係数(k)の値を分光エリプソメータで測定した。尚、実施例3のMSEは4.458であり、比較例3のMSEは4.500であった。
【0166】
次に、実施例1と同様に、実施例3及び比較例3の位相シフトマスクブランクの位相シフト膜について、屈折率、透過率、反射率及び位相差を測定した。
その結果、実施例3のi線(波長365nm)における主層上部の屈折率は2.42であり、主層下部の屈折率は2.56であった。実施例3の波長365nmにおける透過率は5.6%であり、実施例3の波長365nmにおける位相差は179度であり、実施例3の反射率スペクトルは、実施例1と略同様であった。
一方、比較例3のi線(波長365nm)における主層上部の屈折率は2.61であり、主層下部の屈折率は2.49であった。比較例3の波長365nmにおける透過率は6.0%であり、比較例3の波長365nmにおける位相差は178度であり、比較例3の反射率スペクトルは、実施例3と略同様であった。
【0167】
実施例3及び比較例3の位相シフトマスクブランクの位相シフト膜の最表面について、実施例1と同様に、X線反射率分析法(XRR)により膜密度を測定したところ、実施例3の最表面の膜密度は1.84g/cm
3であり、比較例3の最表面の膜密度は1.82g/cm
3であった。尚、膜密度を算出した際のフィッティングの妥当性を示す数値指標Fit Rは、実施例3は0.011であり、比較例3は0.013であった。
【0168】
B.位相シフトマスク及びその製造方法
上述のようにして製造された実施例3及び比較例3の位相シフトマスクブランクを用いて、実施例1と同様に、実施例3及び比較例3の位相シフトマスクを製造した。
【0169】
このようにして、透明基板2の上に、スパッタガスの川下供給条件で成膜し、VUV照射工程を受けずに得られた位相シフト膜3をパターニングした位相シフト膜パターン3´が形成された実施例3の位相シフトマスク30(透明基板/位相シフト膜パターン)を得た。
一方、透明基板2の上に、スパッタガスの川上供給条件で成膜し、VUV照射工程を受けずに得られた位相シフト膜をパターニングした位相シフト膜パターンが形成された比較例3の位相シフトマスク(透明基板/位相シフト膜パターン)を得た。
【0170】
実施例3及び比較例3の位相シフトマスクの位相シフト膜パターンのエッジ部分の被エッチング断面を、レジスト膜パターンの剥離前に、走査型電子顕微鏡により観察した。
【0171】
実施例3のエッジ部分の被エッチング断面のレジスト界面角度は105度であり、透明基板界面角度は45度であり、テーパー下面長さは65nmであり、断面角度(θ)は75度であった。
一方、比較例3のエッジ部分の被エッチング断面のレジスト界面角度は140度であり、透明基板界面角度は40度であり、テーパー下面長さは150nmであり、断面角度(θ)は40度であった。
これらの結果から明らかなように、実施例3における被エッチング断面は、比較例3における被エッチング断面よりも格段に大きな断面角度(θ)を有し、比較例3の断面形状は、実施例3より長い裾を引くテーパー形状になることが分かった。
【0172】
次に、実施例3及び比較例3の位相シフトマスクの位相シフト膜パターンのCDばらつきを、実施例1と同様に、測定した。
実施例3のCDばらつきは0.106μmと良好であったのに対し、比較例3のCDばらつきは0.175μmであった。
【0173】
次に、実施例1と同様に、波長365nmにおける光強度分布曲線(透過率プロファイル)を検討した。
実施例3の光強度分布曲線は、比較例3と比べて、コンタクトホール中心に鋭いピーク強度をもち、パターン境界部分では、光強度変化が大きく、パターン境界部分の外側の周辺領域では、光強度変化が小さいことを示していた。したがって、実施例3の位相シフトマスクでは、比較例3と比べて、強い光強度傾斜を示し、高い解像度を示すことが分かった。
【0174】
実施例4.
実施例4では、実施例3と同様に、CrONを構成材料とし、且つ、実施例2と同様に、VUV照射処理を受けた位相シフト膜3を有する位相シフトマスクブランク及びこの位相シフトマスクブランクを用いて製造される位相シフトマスクについて説明する。
【0175】
A.位相シフトマスクブランク及びその製造方法
透明基板2として、実施例1と同じサイズの合成石英ガラス基板を準備した。
その後、透明基板2を
図2に示すインライン型スパッタリング装置11に導入し、透明基板2の主表面上にクロム酸化窒化物(CrON)からなる位相シフト膜3(膜厚157nm)を1回成膜にて形成して位相シフトマスクブランク1を得た。
位相シフト膜3は、クロムからなる第1スパッタターゲット13の川下側の第2ガス導入口GA12から、アルゴン(Ar)ガスと一酸化窒素(NO)ガスを含む混合ガス(Ar:46sccm、NO:70sccm)を導入し、スパッタパワーを8.0kwとし、透明基板2の搬送速度を400mm/分として反応性スパッタリングにより、透明基板2上に成膜した。
その後、位相シフト膜3の最表面に対するVUV照射処理を、実施例2と同様の照射条件で行った。
【0176】
このようにして、透明基板2上に、VUV照射処理を受けた位相シフト膜3が形成された位相シフトマスクブランク1を得た。
【0177】
実施例4の位相シフトマスクブランク1の位相シフト膜3について、XPSによる深さ方向の組成分析を行ったところ、深さ方向の各元素(Cr,O,N)の含有量は、実施例3と同様の変化傾向を示すことが分かった。
【0178】
次に、実施例1と同様に、実施例3の位相シフト膜3の屈折率(n)、消衰係数(k)の値を分光エリプソメータで測定した。尚、実施例4のMSEは4.489であった。
【0179】
次に、実施例1と同様に、実施例4の位相シフトマスクブランク1の位相シフト膜3について、屈折率、透過率、反射率及び位相差を測定した。
その結果、実施例4のi線(波長365nm)における主層上部の屈折率は2.45であり、主層下部の屈折率は2.53であった。実施例4の波長365nmにおける透過率は5.7%であり、実施例4の波長365nmにおける位相差は179度であり、実施例4の反射率スペクトルは、実施例3と略同様であった。
【0180】
実施例4の位相シフトマスクブランク1の位相シフト膜3の最表面について、実施例1と同様に、X線反射率分析法(XRR)により膜密度を測定したところ、その最表面の膜密度は、2.19g/cm
3であった。尚、膜密度を算出した際のフィッティングの妥当性を示す数値指標Fit Rは、実施例4は0.013であった。
【0181】
B.位相シフトマスク及びその製造方法
実施例1と同様の方法により、透明基板2上に、VUV照射処理を受けた位相シフト膜3をパターニングした位相シフト膜パターン3´が形成された位相シフトマスク30を得た。
【0182】
実施例4の位相シフトマスク30の位相シフト膜パターン3´のエッジ部分の被エッチング断面を、レジスト膜パターン5´の剥離前に、走査型電子顕微鏡により観察した。
その結果、実施例4のエッジ部分の被エッチング断面のレジスト界面角度は90度であり、透明基板界面角度は90度であり、テーパー下面長さは0nmであり、断面角度(θ)は90度であった。つまり、CrONを構成材料とし、VUV照射処理を受けた実施例4の位相シフト膜パターン3´の被エッチング断面は、CrONを構成材料とし、VUV照射工程を受けていない実施例3の位相シフト膜パターン3´の被エッチング断面と同様に、裾が全くなく、完全に垂直断面形状になった。
【0183】
次に、実施例4の位相シフトマスク30の位相シフト膜パターンのCDばらつきを、実施例1と同様に、測定した。
CDばらつきは0.062μmと良好であった。
【0184】
次に、実施例1と同様に、波長365nmにおける光強度分布曲線(透過率プロファイル)を検討した。
実施例4の光強度分布曲線は、実施例2の位相シフトマスクと同様に強い光強度傾斜を示し、解像度が高いことが分かった。
【0185】
尚、上述の実施例では、透明基板2上に形成する位相シフト膜3を単層膜とした位相シフトマスクブランク1の例を挙げて説明したが、これに限られない。位相シフト膜3を同一材料からなる2層構造、3層構造、4層構造等の積層膜であっても、上記実施例と同様の効果を奏する。
また、上述の実施例では、透明基板2上に位相シフト膜3のみを形成した位相シフトマスクブランク1、及び透明基板2上に位相シフト膜パターン3´のみを形成した位相シフトマスク30の例を説明したが、これに限られない。透明基板2上に遮光膜パターン4´及び位相シフト膜3を有する位相シフトマスクブランク10(
図4参照)の場合でも、透明基板2上に位相シフト膜3及びレジスト膜5を有する位相シフトマスクブランク(
図5(b)参照)の場合でも、透明基板2上に遮光膜パターン4´及び位相シフト膜パターン3´を有する位相シフトマスク31(
図6(e)参照)でも、上記実施例と同様の効果を奏する。
また、透明基板2上に位相シフト膜3と遮光膜4を有する位相シフトマスクブランク(図示せず)において、位相シフト膜3上に形成する遮光膜4を、遮光層、遮光層及び反射防止層の積層構造としてもよい。
【0186】
また、上述の実施例では、表示装置製造用の位相シフトマスクブランクや、表示装置製造用の位相シフトマスクの例を説明したが、これに限られない。本発明の位相シフトマスクブランクや位相シフトマスクは、半導体装置製造用、MEMS(微小電気機械システム)製造用、プリント基板用等にも適用できる。
また、上述の実施例では、透明基板のサイズが、8092サイズ(800mm×920mm)の例を説明したが、これに限られず、他のサイズであってもよい。表示装置製造用の位相シフトマスクブランクの場合、大型の透明基板が使用され、該透明基板のサイズは、一辺の長さが、10インチ以上であるが、表示装置製造用の位相シフトマスクブランクに使用する透明基板のサイズは、例えば、330mm×450mm以上2280mm×3130mm以下である。
また、半導体装置製造用、MEMS製造用、プリント基板用の位相シフトマスクブランクの場合、小型の透明基板が使用され、該透明基板のサイズは、一辺の長さが9インチ以下である。上記用途の位相シフトマスクブランクに使用する透明基板のサイズは、例えば、63.1mm×63.1mm以上228.6mm×228.6mm以下である。通常、半導体製造用、MEMS製造用は、6025サイズ(152mm×152mm)や5009サイズ(126.6mm×126.6mm)が使用され、プリント基板用は、7012サイズ(177.4mm×177.4mm)や、9012サイズ(228.6mm×228.6mm)が使用される。