特許第6661265号(P6661265)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6661265
(24)【登録日】2020年2月14日
(45)【発行日】2020年3月11日
(54)【発明の名称】密封包装体
(51)【国際特許分類】
   B65D 77/20 20060101AFI20200227BHJP
   B32B 27/36 20060101ALI20200227BHJP
   B32B 1/02 20060101ALI20200227BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20200227BHJP
【FI】
   B65D77/20 H
   B32B27/36
   B32B1/02
   B32B27/30 A
   B65D77/20 N
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-194139(P2014-194139)
(22)【出願日】2014年9月24日
(65)【公開番号】特開2016-64843(P2016-64843A)
(43)【公開日】2016年4月28日
【審査請求日】2017年6月6日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】399054321
【氏名又は名称】東洋アルミニウム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】関口 朋伸
(72)【発明者】
【氏名】西川 浩之
(72)【発明者】
【氏名】山田 和範
(72)【発明者】
【氏名】麻植 啓司
(72)【発明者】
【氏名】寺澤 侑哉
【審査官】 塩見 篤史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−253395(JP,A)
【文献】 特開2013−129456(JP,A)
【文献】 特開昭54−083597(JP,A)
【文献】 特開2009−113482(JP,A)
【文献】 特開2012−012038(JP,A)
【文献】 特開2007−261181(JP,A)
【文献】 特開2000−079935(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0141185(US,A1)
【文献】 特開2004−167774(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 67/00−79/02
B65D 81/18−81/30
B65D 81/38
B65D 85/88
B32B 1/00−43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
密封包装体用容器とポリオレフィン系樹脂を含有する熱接着層を有する蓋材とがヒートシールされた密封包装体であって、
(1)前記容器は、ポリエステル系樹脂層を開口端面に備える容器基体を有し、
(2)前記容器基体の前記開口端面にエチレン−メタアクリル酸メチル共重合体及びポリエチレンを含有する被覆層が積層されており、前記被覆層を構成する樹脂成分100重量%中、前記エチレン−メタアクリル酸メチル共重合体の含有量が60重量%以上であり、前記ポリエチレンの含有量が20〜40重量%であり、
(3)前記熱接着層は、更にポリブテン−1樹脂を含有する、
ことを特徴とする密封包装体。
【請求項2】
前記容器基体は、少なくとも紙及びポリエステル系樹脂層の積層体からなる、請求項1に記載の密封包装体。
【請求項3】
前記ポリエステル系樹脂は、少なくとも一部が結晶化している、請求項1又は2に記載の密封包装体。
【請求項4】
前記熱接着層は、更にポリスチレン系樹脂を含有する、請求項1〜のいずれかに記載の密封包装体。
【請求項5】
前記蓋材は、更に紙層を有する、請求項1〜のいずれかに記載の密封包装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品、飲料品等を収容する密封包装体用容器及び密封包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、食品、菓子等を収容した樹脂製容器には、当該容器の開口端面(フランジ等)に剥離開封可能なラミネート蓋材がヒートシールされている。近年、環境問題及び健康衛生問題に対応するために、紙が主体となった複合カップが一部で用いられている。
【0003】
上記複合カップは、紙のみでは耐水性、耐熱性、断熱性等に乏しいため、紙と樹脂とを組み合わせて補強したカップである。複合カップにおいて、特に容器の内面側は耐熱性、強度等が要求されることから、内面側にはポリエチレン系樹脂が一般に採用されている。近年においては、更に耐熱性、強度等を向上させるためにポリエステル系樹脂が採用され始めている。
【0004】
しかしながら、ポリエステル系樹脂はヒートシールし難い材料であり、無理に蓋材をヒートシールしたとしても封緘強度が低かったり、蓋材を開封する際にスリップスティック現象(スティックスリップ現象とも言う)が生じてスムーズな剥離開封が困難であったりすることが問題となっている。ここで、スリップスティック現象とは、蓋材を開封する際に一定の力でスムーズに開封できず強弱を繰り返すことを言い、開封時にチリチリと音がすることもある。
【0005】
また、蓋材をヒートシールする最中にポリエステル系樹脂が結晶化する場合があり、結晶化によりヒートシール強度が不安定になることも判ってきた。通常、ポリエステル系樹脂は、室温から加熱すると80℃程度から結晶化が始まり擬結晶が生じ始め、160℃程度から完全結晶へ転移し、200℃以上で完全結晶になると言われている。
【0006】
従って、上記温度域で蓋材をヒートシールした際に容易にヒートシールすることができ、しかも開口端面のポリエステル系樹脂の結晶化に関係なく蓋材の優れた密封性及び優れた開封性が得られる密封包装体用容器の開発が望まれている。
【0007】
なお、本発明に関連する先行技術として、特許文献1には、ガラス容器の開口端面に熱可塑性樹脂(但しポリアミドを除く)とシランカップリング剤とを含む溶液又はエマルジョンを塗布し、加熱によりガラス容器の殺菌及び熱可塑性樹脂層の形成を行った後、内容物を充填し、次いで蓋材を該開口端面に密着させてヒートシールすることを特徴とする密封包装体の製造方法が開示されている(特許請求の範囲第1項)。また、変形態様として、シラン系カップリング剤を塗布し、次いで熱可塑性樹脂(但しポリアミドを除く)の溶液又はエマルジョンを塗布する製造方法が開示されている(特許請求の範囲第2項)。更に、特許文献1には、上記構成を採用することにより、良好なヒートシール性と密封性が得られることが記載されている(特許文献1の第6欄34行〜第7欄7行)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特公平1−39922号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、ポリエステル系樹脂層を開口端面に備える密封包装体用容器であって、容易に蓋材をヒートシールすることができ、しかもポリエステル系樹脂層が結晶化する程度の温度でヒートシールした場合でも、蓋材の優れた密封性及び優れた開封性が得られる密封包装体用容器を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、密封包装体用容器の開口端面のポリエステル系樹脂層に更に特定の被覆層を積層することにより、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
即ち、本発明は、下記の密封包装体に関する。
1.密封包装体用容器とポリオレフィン系樹脂を含有する熱接着層を有する蓋材とをヒートシールされた密封包装体であって、
(1)前記容器は、ポリエステル系樹脂層を開口端面に備える容器基体を有し、
(2)前記容器基体の前記開口端面にエチレン−メタアクリル酸メチル共重合体及びポリエチレンを含有する被覆層が積層されており、前記被覆層を構成する樹脂成分100重量%中、前記エチレン−メタアクリル酸メチル共重合体の含有量が60重量%以上であり、前記ポリエチレンの含有量が20〜40重量%であり、
(3) 前記熱接着層は、更にポリブテン−1樹脂を含有する、
ことを特徴とする密封包装体。
2.前記容器基体は、少なくとも紙及びポリエステル系樹脂層の積層体からなる、上記項1に記載の密封包装体。
.前記ポリエステル系樹脂は、少なくとも一部が結晶化している、上記項1又は2に記載の密封包装体。
.前記熱接着層は、更にポリスチレン系樹脂を含有する、上記項1〜のいずれかに記載の密封包装体。
.前記蓋材は、更に紙層を有する、上記項1〜のいずれかに記載の密封包装体。
【発明の効果】
【0012】
本発明の密封包装体用容器は、容器基体の開口端面に位置するポリエステル系樹脂層に更にエチレン−メタアクリル酸メチル共重合体を含有する被覆層が積層されていることにより、容易に蓋材をヒートシールすることができ、しかもポリエステル系樹脂層が結晶化する程度の温度でヒートシールした場合でも、蓋材の優れた密封性及び優れた開封性が得られる。このような密封包装体用容器は、食品、飲料品等を収容する密封包装体を作製するための密封包装体用容器として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の密封包装体用容器の容器基体の部分断面構成の一例を示す図である。
図2】本発明の密封包装体用容器の部分断面構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
1.密封包装体用容器
本発明の密封包装体用容器は、
(1)ポリエステル系樹脂層を開口端面に備える容器基体を有し、
(2)前記容器基体の前記開口端面にエチレン−メタアクリル酸メチル共重合体(以下「EMMA」とも略記する)を含有する被覆層が積層されていることを特徴とする。
【0015】
上記特徴を有する本発明の密封包装体用容器は、容器基体の開口端面に位置するポリエステル系樹脂層に更にEMMAを含有する被覆層が積層されていることにより、容易に蓋材をヒートシールすることができ、しかもポリエステル系樹脂層が結晶化する程度の温度でヒートシールした場合でも、蓋材の優れた密封性及び優れた開封性が得られる。このような密封包装体用容器は、食品、飲料品等を収容する密封包装体を作製するための密封包装体用容器として有用である。
【0016】
容器基体(被覆層を積層する前の容器)としては、開口端面にポリエステル系樹脂層を備えるものであれば限定されず、大きさ、厚み、形状、その他の構成は制限されない。
【0017】
即ち、容器基体はその全体がポリエステル系樹脂から構成されていてもよく、その他、開口端面のみがポリエステル系樹脂で構成され、他の部分が他の材質、例えば、紙、パルプモールド、ポリエステル系樹脂以外の樹脂、金属、ガラス、陶器、磁器、それらの複合材料から構成されていてもよい。これらの構成の中でも、本発明では、容器基体は少なくとも紙及びポリエスエル系樹脂層の積層体からなることが好ましく、紙とポリエステル系樹脂層との間に任意の中間層(又は接着剤層)を有していてもよい。
【0018】
図1に本発明の密封包装体用容器の容器基体の部分断面構成の一例を示す。図1に示される容器基体は、最内層側から順にポリエステル系樹脂層3(ポリエチレンテレフタレート樹脂:PET樹脂)、中密度ポリエチレン樹脂層2、紙1で構成されている。容器内面がフランジ上面と連続しているため、開口端面はPET樹脂で構成されている。なお、開口端面は平坦なフランジ状だけでなく、縁巻き処理されていてもよい。
【0019】
なお、中密度ポリエチレン樹脂層2は、バリヤー効果及び断熱効果を果たす役割があり、バリヤー性及び断熱性が求められる際に必要に応じて採用すればよい。また、中密度ポリエチレン樹脂層2に代えて、エバール(EVOH)、シリカ蒸着PET、アルミナ蒸着ポリプロピレン(PP)フィルム等を密封包装体用容器の特性に応じて採用することもできる。
【0020】
なお、本発明におけるポリエステル系樹脂とは、PET樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂のいずれであってもよい。これらのポリエステル系樹脂は、単独又は2種以上を混合して使用できる。これらの中でも特にPET樹脂が好ましい。
【0021】
本発明の密封包装体用容器は、容器基体の開口端面にEMMAを含有する被覆層が積層されている。つまり、ポリエステル系樹脂層に更にEMMAを含有する被覆層が積層されており、密封包装体用容器の開口端面には当該被覆層が露出している。ここで、被覆層はEMMAを主成分として含有することが好ましい。なお、本明細書における主成分とは、50重量%以上の含有量、特に60重量%以上の含有量を意味する。この中でも、65〜85重量%が好ましい。
【0022】
被覆層は、本発明の効果を妨げない範囲で副成分を含有してもよく、例えば、ポリオレフィン系樹脂を副成分として含有してもよい。ここで、本明細書における副成分とは、50重量%未満の成分を意味し、特に20〜40重量%が好ましい。ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリブテン、ポリプロピレン、変性ポリオレフィン(特に酸変性ポリオレフィン)等が挙げられる。これらのポリオレフィン系樹脂は、単独又は2種以上を混合して使用できる。これらの中でも特にポリエチレン樹脂が好ましい。
【0023】
被覆層の単位面積当たりの重量(被覆量)は限定的ではないが、固形分基準で0.3〜5.0g/mが好ましく、0.5〜2.0g/mがより好ましい。被覆量がかかる範囲内であれば蓋材をヒートシールした際に良好な密着性を得ることができる。参考として被覆層(乾燥後)の厚さは、0.3〜5.0μm程度であり、0.5〜2.0μm程度が好ましい。
【0024】
被覆層の積層方法は特に限定されず、容器基体の開口端面のポリエステル系樹脂層に対して塗布、スプレー、浸漬、貼付等することにより積層することができる。図2に本発明の密封包装体用容器の部分断面構成の一例を示す。図2に示される密封包装体用容器は、図1の容器基体の開口端面のポリエステル系樹脂層に被覆層4が積層されている。
【0025】
2.密封包装体
本発明の密封包装体は、上記密封包装体用容器とポリオレフィン系樹脂を含有する熱接着層を有する蓋材とをヒートシールすることにより得られる。
【0026】
蓋材としては、ポリオレフィン系樹脂を含有する熱接着層を有するものであればよいが、その中でもポリオレフィン系樹脂を主成分として含有するものが好ましい。
【0027】
熱接着層に用いるポリオレフィン系樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリブテン、ポリプロピレン、変性ポリオレフィン(特に酸変性ポリオレフィン)等が挙げられる。これらのポリオレフィン系樹脂は、単独又は2種以上を混合して使用できる。これらの中でも特にポリエチレン樹脂が好ましい。
【0028】
熱接着層の副成分は限定的ではないが、ポリスチレン系樹脂及び/又はポリブテン−1樹脂を含有することが好ましい。特に、ポリエチレン樹脂を主成分とし、ポリブテン−1樹脂を副成分として含有する組み合わせが、蓋材をヒートシールした後の開封時に、糸引きなどが無く、且つ剥離痕が明確に分かり凝集剥離し易い点で好ましい。
【0029】
熱接着層の単位面積当たりの重量は限定的ではないが、固形分基準で5〜60g/mが好ましく、15〜45g/mがより好ましい。また、熱接着層(乾燥後)の厚さは、5〜60μm程度が好ましく、15〜45μm程度がより好ましい。勿論、熱接着層は、市販のシーラントフィルムであってもよい。
【0030】
蓋材のその他の構成は、本発明の効果を妨げない限り特に制限されるものではないが、紙層及び/又はバリヤー層(アルミニウム箔や樹脂フィルムなど)を含んでもよい。
【0031】
上記密封包装体用容器の開口端面と蓋材とをヒートシールする際の条件は、両者がヒートシールできる限り限定的ではないが、例えば、温度:140〜180℃、圧力:0.05〜0.2MPa、時間:1〜3秒/1回当り、回数:1〜3回の範囲が好ましい。
【0032】
上記密封包装体用容器の開口端面と蓋材とは、上記温度範囲において容易にヒートシールすることができる。また、上記温度範囲においてポリエステル系樹脂層が一部結晶化したとしても蓋材の優れた密封性及び優れた開封性が得られる。よって、本発明の密封包装体用容器は、食品、飲料品等を収容する密封包装体を作製するための密封包装体用容器として有用である。
【実施例】
【0033】
以下に実施例、参考例及び比較例を示して本発明を具体的に説明する。但し、本発明は実施例に限定されない。
【0034】
実施例1、4、参考例2、3及び比較例1〜8(密封包装体用容器の作製)
(実施例1、4、参考例2、3の密封包装体用容器)
坪量300g/mの紙の一方面に中密度ポリエチレン樹脂層(乾燥後厚み30μm)を押出しコート法により積層した。更にPET樹脂層(ポリエステル系樹脂層)を、中密度ポリエチレン樹脂層を覆うように押出しコート法により積層した。
【0035】
上記積層体を容器形成用の形状に打ち抜き、スカイブ加工した後、開口径約95mmφ、高さ約105mmのカップ型に成型した。成型の際、PET樹脂層を容器内面側とし、開口端面はPET樹脂層が外面(露出面)となるよう縁巻き加工を施した。
【0036】
続いて、開口端面のPET樹脂層上にEMMAを主成分(70重量%)とするコート剤(副成分としてポリエチレン樹脂を30重量%含有)を固形分重量で1g/m塗布し、実施例1、4、参考例2、3の密封包装体用容器(同一物4つ)を作製した。
(比較例1〜5の密封包装体用容器)
開口端面のPET樹脂層上に何も塗布しない以外は、実施例1、4、参考例2、3と同様にして比較例1〜5の密封包装体用容器(同一物5つ)を作製した。
(比較例6の密封包装体用容器)
開口端面のPET樹脂層上にエチレン−アクリル酸共重合樹脂(EAA)系コート剤を固形分重量で1g/m塗布した以外は、実施例1、4、参考例2、3と同様にして比較例6の密封包装体用容器を作製した。
(比較例7の密封包装体用容器)
開口端面のPET樹脂層上にアイオノマー系コート剤(三井化学株式会社製「ケミパールS100」)を固形分重量で1g/m塗布した以外は、実施例1、4、参考例2、3と同様にして比較例7の密封包装体用容器を作製した。
(比較例8の密封包装体用容器)
開口端面のPET樹脂層上にシランカップリング系コート剤(信越化学工業株式会社製「KBM603」)を固形分重量で1g/m塗布した以外は、実施例1、4、参考例2、3と同様にして比較例8の密封包装体用容器を作製した。
【0037】
蓋材1〜7の作製
(蓋材1)
坪量80g/mの紙の一方面と、厚さ12μmのアルミニウム箔(1N30軟質箔)とをウレタン系プレポリマーを用いて無溶剤(ノンソル)ラミネートにより貼り合わせた。
【0038】
アルミニウム箔の露出面をアンカーコート処理した後、乾燥後厚さ20μmとなるように低密度ポリエチレン樹脂層を押出しコートした。更に、低密度ポリエチレン樹脂層上に熱接着層を積層した。具体的には、ヤスハラケミカル株式会社製のヒロダイン7563(ポリエチレン:ポリブテン−1の重量比=4:1)を乾燥後厚さ30μmとなるように、低密度ポリエチレン樹脂層上に押出し積層した。これにより蓋材1を作製した。
(蓋材2)
熱接着層を形成する材料として、東ソー株式会社製のMX47D(低密度ポリエチレン:ポリプロピレン:低分子量ポリエチレンワックスの重量比=50:35:15)を用いた以外は、蓋材1と同様にして蓋材2を作製した。
(蓋材3)
熱接着層を形成する材料として、三菱化学株式会社製のマルチEK3833(ポリプロピレン:ポリエチレン:ポリスチレンの重量比=1:1:1)を用いた以外は、蓋材1と同様にして蓋材3を作製した。
(蓋材4)
熱接着層を形成する材料として、東ソー株式会社製のMX47A(ポリエチレン:ポリプロピレン:ポリブテン−1の重量比=3:1:1)を用いた以外は、蓋材1と同様にして蓋材4を作製した。
(蓋材5)
熱接着層を形成する材料として、三井デュポンポリケミカル株式会社製のV−70(EVA系樹脂)を用いた以外は、蓋材1と同様にして蓋材5を作製した。
(蓋材6)
熱接着層を形成する材料として、東ソー株式会社製のA3081(低分子ポリエチレン系樹脂)を用いた以外は、蓋材1と同様にして蓋材6を作製した。
(蓋材7)
熱接着層を形成する材料として、東洋アドレ株式会社製のER−6008C(EVA系樹脂)を用いた以外は、蓋材1と同様にして蓋材7を作製した。
【0039】
各密封包装体の作製
上記で作製した各実施例、参考例及び比較例の密封包装体用容器の開口端面(実施例及び参考例はEMMAを主成分とするコート層上、比較例は他のコート層上又はPET樹脂層)に、表1に示す組み合わせで上記蓋材1〜7(タブ付きの丸型メンコ状に打ち抜いたもの)の熱接着層が接触するように載せた。
【0040】
次に、160℃、0.08MPa及び0.8秒間の条件でヒートシールを2回施して各密封包装体を作製した。
【0041】
試験例1
各密封包装体の各種物性を調べた。
【0042】
各試験方法及び評価方法を下記に示す。
<開封強度>
各密封包装体の蓋材のタブを、開封始点から見て仰角45度の方向に100mm/分の速度で引っ張り、開封時の最大荷重(=開封強度(N))を測定した。各包装体についてn=6点測定し、その平均値を求めた。
<開封性(スリップスティック現象の有無)>
手指で各密封包装体の蓋材のタブを持って開封し、開封性を評価した。
○:一定の力で滑らかに開封できた。
△:小刻みながら強弱を繰り返し、チリチリと音がした。
×:一定の力で開封できず、激しく強弱を繰り返した。
−:蓋材が熱接着せず、評価不能。
<紙破れ性>
手指で各密封包装体の蓋材のタブを持って開封し、開封性(破れの有無)を評価した。
○:蓋材の破れは無かった。
△:蓋材の一部が破れた。
×:蓋材の複数箇所が破れた。
−:蓋材が熱接着せず、評価不能。
<90℃ホット耐熱性>
手指で各密封包装体の蓋材のタブを持って半分まで開封した後、90℃のお湯を100g充填し、3分後に残りのシールされた半分を剥がし、開封性を評価した。
○:残りのシールされた部分がしっかりとシールされた状態から開封できた。
△:残りのシールされた部分が幾分強度低下し、辛うじてシールされた状態から一応開封できた。
×:残りのシールされた部分が強度低下し、シール部が不用意に外れた。
−:蓋材が熱接着せず、評価不能。
<耐熱試験>
各密封包装体を40℃、50℃、40℃×RH90%条件下、経時1週間後にシール部分のリークの有無を確認した。なお、リークの有無は{乳及び乳製品の成分規格等に関する省令(昭和54年4月16日厚生省令第17号)}の封緘強度試験法に準じて、容器内に空気を流入し続け、内圧300mmHgにおいても空気漏れが無かった場合をリーク無しとし、内圧300mmHg未満で空気漏れがあった場合をリーク有り(発生)とした。
○:どの条件下でもシール部からのリークは無く、密封された状態が維持されていた。
×:少なくともいずれかの条件下でリークが発生した。
−:蓋材が熱接着せず、評価不能。
<シュリンクテスト>
各密封包装体をシュリンク梱包条件の130℃の乾燥機に入れて5分間放置し取り出した後、密封性に問題が無いかどうかを確認した。なお、密封性の評価は前記リークの有無と同様、封緘強度試験法に準じて、容器内に空気を流入し続け、内圧300mmHgにおいても空気漏れが無かった場合を密封性維持とし、内圧300mmHg未満で空気漏れがあった場合を密封性低下とした。
○:130℃×5分間放置条件下でも全て密封性が維持されていた。
×:130℃×5分間放置条件下で密封性が低下した。
−:蓋材が熱接着せず、評価不能。
【0043】
各試験の結果を下記表1に示す。
【0044】
【表1】
【0045】
表1に示す評価結果より、本発明の密封包装体用容器は、開口端面のポリエステル樹脂層に更にEMMAを含有する被覆層が積層されていることにより、容易に蓋材をヒートシールすることができ、しかもポリエステル系樹脂層が結晶化する程度の温度でヒートシールした場合でも、蓋材の優れた密封性及び優れた開封性が得られることが分かる。
【符号の説明】
【0046】
1.紙
2.中密度ポリエチレン樹脂層
3.ポリエステル系樹脂層(PET樹脂層)
4.EMMAを含有する被覆層
図1
図2