(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6661267
(24)【登録日】2020年2月14日
(45)【発行日】2020年3月11日
(54)【発明の名称】レゾルバ位置誤差を補償するための装置及び方法
(51)【国際特許分類】
H02P 6/16 20160101AFI20200227BHJP
【FI】
H02P6/16
【請求項の数】5
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-253431(P2014-253431)
(22)【出願日】2014年12月15日
(65)【公開番号】特開2016-1982(P2016-1982A)
(43)【公開日】2016年1月7日
【審査請求日】2017年11月28日
(31)【優先権主張番号】10-2014-0070911
(32)【優先日】2014年6月11日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】591251636
【氏名又は名称】現代自動車株式会社
【氏名又は名称原語表記】HYUNDAI MOTOR COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100117787
【弁理士】
【氏名又は名称】勝沼 宏仁
(72)【発明者】
【氏名】パク、ジュ、ヤン
(72)【発明者】
【氏名】パク、ハン、ヒ
(72)【発明者】
【氏名】ユ、テ、イル
(72)【発明者】
【氏名】ヤン、ビョン、フン
(72)【発明者】
【氏名】ペク、チン、ウク
(72)【発明者】
【氏名】イム、ヒョン、ビン
【審査官】
尾家 英樹
(56)【参考文献】
【文献】
特開2001−165707(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 6/00− 6/34
H02P 21/00− 31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レゾルバによって感知されたモータの回転子の位置情報をデジタル化し、デジタル化された前記位置情報を受信して位置誤差を測定し、前記デジタル化された位置情報を利用して特定の電気角速度を判断し、前記特定の電気角速度における位置誤差の振幅、前記特定の電気角速度における位置誤差の位相に基づいて、電気角速度が0の場合の位置誤差を演算して格納する位置誤差学習部;及び
前記電気角速度が0の場合に演算された位置誤差に基づいて現在の電気角速度での位置誤差を補償する位置誤差補償部
を含むことを特徴とするレゾルバ位置誤差を補償するための装置。
【請求項2】
前記位置誤差学習部は、
前記デジタル化された位置情報を受信して位置誤差を測定する位置誤差測定部;
前記デジタル化された位置情報を利用して電気角速度を判断する速度判断部;
前記電気角速度が0の場合の位置誤差を演算する位置誤差演算部;及び
演算された前記位置誤差を格納する格納部を含むことを特徴とする請求項1に記載のレゾルバ位置誤差を補償するための装置。
【請求項3】
前記位置誤差補償部は、
前記現在の電気角速度を判断する速度判断部;
前記位置誤差学習部で演算された位置誤差を含む格納部;及び
前記現在の電気角速度と前記格納部での格納された位置誤差とを利用して、前記現在の電気角速度での位置誤差を換算する位置誤差換算部を含むことを特徴とする請求項1に記載のレゾルバ位置誤差を補償するための装置。
【請求項4】
前記モータの回転子の位置情報をデジタル化するためにレゾルバデジタル変換器が備えられ、前記レゾルバデジタル変換器の内部にATO(Angle Tracking Observer)を含み、前記ATOは、前記モータの回転子の位置情報を計算することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のレゾルバ位置誤差を補償するための装置。
【請求項5】
モータの回転子の位置情報を感知する段階;
前記位置情報をデジタル化して出力する段階;
デジタル化された前記位置情報を利用して位置誤差を測定する段階;
前記デジタル化された前記位置情報に基づいて特定の電気角速度を判断する段階;
前記特定の電気角速度における位置誤差の振幅、前記特定の電気角速度における位置誤差の位相に基づいて、電気角速度が0の場合の位置誤差を演算する段階;
演算された前記位置誤差を格納する段階;及び
前記電気角速度が0の場合で演算された前記位置誤差を利用して、現在の電気角速度での位置誤差を補償する段階;
を含むことを特徴とするレゾルバ位置誤差を補償するための方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レゾルバ位置誤差を補償するための装置及び方法に関し、より詳しくは特定の速度で測定したレゾルバ位置誤差を利用する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
永久磁石同期電動機(Permanent Magnet Synchronous Motor)をベクトル制御で駆動する際には、正確な回転子の位置情報が求められる。レゾルバ(Resolver)を利用すれば、回転子の絶対位置が分かる。しかし、レゾルバの変圧比の差、不平衡励磁信号、不均一なインダクタンス成分、信号処理回路上の歪曲などによって信号の大きさに不平衡が発生し、これは位置情報に周期的な誤差成分が現われるようにする。これによって、モータ制御性能が悪くなり、高性能分野での使用に制約をもたらす。
【0003】
レゾルバにおけるこのような位置誤差を減少させるための従来の方法として、精密位置センサによって予め測定した誤差情報をROM(Read Only Memory)などのメモリにテーブルで記録した後、これに基づいて位置誤差を補償する方法が知られている。
【0004】
また、レゾルバの出力信号を回帰式(regression equation)を利用してモデリングした後、モデル値と測定値との間の誤差が最小となるように反復最小二乗法(Recursive Least Square method)によってモデルパラメータを推定してレゾルバの出力信号を補償する方法も知られている。
【0005】
しかし、従来のレゾルバの位置誤差を補償する方法等は、速度が一定である場合の位置誤差に対する測定方法であって、全ての速度領域での位置誤差を補償することに限界がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、特定の速度で測定された位置誤差に基づいて全ての速度領域で位置誤差を補正する技術であって、レゾルバデジタル変換器の内部に
角情報計算のためのATO(Angle Tracking Observer)を提供し、ATO特性を把握して特定の速度で測定したレゾルバの位置誤差を介して、全ての速度領域での位置を補償することのできるレゾルバ位置誤差を補償するための装置及び方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施例によるレゾルバ位置誤差を補償するための装置は、レゾルバによって感知されたモータの回転子の位置情報をデジタル化し、デジタル化された前記位置情報を受信して位置誤差を測定し、前記位置誤差の電気角速度を判断し、前記電気角速度0での位置誤差を演算して格納する位置誤差学習部、及び現在の電気角速度に基づいて前記位置誤差学習部で格納された位置誤差を利用して、前記現在の電気角速度での位置誤差に換算して補償する位置誤差補償部を含むことができる。
【0008】
また、前記位置誤差学習部は、前記デジタル化された位置情報を受信して位置誤差を測定する位置誤差測定部、前記位置誤差の電気角速度を判断する速度判断部、前記電気角速度0での位置誤差を演算する位置誤差演算部及び演算された前記位置誤差を格納する格納部を含むことができる。
【0009】
また、前記位置誤差補償部は、前記現在の電気角速度を判断する速度判断部、前記位置誤差学習部で演算された位置誤差を含む格納部、及び前記現在の電気角速度と前記格納部での格納された位置誤差を利用して、前記現在の電気角速度での位置誤差を換算する位置誤差換算部を含むことができる。
【0010】
また、前記モータの回転子の位置情報をデジタル化するためにレゾルバデジタル変換器が備えられ、前記レゾルバデジタル変換器の内部にATO(Angle Tracking Observer)を含むことができる。
【0011】
さらに、本発明の一実施例によるレゾルバ位置誤差を補償するための方法は、モータの回転子の位置情報を感知する段階、前記位置情報をデジタル化して出力する段階、デジタル化された前記位置情報を利用して位置誤差を測定する段階、前記位置誤差で電気角速度を判断する段階、前記電気角速度0での位置誤差を演算する段階、演算された前記位置誤差を格納する段階、及び現在の電気角速度に基づき演算された前記位置誤差を利用して、前記現在の電気角速度での位置誤差に換算して補償する段階を含むことができる。
【発明の効果】
【0012】
本技術は、レゾルバの位置誤差補償を容易に具現することができ、製品間の偏差に自動に適応することができる。特に、特定の速度で測定された位置誤差に基づいて全ての速度領域で速度リップル(ripple)が減少することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施例による位置誤差学習部の構成を説明する図である。
【
図2】本発明の一実施例による位置誤差補償部の構成を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
前述した目的、特徴及び長所は、図を参照して詳しく後述されている詳細な説明を介してより明らかになるはずであり、それによって本発明の属する技術分野で通常の知識を有する者が本発明の技術的思想を容易に実施することができるはずである。また、本発明を説明するにおいて、本発明に係る公知技術に対する具体的な説明が本発明の要旨を不要にぼやかし得ると判断される場合、その詳細な説明を略する。以下、図を参照して本発明に係る好ましい実施例を詳しく説明する。
【0015】
本発明に係るレゾルバ位置誤差を補償するための装置は、位置誤差学習部及び位置誤差補償部を含むことができる。このようなレゾルバの位置誤差(Position Error)はレゾルバの変圧比の差、不平衡励磁信号、不均一なインダクタンス成分、信号処理回路上の歪曲などにより発生されるSIN信号及びCOS信号の不平衡によって発生される位置情報の周期的な誤差成分である。
【0016】
図1は、本発明の一実施例による位置誤差学習部の構成を説明する図である。
【0017】
図1を参照すれば、位置誤差学習部100は、位置誤差測定部110、速度判断部120、位置誤差演算部130及び格納部140を含む。レゾルバ位置誤差を補償するためのシステム1は、レゾルバ20及びレゾルバデジタル変換器30をさらに含む。
【0018】
レゾルバ20は、永久磁石同期電動機(Permanent Magnet Synchronous Motor)のようなモータの回転子の絶対位置を感知する。このため、レゾルバ20は、励磁増幅器で増幅された励磁用基準電圧によって動作する。レゾルバ20が感知した位置情報は、サイン信号及びコサイン信号としてレゾルバデジタル変換器30に出力される。
【0019】
レゾルバデジタル変換器30は、位置情報をデジタル化して出力する。デジタル化された位置情報は、位置誤差測定部110に入力される。
【0020】
位置誤差測定部110は、デジタル化された位置情報を受信して位置誤差を測定する。
【0021】
速度判断部120は、測定された位置誤差の電気角速度を判断する。
【0022】
例えば、
でのN次位置誤差成分が下記のように測定され得る。
【数1】
位置誤差演算部130は、電気角速度0での位置誤差を演算する。具体的に、電気角速度0での位置誤差を計算する方法は下記の通りである。
【数2】
【0023】
格納部140は、計算された電気角速度0での位置誤差を格納する。
【0024】
例えば、位置誤差学習部100では、電気角周波数200Hzで1回のレゾルバ位置誤差を測定した後、当該値に基づき全ての速度領域での位置誤差補償を行うことができる。
【0025】
図2は、本発明の一実施例による位置誤差補償部の構成を説明する図である。
【0026】
図2を参照すれば、位置誤差補償部200は、速度判断部210、格納部220、位置誤差換算部230を含む。レゾルバ位置誤差を補償するためのシステム2は、レゾルバ20及びレゾルバデジタル変換器30をさらに含む。
【0027】
速度判断部210は、現在の電気角速度を判断する。
【0028】
格納部220は、位置誤差学習部100で格納された位置誤差を表し、具体的には計算された電気角速度0でのN次位置誤差を意味する。
【0029】
位置誤差換算部230は、速度判断部210で判断された現在の電気角速度と、格納部220で格納された位置誤差とを利用して、現在の電気角速度での位置誤差に換算する。
【0030】
このような現在の電気角速度での位置誤差を換算する方法は下記の通りである。
【数3】
【0031】
このような前記式を介し、N次の位置誤差は下記のように計算され得る。
【数4】
【0032】
前記式のように計算された位置誤差を補償すれば、全ての速度領域で補償が可能である。
【0033】
前述したように、本技術はレゾルバの位置誤差補償を容易に具現することができ、製品間の偏差に自動に適応することができる。特に、特定の速度で測定された位置誤差に基づいて、全ての速度領域で速度リップル(ripple)が減少することができる。
【0034】
以上、本発明はたとえ限定された構成と図によって説明されたが、本発明の技術的思想はこのようなものに限定されず、本発明の属する技術分野で通常の知識を有する者によって、本発明の技術的思想と下記に記載される特許請求の範囲の均等な範囲内で多様な修正及び変形実施が可能なはずである。