(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明のプレス装置について図面を参照しながら以下に説明する。
(実施の形態1)
<1.構成>
(1−1.プレス装置の概要)
図1は、本発明にかかる実施の形態のプレス装置1の構成を示す模式図である。
【0030】
本実施の形態のプレス装置1は、CFRP等の樹脂材料に対してプレス成形を行う。
図1では、例えば、炭素繊維で形作られたプリフォーム材301が示されている。このプリフォーム材301と溶融している熱硬化性樹脂がプレス装置1によってプレス加工される。
プレス装置1は、主に、ベッド2と、アプライト3と、クラウン4と、スライド5と、スライド駆動部6と、荷重付与部7と、スライド保持部8と、傾き補正部9と、ボルスタ10と、制御部11(
図2参照)と、を備える。
【0031】
ベッド2は、フロアに埋め込まれており、プレス装置1の土台を構成する。アプライト3は、柱状の部材であり、ベッド2上に4本配置されている。4本のアプライト3は、平面視において矩形状の各頂点を形成するように配置されている。
クラウン4は、4本のアプライト3によって上方に支持されている。スライド5は、クラウン4の下側に昇降自在に吊下されている。スライド5の下面5sには、図示しないダイクランパによって上金型12aが着脱自在に取り付けられている。ボルスタ10は、スライド5の下方であってベッド2上に配置されている。ボルスタ10の上側には下金型12bが載置される。
【0032】
スライド駆動部6は、クラウン4に設けられており、クラウン4の下側に吊下されたスライド5を昇降させる。スライド駆動部6は、スライド5を成形領域に達する高さ(所定の高さの一例)まで降下させる。ここで、成形領域とは、成形荷重を付与することによって上金型12aおよび下金型12bによってプレス成形が行われる領域のことである。
荷重付与部7は、成形領域に達したスライド5に対して油圧を用いて所定の作動圧を加えながら、スライド5を下降させることによって、上金型12aと下金型12bの間の材料に成形荷重を付与する。この成形荷重の付与によってプレス成形が行われる。
【0033】
スライド保持部8は、成形荷重の反力を受け止めるようにスライド5を保持する。詳細には、スライド駆動部6を機械的に固定することで、スライド5を成形領域に達する高さ(所定の高さの一例)より上方に移動しないように保持する。
傾き補正部9は、プリフォーム材301と熱硬化性樹脂に成形荷重を付与している間、スライド5を水平に保つためにスライド5の傾きを補正する。
制御部11は、詳しくは後述するが、スライド駆動部6、荷重付与部7、スライド保持部8、および傾き補正部9等の制御を行ってプレス成形を実行する。
【0034】
(1−2.スライド駆動部)
スライド駆動部6は、クラウン4に設けられており、スライド5を昇降動作させる。スライド駆動部6は、4点でスライド5を支持している。スライド駆動部6は、駆動源である4つのサーボモータ60と、それぞれのサーボモータ60の駆動をスライドに伝達する4つの伝達機構66とを有する。
【0035】
それぞれの伝達機構66は、各々のサーボモータ60の回転を減速する第1減速機61と及び第2減速機62と、減速された回転運動を上下方向への往復運動に変換する昇降部63と、下端がスライド5に固定されてスライド5を上下方向に移動させるプランジャ64と、プランジャ64を上下方向にガイドするプランジャホルダ65とを有している。プランジャホルダ65は、プランジャ64の左右方向の動きを規制しているともいえる。
【0036】
図2は、1組のサーボモータ60および伝達機構66の構成を示す図である。サーボモータ60は、その駆動軸60aが水平方向に配置されるようにクラウン4に取り付けられている。
図1では、2組のサーボモータ60および伝達機構66のみが示されているが、紙面奥側に残り2組が設けられている。
第1減速機61は、等速減速機であって、サーボモータ60の駆動軸60aに連結されている。第1減速機61は、大プーリ61aと、第1ギヤ61bと、第1ピニオン61cと、第2ギヤ61dと、第2ピニオン61eと、第3ピニオン61fとを有している。大プーリ61aは、サーボモータ60の駆動軸60aに固定された小プーリ68の回転がベルト67によって伝達される。第1ギヤ61bは、大プーリ61aに一体的に設けられた第1ピニオン61cに噛み合う。第2ギヤ61dは、第1ギヤ61bに一体的に設けられた第2ピニオン61eと噛み合う。第3ピニオン61fは、第2ギヤ61dと一体的に設けられており、第2減速機62の外周に配置された大径のヘリカルギヤ62aに噛み合っている。
【0037】
第2減速機62は、一回転中の回転速度が不等速となるように減速して動力を昇降部63のエキセン軸63aに伝達するウィットウォース減速機である。第2減速機62は、ヘリカルギヤ62aと、レバー62bと、連結部材62cとを有する。ヘリカルギヤ62aは、リング状であって、第2減速機62の外周部に配置される。レバー62bは、クラウン4のフレームから水平方向に突出して設けられたエキセン軸63aに固定されている。連結部材62cは、レバー62bとヘリカルギヤ62aの内周の間を連結する。ヘリカルギヤ62aの回転中心は、エキセン軸63aの軸心の鉛直方向上方に配置されている。
【0038】
昇降部63は、エキセン軸63aと、エキセンドラム63bと、コンロッド63cと、を有する。エキセン軸63aは、エキセンドラム63bの両側でクラウン4のフレームに軸支されている。エキセンドラム63bは、エキセン軸63aに対して偏心した円盤状に形成されており、エキセン軸63aの回転とともに偏心回転する。コンロッド63cは、エキセンドラム63bに接続されている。コンロッド63cの下方にはプランジャ64が接続され、プランジャ64の下方にスライド5が取り付けられている。
【0039】
プランジャホルダ65は、クラウン4の下側に固定されており、プランジャ64を上下方向にガイドする。
以上の構成の昇降部63のエキセンドラム63bが偏心回転することによってコンロッド63cが揺動してプランジャ64が上下方向に移動し、スライド5が上下方向に移動する。
【0040】
(1−3.スライド保持部)
図3(a)、(b)は、スライド保持部8による伝達機構66の固定を説明するための図である。スライド保持部8は、4つのサーボモータ60の駆動が伝達されるそれぞれのヘリカルギヤ62aを固定することによってスライド5を成形領域の上限位置の高さに保持する。
【0041】
スライド保持部8は、嵌合部80と、嵌合部80をヘリカルギヤ62aに向かって移動させる移動部86とを有している。移動部86は、油圧シリンダ81と、ポンプ83と、保持用油圧回路87と、作動油タンク85とを有する。
保持用油圧回路87は、主に、方向切換バルブ82と、第1接続路84aと、第2接続路84bと、第3接続路84cと、排油路84dと、を含む。
【0042】
油圧シリンダ81は、シリンダチューブ81aと、シリンダチューブ81a内を移動可能なピストン81bと、ピストン81bに連結されたピストンロッド81cとを有している。シリンダチューブ81a内の空間は、ピストン81bによってピストンロッド81c側の第1空間81dと、ピストンロッド81cと反対側の第2空間81eに分けられている。第1接続路84aは、作動油が流通し、第1空間81dと方向切換バルブ82の間を接続する。第2接続路84bは、作動油が流通し、第2空間81eと方向切換バルブ82の間を接続する。第3接続路84cは、作動油タンク85と方向切換バルブ82の間を接続する。第3接続路84cにはポンプ83が配置されている。排油路84dは、方向切換バルブ82と作動油タンク85の間を接続する。
【0043】
方向切換バルブ82は、第1接続路84aと第3接続路84cを接続し第2接続路84bと排油路84dを接続する状態と、第1接続路84aと排油路84dを接続し第2接続路84bと第3接続路84cを接続する状態と、全ての流路が閉じられた閉状態に切り替えられる。
方向切換バルブ82およびポンプ83は、制御部11によって制御される。
【0044】
嵌合部80は、ヘリカルギヤ62aの歯621の間に嵌合可能である。嵌合部80は、ピストンロッド81cの先端に配置されている。
サーボモータ60によって駆動しているため、後述する制御部11は、嵌合部80に対向する位置に歯621の間が位置するようにヘリカルギヤ62aを停止できる。
その後、第1接続路84aと排油路84dを接続し第2接続路84bと第3接続路84cを接続するように方向切換バルブ82を切り替えてポンプ83を動作させる。これにより、作動油が第2空間81eに供給され第1空間81dから作動油が排出されて、ピストンロッドが81c伸びるようにピストン81bが押される。これによってピストンロッド81cの先端に配置されている嵌合部80が、ヘリカルギヤ62aに向かって移動し、
図3(b)に示すように歯621の間に嵌る。
【0045】
このように、スライド保持部8によって、伝達機構66が機械的に固定される。
なお、伝達機構66の固定を解除する場合には、第1接続路84aと第3接続路84cを接続し第2接続路84bと排油路84dを接続するように方向切換バルブ82を切り替えてポンプ83を動作させることにより作動油が第1空間81dに供給され第2空間81eから作動油が排出される。これによって、ピストンロッド81cがシリンダチューブ81aに引き込まれ、嵌合部80が歯621の間から離間する。
なお、
図3では、1つの油圧シリンダ81の保持用油圧回路87のみを示しているが、4つの油圧シリンダ81のそれぞれに保持用油圧回路87が設けられている。また、ポンプ83および作動油タンク85などは4つの保持用油圧回路87に対して共通で用いられても良い。また、油圧シリンダ81は複動式に限らず単動式であってもよい。
【0046】
(1−4.荷重付与部)
荷重付与部7は、所定の圧力でスライド5を下方に移動させることによりプリフォーム材301と熱硬化性樹脂に成形荷重を付与してプレス成形を行う。所定の圧力とは、プリフォーム材301と熱硬化性樹脂に対して所望の成形荷重を付加できる圧力である。
図4は、荷重付与部7の構成を示す図である。荷重付与部7は、主に、スライド5内に設けられている4つの油圧シリンダ71と、それぞれの油圧シリンダ71に接続された荷重用油圧回路78と、作動油を供給するポンプ75と、作動油タンク77とを有する。
【0047】
荷重用油圧回路78は、方向切換バルブ72と、流量調整バルブ73と、圧力制御バルブ74と、第1接続路76aと、第2接続路76bと、第3接続路76cと、排油路76dとを含む。
油圧シリンダ71は、鉛直方向に配置されたシリンダチューブ71aと、シリンダチューブ71a内を鉛直方向に移動可能なピストン71bを有する。ピストン71bは、プランジャ64の下端と接続されている。ピストン71bによってシリンダチューブ71a内の空間は、下方空間71cと上方空間71dに分けられる。
【0048】
第1接続路76aは、作動油が流通し、下方空間71cと方向切換バルブ72の間を接続する。第2接続路76bは、作動油が流通し、上方空間71dと方向切換バルブ72の間を接続する。第3接続路76cは、作動油タンク77と方向切換バルブ72の間を接続する。第3接続路76cにはポンプ75が配置されている。排油路76dは、方向切換バルブ72と作動油タンク77の間を接続する。
【0049】
流量調整バルブ73は、第3接続路76cに設けられており、圧力制御バルブ74は、第3接続路76cと排油路76dを接続する流路上に設けられている。
方向切換バルブ72は、第1接続路76aと第3接続路76cを接続し第2接続路76bと排油路76dを接続する状態と、第1接続路76aと排油路76dを接続し第2接続路76bと第3接続路76cを接続する状態と、全ての流路が閉じられた閉状態に切り替えられる。
【0050】
方向切換バルブ72、流量調整バルブ73、圧力制御バルブ74およびポンプ75を制御することによって、スライド5を所定の圧力で下方に移動しプリフォーム材301と熱硬化性樹脂に成形荷重を付与できる。すなわち、第1接続路76aと第3接続路76cを接続し第2接続路76bと排油路76dを接続する状態に方向切換バルブ72を切り替えて、流量調整バルブ73、圧力制御バルブ74およびポンプ75を制御することによって下方空間71cに作動油が供給されて上方空間71dから作動油が排出される。これにより、スライド5が下方に移動し、上金型12aに所望の成形荷重が付加される。
【0051】
一方、第1接続路76aと排油路76dを接続し第2接続路76bと第3接続路76cを接続する状態に方向切換バルブ72を切り替えて、流量調整バルブ73、圧力制御バルブ74およびポンプ75を制御することによって上方空間71dに作動油が供給されて下方空間71cから作動油が排出される。これにより、スライド5が上方に移動する。
なお、
図4では、1つの油圧シリンダ71の荷重用油圧回路78のみを示しているが、4つの油圧シリンダ71のそれぞれに荷重用油圧回路78が設けられている。また、ポンプ75および作動油タンク77などは4つの荷重用油圧回路78に対して共通で用いられても良い。
【0052】
(1−5.傾き補正部)
傾き補正部9は、プリフォーム材301と熱硬化性樹脂に成形荷重を付与する際に、スライド5の傾きを補正する。
図5は、傾き補正部9の構成を示す図である。傾き補正部9は、主に、4組の当接部90、油圧シリンダ91、リニアセンサ92および補正用油圧回路98と、4つの油圧シリンダ91に作動油を供給するポンプ95と、作動油タンク97を有する。
【0053】
図5では、説明のために4つの油圧シリンダ91を並べて図示しているが、実際には、4つの油圧シリンダ91は、スライド5の下方であって、平面視においてスライド5の4隅に配置されている。
図1では、紙面手前側の2つの油圧シリンダ91のみが示されており、紙面奥側に更に2つの油圧シリンダ91が配置されている。
4つの油圧シリンダ91には、それぞれ補正用油圧回路98が接続されており、1つのポンプ95から補正用油圧回路98を介して油圧シリンダ91に作動油が供給される。尚、4つの油圧シリンダ91の補正用油圧回路98の構成は同じであるため、1つの油圧シリンダ91についてのみ説明する。
【0054】
油圧シリンダ91は、鉛直方向に配置されたシリンダチューブ91aと、シリンダチューブ91a内を鉛直方向に移動可能なピストン91bと、ピストン91bに接続されシリンダチューブ91aから上方に向かって伸縮可能なピストンロッド91cとを有している。
ピストンロッド91cの上端には、当接部90が設けられている。当接部90は、成形荷重を付与している間は、スライド5に当接している。
【0055】
ピストン91bによってシリンダチューブ91a内の空間は、下方空間91dと上方空間91eに分けられる。
リニアセンサ92は、当接部90の位置を監視し、位置に関する情報を制御部11へと送信する。
次に、補正用油圧回路98について説明する。補正用油圧回路98は、第1サーボバルブ93、第2サーボバルブ94と、第1接続路96aと、第2接続路96bと、第3接続路96cと、排油路96dとを有している。第1接続路96aは、作動油が流通し、下方空間91dと第1サーボバルブ93の間を接続する。第2接続路96bは、作動油が流通し、上方空間91eと第2サーボバルブ94の間を接続する。第3接続路96cは、作動油タンク97と第1サーボバルブ93および第2サーボバルブ94との間を接続する。第3接続路96cにはポンプ95が配置されている。排油路96dは、第1サーボバルブ93と作動油タンク97の間を接続する。第1サーボバルブ93は、流量を制御しながら、第1接続路96aを第3接続路96cまたは排油路96dと接続できる。また、第2サーボバルブ94は、流量を調整しながら第2接続路96bを第3接続路96cまたは排油路96dと接続できる。
【0056】
4つの補正用油圧回路98の第3接続路96cはポンプ95の下流側から分岐してそれぞれの第1サーボバルブ93と第2サーボバルブ94に繋がっている。また、4つの補正用油圧回路98の第1サーボバルブ93と第2サーボバルブ94に接続されている排油路96dは作動油タンク97の上流側で合流している。
制御部11は、4軸の油圧シリンダ91の独立制御を行う。制御部11は、成形荷重を付加する際に、4軸の油圧シリンダ91の位置、すなわちスライド5の下面5sに当接している当接部90の位置が同一となるように第1サーボバルブ93および第2サーボバルブ94を制御する。すなわち、リニアセンサ92の位置情報を制御部11にフィードバックしつつ、第1サーボバルブ93と第2サーボバルブ94を制御して下方空間91dまたは上方空間91eに作動油を供給してピストンロッド91cのストロークを制御することにより、4つの当接部90の高さ位置が同じ位置になるように制御される。
【0057】
(1−6.制御構成)
図6は、本実施の形態のプレス装置1の制御構成を示すブロック図である。制御部11は、スライド駆動部6のサーボモータ60を駆動制御しスライド5を昇降動作させる。制御部11は、スライド保持部8のポンプ83および方向切換バルブ82を制御することによって油圧シリンダ81を動作させて嵌合部80を制御する。
【0058】
制御部11は、荷重付与部7の方向切換バルブ72、流量調整バルブ73、圧力制御バルブ74およびポンプ75を制御することによってスライド5に所定の圧力が付与されて上金型12aと下金型12bの間のプリフォーム材301と熱硬化性樹脂に成形荷重が付与される。
制御部11は、リニアセンサ92の検出結果に基づいて傾き補正部9のポンプ95および4組の第1サーボバルブ93並びに第2サーボバルブ94を制御することによって成形荷重付与時のスライド5の傾きを補正する。
【0059】
なお、制御部11は、サーボモータ60、方向切換バルブ82、方向切換バルブ72、流量調整バルブ73、圧力制御バルブ74、第1サーボバルブ93、及び第2サーボバルブ94を4つずつ制御しているが、
図6では、省略して1つのみ示している。
【0060】
<2.動作>
次に、本実施の形態のプレス装置1の制御方法について説明する。
なお、以下の説明では、いわゆるRTM工法におけるプレス加工について説明する。すなわち、炭素繊維で形作られたプリフォーム材301と溶融している熱硬化性樹脂が本実施の形態のプレス装置1によってプレス加工される。なお、熱硬化性樹脂としては、エポキシ、不飽和ポリエステル等が用いられる。
図7は、本実施の形態のプレス装置1の制御方法を示すフロー図である。
図8は、プレス加工の際の上金型12aの高さの時間変化のグラフを示す図である。
図8では、上金型12aの位置がG1のグラフで示され、下金型12bの位置がG2のグラフで示されている。
【0061】
はじめに、予め炭素繊維が成形品の形状に形作られたプリフォーム材301が下金型12b上に載置される。
次に、制御部11は、ステップS10において、4つのサーボモータ60を駆動し、スライド5を成形領域(成形領域の上限位置ともいえる)まで下降させる(
図8の時刻t1〜t2参照)。
【0062】
そして、スライド5が成形領域に達すると、ステップS20において、制御部11は、スライド保持部8のポンプ83および方向切換バルブ82を制御して、嵌合部80を4つのヘリカルギヤ62aのそれぞれの歯621の間に嵌合させる。これによって、伝達機構66の固定が行われる。
伝達機構66の固定によってスライド5の駆動が一時的に固定されると、ステップS30において、制御部11は、サーボモータ60への通電を停止する。
【0063】
なお、
図8に示す距離d1は、スライド5が成形領域に達するまでのストロークを示す。また、距離d2(所定の高さの一例)が、下金型12bからの上金型12aの距離を示す。この下金型12bからの距離d2が成形領域であり、成形荷重を付与することによってプレス成形が行われる領域のことである。この距離d2において、傾き補正部9の当接部90がスライド5の下面5sに当接する。
【0064】
次に、ステップS35において、スライド5が停止した状態で、熱硬化性樹脂が上金型12aと下金型12bの間に注入される。
図1に示すように、上金型12aには、熱硬化性樹脂を注入するための注入路400が形成されており、熱硬化性樹脂は、注入路400を通して供給される。
次に、ステップS40において、制御部11は、荷重付与部7のポンプ75、方向切換バルブ72、流量調整バルブ73および圧力制御バルブ74を制御し、スライド5内の4つの油圧シリンダ71を駆動してスライド5を所望の作動圧で下方に移動させる。このようにスライド5に所望の作動圧で下方に移動することによって上金型12aおよび下金型12bの間のプリフォーム材301と熱硬化性樹脂に成形荷重が付与され、プリフォーム材301と熱硬化性樹脂が上金型12aと下金型12bの間で加圧される。この加圧によってプリフォーム材301と熱硬化性樹脂の成形が行われる。なお、
図8に示す距離d3が荷重成形時のスライド5の下方への移動を示す。また、
図8では、距離d3は誇張して記載している。
【0065】
次に、ステップS50において、加圧状態が所定時間保持される(
図8の時刻t3〜t4参照)。尚、
図8では、上金型12aの高さは一定になっているが、所定時間保持している間に樹脂が冷却されて体積が小さくなると、それに伴いスライド5は若干下降する。
上記ステップS40とステップS50の間、制御部11は、傾き補正部9のポンプ95および4組の第1サーボバルブ93並びに第2サーボバルブ94を制御することによって油圧シリンダ91を駆動し、スライド5を所定以下の傾きに保つように制御が行われる。
【0066】
次に、ステップS60において、制御部11は、荷重付与部7の方向切換バルブ72、流量調整バルブ73および圧力制御バルブ74を制御し、スライド5への荷重の付与を停止する。
次に、ステップS60において、制御部11は、サーボモータ60への通電を行う。
次に、ステップS70において、制御部11は、スライド保持部8のポンプ83および方向切換バルブ82を制御することによって油圧シリンダ81を駆動し、嵌合部80をヘリカルギヤ62aの歯621の間から離間させる。これによって、伝達機構66の固定が解除される。
次に、ステップS80において、制御部11は、サーボモータ60を制御し、スライド5を元の位置まで上昇させる(
図8の時刻t4〜t5参照)。
そして、プレス加工が終了した加工済品が取り出され、次のプレス加工が行われる。
【0067】
(実施の形態2)
以下に、本発明に係る実施の形態2におけるプレス装置100について説明する。本実施の形態2のプレス装置100は、実施の形態1のプレス装置1と比較して、荷重付与部およびスライド保持部の構成が異なっている。尚、本実施の形態2に説明において、実施の形態1と同様の構成については実施の形態1と同一の符号を付し適宜説明を省略する。
【0068】
<1.構成>
図9は、本発明にかかる実施の形態のプレス装置100の構成を示す模式図である。
本実施の形態のプレス装置100は、ベッド2と、アプライト3と、クラウン4と、スライド105と、スライド駆動部6と、荷重付与部107と、スライド保持部108と、傾き補正部9と、ボルスタ10と、制御部11(
図10(a)参照)と、を備える。
【0069】
(1−1.スライド保持部)
図10(a)および
図10(b)は、本実施の形態のスライド保持部108の構成を示す図である。
プレス装置100のスライド保持部108は、被嵌合部181と、被嵌合部181に嵌合する嵌合部182と、嵌合部182を被嵌合部181に向かって移動する移動部86を有している。被嵌合部181と嵌合部182と移動部86は、4組設けられている。移動部86の構成は、実施の形態1と同様であり、油圧シリンダ81と、油圧シリンダ81を駆動する保持用油圧回路87と、を有する。
【0070】
被嵌合部181は、アプライト3のスライド105側の側面3aに配置されている。被嵌合部181は、アプライト3の側面3aに上下方向に沿って設けられた略鋸歯形状の部材であって、スライド105側に凹部181aと凸部181bを有している。凹部181aと凸部181bは、鉛直方向に沿って交互に形成されている。
本実施の形態では、スライド本体105aと、スライド本体105aの下側に配置された金型取付板105bとを有している。この金型取付板105bの下面105s(
図11参照)に上金型12aが取り付けられている。
【0071】
油圧シリンダ81は、スライド本体105aに設けられている。詳細には、油圧シリンダ81は、そのピストンロッド81cがアプライト3側に向かって水平方向に伸びるようにスライド本体105aの側面に配置されている。嵌合部182は、油圧シリンダ81のピストンロッド81cの先端に取り付けられている。嵌合部182の先端形状は、凹部181aに対応するように形成されている。
【0072】
スライド105が成形領域まで下降すると、制御部11は、保持用油圧回路87を制御してピストンロッド81cをシリンダチューブ81aから伸ばす。詳細には、第2接続路84bと第3接続路84cを接続し第1接続路84aと排油路84dを接続するように方向切換バルブ82が切り換えられる。この状態で、ポンプ83が作動されると、第2空間81e側に作動油が供給されてピストンロッド81cが被嵌合部181側に伸びる。このピストンロッド81cの移動によって、嵌合部182が、被嵌合部181の凹部181aに向かって移動して凹部181aに嵌合する。これによって、スライド本体105aの位置が固定される。
【0073】
一方、嵌合部182を被嵌合部181から離間させる際には、第1接続路84aと第3接続路84cを接続し第2接続路84bと排油路84dを接続するように方向切換バルブ82が切り替えられてポンプ83が駆動制御される。これによって第1空間81dに作動油が供給されてピストンロッド81cが縮み嵌合部182が被嵌合部181から離間する。
【0074】
(1−2.荷重付与部)
図11は、本実施の形態の荷重付与部107の構成を示す図である。
本実施の形態の荷重付与部107は、スライド105内に設けられている4つの油圧シリンダ171と、それぞれの油圧シリンダ171を駆動するための4つの荷重用油圧回路78と、を有する。荷重用油圧回路78は、実施の形態1と同様である。
【0075】
油圧シリンダ171は、鉛直方向に配置されたシリンダチューブ171aと、シリンダチューブ171a内を鉛直方向に移動可能なピストン171bと、ピストン171bから下方に向かって設けられたピストンロッド171cと、を有する。すなわち、ピストンロッド171cは、シリンダチューブ171aから下方に向かって伸張する。そして、ピストンロッド171cの下端には、スライド105の金型取付板105bが取り付けられている。また、本実施の形態2では、実施の形態1と比較してピストン171bは、プランジャ64とは接続されていない。すなわち、本実施の形態では、プリフォーム材301と熱硬化性樹脂に成形荷重を付与する際には、スライド本体105aは移動せず金型取付板105bが所定の圧力で下方に移動しプリフォーム材301と熱硬化性樹脂に成形荷重が付与される。
【0076】
ピストン171bによってシリンダチューブ171a内の空間は、下方空間171dと上方空間171eに分けられる。下方空間171dに荷重用油圧回路78の第1接続路76aが接続され、上方空間171eに荷重用油圧回路78の第2接続路76bが接続されている。
成形荷重を付与する際には、第2接続路76bと第3接続路76cを接続し第1接続路76aと排油路76dを接続するように方向切換バルブ72が切り替えられる。この状態で、ポンプ75を駆動することによって、上方空間171eに作動油が供給されてピストン171bおよびピストンロッド171cが下方に押され、金型取付板105bに成形荷重が付与される。
【0077】
一方、第1接続路76aと第3接続路76cを接続し第2接続路76bと排油路76dを接続するように方向切換バルブ72が切り替えられポンプ75が駆動されると、ピストン171bおよびピストンロッド171cが引き上げられて金型取付板105bがスライド本体105aに当接するように引き上げられる。
【0078】
<2.動作>
次に、本実施の形態のプレス装置100の制御方法について説明する。
図12は、本実施の形態のプレス装置100の制御方法を示すフロー図である。
予め炭素繊維が成形品の形状に形作られたプリフォーム材301が下金型12b上に載置された後、制御部11は、ステップS110において、4つのサーボモータ60を駆動してスライド105を成形領域まで下降させる。また、スライド105が成形領域に達すると、スライド105の下面105sに傾き補正部9の当接部90が当接する。
そして、スライド105が成形領域に達すると、ステップS120において、制御部11は、保持用油圧回路87の方向切換バルブ82およびポンプ83を制御して、油圧シリンダ81を駆動する。すなわち、ピストンロッド81cをシリンダチューブ81aから伸ばして、嵌合部182を被嵌合部181の凹部181aに嵌合させる。これによってスライド本体105aの位置が固定される。なお、サーボモータ60を用いてスライド105を下降させるため、嵌合部182が凹部181aに対向する位置で精度良くスライド105を停止させることができる。
【0079】
次に、ステップS130において、制御部11は、サーボモータ60への通電を停止する。
次に、ステップS135において、スライド5が停止した状態で、熱硬化性樹脂が注入路400を通して上金型12aと下金型12bの間に注入される。
次に、ステップS140において、制御部11は、荷重付与部107の方向切換バルブ72、流量調整バルブ73および圧力制御バルブ74を制御し、スライド5内の4つの油圧シリンダ71を駆動して金型取付板105bを所定の圧力で下方に移動させる。この金型取付板105bの所定の圧力での移動によって、上金型12aおよび下金型12bの間のプリフォーム材301および熱硬化性樹脂に成形荷重が付加され、プリフォーム材301および熱硬化性樹脂が上金型12aと下金型12bの間で加圧される。この加圧によってプリフォーム材301と熱硬化性樹脂の成形が行われる。
【0080】
次に、ステップS150において、加圧状態が所定時間保持される。
上記ステップS140とステップS150の間、制御部11は、リニアセンサ92からの情報に基づいて傾き補正部9のポンプ95および4組の第1サーボバルブ93並びに第2サーボバルブ94を制御することによって油圧シリンダ91を駆動し、スライド5を所定以下の傾きに保つ。
【0081】
所定時間が経過すると、制御部11は、荷重付与部107の方向切換バルブ72、流量調整バルブ73および圧力制御バルブ74を制御し、金型取付板105bへの荷重の付与を停止する。
次に、ステップS160において、制御部11は、サーボモータ60への通電を行う。
次に、ステップS170において、制御部11は、スライド保持部108のポンプ83および方向切換バルブ82を制御することによって油圧シリンダ81を駆動し、嵌合部182を凹部181aから離間させる。これによって、スライド本体105aの固定が解除される。
【0082】
次に、ステップS180において、制御部11は、サーボモータ60を制御し、スライド105を元の位置まで上昇させる。
そして、プレス加工が終了した加工済品が取り出され、次のプレス加工が行われる。
【0083】
(実施の形態3)
以下に、本発明に係る実施の形態3におけるプレス装置200について説明する。なお、本実施の形態3に説明において、実施の形態1と同様の構成については、実施の形態1と同じ符号を付し、適宜説明を省略する。
<1.構成>
図13は、本実施の形態のプレス装置200の構成を示す正面図である。
本実施の形態のプレス装置200は、ベッド2と、クラウン4と、スライド5と、スライド駆動部206と、荷重付与部207と、スライド保持部208と、傾き補正部9と、ボルスタ10と、制御部11と、を備える。
【0084】
(1−1.スライド駆動部)
スライド駆動部206は、サーボモータ260と、サーボモータ260の駆動をスライド5に伝達する伝達機構266を4組有する。それぞれの伝達機構266は、ボールネジ部261および支持部262を有する。4本のボールネジ部261は、ベッド2に鉛直方向に向かって回転可能に配置されており、クラウン4の4隅を挿通している。クラウン4の上下であって、ボールネジ部261の周囲には軸受263が設けられている。本実施の形態のプレス装置200では、実施の形態1のプレス装置1と異なり、アプライト3が設けられておらず、スライド駆動部206によってクラウン4が支持されている。
【0085】
ボールネジ部261は、周面にネジ形状261aが形成されている。クラウン4の下側であって軸受263の下側には、ボールネジ部261によってクラウン4を支持するための支持部262が固定されている。支持部262は上下方向に貫通孔262aを有し、貫通孔262aの内周面には、ネジ形状が形成されており、ボールネジ部261のネジ形状261aと螺合している。
【0086】
サーボモータ260は、その駆動軸260aが鉛直方向を向くように配置されている。駆動軸260aは、ボールネジ部261の下端と結合されている。
サーボモータ260を回転することによってボールネジ部261も回転し、ボールネジ部261と螺合している支持部262およびクラウン4が上下方向に移動する。
このように、サーボモータ260の駆動によってクラウン4が上下方向に移動するため、クラウン4に吊下されているスライド5も上下方向に移動する。
【0087】
すなわち、プレス成形を行う際には、サーボモータ260の駆動によってスライド5は成形領域に達する高さまで下降する。
上記のように本実施の形態3では、実施の形態1のサーボモータ60の代わりにサーボモータ260が配置されているため、制御部11は、サーボモータ260を制御する。
【0088】
(1−2.スライド保持部)
図14(a)、(b)は、スライド保持部208の構成を示す図である。
スライド保持部208は、ボールネジ部261の上端に設けられた被嵌合部281と、被嵌合部281に嵌合する嵌合部282と、嵌合部282を被嵌合部281に向かって移動する移動部86と、を有する。
被嵌合部281は、ボールネジ部261の上端にボールネジ部261と同軸で設けられた円柱部281aと、上下方向に一定の間隔を開けて形成された円環状突起部281bと、を有する。円環状突起部281bは、円柱部281aの径方向外側に向かって突出している。円環状突起部281bは、円柱部281aの一周にわたって形成されている。円環状突起部281bは、水平方向と平行に形成されている。上下方向に隣り合う円環状突起部281bの間には、凹部281cが形成されている。
【0089】
図15は、嵌合部282の平面図である。嵌合部282は、半円環状の部材である。被嵌合部281の周囲を囲むように2つの嵌合部282が配置されている。2つの嵌合部282は対向して配置されている。
嵌合部282は、移動部86の油圧シリンダ81のピストンロッド81cの先端に固定されている。嵌合部282は、
図14(a)に示すように、その内側に凹凸形状を有している、すなわち、嵌合部282は、円環の径方向内側に向かって突出した2つの凸部282aを有している、2つの凸部282aの間には、凹部282bが形成されている。
【0090】
移動部86は、実施の形態1と同様の構成であり、油圧シリンダ81および保持用油圧回路87を有している。移動部86は、嵌合部282ごとに設けられている。油圧シリンダ81は、ピストンロッド81cが水平移動するようにクラウン4に固定されている。また、ピストンロッド81cは、シリンダチューブ81aから被嵌合部281に向かって伸張する。ピストンロッド81cの先端には、嵌合部282が取付けられている。尚、
図14(b)では、保持用油圧回路87は図示を省略している。
【0091】
スライド5が成形領域まで下降すると、制御部11は、保持用油圧回路87を制御してピストンロッド81cをシリンダチューブ81aから伸ばす。詳細には、第2接続路84bと第3接続路84cを接続し第1接続路84aと排油路84dを接続するように方向切換バルブ82が切換られる。この状態で、ポンプ83が作動されると、第2空間81e側に作動油が供給されてピストンロッド81cが被嵌合部181側に伸びる。このピストンロッド81cの移動によって、
図14(b)に示すように2つの嵌合部282が被嵌合部281を挟むように移動して被嵌合部281に嵌合する。詳細には、嵌合部282の凸部282aが、被嵌合部281の凹部281cに嵌り、嵌合部282の凹部282bに被嵌合部281の円環状突起部281bが嵌る。
【0092】
このようにして、ボールネジ部261がスライド保持部208によって固定される。すなわち、成形領域までスライド5を下降させてボールネジ部261を固定することによって、スライド5を成形領域の高さに機械的に保持できる。
一方、嵌合部182を被嵌合部181から離間させる際には、第1接続路84aと第3接続路84cを接続し第2接続路84bと排油路84dを接続するように方向切換バルブ82が切り替えられてポンプ83が駆動制御される。これによって第1空間81dに作動油が供給されてピストンロッド81cが縮み嵌合部182が被嵌合部181から離間する。
【0093】
(1−3.荷重付与部)
図16は、本実施の形態の荷重付与部の構成を示す図である。
荷重付与部207は、4つの油圧シリンダ271と、各々の油圧シリンダ271を駆動する荷重用油圧回路78と、各々の油圧シリンダ271の圧力をスライド5に伝達する荷重伝達機構272と、を有する。
【0094】
(1−3−1.油圧シリンダおよび油圧回路)
油圧シリンダ271は、クラウン4に4つ配置されている。
図16では、クラウン4の手前側の2つの油圧シリンダ271が示されており、奥側にも2つ油圧シリンダ271が配置されている。
各々の油圧シリンダ271は、水平方向に配置されたシリンダチューブ271aと、シリンダチューブ271a内を水平方向に移動可能なピストン271bと、ピストン271bに接続されたピストンロッド271cと、を有する。ピストンロッド271cは、シリンダチューブ271aからプレス装置200の内側に向かって伸張する。
【0095】
ピストン271bによってシリンダチューブ271a内の空間は、内側空間271dと外側空間271eに分けられる。内側空間271dに荷重用油圧回路78の第1接続路76aが接続され、外側空間271eに荷重用油圧回路78の第2接続路76bが接続されている。
制御部11は、第2接続路76bと第3接続路76cを接続し、第1接続路76aと排油路76dを接続するように方向切換バルブ72を切換することによって外側空間271eに作動油が供給されるとともに内側空間271dから作動油が排出される。これにより、ピストンロッド271cが内側へと伸張する。
【0096】
また制御部11が、第1接続路76aと第3接続路76cを接続して第2接続路76bと排油路76dを接続するように方向切換バルブ72を切換することによって内側空間271dに作動油が供給されて外側空間271eから作動油が排出される。これにより、ピストンロッド271cがシリンダチューブ271a内へと引き込まれる。
【0097】
(1−3−2.荷重伝達機構)
荷重伝達機構272は、ピストンロッド271cの水平方向の移動を上下方向の移動に変換してスライド5に伝達する。荷重伝達機構272は、プランジャ64と、第1連結部材273と、第2連結部材278と、第3連結部材274とを有する。第1連結部材273と第2連結部材278と第3連結部材274は、細長い形状の部材である。
第1連結部材273は、その一端においてピン500を介してピストンロッド271cの先端271fに回動可能に連結されている。第1連結部材273は、その他端に設けられた第1連結部277aにおいて、第2連結部材278の一端と回動可能に連結されている。
【0098】
第2連結部材278は、第1連結部材273とプランジャ64の間を連結する。第2連結部材278は、その他端に設けられた第2連結部277bにおいてプランジャ64の上端部64aと回動可能に連結している。
第2連結部材278は、第2A連結部材275と第2B連結部材276が連結して構成されている。第2A連結部材275は、その一端に設けられた第1連結部277aにおいて第1連結部材273および第3連結部材274と連結している。第2A連結部材275は、その他端に設けられた中間連結部277dにおいて、第2B連結部材276と連結されている。第2B連結部材276は、その他端が第2連結部277bにおいてプランジャ64の上端部に回動可能に連結されている。
【0099】
第3連結部材274は、第1連結部材273とクラウン4の間を連結している。第3連結部材274は、その一端に設けられた第1連結部277aにおいて第1連結部材273と連結している。第3連結部材274は、その他端に設けられた第3連結部277cにおいてクラウン4に回動可能に連結している。
また、第3連結部277cは、第2連結部277bの鉛直上方に配置されている。また、第1連結部277aの鉛直方向における位置は、第2連結部277bと第3連結部277cの間に位置している。
【0100】
プランジャ64は、スライド5の上部に固定されており、クラウン4の下側に固定されたプランジャホルダ65によって上下方向にガイドされる。
図17(a)および
図17(b)は、油圧シリンダ271を駆動させた際の荷重伝達機構の動きを説明するための図である。
第2接続路76bと第3接続路76cを接続して第1接続路76aと排油路76dを接続するように方向切換バルブ72を制御しポンプ75を駆動すると、外側空間271eに作動油が供給されピストン271bが内側方向に移動し、ピストンロッド271cが内側に向かって移動する。
図17(b)は、ピストンロッド271cが伸張した状態を示す図である。
【0101】
このピストンロッド271cの水平方向への移動によって、第1連結部材273は内側に押され、第1連結部277aが装置内側方向へと移動する。この第1連結部277aの内側への移動によって第2A連結部材275と第3連結部材274の間の角度が開く。これにより、第2A連結部材275と第2B連結部材276を介して連結されているプランジャ64がプランジャホルダ65に沿って下方へと移動する、
このように、油圧シリンダ271のピストンロッド271cが内側に移動する力が荷重伝達機構272によってスライド5に伝達され、上金型12aが下方に移動し上金型12aと下金型12bの間のプリフォーム材301と熱硬化性樹脂に対して成形荷重を付与できる。
【0102】
また、第1接続路76aと第3接続路76cを接続して第2接続路76bと排油路76dを接続するように方向切換バルブ72を制御しポンプ75を駆動すると、内側空間271dに作動油が供給されピストン271bが外側方向に移動し、ピストンロッド271cがシリンダチューブ271a内に引き込まれる。
上述した第1連結部材273、第2連結部材278および第3連結部材274によって、いわゆるトグルリンク機構が構成されている。トグルリンク機構は、倍力機構であるため、油圧シリンダ271で発生する力を増幅してスライド5に伝達する。そのため、小さい油圧シリンダ271を使用することができ、使用する作動油の量も少なくなる。
【0103】
なお、
図16では、1つの油圧シリンダ271の荷重用油圧回路78のみを示しているが、4つの油圧シリンダ271のそれぞれに荷重用油圧回路78が設けられている。また、荷重用油圧回路78の一部、ポンプ75および作動油タンク77などは4つの荷重用油圧回路78に対して共通で用いられても良い。
【0104】
<2.動作>
次に、本実施の形態のプレス装置200の制御方法について説明する。
図18は、本実施の形態のプレス装置200の制御方法を示すフロー図である。
予め炭素繊維が成形品の形状に形作られたプリフォーム材301が下金型12b上に載置された後、制御部11は、ステップS210において、4つのサーボモータ260を駆動してボールネジ部261を回転させることによってクラウン4ごとスライド5を成形領域に達する高さまで下降させる。また、スライド5が成形領域に達すると、スライド105の下面105sに傾き補正部9の当接部90が当接する。
【0105】
そして、スライド5が成形領域に達すると、ステップS220において、制御部11は、保持用油圧回路87の方向切換バルブ82およびポンプ83を制御して、油圧シリンダ81を駆動する。すなわち、ピストンロッド81cをシリンダチューブ81aから伸長させて、嵌合部282を被嵌合部281に嵌合させる。これによってクラウン4の位置が固定される。なお、サーボモータ260を用いてクラウン4およびスライド5を下降させるため、嵌合部282の凸部282aが被嵌合部281の凹部281cに対応する位置になるように精度良くクラウン4およびスライド105を停止させることができる。
【0106】
次に、ステップ230において、制御部11は、サーボモータ260への通電を停止する。
次に、ステップS235において、スライド5が停止した状態で、熱硬化性樹脂が注入路400を通して上金型12aと下金型12bの間に注入される。
次に、ステップS240において、制御部11は、荷重付与部207の荷重用油圧回路78を制御し、スライド5内の4つの油圧シリンダ71を駆動してスライド5を所定の圧力で下方に移動する。このようにスライド5を所定の圧力で下方に移動することによって上金型12aおよび下金型12bの間のプリフォーム材301および熱硬化性樹脂に成形荷重が付加され、プリフォーム材301および熱硬化性樹脂が上金型12aと下金型12bの間で加圧される。この加圧によってプリフォーム材301および熱硬化性樹脂の成形が行われる。
【0107】
次に、ステップS250において、加圧状態が所定時間保持される。
上記ステップS240とステップS250の間、制御部11は、傾き補正部9のポンプ95および4組の第1サーボバルブ93並びに第2サーボバルブ94を制御することによって油圧シリンダ91を駆動し、スライド5を所定以下の傾きに保つ。
所定時間が経過すると、制御部11は、荷重付与部107の荷重用油圧回路78を制御し、スライド5への荷重の付与を停止する。
【0108】
次に、ステップS260において、制御部11は、サーボモータ260への通電を行う。
次に、ステップS270において、制御部11は、スライド保持部208の保持用油圧回路87を制御することによって油圧シリンダ81を駆動し、嵌合部282を被嵌合部281から離間させる。これによって、クラウン4およびスライド5の固定が解除される。
次に、ステップS280において、制御部11は、サーボモータ260を制御し、スライド5およびクラウン4を元の位置まで上昇させる。
そして、プレス加工が終了した加工済品が取り出され、次のプレス加工が行われる。
【0109】
(上記実施の形態1〜3の特徴)
(1)
本実施の形態のプレス装置1、100、200は、上金型12aと下金型12bを用いてプリフォーム材301および熱硬化性樹脂(材料の一例)に対してプレス成形を行うプレス装置であって、スライド5と、スライド駆動部6、206(駆動部の一例)と、荷重付与部7、107、207と、スライド保持部8、108、208(保持部の一例)と、制御部11と、を備えている。スライド5、105は、下面5s、105sに上金型12aが取り付けられる。スライド駆動部6は、サーボモータ60、260(電動モータの一例)と、伝達機構66、266(第1伝達機構の一例)と、を有し、スライド5を昇降させる。伝達機構66、266は、サーボモータ60、260の駆動をスライド5、105に伝達する。荷重付与部7、107、207は、油圧によって所定の圧力で上金型12aを下方に移動しプリフォーム材301および熱硬化性樹脂に対して成形荷重を付与できる。スライド保持部8、108、208は、成形荷重の反力を受け止めるようにスライド5、105を機械的に保持する。制御部11は、スライド駆動部6、206によりスライド5を成形領域(所定の高さの一例)まで移動し、スライド保持部8、108、208によりスライド5を保持した後に、荷重付与部7、107、207により上金型12aを所定の圧力で下方に移動し上金型12aと下金型12bの間のプリフォーム材301および熱硬化性樹脂に成形荷重を付与する。
【0110】
このように、サーボモータ60、260を用いたスライド駆動部6、206と、油圧を用いた荷重付与部7、107、207が設けられている。
これにより、成形領域まではサーボモータ60、260によってスライド5、105を下方に移動させ、その高さから油圧を用いて成形荷重を付与してプレス成形を行うことが出来る。そのため、成形領域に達するまでのスライド5、105の移動を油圧で行う場合と比較してスライド5、105のストロークに要する時間が短くでき、プレス成形にかかる時間を短縮できる。
【0111】
また、スライドの移動を全て油圧で行う場合、成形領域に達するまでの移動(非成形領域での移動)でも大量の油を要するため消費エネルギーが多くなるが、本実施の形態では、サーボモータ60、260を用いて成形領域までスライドを移動させるため省エネルギー化を図れる。
更に、スライド5、105を保持するスライド保持部8、108、208が設けられているため、成形荷重の反力に対してもスライド5、105を保持でき、精度良く加工を行うことができる。
また、スライド保持部8、108、208によってスライド5、105を保持している状態では、サーボモータ60、260を停止可能なため、必要に応じてサーボモータ60、260を停止することによってサーボモータ60、260にかかる負荷を軽減できる。
【0112】
(2)
本実施の形態のプレス装置1、100、200では、制御部11は、スライド保持部8、108、208によりスライド5、105を保持した後に、サーボモータ60、260の駆動を停止する。
スライド保持部8、108、208によってスライド5、105を保持している状態では、このようにサーボモータ60、260を停止できるため、サーボモータ60、260にかかる負荷を減少できる。
【0113】
(3)
本実施の形態のプレス装置1、200では、スライド保持部8、208は、伝達機構66、266を機械的に固定することによって、成形荷重の反力を受け止めるようにスライド5を機械的に保持する。
成形荷重の反力に対してもスライド5を保持でき、精度良く加工を行うことができる。また、スライド保持部8、208によってスライド5を保持している状態では、サーボモータ60、260を停止できるため、サーボモータ60、260にかかる負担を減少できる。
【0114】
(4)
本実施の形態のプレス装置1では、伝達機構66は、ヘリカルギヤ62a(ギヤの一例)を有する。スライド保持部8は、嵌合部80と、移動部86と、を有する。嵌合部80は、ヘリカルギヤ62aの歯621の間に嵌合可能である。移動部86は、ヘリカルギヤ62aの歯621の間の位置に嵌合部80を移動させる。荷重付与部7は、スライド5を下方に移動することにより、プリフォーム材301と熱硬化性樹脂に成形荷重を付与する。スライド保持部8は、移動部86を制御して嵌合部80をヘリカルギヤ62aの歯621の間に移動させて伝達機構66を機械的に固定することによって、成形荷重の反力を受け止めるようにスライド5を機械的に保持する。
このように伝達機構66のヘリカルギヤ62aの歯621の間に嵌合部80を移動することによって、成形荷重を受けとめることが可能となる。
【0115】
(5)
本実施の形態のプレス装置100では、スライド105は、スライド本体105aと、金型取付板105b(金型取付部の一例)と、を有する。金型取付板105bは、スライド本体105aの下側に配置され上金型12aが取り付けられる。荷重付与部107は、金型取付板105bを下方に移動することにより、プリフォーム材301と熱硬化性樹脂に成形荷重を付与する。スライド保持部108は、スライド本体105aを機械的に固定することによって、成形荷重の反力を受け止めるようにスライド105を機械的に保持する。
このように、スライド本体105aを所定の高さに固定し、金型取付板105bによって成形荷重を付与することによって、成形荷重を受け止めることが出来る。
【0116】
(6)
本実施の形態のプレス装置100は、クラウン4と、アプライト3を更に備える。クラウン4は、スライド105の上方に配置されスライド105を移動可能に支持する。アプライト3は、クラウン4をスライド105の上方に支持する。スライド保持部108は、嵌合部182と、被嵌合部181と、移動部86と、を有する。嵌合部182は、スライド本体105aに設けられアプライト3に向かって移動可能である。被嵌合部181は、アプライト3のスライド105側の側面3aに設けられている。移動部86は、嵌合部182を移動させて被嵌合部181に嵌合させる。スライド保持部108は、移動部86を制御して嵌合部182を被嵌合部181に嵌合させることによって、成形荷重の反力を受け止めるようにスライド105を機械的に保持する。
このように、スライド本体105aをアプライト3を利用して固定することによって、金型取付板105bによって成形荷重を付与することによって、成形荷重を受け止めることが出来る。
【0117】
(7)
本実施の形態のプレス装置200は、クラウン4を備えている。クラウン4は、スライド5の上方に配置され、スライド5を移動可能に支持する。伝達機構266は、ボールネジ部261と支持部262とを有する。ボールネジ部261は、鉛直方向に配置され、クラウン4をスライド5の上方に支持する。支持部262は、ボールネジ部261と螺合する。ボールネジ部261は、サーボモータ260の駆動によって回転する。スライド駆動部206は、ボールネジ部261を回転させてクラウン4を下方に移動させることによってスライド5を所定の高さまで下降させる。
これによって、サーボモータ260の駆動力を用いてスライド5を所定の高さまで下降できる。
【0118】
(8)
本実施の形態のプレス装置200では、スライド保持部208は、被嵌合部281と、嵌合部282と、移動部86と、を有する。被嵌合部281は、ボールネジ部261に固定されている。嵌合部282は、被嵌合部281に嵌合可能である。移動部86は、嵌合部282を移動させて被嵌合部281に嵌合させる。スライド保持部208は、移動部86を制御して嵌合部282を被嵌合部281に嵌合させることによって、ボールネジ部261を固定し成形荷重の反力を受け止めるようにスライド5を機械的に保持する。
このように、ボールネジ部261をスライド保持部208によって固定することによって、成形荷重の反力を受け止めることができる。
【0119】
(9)
本実施の形態のプレス装置1、100では、荷重付与部7、107は、スライド5、105に配置された油圧シリンダ71、171を有し、油圧シリンダ71、171の油圧によって、プリフォーム材301と熱硬化性樹脂に成形荷重を付与する。
このようにスライド5、105に成形荷重を付与する油圧シリンダ71、171を設けることによって、プリフォーム材301と熱硬化性樹脂に対して成形荷重を付与できる。
【0120】
(10)
本実施の形態のプレス装置200は、クラウン4を更に備えている。クラウン4は、スライド5の上方に配置されスライド5を昇降可能に支持する。荷重付与部207は、油圧シリンダ271と、荷重伝達機構272(第2伝達機構の一例)と、を有する。油圧シリンダ271は、水平方向に移動可能なピストンロッド271cを持ち、クラウン4に配置されている。荷重伝達機構272は、油圧シリンダ271の力を増幅してスライドに伝達する倍力機構を持つ。荷重伝達機構272は、ピストンロッド271cの水平方向の移動を上下方向の移動に変換してスライド5に伝達する。
【0121】
荷重伝達機構272が設けられているためピストンロッド271cが水平方向になるように油圧シリンダ271を配置できる。このため、鉛直方向になるように油圧シリンダ271を配置するよりも、プレス装置の高さを低くできる。
また、荷重伝達機構272が倍力機構を有しているため、油圧シリンダ271を小型化でき、使用する作動油の量も減らすことができる。
【0122】
(11)
本実施の形態のプレス装置200では、荷重伝達機構272は、スライド5の上側に固定され上下方向にガイドされるプランジャ64を有する。倍力機構は、第1連結部材273(第1部材の一例)と、第2連結部材278(第2部材の一例)と、第3連結部材274(第3部材の一例)と、を有する。第1連結部材273は、ピストンロッド271cに対して回動可能に連結されている。第2連結部材278は、第1連結部材273とスライド5の上側に配置されたプランジャ64との間を連結する。第3連結部材274は、第1連結部材273とクラウン4の間を連結する。第2連結部材278は、第1連結部材273およびプランジャ64の上端部のそれぞれに対して回動可能である。第3連結部材274は、第1連結部材273およびクラウン4のそれぞれに対してと回動可能である。
このように第1連結部材273、第2連結部材278および第3連結部材274が設けられることによって、倍力機構の一例としてのトグルリンク機構を構成できる。
【0123】
(12)
本実施の形態のプレス装置200では、第1連結部材273と第2連結部材278の連結部において、第3連結部材274は第1連結部材273と連結されている。
このように第1連結部材273と第2連結部材278の間の連結部と、第1連結部材273と第3連結部材274の間の連結部を同じ第1連結部277aにすることで省スペース化を図れる。
【0124】
(13)
本実施の形態のプレス装置1、100、200は、傾き補正部9を更に備える。傾き補正部9は、上金型12aが水平に保たれるようにスライド5、105の傾斜を補正する。制御部11は、荷重付与部7、107、207によってプリフォーム材301と熱硬化性樹脂に成形荷重を付与する際に、傾き補正部9によりスライド5、105の傾斜を補正する。
CFRP等の液状若しくは柔らかい軟性の材料をプレスする際には、金型に形成されている加工品の形状によっては荷重に偏りが生じ、上金型12aが傾斜する場合がある。上述のように、傾き補正部9を設けることによって上金型12aの傾斜を低減でき、加工精度を向上できる。
【0125】
(14)
本実施の形態のプレス装置1は、傾き補正部9は、複数の油圧シリンダ91と、ポンプ95と、油圧シリンダ91ごとに設けられた第1サーボバルブ93および第2サーボバルブ94(バルブの一例)と、を有する。ポンプ95は、作動油を複数の油圧シリンダ91に供給する。第1サーボバルブ93および第2サーボバルブ94は、油圧シリンダ91ごとに設けられ、油圧シリンダ91に供給される作動油の量を調整する。油圧シリンダ91のピストンロッド91cは、成形荷重が付与される際にスライド5、105に下方から当接する。制御部11は、荷重付与部7によって成形荷重を付与する際に、複数の油圧シリンダ91のピストンロッド91cのストロークが同じ長さになるように第1サーボバルブ93および第2サーボバルブ94を制御する。
これにより、CFRP等の液状若しくは柔らかい軟性の材料をプレスする際に、上金型12aの傾きを低減できる。
【0126】
(15)
上記実施の形態のプレス装置の制御方法は、上金型12aと下金型12bを用いてプリフォーム材301および熱硬化性樹脂に対してプレス成形を行うプレス装置1、100、200の制御方法であって、ステップS10、110、210(移動工程の一例)と、ステップS20、120、220(保持工程の一例)と、ステップS50、S150、S250(荷重付与工程の一例)と、を備える。ステップS10、110、210は、サーボモータ60、260の駆動を上金型12aが取り付けられているスライド5、105に伝達してスライド5、105を成形領域の高さまで移動させる。ステップS20、120、220は、成形荷重の反力を受け止めるようにスライド5、105を機械的に保持する。ステップS50、S150、S250は、成形領域の高さから油圧によって上金型12aを下方に移動しプリフォーム材301および熱硬化性樹脂に対して成形荷重を付与する。
【0127】
これにより、成形領域まではサーボモータ60、260によってスライドを下方に移動させ、その高さから油圧を用いて成形荷重を付与してプレス成形を行うことが出来る。そのため、スライド5、105のストロークに要する時間が短くでき、プレス成形にかかる時間を短縮できる。
更に、成形荷重の反力を受け止めるようにスライド5、105を保持できるため、精度良く加工を行うことができる。
【0128】
(16)
上記実施の形態のプレス装置1、100、200の成形方法は、ステップS30、S130、S230(停止工程の一例)を更に備える。ステップS30、S130、S230は、ステップS20、120、220の後にサーボモータ60、260の駆動を停止する。
ステップS20、120、220によってスライド5、105を保持している状態では、サーボモータ60、260を停止できるため、サーボモータ60、260にかかる負担を減少できる。
【0129】
[他の実施の形態]
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0130】
(A)
上記実施の形態では、RTM工法におけるプレス装置の動作について説明したが、この工法にかぎられるものではない。例えば、SS工法においても同様に実施できる。
図19は、プレス装置1´の構成を示す模式図である。プレス装置1´では、上金型12a´に熱硬化性樹脂を注入するための注入路400が形成されている。
図20は、
図19に示すプレス装置1´の制御方法を示すフロー図である。なお、SS工法では熱可塑性樹脂を使用するが、熱可塑性樹脂としては、ポリアミド、ポリプロピレンなどが用いられる。
【0131】
SS工法では、炭素繊維のシートに熱可塑性樹脂を含浸させたプリプレグを積層したスタンパブルシート300が用いられる。加熱されたスタンパブルシート300が下金型12b´上に載置されて、スライド5が下降される(ステップS10)。次に、伝達機構66がスライド保持部8によって固定された後、サーボモータ60が停止される(ステップS20、30)。
次に、荷重付与部7によってスライド5に成形荷重が付与され、上金型10a´と下金型10b´の間で加圧成形が行われる(ステップS40)。
以降の制御は、上記実施の形態と同様である。
なお、プレス装置100、200についてもSS工法に利用してもよい。
【0132】
(B)
また、上記実施の形態及び上記(A)では、材料の一例として連続炭素繊維を用いたCFRP用いて説明したが、これに限られるものではない。不連続炭素繊維を用いたCFRPをプレス加工する際に上記実施の形態及び上記(A)のプレス装置1、100、200、1´を用いても良いし、更にCFRPに限らなくても良い。すなわち、炭素繊維を含まない樹脂などを成形する際にプレス装置1、100、200、1´が用いられても良い。なお、上記実施の形態で説明したプレス装置を板金加工などの際に用いても良いが、軟性の柔らかい素材や液状の素材をプレス加工する際のほうが、より効果を発揮する。
【0133】
(C)
上記実施の形態のプレス装置1、100、200では、電動モータの一例としてサーボモータ60、260が用いられているが、サーボモータに限らなくても良く、例えばインバータモータが用いられてもよい。
(D)
上記実施の形態では、サーボモータ60、260の駆動によってスライド5、105を成形領域に達するまで下降させて、成形領域に達してからは油圧によって成形を行っているが、サーボモータ60、260でスライド5、105を下降させる位置は成形領域よりも上方の位置であってもよく、その位置からは油圧でスライド5、105を下降させてもよい。
このような場合であっても、スライドの全てのストロークを油圧で行う場合と比較すると、スライドの往復に要する時間は短縮できるため、本発明の効果を発揮できる。
【0134】
(E)
上記実施の形態では、成形領域に達する高さでスライド5、105の下面5s、105sに傾き補正部9の当接部90が当接しているが、成形領域に達するより前に当接部90がスライド5、105に当接してもよい。
【0135】
(F)
上記実施の形態では、サーボモータ260はボールネジ部261と同軸上に配置されており、サーボモータ260の駆動軸260aとボールネジ部261が直接接続されていたが、これに限られない。例えば、サーボモータ260がボールネジ部261と平行に配置されており、歯車等で減速されて駆動軸260aの回転がボールネジ部261に伝達されてもよい。
【0136】
(G)
また、サーボモータ60、260、伝達機構66、266、油圧シリンダ71、81、171、271、の数は、上記実施の形態に限られるものでなく適宜変更できる。
(H)
また、上記実施の形態では、第2連結部材278は、第2A連結部材275と第2B連結部材276の2つの部材が連結されて構成されているが、1つの部材のみで構成されていてもよい。
【0137】
(I)
また、上記実施の形態では、第2連結部材278と第3連結部材274は第1連結部277aで第1連結部材273と連結されているが、第1連結部材273と第2連結部材278の連結部と、第1連結部材273と第3連結部材274の連結部が別々に設けられていてもよい。
図21に示すように、第1連結部材273´として3軸リンク部材が配置されてもよい。この場合、第1連結部材273´と第2連結部材278(詳細には第2A連結部材25)は、第1A連結部277eで連結され、第1連結部材273´と第3連結部材274は、第1B連結部材277fで連結されている。
【0138】
(J)
また、上記実施の形態では、倍力機構としてトグルリンク機構が用いられたが、トグルリンクに限られるものでない。