【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1の空気清浄緑化装置では、土壌層31の正面で植栽や植物の植え替えを行なう際に、土壌層31の土壌34を一部取り出し、空いたスペースに植物の根を植え付ける必要がある。そのため、作業性が悪く、また植え替え時に土壌密度が低下したり、土壌密度にむらが生じたりし、浄化する空気の流動性が低下するなどの問題がある。
【0006】
なお、特許文献2は、参考として示したが、浄化機能を持たない緑化専用の装置であるうえ、水耕栽培形式であって、栽培容器内には水耕栽培用の培地を入れるため、植え替え時の土壌密度のむらによる浄化空気の流動性低下とは、関係しない。また、各栽培容器は上向きに設置され、壁面緑化に適用される技術ではない。
特許文献3,4の技術は、植栽基盤を区分して入れるポケットが複数設けられているが、いずれも各ポケットはフレームと一体であって、植え替えはフレームの場所で行わなければならず、施工性の向上効果が今一つ十分でない。また、浄化が考慮されていない。
【0007】
この発明の目的は、施工性が良く、植栽や植え替えに伴う植栽基盤密度の低下や密度のむらによる空気の流動性低下を解消でき、装置の軽量化も可能な空気清浄緑化装
置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明の空気清浄緑化装置は、植栽層と、この植栽層の裏側に位置する通気層と、この通気層に空気を送り込む送風手段とを備え、
前記植栽層は、
口部が植栽用開口部となるカップ状、詳しくは
奥側が狭まる円すい台状とされて植栽基盤が充填されかつ前記植栽用開口部とは別の箇所に通気・通水用開口部を有する複数の栽培容器と、
これら複数の栽培容器を、前記植栽用開口部を前記通気層とは反対側に向けて挿脱可能に支持し、かつ前記通気層を通過した空気を前記栽培容器の前記通気・通水用開口部に通気可能でかつ外部に対して密封するフレームとを有することを特徴とする。
【0009】
この構成によると、各栽培容器に植えられた植物で緑化の効果が得られ、また前記送風手段により前記通気層に送られた空気は、各栽培容器の前記通気・通水用開口部から栽培容器内に入り、植栽基盤を通過することで浄化される。灌水は各栽培容器の前記通気・通水用開口部から栽培容器内に入り、植栽基盤に植えられた植物の根に与えられる。このように、緑化と空気の浄化との両方の機能が得られる。
【0010】
この場合に、複数の栽培容器をフレームに挿脱可能に支持する。そのため栽培容器をフレームから取り外した状態で栽培容器の植栽基盤に植栽したり植え替えることができ、また栽培容器ごと植物を替えることができ、植え替え等の作業性が良い。このため、植え替え時に植栽基盤の密度が低下したり、密度にむらが生じることが回避でき、再度フレームに設置して空気の浄化に用いるときに、浄化する空気の流動性が安定して得られる。フレームから取り外した栽培容器は、フレームへの取付姿勢に係わらず、上向きに置くことができ、栽培容器内の植物の養生を効果的に行える。
また、栽培容器に植物を植えることから、植栽基盤を浄化と植栽に必要な最小限の量まで削減することが可能であり、植栽基盤が減らせる分だけ装置全体を軽量化することも可能となる。植栽基盤を浄化植栽に必要な最小限の量に削減することで、植栽基盤の空気が通過する厚さを必要最小限に薄くできて、空気を送り込むための圧力を小さくでき、前記送風手段の必要な性能も低減される。
【0011】
前記植栽層における、前記栽培容器の前記植栽用開口部が並ぶ面
は、壁面状と
なる。
壁面緑化装置の場合、壁面に植物を植えることになるため、従来の緑化面の全面に渡り植栽基盤を設ける構成では、施工性が非常に悪く、前述の植物の植え替え時等における植栽基盤の密度低下や密度のむらの問題が大きい。しかしこの発明では、栽培容器が挿脱できる。そのため、施工性向上、植栽,植え替えに伴う植栽基盤密度の低下、密度むらの防止、およびこれによる空気の流動性低下の解消の各効果が、より一層効果的となる。
【0012】
前記植栽層の前記フレーム内における前記栽培容器の周囲に、
前記通気層の空気および灌水を前記栽培容器の前記通気・通水用開口部へ導く充填材として、通気性、通水性、および
前記栽培容器を抜き差ししても形状が崩れない適度の形状維持性を持つ材質の
スポンジからなる充填材が充填され
ている。
前記植栽層の前記フレーム内の部分は、非栽培部であり、空間として空けておいても良いが、通水性のある前記充填材を充填することで、例えば前記植栽層の上部に設けられたパイプ等の灌水手段から供給した灌水が、前記充填材があることで直接に落下せず、各栽培容器内の植栽基盤に案内される。前記充填材が通気性を持つことで、前記通気層の空気が前記栽培容器内に入ることを妨げず、前記充填材が形状維持性の性状を持つことで、前記栽培容器を抜き出したときに、抜き出し跡となる凹部が崩れず、その抜き出し跡に前記栽培容器を再度挿入することが容易に行える。
前記充填材
は、植物は植えない部分であるため、材質を自由に選定で
き、スポン
ジを用いることで、軽量化を図ることができる。
【0013】
前記栽培容器の前記通気・通水用開口部
は前記栽培容器の
周壁部における底部
のみに設けられている。なお、ここでいう「底部」は、栽培容器の深さ方向の中央よりも底側の部分を意味する。
通気・通水用開口部が栽培容器の植栽用開口部の近くにあると、植栽基盤内を通過する空気の流れが短絡流れとなって、前記植栽基盤に空気の浄化に寄与しない部分が多く生じる。しかし、通気・通水用開口部が栽培容器の底部に位置することで、植栽基盤のより多くの部分が空気の浄化に寄与し、効果的に空気の浄化が行われる。また、栽培容器の底部に通気・通水用開口部が存在することで、植栽基盤への灌水も効果的に行なわれる。
前記通気・通水用開口部は、前記栽培容器の周面の底部に配置することがより好ましい。周面であると、底面に設けるよりも、通気・通水用開口部を多く設けることができて、その全体の面積を大きくできる。
【0014】
この発明において、前記フレームの前記通気層とは反対側の面に、前記各栽培容器を差し込む差込口を有する正面パネルを備え、前記差込口の周囲に、前記栽培容器との間の隙間を密封するシール材を設けても良い。
前記通気層に前記送風手段から送り込んだ空気は、さらに、前記植栽層における前記各栽培容器の間から栽培容器に送り込む。このとき、前記差込口と栽培容器との間に隙間が生じていると、空気が浄化されることなく外部に漏れるが、前記シール材を設けることで、漏れが生じず、栽培容器内に全て送り込まれる。
【0015】
この発明の空気清浄緑化装置用栽培容器は、口部が植栽用開口部となるカップ状とされて周面の底部に通気・通水用開口部を有し、かつ開口周縁に取付用の鍔部を有し、空気の浄化機能を持つ植栽基盤が内部に充填されるものである。
【0016】
この構成の空気清浄緑化装置用栽培容器によると、この発明の空気清浄緑化装置に使用されて前述の各効果を発揮する。この場合に、前記通気・通水用開口部が底部に位置することで栽培容器内の植栽基盤が無駄なく空気の浄化に利用される。前記通気・通水用開口部は、前記栽培容器の底面に設けられていても空気や灌水の採り入れが可能であるが、底面にあると、前記栽培容器を前記パネルから外し、立ち姿勢で植物の成育や養生を行うときに、容器を置いた面で閉ざされて灌水等が良好が行えない場合がある。しかし、前記通気・通水用開口部が周面にあると、立ち姿勢に栽培容器を置いても閉ざされることがなく、灌水が良好に行え、植物の育成や養生が行い易い。また、栽培容器の開口周縁の取付け用鍔部を利用してフレームへの栽培容器の取付けも容易に行なうことができる。
【発明の効果】
【0017】
この発明の空気清浄緑化装置は、植栽層と、この植栽層の裏側に位置する通気層と、この通気層に空気を送り込む送風手段とを備え、前記植栽層は、口部が植栽用開口部となり奥側が狭まる円すい台状とされて植栽基盤が充填されかつ前記植栽用開口部とは別の箇所に通気・通水用開口部を有する複数の栽培容器と、これら複数の栽培容器を、前記植栽用開口部を前記通気層とは反対側に向けて挿脱可能に支持し、かつ前記通気層を通過した空気を前記栽培容器の前記通気・通水用開口部に通気可能でかつ外部に対して密封するフレームとを有し、前記植栽層における、前記栽培容器の前記植栽用開口部が並ぶ面が壁面状となり、前記植栽層の前記フレーム内における前記栽培容器の周囲に、前記通気層の空気および灌水を前記栽培容器の前記通気・通水用開口部へ導く充填材として、通気性、通水性、および前記栽培容器を抜き差ししても形状が崩れない適度の形状維持性を持つ材質のスポンジからなる充填材が充填さ
れ、前記栽培容器の前記通気・通水用開口部は、前記栽培容器の周壁部における深さ方向の中央よりも底側部分のみに設けられているため、施工性が良く、植栽や植え替えに伴う植栽基盤の密度低下や密度むらによる空気の流動性低下を解消でき、装置の軽量化も可能となる。