特許第6661279号(P6661279)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6661279
(24)【登録日】2020年2月14日
(45)【発行日】2020年3月11日
(54)【発明の名称】空気清浄緑化装置
(51)【国際特許分類】
   A01G 9/02 20180101AFI20200227BHJP
   A01G 9/00 20180101ALI20200227BHJP
   A61L 9/01 20060101ALI20200227BHJP
【FI】
   A01G9/02 D
   A01G9/00 B
   A01G9/02 101E
   A61L9/01 P
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-70808(P2015-70808)
(22)【出願日】2015年3月31日
(65)【公開番号】特開2016-189710(P2016-189710A)
(43)【公開日】2016年11月10日
【審査請求日】2018年3月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086793
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅士
(74)【代理人】
【識別番号】100087941
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 修司
(72)【発明者】
【氏名】久保田 謙三
(72)【発明者】
【氏名】西部 洋晴
(72)【発明者】
【氏名】河目 裕介
(72)【発明者】
【氏名】天保 美咲
【審査官】 坂田 誠
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−49215(JP,A)
【文献】 実開昭63−33758(JP,U)
【文献】 実開平7−39363(JP,U)
【文献】 特開2001−37856(JP,A)
【文献】 特表2013−544096(JP,A)
【文献】 特開平7−327500(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 9/00 − 9/02
A01G 20/00
F24F 7/00
A61L 9/00 − 9/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
植栽層と、この植栽層の裏側に位置する通気層と、この通気層に空気を送り込む送風手段とを備え、
前記植栽層は、
口部が植栽用開口部となり奥側が狭まる円すい台状とされて植栽基盤が充填されかつ前記植栽用開口部とは別の箇所に通気・通水用開口部を有する複数の栽培容器と、
これら複数の栽培容器を、前記植栽用開口部を前記通気層とは反対側に向けて挿脱可能に支持し、かつ前記通気層を通過した空気を前記栽培容器の前記通気・通水用開口部に通気可能でかつ外部に対して密封するフレームとを有し、
前記植栽層における、前記栽培容器の前記植栽用開口部が並ぶ面が壁面状となり、
前記植栽層の前記フレーム内における前記栽培容器の周囲に、前記通気層の空気および灌水を前記栽培容器の前記通気・通水用開口部へ導く充填材として、通気性、通水性、および前記栽培容器を抜き差ししても形状が崩れない適度の形状維持性を持つ材質のスポンジからなる充填材が充填され、
前記栽培容器の前記通気・通水用開口部は、前記栽培容器の周壁部における深さ方向の中央よりも底側部分のみに設けられている、
空気清浄緑化装置。
【請求項2】
請求項1に記載の空気清浄緑化装置において、前記フレームの前記通気層とは反対側の面に、前記各栽培容器を差し込む差込口を有する正面パネルを備え、前記差込口の周囲に、前記栽培容器との間の隙間を密封するシール材を設けた空気清浄緑化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、緑化機能と空気を清浄化する機能とを備えた空気清浄緑化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、図7に示すように、緑化用の植物30を植える土壌層31とその裏面に配置された通気層32とでなり、送風機(図示せず)から通気層32に送られた空気を、前記土壌層31の正面に通気させて浄化するものが知られている(例えば特許文献1)。土壌層31は、箱状の外周フレーム33内に土壌34が充填された層である。
【0003】
また、空気清浄の機能を持たず、かつ水耕栽培形式の緑化装置としては、複数の栽培容器を並べてフレームに着脱可能に支持するものが提案されている(例えば特許文献2)。 この他に、植栽基盤を区分して入れることができるように、複数のポケットを設けた構成が提案されている(例えば特許文献3,4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014−64517号公報
【特許文献2】特開2009−183232号公報
【特許文献3】特開2006−020621号公報
【特許文献4】特開2011−167137号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1の空気清浄緑化装置では、土壌層31の正面で植栽や植物の植え替えを行なう際に、土壌層31の土壌34を一部取り出し、空いたスペースに植物の根を植え付ける必要がある。そのため、作業性が悪く、また植え替え時に土壌密度が低下したり、土壌密度にむらが生じたりし、浄化する空気の流動性が低下するなどの問題がある。
【0006】
なお、特許文献2は、参考として示したが、浄化機能を持たない緑化専用の装置であるうえ、水耕栽培形式であって、栽培容器内には水耕栽培用の培地を入れるため、植え替え時の土壌密度のむらによる浄化空気の流動性低下とは、関係しない。また、各栽培容器は上向きに設置され、壁面緑化に適用される技術ではない。
特許文献3,4の技術は、植栽基盤を区分して入れるポケットが複数設けられているが、いずれも各ポケットはフレームと一体であって、植え替えはフレームの場所で行わなければならず、施工性の向上効果が今一つ十分でない。また、浄化が考慮されていない。
【0007】
この発明の目的は、施工性が良く、植栽や植え替えに伴う植栽基盤密度の低下や密度のむらによる空気の流動性低下を解消でき、装置の軽量化も可能な空気清浄緑化装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明の空気清浄緑化装置は、植栽層と、この植栽層の裏側に位置する通気層と、この通気層に空気を送り込む送風手段とを備え、
前記植栽層は、
口部が植栽用開口部となるカップ状、詳しくは奥側が狭まる円すい台状とされて植栽基盤が充填されかつ前記植栽用開口部とは別の箇所に通気・通水用開口部を有する複数の栽培容器と、
これら複数の栽培容器を、前記植栽用開口部を前記通気層とは反対側に向けて挿脱可能に支持し、かつ前記通気層を通過した空気を前記栽培容器の前記通気・通水用開口部に通気可能でかつ外部に対して密封するフレームとを有することを特徴とする。
【0009】
この構成によると、各栽培容器に植えられた植物で緑化の効果が得られ、また前記送風手段により前記通気層に送られた空気は、各栽培容器の前記通気・通水用開口部から栽培容器内に入り、植栽基盤を通過することで浄化される。灌水は各栽培容器の前記通気・通水用開口部から栽培容器内に入り、植栽基盤に植えられた植物の根に与えられる。このように、緑化と空気の浄化との両方の機能が得られる。
【0010】
この場合に、複数の栽培容器をフレームに挿脱可能に支持する。そのため栽培容器をフレームから取り外した状態で栽培容器の植栽基盤に植栽したり植え替えることができ、また栽培容器ごと植物を替えることができ、植え替え等の作業性が良い。このため、植え替え時に植栽基盤の密度が低下したり、密度にむらが生じることが回避でき、再度フレームに設置して空気の浄化に用いるときに、浄化する空気の流動性が安定して得られる。フレームから取り外した栽培容器は、フレームへの取付姿勢に係わらず、上向きに置くことができ、栽培容器内の植物の養生を効果的に行える。
また、栽培容器に植物を植えることから、植栽基盤を浄化と植栽に必要な最小限の量まで削減することが可能であり、植栽基盤が減らせる分だけ装置全体を軽量化することも可能となる。植栽基盤を浄化植栽に必要な最小限の量に削減することで、植栽基盤の空気が通過する厚さを必要最小限に薄くできて、空気を送り込むための圧力を小さくでき、前記送風手段の必要な性能も低減される。
【0011】
記植栽層における、前記栽培容器の前記植栽用開口部が並ぶ面は、壁面状となる。
壁面緑化装置の場合、壁面に植物を植えることになるため、従来の緑化面の全面に渡り植栽基盤を設ける構成では、施工性が非常に悪く、前述の植物の植え替え時等における植栽基盤の密度低下や密度のむらの問題が大きい。しかしこの発明では、栽培容器が挿脱できる。そのため、施工性向上、植栽,植え替えに伴う植栽基盤密度の低下、密度むらの防止、およびこれによる空気の流動性低下の解消の各効果が、より一層効果的となる。
【0012】
記植栽層の前記フレーム内における前記栽培容器の周囲に、前記通気層の空気および灌水を前記栽培容器の前記通気・通水用開口部へ導く充填材として、通気性、通水性、および前記栽培容器を抜き差ししても形状が崩れない適度の形状維持性を持つ材質のスポンジからなる充填材が充填されている。
前記植栽層の前記フレーム内の部分は、非栽培部であり、空間として空けておいても良いが、通水性のある前記充填材を充填することで、例えば前記植栽層の上部に設けられたパイプ等の灌水手段から供給した灌水が、前記充填材があることで直接に落下せず、各栽培容器内の植栽基盤に案内される。前記充填材が通気性を持つことで、前記通気層の空気が前記栽培容器内に入ることを妨げず、前記充填材が形状維持性の性状を持つことで、前記栽培容器を抜き出したときに、抜き出し跡となる凹部が崩れず、その抜き出し跡に前記栽培容器を再度挿入することが容易に行える。
前記充填材は、植物は植えない部分であるため、材質を自由に選定でき、スポンジを用いることで、軽量化を図ることができる。
【0013】
記栽培容器の前記通気・通水用開口部前記栽培容器の周壁部における底部のみに設けられている。なお、ここでいう「底部」は、栽培容器の深さ方向の中央よりも底側の部分を意味する。
通気・通水用開口部が栽培容器の植栽用開口部の近くにあると、植栽基盤内を通過する空気の流れが短絡流れとなって、前記植栽基盤に空気の浄化に寄与しない部分が多く生じる。しかし、通気・通水用開口部が栽培容器の底部に位置することで、植栽基盤のより多くの部分が空気の浄化に寄与し、効果的に空気の浄化が行われる。また、栽培容器の底部に通気・通水用開口部が存在することで、植栽基盤への灌水も効果的に行なわれる。
前記通気・通水用開口部は、前記栽培容器の周面の底部に配置することがより好ましい。周面であると、底面に設けるよりも、通気・通水用開口部を多く設けることができて、その全体の面積を大きくできる。
【0014】
この発明において、前記フレームの前記通気層とは反対側の面に、前記各栽培容器を差し込む差込口を有する正面パネルを備え、前記差込口の周囲に、前記栽培容器との間の隙間を密封するシール材を設けても良い。
前記通気層に前記送風手段から送り込んだ空気は、さらに、前記植栽層における前記各栽培容器の間から栽培容器に送り込む。このとき、前記差込口と栽培容器との間に隙間が生じていると、空気が浄化されることなく外部に漏れるが、前記シール材を設けることで、漏れが生じず、栽培容器内に全て送り込まれる。
【0015】
この発明の空気清浄緑化装置用栽培容器は、口部が植栽用開口部となるカップ状とされて周面の底部に通気・通水用開口部を有し、かつ開口周縁に取付用の鍔部を有し、空気の浄化機能を持つ植栽基盤が内部に充填されるものである。
【0016】
この構成の空気清浄緑化装置用栽培容器によると、この発明の空気清浄緑化装置に使用されて前述の各効果を発揮する。この場合に、前記通気・通水用開口部が底部に位置することで栽培容器内の植栽基盤が無駄なく空気の浄化に利用される。前記通気・通水用開口部は、前記栽培容器の底面に設けられていても空気や灌水の採り入れが可能であるが、底面にあると、前記栽培容器を前記パネルから外し、立ち姿勢で植物の成育や養生を行うときに、容器を置いた面で閉ざされて灌水等が良好が行えない場合がある。しかし、前記通気・通水用開口部が周面にあると、立ち姿勢に栽培容器を置いても閉ざされることがなく、灌水が良好に行え、植物の育成や養生が行い易い。また、栽培容器の開口周縁の取付け用鍔部を利用してフレームへの栽培容器の取付けも容易に行なうことができる。
【発明の効果】
【0017】
この発明の空気清浄緑化装置は、植栽層と、この植栽層の裏側に位置する通気層と、この通気層に空気を送り込む送風手段とを備え、前記植栽層は、口部が植栽用開口部となり奥側が狭まる円すい台状とされて植栽基盤が充填されかつ前記植栽用開口部とは別の箇所に通気・通水用開口部を有する複数の栽培容器と、これら複数の栽培容器を、前記植栽用開口部を前記通気層とは反対側に向けて挿脱可能に支持し、かつ前記通気層を通過した空気を前記栽培容器の前記通気・通水用開口部に通気可能でかつ外部に対して密封するフレームとを有し、前記植栽層における、前記栽培容器の前記植栽用開口部が並ぶ面が壁面状となり、前記植栽層の前記フレーム内における前記栽培容器の周囲に、前記通気層の空気および灌水を前記栽培容器の前記通気・通水用開口部へ導く充填材として、通気性、通水性、および前記栽培容器を抜き差ししても形状が崩れない適度の形状維持性を持つ材質のスポンジからなる充填材が充填され、前記栽培容器の前記通気・通水用開口部は、前記栽培容器の周壁部における深さ方向の中央よりも底側部分のみに設けられているため、施工性が良く、植栽や植え替えに伴う植栽基盤の密度低下や密度むらによる空気の流動性低下を解消でき、装置の軽量化も可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】この発明の第1の実施形態にかかる空気清浄緑化装置の縦断面図である。
図2】同空気清浄緑化装置のフレームの正面図である。
図3】同空気清浄緑化装置の栽培容器の設置構造を、栽培容器を上向きとして示す拡大断面図である。
図4】同空気清浄緑化装置に植栽した状態の一部を示す斜視図である。
図5】この発明の他の実施形態にかかる空気清浄緑化装置における栽培容器の設置構造を示す説明図である。
図6】(A)〜(C)は、それぞれ、この発明のさらに他の実施形態にかかる空気清浄緑化装置における栽培容器の設置構造を示す斜視図、設置途中の断面図、および設置完了状態の断面である。
図7】従来例の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
この発明の第1の実施形態を図1ないし図4と共に説明する。この空気清浄緑化装置1は、図1に縦断面図で示すように、表側に植物25(図4)が植えられる植栽層2と、この植栽層2の裏側に位置する通気層3と、この通気層3に被浄化空気を送り込む送風手段4とを備え、また灌水手段12を備える。前記植栽層2は立ち姿勢であって壁状を成し、植栽層2の表側が緑化部分となる。
【0021】
植栽層2は、口部が植栽用開口部5aとなる複数のカップ状の栽培容器5と、これら複数の栽培容器5を、前記植栽用開口部5aを前記通気層3とは反対側に向けて挿脱可能に支持するフレーム6とを有する。植栽層2における前記栽培容器5内の部分は、植栽基盤7が充填されていて栽培部となり、フレーム6内の前記栽培容器5の周囲の部分は非栽培部であり、充填材10が充填されている。
【0022】
前記植栽基盤7は、植物の育成機能と、通過させせた空気の浄化機能とを持つ素材であればよく、例えば土壌が用いられる。土壌は、植物の育成機能に優れるだけでなく、空気の清浄機能に優れ、特に、微生物が生息していて、一般的なフィルタでは分解・低減できない臭気成分の浄化が前記微生物で行われるという利点がある。前記植栽基盤7には、土壌の他に、樹脂製のスポンジ状やフェルト状材、セラミック等を用いてもよい。また、土壌としては、自然土壌の他に、バーク堆肥等の有機系土壌改良材、或いはパーライト等の無機系土壌改良材等を用いてもよい
【0023】
前記栽培容器5は、奥側が狭まる円すい台状であり、その大径側の端面の植栽用開口部5aとは別の箇所、この例では周壁部における底部、つまり深さ方向の中央よりも底側の部分に、通気・通水用開口部5bが設けられる。 通気・通水用開口部5bは、例えば深さ方向に延びるスリット状とされて栽培容器5の円周方向の複数箇所に設けられている。通気・通水用開口部5bには、内部に充填した植栽基盤7が漏れない程度の網目のメッシュ材または通気・通水性を有する面材が張られている。
【0024】
フレーム6は、表面パネル6aと、その裏面側に前記表面パネル6aと平行に配置された裏面パネル6bとを有する薄箱状とされ、表面パネル6aと裏面パネル6bとの間はメッシュ材8で縦に仕切られている。メッシュ材8は、例えば、前記充填材10が零れない程度の網目を持つ金属製である。メッシュ材8と裏面パネル6bの間の空間が通気層3とされ、メッシュ材8と表面パネル6aとの間の部分が前記植栽層2とされる。
【0025】
図2にフレーム6の正面図を示す。フレーム6の正面、つまり前記表面パネル6aには、縦横に並べて前記各栽培容器5を差し込む複数の差込口9が設けられている。この実施形態では、栽培容器5の植栽用開口5aが並ぶ面は、壁面状とされている。
図4に、図2の前記各差込口9に各栽培容器5を差し込んで取付け、植栽基盤7に植物25を植栽した状態の一部を斜視図で示す。
【0026】
図1において、植栽層2のフレーム6内における栽培容器5の周囲の空間には、前述のように充填材10が充填されている。充填材10は、通気層3の空気および灌水を栽培容器5の通気・通水用開口部5bへ導くための部材である。充填材10は、通気性、通水性、および形状維持性の性状を持つ材質であり、スポンジを用いる。前記「形状維持性」は、前記栽培容器5を抜き差ししても形状が崩れない程度であればよい。
【0027】
フレーム6の下端部には、被浄化空気を導入する開口部11aおよび前記通気層3に連通する連通口11bを有する送風室11が設けられている。開口部11aは、この例ではフレーム6の緑化面となる正面に設けられている。開口部11aは、通気層3における他の面に設けても良く、また被浄化空気を導入するダクト(図示せず)を接続する開口であっても良い。送風室11には、内部の空気を通気層3に送り込む前記送風手段4が設けてられている。送風手段4は、この例ではファンからなり、送風室11の内部に設置されている。送風手段4は送風室11の外部や送風室11から離れた位置に設けても良い。
【0028】
フレ−ム6の上端部には、灌水用室13が設けられ、その内部に灌水手段12が設けられている。灌水手段12は、この例では、水道等の給水源(図示せず)に配管で接続されたパイプからなり、このパイプには長さ方向の複数箇所に吐出孔(図示せず)が設けられている。灌水用室13における植栽層2の上面に対応する部分は、開放面とされ、または充填材10が漏れないようにしたメッシュ(図示せず)等とで構成され、灌水手段12の前記吐出孔から吐出された水は、植栽層2の充填材10の隙間へ流入する。なお、灌水手段12は、前記植栽層2における前記非栽培部、つまり前記充填材10の充填部に配置されたパイプであっても良く、またフレ−ム6の前記灌水用室13の全体または一部に水溜部(図示せず)を設けた構成であっても良い。
【0029】
図3は、栽培容器5のフレーム6への取付構造の例を示す。この例では、栽培容器5はその開口周縁に取付用の鍔部5cを有し、この鍔部5cは栽培容器5を前記フレーム6の表面パネル6aの差込口9に差し込んだ状態で差込口9の周辺部に重なる。前記鍔部5cには複数のボルト挿通孔13が設けられ、フレーム6の前記表面パネル6aの差込口9の周辺部には前記ボルト挿通孔13に対応するねじ孔14が設けられる。これにより、鍔部5cの前記ボルト挿通孔13に挿通したボルト15を、表面パネル6aの前記ねじ孔14にねじ込むことで、栽培容器5をフレーム6の表面パネル6aに固定することができる。フレーム6における表面パネル6aの差込口9の周囲には、栽培容器5の鍔部5cとの間の隙間を密封するシール材16が配置される。シール材16は、ゴムまたは樹脂製の環状のガスケットからなる。なお、この例では、栽培容器5は、前述のように円すい台状の形状とされているが、詳しくは植栽用開口部5aの付近の深さ範囲の部分は円筒状部5dとされ、この円筒状部5dの外周に前記鍔部5cが設けられている。
【0030】
この構成の空気清浄緑化装置1によると、室内などの被浄化空気が送風手段4によって送風室11から通気層3に送り込まれ、植栽層2を通過してその前面に吐出される。植栽層2では、被浄化空気は、充填材10から、各栽培容器5の通気・通水用開口部5bに入り、栽培容器5内の植栽基盤7を通過して栽培容器5の栽培用開口部5a側、つまり植栽層2の前面に送り出される。この過程で、植栽基盤7により被浄化空気が浄化される。
【0031】
栽培容器5の植栽基盤7は、栽培容器5をフレーム6の差込口9に差し込む前に予め栽培容器5内に充填しておいて、そこで植物25(図4)を育苗できる。植物25の植え替えは、栽培容器5をこのフレーム6から外して任意の箇所で行える。そのため、この空気清浄緑化装置1の設置位置での植物25の植え込みや植え替えの手間が不要で施工性が良い。また、施工性が良いため、植栽や植え替えに伴う植栽基盤7である土壌の密度の低下や密度のむらが生じ難く、密度むら等による空気の流動性低下も解消できる。また、栽培基盤7は栽培容器5内に充填するため、空気浄化と植栽に必要な最低限の量まで削減でき、そのため装置の軽量化も可能となる。また、被浄化空気を送り込むための圧力を小さくでき、そのため送風手段4の必要性能を低減することもできる。通気層3は、この空気清浄緑化装置1のメンテナンスなどに用いる道具やその他の資材の収納空間としても利用できる。この場合、通気層3に開閉扉を設けても良い。
【0032】
植栽層2のフレーム6内における栽培容器5の周囲は、空間としても良いが、通気性、通水性、および形状維持性の性状を持つ材質の充填材10を充填しているため、灌水が充填材10の隙間を通って流れ、各栽培容器5の植栽基盤7に案内される。そのため、灌水性に優れる。また、充填材10は非栽培部であるため、通気性、通水性、および形状維持性の性状を持つ材質であれば良く、植物を育成する機能は不要であるため、材質選定の自由度が高く、スポンジ等の軽量な材質を選定して装置全体を軽量化することができる。充填材10は形状維持性を有するため、栽培容器5を抜き差しするときに形状が崩れず、栽培容器5の抜き差しの施工性が良い。
【0033】
前記栽培容器5は、通気・通水用開口部5bが容器底部に位置し、周面に位置する形状であるため、次の各利点が得られる。通気・通水用開口部5bが栽培容器5の植栽用開口部5aの近くにあると、植栽基盤7内を通過する空気の流れが短絡流れなって、植栽基盤7に空気の浄化に寄与しない部分が多く生じるが、栽培容器5の底部に通気・通水用開口部5bが存在することで、植栽基盤7のより多くの部分が空気の浄化に寄与し、効果的に空気の浄化が行われる。また、栽培容器5の底部に通気・通水用開口部5bが存在することで、植栽基盤7への灌水も効果的に行なわれる。
前記通気・通水用開口部5bは、前記栽培容器5の周面の底部に配置することがより好ましい。周面であると、底面に設けるよりも、複数設けられる通気・通水用開口部の全体の面積を大きく設けることができる。
【0034】
また、フレーム6の正面パネル6aの差込口9の周囲には栽培容器5との間の隙間を密封するシール材16を設けたため、空気の漏れが生じない。すなわち、通気層3に送り込んだ空気は、さらに植栽層2における各栽培容器5の間の充填材10から栽培容器5に送り込む。このとき、差込口9と栽培容器5との間に隙間が生じていると、空気が浄化されることなく外部に漏れるが、前記シール材16を設けることで、漏れが生じず、栽培容器内に全て送り込まれる。そのため浄化効率の低下が防止される。
【0035】
図5は、この発明の他の実施形態の部分断面図を示す。この実施形態では、前記フレーム6の表面パネル6aの差込口9に差し込んだ栽培容器5を固定するのに、先の実施形態におけるボルト15に替えてリング状の固定用蓋17を用いている。この例の場合も、フレーム6の表面パネル6aの差込口9に栽培容器5を差し込んだ状態で、栽培容器5の植栽用開口部5aの外周の鍔部5cは表面パネル6aにおける差込口9の周辺部に重なる。表面パネル6aには、栽培容器5の前記鍔部5cの外側に位置して前記差込口9と同心の周壁18が設けられ、この周壁18の外周面には雄ねじ18aが形成されている。前記固定用蓋17は、栽培容器5の鍔部5cに重なる外径の口部17aとこの口部17aに続き口部17aよりも外径の大きい拡径部17bとでなり、拡径部17bの内周面には表面パネル6aに設けられた前記周壁18の外周面の雄ねじ18aに螺合する雌ねじ17cが形成されている。これにより、同図に鎖線で示すように、固定用蓋17をその拡径部17bの雌ねじ17cで表面パネル6aの周壁18の雄ねじ18aに螺合させることで、栽培容器5の鍔部5cを固定用蓋17の口部17aの下端で表面パネル6aに押しつけることができ、栽培容器5を固定することができる。なお、周壁18の外周面の雄ねじ18aは、円周方向の一部ずつに分かれた部分ねじであっても良い。
【0036】
この実施形態のようにフレーム6に雄ねじ18aを設けて栽培容器5を固定する形式の場合、栽培容器5を設置する際に自由な向きに固定することができる。また、複数のねじ止めを行う場合に比べて施工性に優れる。栽培容器5を設置する向きの自由度が高いと、植物25の育成の状態が偏っている場合などに、日当たり状態などに応じて向きを変えることができる。
栽培容器5の鍔部5cとフレーム6の表面パネル6aとの間にシール材16が配置されることは、先の実施形態の場合と同様である。また、ここでは、空気浄化緑化装置1の全体や、フレーム6などその他の構成は図示しないが、これらも先の実施形態の場合と同様である。
【0037】
図6は、この発明のさらに他の実施形態の部分斜視図(図6(A))および部分縦断面図(図6(B))を示す。この実施形態では、前記フレーム6の表面パネル6aの差込口9に差し込んだ栽培容器5を固定するのに、図1図4に示した実施形態の場合のボルト15に替えてU字状の留め具19を用いている。この場合も、フレーム6の表面パネル6aの差込口9に栽培容器5を差し込んだ状態で、栽培容器5の植栽用開口部5aの外周の鍔部5cは、図6(B)のように表面パネル6aにおける差込口9の周辺部に重なる。表面パネル6aには、図6(A)のように正面形状が逆U字状で断面がL字状のストッパー20が設けられる。
【0038】
前記ストッパー20は、表面パネル6aと平行な二股部20aと、栽培容器5の前記鍔部5cの外側に位置して表面パネル6aから立ち上がる縦板部20bとでなり、二股部20aの内側の基端部は表面パネル6aの差込口9と略重なる円形で両側部は栽培容器5の鍔部5cの外径に略等しい幅に形成されている。栽培容器5を差込口9に差し込んだ状態で、栽培容器5の鍔部5cは、前記ストッパー20の二股部20aの内側の基端部よりも外側の位置となる縦板部20bの内側で受け止められる状態に納まる。したがって、表面パネル6aの差込口9に栽培容器5を差し込むときには、図6(A)のように栽培容器5の植栽用開口部5aがストッパー20の二股部20aの基端部から離れるような傾斜姿勢で差し込むことで、栽培容器5の鍔部5cが二股部20aの基端部に引っかかるのを避ける。
【0039】
U字状の留め具19は、円弧部の内径が栽培容器5の植栽用開口部5aの外径より若干大きく、両端部間の寸法は前記ストッパー20の二股部20aの両端部間の寸法に略等しくされていて、その厚みはストッパー20の二股部20aと栽培容器5の鍔部5cとの間の隙間にがたつき無く差し込み可能に設定されている。これにより、表面パネル6aの差込孔9に栽培容器5を差し込んだ状態で、栽培容器5の鍔部5cとストッパー20の二股部20aとの間の隙間に前記留め具19を差し込むことで、栽培容器5の鍔部5cを表面パネル6aに押しつけることができ、栽培容器5をフレーム6の表面パネル6aに固定することができる。このように留め具19を用いて栽培容器5を止めつける構成の場合、栽培容器5を設置する向きの自由度が高く、施工も、工具を使わずに楽に施工できるという利点がある。
栽培容器5の鍔部5cとフレーム6の表面パネル6aとの間にシール材16が配置されることは、先の実施形態の場合と同様である。また、ここでも、空気浄化緑化装置1の全体や、フレーム6などその他の構成は図示しないが、これらも図1図4に示した先の実施形態の場合と同様である。
【符号の説明】
【0040】
1…空気清浄緑化装置
2…植栽層
3…通気層
4…送風手段
5…栽培容器
5a…植栽用開口部
5b…通気・通水用開口部
5c…鍔部
6…フレーム
7…植栽基盤
9…差込口
10…充填材
16…シール材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7