特許第6661289号(P6661289)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6661289有機エレクトロルミネッセンス素子用材料及びそれを用いた有機エレクトロルミネッセンス素子
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6661289
(24)【登録日】2020年2月14日
(45)【発行日】2020年3月11日
(54)【発明の名称】有機エレクトロルミネッセンス素子用材料及びそれを用いた有機エレクトロルミネッセンス素子
(51)【国際特許分類】
   H01L 51/50 20060101AFI20200227BHJP
   C09K 11/06 20060101ALI20200227BHJP
   C07C 211/44 20060101ALI20200227BHJP
   C07D 307/91 20060101ALI20200227BHJP
   C07D 209/88 20060101ALI20200227BHJP
【FI】
   H05B33/22 D
   C09K11/06 690
   C07C211/44CSP
   C07D307/91
   C07D209/88
   H05B33/14 A
【請求項の数】3
【全頁数】48
(21)【出願番号】特願2015-136619(P2015-136619)
(22)【出願日】2015年7月8日
(65)【公開番号】特開2017-22196(P2017-22196A)
(43)【公開日】2017年1月26日
【審査請求日】2018年6月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】512187343
【氏名又は名称】三星ディスプレイ株式會社
【氏名又は名称原語表記】Samsung Display Co.,Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】110002619
【氏名又は名称】特許業務法人PORT
(72)【発明者】
【氏名】金 秀蘭
(72)【発明者】
【氏名】糸井 裕亮
(72)【発明者】
【氏名】渕脇 純太
(72)【発明者】
【氏名】坂本 亜沙美
(72)【発明者】
【氏名】三宅 秀夫
(72)【発明者】
【氏名】今田 一郎
【審査官】 井亀 諭
(56)【参考文献】
【文献】 韓国登録特許第10−1530049(KR,B1)
【文献】 韓国登録特許第10−1493482(KR,B1)
【文献】 特開2013−065867(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/118846(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/090149(WO,A1)
【文献】 特開2014−110315(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/114017(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 51/50
C07C 211/44
C07D 209/88
C07D 307/91
C09K 11/06
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の構造式で表される有機エレクトロルミネッセンス素子用材料。
【化1】
【請求項2】
請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子用材料を少なくとも一層に含む有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項3】
請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子用材料を発光
層と陽極との間に配置された積層膜のうちの少なくも一層に含む有機エレクトロルミネッセンス素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は有機エレクトロルミネッセンス素子用材料及びそれを用いた有機エレクトロルミネッセンス素子に関する。特に、高発光効率、長寿命の有機エレクトロルミネッセンス素子用の正孔輸送材料及びそれを用いた有機エレクトロルミネッセンス素子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、画像表示装置として、有機エレクトロルミネッセンス表示装置(Organic Electroluminescence Display:有機EL表示装置)の開発が盛んになってきている。有機EL表示装置は、液晶表示装置等とは異なり、陽極及び陰極から注入された正孔及び電子を発光層において再結合させることにより、発光層における有機化合物を含む発光材料を発光させて表示を実現するいわゆる自発光型の表示装置である。
【0003】
有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)としては、例えば、陽極、陽極上に配置された正孔輸送層、正孔輸送層上に配置された発光層、発光層上に配置された電子輸送層及び電子輸送層上に配置された陰極から構成された有機エレクトロルミネッセンス素子が知られている。陽極からは正孔が注入され、注入された正孔は正孔輸送層を移動して発光層に注入される。一方、陰極からは電子が注入され、注入された電子は電子輸送層を移動して発光層に注入される。発光層に注入された正孔と電子とが再結合することにより、発光層内で励起子が生成される。有機エレクトロルミネッセンス素子は、その励起子の輻射失活によって発生する光を利用して発光する。尚、有機エレクトロルミネッセンス素子は、以上に述べた構成に限定されず、種々の変更が可能である。
【0004】
有機エレクトロルミネッセンス素子を表示装置に応用するにあたり、有機エレクトロルミネッセンス素子の高効率化が求められている。特に、青色発光領域では、緑色発光領域及び赤色発光領域に比べて、有機エレクトロルミネッセンス素子の駆動電圧が高く、発光効率が十分なものとは言い難い。有機エレクトロルミネッセンス素子の高効率化を実現するために、正孔輸送層の定常化、安定化、耐久性の向上などが検討されている。
【0005】
正孔輸送層に用いられる正孔輸送材料としては、芳香族アミン系化合物等の様々な化合物が知られているが、発光効率及び素子寿命に課題があった。有機エレクトロルミネッセンス素子の長寿命化に有利な材料として、例えば、特許文献1及び特許文献2には、アリール基又はヘテロアリール基が置換されたアミン誘導体が提案されている。しかしながら、これらの材料を用いた有機エレクトロルミネッセンス素子も充分な発光効率及び寿命を有しているとは言い難い。そのため、現在では一層、発光効率が向上された有機エレクトロルミネッセンス素子が望まれている。特に、赤色発光領域および緑色発光領域に比べて、青色発光領域では、有機EL素子の発光効率が低くいため、発光効率の向上と長寿命化が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−267255号公報
【特許文献2】特開2009−029726号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上述の問題を解決するものであって、高発光効率の有機エレクトロルミネッセンス素子用材料及びそれを用いた有機エレクトロルミネッセンス素子を提供することを目的とする。
【0008】
特に、本発明は、緑色〜青色発光領域において、発光層と陽極との間に配置される積層膜のうちの少なくとも一つの膜に用いる高発光効率及び長寿命の有機エレクトロルミネッセンス素子用材料及びそれを用いた有機エレクトロルミネッセンス素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一実施形態によると、以下の一般式(1)で表される有機エレクトロルミネッセンス素子用材料が提供される。
【化1】
[一般式(1)中、HArは置換若しくは無置換の環形成炭素数6以上30以下のヘテロアリール基であり、Ar1及びAr2は置換若しくは無置換の炭素数1以上30以下のアルキル基、置換若しくは無置換の炭素数6以上30以下のアリール基、置換若しくは無置換の炭素数5以上30以下のヘテロアリール基、シリル基、ハロゲン原子、重水素原子又は水素原子であり、L1及びL2は単結合、又は環形成炭素数6以上30以下の無置換のアリーレン基であり、aは0以上4以下の整数であり、bは0以上5以下の整数であり、c及びdは0以上7以下の整数であるが、a+b≧1であり、n及びmは1又は2である。]
【0010】
本発明の一実施形態に係る有機エレクトロルミネッセンス素子用材料は、アミンにヘテロアリール基が導入されることにより、有機エレクトロルミネッセンス素子の発光効率及び寿命を向上させることができる。
【0011】
本発明の一実施形態によると、前記HArが以下の一般式(2)で表される有機エレクトロルミネッセンス素子用材料が提供される。
【化2】

[一般式(2)中、XはCR1R2、NAr5、O又はSであり、Ar3〜Ar5は置換若しくは無置換の炭素数1以上30以下のアルキル基、置換若しくは無置換の炭素数6以上30以下のアリール基、置換若しくは無置換の炭素数5以上30以下のヘテロアリール基、シリル基、ハロゲン原子、重水素原子又は水素原子であり、Ar5は置換若しくは無置換の炭素数1以上30以下のアルキル基、置換若しくは無置換の炭素数6以上30以下のアリール基、置換若しくは無置換の炭素数5以上30以下のヘテロアリール基であり、R1〜R2は置換若しくは無置換の炭素数6以上30以下のアリール基、置換若しくは無置換の炭素数1以上30以下のアルキル基、シリル基、ハロゲン原子、重水素原子又は水素原子であり、c及びdは0以上3以下の整数である。]
【0012】
本発明の一実施形態に係る有機エレクトロルミネッセンス素子用材料は、アミンにヘテロアリール基が導入されることにより、有機エレクトロルミネッセンス素子の発光効率及び寿命を向上させることができる。
【0013】
前記Ar1及びAr2が水素であってもよい。
【0014】
本発明の一実施形態に係る有機エレクトロルミネッセンス素子用材料は、アミンにヘテロアリール基が導入されることにより、有機エレクトロルミネッセンス素子の発光効率及び寿命を向上させることができる。
【0015】
前記Ar3及びAr4が水素であり、Ar5がフェニル基又はナフチル基であってもよい。
【0016】
本発明の一実施形態に係る有機エレクトロルミネッセンス素子用材料は、アミンにヘテロアリール基が導入されることにより、有機エレクトロルミネッセンス素子の発光効率及び寿命を向上させることができる。
【0017】
本発明の一実施形態に係る有機エレクトロルミネッセンス素子は、前記有機エレクトロルミネッセンス素子用材料を少なくとも一層に含むことにより、高い発光効率及び長寿命化を実現することができる。
【0018】
本発明の一実施形態によると、前記有機エレクトロルミネッセンス素子用材料を発光層と陽極との間に配置された積層膜のうちの少なくも一層に含む有機エレクトロルミネッセンス素子が提供される。
【0019】
本発明の一実施形態に係る有機エレクトロルミネッセンス素子は、前記有機エレクトロルミネッセンス素子用材料を発光層と陽極との間に配置された積層膜のうちの少なくも一層に含むことにより、高い発光効率及び長寿命化を実現することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によると、低電圧駆動、高発光効率及び長寿命化を実現する有機エレクトロルミネッセンス素子用材料及びそれを用いた有機エレクトロルミネッセンス素子を提供することができる。本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子用材料は、ヘテロアリール基を有しているため、アミン周りの共役が確保され、ラジカルに対する安定性が向上し、キャリア耐性が高く長寿命化を実現することができる。また、ヘテロアリール基の高い正孔輸送性のため高効率化を実現することができる。また、ヘテロアリール基としてジベンゾヘテロールやジベンゾチオフェン等の平面性が高い分子が導入されることによって分子全体の平面性が高く、パッキングしやすいため、きわめて低い駆動電圧を実現することができる。これらの効果は、特に、青色発光領域において顕著である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の一実施形態に係る有機エレクトロルミネッセンス素子100を示す概略図である。
図2】本発明の一実施形態に係る有機エレクトロルミネッセンス素子200を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
アミン部位に平面性の高いヘテロアリール基を導入することによって、キャリア耐性が高くなるため、有機エレクトロルミネッセンス素子の低電圧駆動を達成することができることを見出した。また、アミン部位に高い正孔輸送性を有するヘテロアリール基を導入することによって、高効率化を達成することができることを見出した。
【0023】
以下、図面を参照して本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子用材料及びそれを用いた有機エレクトロルミネッセンス素子について説明する。但し、本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子用材料及びそれを用いた有機エレクトロルミネッセンス素子は多くの異なる態様で実施することが可能であり、以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、本実施の形態で参照する図面において、同一部分又は同様な機能を有する部分には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0024】
本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子用材料は、以下の一般式(1)で表される、アミン化合物である。
【化3】
【0025】
[一般式(1)中、HArは置換若しくは無置換の環形成炭素数6以上30以下のヘテロアリール基であり、Ar1及びAr2は置換若しくは無置換の炭素数1以上30以下のアルキル基、置換若しくは無置換の炭素数6以上30以下のアリール基、置換若しくは無置換の炭素数5以上30以下のヘテロアリール基、シリル基、ハロゲン原子、重水素原子又は水素原子であり、L1及びL2は単結合、又は環形成炭素数6以上30以下の無置換のアリーレン基であり、aは0以上4以下の整数であり、bは0以上5以下の整数であり、c及びdは0以上7以下の整数であるが、a+b≧1であり、n及びmは1又は2である。]
【0026】
一般式(1)におけるHArに用いる環形成炭素数6以上30以下のヘテロアリール基としては、ピリジル基、キノリル基、イソキノリル基、ベンゾフリル基、ベンゾチオフェニル基、ベンゾチエニル基、インドリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、キノキサリル基、ベンゾイミダゾリル基、ジベンゾフリル基、ジベンゾチエニル基、カルバゾリル基等が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0027】
一般式(1)におけるAr1及びAr2に用いる炭素数1以上30以下のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、ヒドロキシメチル基、1−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシイソブチル基、1,2−ジヒドロキシエチル基、1,3−ジヒドロキシイソプロピル基、2,3−ジヒドロキシ−t−ブチル基、1,2,3−トリヒドロキシプロピル基、クロロメチル基、1−クロロエチル基、2−クロロエチル基、2−クロロイソブチル基、1,2−ジクロロエチル基、1,3−ジクロロイソプロピル基、2,3−ジクロロ−t−ブチル基、1,2,3−トリクロロプロピル基、ブロモメチル基、1−ブロモエチル基、2−ブロモエチル基、2−ブロモイソブチル基、1,2−ジブロモエチル基、1,3−ジブロモイソプロピル基、2,3−ジブロモ−t−ブチル基、1,2,3−トリブロモプロピル基、ヨードメチル基、1−ヨードエチル基、2−ヨードエチル基、2−ヨードイソブチル基、1,2−ジヨードエチル基、1,3−ジヨードイソプロピル基、2,3−ジヨード−t−ブチル基、1,2,3−トリヨードプロピル基、シアノメチル基、1−シアノエチル基、2−シアノエチル基、2−シアノイソブチル基、1,2−ジシアノエチル基、1,3−ジシアノイソプロピル基、2,3−ジシアノ−t−ブチル基、1,2,3−トリシアノプロピル基、ニトロメチル基、1−ニトロエチル基、2−ニトロエチル基、2−ニトロイソブチル基、1,2−ジニトロエチル基、1,3−ジニトロイソプロピル基、2,3−ジニトロ−t−ブチル基、1,2,3−トリニトロプロピル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、4−メチルシクロヘキシル基、1−アダマンチル基、2−アダマンチル基、1−ノルボルニル基、2−ノルボルニル基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0028】
一般式(1)におけるAr1及びAr2に用いる環形成炭素数6以上30以下のアリール基としては、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントリル基、ビフェニル基、ターフェニル基、クォーターフェニル基、フルオレニル基、トリフェニレン基、ビフェニレン基、ピレニル基、ベンゾフルオランテニル基、クリセニル基、フェニルナフチル基、ナフチルフェニル基等であり、フェニル基、ナフチル基、及びビフェニル基が特に好ましい。尚、Ar1〜Ar5に用いる環形成炭素数6以上30以下のアリール基は、これらに限定されるものではない。
【0029】
また、Ar1及びAr2に用いる環形成炭素数5以上30以下のヘテロアリール基としては、ピリジル基、キノリル基、イソキノリル基、ベンゾフリル基、ベンゾチエニル基、インドリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、キノキサリル基、ベンゾイミダゾリル基、ジベンゾフリル基、ジベンゾチエニル基、カルバゾリル基等が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0030】
また、Ar1及びAr2に用いるシリル基としては、トリアルキルシリル基、トリアリールシリル基、モノアルキルジアリールシリル基、ジアルキルモノアリールシリル基であってもよく、例えば、トリメチルシリル基、トリフェニルシリル基等が挙げられる。
【0031】
また、Ar1、Ar2の置換基としては、炭素数1以上6以下のアルキル基、アルコキシ基又はフェニル基等が挙げられる。炭素数1以上6以下のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、c−プロピル基、c−ブチル基、c−ペンチル基、c−ヘキシル基などが挙げられる。炭素数1〜6のアルコキシ基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、s−ブトキシ基、t−ブトキシ基、n−ペントキシ基、n−ヘキソキシ基、c−プロポキシ基、c−ブトキシ基、c−ペントキシ基、c−ヘキソキシ基などが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0032】
一般式(1)におけるL1及びL2に用いる環形成炭素数6以上30以下のアリーレン基としては、フェニレン基、ビフェニレン基、ターフェニレン基、ナフチレン基、アントラセニレン基、フルオレニレン基、トリフェニレン基、クォーターフェニレン基、キンクフェニレン基、等が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。たとえば、一般式(1)におけるL1〜L2に用いる環形成炭素数6以上30以下のアリーレン基としては、環形成炭素数6以上12以下のアリーレン基が好ましく、フェニレン基、ビフェニレン基、ナフチレン基などが挙げられる。
【0033】
一般式(2)におけるR1〜R2置換若しくは無置換の炭素数1以上30以下のヘテロアリール基、アルキル基、シリル基、ハロゲン原子、重水素原子又は水素原子である。、
【0034】
また、Ar1〜Ar5に用いるハロゲン原子としては、フッ素原子(F)、塩素原子(Cl)、臭素原子(Br)であってもよい。
【0035】
一般式(1)におけるR1〜R2及びAr1〜Ar5が置換基を有する場合、該置換基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ペンチル基、ヘキシル基のようなアルキル基や、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基のようなアリール基が挙げられる。また、Ar1〜Ar5は、置換基をそれぞれ複数有していてもよい。また、該置換基同士は互いに連結し、飽和又は不飽和環を形成してもよい。
【0036】
以上に示した一般式(1)で表わされる本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子用材料であるアミン化合物は、ヘテロアリール基を有しているため、アミン周りの共役が確保され、ラジカルに対する安定性が向上し、キャリア耐性が高く長寿命化を実現することができる。
【0037】
また、以上に示した一般式(1)で表わされる本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子用材料であるアミン化合物は、ヘテロアリール基の高い正孔輸送性のため高効率化を実現することができる。
【0038】
また、以上に示した一般式(1)で表わされる本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子用材料であるアミン化合物は、ヘテロアリール基としてジベンゾヘテロールやジベンゾチオフェン等の平面性が高い分子が導入されることによって分子全体の平面性が高く、パッキングしやすいため、極めて低い駆動電圧を実現することができる。
【0039】
本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子用材料は、一例として、以下の構造式により示された物質である。
【0040】
【化4】
【0041】
【化5】

【0042】
【化6】
【0043】
【化7】

【0044】
【化8】
【0045】
【化9】
【0046】
【化10】
【0047】
【化11】
【0048】
【化12】
【0049】
【化13】
【0050】
【化14】
【0051】
【化15】
【0052】
【化16】
【0053】
【化17】
【0054】
【化18】
【0055】
【化19】

【0056】
【化20】
【0057】
【化21】
【0058】
【化22】
【0059】
【化23】
【0060】
本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子用材料は、有機エレクトロルミネッセンス素子を構成する複数の有機層のうち、少なくとも一層に含まれてもよい。特に、有機エレクトロルミネッセンス素子の発光層と陽極との間に配置された積層膜のうちの少なくとも一層に有意に含まれてもよい。
【0061】
上述したように、本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子用材料は、ヘテロアリール基を有しているため、アミン周りの共役が確保され、ラジカルに対する安定性が向上し、キャリア耐性が高く長寿命化を実現することができる。また、ヘテロアリール基の高い正孔輸送性のため高効率化を実現することができる。また、ヘテロアリール基としてジベンゾヘテロールやジベンゾチオフェン等の平面性が高い分子が導入されることによって分子全体の平面性が高く、パッキングしやすいため、極めて低い駆動電圧を実現することができる。
【0062】
(有機エレクトロルミネッセンス素子)
本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子用材料を用いた有機エレクトロルミネッセンス素子について説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る有機エレクトロルミネッセンス素子100を示す概略図である。有機エレクトロルミネッセンス素子100は、例えば、基板102、陽極104、正孔注入層106、正孔輸送層108、発光層110、電子輸送層112、電子注入層114及び陰極116を備える。一実施形態において、本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子用材料は、発光層と陽極との間に配置された積層膜のうちの少なくとも一層に用いることができる。
【0063】
ここでは一例として、本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子用材料を正孔輸送層108に用いる場合について説明する。
【0064】
基板102は、例えば、透明ガラス基板や、シリコン等から成る半導体基板樹脂等のフレキシブルな基板であってもよい。
【0065】
陽極(Anode)104は、基板102上に配置され、酸化インジウムスズ(In2O3-SnO2:ITO)やインジウム亜鉛酸化物(In2O3-ZnO)等を用いて形成することができる。
【0066】
正孔注入層(HIL)106は、陽極104上に10nm以上150nm以下の厚さで公知の材料を用いて形成することができる。例えば、トリフェニルアミン含有ポリエーテルケトン(TPAPEK)、4−イソプロピル−4’−メチルジフェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート(PPBI)、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス−[4−(フェニル−m−トリル−アミノ)−フェニル]−ビフェニル−4,4’−ジアミン(DNTPD)、銅フタロシアニン等のフタロシアニン化合物、4,4’,4”−トリス(3−メチルフェニルフェニルアミノ)トリフェニルアミン(m-MTDATA)、N,N’−ジ(1−ナフチル)−N,N’−ジフェニルベンジジン(NPB)、4,4’,4”−トリス{N
,Nジフェニルアミノ}トリフェニルアミン(TDATA)、4,4’,4”−トリス(N,
N−2−ナフチルフェニルアミノ)トリフェニルアミン(2-TNATA)、ポリアニリン/ドデシルベンゼンスルホン酸(PANI/DBSA)、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(4−スチレンスルホネート)(PEDOT/PSS)、ポリアニリン/カンファースルホン酸(PANI/CSA)、又は、ポリアニリン/ポリ(4−スチレンスルホネート)(PANI/PSS)等を含んでもよい。
【0067】
正孔輸送層(HTL)108は、正孔注入層106上に、本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子用材料を用いて3nm以上100nm以下の厚さで形成される。本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子用材料を含む正孔輸送層108は、例えば、真空蒸着により形成されてもよい。
【0068】
発光層(EL)110は、正孔輸送層108上に、公知のホスト材料を用いて厚さ10nm以上60nm以下で形成される。発光層110に用いられる公知のホスト材料として、例えば、縮合多環芳香族の誘導体を含有することが好ましく、アントラセン誘導体、ピレン誘導体、フルオラレンテン誘導体、クリセン誘導体、ベンゾアントラセン誘導体及びトリフェニレン誘導体から選択されることが好ましい。特に、発光層110は、アントラセン誘導体又はピレン誘導体を含有することが好ましい。発光層110に用いるアントラセン誘導体としては、以下の一般式(3)で示される化合物が挙げられる。
【0069】
【化24】
【0070】
式(3)中、R11〜R20は置換若しくは無置換の環形成炭素数6以上30以下のアリール基、置換若しくは無置換の環形成炭素数1以上30以下のヘテロアリール基、炭素数1以上15以下のアルキル基、シリル基、ハロゲン原子、水素原子あるいは重水素原子である。また、g及びhは0以上5以下の整数である。なお、隣接した複数のR11〜R20は結合し、飽和若しくは不飽和の環を形成してもよい。
【0071】
R11〜R20に用いる置換若しくは無置換の環形成炭素数1以上30以下のヘテロアリール基としては、ベンゾチアゾリル基、チオフェニル基、チエノチオフェニル基、チエノチエノチオフェニル基、ベンゾチオフェニル基、ベンゾフリル基、ジベンゾチオフェニル基、ジベンゾフリル基、N−アリールカルバゾリル基、N−ヘテロアリールカルバゾリル基、N−アルキルカルバゾリル基、フェノキサジル基、フェノチアジル基、ピリジル基、ピリミジル基、トリアジル基、キノリニル基、キノキサリル基等を例示することができるが、これらに限定されるものではない。
【0072】
R11〜R20に用いる置換若しくは無置換の環形成炭素数1以上30以下のヘテロアリール基としては、ベンゾチアゾリル基、チオフェニル基、チエノチオフェニル基、チエノチエノチオフェニル基、ベンゾチオフェニル基、ベンゾフリル基、ジベンゾチオフェニル基、ジベンゾフリル基、N−アリールカルバゾリル基、N−ヘテロアリールカルバゾリル基、N−アルキルカルバゾリル基、フェノキサジル基、フェノチアジル基、ピリジル基、ピリミジル基、トリアジル基、キノリニル基、キノキサリル基等を例示することができるが、これらに限定されるものではない。
【0073】
また、R11〜R20に用いる炭素数1以上15以下のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、ヒドロキシメチル基、1−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシイソブチル基、1,2−ジヒドロキシエチル基、1,3−ジヒドロキシイソプロピル基、2,3−ジヒドロキシ−t−ブチル基、1,2,3−トリヒドロキシプロピル基、クロロメチル基、1−クロロエチル基、2−クロロエチル基、2−クロロイソブチル基、1,2−ジクロロエチル基、1,3−ジクロロイソプロピル基、2,3−ジクロロ−t−ブチル基、1,2,3−トリクロロプロピル基、ブロモメチル基、1−ブロモエチル基、2−ブロモエチル基、2−ブロモイソブチル基、1,2−ジブロモエチル基、1,3−ジブロモイソプロピル基、2,3−ジブロモ−t−ブチル基、1,2,3−トリブロモプロピル基、ヨードメチル基、1−ヨードエチル基、2−ヨードエチル基、2−ヨードイソブチル基、1,2−ジヨードエチル基、1,3−ジヨードイソプロピル基、2,3−ジヨード−t−ブチル基、1,2,3−トリヨードプロピル基、アミノメチル基、1−アミノエチル基、2−アミノエチル基、2−アミノイソブチル基、1,2−ジアミノエチル基、1,3−ジアミノイソプロピル基、2,3−ジアミノ−t−ブチル基、1,2,3−トリアミノプロピル基、シアノメチル基、1−シアノエチル基、2−シアノエチル基、2−シアノイソブチル基、1,2−ジシアノエチル基、1,3−ジシアノイソプロピル基、2,3−ジシアノ−t−ブチル基、1,2,3−トリシアノプロピル基、ニトロメチル基、1−ニトロエチル基、2−ニトロエチル基、2−ニトロイソブチル基、1,2−ジニトロエチル基、1,3−ジニトロイソプロピル基、2,3−ジニトロ−t−ブチル基、1,2,3−トリニトロプロピル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、4−メチルシクロヘキシル基、1−アダマンチル基、2−アダマンチル基、1−ノルボルニル基、2−ノルボルニル基等が挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0074】
本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子の発光層110に用いるアントラセン誘導体は、一例として、以下の構造式により示された物質である。
【0075】
【化25】
【0076】
【化26】
【0077】
発光層110はドーパント材料として、スチリル誘導体(例えば、1,4-bis[2-(3-N-ethylcarbazoryl)vinyl]benzene(BCzVB)、4-(di-p-tolylamino)-4’-[(di-p-tolylamino)styryl]stilbene(DPAVB)、N-(4-((E)-2-(6-((E)-4-(diphenylamino)styryl)naphthalene-2-yl)vinyl)phenyl-N-phenylbenzenamine(N-BDAVBi))、ペリレン及びその誘導体(例えば、2,5,8,11-Tetra-t-butylperylene(TBP)、ピレン及びその誘導体(例えば、1,1-dipyrene、1,4-dipyrenylbenzene、1,4-Bis(N,N-Diphenylamino)pyrene)等のドーパントを含んでもよいが、これらに限定されるわけではない。
【0078】
電子輸送層(ETL)112は、発光層110上に15nm以上50nm以下の厚さで、例えば、Tris(8-hydroxyquinolinato)aluminium(Alq3)や含窒素芳香環を有する材料(例えば、1,3,5-tri[(3-pyridyl)-phen-3-yl]benzeneといったピリジン環を含む材料や、2,4,6-tris(3’-(pyridine-3-yl)biphenyl-3-yl)1,3,5-triazineといったトリアジン環を含む材料、2-(4-N-phenylbenzoimidazolyl-1-ylphenyl)-9,10-dinaphthylanthraceneといったイミダゾール誘導体を含む材料)を含む材料により形成される。
【0079】
電子注入層(EIL)114は、電子輸送層112上に0.3nm以上9nm以下の厚さで、例えば、フッ化リチウム(LiF)、リチウム−8−キノリナート(Liq)等を含む材料により形成される。
【0080】
陰極(Cathode)116は、電子注入層114上に配置され、アルミニウム(Al)や銀(Ag)、リチウム(Li)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)等の金属、これらの混合物、及び酸化インジウムスズ(ITO)及びインジウム亜鉛酸化物(In2O3-ZnO)等の透明材料により形成される。
【0081】
以上に述べた本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子を構成する各電極及び各層は、真空蒸着、スパッタ、各種塗布など材料に応じた適切な成膜方法を選択することにより、形成することができる。
【0082】
本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子100においては、上述した本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子用材料を用いることにより、有機エレクトロルミネッセンス素子の高効率化及び長寿命化を実現可能な正孔輸送層を形成することができる。
【0083】
また、本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子100において、上述した本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子用材料は正孔注入層の材料として用いられてもよい。上述したように、本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子用材料は、有機エレクトロルミネッセンス素子を構成する複数の有機層のうち、少なくとも一層に含まれることにより、有機エレクトロルミネッセンス素子の高効率化及び長寿命化を実現することができる。
【0084】
尚、本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子用材料は、TFTを用いたアクティブマトリクスの有機エレクトロルミネッセンス発光装置にも適用することができる。
【0085】
(製造方法)
本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子用材料は、例えば、以下のように合成することができる。
【0086】
化合物21の合成方法
【化27】
【0087】
(化合物Aの合成)
Ar雰囲気下、500mLの三つ口フラスコに、1-(4'-chloro-[1,1'-biphenyl]-3-yl)naphthaleneを10.05g(31.92mmol)と4-(naphthalen-1-yl)anilineを7.0g(31.92mmol)、Pd2(dba)3・CHCl3を2.313g(2.235mmol)、(tBu)3P (1.50M) を3.352ml(6.704mmol)、NaOtBuを9.203g(95.768mmol)加えて、200ml Toluene の混合溶媒中で4時間加熱還流攪拌した。空冷後、水を加えて有機層を分取し溶媒留去した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(CH2Cl2とHexaneの混合溶媒を使用)で精製後、Toluene/Hexane混合溶媒で再結晶を行い、白色固体の化合物Aを12.4g(収率78%)得た。FAB−MS測定により測定された化合物Aの分子量は、497であった。
【0088】
(化合物21の合成)
Ar雰囲気下、200mLの三つ口フラスコに、化合物Aを3.00g(6.03mmol)と3-bromodibenzo[b,d]furanを1.788g(7.23mmol)、Pd2(dba)3を0.243g(0.422mmol)、(tBu)3P (1.50M) を0.633ml(1.266mmol)、NaOtBuを1.738g(18.086mmol)を加えて、70mL Tolueneの混合溶媒中で3時間加熱還流攪拌した。空冷後、水を加えて有機層を分取し溶媒留去した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(CH2Cl2とHexaneの混合溶媒を使用)で精製後、Toluene/Ethanol混合溶媒で再結晶を行い、白色固体の化合物21を3.68g(収率92%)得た。
【0089】
【化28】

【0090】
化合物37の合成方法
Ar雰囲気下、300mLの三つ口フラスコに、9-phenyl-9H-carbazol-4-amineを1.37g(5.30mmol)と1-(4-bromophenyl)naphthaleneを3.00g(10.59mmol)、Pd2(dba)3を0.30g(2.12mmol)、(tBu)3P (1.50M) を1.41ml(2.12mmol)、NaOtBuを8.89g(6.03mmol)を加えて、106ml Tolueneの混合溶媒中で1.5時間加熱還流攪拌した。空冷後、水を加えて有機層を分取し溶媒留去した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(CH2Cl2とHexaneの混合溶媒を使用)で精製後、Toluene/Ethanol混合溶媒で再結晶を行い、化合物37を3.34g(収率95%)得た。
【0091】
FAB−MS測定により測定された化合物37の分子量は、662であった。また、1H−NMR(CDCl3)測定で測定された37のケミカルシフト値δは、8.01−7.96(m,3H,)、7.90(d,2H,J=8.10Hz)、7.83(d,2H,J=8.10Hz)、7.53−7.33(m,20H)、7.23(d,1H,J=7.50Hz)、7.16−7.12(m,1H)であった。
【0092】
また、本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子用材料は、例えば、以下のように合成することができる。
【0093】
【化29】

【0094】
化合物41の合成方法
以上に述べた化合物37の合成方法における、9-phenyl-9H-carbazol-4-amineの代わりに9-phenyl-9H-carbazol-3-amineを用い、同様に化合物41を合成した。
【0095】
FAB−MS測定により測定された化合物41の分子量は、662であった。また、1H−NMR(CDCl3)測定で測定された41のケミカルシフト値δは、8.13−8.07(m,4H)、7.91−7.
88(m,2H)、7.84(d,2H,J=7.80Hz)、7.63−7.59(m,4H)、7.55−7.40(m,17H)、7.34−7.29(m,5H)であった。
【0096】
また、本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子用材料は、例えば、以下のように合成することができる。
【0097】
【化30】

化合物52の合成方法
以上に述べた化合物37の合成方法における、9-phenyl-9H-carbazol-4-amineの代わりにdibenzo[b,d]furan-3-amineを用い,(4-bromophenyl)naphthalene の代わりに1-(4'-chloro-[1,1'-biphenyl]-3-yl)naphthaleneを用い、同様に化合物52を合成した。
【0098】
FAB−MS測定により測定された化合物52の分子量は、739であった。また、1H−NMR(CDCl3)測定で測定された52のケミカルシフト値δは、1H−NMR(CDCl3)測定で測定されたY570のケミカルシフト値δは、7.98−7.86(m,7H)、7.82(d,1H,J=8.40Hz)、7.73−7.72(m,2H)、7.67−7.64(m,2H)、7.59−7.43(m,16H)、7.42−7.28(m,4H),7.25−7.23(m,4H),7.19(dd,1H,J=1.8,J=8.4Hz)であった。
【0099】
また、本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子用材料は、例えば、以下のように合成することができる。
【0100】
【化31】

【0101】
化合物57の合成方法
以上に述べた化合物37の合成方法における、9-phenyl-9H-carbazol-4-amineの代わりにdibenzo[b,d]furan-3-amineを用い、同様に化合物57を合成した。
【0102】
FAB−MS測定により測定された化合物57の分子量は、739であった。また、1H−NMR(CDCl3)測定で測定された化合物57のケミカルシフト値δは、8.10―8.02(m、2H)、7.95―7.82(m、6H)、7.60―7.42(m、14H)、7.42―7.27(m、7H)であった。
【0103】
また、本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子用材料は、例えば、以下のように合成することができる。
【0104】
【化32】
【0105】
化合物59の合成方法
以上に述べた化合物37の合成方法における、9-phenyl-9H-carbazol-4-amineの代わりに9-phenyl-9H-carbazol-3-amineを用い、1-(4-bromophenyl)naphthalene の代わりに2-(4-bromophenyl)naphthaleneを用い、同様に化合物59を合成した。
【0106】
FAB−MS測定により測定された化合物59の分子量は、587であった。また、1H−NMR(CDCl3)測定で測定された59のケミカルシフト値δは8.05(m、2H)、7.95−7.80(m、8H)、7.76(d、2H、J=7.5Hz)、7.68(d、4H、J=8.7Hz)、7.56−7.35(m、7H)7.31(d、4H、J=8.7Hz)7.26−7.20(m、2H)であった。
【0107】
また、本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子用材料は、例えば、以下のように合成することができる。
【0108】
【化33】
【0109】
上述した化合物21、化合物37、化合物41、化合物52、化合物57、及び化合物59を正孔輸送材料として用いて、上述した製造方法により、実施例1〜実施例6の有機エレクトロルミネッセンス素子を作製した。
【化34】
【0110】
また、比較例として、以下に示す比較例化合物A1〜A7を正孔輸送材料として用いて、比較例1乃至6の有機エレクトロルミネッセンス素子を作製した。
【化35】
【0111】
本実施例に係る有機エレクトロルミネッセンス素子200を図2に示す。本実施例においては、基板202には透明ガラス基板を用い、150nmの膜厚のITOで陽極204を形成し、60nmの膜厚の2-TNATAで正孔注入層206を形成し、30nmの膜厚の正孔輸送層208を形成し、ADNにTBPを3%ドープした25nmの膜厚の発光層210を形成し、Alq3で25nmの膜厚の電子輸送層212を形成し、LiFで1nmの膜厚の電子注入層214を形成し、Alで100nmの膜厚の陰極216を形成した。
【0112】
作製した有機エレクトロルミネッセンス素子200について、発光効率及び半減寿命を評価した。尚、電圧及び発光効率は電流密度が10mA/cmにおける値であり、半減寿命は初期輝度1,000cd/mからの輝度半減時間を示す。評価結果を表1に示す。
【0113】
【表1】

【0114】
表1の結果を参照すると、実施例1〜6は、比較例1〜6に比べ長寿命、高効率化している。本発明に係る化合物は、ヘテロアリール基を有しているため、アミン周りの共役が確保され、ラジカルに対する安定性が向上し、キャリア耐性が高く長寿命化に寄与しているものと考えられる。また、ヘテロアリール基の高い正孔輸送性のため高効率化にも寄与している。そしてとくに本発明に係る化合物は、駆動電圧がきわめて低いことに特徴があることが分かる。これは、ヘテロアリール基としてジベンゾヘテロールやジベンゾチオフェン等の平面性が高い分子が導入されることによって分子全体の平面性が高く、パッキングしやすいためであると考えられる。比較例1〜6では、ヘテロアリール基が有していないため寿命が短く、効率も低くなっているものと考えられる。比較例2及び4では、第四級炭素を有しており熱耐性が弱く寿命が低下しているものと考えられる。比較例3はジアミン化合物であるため、キャリア耐性が低く、低寿命化しているものと考えられる。
【0115】
表1の結果から、本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子用材料を正孔輸送材料として用いた場合、比較例の化合物に比して高効率及び長寿命を示すことが認められた。本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子用材料は、電荷耐性の高いフルオレニル基及びナフチル基をアミンに導入することにより、高効率及び長寿命を実現できることが分かる。
【0116】
尚、本発明におけるに係る有機エレクトロルミネッセンス素子用材料は、広いエネルギーギャップを有しているため、赤色領域及び緑色領域への適用することも可能である。
【符号の説明】
【0117】
100 有機EL素子、102 基板、104 陽極、106 正孔注入層、108 正孔輸送層、110 発光層、112 電子輸送層、114 電子注入層、116 陰極、200 有機EL素子、202 基板、204 陽極、206 正孔注入層、208 正孔輸送層、210 発光層、212 電子輸送層、214 電子注入層、216 陰極
図1
図2