(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記結露防止制御手段は、前記湿度検出器で検出した湿度に応じて前記乾燥気体吹付け手段の駆動時間を可変に制御する構成としてなる請求項1に記載の水素ガス充填装置。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態による水素ガス充填装置を、添付図面の
図1ないし
図2に従って詳細に説明する。
【0015】
本実施の形態に係る水素ガス充填装置1は、例えば自動車の燃料タンク23(被充填タンク)に圧縮した水素ガスを供給して充填するため、一般に水素ガス供給ステーションと呼ばれる設備等に設置されている。水素ガス充填装置1は、高圧に圧縮された水素ガスを貯蔵するガス貯蔵部としての蓄圧器2と、該蓄圧器2からの水素ガスを自動車の燃料タンク23に充填、供給するためのディスペンサユニット3と、蓄圧器2からディスペンサユニット3にわたって延びるガス供給経路4とを含んで構成されている。
【0016】
ディスペンサユニット3には、ガス供給経路4が上流側(例えば、蓄圧器2側)から下流側にわたって延びるように配設されている。ガス供給経路4の下流端側には、ディスペンサユニット3の外部へと延びる充填ホース5が接続されている。可撓性ホースからなる充填ホース5の先端には、燃料タンク23の充填口23A(即ち、レセプタクル)に連結される充填ノズル6が設けられている。
【0017】
この充填ノズル6は、水素ガスからなる燃料を後述する車両22の燃料タンク23に供給するため、充填口23Aに気密状態で着脱可能に接続される金属製のカップリングとして構成されている。充填ノズル6は、水素ガスの充填中に水素ガスの圧力によって充填口23Aから誤って外れることがないように、燃料タンク23の充填口23Aに対して係脱可能にロックされるロック機構(図示せず)を備えている。充填ノズル6は、燃料タンク23の充填口23Aに接続された状態で、蓄圧器2内の高圧な燃料(水素ガス)を、ガス供給経路4、充填ホース5および充填ノズル6等を通じて車両22の燃料タンク23に充填することができる。
【0018】
図2に示すように、充填ノズル6は、円筒形状のノズル本体6Aと、該ノズル本体6Aの内部に設けられた貫通流路6Bと、該貫通流路6Bの途中に設けられたボール弁体等からなる弁部6Cと、該弁部6Cを弁軸6Dを介して回動操作する操作レバー6Eとを含んで構成されている。ノズル本体6Aの内部には、円筒状凹部6Fが形成されている。充填ノズル6のノズル本体6Aには、貫通流路6Bの基端側に充填ホース5が接続して設けられ、該充填ホース5から貫通流路6B内に向けて水素ガス(燃料)が流通する。
【0019】
充填ノズル6は、ノズル本体6Aを燃料タンク23の充填口23Aに接続した状態で、充填作業者が操作レバー6Eを操作すると前記弁部6Cが開弁される。これにより、充填ホース5からの水素ガス(即ち、蓄圧器2内の高圧なガス)は、ノズル本体6A内の貫通流路6Bを通じて車両22の燃料タンク23に充填可能な状態となり、後述する充填開始スイッチ16の操作に伴い開閉弁9が開弁することにより、車両22の燃料タンク23への水素ガスの充填が開始される。一方、操作レバー6Eにより弁部6Cを閉弁したときには、貫通流路6Bが途中で遮断されることによって水素ガスの流通(充填)は停止される。
【0020】
なお、上記充填ノズル6に設けられた操作レバー6Eは弁部6Cを開閉する目的のために設けられたものであるが、当該目的ではなく、ノズル本体6Aに設けられ、ノズル本体6Aと燃料タンク23の充填口23Aとが接続された状態にロックするためのロック機構(図示せず)の状態をロック状態とロック解除状態とに切り替える目的のために設けられたものであってもよい。また、上記充填ノズル6に設けられた弁部6Cに代えてノズル本体6Aより燃料タンク23への水素ガスの流通は許容するが、燃料タンク23よりノズル本体6Aへの水素ガスの流通は阻止する逆止弁を設けたものである場合には、操作レバー6Eも省略しても良い。
【0021】
ディスペンサユニット3は、充填ノズル6、調整弁8、開閉弁9、冷却器10、流量計13、圧力センサ14、燃料温度センサ15、充填開始スイッチ16、充填停止スイッチ17、脱圧弁20、制御装置21、ノズル保持体24および気体吹付け装置26(ドライヤ29)等を含んで構成されている。調整弁8および開閉弁9は、ガス供給経路4を流れる水素ガスの流量及び圧力を制御する制御機器を構成している。流量計13、圧力センサ14および燃料温度センサ15は、ガス供給経路4を流れる水素ガスの流量、圧力および温度を計測する計測機器を構成している。
【0022】
ディスペンサユニット3には、それぞれガス供給経路4の途中に位置して、例えば手動操作により開,閉される入口弁7と、該入口弁7の下流側に接続され後述の制御装置21によって開,閉されることによりガス供給経路4を流れる燃料の流量を調整可能に制御する制御弁としての調整弁8と、該調整弁8の下流側に接続された電磁弁または空圧駆動弁等の遮断弁からなる開閉弁9とが設けられている。なお、入口弁7は必要に応じて取付けられるものであり、不要であればこれを除いてもよい。また、ガス供給経路4の上流側から下流側に向けて設けられている流量計13、調整弁8、開閉弁9の配置(取付けの順番)は、
図1中に示した順番に限定されるものではない。
【0023】
ディスペンサユニット3内に設けられた調整弁8は、例えばエア作動式で、エアの供給で開弁し、制御信号で制御圧(エア圧)を制御して弁開度が調整される弁装置である。調整弁8は、制御装置21の制御プログラムに基づく指令により任意の弁開度に制御され、ガス供給経路4内を流れる水素ガスの流量を可変に制御する弁である。
【0024】
開閉弁9は、ガス供給経路4の途中部位(調整弁8と冷却器10との間)に設けられた電磁式または空圧作動式の弁装置である。開閉弁9は、後述する制御装置21からの制御信号で開,閉されることにより、ガス供給経路4内を流れる燃料の流通を許したり、または遮断したりする。即ち、制御装置21は、充填ノズル6を介して車両22の燃料タンク23に燃料を充填、または充填を停止(終了)するときに、調整弁8と開閉弁9との開,閉弁制御を行うものである。
【0025】
冷却器10はガス供給経路4内を流れる燃料を冷却する装置である。即ち、該冷却器10は、ガスが充填される車両22の燃料タンク23の温度上昇を防止するために、ガス供給経路4の途中位置で水素ガス(燃料)を冷却するように配設されている。冷却器10は、開閉弁9と充填ノズル6との間に位置するガス供給経路4の途中部位に設けられた熱交換器11と、該熱交換器11に接続され、例えばコンプレッサ、ポンプ等の駆動機構(図示せず)が搭載されたチラーユニット12とを含んで構成されている。
【0026】
チラーユニット12は、冷媒となる冷却液(例えば、エチレングリコール等を含んだ液体)を熱交換器11との間に循環させる。これにより、冷却器10の熱交換器11は、ガス供給経路4内を流れる水素ガス(燃料)と前記冷却液との間で熱交換を行い、充填ノズル6に向けて供給される水素ガスの温度を規定温度(例えば、−20℃または−40℃)まで低下させる。
【0027】
ディスペンサユニット3内には、ガス供給経路4の途中で被測流体の質量流量を計測するコリオリ式の流量計13が設けられている。この流量計13は、例えば入口弁7と調整弁8との間でガス供給経路4内を流れる燃料、即ち水素ガスの流量(質量流量)を計測し、計測した流量に比例した数の流量パルスを制御装置21へと出力する。これによって、制御装置21は、車両22の燃料タンク23に対する燃料(水素ガス)の充填量を演算により求めることができ、車両22に対する燃料の払出し量(給油量に相当)を表示器(図示せず)等で表示し、例えば顧客等に表示内容を報知することができる。
【0028】
圧力センサ14は、被充填タンクである燃料タンク23内または、これにほぼ相当する配管途中のガスの圧力(即ち、燃料供給所で充填されるガス圧力としてのステーション圧力)を検知するセンサである。ここで、圧力センサ14は、充填ノズル6の近傍でガス供給経路4内の圧力を測定し、測定した圧力に応じた検出信号を制御装置21へと出力する。換言すると、圧力センサ14は、燃料タンク23内のガス圧力を検知(検出)するために設けられたものであり、燃料タンク23内のガス圧力を直接検知するように燃料タンク23に配置することでもよいが、必ずしもそのように配置しなければならないものではない。従って、圧力センサ14は、充填ノズル6に近い位置でガス供給経路4内の圧力を検出するようにしている。
【0029】
また、ガス供給経路4の途中には、冷却器10の熱交換器11と圧力センサ14との間に位置して燃料温度センサ15が設けられている。この燃料温度センサ15は、ガス供給経路4内を流れる燃料の温度を検出し、その検出信号を制御装置21へと出力する。なお、燃料温度センサ15と圧力センサ14との配置関係は、
図1に示す配置に限るものではなく、例えば互いに逆となる配置にしてもよい。
【0030】
ディスペンサユニット3には、充填開始スイッチ16と充填停止スイッチ17とからなる操作部18が設けられている。該操作部18の充填開始スイッチ16は、例えば燃料供給所の作業者等が手動で操作可能な操作スイッチで、ガスの充填を開始する場合に操作される。また、充填停止スイッチ17は、ガス充填中にガスの充填を停止する場合に操作される。そして、充填開始スイッチ16と充填停止スイッチ17とは、操作状態に応じた信号を制御装置21にそれぞれ出力し、制御装置21は、これらの信号に応じて電磁弁または空圧駆動弁等の自動弁からなる開閉弁9を開弁または閉弁させる。
【0031】
ガス供給経路4の開閉弁9よりも下流側には、例えば充填ノズル6側からガス圧力を脱圧するための脱圧配管19が分岐して設けられている。脱圧配管19の途中には、例えば電磁弁または空圧駆動弁等の自動弁からなる脱圧弁20が設けられている。この脱圧弁20は、後述の如く充填ノズル6を用いたガス充填作業が完了し、開閉弁9が閉弁されたときに、制御装置21からの信号により開弁制御される。
【0032】
即ち、充填ノズル6を燃料タンク23の充填口23Aから取外すときには、充填ノズル6(充填ホース5内)の圧力を大気圧レベルまで減圧する必要がある。このため、ガス充填作業の完了時には、脱圧弁20を一時的に開弁して脱圧配管19の先端側を大気に開放させる。これにより、充填ノズル6側の水素ガスが外部に放出されて充填ノズル6(充填ホース5内)の圧力が大気圧に減圧され、これによって、充填ノズル6は相手方の充填口23Aから取外し可能となる。
【0033】
制御装置21は、調整弁8および開閉弁9等の制御機器を制御する制御部を構成している。制御装置21は、例えばタイマ機能と記憶部(即ち、メモリ21A)等とを備えたマイクロコンピュータ等の制御ユニットとして構成されている。制御装置21のメモリ21Aには、例えば
図3に示す充填制御処理用、乾燥気体のパージ制御処理用のプログラム等が格納され、制御装置21は、後述の如く燃料タンク23に対する燃料(即ち、水素ガス)の充填制御処理と乾燥気体のパージ制御処理とを行うものである。即ち、制御装置21は、後述の湿度計32により検出された湿度に基づき、気体吹付け装置26を駆動するか否かを制御する結露防止制御手段を構成し、
図3中のステップ7〜11にわたる乾燥気体のパージ制御処理を行う。
【0034】
例えば、制御装置21のメモリ21Aには、水素ガスの充填時に圧力センサ14により測定された圧力値から得られる圧力上昇率が、予め設定された所定の圧力上昇率に一致するように調整弁8の弁開度を制御する定圧上昇制御用の制御プログラム等が格納され、上述したように、制御装置21により調整弁8の開度が制御される。また、メモリ21Aには、後述の湿度閾値H1(即ち、乾燥気体のパージ制御処理を行うか否かの判定値)と、
図3中のステップ10で予め決められた時間にわたってパージ制御を行うための所定時間に相当する計時データ等とが更新可能に格納されている。
【0035】
制御装置21の入力側には、流量計13、圧力センサ14、燃料温度センサ15、充填開始スイッチ16、充填停止スイッチ17、後述のノズル検出器25および湿度計32等が接続されている。制御装置21の出力側には、調整弁8、開閉弁9、前記表示器、脱圧弁20、ドライヤ29および乾燥気体供給弁31等が接続されている。なお、チラーユニット12は、制御装置21を介して電源(図示せず)と接続され、電力供給により作動されると、前述した冷媒(冷却液)を熱交換器11との間で循環させる。
【0036】
ここで、制御装置21は、
図1中に二点鎖線で示す如く、車両22の燃料タンク23の充填口23Aに充填ノズル6を接続した状態で、例えば操作部18の充填開始スイッチ16が閉成(ON)操作されたときに、調整弁8と開閉弁9に開弁信号を出力して調整弁8と開閉弁9を開弁させる。これにより、蓄圧器2内の水素ガスによるガスの充填作業が開始される。また、制御装置21は、充填開始スイッチ16が操作された場合、冷却器10を通常の状態で作動させる。一方、ガスの充填を行っていないときに、制御装置21は、冷却器10を停止状態に保持するか、または少量の前記冷媒を循環させる予備冷却状態を保持するように制御する。なお、本実施の形態では、制御装置21が冷却器10の運転状態を制御しているが、冷却器10自体がチラーユニット12を制御する制御部を有している場合には、当該制御部が冷却器10の運転状態を制御するようにしてよい。
【0037】
また、制御装置21は、例えば流量計13、圧力センサ14、燃料温度センサ15の測定結果を監視しつつ、制御弁である調整弁8の開度等を予め設定された制御方式(定圧上昇制御方式または定流量制御方式)等で可変に調整する。これにより、ガス供給経路4内に供給されて燃料タンク23へと充填されるガスの圧力、流量を適切な流通状態に制御することができる。
【0038】
このとき、制御装置21は、流量計13からの流量パルスを積算して燃料の充填量(質量)を演算し、燃料の充填量が予め設定された目標充填量に達するか、または圧力センサ14により検出したガスの圧力が予め設定された目標圧力(目標充填圧)に達したときに、開閉弁9を閉弁して燃料の充填を停止する。また、充填停止スイッチ17が操作された場合には、例えばガスの充填量や圧力が目標に達していなくても、充填動作を強制的に停止すべく開閉弁9が制御装置21からの信号により閉弁される。
【0039】
水素ガスを燃料として走行する車両22は、一例として
図1に示すような4輪自動車(乗用車)により構成されている。車両22には、例えば燃料電池と電動モータ等の駆動装置(いずれも図示せず)と、
図1中に点線で示す燃料タンク23等とが設けられている。この燃料タンク23は、水素ガスが充填される被充填タンクを構成し、例えば車両22の後部側に搭載されている。なお、燃料タンク23は、車両22の後部側に限らず、前部側または中央部側に設ける構成であってもよい。
【0040】
燃料タンク23には、
図1中に示すように、充填ノズル6が着脱可能に取付けられる充填口23A(レセプタクル)が設けられている。そして、車両22の燃料タンク23内には、充填ノズル6が充填口23Aに気密に連結(接続)された状態で水素ガスの充填が行われる。この間、充填ノズル6は前記ロック機構により充填口23Aに対して不用意に外れることがないようにロックされている。
【0041】
ディスペンサユニット3には、水素ガスの非充填時(即ち、充填作業の待機時間)にわたって充填ノズル6が取付け、取外し可能に保持される保持部としてのノズル保持体24が設けられている。このノズル保持体24は、充填ノズル6が水素ガスの充填を終了して戻される場合に、当該充填ノズル6を収納状態に保持するものである。
【0042】
図2に示すように、ノズル保持体24は、不使用状態(充填作業を行う前)の充填ノズル6が垂直状態で載置されるノズル載置部24Aと、該ノズル載置部24Aの上方に起立するように形成された垂直壁部24Bとを有する。ノズル載置部24Aは、水平方向に延在するように設けられ、中央部には充填ホース5を挿通するため例えばU字状に切欠かれたホース挿通部24A1が設けられている。また、ノズル保持体24の垂直壁部24Bは、例えばディスペンサユニット3の筐体(図示せず)側面に固定して設けられ、その上端には後述のパージ用フード27が取付けられている。
【0043】
ノズル保持体24には、充填ノズル6用のノズル検出器25が設けられ、該ノズル検出器25は、ノズル保持体24に充填ノズル6が収納(保持)されているか否かを検出するスイッチ等により構成されている。ノズル検出器25は、例えば2位置切換型のスイッチ等からなり、収納状態の充填ノズル6によって押動されるとオン状態に切換わる。そして、ノズル検出器25は、充填ノズル6がノズル保持体24から取出される(または取外される)とオフ状態に切り替わり、検出信号(オンまたはオフの信号)を制御装置21に出力するものである。なお、ノズル検出器25は、ディスペンサユニット3側のノズル保持体24に設けるものに限らず、充填ノズル6側に設けてもよい。
【0044】
ディスペンサユニット3には、ノズル保持体24の近傍に位置して乾燥気体吹付け手段を構成する気体吹付け装置26が設けられている。この気体吹付け装置26は、例えば充填ノズル6のノズル保持体24を上側から覆うように設けられたパージ用フード27と、該パージ用フード27内に向けて乾燥気体を吹付けるように供給する吹出口28と、該吹出口28を乾燥気体の供給源であるドライヤ29に接続する導管からなる気体管路30と、該気体管路30の途中に設けられた乾燥気体供給弁31とを含んで構成されている。
【0045】
気体吹付け装置26のパージ用フード27には、その背面側に気体管路30の先端が接続される吹出口28が設けられ、該吹出口28からは、乾燥エア等の気体がパージ用フード27内に向けて
図2中に矢印で示すようにパージ(吹出)される。パージ用フード27は、ノズル保持体24に収納保持された状態の充填ノズル6の上方を覆うように突出する傾斜部27Aを有し、該傾斜部27Aは、吹出口28からパージ用フード27内に向けて吹出された乾燥気体を下方に向かう流れとなるようにガイドする。
【0046】
ノズル保持体24に収納保持された状態の充填ノズル6は、ノズル本体6Aの先端部分がパージ用フード27の内部空間27Bに挿入された状態で収納されている。このため、吹出口28から内部空間27Bに噴出された乾燥気体は、充填ノズル6の先端部分をパージするように供給される。気体吹付け装置26は、このように乾燥気体を充填ノズル6の先端側に吹付けるように供給することによって、充填ノズル6のノズル本体6A表面だけでなく、ノズル本体6Aの内部の円筒状凹部6Fに付着した水滴、結露や氷を除去することができ、燃料タンク23の充填口23Aに接続される部分の表面を乾燥状態にすることができる。
【0047】
乾燥気体の供給源であるドライヤ29は、例えばコンプレッサ(図示せず)等で発生した圧縮空気等の加圧気体を乾燥させ、乾燥した状態の加圧気体を気体管路30内に向けて供給する。なお、乾燥気体の供給源としては、必ずしも圧縮空気を乾燥させるドライヤ29に限らず、例えば乾燥した窒素ガス等の乾燥気体を収容したボンベ等の圧力容器を用いてもよい。
【0048】
気体管路30の途中に設けられた乾燥気体供給弁31は、電磁弁または空圧駆動弁等の自動弁からなり、制御装置21からの制御信号に従って開,閉される。即ち、気体吹付け装置26は、制御装置21により駆動されると乾燥気体供給弁31を開弁させる。これにより、ドライヤ29からの乾燥気体は、吹出口28からパージ用フード27の内部空間27Bに向けて吹出すように気体管路30内を流通する。一方、気体吹付け装置26の駆動が停止されると、乾燥気体供給弁31が閉弁されることにより、乾燥気体の流通が停止(遮断)される。
【0049】
ディスペンサユニット3には、水素ガス充填装置1の周囲の湿度H(例えば、空気中の水蒸気の割合)を検出する湿度検出器としての湿度計32が設けられている。該湿度計32は、その検出信号を制御装置21に出力する。制御装置21は、湿度計32で検出した湿度Hが、例えば
図3中のステップ8に示す湿度閾値H1以上であるか否かを判定し、ステップ8で「YES」と判定したときには、周囲の湿度Hが高く結露が発生し易いと判断する。このため、制御装置21は、気体吹付け装置26を駆動(即ち、乾燥気体供給弁31を開弁)して、吹出口28からパージ用フード27の内部空間27Bに向けて乾燥気体を供給する。
【0050】
一方、制御装置21は、湿度計32で検出した湿度Hが、例えば湿度閾値H1よりも小さいときには、ステップ8で「NO」と判定して周囲の湿度Hが低く、周囲の空気は乾燥して結露が発生しにくいと判断する。このため、制御装置21は、気体吹付け装置26の駆動を停止(即ち、乾燥気体供給弁31を閉弁)し、これによって、吹出口28からパージ用フード27の内部空間27Bに向けた乾燥気体の供給を停止させる。
【0051】
本実施の形態による水素ガス充填装置1は、上述の如き構成を有するもので、次に、制御装置21による燃料タンク23への燃料(即ち、水素ガス)の充填制御処理と乾燥気体のパージ制御処理について、
図3を参照して説明する。
【0052】
制御装置21は、
図3に示す制御処理がスタートすると、ステップ1で充填ノズル6が外れたか否かを判定する。ステップ1で「NO」と判定する間は、充填作業が開始される前の待機状態であるから、充填ノズル6がノズル保持体24から取外されるのを待機する。
【0053】
一方、車両22の燃料タンク23に燃料を充填するときには、
図1中に二点鎖線で示す如く、充填ノズル6がノズル保持体24から取外されて車両22(燃料タンク23)の充填口23Aに連結して接続される。このように、充填ノズル6を燃料タンク23の充填口23Aに接続するため、充填ノズル6がノズル保持体24から取外されたときには、ノズル検出器25でこれを検出することができ、ステップ1で「YES」と判定される。
【0054】
この状態で、次のステップ2では、充填開始スイッチ16が操作されたか否かを判定する。即ち、充填ノズル6を燃料タンク23の充填口23Aに接続した状態で、充填開始スイッチ16がON操作されると、ステップ2で「YES」と判定する。次のステップ3では、下記のように充填制御処理が実行される。このとき、蓄圧器2内の燃料(水素ガス)は、ガス供給経路4、充填ホース5および充填ノズル6等を通じて車両22の燃料タンク23に充填される。
【0055】
即ち、制御装置21は、車両22の燃料タンク23の充填口23Aに充填ノズル6を接続した状態で、充填開始スイッチ16が閉成(ON)操作されると、調整弁8と開閉弁9に開弁信号を出力して調整弁8と開閉弁9とを開弁させる。これにより、蓄圧器2内の水素ガスによるガス充填作業が開始される。また、制御装置21は、例えば流量計13、圧力センサ14、燃料温度センサ15の測定結果を監視しつつ、調整弁8の開度等を予め設定された制御方式(定圧上昇制御方式または定流量制御方式)等で調整する。これにより、ガス供給経路4内に供給される水素ガスの圧力、流量を適切な流通状態に制御することができる。
【0056】
このとき、制御装置21は、流量計13からの流量パルスを積算して燃料の充填量(質量)を演算し、燃料の充填量が予め設定された目標充填量に達するか、または圧力センサ14により検出した水素ガスの圧力が予め設定された目標充填圧力(目標充填圧)に達したか否か(即ち、充填終了か否か)をステップ4で判定する。ステップ4で「NO」と判定する間は充填作業が終了していないので、開閉弁9を開弁させて燃料の充填制御を続ける。
【0057】
そして、ステップ4で充填終了として「YES」と判定したときには、開閉弁9を閉弁して燃料の充填を停止する。具体的には、制御装置21からの信号により調整弁8および開閉弁9が閉弁され、燃料タンク23への水素ガスの充填が終了される。なお、作業者が充填停止スイッチ17を操作した場合にも、ステップ4で「YES」と判定することになる。
【0058】
次のステップ5では、充填終了制御処理を実行する。この充填終了制御処理では、例えば調整弁8および開閉弁9が閉弁され、ガスの充填作業を停止させる場合に、制御装置21からの信号により脱圧弁20を閉弁状態から開弁するように制御する。そして、脱圧弁20が開弁したときには、脱圧配管19が大気に開放されることにより、充填ノズル6側のガスが外部に放出されて充填ノズル6の圧力が大気圧に減圧される。
【0059】
このような状態で、次のステップ6で充填ノズル6がノズル保持体24に戻されたか否かを判定する。即ち、充填ノズル6がノズル保持体24に
図2に示すように戻されたときには、
図1に示すノズル検出器25によってこれを検出することができ、ステップ6で「YES」と判定される。ステップ6で「NO」と判定する間は、充填ノズル6がノズル保持体24に戻されるまで待機する。
【0060】
そして、ステップ6で「YES」と判定したときには、次のステップ7で湿度計32からディスペンサユニット3の周囲の湿度Hを読込む。次のステップ8では、湿度計32で検出した湿度Hが、予め決められた湿度閾値H1以上(即ち、H≧H1)であるか否かを判定する。ステップ8で「YES」と判定したときには、周囲の湿度Hが湿度閾値H1以上であって高いと判断できる。
【0061】
そこで、次のステップ9では、制御気体吹付け装置26を駆動(即ち、乾燥気体供給弁31を開弁)し、ドライヤ29からの乾燥状態にある加圧気体を、気体管路30、乾燥気体供給弁31および吹出口28を介してパージ用フード27の内部空間27Bに向けてパージ(供給)する。これにより、気体吹付け装置26は、乾燥気体を充填ノズル6の先端側に吹付けるように供給することができる。
【0062】
次のステップ10では、乾燥気体の吹付け(パージ)開始から予め決められた所定時間が経過したか否かを判定する。ステップ10で「NO」と判定する間は乾燥気体の吹付けを続ける。そして、ステップ10で「YES」と判定したときには、次のステップ11で乾燥気体の吹付け(パージ)を停止し、これによりガスの充填制御を終了させる。これにより、充填ノズル6のノズル本体6A表面だけでなく、ノズル本体6Aの内部の円筒状凹部6Fに付着した水滴、結露や氷を乾燥気体によって除去することができ、燃料タンク23の充填口23Aに接続される部分の表面を乾燥状態とすることができる。
【0063】
一方、前記ステップ8で「NO」と判定するときには、周囲の湿度Hが湿度閾値H1よりも低く、周囲の空気は結露が発生しない程度に乾燥していると判断することができる。そこで、制御装置21による充填制御をこのまま終了させる。この場合に、制御装置21は、気体吹付け装置26の駆動を停止(即ち、乾燥気体供給弁31を閉弁)したままとし、充填ノズル6に対する乾燥気体の吹付け(パージ)を行うことなく、次なるガス充填作業が開始されるまで充填ノズル6をノズル保持体24に収納し保持させた状態で待機する。
【0064】
かくして、本実施の形態によれば、水素ガス充填装置1の周囲の湿度(即ち、空気中の水蒸気の割合)を検出する湿度計32を、例えばディスペンサユニット3に設け、この湿度計32により検出された湿度Hに基づき、気体吹付け装置26を駆動するか否かを制御する結露防止制御手段を、制御装置21が備える構成としている。即ち、制御装置21は、
図3中のステップ7〜11にわたる乾燥気体のパージ制御処理を行うことにより、結露防止制御手段を構成している。
【0065】
このため、制御装置21による結露防止制御手段は、湿度計32により検出された水素ガス充填装置1周囲の湿度Hが湿度閾値H1よりも低く、結露等が発生しない程度まで空気が乾燥しているような状態では、気体吹付け装置26の駆動を停止させて無駄な乾燥気体の吹付けを省略することができる。一方、水素ガス充填装置1の周囲の湿度Hが湿度閾値H1以上となって高くなり、水素ガスで冷えたカップリング(充填ノズル6のノズル本体6A)に結露が発生し易い状態では、気体吹付け装置26を駆動して乾燥気体を充填ノズル6のノズル本体6Aに吹付けることができる。
【0066】
即ち、ディスペンサユニット3のノズル保持体24に収納保持された状態の充填ノズル6は、ノズル本体6Aの先端部分がパージ用フード27の内部空間27Bに挿入された状態でノズル保持体24に収納されている。このため、気体吹付け装置26の吹出口28から内部空間27Bに噴射された乾燥気体を、充填ノズル6の先端側に吹付けるように供給することができる。これにより、充填ノズル6のノズル本体6A表面だけでなく、ノズル本体6Aの内部の円筒状凹部6Fに付着した水滴、結露や氷を除去することができ、燃料タンク23の充填口23Aに接続される部分の表面を乾燥状態にすることができる。
【0067】
従って、本実施の形態では、充填ノズル6の結露による水滴等の発生を抑え、充填ノズル6の先端側を乾燥させた状態で次なる充填作業を行うことができる。そして、周囲が乾燥して湿度の低い環境(即ち、結露が生じないような環境)では、充填ノズル6に対する乾燥気体の吹付け(パージ)を行わないために、乾燥気体を無駄に消費させることがなく、乾燥気体の吹付けを効率的に行うことができ、省エネルギ化を図ることができる。
【0068】
特に、複数台の車両22に対して夫々の燃料タンク23に水素ガスを順次充填するような場合でも、周囲の湿度Hが湿度閾値H1よりも低いときには、乾燥気体の吹付け(パージ)を中止できるので、充填ノズル6を乾燥気体で無駄に温めるようなことがなくなる。このため、充填ノズル6を低い温度状態に保つことができ、ディスペンサユニット3から燃料タンク23に向けて所定温度以下に冷却された水素ガスを充填初期から効率的に充填するように供給することができる。
【0069】
なお、前記実施の形態では、周囲の湿度Hが湿度閾値H1以上であるか否かを判定し、「YES」の場合には所定時間だけ乾燥気体を吹付ける場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば湿度計32で検出した湿度に応じて気体吹付け装置26の駆動時間(即ち、乾燥気体供給弁31の開弁時間)を可変に制御し、充填ノズル6に対する乾燥気体のパージ時間を変える構成としてもよい。
【0070】
これにより、制御装置21(結露防止制御手段)は、ガス充填装置周囲の湿度が高いときには、その度合いに応じて気体吹付け装置26の駆動時間を長くし、湿度が低いときには、その度合いに応じて気体吹付け装置26の駆動時間を漸次短くするように結露防止制御を行うことができる。これによって、気体吹付け装置26が無駄に駆動されるのを抑えることができ、省エネルギ化を図ることができる。
【0071】
また、前記実施の形態では、車両22の燃料タンク23に圧縮された水素ガスを充填する場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば車両以外のタンクや容器等に圧縮された水素ガスを充填する際にも適用することができる。さらに、水素ガス充填装置1のディスペンサユニット3を、他の場所に水素ガスを給送するための管路の途中に設置してもよい。