特許第6661325号(P6661325)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6661325
(24)【登録日】2020年2月14日
(45)【発行日】2020年3月11日
(54)【発明の名称】工作機械
(51)【国際特許分類】
   B23Q 1/00 20060101AFI20200227BHJP
【FI】
   B23Q1/00 G
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-206080(P2015-206080)
(22)【出願日】2015年10月20日
(65)【公開番号】特開2017-77593(P2017-77593A)
(43)【公開日】2017年4月27日
【審査請求日】2018年8月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】391003668
【氏名又は名称】トーヨーエイテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小浦 尚樹
【審査官】 久保田 信也
(56)【参考文献】
【文献】 特許第4522684(JP,B2)
【文献】 特開2004−268204(JP,A)
【文献】 特開2010−284764(JP,A)
【文献】 特開平08−057729(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 1/00 − 1/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下端に接地用のベース脚部を有するベース部と、
上記ベース部に載置され、正面側からワークを装着する工作機械本体と、
記工作機械本体を制御する制御盤とを備えた工作機械であって、
上記ベース部の側面側又は背面側に設けられ、上記制御盤をスライド移動可能に支持する可動支持部と、
上記制御盤の下端に設けられ、該制御盤の自重を支持する制御盤脚部とを備え、
上記制御盤を上記ベース部に近い収納位置と、該ベース部から離れる方向に移動されて上記制御盤脚部が接地された拡張位置とで位置変更可能に構成されており、
上記可動支持部は、
上記ベース部の背面側又は側面側に該背面側又は側面側から突出するように固定されるフレーム部と、
上記フレーム部の下端に設けられた接地部と、
上記制御盤及び上記フレーム部の一方側に形成されたレール部と、
上記制御盤及び上記フレーム部の他方側に形成され、上記レール部をガイドするガイド部とを備え、
上記制御盤脚部は、上記収納位置で取り外し可能に構成されている
ことを特徴とする工作機械。
【請求項2】
請求項1に記載の工作機械において、
上記工作機械本体は、工具の回転軸が接地面に対して水平な横形であり、上記可動支持部は、上記ベース部の側面側又は背面側に付け替え可能である
ことを特徴とする工作機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベース部に載置され、工作機械本体を制御する制御盤を備えた工作機械に関し、特に制御盤の支持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、工具の回転軸が接地面に対して水平な横形の旋盤や研削盤において、機械本体背面に制御盤があるので、機械本体のモータやドレスユニットを交換する場合、機械本体と制御盤との狭い隙間に入り込んで交換作業を行わなければならなかった。
【0003】
そこで、基台の後部に立設されて各モータを制御する制御盤と、この制御盤を前後方向に移動させる制御盤移動機構とを備えた工作機械が知られている(例えば特許文献1参照)。この制御盤は、基台の後部に床面から所定の高さ位置に配置されており、制御盤の横幅は、基台の横幅と同一又は幅狭に設定され、制御盤移動機構は、工作機械の加工運転中に制御盤を通常拡張位置に位置決め固定し、工作機械のメンテナンス時に制御盤を通常拡張位置から基台の幅方向の外側へはみ出さない保守作業位置に移動させるようになっている。そして、制御盤が保守作業位置に移動することにより、制御盤と基台の後部及び床面との間に、作業者が入れるメンテナンス用スペースが確保される空間が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4522684号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、制御盤は、通常100kg〜500kgの重量物であるため、特許文献1のように制御盤が基台の中心から離れた上側にあると、振動の影響を受けやすく、機械本体のレベル調整が難しい。また、メンテナンス時に、制御盤を倒して水平にしたり、持ち上げて水平にしたり、機械本体から離れる方向に起立させたままスライド移動させたりする方法では、保守作業位置に移動させたときの制御盤の自重に耐えるために、かなり大がかりな制御盤移動機構を設けなければならない上に、重心が上方に移動して不安定となるという問題がある。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、制御盤をベース部から離したときでも安定して使用できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、この発明では、制御盤自身に脚部を持たせ、制御盤をベース部から離したときに接地させて安定させるようにした。
【0008】
具体的には、第1の発明では、
下端に接地用のベース脚部を有するベース部と、
上記ベース部に載置され、正面側からワークを装着する工作機械本体と、
上記ベース部に載置され、上記工作機械本体を制御する制御盤とを備えた工作機械であって、
上記ベース部の側面側又は背面側に設けられ、上記制御盤をスライド移動可能に支持する可動支持部と、
上記制御盤の下端に設けられ、該制御盤の自重を支持する制御盤脚部とを備え、
上記制御盤を上記ベース部に近い収納位置と、該ベース部から離れる方向に移動されて上記制御盤脚部が接地された拡張位置とで位置変更可能に構成されている。
【0009】
上記の構成によると、拡張位置において制御盤が制御盤脚部で接地しているので、制御盤の自重は、制御盤脚部で確実に支持される。このため、制御盤が安定して振動の影響を受けにくい上に、工作機械本体は、ベース脚部で独立して支持されるので、レベル調整が容易である。また、制御盤をベース部の側面又は背面から離して配置させるので、メンテナンス作業がしやすい。
【0010】
第2の発明では、第1の発明において、
上記可動支持部は、
上記制御盤及び上記ベース部の一方側に形成されたレール部と、
上記制御盤及び上記ベース部の他方側に形成され、上記レール部をガイドするガイド部とを備えている。
【0011】
上記の構成によると、簡易な構成で制御盤を収納位置又は拡張位置に変更できる。
【0012】
第3の発明では、第1又は第2の発明において、
上記工作機械本体は、工具の回転軸が接地面に対して水平な横形であり、上記可動支持部は、上記ベース部の側面側又は背面側に付け替え可能である。
【0013】
上記の構成によると、工具の回転軸の方向に長くなる横形の工作機械であっても、制御盤を配置スペースに合わせて側面又は背面側に配置することで、設置スペースを有効に活用できる。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように、本発明によれば、制御盤をベース部に近い収納位置と、このベース部から離れる方向に移動されて制御盤脚部が接地された拡張位置とで位置変更可能に構成したことにより、制御盤をベース部から離したときでも安定して使用できる上に、メンテナンス作業がしやすい。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】制御盤をスライド移動させて接地した状態の工作機械を示す斜視図である。
図2】制御盤をスライド移動させて接地した状態の工作機械を示す側面図である。
図3】制御盤が収納位置にある状態の工作機械を示す側面図である。
図4】制御盤が収納位置にある状態の工作機械を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0017】
図1図4は本発明の実施形態の工作機械1を示し、この工作機械1は、工作機械本体4は、工具4aの回転軸が接地面に対して水平な横形の研削盤である。工作機械1は、研削盤である必要はなく、旋盤などでもよい。
【0018】
工作機械1は、下端に接地用のベース脚部3を有するベース部2を備えている。ベース脚部3の個数は特に限定されない。ベース部2の上部には、正面側からワークを装着する工作機械本体4が載置されている。詳しい説明は省略するが、この工作機械本体4は、工具4aを回転するサーボモータ4b、ワークを回転するサーボモータ及びそれらのアンプ、インバータなどを備えている。
【0019】
ベース部2の背面側には、工作機械本体4を制御する略直方体状の制御盤5が設けられている。この制御盤5は、内部に工作機械本体4の機器を制御したり、電力を供給したりするものである。例えば図3に制御盤5の重心位置G2を示すように、工作機械1全体に対して比較的上側に重心位置があり、全体の重さは、例えば100kg〜500kgある。上端に搬送用、移動用等の吊り環5aが設けられている。図1及び図2のみに示すように、制御盤5の下端には、この制御盤5の自重を支持する制御盤脚部6が取付可能となっている。この制御盤脚部6は、例えば、4つの車輪6aを備えているが、固定式の脚部を備えていてもよい。車輪6aであれば、制御盤5のスライド移動が容易であり、固定式であれば、制御盤5が安定する。制御盤脚部6は、脱着式であり、搬送時には取り外してもよい。
【0020】
そして、ベース部2の背面側には、制御盤5をスライド移動可能に支持する可動支持部7が設けられている。この可動支持部7は、工作機械1の設置位置に合わせてベース部2の背面だけでなく、左右いずれかの側面に取付可能に構成されていてもよい。可動支持部7は、ベース部2の背面に固定されるフレーム部7aを備え、このフレーム部7aの下端に接地部7bが設けられている。フレーム部7aには、ガイド部7cが設けられ、その内部には、複数のローラ7dが上下に間隔を空けて複数内蔵されている。この上下のローラ7d間に、制御盤5の下側に水平に設けたレール部8が挿入されている。これにより、制御盤5がガイド部7cにガイドされながら水平に移動可能に構成されている。なお、逆にレール部8をベース部2側(可動支持部7側)に設け、ガイド部7cを制御盤5側に設けてもよい。
【0021】
このように構成することで、制御盤5は、図3及び図4に示すベース部2に近い収納位置と、図1及び図2に示すベース部2から離れる方向に移動されて制御盤脚部6が接地された拡張位置とで位置変更可能に構成されている。
【0022】
すなわち、工場で組み立てられてユーザのところに搬送するときには、図3及び図4に示すように、制御盤5は、収納位置にある。収納位置では、制御盤脚部6は、取り外されている。工作機械本体4の重心位置をG1とし、制御盤5の重心位置をG2とすると、搬送時の工作機械1の全体重心G3は、G1から制御盤5側に移動している。なお、この収納位置で工作機械1を利用してもよい。
【0023】
搬送後、設置場所では、制御盤5の下部に制御盤脚部6を取り付け、その車輪6aを接地させる。
【0024】
次いで、吊り環5aを天井クレーンなどで吊りながら制御盤5スライド移動させる。場合によっては、人力で移動させることもできる。
【0025】
制御盤5の自重は、車輪6aで支持されるので、工作機械本体4の重心位置G1は、収納位置のときのように制御盤5側へ移動することはない。このため、工作機械本体4のレベル調整が極めて容易であり、制御盤5も振動の影響を受けにくい。
【0026】
制御盤5は、ベース部2の背面から500〜600mm程度離すことができるので、メンテナンス作業もやりやすい。
【0027】
以上説明したように、本発明によれば、制御盤5をベース部2に近い収納位置と、このベース部2から離れる方向に移動されて制御盤脚部6が接地された拡張位置とで位置変更可能に構成したことにより、制御盤5をベース部2から離したときでも安定して使用できる。
【0028】
(その他の実施形態)
本発明は、上記実施形態について、以下のような構成としてもよい。
【0029】
すなわち、上記実施形態では、ベース部2の背面側に可動支持部7を設けたが、ベース部2の側面側に設けてもよく、さらには、可動支持部7をベース部2の側面側又は背面側に付け替え可能としてもよい。そうすれば、工具4aの回転軸の方向に長くなる横形の工作機械であっても、制御盤5を配置スペースに合わせて側面又は背面側に配置することで、設置スペースを有効に活用できて有利である。
【0030】
上記実施形態では、可動支持部7をレール部8とガイド部7cとの組み合わせで構成したが、油圧シリンダや空圧シリンダで連結して制御盤5をスライド移動可能に支持してもよいし、ヒンジ部を設けて制御盤5をベース部2を中心に旋回移動可能に支持してもよい。
【0031】
なお、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物や用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【符号の説明】
【0032】
1 工作機械
2 ベース部
3 ベース脚部
4 工作機械本体
4a 工具
4b サーボモータ
5 制御盤
5a 吊り環
6 制御盤脚部
6a 車輪
7 可動支持部
7a フレーム部
7b 接地部
7c ガイド部
7d ローラ
8 レール部
図1
図2
図3
図4