(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の振動への対策については、より発展させることが必要である。本発明は、係る従来の問題に鑑みてなされたもので、取り付けたバッテリパックの振動をより確実に防止できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記した課題は、以下の各発明によって解決される。第1の発明は、電動モータを駆動源として内装し、電源としてスライド取り付け形式のバッテリパックを取り付けるためのバッテリ取り付け部を有する電動工具である。第1の発明は、バッテリ取り付け部に、バッテリパックが備える断面コ字形のレール受け部に対してスライド方向に直交する係合方向に係合されるスライドレール部を備えており、このスライドレール部の、係合方向の両面に、バッテリパックのレール受け部に対して弾性的に押圧させる押圧部を設けた構成を備えている。
【0006】
第1の発明によれば、バッテリ取り付け部にバッテリパックを取り付けた状態では、バッテリ取り付け部側のスライドレール部の係合方向の両面に設けた押圧部が、バッテリパック側のレール受け部にそれぞれ弾性的に押圧される。スライドレール部の係合方向の両面とレール受け部との間に押圧部が弾性的に挟み込まれて押圧されることにより、バッテリパックのバッテリ取り付け部に対する主として係合方向の振動が吸収される。第1の発明は、電動工具のバッテリ取り付け部側にスライドレール部が設けられ、バッテリパック側に断面コ字形のレール受け部が設けられている場合を対象としている。
【0007】
第1の発明では、スライドレール部の係合方向の両面に押圧部が押圧される。スライドレール部の係合方向の両面は、バッテリパックのスライド面(取り付け、取り外し方向)を水平方向とする場合には上面及び下面となり、従って重力方向及び反重力方向となる。スライドレール部の係合方向の両面に押圧部が押圧されることにより、バッテリパックは、バッテリ取り付け部に対して弾性支持(フローティング支持)された状態となり、これにより主として係合方向(上下方向)の振動が吸収される。さらには、係合方向(前後方向)のみならず、左右、上下方向の振動も吸収することができる。
【0008】
第2の発明は、第1の発明において、係合方向の両面の押圧部が相互に結合されて一体部品とされた電動工具である。
【0009】
第2の発明によれば、係合方向両面の押圧部がスライドレール部から外れにくくすることができ、また係合方向両面の押圧部を1つの部品として取り扱うことができるのでその取り扱い性及び組み付け性を高めることができる。
【0010】
第3の発明は、電動モータを駆動源として内装し、電源としてスライド取り付け形式のバッテリパックを取り付けるためのバッテリ取り付け部を有する電動工具である。第2の発明は、バッテリ取り付け部に、バッテリパックが備えるスライドレール部をスライド方向に直交する係合方向に係合する断面コ字形のレール受け部を備えており、このレール受け部に、バッテリパックのスライドレール部の係合方向の両面に弾性的に押圧させる押圧部を設けた構成を備えている。
【0011】
第3の発明によれば、バッテリ取り付け部にバッテリパックを取り付けた状態では、バッテリ取り付け部側のレール受け部に設けた押圧部が、バッテリパック側のスライドレールの係合方向の両面にそれぞれ弾性的に押圧される。バッテリパックのスライドレール部の係合方向の両面とレール受け部との間にそれぞれ押圧部が弾性的に挟み込まれて押圧されることにより、バッテリパックのバッテリ取り付け部に対する主として係合方向の振動が吸収される。さらには、係合方向(前後方向)のみならず、左右、上下方向の振動も吸収することができる。第3の発明は、電動工具のバッテリ取り付け部側に断面コ字形のレール受け部が設けられ、バッテリパック側にスライドレール部が設けられている場合であって、第1の発明とは逆の場合を対象としている。
【0012】
第4の発明は、第1〜第3の何れか1つの発明において、バッテリ取り付け部に対するバッテリパックのスライド方向(取り付け、取り外し方向)について、押圧部を複数個所に配置した電動工具である。
【0013】
第4の発明によれば、バッテリパックのバッテリ取り付け部に対する係合方向(スライド方向に直交する方向)の振動がより確実に吸収される。さらには、係合方向(前後方向)のみならず、左右、上下方向の振動も吸収することができる。
【0014】
第5の発明は、第4の発明において、スライド方向複数個所の押圧部が相互に結合されて一体部品とされた電動工具である。
【0015】
第5の発明によれば、スライド方向複数個所の押圧部を外れにくくすることができ、またスライド方向複数個所の押圧部を1つの部品として取り扱うことができのでその取り扱い性及び組み付け性を高めることができる。
【0016】
第6の発明は、電動モータを駆動源として内装する本機に、電源としてバッテリパックを取り付けた電動工具である。第6の発明では、バッテリ取り付け部若しくはバッテリパックの一方に係合部を設け、他方にこの係合部を係合させる係合受け部を設けた構成を備えている。第6の発明では、係合部と係合受け部との間に弾性的に挟み込まれて押圧される押圧部を介在させた構成となっている。
【0017】
第6の発明によれば、バッテリパックが本機側のバッテリ取り付け部に対して押圧部を介して弾性的に支持(フローティング支持)されることにより、当該バッテリパックの前後、左右、上下のあらゆる方向について振動が吸収される。第6の発明は、スライド取り付け形式の箱体形のバッテリパック、差込み取り付け形式のクラスタ形のバッテリパック等種々取り付け形式のバッテリパックについて適用される。また、押圧部はバッテリ取り付け部側若しくはバッテリパック側の何れか一方又は双方であって、係合部若しくは係合受け部の何れか一方又は双方に設けることができる。
【0018】
第7の発明は、第6の発明において、本機のバッテリ取り付け部若しくはバッテリパックの一方に係合部としてのスライドレール部を備え、他方に係合受け部として、スライドレール部をスライド方向に直交する係合方向に係合する断面コ字形のレール受け部を備えており、押圧部をスライドレール部の係合方向の両面とレール受け部との間に介在させた電動工具である。
【0019】
第7の発明によれば、電動モータを駆動源として内装する本機と、本機のバッテリ取り付け部に取り付けたバッテリパックを含めて電動工具と把握する場合に、バッテリ取り付け部若しくはバッテリパックの一方にスライドレール部が設けられ、他方にレール受け部が設けられており、レール受け部にスライドレール部を挿入(スライド)させてバッテリパックがバッテリ取り付け部に取り付けられる。第7の発明によれば、スライドレール部若しくはレール受け部の一方又は双方の係合方向の両面に押圧部が設けられている。このため、バッテリパックの取り付け状態において、スライドレール部の係合方向の両面とレール受け部との間に押圧部が弾性的に挟み込まれて押圧されることにより当該バッテリパックのバッテリ取り付け部に対する主として係合方向(スライド方向に直交する方向)の振動が吸収される。
【0020】
第7の発明によれば、本機のバッテリ取り付け部側にスライドレール部が設けられた構成の場合、若しくはバッテリパック側にスライドレール部が設けられた構成の2形態のそれぞれについて、スライドレール部側に押圧部を設けた構成とレール受け部側に押圧部を設けた構成の双方が含まれる。
【0021】
第8の発明は、第1〜第7の何れか1つの発明において、押圧部は係合部としてのスライドレール部若しくは係合受け部としてのレール受け部に設けた取り付け凹部内に自身の弾性力を利用して嵌め込み保持されて取り付けられた電動工具である。
【0022】
第8の発明によれば、押圧部を取り付け凹部内に簡単に取り付けることができる一方、振動等により容易に外れないように取り付けることができる。
【0023】
第9の発明は、第1〜第8の何れか1つの発明において、押圧部の押圧面を円弧形状とした電動工具である。
【0024】
第9の発明によれば、バッテリパックの取り付け、取り外し時における移動抵抗を小さくすることができ、これによりバッテリパックの取り付け、取り外しの操作性を高めることができる。
【0025】
第10の発明は、電動工具のバッテリ取り付け部に取り付けられるスライド取り付け形式のバッテリパックである。第10の発明に係るバッテリパックは、バッテリ取り付け部に対して、スライド方向に直交する係合方向に係合されるスライド案内部を有している。第10の発明では、スライド案内部の係合方向の両面に、バッテリ取り付け部に対して弾性的に押圧させる押圧部を設けた構成となっている。
【0026】
第10の発明によれば、バッテリパックについて、電動工具側への取り付け時における係合方向の振動が吸収される。スライド案内部としては、スライドレール部若しくはこのスライドレール部を受けるレール受け部とすることができる。
【0027】
第11の発明は、電動モータを駆動源として内装する本機に、電源としてバッテリパックを取り付けた電動工具である。第11の発明では、バッテリパックを取り付けるためのバッテリ取り付け部若しくはバッテリパックの一方に、凸部を設け、バッテリ取り付け部若しくはバッテリパックの他方が、凸部を一方側及び他方側から弾性保持可能に構成されている。
【0028】
第11の発明によれば、本機側のバッテリ取り付け部とバッテリパックの一方に設けた凸部が、他方によって弾性保持されることにより当該バッテリパックの振動が抑制される。
【発明を実施するための形態】
【0030】
次に、本発明の実施形態を
図1〜
図13に基づいて説明する。
図1〜
図3に示すように本実施形態の電動工具1は、いわゆるマルチツールと称される手持ち式の電動工具であって、先端刃具を交換することにより石工ボードの切断、Pタイルの剥離、木材の研削等の各種の作業を行うことができる多機能な電動工具である。
【0031】
この電動工具1は、円筒形の本体ハウジング2の長手方向中程に駆動源としての電動モータ3を内装した工具本体(本機)10を備えている。電動モータ3の回転出力は、スピンドル4に対してその軸周りの往復揺動運動に変換されて出力される。電動モータ3の出力軸3aには駆動軸5が連結されている。駆動軸5は軸受6,7を介して出力軸3aと同軸に回転自在に支持されている。駆動軸5の前部には、その回転軸線に対して僅かに偏心した偏心軸部5aが設けられている。偏心軸部5aには偏心ローラ14が取り付けられている。
【0032】
本体ハウジング2の前部に、スピンドル4が軸受8,9を介して回転自在に支持されている。スピンドル4は、電動モータ3のモータ軸線(出力軸3aの軸線)に対して直交する軸線回りに回転自在に支持されている。スピンドル4の下部側は、本体ハウジング2の前部下面から下方へ突き出されている。この突き出し部分に先端刃具Tが取り付けられている。先端刃具Tは、インナフランジ11とアウタフランジ12に挟み込まれた状態でスピンドル4の下部に取り付けられている。アウタフランジ12を外せば、先端刃具Tを別のものに交換することができる。
【0033】
スピンドル4の上部には、二股形状の作動アーム13が取り付けられている。作動アーム13は、スピンドル4に対して軸回りに相対回転不能かつ軸方向に変位不能に固定されている。作動アーム13は、相互に一定の間隔をおいて平行に後方へ延びる2つのアーム部13aを備えている。両アーム部13a間に上記偏心軸部5aの偏心ローラ14が介在されている。両アーム部13aは、偏心ローラ14の回転及び変位を許容する状態でその左右両側に接触している。
【0034】
本体ハウジング2の上面には、スライド操作式の起動スイッチ16が設けられている。本体ハウジング2の後部はメインスイッチ15が配置されている。起動スイッチ16には本体ハウジング2内において後方へ長く延びるアーム部16aが設けられている。アーム部16aの後部がメインスイッチ15に連携されている。起動スイッチ16を前側へスライド操作すると、メインスイッチ15がオンして電動モータ3が起動する。電動モータ3が起動して駆動軸5が回転すると、偏心ローラ14が当該駆動軸5の回転軸線周りに公転する。偏心ローラ14の公転動作のうち左右方向の動作がアーム部13aに伝達されて、作動アーム13がスピンドル4の軸線周りに揺動する。作動アーム13が揺動することによりスピンドル4がその軸線回りに一定の角度で揺動して、先端刃具Tに高速揺動運動が与えられる。起動スイッチ16を後ろ側へスライド操作すると、メインスイッチ15がオフして電動モータ3が停止する。
【0035】
本体ハウジング2の後部側は、使用者が把持しやすい太さに形成されて、使用者が把持するグリップ部2aとされている。グリップ部2aの後ろ側上面には、変速ダイヤル17が設けられている。変速ダイヤル17を回転操作することにより、電動モータ3の出力回転数を調整することができる。電動モータ3の出力回転数を調整することにより、先端刃具Tの揺動速度を作業内容に合わせて適切に調整することができる。
【0036】
グリップ部2aの後ろ側にバッテリ取り付け部20が一体に設けられている。バッテリ取り付け部20は、グリップ部2aの後部から主として下方へ張り出す状態に設けられている。このバッテリ取り付け部20にバッテリパック30が取り付けられる。
【0037】
バッテリ取り付け部20の後面には、左右一対のスライドレール部21が設けられている。左右のスライドレール部21は相互に接近する方向に張り出す状態に設けられている。左右のスライドレール部21間には、正負の接続端子22が設けられている。正負の接続端子22がバッテリパック30の端子受け部に接続されて当該バッテリパック30が工具本体10に対して電気的に接続される。
【0038】
このバッテリ取り付け部20に取り付けられるバッテリパック30は、出力電圧が10.8Vのリチウムイオンバッテリで、ケース内に複数本のバッテリセルを内装した構成を備えている。このバッテリパック30は、別途用意した充電器で充電することにより繰り返し使用できる二次電池で、ねじ締め機や切断工具等その他の電動工具の電源としても利用できる汎用性の高いものが用いられている。
【0039】
このバッテリパック30は、左右一対のレール受け部31を備えている。レール受け部31は、工具本体10側のスライドレール部21を挿入可能な断面コ字形を有している。バッテリパック30をバッテリ取り付け部20に対してバッテリ取り付け方向にスライドさせて、左右のレール受け部31にスライドレール部21を相対的に進入させることにより、当該バッテリパック30が取り付けられる。
図4に示すように取り付けられた状態では、スライドレール部21がレール受け部31の前側係合部31aと後ろ側係合部31bとの間に沿って挿入された状態となる。これにより、バッテリパック30がその取り付け方向に対してほぼ直交する方向(係合方向、
図4では前後方向)に変位不能に係合された状態となる。
【0040】
なお、図では見えていないが(例えば
図6参照)、バッテリパック30には凸部によって形成されるロック爪部32bが設けられており、このロック爪部32bがバッテリ取り付け部20側に設けられた凹部によって形成されるロック爪受け部26に係合することにより当該バッテリパック30が取り外し方向へ変位不能にロックされる。アンロックボタン32cを操作することによりロック爪による取り付けロック状態を解除することができ、このアンロック状態でバッテリパック30を取り外し方向(
図4において上方)にスライドさせて取り外すことができる。
図2に示すようにロック爪受け部26の左右両側には、円筒形状の嵌め込み凹部25が設けられている。
図2では省略されているが、この嵌め込み凹部25内に円柱体形の弾性ゴムを嵌め付けておき、この弾性ゴムを取り付けたバッテリパック30に押圧させることにより、当該バッテリパック30の振動若しくはがたつきを防止することができる。
【0041】
左右のスライドレール部21には、取り付けたバッテリパック30の振動を吸収するための振動吸収部23が設けられている。左右の振動吸収部23は相互に左右対称に設けられている。本実施形態では、左右のスライドレール部21に振動吸収部材24を埋め込んで振動吸収部23とされている。振動吸収部23の詳細が
図4に示され、振動吸収部材24の詳細が
図5に示されている。振動吸収部材24は、ゴム製の弾性体で、バッテリパック30のスライド方向前側(
図4では下側)の吸収部24aとスライド方向後ろ側(
図4では上側)の吸収部24bと両吸収部24a,24bを連結する連結部24eを備えている。スライド方向前側の吸収部24aとスライド方向後ろ側の吸収部24bは、それぞれ十字形を有しており、バッテリパック30のスライド方向(取り付け、取り外し方向)に対して直交する方向(
図4では前後方向)に延びる押圧部24c,24dを有している。押圧部24c,24dの先端面は、バッテリパック30のスライド方向について円弧形状に形成されている。
【0042】
左右の振動吸収部材24は、それぞれスライドレール部21の対向面に設けた取り付け凹部21aに弾性的に嵌め込まれて保持されている。
図2及び
図3に示すように取り付け凹部21aには2つの円形の押し込み凹部21bが設けられている。この2つの押し込み凹部21bを利用して主として連結部24eを取り付け凹部21a内に楽に嵌め込むことができ、これにより当該振動吸収部材24を迅速かつ確実に取り付け凹部21a内に保持することができる。
【0043】
スライドレール部21の前後面には、スライド方向前後の吸収部24a,24bの各押圧部24c,24dが突き出されている。片側のスライドレール部21についてそれぞれ突き出された合計4箇所の押圧部24c,24dは、取り付けたバッテリパック30の係合部31a,31bに弾性的に押圧される。
図4において前側の2つの押圧部24cが前側の係合部31aの後面に押圧され、後ろ側の2つの押圧部24dが後ろ側の係合部31bの前面に押圧された状態となる。これにより、バッテリパック30がバッテリ取り付け部20に対して弾性支持されたフローティング状態となって、当該バッテリパック30のバッテリ取り付け部20に対するがたつきが抑制される。
【0044】
上記したようにスライドレール部21に押圧部24c,24dがスライド方向に少なくとも2箇所設けられ、左右スライドレール部21で合計8箇所の押圧部24c,24dが設けれている。その結果、押圧部24c,24dがバッテリパック30のレール受け部31に弾性的に押圧されることにより、バッテリパック30の取り付け方向に直交する前後方向のがたつきが抑制され、さらには、左右、上下方向の振動も吸収することができる。なお、バッテリパック30の取り付け方向(
図1において下向き)に直交する方向(係合方向)とは、側面視で直行する方向であり、
図1において前後方向を言う。また、上下方向、左右方向については当該電動工具1を把持した使用者を基準にして用いる。
【0045】
以上のように構成した本実施形態の電動工具1によれば、バッテリ取り付け部20にバッテリパック30を取り付けた状態では、スライドレール部21の係合方向の両面に設けた押圧部24c,24dが、バッテリパック30のレール受け部31にそれぞれ弾性的に押圧されて、バッテリパック30の主として係合方向(スライド方向に直交する方向)の振動が吸収される。従来対策が不十分であったスライド方向に直交する係合方向の振動が抑制されることにより、チャタリング等の不具合をより確実に防止することができる。
【0046】
例示した実施形態によれば、同一のスライドレールに設けられたスライド方向前側の吸収部24aとスライド方向後ろ側の吸収部24bが連結部24eを介して相互に結合された一体構造となっていることにより、当該振動吸収部材24の部品としての取り扱い性がよくなり、またスライドレール部21に対するその組み付け性を良くすることができる。
【0047】
さらに、スライドレール部21と振動吸収部23の接触面積が増えるため、振動吸収部材24が外れにくくなる。例えば、振動吸収部材24の一部が外れてしまった場合でも、その他の部分がスライドレール部21と係合していることにより、振動吸収部材24の全体が外れてスライドレール部21から脱落してしまうことを防止することができる。
【0048】
また、押し込み凹部21bを利用して、連結部24eを押し込むことにより、外れにくくすることができる。押し込み凹部21bを利用して連結部24eを押し込むことにより、当該連結部24eを取り付け凹部21aのより奥側に配置することができ、これによりスライドレール部21から外れるまでの距離が長くなるので、当該振動吸収部材24を簡単には外れないように取り付けることができる。
【0049】
さらに、各押圧部24c,24dの先端面が、スライド方向について円弧面に形成されているため、バッテリパック30の取り付け、取り外し時において当該各押圧部24c,24dのレール受け部31に対する移動抵抗を低減して当該バッテリパック30の取り付け、取り外しの操作性を確保することができる。
【0050】
以上説明した実施形態には、種々変更を加えることができる。例えば、スライド方向前側の吸収部24aとスライド方向後ろ側の吸収部24bが連結部24eにより相互に連結された一体構造を例示したが、係る連結部24eを省略して前後の吸収部を別体とする構成としてもよい。吸収部は例示したようにスライド方向の2箇所に配置する構成とする他、スライド方向中央の1箇所に配置する構成、若しくはスライド方向の3箇所以上に配置する構成としてもよい。
【0051】
また、スライド方向前後の吸収部24a,24bのそれぞれについて、スライドレール部21の係合方向両面に突き出す押圧部24c,24dを一体に備える構成を例示したが、各押圧部24c,24dについてもそれぞれ別体で構成して個別にスライドレール部21に設けた保持孔内に弾性的に嵌め込んで固定する構成としてもよい。また、各押圧部24c,24dは、接着等により取り付ける構成としてもよい。
【0052】
さらに、バッテリ取り付け部20側に振動吸収部23を設けた構成を例示したが、例えば同様の振動吸収部または個別の吸収部若しくは押圧部をバッテリパック30側に設ける構成としてもよい。
図6には、左右一対のスライドレール部32aを有するバッテリパック32が示されている。スライドレール部32aがバッテリパック32側に設けられ、これを受けるレール受け部が工具本体10のバッテリ取り付け部20側に設けられている場合には、スライド方向前側の吸収部33aとスライド方向後ろ側の吸収部33bと両吸収部33a,33bを相互に連結する連結部33cを有する一体型の振動吸収部33を、バッテリパック32のスライドレール部33に設ける構成とすることができる。スライド方向前後の吸収部33a,33bの各押圧部は、スライドレール部32aの上面又は下面にそれぞれ突き出されている。
【0053】
係る第2実施形態の振動吸収構造によれば、バッテリパック32側にスライドレール部32aに設けた振動吸収部33a,33bの各押圧部がバッテリ取り付け部側のレール受け部に弾性的に押圧されて、スライド方向に直交する係合方向の振動が抑制される。なお、
図6に示すようにバッテリパック32のスライド方向後面側には、凸部によって形成されるロック爪32bが設けられている。前記したようにこのロック爪32bはアンロックボタン32cを図示下側に押し下げ操作することにより下方へ退避させることができる。当該バッテリパック32の取り付け状態はロック爪32bによりロックされ、この取り付けロック状態はアンロックボタン32cを押し下げ操作することにより解除することができる。
【0054】
例示した押圧部24c,24dは、スライドレール部側に設ける構成、若しくはレール受け部側に設けることができる。また、
図7〜
図10に示すようにスライドレール部を工具本体10のバッテリ取付け部側に備える場合、若しくはスライドレール部をバッテリパック側に備える場合の何れであってもスライドレール部又はレール受け部側若しくは双方に設けることができる。
【0055】
図7及び
図8は、工具本体40のバッテリ取り付け部41側にスライドレール部42を備え、バッテリパック43側にレール受け部44を備える場合を例示している。係る場合に、
図7に示すようにスライドレール部42の係合方向両面に押圧部45を設ける構成とし、若しくは
図8に示すようにレール受け部44の係合方向両面に押圧部46を設ける構成とすることができる。
【0056】
図9及び
図10は、工具本体50のバッテリ取り付け部51側にレール受け部52を備え、バッテリパック53側にスライドレール部54を備える場合を例示している。係る場合に、
図9に示すようにバッテリパック53側のスライドレール部54の係合方向両面に押圧部55を設ける構成とし、若しくは
図10に示すようにバッテリ取り付け部51側のレール受け部52の係合方向両面に押圧部56を設ける構成とすることができる。以上のように、工具本体のバッテリ取り付け部に対してスライド取り付け形式のバッテリパックを取り付ける構成であって、一方の断面コ字形のレール受け部に他方のスライドレール部を挿入させて当該挿入方向(スライド方向)に直交する係合方向に係合させる構成において、当該レール受け部とスライドレール部との係合方向両面に弾性体を挟み込んで押圧させることにより、バッテリパックの係合方向の振動を効率よく抑制することができる。
【0057】
以上説明した振動吸収部は、先端刃具Tをスピンドル4の軸周りに一定角度で揺動させるマルチルーツ(電動工具1)に限らず、ねじ締め機や切断工具等その他の電動工具であって、スライド取り付け形式のバッテリパックを電源とする電動工具の振動対策として広く適用することができる。
【0058】
また、取り付けられるバッテリパックは、例示した10.8V出力のものに限らず、例えば14.4Vや18V出力のバッテリパックについても同様に適用することができる。さらに、バッテリパックの取り付け形式は、例示した箱体を有するスライド取り付け形式のものに限定されず、例えば
図11及び
図12に示すようにクラスタ形を有する差し込み取り付け形式のバッテリパック63についても同様に適用することができる。この差し込み取り付け形式のバッテリパック63の場合、電動工具60は概ね円筒形のバッテリ取り付け部61を備えている。このバッテリ取り付け部61内に差し込んで当該バッテリパック63が取り付けられる。
【0059】
バッテリ取り付け部61内には、一対の係合部62が相互に対向する状態に設けられている。両係合部62のそれぞれに押圧部65が設けられている。押圧部65は、取り付け方向の2箇所に設けられている。各押圧部65は係合部62の両面(回転方向前方及び後方、すなわち、一方側及び他方側)に設けられている。バッテリパック63には、係合部62を係合させる断面コ字形の係合受け部63aが設けられている。バッテリパック63を
図11において白抜き矢印で示す取り付け方向に移動させてバッテリ取り付け部61内に差し込むと、係合受け部63aの両面に押圧部65が弾性的に押圧される。このように、バッテリパックの取り付け形式が、差し込み取り付け形式である場合についても前記例示した振動吸収部材を適用して同等の作用効果を得ることができる。また、特に、前後方向の軸方向に対する回転方向のがたつきも抑制することができ、回転方向の振動も吸収することができる。
【0060】
また、クラスタ形を有する差し込み取り付け形式のバッテリパック75については、例えば
図13に示すような弾性支持構造とすることができる。電動工具70のバッテリ取り付け部71の内周面に沿って2つの円環形を有する弾性部材(例えばゴムリング)72,73が取り付けられている。2つの弾性部材72,73は、取り付け方向に一定の間隔をおいて配置されている。バッテリパック75には、左右一対のロックアーム76が設けられている。両ロックアーム76は、支軸77を介して左右(
図13では上下)に傾動可能に支持されている。両ロックアーム76の先端部は山形に形成されて係合部76aとされている。
【0061】
バッテリパック75をバッテリ取り付け部71に差し込んだ状態において、両ロックアーム76の係合部76aを2つの弾性部材72,73間に弾性的に押し込むことにより、当該バッテリパック75を前後方向(前方及び後方、すなわち、一方側及び他方側)から弾性支持(フローティング支持)することができ、これにより当該バッテリパック75の取り付け方向前後、左右及び上下方向の振動を吸収若しくは低減することができる。
【0062】
なお、
図13と逆の構造としても良い。すなわち、ハウジングに、操作することにより移動可能な凸部を配置する。クラスタ型(差込み型)のバッテリパックに、前記凸部が嵌合可能な凹部を形成する。このバッテリパックの凹部に2つの弾性体を保持する。この弾性体に前後方向(一方側及び他方側)を保持されるように、前記凸部が配置されるようにしても良い。また、この際に、2つの弾性体でなくとも、凹み部を有するような1つの弾性体にし、凹み部で前記した凸部が前後方向を保持されるようにしても良い。
【0063】
いうまでもないが、
図11から
図13に記載されたクラスタ型のバッテリパックを有する電動工具は、様々なものへと適用可能である。電動ドライバ、電動ノコギリ、電動ハンマの他、電動ヘッジトリマ、電動チェンソー等の園芸工具にも適用可能である。