特許第6661331号(P6661331)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6661331膨縮装置および該膨縮装置を備えた昇降装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6661331
(24)【登録日】2020年2月14日
(45)【発行日】2020年3月11日
(54)【発明の名称】膨縮装置および該膨縮装置を備えた昇降装置
(51)【国際特許分類】
   A61H 33/00 20060101AFI20200227BHJP
【FI】
   A61H33/00 310N
【請求項の数】5
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-213100(P2015-213100)
(22)【出願日】2015年10月29日
(65)【公開番号】特開2017-80166(P2017-80166A)
(43)【公開日】2017年5月18日
【審査請求日】2018年9月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】390000996
【氏名又は名称】株式会社ハイレックスコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】特許業務法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】阿尾 泰宏
(72)【発明者】
【氏名】吉村 龍雄
【審査官】 須賀 仁美
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−014740(JP,A)
【文献】 特開2003−334229(JP,A)
【文献】 特開平11−290414(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61H33/00−37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部への流体の充填と排出とにより、膨張と収縮との変化が可能な膨縮部材と、
前記膨縮部材と接続し、前記流体を前記膨縮部材の内部に供給する流通管と、
前記膨縮部材が所定の膨張状態となったときに、前記流体の前記膨縮部材への供給を規制する充填量規制機構と、を有する膨縮装置を備えた、前記膨縮部材の膨張および収縮により昇降対象を昇降させる昇降装置であって、前記昇降装置は、
前記膨縮部材の膨張によって上昇し、収縮によって降下し、前記膨縮部材の上部に設けられた荷重支持部を備え
前記充填量規制機構は、
前記流通管に取り付けられる排出部材と、
前記膨縮部材の体積の変化に伴って移動する移動部材と、を有し、
前記排出部材は、前記流通管内の流体を前記流通管の外へ排出可能な排出部と、前記排出部から流体が排出される排出状態および前記排出部が閉鎖される閉鎖状態の切り替えが可能な切替部とを有し、
前記移動部材は、前記膨縮部材が所定の膨張状態となったときに前記切替部を作動して前記排出部を前記排出状態とし、前記膨縮部材の所定の膨張状態が解除されたときに前記切替部の作動を解除して前記排出部を前記閉鎖状態とし、
前記切替部は、前記移動部材により操作される操作部と、前記操作部により開閉作動する弁部とを有し、
前記切替部は、前記膨縮部材が前記所定の膨張状態となったときの前記膨縮部材の上端側の側方に位置し、前記移動部材は、前記膨縮部材の上端側に設けられ、
前記操作部が、前記移動部材の移動軌跡上に位置するように設けられ、前記膨縮部材が前記所定の膨張状態となったときに、前記移動部材が前記操作部を操作して前記切替部が作動する、昇降装置。
【請求項2】
手動により前記切替部の切り替えが可能な手動部材を備えた、請求項1に記載の昇降装置。
【請求項3】
前記昇降装置が、
昇降方向に亘って延びる支持部材と、
前記膨縮部材の膨張および収縮に伴って昇降し、前記支持部材に沿って摺動することで前記膨縮部材の上下方向の挙動をガイドするガイド部材と、を有する、請求項1または2に記載の昇降装置。
【請求項4】
前記膨縮部材が浴槽の壁部に沿って伸縮するように浴槽内に設置され、
前記荷重支持部が、前記膨縮部材の上部に利用者が着座可能な着座部である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の昇降装置。
【請求項5】
内部への流体の充填と排出とにより、膨張と収縮との変化が可能な膨縮部材と、
前記膨縮部材と接続し、前記流体を前記膨縮部材の内部に供給する流通管と、
前記膨縮部材が所定の膨張状態となったときに、前記流体の前記膨縮部材への供給を規制する充填量規制機構と、を有する膨縮装置であって、
前記充填量規制機構は、
前記流通管に取り付けられる排出部材と、
前記膨縮部材の体積の変化に伴って移動する移動部材と、を有し、
前記排出部材は、前記流通管内の流体を前記流通管の外へ排出可能な排出部と、前記排出部から流体が排出される排出状態および前記排出部が閉鎖される閉鎖状態の切り替えが可能な切替部とを有し、
前記移動部材は、前記膨縮部材が所定の膨張状態となったときに前記切替部を作動して前記排出部を前記排出状態とし、前記膨縮部材の所定の膨張状態が解除されたときに前記切替部の作動を解除して前記排出部を前記閉鎖状態とし、
前記膨縮装置が、手動により前記切替部の切り替えが可能な手動部材を備えた、膨縮装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部へ流体が充填されることにより膨張し、内部から流体が排出されることにより収縮する膨縮部材を備えた膨縮装置および該膨縮装置を備えた昇降装置に関する。
【背景技術】
【0002】
内部に流体が充填されて膨張し、前記流体が排出されることで収縮する膨縮部材を用い、膨縮部材の圧力変化や体積変化を利用して、膨張と収縮とを行う膨縮装置が知られている。
【0003】
このような膨縮装置の一例としては、例えば、膨縮の運動を伸縮駆動として利用した、特許文献1に記載の入浴補助装置が挙げられる。この入浴補助装置では、流体圧バッグ(膨縮部材)の内部に空気あるいは水などの流体を導入することにより流体圧バッグの上端に固定した昇降板を上昇させ、この空気又は水などの液体を流体圧バッグ内から抜き出すことにより昇降板を下降させるよう構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−76355号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の入浴補助装置では、膨縮部材である流体圧バッグの内部に導入される空気や水などの流体の量が一定の量を超えると、流体圧バッグが破損する原因となったり、流体を供給する供給機構が故障したりする原因となりうる。しかし、このような過剰な膨張を抑制するために、流体圧バッグの圧力を計測する圧力計と、その圧力計の数値により流体の流量を制御する制御部を設けたのでは装置構成が複雑となる。
【0006】
本発明の目的は、簡単な構成で、膨縮部材の内部の流体の量が一定の量を超えることを抑制できる膨縮装置および該膨縮装置を備えた昇降装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の膨縮装置は、内部への流体の充填と排出とにより、膨張と収縮との変化が可能な膨縮部材と、前記膨縮部材と接続し、前記流体を前記膨縮部材の内部に供給する流通管と、前記膨縮部材が所定の膨張状態となったときに、前記流体の前記膨縮部材への供給を規制する充填量規制機構と、を有する膨縮装置であって、前記充填量規制機構は、前記流通管に取り付けられる排出部材と、前記膨縮部材の体積の変化に伴って移動する移動部材と、を有し、前記排出部材は、前記流通管内の流体を前記流通管の外へ排出可能な排出部と、前記排出部から流体が排出される排出状態および前記排出部が閉鎖される閉鎖状態の切り替えが可能な切替部とを有し、前記移動部材は、前記膨縮部材が所定の膨張状態となったときに前記切替部を作動して前記排出部を前記排出状態とし、前記膨縮部材の所定の膨張状態が解除されたときに前記切替部の作動を解除して前記排出部を前記閉鎖状態とすることを特徴とする。
【0008】
また、本発明の昇降装置は、上記膨縮装置を備え、前記膨縮部材の膨張および収縮により昇降対象を昇降させる昇降装置であって、前記膨縮部材の膨張によって上昇し、収縮によって降下する荷重支持部と、昇降方向に亘って延びる支持部材と、前記膨縮部材の膨張および収縮に伴って昇降し、前記支持部材に沿って摺動することで前記膨縮部材の上下方向の挙動をガイドするガイド部材と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の膨縮装置および該膨縮装置を備えた昇降装置によれば、簡単な構成で、膨縮部材の内部の流体の量が一定の量を超えることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態の膨縮装置の収縮状態を示す概略図である。
図2図1の膨縮装置の膨張状態を示す概略図である。
図3】本発明の一実施例の昇降装置を示す斜視図である。
図4図3の昇降装置を模式的に示し、着座部およびガイド部材が降下した状態を示す概略図である。
図5図4に示す昇降装置において、着座部およびガイド部材が上昇し、膨縮部材が所定の膨張状態まで膨張した状態を示す概略図である。
図6】昇降装置の着座部およびガイド部材が所定の上昇位置にあり、切替部が閉鎖された状態を示す、充填量規制機構の概略図である。
図7】昇降装置の膨縮部材が所定の膨張状態となり、切替部が作動して排出状態となった状態を示す、充填量規制機構の概略図である。
図8】昇降装置の手動部材が操作されて、切替部が排出状態となった状態を示す、充填量規制機構の概略図である。
図9】昇降装置の手動部材が操作されて、切替部が排出状態となり、排出部から水が排出されることにより、着座部が降下している過程を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照し、本発明の一実施形態の膨縮装置および該膨縮装置を備えた昇降装置を説明する。
【0012】
図1および図2に示されるように、本実施形態の膨縮装置1は、内部への流体の充填と排出とにより、膨張と収縮との変化が可能な膨縮部材2と、膨縮部材2と接続し、流体を膨縮部材2の内部に供給する流通管3と、膨縮部材2が所定の膨張状態となったときに、流体の膨縮部材2への供給を規制する充填量規制機構4と、を有している。
【0013】
膨縮装置1は、膨縮部材2内部に流体を充填して膨縮部材2を膨張させ、膨縮部材2から流体を排出して膨縮部材2を収縮させることにより、駆動対象(たとえば、後述する荷重支持部S等。図3参照)を駆動する。なお、膨縮装置1は、たとえば、膨縮装置1の膨縮部材2が膨張および収縮(以下、膨張および収縮を単に膨縮と呼ぶ場合がある)することにより昇降する昇降装置(図3参照)に用いることができるが、膨縮装置1の用途は昇降装置に限定されるものではない。たとえば、膨縮装置1は、膨縮部材2が膨縮することにより駆動される、昇降以外(たとえば水平方向の移動など)の各種駆動装置などに適用することができ、マッサージ器やショックアブソーバー等、水や空気などの流体により膨縮部材を膨縮させて作動する膨縮機構に適用することもできる。
【0014】
膨縮部材2は、図1および図2に示されるように、内部に流体を充填可能な充填部Fを有し、充填部F内に流体が供給されることにより膨張状態(図2参照)となり、充填部Fから流体が排出されることにより収縮状態(図1参照)となる、変形可能な部材である。膨縮部材2は、内部に充填部Fを有し、膨張状態と収縮状態との間の可逆的な変形により、膨縮動作が可能に成形されている。膨縮部材2の材料は、特に限定されるものではなく、たとえば、ゴムや弾性を有する合成樹脂などの弾性材料により形成することができる。
【0015】
膨縮部材2は、本実施形態では、図1および図2に示されるように、内部に充填部Fを有する中空の略筒状体として形成されている。より具体的には、図1および図2に示されるように、膨縮部材2の軸X方向に伸縮可能な、山部Mと谷部Vとが軸X方向に連続して交互に形成された蛇腹部21を有している。本実施形態では、膨縮部材2は、蛇腹部21の軸X方向の一端側(図1中、下側)に、一端側閉鎖部22と、蛇腹部2の軸X方向の他端側(図1中、上側)に、他端側閉鎖部23とを有している。本実施形態では、一端側閉鎖部22と、他端側閉鎖部23とにより、蛇腹部21の両端が閉鎖され、蛇腹部21の内部空間である充填部Fを画定している。
【0016】
本実施形態では、充填部Fへの流体の充填および排出により、蛇腹部21が伸縮し、膨縮部材2の軸X方向の長さが変動し、後述する荷重支持部Sのような駆動対象を移動させる。なお、後述する昇降装置では、膨縮部材2が略鉛直方向に膨縮動作を行い、荷重支持部Sを昇降させているが、膨縮部材2の膨縮動作は略鉛直方向に限定されない。たとえば、膨縮部材2は、略水平方向に膨縮動作を行ってもよいし、鉛直方向や水平方向に対して傾斜した方向に膨縮動作を行うものであってもよい。また、膨縮部材2は、膨縮により、少なくとも一方向の寸法変化により駆動対象を移動させることができればよく、たとえば膨縮部材2の軸X方向と径方向の両方など、複数の方向に膨縮を行うようなものであってもよい。膨縮部材2の構成は、充填部Fを有し、少なくとも一方向の寸法変化を伴うように膨縮が可能であればよく、膨縮部材2の形状は蛇腹部21を有するものに限定されず、たとえば、蛇腹部21を有しない略筒状、略球状、卵型状等であってもよい。
【0017】
本実施形態の膨縮装置1は、図1および図2に示されるように、膨縮部材2に流体を供給する流体供給機構WFに接続され、流体供給機構WFから供給される流体により、膨縮部材2の膨縮動作が行われる。流体供給機構WFは、膨縮部材2に流体を供給することができれば、その機構は特に限定されないが、たとえば、流体供給機構WFとして、後述する実施例において示される水道の蛇口や、流体を供給するポンプ、コンプレッサー等を用いることができる。なお、膨縮部材2に供給される流体は特に限定されず、水、水以外の液体、空気等の気体など、流動性のあるものであればよい。
【0018】
本実施形態では、流体供給機構WFから供給される流体は、流通管3を介して膨縮部材2に供給される。本実施形態では、図1および図2に示されるように、流通管3の一端側は、流体供給機構WFに直接または間接的に接続され、流通管3の他端側は、膨縮部材2側に直接または間接的に接続される。より具体的には、本実施形態では、図1および図2に示されるように、流通管3の他端は、流通ポートPを介して膨縮部材2の一端側閉鎖部22に接続され、流体供給機構WFから流通管3に流入した流体は、一端側閉鎖部22に設けられた流通ポートPを介して充填部Fに供給される。なお、一端側閉鎖部22および他端側閉鎖部23は、本実施形態では、蛇腹部21とは別部材として示しているが、一端側閉鎖部22および他端側閉鎖部23の一方または両方を蛇腹部21と一体に形成しても構わない。
【0019】
図1および図2に示されるように、流体供給機構WFから膨縮部材2の充填部Fに流体が供給されると、膨縮部材2が膨張し(図2参照)、充填部Fから流体が排出されることにより、膨縮部材2が収縮する(図1参照)。なお、膨縮部材2の充填部Fからの流体の排出方法は特に限定されることはなく、たとえば、膨縮部材2の一端側閉鎖部22の外側面に排出用の栓等を設けたり、または、後述する弁部SVとは別に、流通管3の途中に、図示しない切替弁を設けて、流体の流入時と排出時とで切替弁を切り替えることを可能にし、流体の排出を行っても構わない。また、詳細は後述するが、膨縮部材2や流通管3に別途排出用の栓や弁を設けずに、流通管3に取り付けられる排出部材41により、膨縮部材2内の流体を排出するようにしてもよい。この場合、装置構成が複雑とならず、部品点数を減らすことができる。また、流通管3を水道の蛇口に取外し可能に接続し、流体からの排出を、流通管3との接続の解除により行ってもよい。
【0020】
膨縮部材2に設けられる流通ポートPは、本実施形態では、流体の供給および排出が可能な1つのポートとして例示しているが、流通ポートPは、たとえば2つ以上(たとえば、流入用の流入ポートと、排出用の排出ポート)設けても構わない。また、流通ポートPを設ける位置は、一端側閉鎖部22に限定されず、他端側閉鎖部23に設けてもよいし、他の部位に設けても構わない。また、本実施形態では、図1および図2に示されるように、流通管3は、継手部Jにより接続された複数の流通管31、32から構成されている。しかし、流通管3は、流体供給機構WFにより供給される流体を膨縮部材2に送り込むことができればよく、流通管3の本数や、継手部Jのような、流通管3の接続構造等は特に限定されない。
【0021】
充填量規制機構4は、膨縮部材2が所定の膨張状態、たとえば、膨縮部材2が予め設定された所定の高さまたは大きさなど、所定の体積を超えて膨張したときに、膨縮部材2内への過剰な流体の供給を規制する機構である。充填量規制機構4は、図1および図2に示されるように、流通管3に取り付けられる排出部材41と、膨縮部材2の体積の変化に伴って移動する移動部材42と、を有している。
【0022】
排出部材41は、流通管3を通る流体が、膨縮部材2へ過剰に流入しないように、流通管3から流体を排出することが可能な部材である。排出部材41は、図1および図2に示されるように、流通管3内の流体を外部へと排出できるよう、流通管3に接続されている。流通管3と排出部材41との間の接続方法は特に限定されないが、本実施形態では、図1および図2に示されるように、2つの流通管31、32を接続する継手部Jを介して、流通管3の内部と排出部材41の内部とが流体接続されている。
【0023】
図1および図2に示されるように、排出部材41は、流通管3内の流体を流通管3の外へ排出可能な排出部41aと、排出部41aから流体が排出される排出状態および排出部41aが閉鎖される閉鎖状態の切り替えが可能な切替部41bとを有している。より具体的には、本実施形態では、図1および図2に示されるように、排出部材41は、流通管3からの流体が流入する流入口Iと、流入口Iと連通した内部空間を内部に有し、切替部41bが設けられる切替室41cと、切替部41bにより、切替室41c内の内部空間と開閉可能に連通する排出部41aと、排出部41aの端部に設けられた排出口Dとを有している。なお、切替室41cの内部空間と、排出部41aの内部とは、連通口Cにより連通されているが、図1においては、切替部41b(たとえば、後述する弁部SV)により閉鎖されている。
【0024】
排出部41aは、流通管3から排出部材41側へ流入した流体を外部へ排出する部位である。排出部41aは、流通管3内の流体を外部へ排出することができれば、特にその構造は限定されないが、たとえば、後述する実施例に示されるように、ホース等の管状部材が直接または間接的に接続されたものであってもよいし、ホース等の管状部材を介さずに単に排出口Dが形成されたものであってもよい。
【0025】
移動部材42は、膨縮部材2に直接または間接的に接続され、膨縮部材2の膨張および収縮に応じた体積の変化に伴って、膨縮部材2と連動して移動する。移動部材42は、膨縮部材2が所定の膨張状態となったときに切替部41bを作動して排出部41aを排出状態とし、膨縮部材2の所定の膨張状態が解除されたときに切替部41bの作動を解除して排出部41aを閉鎖状態とする。ここで、「所定の膨張状態」とは、たとえば、設計等により定められる、膨縮部材2内部への流体の供給を停止すべき膨縮部材2の膨張状態など、予め設定された膨張状態またはその予め設定された膨張状態を超えた任意の膨張状態をいう。この所定の膨張状態は、膨縮部材2の材質や、大きさ、さらには移動部材の移動範囲等に応じて適宜設定される。
【0026】
移動部材42は、膨縮部材2が所定の膨張状態にあるときに、切替部41bを作動させることが可能な作動位置(図2参照)まで移動するように構成されている。また、移動部材42は、膨縮部材2が所定の膨張状態から収縮し、所定の膨張状態が解除されるときに、作動位置から非作動位置まで移動して、切替部41bの作動を解除する。なお、作動位置は、本実施形態では、移動部材42が切替部41bに接触してから切替部41bが操作されるときの移動部材42の位置をいい、非作動位置は、移動部材42が切替部41bに接触していない場合など、切替部41bが操作されていないときの移動部材42の位置をいう。
【0027】
なお、移動部材42は、切替部41bを作動可能であれば、その形状は特に限定されない。たとえば、図1および図2に示されるように、移動部材42は、板状に形成されていてもよいし、後述する実施例における、ガイド部材のように筒状であってもよいし、その他の形状であってもよい。また、移動部材42は、図1および図2に示されるように、膨縮部材2(他端側閉鎖部23)に一体的に設けられていてもよいし、後述する実施例のように、膨縮部材2とは別体として設けられていてもよい。
【0028】
切替部41bは、流通管3と排出部41aとの間の流路(たとえば、図1および図2の連通口C)を開閉する。具体的には、移動部材42により切替部41bが作動されたときに、連通口Cを開放することにより、排出部41aから流体が排出される排出状態(たとえば、図2参照)とし、移動部材42による切替部41bの作動が解除されたときに、連通口Cを閉鎖することにより、排出部41a側へ流体が排出されない閉鎖状態(たとえば、図1参照)とする。
【0029】
切替部41bは、上述した排出状態と閉鎖状態の切り替えが可能であれば、その構造は特に限定されないが、本実施形態では、切替部41bは、図1および図2に示されるように、移動部材42により操作される操作部Lと、操作部Lにより開閉作動する弁部SVとを有している。切替部41bが、操作部Lと弁部SVとにより構成されている場合、上述した排出状態と閉鎖状態を簡単な構成で実現することができる。操作部Lは、移動部材42により操作が可能であり、移動部材42により操作された際に、排出部41aが排出状態となるように弁部SVを操作することができればよく、その形状や構造は特に限定されるものではない。また、本実施形態では、操作部Lは、図1および図2においては、回転軸Axを中心に揺動可能なものとして示されているが、弁部SVを操作可能であれば、揺動以外の動作、たとえば、直線移動などの動作が可能に構成されてもよい。弁部SVは、操作部Lにより開閉作動するものであれば、その形状や構造は限定されず、任意の公知の弁を用いることができる。また、本実施形態では、切替部41bは、切替部41bが操作されていない場合には、排出部41aへ流体が流れないようにするために、連通口Cが常時閉鎖されるように構成されている。この閉鎖状態は、たとえば、弁部SVのような連通口Cを閉鎖する部材を、バネ等の付勢手段により連通口Cを閉鎖する方向に付勢するように構成することにより実現することができる。
【0030】
切替部41bは、図1および図2に示されるように、切替部41bの少なくとも一部(たとえば、操作部L)が、移動部材42の移動軌跡上に位置するように設けられ、移動部材42が図2に示す作動位置まで移動した際に、移動部材42により作動される。また、切替部41bは、図2に示されるように、上述した膨縮部材2が所定の膨張状態にあるときの移動部材42の位置に対応する位置に設けられている。なお、本実施形態では、図1および図2中、膨縮部材2の上端側に移動部材42が設けられ、切替部41bも膨張状態にあるときの膨縮部材2の上端側の側方に位置しているが、移動部材42および切替部41bの位置は、所定の膨張状態にあるときに切替部41bが移動部材42により作動されるものであれば、特に限定されない。たとえば、移動部材42が膨縮部材2の膨縮方向(軸X方向)の中央部に設けられ、切替部41bが、所定の膨張状態にあるときの膨縮部材2の中央部に対応する位置に設けられていても構わない。なお、本実施形態では、膨縮部材2が膨縮動作をする際に、切替部41b自体は所定の位置で保持されるように(膨縮方向で移動しないように)、膨縮装置1の切替部取付部(図1および図2においては図示せず)に取り付けられる。
【0031】
上述したように、本実施形態の膨縮装置1は、図1および図2に示されるように、移動部材42が、膨縮部材2が所定の膨張状態となったときに切替部41bを作動して排出部41aを排出状態とし、膨縮部材2の所定の膨張状態が解除されたときに切替部41bの作動を解除して排出部41aを閉鎖状態とする。これにより、本実施形態の膨縮装置1は、簡単な構成で、膨縮部材2の内部の流体の量が一定の量を超えることを抑制することができる。より具体的には、図1に示される収縮状態の膨縮部材2の内部に流通管3から流体が供給され、膨縮部材2が膨張すると、移動部材42は膨縮部材2が膨張する方向に沿って移動する。詳細は後述するが、膨縮部材2への流体の供給により膨縮部材2が膨張していき、図2に示されるように、膨縮部材2が所定の膨張状態になると、膨縮部材2とともに移動する移動部材42は図2に示されるように、作動位置まで移動して、切替部41bを作動させる。切替部41bが作動すると、図2に示されるように連通口Cが開放して排出部41aが排出状態となり、流通管3内の流体は、排出部41aから外部へ向かう流路を経由して、排出口Dから外部へと流体の排出が可能になる。これにより、膨縮部材2が所定の膨張状態となった後は、仮に流体供給機構WFから膨縮部材2へと流体が供給され続けたとしても、流通管3内の流体は、排出部41aを経由して外部へと排出される。したがって、膨縮部材2の内部へ過剰な量の流体が供給されることが抑制され、膨縮部材2が過剰な量の流体により塑性変形したり破損したりすることが抑制される。また、各部材間の接合部(たとえば、蛇腹部21と一端および他端側閉鎖部22、23との間の接合部や、流通管3と継手部Jとの間の接合部や、流通管3と流通ポートPとの間の接合部、流通管3と流体供給機構WFとの間の接合部など)が破損したりすることが抑制される。さらに、本実施形態の膨縮装置1では、膨縮部材2の圧力ではなく、膨縮部材2の膨張後の移動部材42の位置に基づいて流体を外部に排出しているので、膨縮部材2の圧力を計測する圧力計や、その圧力計の測定値に基づいて流量を制御する制御部なども不要となる。したがって、装置構成が簡素化し、低コストで膨縮装置を製造可能となる。なお、切替部41bの切り替えによって膨縮部材2の内部へ過剰な量の流体の供給が抑制された後に、流体の供給自体を停止することで膨縮部材2の膨張状態を維持することができるが、所定の膨張状態となったときに、供給される流体の量と排出される流体の量が同一となるように構成して、後述する荷重支持部Sの位置を維持することもできる。さらに、充填量規制機構4は、所定の膨張状態となったときに、供給される流体の量と排出される流体の量とが比例するように構成されることもできる。
【0032】
つぎに、図3図9を参照し、上述の膨縮装置1を浴槽内に設置される昇降装置に適用した実施例について説明する。なお、以下に説明する実施例はあくまで一例であり、本発明の膨縮装置および本発明の昇降装置は、浴槽内に設置される昇降装置に限定されるものではなく、他の用途の膨縮装置および昇降装置に適用することができる。また、以下で説明する各構成は、昇降装置に限らず、上述した膨縮装置にも適用することができる。
【0033】
図3に示されるように、昇降装置Aは、膨縮装置1を備え、膨縮部材2の膨張および収縮により昇降対象を昇降させる。本実施例では、図3図5に示されるように、膨縮部材2が浴槽Baの壁部Wに沿って伸縮するように浴槽Ba内に設置される。膨縮部材2を伸縮するように構成することで、膨縮部材が図中左右方向へも膨らむ場合に比べて、膨縮部材2が収縮時にコンパクトとなり、省スペースな昇降装置Aとすることができる。また、膨縮部材が図中左右方向へも膨らむような場合に比べて、膨縮部材2に供給する流体量を少なくすることができ、さらに膨縮部材2の圧力の調整も容易となる。ここで、膨縮部材2が浴槽Baの壁部Wに沿って伸縮するとは、後述する着座部Sが、浴槽Baの壁部Wが延びる方向と大きく異ならない方向で、浴槽Baの底面側と水面側との間を移動するように膨縮部材2が伸縮することをいい、膨縮部材2が壁部Wと平行に伸縮する場合に限られない。
【0034】
また、本実施例の昇降装置Aは、図3に示されるように、浴槽Baの縁Eに昇降装置Aを取り付けるための取付部材5をさらに備え、昇降装置Aは、膨縮部材2に水を供給する流体供給機構WFとなる水道の蛇口(以下、単に蛇口WFという)に流通管3が接続されている。取付部材5は、本実施例では図3に示されるように、浴槽Baの縁Eに係止させて取り付けられ、昇降装置Aを浴槽Ba内に入れた状態で、昇降装置Aの水平方向の移動を抑制する。なお、取付部材5は、昇降装置Aを浴槽Baに対して取付けることにより、昇降装置Aの移動を抑制することができれば、他の構造であってもよい。
【0035】
また、昇降装置Aは、図3図5に示されるように、膨縮部材2の膨張によって上昇し、収縮によって降下する荷重支持部Sと、昇降方向に亘って延びる支持部材6と、膨縮部材2の膨張および収縮に伴って昇降し、支持部材6に沿って摺動することで膨縮部材2の上下方向の挙動をガイドするガイド部材(以下、単にガイド部材42という)と、を有している。
【0036】
荷重支持部Sは、昇降装置Aにより昇降させる昇降対象を支持する部位である。本実施例では、荷重支持部Sにより支持されて昇降する昇降対象は、浴槽Baに入浴する利用者であり、荷重支持部Sは、膨縮部材2の上部に利用者が着座可能な着座部(以下、荷重支持部Sを着座部Sとも呼ぶ)である。なお、昇降装置Aが、たとえば、浴槽Ba内に設置される昇降装置A以外の昇降装置の場合は、昇降対象は、荷物等の物としてもよく、荷重支持部Sに支持される対象は、人に限定されるものではない。
【0037】
着座部Sは、特に限定されないが、本実施例では、膨縮部材2の上端側を覆う、上述の他端側閉鎖部に対応した上端側閉鎖部(以下、上端側閉鎖部23と呼ぶ)に回転可能に取り付けられる。これにより、利用者の姿勢を、浴槽Baの縁Eから着座部Sに座った際の姿勢から、浴槽Ba内に利用者が位置し、かつ、利用者が面する方向が、縁Eの長手方向と平行な方向となるような入浴姿勢まで容易に変えることができる。また、着座部Sの周囲には、図3に示されるように、持ち手H1と背凭れH2とが設けられている。持ち手H1は着座部Sに着座した利用者が姿勢維持などのために把持するために設けられると共に、入浴中の利用者の前方への移動を規制する。また、背凭れH2は入浴中の利用者の後方への移動や転倒を抑制するとともに、背凭れとして機能する。
【0038】
上端側閉鎖部23は、図3に示されるように、上端側閉鎖部23から支持部材6に向かって延びるアームArを有し、アームArがガイド部材42を介して、支持部材6に対して連結されている。アームArは、膨縮部材2を挟むように、膨縮部材2の水平方向に延びるように設けられ、一端にはガイド部材42が設けられている。ガイド部材42は、支持部材6に対して摺動自在に嵌合している。これにより、膨縮部材2の伸縮に応じて、蛇腹部21および上端側閉鎖部23の昇降移動がガイドされながら、膨縮部材2が支持部材6に沿って安定して昇降移動する。なお、上述の一端側閉鎖部に対応する下端側閉鎖部22は、浴槽Baの底面に配置されている。
【0039】
支持部材6は、膨縮部材2の昇降時に、膨縮部材2を昇降方向に案内し、着座部Sが水平方向へ揺動しないように支持している。なお、本実施例では、2本の棒状の支持部材6(図4および図5等参照)が示されているが、支持部材6は、水平方向成分を有する力が膨縮部材2に加えられた場合に、アームArを介して、水平方向成分の力を支えることができ、昇降移動をする昇降装置Aを支持することができれば、他の構造であってもよい。支持部材6は、膨縮部材2の昇降方向に対して平行に延びており、本実施例においては、膨縮部材2が浴槽Baの底面の設置位置から壁Wの上側(例えば、縁E)に向かう方向と平行な方向に延びている。
【0040】
また、本実施例では、図3図5に示されるように、流体供給機構となる水道の蛇口WFは、流通管3に接続され、蛇口WFと膨縮部材2との間に流通管3が延びて、膨縮部材2内の下端側閉鎖部22に設けられた流通ポートPを介して水を供給している。流通管3は、蛇口WFと継手部Jとの間にタンクを介して流体の流路を構成してもよい。第1流通管31が蛇口WFから継手部Jまで延び、継手部Jから下端側閉鎖部22に向かって第2流通管32が延びている。
【0041】
また、継手部Jには、図3図5に示されるように、流通管3の他、排出部材41の切替部41bが接続されている。切替部41bは、図6および図7に示されるように、移動部材となるガイド部材42により操作される操作部Lと弁部SVが設けられている。操作部Lは、昇降装置Aの取付部材5に接続された切替部取付部51(図3参照)に、回転軸Ax周りに揺動可能に取り付けられている。弁部SVは、図6および図7に示されるように、切替室41c内に設けられ、膨縮部材2が上述した所定の膨張状態よりも収縮した状態では、バネSPにより切替室41cと排出部41aとの間の連通口Cに向かって付勢され、連通口Cを閉鎖している(図6参照)。切替室41cに接続される排出部41aは、本実施例では、図4および図5に示されるように、切替部41bから浴槽Baの外部に向かって延びるホース等の管状部材が接続された部分であり、浴槽Baの外部において、排出部41aの端部に設けられた排出口Dから排水可能となっている。なお、操作部Lは、昇降装置Aの取付部材5に接続されず、直接または間接的に浴槽Baに取り付けられてもよい。
【0042】
また、操作部Lは、本実施例では、図4および図5に示されるように、支持部材6の上端側の側方に位置するように配置されている。また、操作部Lは、弁部SVが連通口Cを閉鎖する閉鎖位置と、弁部SVが連通口Cを解放する解放位置との間を移動可能とされ、移動部材42により操作されることで、閉鎖位置と解放位置との間を移動するように構成されている。操作部Lは、図6および図7に示されるように、ガイド部材42の移動軌跡上に向かって突出し、膨縮部材2の所定の膨張状態となり、ガイド部材42が上述した作動位置まで上昇したときに、ガイド部材42の上端が接触して操作される当接部L1と、当接部L1がガイド部材42の上端と当接して操作された際に、当接部L1の変位に伴って、切替部41bが排出状態となるように弁部SVを操作する、弁部SVに接続された弁作動部L2とを備えている。当接部L1および弁作動部L2は、回転軸Axからアーム状に突出して延びている。また、本実施例では、操作部Lは、後述する手動部材7により操作される手動部材当接部L3を有している。なお、本実施例では、操作部Lの形状は、回転軸Axを中心として、回転軸Axから略Y字状に3つのアームが延びた形状である。操作部の形状は特に限定されるものではなく、膨縮部材が作動位置まで膨張した際に、移動部材が切替部を操作できる形状であればよい。
【0043】
また、本実施例では、図3図7に示されるように、手動により切替部41bの切り替えが可能な手動部材7を備えている。手動部材7は任意であるが、膨縮部材2が所定の膨張状態となる前に、流体の排出状態とすることができるので、状況に応じて流体の充填状態を制御することができる。手動部材7は、本実施例では、切替部41bの操作部Lと連動して、弁部SVを作動できるように構成されている。具体的には、手動部材7は、図6および図7に示されるように、手動操作時に操作されるレバー部71と、レバー部71の操作時に、操作部Lの手動部材当接部L3に当接して、操作部Lを回転させる突片72とを有している。なお、手動部材7は、操作部Lと一体に設けても構わない。操作部Lおよび手動部材7の作用については後述する。
【0044】
以下、本実施例の使用方法の一例について説明する。なお、本発明は以下の使用方法に限定されるものではない。
【0045】
本実施例の昇降装置Aは、たとえば、図4に示されるように、膨縮部材2の蛇腹部21が収縮した状態で浴槽Ba内に設置される。この図4に示される状態において、蛇口WFから水が供給されると、流通管3を介して水が蛇腹部21に向かって供給される。流通管3を通って供給された水は、膨縮部材2の流通ポートPを介して、蛇腹部21の充填部Fに送られる。充填部Fに水が供給されると、蛇腹部21は図4の状態から図5の状態に向かって徐々に伸長する。なお、膨縮部材2が膨張する過程においては、弁部SVは閉鎖状態であり、排出部41a側に水は排出されない。
【0046】
蛇腹部21が伸長すると、着座部Sが上昇するとともに、ガイド部材42が支持部材6に沿って上昇する。膨縮部材2の充填部Fにさらに水が供給され、着座部Sが浴槽Baの縁E近傍まで上昇し、利用者が着座可能な所定の上昇位置まで到達する。このときに、蛇口WFから水の供給が停止されていない場合、着座部Sが所定の上昇位置を越えて、膨縮部材2は上述した所定の膨張状態となる。ここで、「所定の上昇位置」とは、着座部Sが上昇し、利用者が浴槽Baの縁Eから着座可能な位置であり、かつ、上述したガイド部材42の非作動位置にあるときの位置をいう。
【0047】
膨縮部材2が所定の膨張状態となる過程で、図6に示されるように、ガイド部材42の上端が操作部Lの当接部L1に当接した後、図7に示されるようにガイド部材42はさらに上方に移動して、ガイド部材42の上端が当接部L1を上方に向けて押圧し、回転軸Axを中心として図中時計回りに操作部Lを回転させる。図7に示されるように、ガイド部材42により、操作部Lが回転されると、弁作動部L2により連通口Cを開放するように弁部SVが操作され、切替部41bが図6に示される閉鎖状態から、図7に示される排出状態へと切り替えられる。これにより、図7に示されるように、弁部SVが連通口Cを開放して、閉鎖されていた流通管3と排出部41aとが連通し、図5に示されるように、流通管3内の水が排出部41aを介して、排出口Dから排出される。この排出口Dからの水の排出により、利用者は蛇口WFからの水の供給を停止するタイミングを容易に知ることもできる。
【0048】
以上のように、膨縮部材2が所定の膨張状態となった後に、仮に蛇口WFから膨縮部材2へと水が供給され続けたとしても、流通管3内の水は、排出部41aを経由して外部へと排出される。したがって、膨縮部材2の内部へ過剰な量の水が供給されることが抑制され、膨縮部材2の蛇腹部21が過剰な量の水により塑性変形したり、蛇腹部21と上端および下端側閉鎖部22、23との間の接合部や、流通管3と継手部Jとの間の接合部や、流通管3と流通ポートPとの間の接合部、流通管3と蛇口WFとの間の接合部などが破損することが抑制される。また、充填量規制機構4が、供給される水の量と排出される水の量が同一となるように構成されていると、膨縮部材2に過剰な量の水が供給されることによって、ガイド部材42がそれ以上上昇しない位置まで移動した後、膨縮部材2のみが伸長し続けることなどによる、ガイド部材42と支持部材6との間の接合部における変形を抑制することもできる。
【0049】
また、排出部41aの排出口Dから水が排出され、たとえば、蛇口WFからの水の供給が停止された場合など、膨縮部材2は適正な膨張状態となり、着座部Sおよびガイド部材42は、所定の膨張状態のときの高さよりもわずかに低い所定の上昇位置まで降下する。着座部Sおよびガイド部材42が降下すると、図7の状態から図6の状態となり、ガイド部材42により操作されていた操作部Lの操作が解除されるため、弁部SVが図6に示されるように、連通口Cを閉鎖して、閉鎖状態となる。したがって、膨縮部材2内の過剰な水が排出されると、弁部SVが連通口Cを閉鎖して、着座部Sは利用者が着座可能な図6に示す所定の上昇位置で維持される。このように、本実施例では、支持部材6に対してガイド部材42を昇降させて、ガイド部材42が所定の位置まで上昇すると、操作部Lが自動的に操作され、ガイド部材42が所定の位置(所定の上昇位置)まで下がると、操作部Lの操作が解除されるため、昇降装置Aにおいて複雑な操作などが不要であり、簡単な構成により着座部Sを上昇位置で維持することができる。また、このような着座部Sの上昇位置での維持に、電力は不要であり、機械的な機構で上昇位置の制御が可能となる。そのため、浴槽Baなどの水を用いる場所においても、安全に昇降装置Aを使用することができる。
【0050】
また、本実施例では、膨縮部材2の膨張後のガイド部材42の高さに基づいて水を外部に排出しているので、膨縮部材2の圧力を計測する圧力計や、その圧力計の測定値に基づいて流量を制御する制御部なども不要となる。また、本実施例の昇降装置Aは、膨縮部材2に加わる圧力に関係なく、ガイド部材42の高さに基づいて着座部Sを上昇位置で維持するため、着座部Sに着座する利用者の体重などに影響されることがなく、体重の異なる利用者であっても、同じように着座部Sを上昇位置で維持することができる。
【0051】
膨縮部材2が伸長し、それに伴って、着座部Sが上昇位置にあるときに(図6参照)、利用者の着座部Sへの着座が可能となる。利用者が着座部Sに着座し、入浴準備が完了すると、膨縮部材2を収縮させて着座部Sを降下させるために、膨縮部材2の充填部Fの水を排出可能にする。このときの水の排出をする排出手段は特に限定されないが、たとえば、本実施例では、手動部材7を用いて充填部F内の水を排出する。具体的には、図8および図9に示されるように、手動部材7のレバー部71を操作すると、図8中、手動部材7は二点鎖線で示す位置から実線で示すように、時計回りに回転軸Ax2を中心に回転する。手動部材7に設けられた突片72はレバー部71とともに時計回りに回転し、突片72の回転により、操作部Lの手動部材当接部L3が突片72と接触して、手動部材当接部L3を押し下げる。これにより、操作部Lは、弁部SVが連通口Cを開放するように操作され、手動部材7の操作に連動して操作部Lが操作されて、切替部41bが排出状態となり、流通管3と排出部41aとが連通する。膨縮部材2内の水は、着座部やアーム部の重量や、着座した利用者の体重による圧力といった蛇腹部21への負荷により、図9に示されるように、排出部41aの排出口Dから排出され、着座部Sが降下される。なお、本実施例では、手動部材7を操作部Lと別体としていることで、操作部Lが手動部材と一体とされている場合と比べて、手動部材7を操作しやすい。すなわち、操作部Lは、ガイド部材42に操作されているため、操作部Lが手動部材と一体とされていると操作しにくい。一方、本実施例のように、手動部材7を操作部Lと別体とすると操作しやすいため、容易に水を排出させることができる。
【0052】
本実施例では、膨縮部材2への水の充填量規制時の水の排出と、着座部Sを降下させるときの水の排出との両方を、同じ弁部SVおよび排出部41aを用いて行うことができる。したがって、昇降装置Aの装置構成が簡素化し、部品点数を減らすことができる。
【0053】
着座部Sを降下させて、たとえば図4に示されるような所定の位置としたところで、水の排出を停止する。これにより、利用者が入浴した状態となる。なお、着座部Sの高さを微調整する際は、蛇口WFから水を供給すれば着座部Sが上昇し、手動部材7を操作すれば、着座部Sが降下する。したがって、利用者の入浴中に着座部Sの昇降方向での位置を容易に調整することができる。特に、充填量規制機構4が、手動部材7により連通口Cの開口する大きさを調整できるように構成されていると、着座部Sの昇降方向の位置を微調整しやすい。
【0054】
利用者が入浴を終了する際には、蛇口WFから流通管3を介して膨縮部材2に水を供給することで、図4の状態から再度昇降装置Aを上昇させて停止させ、着座部Sを回転させて図5の状態とし、利用者を浴槽Baの外へと移す。その後、昇降装置Aを片付けるために、図5の状態から図4の状態へと膨縮部材2を再度収縮させる。膨縮部材2を収縮させる際は、手動部材7の操作や、膨縮部材2の下端側閉鎖部22に排出栓などが設けられている場合には、その排出栓を外すことにより、膨縮部材2の充填部Fから水を排出させる。
【符号の説明】
【0055】
1 膨縮装置
2 膨縮部材
21 蛇腹部
22 一端側閉鎖部(下端側閉鎖部)
23 他端側閉鎖部(上端側閉鎖部)
3、31、32 流通管
4 充填量規制機構
41 排出部材
41a 排出部
41b 切替部
41c 切替室
42 移動部材(ガイド部材)
5 取付部材
51 切替部取付部
6 支持部材
7 手動部材
71 レバー部
72 突片
A 昇降装置
Ar アーム
Ax、Ax2 回転軸
Ba 浴槽
C 連通口
D 排出口
E 浴槽の縁
F 充填部
H1 持ち手
H2 背凭れ
I 流入口
J 継手部
L 操作部
L1 当接部
L2 弁作動部
L3 手動部材当接部
M 山部
P 流通ポート
S 荷重支持部(着座部)
SP バネ
SV 弁部
V 谷部
W 浴槽の壁部
WF 流体供給機構(蛇口)
X 膨縮部材の軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9