(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記突起は、前記タンクの底部から所定の高さだけ上方、及び/又は、前記アウターパイプの上端部から所定の高さだけ下方の位置に設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載のアキュームレータ。
前記突起は、少なくとも、前記液状部分の突沸に伴う異音発生の下限液面高さ位置と前記液状部分の最高液面高さ位置との間の高さ領域に設けられていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のアキュームレータ。
前記布状体又は前記発泡材は、少なくとも、前記液状部分の突沸に伴う異音発生の下限液面高さ位置と前記液状部分の最高液面高さ位置との間の高さ領域に巻装もしくは外挿されていることを特徴とする請求項1から10のいずれか一項に記載のアキュームレータ。
【背景技術】
【0002】
一般に、カーエアコン等を構成するヒートポンプシステム200は、
図20に例示される如くに、圧縮機210、室外熱交換器220、室内熱交換器230、膨張弁260、四方切換弁240等に加えて、アキュームレータ250を備えている。
【0003】
かかるシステム200においては、冷房運転と暖房運転の切り換え(流路切換)を四方切換弁240で行うようにされ、冷房運転時には、
図20(A)に示される如くのサイクルで冷媒が循環され、このときは室外熱交換器220が凝縮器として働くとともに、室内熱交換器230が蒸発器として働く。一方、暖房運転時には、
図20(B)に示される如くのサイクルで冷媒が循環され、このときは室外熱交換器220が蒸発器として働くとともに、室内熱交換器230が凝縮器として働く。どちらの運転時にも、アキュームレータ250には、蒸発器(室内熱交換器230又は室外熱交換器220)から低温低圧の気液混成状態の冷媒が四方切換弁240を介して導入される。
【0004】
アキュームレータ250としては、例えば特許文献1等に所載のように、流入口及び流出口が設けられた蓋部材によりその上面開口が気密的に閉塞された有底円筒状のタンク、このタンクの内径より小径の笠状ないし逆立薄鉢状の気液分離体、上端部が流出口に連結されて垂下されたインナーパイプとアウターパイプからなる二重管構造の流出管、この流出管(のアウターパイプ)の底部付近に設けられた、液相冷媒及びそれに混入されたオイル(冷凍機油)に含まれる異物を捕捉・除去するためのストレーナ等を有するものが知られている。
【0005】
このアキュームレータ250に導入された冷媒は、前記気液分離体に衝突して放射状に拡散されて液相冷媒と気相冷媒とに分離され、液相冷媒(オイルを含む)はタンク内周面を伝うように流下してタンク下部に溜まるとともに、気相冷媒は流出管におけるインナーパイプとアウターパイプとの間に形成される空間(気相冷媒下送流路)を下降し、インナーパイプ内空間を上昇して圧縮機210の吸入側に吸入されて循環せしめられる。
【0006】
また、液相冷媒と共にタンク下部に溜まるオイルは、液相冷媒との比重や性状の相違等によりタンク底部側に移動していき、流出管を介して圧縮機吸入側に吸入される気相冷媒に吸引されて、ストレーナ(の網目フィルタ)→流出管(アウターパイプ)の底部に形成されたオイル戻し孔→流出管のインナーパイプ内空間を通って気相冷媒と共に圧縮機吸入側に戻されて循環せしめられる(特許文献2、3等も併せて参照)。
【0007】
ところで、システム(圧縮機)の運転停止時には、オイルを含む液相冷媒がアキュームレータのタンクの下部に溜まるが、オイルとして冷媒と相溶性が無くかつ冷媒より比重が小さいものが使用されている場合には、液相冷媒とオイルとの比重及び粘性の相違により、二層に分離、すなわち、上側にオイル層、下側に液相冷媒層が形成される。
【0008】
このような二層分離状態において、システム(圧縮機)を起動すると、タンク内の圧力が急速に低下するため、液相冷媒が突発的に激しく沸騰(以下、突沸と称する)して大きな衝撃音が発生するという問題が生じていた。
【0009】
かかる突沸現象及びそれに伴う衝撃音の発生原因としては、圧縮機の起動時にタンク内(圧縮機吸入側)の圧力が低下しても、ある時点までは、オイル層が冷媒層の蓋となっているため(オイル層には突沸現象は生じない)、前記突沸現象の発生は抑えられるが、オイル層より上側(の気相冷媒)とそれより下側(の液相冷媒)との圧力差が所定圧以上となったとき、液相冷媒が一気に爆発的に沸騰するために発生すると推察される(圧縮機での突沸現象についての説明が記載されている特許文献2も参照されたい)。
【0010】
また、圧縮機の停止時においてオイルと液相冷媒が上記のように二層分離状態とならない場合、つまり、圧縮機の停止時においてもオイルと液相冷媒が混合状態のままである場合、あるいは、オイルとして冷媒と相溶性が無くかつ冷媒より比重が大きいものが使用されて、上側に液相冷媒層、下側にオイル層が形成される場合でも、冷媒やオイルの種類・性状等の条件次第では、液相冷媒が一気に爆発的に沸騰する前記突沸現象及びそれに伴う衝撃音が発生することがある。
【0011】
このような突沸現象及びそれに伴う衝撃音の発生を抑えるための一つの方策として、前記特許文献2には、レシプロエンジンを駆動源とする圧縮機の回転軸(クランクシャフト)に撹拌羽根を設け、圧縮機の起動時に前記撹拌羽根を回転させてオイル層部分を撹拌し、液相冷媒をオイル上部に放出することが提案されている。
【0012】
また、特許文献3には、アキュームレータ(のタンク)内においてオイルと液相冷媒が二層分離状態となった際にそれらを確実に混合することを主目的として、圧縮機から吐出された気相冷媒の一部を開閉弁付きのバイパス流路を介してタンクの底部から液相冷媒中に吹き込んで撹拌することが提案されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上記した如くに、圧縮機の起動時に、タンク内においてオイルと液相冷媒からなる液状部分を撹拌することにより、突沸現象及びそれに伴う衝撃音の発生を抑えられることが本発明者等によっても確認されているが、上記従来の提案技術では、撹拌するための手段(撹拌羽根及びそれを回転させるための駆動源や、開閉弁付きのバイパス流路等)が別途に必要となり、アキュームレータ(及びそれを備えたヒートポンプシステム)の複雑化、コストアップ、大型化等を招くという問題がある。
【0015】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、複雑化、コストアップ、大型化等を招くことなく、圧縮機の起動時における突沸現象及びそれに伴う衝撃音の発生を効果的に抑えることのできるアキュームレータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前記の目的を達成すべく、本発明に係るアキュームレータは、基本的には、流入口及び流出口が設けられたタンクと、前記流出口に連結されて前記タンク内に配在された流出管とを備えるアキュームレータであって、前記アキュームレータにおける前記タンク内に溜まる液相冷媒とオイルとからなる液状部分に浸漬する部分に、沸騰の起点となる突起が設けられ、前記流出管は、前記流出口に連結されて前記タンク内に垂下されたインナーパイプ及び該インナーパイプの外側に配在されたアウターパイプからなる二重管構造とされ、前記突起は、前記アウターパイプの外周並びに前記タンクの内周及び底部上面の少なくとも一部に設けられ
、前記アウターパイプの外周に、布状体又は発泡材が巻装もしくは外挿され、前記布状体又は前記発泡材は、細長い材料が、その端面同士の間に隙間をあけるように、その端面同士を突き合わせるように、あるいはその端面同士を重ねるように前記アウターパイプの外周に螺旋状に巻回あるいは外挿されたものであることを特徴としている。
また、本発明に係るアキュームレータは、基本的には、流入口及び流出口が設けられたタンクと、前記流出口に連結されて前記タンク内に配在された流出管とを備えるアキュームレータであって、前記アキュームレータにおける前記タンク内に溜まる液相冷媒とオイルとからなる液状部分に浸漬する部分に、沸騰の起点となる突起が設けられ、前記流出管は、前記流出口に連結されて前記タンク内に垂下されたインナーパイプ及び該インナーパイプの外側に配在されたアウターパイプからなる二重管構造とされ、前記突起は、前記アウターパイプの外周並びに前記タンクの内周及び底部上面の少なくとも一部に設けられ、前記アウターパイプの外周に、布状体又は発泡材が巻装もしくは外挿され、前記布状体又は前記発泡材は、複数の材料より成り、該複数の材料が、それらの端面同士の間に隙間をあけるように、それらの端面同士を突き合わせるように、あるいはそれらの端面同士を重ねるように前記アウターパイプの外周に隣接して巻回あるいは外挿されていることを特徴としている。
【0018】
好ましい形態では、前記突起は、前記タンクの底部から所定の高さだけ上方、及び/又は、前記アウターパイプの上端部から所定の高さだけ下方の位置に設けられる。
【0019】
他の好ましい形態では、前記突起は、少なくとも、前記液状部分の突沸に伴う異音発生の下限液面高さ位置と前記液状部分の最高液面高さ位置との間の高さ領域に設けられる。
【0020】
前記突起は、好ましくは、前記アウターパイプの外周に螺旋状に或いは上下方向に沿って突設される。
【0021】
前記突起は、好ましくは、前記タンクの内周に螺旋状に或いは上下方向に沿って突設される。
【0022】
前記突起は、好ましくは、前記タンクの底部上面に円環状、渦巻状、又は放射状に突設される。
【0023】
前記突起は、好ましくは、プレス加工又は切削加工により形成される。
【0024】
前記突起は、好ましくは、ローレット加工又はねじ加工により形成される。
【0025】
前記突起は、好ましくは、前記アウターパイプ又は前記タンクの部品成形時に同時成形される。
【0027】
更に好ましい形態では、前記布状体又は前記発泡材は、少なくとも、前記液状部分の突沸に伴う異音発生の下限液面高さ位置と前記液状部分の最高液面高さ位置との間の高さ領域に巻装もしくは外挿される。
【0028】
他の好ましい形態では、前記布状体に、冷媒中の水分を吸収除去するための乾燥剤を収納する乾燥剤収納部が設けられる。
【0029】
前記乾燥剤収納部は、好ましくは、前記アウターパイプの外側に上下方向に設けられる。
【0030】
また、前記乾燥剤収納部は、好ましくは、前記アウターパイプの前記流入口側の外側に設けられる。
【0033】
他の好ましい形態では、前記布状体又は前記発泡材には、スリットが形成される。
【0034】
前記スリットは、好ましくは、水平方向に向けて、上下方向に向けて、側面から視て上下方向に対して傾いた方向に向けて、あるいは螺旋状に形成される。
【発明の効果】
【0035】
本発明に係るアキュームレータでは、アキュームレータにおけるタンク内に溜まる液状部分(液相冷媒とオイル)に浸漬する部分に、沸騰(気泡発生)の起点となる突起が設けられ、圧縮機の起動時に、その突起が、液相冷媒が沸騰して気化する際の起点(きっかけ)となり、タンク内の圧力低下に伴って前記液相冷媒が徐々に沸騰(突沸より小さい小沸)する状態となる。すなわち、前記突起により、衝撃音を伴う突沸現象が発生する所定圧に達する以前に突沸よりも小さい沸騰の発生が促進され、前記液相冷媒の沸騰が緩やかに進行するので、圧縮機の起動時における突沸現象及びそれに伴う衝撃音の発生を効果的に抑えることができる。
【0036】
この場合、基本的には、プレス加工や切削加工、ローレット加工やねじ加工、部品成形時の同時成形等により安価にかつ簡便に前記突起を形成した流出管やタンクのみを用意すればよいので、従来のように、撹拌手段として、撹拌羽根及びそれを回転させるための駆動源や開閉弁付きのバイパス流路等を用いる場合に比べて、アキュームレータの構成を簡素化することができ、コスト削減、小型化等を図ることができる。
【0037】
また、本発明に係るアキュームレータでは、流出管を構成するアウターパイプの外周に巻装もしくは外挿されたフェルト等の布状体又は発泡材(以下、布状体等と称する)が沸騰石の役目を果たす。すなわち、圧縮機の起動時において、前記布状体等(の中の気体)が、液相冷媒が沸騰して気化する際の起点(きっかけ)となり、徐々に気泡が出る状態、つまり、液相冷媒が徐々に気化する状態となる。そのため、液相冷媒の沸騰が緩やかに進行し、その結果、液相冷媒が一気に爆発的に沸騰する突沸現象及びそれに伴う衝撃音の発生を更に効果的に抑えることができる。
【0038】
この場合、本発明に係るアキュームレータは、従前のアキュームレータにおけるアウターパイプの外周に、布状体等を巻装もしくは外挿するという、簡単な構成を付加するだけでよいので、前述した従来の方策のように、複雑化、高コスト化、大型化等を招くことはなく、費用対効果に極めて優れるものとなる。
【0039】
また、フェルト等の布状体は、通気性・通水性を有するので、前記アウターパイプの外周に巻装もしくは外挿されたフェルト等の前記布状体に、冷媒中の水分を吸収除去するための乾燥剤を収納する乾燥剤収納部を設けておけば、該乾燥剤収納部がバッグの役目を果たすので、別途に乾燥剤を収納するバッグやその固定手段(結束バンド等)を用意する必要はなくなり、費用対効果が一層高められる。
【0040】
さらにまた、アウターパイプの外周に、布状体等を螺旋状に巻き付けたり、あるいは布状体等を構成する材料を複数準備してこれらの端面同士の間に隙間をあけるように、これらの端面同士が当接するように、あるいはこれらの端面同士が重なるようにして巻き付けたりしてもよく、さらにまた、布状体等にスリットを形成してもよい。この場合には、突沸防止及びそれに伴う衝撃音を更に効果的に抑えることができる。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、本発明の実施形態を図面を参照しながら説明する。
【0043】
[第1実施形態]
図1は、本発明に係るアキュームレータの第1実施形態を示す部分切欠正面図、
図2は、
図1のU−U矢視線に従う拡大断面図である。
【0044】
図示第1実施形態のアキュームレータ1は、前述した
図20に示される如くの、例えば電気自動車用カーエアコンを構成するヒートポンプシステム200におけるアキュームレータ250として用いられるもので、ステンレスあるいはアルミ合金等の金属製の有底円筒状のタンク10を有し、このタンク10の上面開口は、同じ金属製の蓋部材12により気密的に閉塞されている。また、タンク10の底部13には、後述するように、沸騰(気泡発生)の起点となる円環状の突起13aがプレス加工や切削加工等によりその上面(内面)に同心円上に複数形成されている。なお、本実施形態のアキュームレータ1は、例えば、図示のように縦置き、つまり、蓋部材12を上(天)側、タンク10の底部13を下(地)側にして設置される。
【0045】
蓋部材12には、流入口15と段付きの流出口16とが並設されており、蓋部材12の下側に、タンク10の内径より小径の笠状ないし逆立薄鉢状の気液分離体18が配在され、前記流出口16の下部に流出管30の上端部が連結されている。
【0046】
前記流出管30は、その上端部が流出口16の下部にかしめや圧入等により連結されてタンク10内に垂下された金属製のインナーパイプ31と、該インナーパイプ31の外周に配在された合成樹脂製の有底のアウターパイプ32とからなる二重管構造とされ、アウターパイプ32には、後述するように、沸騰の起点となる複数の突起がローレット加工によりその外周に形成されたローレット加工部37が設けられている。
【0047】
なお、インナーパイプ31及びアウターパイプ32の少なくとも一方には、それぞれの間に所定の間隙を確保するためのリブが形成されるのがよい。
【0048】
また、インナーパイプ31、アウターパイプ32、及び前記リブは、アルミ材等を用いた押出し成型により一体的に形成してもよい。すなわち、上記の二重管構造を、アルミ押出し材を用いた一体成型品とすることもできる。
【0049】
アウターパイプ32の下端部は、後述するストレーナ40のケース42における内周段差付き上部42aに圧入等により内嵌固定されている。インナーパイプ31の下端は、アウターパイプ32の底部32bより多少上側に位置せしめられ、アウターパイプ32の上端は蓋部材12より多少下側に位置せしめられている。アウターパイプ32の底部32bの中央には、オイル戻し孔35が形成されている。オイル戻し孔35の孔径は例えば1mm前後に設定されている。
【0050】
インナーパイプ31の上端近くには、バルジ成形等により圧縮曲成された鍔状部31fが設けられている。蓋部材12に気液分離体18及びインナーパイプ31を組み付けるにあたっては、インナーパイプ31の上端部を、気液分離体18に設けられた通し穴19に通すと共に流出口16に下側から圧入又は拡管固定する。これにより、前記気液分離体18が鍔状部31fと蓋部材12の下端面とに挟持されるようにして保持固定される。
【0051】
前記ストレーナ40は、上述した円環状の突起13aが形成されたタンク10の底部13に載せ置かれて固定されており、
図3を参照すればよくわかるように、合成樹脂製の有底円筒状のケース42と該ケース42にインサート成形により一体化された円筒状の網目フィルタ45とからなっている。網目フィルタ45は、例えば、金網や合成樹脂製のメッシュ材等から作製される。
【0052】
ストレーナ40のケース42は、前記アウターパイプ32の下端部が内嵌固定された内周段差付き上部42aと、底板部42cと、この底板部42cの外周に等角度間隔で立設された4本の柱状部42bと、この柱状部42bの上端部と下端部とを含む、所定の肉厚及び帯幅を有する円環帯状の網端埋込部42d、42dと、を有している。この上下の網端埋込部42d、42dに、網目フィルタ45の上下の端部がインサート成形時に一体化されて封止され、また、網目フィルタ45における柱状部42b部分もインサート成形時に当該柱状部42bに一体化されて封止されている。言い換えれば、4本の柱状部42bと上下の網端埋込部42d、42dとにより側面視矩形の4つの窓44が画成され、この各窓44部分に網目フィルタ45が張られていることになる。なお、4本の柱状部42bには型抜き用の勾配が付けられているが、4本の柱状部42bと上下の金網埋込部42d、42dの半径方向の幅は略等しくされている。
【0053】
また、前記タンク10内には、冷媒中の水分を吸収除去すべく、該タンク10の約半分の高さの乾燥剤M入りバッグ50が、該タンク10の内周に沿うように底部13上に載せ置かれて配在されている。このバッグ50は、通気性・通水性並びに所要の形状保持性を有するフェルト等の布状体で作製され、その中に粒状の乾燥剤Mが略満杯に充填されている。
【0054】
このような構成を有するアキュームレータ1においては、従来のものと同様に、蒸発器からの低温低圧の気液混在状態の冷媒が流入口15を介してタンク10内に導入され、導入された冷媒は、気液分離体18に衝突して放射状に拡散されて液相冷媒と気相冷媒とに分離され、液相冷媒(オイルを含む)はタンク10の内周面を伝うように流下してタンク10の下部空間に溜まるとともに、気相冷媒は流出管30におけるインナーパイプ31とアウターパイプ32との間に形成される空間(気相冷媒下送流路)→インナーパイプ31の内空間を介して圧縮機210の吸入側に吸入されて循環せしめられる。
【0055】
また、液相冷媒と共にタンク10の下部空間に溜まるオイルは、液相冷媒との比重や性状の相違等によりタンク10の底部13側に移動していき、流出管30を介して圧縮機吸入側に吸入される気相冷媒に吸引されて、ストレーナ40の網目フィルタ45→オイル戻し孔35→インナーパイプ31の内空間を通って気相冷媒と共に圧縮機吸入側に戻されて循環せしめられる。網目フィルタ45を通る際にはスラッジ等の異物が捕捉され、異物は、循環する冷媒(オイルを含む)から取り除かれる。
【0056】
上記構成に加えて、本実施形態のアキュームレータ1では、アウターパイプ32に、沸騰の起点となる複数の突起がローレット加工によりその外周に形成されたローレット加工部37が設けられるとともに、タンク10の底部13に、沸騰の起点となる円環状の突起13aがプレス加工や切削加工等によりその上面(内面)に同心円上に複数(図示例では、7個)形成されている。
【0057】
ここでは、前記ローレット加工部37は、圧縮機210の停止時においてタンク10内に溜まる液状部分(液相冷媒とオイル)の突沸に伴う異音(衝撃音)発生の下限液面高さ位置Hminと液状部分の最高液面高さ位置Hmaxとの間の高さ領域に亘って設けられている。この下限液面高さ位置Hminや最高液面高さ位置Hmaxは、システムに応じて、タンク10の底部13から所定の高さだけ上方の位置、或いは、アウターパイプ32の上端部から所定の高さだけ下方の位置に予め決められる。
【0058】
なお、アウターパイプ32のローレット加工部37の突起やタンク10の底部13の上面の突起13aは、沸騰を促進すべく、その先端は鋭利に成形されている。
【0059】
上記のように、本実施形態のアキュームレータ1では、アキュームレータ1におけるタンク10内に溜まる液状部分(液相冷媒とオイル)に浸漬する部分に、沸騰(気泡発生)の起点となる突起(アウターパイプ32のローレット加工部37の突起やタンク10の底部13の上面の突起13a)が設けられ、圧縮機210の起動時に、前記突沸現象及びそれに伴う衝撃音が発生する以前に、その突起が、液相冷媒が沸騰して気化する際の起点(きっかけ)となり、タンク10内の圧力低下に伴って前記液相冷媒が徐々に沸騰(突沸より小さい小沸)する状態となる。すなわち、前記突起により、衝撃音を伴う突沸現象が発生する所定圧に達する以前に突沸よりも小さい沸騰の発生が促進され、前記液相冷媒の沸騰が緩やかに進行するので、圧縮機210の起動時における突沸現象及びそれに伴う衝撃音の発生を効果的に抑えることができる。
【0060】
この場合、基本的には、プレス加工や切削加工、ローレット加工等により安価にかつ簡便に前記突起を形成した流出管30(のアウターパイプ32)やタンク10のみを用意すればよいので、従来のように、撹拌手段として、撹拌羽根及びそれを回転させるための駆動源や開閉弁付きのバイパス流路等を用いる場合に比べて、アキュームレータの構成を簡素化することができ、コスト削減、小型化等を図ることができる。
【0061】
また、突沸現象及びそれに伴う衝撃音の発生を抑えるためには、基本的に、前記突起を、前記下限液面高さ位置Hminから上側に設定すればよいが、本実施形態のアキュームレータ1では、タンク10の底部13に突起13aが設けられているので、液状部分の液面高さが下限液面高さ位置Hminよりも低く、突沸現象に伴う衝撃音ほどの大きな異音が発生しないときでも、前記突起13aによりその異音を更に小さくできるとともに、前記突起13aによりタンク10の底部13に載せ置かれたストレーナ40の滑りを抑えられるという効果も得られる。
【0062】
なお、上記実施形態では、タンク10の底部13に円環状の突起13aを同心円上に複数形成しているが、例えば、
図4に示される如くに、その突起を渦巻状に形成してもよいし、
図5に示される如くに、タンク10の底部13の中心から放射状に形成してもよい。
【0063】
また、上記実施形態では、前記ローレット加工部37を、アウターパイプ32における下限液面高さ位置Hminと最高液面高さ位置Hmaxとの間の高さ領域に設けているが、例えば、そのローレット加工部をアウターパイプ32の上下方向(軸線方向)の全体に亘って設けてもよいことは当然である。
【0064】
[第2実施形態]
図6は、本発明に係るアキュームレータの第2実施形態を示す部分切欠正面図である。
【0065】
図示第2実施形態のアキュームレータ2は、第1実施形態のアキュームレータ1に対し、アウターパイプ32における突起の形成方法のみが異なり、他の構成は同じである。なお、本第2実施形態のアキュームレータ2を示す
図6には、第1実施形態のアキュームレータ1の各部に対応する部分に共通の符号が付されている。すなわち、第1実施形態のアキュームレータ1では、沸騰の起点となる突起がローレット加工により形成されていたが、本第2実施形態のアキュームレータ2では、前記突起がねじ加工により形成されている。
【0066】
詳細には、本第2実施形態のアキュームレータ2におけるアウターパイプ32には、螺旋状の突起(ねじ山)が(ねじ加工により)その外周に形成されたねじ加工部38が、前記下限液面高さ位置Hminより若干下側から当該アウターパイプ32の上端部まで設けられている。
【0067】
このような構成とされた第2実施形態のアキュームレータ2においても、アキュームレータ2におけるタンク10内に溜まる液状部分(液相冷媒とオイル)に浸漬する部分に、沸騰(気泡発生)の起点となる突起(アウターパイプ32のねじ加工部38の突起やタンク10の底部13の上面の突起13a)が設けられるとともに、前記アウターパイプ32における突起をねじ加工により形成できるので、第1実施形態のアキュームレータ1と略同様な作用効果が得られることに加えて、前記突起の加工コストを削減できるという効果も得られる。
【0068】
[第3実施形態]
図7は、本発明に係るアキュームレータの第3実施形態を示す部分切欠正面図である。
【0069】
図示第3実施形態のアキュームレータ3は、第1実施形態のアキュームレータ1に対し、アウターパイプ32における突起の形成方法のみが異なり、他の構成は同じである。なお、本第3実施形態のアキュームレータ3を示す
図7には、第1実施形態のアキュームレータ1の各部に対応する部分に共通の符号が付されている。すなわち、第1実施形態のアキュームレータ1では、沸騰の起点となる突起がローレット加工により形成されていたが、本第3実施形態のアキュームレータ3では、前記突起がアウターパイプ32の押し出し成形時に同時成形されている。
【0070】
詳細には、本第3実施形態のアキュームレータ3におけるアウターパイプ32には、上下方向(アウターパイプ32の軸線方向)に沿って延びる複数の突起が(押し出し成形により)その外周に形成された溝入れ部39が、当該アウターパイプ32の下端部から上端部まで(上下方向に亘って)設けられている。
【0071】
このような構成とされた第3実施形態のアキュームレータ3においても、アキュームレータ3におけるタンク10内に溜まる液状部分(液相冷媒とオイル)に浸漬する部分に、沸騰(気泡発生)の起点となる突起(アウターパイプ32の溝入れ部39の突起やタンク10の底部13の上面の突起13a)が設けられるとともに、前記アウターパイプ32における突起を当該アウターパイプ32の部品成形時に同時成形できるので、第1実施形態のアキュームレータ1と略同様な作用効果が得られることに加えて、前記突起の加工コストや加工工程を削減できるという効果も得られる。
【0072】
なお、図示は省略するが、前記突起は、前記アウターパイプ32の外周に代えて又はその外周と共に、タンク10の内周に形成してもよい。その場合、上記第1〜第3実施形態で説明したのと同様の方法により、タンク10の内周に、複数の突起、螺旋状の突起、上下方向に沿って延びる突起等を形成できることは詳述するまでも無い。
【0073】
また、上記第1〜第3実施形態では、インナーパイプとアウターパイプとからなる二重管構造とされた流出管を採用しているが、本発明は、一端側が流出口に連結され、他端側開口が気液分離体の下面近くに位置せしめられた例えばU字状等の流出管を備えたアキュームレータにも適用し得ることは言うまでも無い。
【0074】
[第4実施形態]
図8は、本発明に係るアキュームレータの第4実施形態を示す部分切欠正面図、
図9は、
図8のW−W矢視線に従う拡大断面図である。
【0075】
図示第4実施形態のアキュームレータ4は、第3実施形態のアキュームレータ3に対し、アウターパイプ32の外周に布状体等が巻装もしくは外挿されている構成のみが異なり、他の構成は同じである。なお、本第4実施形態のアキュームレータ4を示す
図8、
図9には、第3実施形態のアキュームレータ3の各部に対応する部分に共通の符号が付されている。
【0076】
詳細には、本第4実施形態のアキュームレータ4では、アウターパイプ32(の溝入れ部39)の外周におけるストレーナ40より上側の部分の全域を覆うように、フェルト、あるいはメッシュ状の可撓性あるいは弾性を有する板状体等の布状体60が巻装もしくは外挿されている。なお、布状体60に代えて、発泡材を用いてもよく、発泡材としては、市販されている合成樹脂、ゴム、セラミック等を素材としたものを用いることができる。
【0077】
また、ここでは、
図9にその断面が示されているように、インナーパイプ31の外部に、長手方向(上下方向)に沿い、かつ、等角度間隔で3枚の板状リブ36が半径方向外方に向けて突設されており、この3枚の板状リブ36の外周側にアウターパイプ32が圧入気味に外挿固定されている。なお、上述したように、インナーパイプ31、アウターパイプ32、及び板状リブ36は、合成樹脂材料やアルミ材等を用いた押出し成型により一体的に形成してもよい。すなわち、上記の二重管構造をアルミ押出し材等を用いた一体成型品としてもよい。
【0078】
このような構成とされた本実施形態のアキュームレータ4では、第1〜第3実施形態のアキュームレータ1〜3と略同様な作用効果が得られることに加えて、流出管30を構成するアウターパイプ32の外周に巻装もしくは外挿された布状体60によってアウターパイプ32に設けた溝(あるいは突起)に接する冷媒が疎な状態となって圧力低下するため、圧縮機210の起動時において、アウターパイプ32に形成した溝(あるいは突起)が、液相冷媒が沸騰して気化する際の起点(きっかけ)となり、徐々に気泡が出る状態、つまり、液相冷媒が徐々に気化する状態となる。そのため、液相冷媒の沸騰が緩やかに進行し、その結果、液相冷媒が一気に爆発的に沸騰する突沸現象及びそれに伴う衝撃音の発生を更に効果的に抑えることができる。
【0079】
この場合、本実施形態のアキュームレータ4では、アウターパイプ32の外周に、布状体60を巻装もしくは外挿するという、簡単な構成を付加するだけでよいので、前述した従来の方策のように、複雑化、高コスト化、大型化等を招くことはなく、費用対効果に極めて優れるものとなる。
【0080】
なお、上記実施形態では、布状体60が、アウターパイプ32の外周におけるストレーナ40より上側の部分の全域を覆うように設けられているが、圧縮機210の起動時における突沸現象及びそれに伴う衝撃音の発生を抑えるためには、基本的に、前記布状体60を、圧縮機210の停止時においてタンク10内に溜まる液状部分(液相冷媒とオイル)の突沸に伴う異音(衝撃音)発生の下限液面高さ位置Hminと液状部分の最高液面高さ位置Hmaxとの間の高さ領域に巻装もしくは外挿すればよい。
【0081】
[第5実施形態]
図10は、本発明に係るアキュームレータの第5実施形態を示す部分切欠正面図である。
【0082】
図示第5実施形態のアキュームレータ5は、第1実施形態のアキュームレータ1に対し、アウターパイプ32の外周に布状体等が巻装もしくは外挿されている構成のみが異なり、他の構成は同じである。なお、本第5実施形態のアキュームレータ5を示す
図10には、第1実施形態のアキュームレータ1の各部に対応する部分に共通の符号が付されている。
【0083】
詳細には、本第5実施形態のアキュームレータ5では、前述した第4実施形態のアキュームレータ4と同様、アウターパイプ32(のローレット加工部37)の外周におけるストレーナ40より上側の部分の全域を覆うように、フェルト等の布状体70が巻装もしくは外挿されている。
【0084】
また、ここでは、ローレット加工部37は、アウターパイプ32の下端部から上端部まで(上下方向の全体に亘って)設けられている。
【0085】
このような構成とされた第5実施形態のアキュームレータ5においても、第1〜第3実施形態のアキュームレータ1〜3と略同様な作用効果が得られることに加えて、第4実施形態のアキュームレータ4と略同様な作用効果が得られる。
【0086】
[第6実施形態]
図11は、本発明に係るアキュームレータの第6実施形態を示す部分切欠正面図である。
【0087】
図示第6実施形態のアキュームレータ6は、第2実施形態のアキュームレータ2に対し、アウターパイプ32の外周に布状体等が巻装もしくは外挿されている構成のみが異なり、他の構成は同じである。なお、本第6実施形態のアキュームレータ6を示す
図11には、第2実施形態のアキュームレータ2の各部に対応する部分に共通の符号が付されている。
【0088】
詳細には、本第6実施形態のアキュームレータ6では、前述した第4及び第5実施形態のアキュームレータ4、5と同様、アウターパイプ32(のねじ加工部38)の外周におけるストレーナ40より上側の部分の全域を覆うように、フェルト等の布状体80が巻装もしくは外挿されている。
【0089】
また、ここでは、ねじ加工部38は、アウターパイプ32におけるストレーナ40より若干上側からその上端部まで設けられている。
【0090】
このような構成とされた第6実施形態のアキュームレータ6においても、第1〜第3実施形態のアキュームレータ1〜3と略同様な作用効果が得られることに加えて、第4及び第5実施形態のアキュームレータ4、5と略同様な作用効果が得られる。
【0091】
[第7実施形態]
図12は、本発明に係るアキュームレータの第7実施形態を示す部分切欠正面図、
図13は、
図12のX−X矢視線に従う断面図である。
【0092】
図示第7実施形態のアキュームレータ7は、上述の第4実施形態のアキュームレータ4に対し、乾燥剤M入りバッグ50が取り除かれ、フェルト等の布状体90に、アウターパイプ32(の溝入れ部39)の外周に外挿固定されるパイプ外挿部92が設けられるとともに、冷媒中の水分を吸収除去するための乾燥剤Mを収納する、上下が塞がれた円筒状の乾燥剤収納部95が設けられている構成のみが異なり、他の構成は同じである。なお、本第7実施形態のアキュームレータ7を示す
図12、
図13には、第4実施形態のアキュームレータ4の各部に対応する部分に共通の符号が付されている。
【0093】
前記乾燥剤収納部95は、アウターパイプ32の流入口15側の外側に、上下方向(アウターパイプ32の軸線方向)に設けられている。また、ここでは、前記乾燥剤収納部95は、パイプ外挿部92の上端部から下端部まで設けられており、その下端部が圧縮機210の停止時においてタンク10内に溜まる液状部分(液相冷媒とオイル)の突沸に伴う異音(衝撃音)発生の下限液面高さ位置Hminより下側に位置せしめられ、その上端部が圧縮機210の停止時においてタンク10内に溜まる液状部分(液相冷媒とオイル)の最高液面高さ位置Hmaxより上側に位置せしめられ、その上部が前記最高液面高さ位置Hmaxよりも上方に突設されている。
【0094】
フェルト等の布状体は、通気性・通水性を有するので、本実施形態のように、フェルト等の布状体90に、パイプ外挿部92に加えて、冷媒中の水分を吸収除去するための乾燥剤Mを収納する乾燥剤収納部95を設けておけば、当該乾燥剤収納部95がバッグの役目を果たすので、別途に乾燥剤Mを収納するバッグやその固定手段(結束バンド等)を用意する必要はなくなり、費用対効果が一層高められる。
【0095】
また、乾燥剤収納部95の上部を前記最高液面高さ位置Hmaxよりも上方に位置させておけば、圧縮機210の起動時における突沸現象及びそれに伴う衝撃音の発生がより確実に抑えられる。
【0096】
なお、図示例では、第4実施形態のアキュームレータ4における布状体に乾燥剤収納部を設ける形態としたが、第5実施形態のアキュームレータ5や第6実施形態のアキュームレータ6における布状体に乾燥剤収納部を採用してもよいことは言うまでも無い。
【0097】
[第4〜第7実施形態の変形形態]
上記した第4〜第7実施形態における布状体等として1枚の(矩形状の)材料を用い、これをアウターパイプに巻回あるいは外挿してもよいが、例えば
図14に示される如くに、細長い1枚の材料(例えば、フェルト、あるいはメッシュ状の可撓性あるいは弾性を有する板状体等の布状体や、合成樹脂、ゴム、セラミック等を素材とした発泡材からなる材料)101aを用いてこれをアウターパイプ32の外周に螺旋状に巻回あるいは外挿し、その上端部および下端部を固定手段(結束バンド等)101bにて固定してもよい。この場合、細長い材料101aを、図示例の如くに、その(上下の)端面同士の間に(上下方向で)若干の隙間101sをあけるようにしてアウターパイプ32の外周に巻回あるいは外挿してもよいが、その(上下の)端面同士を突き合わせるように(言い換えれば、隙間が無いように)、あるいはその端面同士を重ねるようにしてアウターパイプ32の外周に巻回あるいは外挿してもよい。かかる構成では、細長い材料101aの(上下の)端面が冷媒沸騰のきっかけとなり、更に効果的である。
【0098】
また、例えば
図15に示される如くに、複数枚(図示例では、4枚)の材料102aを用いてこれをアウターパイプ32の外周に隣接して巻回あるいは外挿してもよい。この場合、複数枚の材料102aを、図示例の如くに、それらの(上下の)端面同士の間に(上下方向で)若干の隙間102sをあけるようにしてアウターパイプ32の外周に巻回あるいは外挿してもよいが、その(上下の)端面同士を突き合わせるように(言い換えれば、隙間が無いように)、あるいはその端面同士を重ねるようにしてアウターパイプ32の外周に巻回あるいは外挿してもよい。かかる構成でも、それらの(上下の)端面が冷媒沸騰のきっかけとなり、更に効果的である。
【0099】
さらに、1枚の材料を用いる場合及び複数枚の材料を用いる場合のいずれにおいても、例えば
図16〜
図19に示される如くに、該材料にスリット(切れ目)を入れてもよい。なお、
図16〜
図19では、1枚の材料(103a〜106a)を用いてこれにスリット(切れ目)(103s〜106s)を入れる形態を示している。この場合、前記スリットとしては、水平方向に向けて形成した横スリット103sでもよいし(
図16に示される形態)、上下方向に向けて形成した縦スリット104sでもよいし(
図17に示される形態)、側面から視て上下方向(または水平方向)に対して傾いた方向に向けて形成した斜めスリット105sでもよいし(
図18に示される形態)、あるいは、螺旋状に形成した螺旋スリット106sでもよい(
図19に示される形態)。かかる構成では、前記した各種スリットが冷媒沸騰のきっかけとなり、更に効果的である。特に、このスリットが斜めスリット105s(図示例の如くに、上下方向でラップするように形成した斜めスリット)や螺旋スリット106sである場合には、スリットを長く形成することができて冷媒沸騰のきっかけとなる領域を増大することができ、一層効果的である。
【0100】
なお、上述のように、圧縮機210の起動時における突沸現象及びそれに伴う衝撃音の発生を抑えるためには、基本的に、
図14に示した細長い材料101aの(上下の)端面、
図15に示した複数枚の材料102aの(上下の)端面、
図16〜
図19に示したスリット(切れ目)(103s〜106s)は、圧縮機210の停止時においてタンク内に溜まる液状部分(液相冷媒とオイル)の突沸に伴う異音(衝撃音)発生の下限液面高さ位置Hminと液状部分の最高液面高さ位置Hmaxとの間の高さ領域に設定すればよい。