【実施例】
【0037】
以下、実施例によって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。尚、以下の例において、各種の測定は以下の方法により行った。
【0038】
(粒径の測定)
平均粒子径は、走査型電子顕微鏡または透過型電子顕微鏡の撮影像を用いて100個以上の粒子のデータを解析することにより求めた。
【0039】
(可視光透過率)
表面処理したシリカ系粒子を、質量比1:1のトルエンとn−ヘキサンの混合溶媒にSiO
2としての濃度が2質量%になるように分散した。該分散液を光路長1cmの石英セルに入れて分光光度計にセットし、波長593nmの透過率を測定して、可視光透過率とした。なお、光路長1cmの空の石英セルを参照セルとして用いた。
【0040】
製造例1 フェニルトリメトキシシランで表面修飾したシリカ微粒子
ゾルゲル法により製造されたシリカ粒子として、シリカ分散液(SiO
2濃度30質量%、平均粒径12nm、粒子密度2.0g/cm
3、最大含水量3質量%、イソプロパノール溶媒)を用いた。そのシリカ粒子分散液40g(SiO
2として12g)をトリアルコキシシリル系のシランカップリング剤、フェニルトリメトキシシランにより均一に被覆するための理論使用量は、0.0383 molと計算される。
【0041】
上記シリカ分散液40gにイソプロパノール80gとトルエン40gを添加し、撹拌下、フェニルトリメトキシシラン7.59g(0.0383mol)を滴下し、24時間以上加熱還流させた。その後、エバポレーターで溶媒を除去、濃縮し、トルエン分散液40gを得た(SiO
2として30質量%)。
【0042】
次に、得られたトルエン分散液、トルエン、n−ヘキサンを用いてトルエンとn−ヘキサンの質量比が1:1、且つ、SiO
2濃度が2%になるようにして、3つの溶液を混合し、表面修飾シリカ微粒子分散液を準備した。
【0043】
上記分散液の可視光透過率を測定したところ、96%であった。また、透過型電子顕微鏡で分散液中の粒子を観察したところ、粗粒は観察されず、粒子形状は球状で、平均粒径は12nm、粒径の変動係数は10%であった。特に、平均粒径に関し、表面修飾前のシリカ微粒子と同等であった。
【0044】
製造例2 フェニルトリメトキシシランの加水分解縮合体
フェニルトリメトキシシラン59.5gをイソプロピルアルコール20gとトルエン40gの混合液に溶解した。ここに、メトキシシリル基のモル数と同じモル数となる水16.2gと酸触媒として塩酸0.1gとを添加して、40℃で1時間攪拌し、さらに75℃で1時間攪拌を行った後、濃縮、真空乾燥してフェニルトリメトキシシランの加水分解縮合体を得た。これを50質量%のトルエン溶液とした。
【0045】
製造例3 フェニルトリメトキシシランとジフェニルジメトキシシランの共加水分解縮合体
フェニルトリメトキシシラン69.4gとジフェニルジメトキシシラン36.7gをイソプロピルアルコール33gとトルエン67gの混合液に溶解した。ここに、メトキシシリル基のモル数と同じモル数となる水24.3gと酸触媒として塩酸0.15gとを添加して、40℃で1時間攪拌し、さらに75℃で1時間攪拌を行った後、濃縮、真空乾燥してフェニルトリメトキシシランとジフェニルジメトキシシランの共加水分解縮合体を得た。これを25質量%のトルエン溶液とした。
【0046】
実施例1 コーティング剤(A)
フェニルトリメトキシシランで表面修飾したシリカ微粒子のトルエン分散液3.33 g(SiO
2として1.00 g)、フェニルトリメトキシシランの加水分解縮合体の50質量%トルエン溶液16.00g、テトラヒドロフラン32g、0.075規定塩酸1.00gを順に添加し、65℃で2時間加熱、反応させた。その後、フェニルトリメトキシシランとジフェニルジメトキシシランの共加水分解縮合体の25質量%のトルエン溶液48.00g、テトラヒドロフラン25g、0.075規定塩酸1.00gを順に添加し、さらに、65℃で2時間加熱反応させた。減圧濃縮後、真空乾燥して高粘度のポリシロキサン(20.79g)を得た。
得られたポリシロキサン1.00gをトルエン19.00gに溶解し、ジブチルスズジラウレート0.04g添加してコーティング剤(A)を得た。
【0047】
実施例2 コーティング剤(B)
実施例1において、フェニルトリメトキシシランとジフェニルジメトキシシランの共加水分解縮合体の25質量%のトルエン溶液48.00gを24.00gに変更すること以外は同様にして、コーティング剤(B)を得た。
【0048】
実施例3 コーティング剤(C)
実施例1において、フェニルトリメトキシシランで表面修飾したシリカ微粒子のトルエン分散液3.33g(SiO
2として1.00g)を6.67gに変更すること以外は同様にして、コーティング剤(C)を得た。
【0049】
比較例1 比較用コーティング剤(D)
製造例1で得られたフェニルトリメトキシシランで表面修飾したシリカ微粒子のトルエン分散液3.33g(SiO
2として1.00g)、製造例2で得られたフェニルトリメトキシシランの加水分解縮合体の50質量%トルエン溶液16.00g、テトラヒドロフラン32g、0.075規定塩酸1.00gを順に添加し、65℃で2時間加熱し反応させた。この反応液を減圧濃縮後、真空乾燥して粘度の高いポリシロキサン(8.88g)を得た。得られたポリシロキサン1.00gをトルエン19.00gに溶解し、ジブチルスズジラウレート0.04g添加してコーティング剤(D)を得た。
【0050】
比較例2 比較用コーティング剤(E)
製造例2で得られたフェニルトリメトキシシランの加水分解縮合体の50質量%のトルエン溶液2.00gにトルエン18.00gを加え、さらに、ジブチルスズジラウレート0.04g添加して比較用コーティング剤(E)を得た。
【0051】
比較例3 比較用コーティング剤(F)
製造例3で得られたフェニルトリメトキシシランとジフェニルジメトキシシランの共加水分解縮合体の25質量%のトルエン溶液4.00gにトルエン6.00gと酢酸ブチル10.00gを加え、さらに、ジブチルスズジラウレート0.04g添加して比較用コーティング剤を得た。
【0052】
以上のコーティング剤(A)〜(F)を使用し、アルミニウム表面コーティング膜試料を作製し、評価試験を行った。試験項目、試験方法、及び評価基準を次に示す。また、試験結果を表1と表2に示す。
【0053】
アルミニウム片コーティング膜試験片の作製:サンディング、トルエン脱脂した厚さ5mmのアルミニウム板材(6063系(JIS))の片面に実施例1、2、3及び比較例1、2、3で得られたコーティング剤(A)〜(F)をおよそ1μmになるよう塗布、室温下1時間放置後、80℃で15分前乾燥し、250℃で6時間加熱することにより硬化し、試験片(A)〜(F)を作製した。
【0054】
耐水性:試験片を電導度が1.0μs/cmのイオン交換水(90℃)に48時間浸漬し、アルミニウム表面に腐食が発生せず、コーティング膜の剥離が生じない場合を良好とし、腐食または剥離が発生する場合を不良とする。
【0055】
耐塩水性:試験片を5%塩水(60℃)に240時間浸漬し、アルミニウム表面に腐食が発生せず、コーティング膜の剥離が生じない場合を良好とし、腐食または剥離が発生する場合を不良とする。
【0056】
耐水性塗料性:試験片を水性塗料(60℃)に240時間浸漬し、アルミニウム表面に腐食が発生せず、コーティング膜の剥離が生じない場合を良好とし、腐食または剥離が発生する場合を不良とする。
【0057】
耐油性塗料性:試験片を油性塗料(60℃)に240時間浸漬し、アルミニウム表面に腐食が発生せず、コーティング膜の剥離が生じない場合を良好とし、腐食または剥離が発生する場合を不良とする。
【0058】
【表1】
【0059】
【表2】
【0060】
本発明の実施例1、2、3のコーティング剤A〜C、すなわち、フェニルトリメトキシシランで表面修飾したシリカ微粒子と、フェニルトリメトキシシランからなるシロキサンオリゴマーを重合反応させた後、得られた重合物と、さらに、フェニルトリメトキシシランとジフェニルジメトキシシランからなるシロキサンオリゴマーを重合反応させて得られるブロック的ポリシロキサンに硬化促進剤を添加したコーティング剤を用いたアルミニウム板表面コーティング膜試験片では、耐水性、耐塩水性、耐水性塗料性、耐油性塗料性試験ともに膜の剥離及びアルミニウム基材の腐食は全く生じなかった。
【0061】
これに対して、比較用コーティング剤D〜Fを用いたアルミニウム板表面コーティング膜試験片に、耐水性、耐塩水性、および、耐水性塗料性試験で部分的に剥離が生じ、それに伴いアルミニウム板表面に腐食の発生が観察された。しかしながら、耐油性塗料性試験では腐食や剥離も発生せず良好であった。
【0062】
これは、フェニルトリメトキシシランで表面修飾したシリカ微粒子とフェニルトリメトキシシランからなるシロキサンオリゴマーを重合反応させたポリシロキサン組成物のコーティング膜(比較例1)は、アルミニウム板表面との接着性は十分であるのだが、フェニルトリメトキシシランとジフェニルジメトキシシランからなるシロキサンオリゴマーを重合させていないので、その耐透水性が不十分で、コーティング膜の表面から水が浸透しているためと考えられる。また、フェニルトリメトキシシランからなるシロキサンオリゴマーを重合反応させたシロキサン組成物のコーティング膜(比較例2)の場合も同様である。一方、フェニルトリメトキシシランとジフェニルジメトキシシランからなるシロキサン組成物のコーティング膜(比較例3)は、耐透水性は十分であるものの側鎖のジフェニル基の立体障害に起因したアルミニウム板表面との接着性不足が発生し、剥離が生じたものと考えられる。