(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
両端が開口する筒状体として形成され、一方の開口から給熱媒体が流入されるとともに、他方の開口から流出され、前記給熱媒体と筒状体外部に位置される被加熱体とを熱交換させる構成で、筒状を成す外周壁体と、当該外周壁体から筒状体内部に延設される複数の集熱フィンとを備えた熱交換器であって、
前記外周壁体の軸方向に直交する断面を3領域以上に区画する各区画領域に関して、
一の区画領域に、当該区画領域に属する区画外周壁体部と、当該区画外周壁体部に基端側がそれぞれ接続され且つ基端部から直線状に延設される直線状集熱フィンが複数互いに平行に配置された集熱フィン群とを備え、
隣接する前記区画外周壁体部から延設される複数の前記直線状集熱フィンの先端に関し、異なった前記区画外周壁体部から延設される前記直線状集熱フィンの先端が、隣接する前記区画領域を区画する区画線に沿って交互に近接して配置され、
熱交換器流路断面が、前記集熱フィン群により前記直線状集熱フィン間に形成される流路として複数に分割され、
前記外周壁体が断面形状を、底面と当該底面の両端から直角に同方向に延びる両側面と、当該両側面の前記底面とは反対側に位置する端部から外部側に凸に張り出す一対の屋根面を備えた5角筒状に形成されるとともに、
前記底面と各側面とが交わる一対の底面側頂点について、前記区画線が、5角形状の重心と前記底面側頂点各々とを結んだ線である熱交換器。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記二つの先行技術文献に開示の発明には、以下のような問題があることが判明した。
【0009】
特許文献1の
図3に示される排気管では、排気管内部でその頭部近傍に位置する山型の空間に燃焼ガスの吹き抜けが発生し、比較的高温の温度域が排気管出口まで続き、充分な熱利用が図れない。この状態を、本明細書の
図11(a)に、高温部位Hとして示した。
【0010】
さらに、後に、
図7,
図8で本発明に即して説明するように、給熱媒体の流れに関し、その流路抵抗が比較的大きく、改良の余地があることが判明した。
【0011】
一方、特許文献2の
図2(a)〜(e)に開示される断面構成を採る熱交換器では、中央に比較的大きな開口部を有するため、同様に燃焼ガス等が吹き抜けてしまう。
【0012】
この状態を、特許文献2の
図2(b)に開示される例について、本明細書の
図11(b)に、高温部位Hとして示した。
【0013】
このように燃焼ガスの吹き抜けが発生すると、燃焼ガスが保有する熱を充分利用できない。
【0014】
一方、集熱フィンの延設長さ(壁面から直立して延設されている場合は延設高さとなる)は、壁面への伝熱の観点からすると延設長さが長いより短い方が好ましいが、特許文献1に開示の発明では、特定の断面で見た場合、集熱フィンの延設長さが基本的に長いもので統一されており改善の余地がある。
【0015】
特許文献2に開示の発明では、集熱フィンの延設長さが比較的短いもの(
図2(c)(d)(e))、比較的長いもの(
図2(a)(b))、短いもの及び長いものとの両方を共に設けたもの(
図2(f)(g))が紹介されているが、前2者に関しては、先に説明した吹き抜けの問題が発生しやすい構造となっている。そして、短いものと長いものとを共に設けたものに関しては、集熱フィンが様々な曲線形状を成し、さらに周壁面からの延設方向も異なるため、製造上の選択の余地が少ないという問題がある。
【0016】
本明細書
図11(c)は、特許文献2の
図2(g)を転記したものであるが、この例では、フィン長さが長いもの(図中FLで示す)が存在するため、フィン自体の伝熱抵抗が高いとともに、燃焼ガスの周壁面近傍への移動を妨げるため充分熱利用を図れない問題があることが判明した。
【0017】
この実情に鑑み、本発明の主たる課題は、給熱媒体の吹き抜けに伴い高温領域が形成され難く、さらに、集熱フィンとして伝熱効率が比較的高い周壁からの延設長さの短い集熱フィンも備え、構造上、規格化が比較的容易で、製造方法選択の余地が大きい熱交換器を提供する点にある。さらに、熱交換器自体の流路抵抗を低減できることが当然に望まれる。
【0018】
また、この種の熱交換器を使用した、熱利用の点で優れ、製造容易な加熱装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の第1特徴構成は、
両端が開口する筒状体として形成され、一方の開口から給熱媒体が流入されるとともに、他方の開口から流出され、前記給熱媒体と筒状体外部に位置される被加熱体とを熱交換させる構成で、筒状を成す外周壁体と、当該外周壁体から筒状体内部に延設される複数の集熱フィンとを備えた熱交換器であって、
前記外周壁体の軸方向に直交する断面を3領域以上に区画する各区画領域に関して、
一の区画領域に、当該区画領域に属する区画外周壁体部と、当該区画外周壁体部に基端側がそれぞれ接続され且つ基端部から直線状に延設される直線状集熱フィンが複数互いに平行に配置された集熱フィン群とを備え、
隣接する前記区画外周壁体部から延設される複数の前記直線状集熱フィンの先端に関し、異なった前記区画外周壁体部から延設される前記直線状集熱フィンの先端が、隣接する前記区画領域を区画する区画線に沿って交互に近接して配置され、
熱交換器流路断面が、前記集熱フィン群により前記直線状集熱フィン間に形成される流路として複数に分割され
、
前記外周壁体が断面形状を、底面と当該底面の両端から直角に同方向に延びる両側面と、当該両側面の前記底面とは反対側に位置する端部から外部側に凸に張り出す一対の屋根面を備えた5角筒状に形成されるとともに、
前記底面と各側面とが交わる一対の底面側頂点について、前記区画線が、5角形状の重心と前記底面側頂点各々とを結んだ線である点にある。
【0020】
本特徴構成によれば、熱交換器は、筒状を成す外周壁体と、この外周壁体から筒状体内部に延設される複数の集熱フィンを有して構成される。そして、筒状体内部が、区画線により少なくとも3領域に区画され、各区画領域に、その領域に属する区画外周壁体部と、この区画外周壁体部から延設される集熱ファイン群とを備えて構成される。
【0021】
ここで、個々の集熱フィンは直線状を成す直線状集熱フィンとされ、特定の区画領域に属する複数の集熱フィンは互いに平行な配置とする。
【0022】
さらに、隣接する区画外周壁体部から延設される複数の直線状集熱フィンに関し、異なった区画外周壁体部から延設される直線状集熱フィンの先端を、区画線に沿って交互に近接配置する。
【0023】
結果、熱交換器流路断面は、集熱フィン群により直線状集熱フィン間に形成される実質的に方形の流路として複数分割される。
【0024】
この構成により、区画領域内及び異なった区画領域間で集熱フィンの密接配置状態を確保でき、先に説明した吹き抜けが発生するような空き領域が部分的に形成されることを防止できる。よって、吹き抜けに伴い、断面特定箇所に高温領域が形成されると言った問題を解消できる。さらに、直線状集熱フィンの先端を、区画線に沿って交互に近接配置するため、筒状体中央から外壁まで区画線に沿って直接、給熱媒体が吹き抜けるのを防止でき、直線状集熱フィン間に形成される流路を順次、給熱媒体が渡るように移流する。
【0025】
さらに、異なった区画領域間に渡る集熱フィンの区画外周壁体部からの延設長さ(延設高さ)に関しては、区画線が区画外周壁体部の近くにあるとその延設長さが比較的短くなり、離間する位置にあると比較的長くなるため、伝熱効率の高い比較的短い集熱フィンを設けることが可能となり、熱交換効率の向上を図れる。
【0026】
また、熱交換器流路断面を、集熱フィン群により直線状集熱フィン間に形成される流路として複数に分割できるため、例えば、熱交換効率を従来得られていた熱交換器と同程度の効率で得ようとした場合、直線状集熱フィンの数の調整により、流路抵抗が低い良好な熱交換器を得ることができた。
【0027】
さらに、各区画領域で見ると、区画外周壁体部から複数の直線状集熱フィンを平行に延設する構造とするため、例えば、区画外周壁体部を直線状とする場合は、その壁から所定の方向(好ましくは直交方向)に平行に各集熱フィンを延設すればよく、規格化した構造で、その製造が容易となる。さらに、製造方法選択の範囲も広がる。
【0028】
結果、熱利用の点で優れ、製造が容易な熱交換器を得ることができた。
また、前記外周壁体が断面形状を、底面と当該底面の両端から直角に同方向に延びる両側面と、当該両側面の前記底面とは反対側に位置する端部から外部側に凸に張り出す一対の屋根面を備えた5角筒状に形成されるとともに、
前記底面と各側面とが交わる一対の底面側頂点について、前記区画線が、5角形状の重心と前記底面側頂点各々とを結んだ線とする構成を採用することで、実質的に外側に凸な5角断面形状の筒状体内部を4分割して、底面と側面とが成す底面側頂点付近に比較的短か目の直線状集熱フィンを設けることができる。
【0029】
本発明の第2特徴構成は、
前記外周壁体の軸方向に直交する断面視で、各区画領域に関し、
前記区画線に近接配置される対となる前記直線状集熱フィンについて、
一方の直線状集熱フィンの先端と他方の直線状集熱フィンとの距離が、平行配置される前記直線状集熱フィンの離間距離以下に形成されている点にある。
【0030】
本発明の熱交換器にあっては、特定の区画線に近接する直線状集熱フィンの配置に注目すると、一方の直線状集熱フィンの先端が、他方の直線状集熱フィンの延設方向における特定箇所に最も近接する位置関係となる。即ち、両直線状集熱フィンが最も近接する位置で両フィン間に隙間が形成される。
【0031】
そして、この両直線状フィンの離間距離を、所定の区画領域に属し、平行配置される直線状集熱フィンの離間距離以下とすることで、区画線に沿って外周壁体まで直に給熱媒体が移流するのを防止しつつ、隣接する直線状集熱フィン間に形成される流路へ流動させ、効率的な熱利用を図ることができる。
【0032】
本発明の第3特徴構成は、
前記外周壁体の軸方向に直交する断面視で、各区画領域に関し、
前記区画外周壁体部の長手方向中央側に位置する前記直線状集熱フィンのフィン延設高さが長手方向端部側に位置する前記直線状集熱フィンのフィン延設高さより高く形成されている点にある。
【0033】
外周壁体の内部に集熱フィン以外何も設けることなく、本発明に係る熱交換器を構成する場合、区画外周壁体部の長手方向中央側に位置する直線状集熱フィンのフィン延設高さを長手方向端部側に位置する直線状集熱フィンのフィン延設高さより高く形成することで、筒状体中央近傍においても、直線状集熱フィンを適切に密接配置して、吹き抜けの問題を解消できる。
【0034】
本発明の第4特徴構成は、
前記外周壁体の内部に内周壁を形成する内周壁体形成部材を備え、
一部の前記直線状集熱フィンが前記内周壁体形成部材に接続されている点にある。
【0035】
このように内周壁体形成部材を設けると、直線状集熱フィンの延設高さが相対的に短くなるため、外周壁への熱伝導性のよい短いフィンを使用して、被加熱体への伝熱効率を向上できる。
【0036】
また、内周壁体形成部材と一部の直線状集熱フィンとを接続しておくことで、内周壁体形成部材を集熱体の一部とするとともに、熱交換器断面中央側の温度分布を均一化でき、外周壁体への伝熱性を向上できる。
【0041】
本発明の第
5特徴構成は、
これまで説明してきた熱交換器において、
前記底面及び前記両側面から延設される前記直線状集熱フィンの延設方向が、当該直線状集熱フィンが接続する前記区画外周壁体部に対して直交し、前記屋根面から延設される前記直線状集熱フィンが、前記両側面から延設される前記直線状集熱フィンの延設方向に対して直交している点にある。
【0042】
この構成を採用すると、直線状集熱フィンを、底面と各側面とを成す区画外周壁体部に関して、これら面に直交する配置構成とすることが可能となり構造が簡単で製造が容易な熱交換器となる。さらに、屋根面から延設される前記直線状集熱フィンを、前記両側面から延設される前記直線状集熱フィンの延設方向に対して直交(前記底面から延設される直線状集熱フィンに平行となる)とするため、凸状5角筒内を4方向から適切に分割することができる。
【0043】
これまで説明してきた熱交換器を加熱装置に採用することにより、熱交換効率、流路抵抗の上でバランスが取れ、製造が容易な加熱装置を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下、本発明の実施形態について図面に基づいて説明する。
【0046】
本発明は、熱交換器1とこの熱交換器1を用いる加熱装置100に係るが、以下の説明では、加熱装置100、熱交換器1の順に説明する。
【0047】
説明に際しては、加熱装置100の一例としてのフライヤーを例示して説明する。無論、茹麺機等であっても良い。
また、本発明に係る熱交換器1は筒状に形成されるが、その筒断面形状を、先に説明した従来技術と同様な5角形とする例について、本実施形態で主に説明する。
【0048】
〔加熱装置〕
図1にフライヤーの全体斜視図を示し、
図2にフライヤーを燃焼室2及び熱交換器1を通る面で切断した側断面図を示した。
【0049】
これらの図に示すように、フライヤーはガス加熱式に構成され、フライヤー本体としての器体3と、燃焼器4を備えた燃焼室2及び熱交換器1を備える加熱ユニットと、油槽5とを有して構成される。フライヤー本体である器体3は、前板部31と、後板部32と、左右の側板部33とで主体が構成され、平面視略矩形状の外殻をなす。
【0050】
器体3の上端部の開口には油槽5が設けられて閉塞されると共に、下方の開口は油槽5からの廃油を取り出すために特に閉塞されていない。器体3の前板部31及び左右の側板部33の上端部には、上方に向けて凹となる油槽5のフランジ部51を取り付けて固定してある。
【0051】
このように設置された油槽5内は、食用油のような揚げ油を貯留できるようになっている。油槽5の底部の下方には排油バルブ52が設けてあり、油槽5の下方に油受け(図示せず)を配置して、排油バルブ52を開放することで油槽5内の揚げ油を排出することができる。
【0052】
器体3の後部には器体3の後板部32及び油槽5の後端部の上端より上方に立ち上がるバックガード34が立設してある。バックガード34は、器体3の後端部の左右方向全幅に亘って上方に突設する略角筒状をしたもので、内部には排気筒6(後述する)が挿通される。
【0053】
加熱ユニットは、
図2に示すように、燃焼器4と本発明に係る熱交換器1とで主体が構成される。
燃焼器4は、燃焼室2内に都市ガス、LPガス等の燃料ガスと空気を混合して燃焼させるバーナ41を備えており、バーナ41には燃料ガスが供給される。
燃焼室2は、二次空気が流入可能なように下方に開口する略箱状をした箱体21の内部の空間であり、器体3内の前部に配設され、燃焼室2の上部は熱交換器1に連通している。
【0054】
熱交換器1は、油槽5の揚げ油(被加熱体の一例)が貯留される空間内を横切るように配設され、バーナ41の燃焼により発生した高温の燃焼排ガスG1(給熱媒体の一例)が熱交換器1内を通る際に、油槽5内に貯留される揚げ油との間で熱交換を行わせて、揚げ油を加熱するものである。
【0055】
従って、熱交換器1は、上流側の端部となる前端部において燃焼室2と連通すると共に、下流側の端部となる後端部において排気筒6内と連通している。
尚、熱交換器1の設置は、油槽5の前面及び背面夫々に設けられた孔に熱交換器1の端部を溶接して行うことができる。
【0056】
排気筒6は、バックガード34内に配設される上下方向を長手方向とすると共に左右に長い略角筒状をしたもので、排気筒6内の流路は上流側の端部となる下端部において熱交換器1の後端部と連通すると共に、下流側の端部となる上端部は開口している。
また、バックガード34の上端部には開口が形成されて、前記排気筒6の上端部から排出される燃焼排ガスG1は、バックガード34の上方の大気へと排出される。
【0057】
以上が、加熱装置100の一例であるフライヤーの説明であるが、以下熱交換器1に関して説明する。
【0058】
〔熱交換器〕
図3等に示すように、本発明に係る熱交換器1は、筒状の外周壁体10と、この外周壁体10から内部側に延設される複数の集熱フィン11とを備えて構成されるが、その形態及び配置を特徴とするため、以下の説明では、外周壁体10の軸方向に直交する断面を使用して説明する。
【0059】
図3、
図5、
図7〜
図10は、それぞれ本発明に係る熱交換器1の断面図を示し、
図3は、本願にいう内周壁体形成部材12を備えない第1実施形態の断面図、
図5は、当該第1実施形態に対応し、内周壁体形成部材12を備える第2実施形態の断面図、
図7、
図8は、直線状集熱フィン11sの数を調整した第3実施形態、第4実施形態の断面図及び温度分布を示す図、
図9、
図10は、外周壁体10の形状を異にする別実施形態の断面図である。
【0060】
図7〜
図10では、図の大きさに応じて、符号を省略した。
これら図から判明するように、本発明に係る熱交換器1は、筒状を成す外周壁体10と、当該外周壁体10から筒状体内部に延設される複数の集熱フィン11とを備えて構成され、その内部領域が、外周壁体10の軸方向に直交する断面を所定の区画線Lsで区画された区画領域Zsに分割される。
【0061】
第1実施形態〜第4実施形態は、凸状5角形とされる外周壁体10の内部を4領域に区画した例(
図3、5、7、8)であり、別実施形態はそれぞれ、円形とされる外周壁体10の内部
を4領域に区画した例(
図9(a))、三角形とされる外周壁体10の内部を3領域に区画した例(
図10(a))、及び方形とされる外周壁体10の内部を4領域に区画した例(
図10(b))である。
【0062】
各実施形態における区画線Lsに関しては、外周壁体10の形状の説明とともに後に個々に説明する。
【0063】
そして、これら各区画領域Zsに、当該区画領域Zsに属する区画外周壁体部10pと、当該区画外周壁体部10pに基端側がそれぞれ接続され且つ基端部から直線状に延設される直線状集熱フィン11sが複数互いに平行に配置される集熱フィン群13とを備えている。
【0064】
さらに、隣接する区画外周壁体部10pから延設される複数の直線状集熱フィン11sの先端11pに関し、異なった区画外周壁体部10pから延設される直線状集熱フィン11sの先端11pが、隣接する区画領域Zsを区画する区画線Lsに沿って交互に近接する様に配置している。結果、区画線Lsに沿って、中央側から外周壁側へ直に流れが抜けることはない。
【0065】
また、区画線Lsに近接して配置される対となる直線状集熱フィン11sについて、一方の直線状集熱フィン11sの先端11pと他方の直線状集熱フィン11sとの距離dが、平行配置される直線状集熱フィン11sの離間距離D以下に形成されている。
【0066】
熱交換器1の構成材料としては、SUS,アルミニウム等、従来から熱交換器に採用される任意の材料を選択使用できる。
【0067】
以上が、本発明に係る熱交換器1の共通事項であるが、以下、実施形態について順に説明する。
【0068】
1.外周壁体を凸状5角形とする実施形態
この実施形態では、外周壁体10は、その断面形状を、底面15と当該底面15の両端から直角に同方向に延びる両側面16と、当該両側面16の底面15とは反対側に位置する端部から同一長さ且つ外部側に凸に張り出す一対の屋根面17を備えた凸状5角筒状に形成している。
【0069】
そして、底面15と各側面16とが交わる一対の底面側頂点P1について、区画線Lsが、5角形状の重心Gと一の底面側頂点P1を結んだ線とされ、外周壁体10の内部が、4の区画領域Zsに分割されている。
【0070】
本発明にいう「区画外周壁体部10p」は、「底面15」、一対の「側面16」及び「一対の屋根面17」となる。
【0071】
そして、各「区画外周壁体部10p」から延設される「集熱フィン群13」は、前記底面15及び両側面16から、それらの面15,16に直交する直線状集熱フィン11sとして延設されている。
【0072】
一方、一対の屋根面17からの延設方向は、底面15に設けられる直線状集熱フィン11sに対して対向する方向、両側面16からのそれらとは直交する方向とされている。
【0073】
直線状集熱フィン11sの延設形態は、先にも示したように、区画線Lsに向かう方向とされており、
図3からも判明するように、区画線Lsに近接して配置される対となる直線状集熱フィン11sについて、一方の直線状集熱フィン11sの先端11pと他方の直線状集熱フィン11sとの距離dが、平行配置される直線状集熱フィン11sの離間距離D以下に形成されている。
【0074】
従って、燃焼ガスの流れは、区画線Lsに沿って直接外周壁体10まで流れることはなく、区画領域Zs内の他の流路に移流する様に、直線状集熱フィン11sにより制御される。
【0075】
1.−1 内周壁体形成部材12を備えない第1実施形態
この実施形態では、「区画外周壁体部10p」それぞれに関して、その長手方向中央側に位置する直線状集熱フィン11sのフィン延設高さが長手方向端部側に位置する直線状集熱フィン11sのフィン延設高さより高く形成されている。
【0076】
また、異なる「区画外周壁体部10p」それぞれから延設される、延設高さが最大となっている直線状集熱フィン11sの中央近傍での配置は、重心G近傍に記載した仮想円sに、90度ずつ位相を変えて外接するように配置されている。
この仮想円sの径も、先に説明した平行配置される直線状集熱フィン11sの離間距離D以下に設定している。この様に構成することで、ある程度ではあるが熱交換器断面を周回する流れを形成できる。
【0077】
以下に、本発明に係る熱交換器1の断面における温度分布を示すが、温度分布は以下に条件で求めた。
【0078】
熱交換器形状条件
底面幅 :7 cm
側面高さ :6 cm
5角天面高さ :7.2 cm
断面積So :4.35cm
2
外周壁体の軸方向流路長 :30 cm
集熱フィン軸方向フィン長 :28.5cm
集熱フィンの流入側端位置 :流入口から1cmの位置
集熱フィンの流出側端位置 :流出口から5mmの位置
両端間部位 :両端間で連続
熱交換条件
熱交換器入口での燃焼ガス流速 :3.5m/s
熱交換器入口での燃焼ガス温度 :850℃
熱交換器外周壁体の温度 :180℃
以上の構成を採用することにより、この熱交換器1は、その断面での温度分布(特に熱交換器出口における温度分布)において、断面中央側と外周壁近傍との間で比較的均等な温度分布となった。
【0079】
この実施形態の温度分布を、
図4に示した。
壁面から中央近傍に200℃〜450℃までの温度分布を50℃毎に濃淡等布で示した。
この例では、中央側に出現する最高温域は450℃未満とでき、
図11(a)で出現する450℃以上の高温域が解消できており、被加熱体へ効果的に抜熱できている。
また、熱交換器出口平均温度は275℃となり、
図11(a)に示す従来構造における同平均温度が308℃であったのに対して、良好に熱交換できることが判明した。
【0080】
1.−2 内周壁体形成部材を備える第2実施形態
図5に示すように、この実施形態は、断面中央に、断面円形の内周壁体形成部材12が配置されている。この内周壁体形成部材12は給熱媒体が流れる流路の内周面を形成するための部材であり、この部材12の内部を給熱媒体が流れることはない。通常、この種の部材は管体から形成できる。図示する例では、内周壁体形成部材12の断面を円としているが、当然に外周壁体10と同様な断面形状としてもよい。
【0081】
この実施形態では、直線状集熱フィン11sの一部が内周壁体形成部材12に接続されている。
従って、断面円形の内周壁体形成部材12を備える構成では、区画外周壁体部10pの端部側に位置する直線状集熱フィン11sのフィン延設高さが、区画線Lsに沿って短いものから一旦高くなり、内周壁体形成部材12に接続され、その延設高さ関係を逆に辿りながら他の区画線Lsに近接する構成とされている。
【0082】
以上の構成を採用することにより、この熱交換器1は、その断面での温度分布(特に熱交換器出口における温度分布)において、断面中央部側と外周壁近傍との間でさらに均等な温度分布となった。
【0083】
この実施形態の温度分布を、
図6に示した。
壁面から中央近傍に200℃〜300℃までの温度分布を50℃毎に濃淡分布で示した。
この例では、中央側に出現する最高温域は実質300℃未満とでき、
図11(a)(b)で出現する350℃以上の高温域が解消できており、被加熱体へ効果的に抜熱できている。
また、熱交換器出口平均温度は261℃となり、
図11(a)に示す従来構造における同平均温度が308℃であったのに対して、良好に熱交換できることが判明した。
【0084】
図5に示す第2実施形態では、内周壁体形成部材12の断面積Siを、外周壁体内の全断面積Soの9.4%としているが、発明者らの検討によると、内周壁体形成部材12の断面積をSi、外周壁体内の全断面積をSoとして、流路抵抗が過大とならないことを考慮して、その比Si/So%は3〜30%程度が適当である。
【0085】
これまで説明してきた第1実施形態及び第2実施形態が、熱交換器1の熱交換効率を向上することを主眼としたものであるのに対して、従来構造と同程度の熱交換効率を得る条件で伝熱面積をほぼ同じとして検討を行ったのが、第3実施形態である。
【0086】
1.−3 第3実施形態
第3実施形態の熱交換器1の直線状集熱フィン11sの分布と得られた温度分布とを
図7(b)、(c)に示した。
図からも判明するように、これらの例では底面及び屋根面に配置する直線状集熱フィンの数を6とし、両側面に配置する直線状集熱フィンの数を5としている。
【0087】
図7(c)は
図7(b)の例に対して、交換器中央領域まで延設される直線状集熱フィン11sを中央寄りとした例である。即ち、先に
図3で説明した仮想円sの径を小さくしたものである。
さらに、
図5に対応し、内周壁面構成部材を設ける例を
図7(d)に示している。
この例では、
図7(a)〜(c)に示す例に比べて、伝熱面積がほぼ88%まで低下する。
ここで、
図7(a)で従来構成として示した例は、
図7(a)に示す断面形態を熱交換器の入口側から出口側まで連続させた例である。従って、周熱フィンの高さは入口側から出口側まで同一高さとなり、集熱フィンは入口側から出口側まで連続している(
図7(b)(c)(d)において同じ)。
また、
図7(a)〜(d)に対応して、表1に、熱交換器出口における「断面最高温度−外周壁温度差(℃)」、「中央−外周壁温度差(℃)」「内周壁形成部材−外周壁温度差(℃)」を示した。
【0088】
これらの結果から判明するように、本発明に係る構造を採用すると、ほぼ同一の伝熱面積で、熱交換器出口での温度分布を均等にすることができることが判る。
即ち、従来技術で問題となった吹き抜けに伴う高温部形成の問題を良好に解消できる。
【0090】
さらに、
図7(b)、
図7(c)に示す熱交換器1では、その流路抵抗が
図7(a)に示す従来構成の熱交換器に対して、その80%程度(どちらも20%減)に低減できることが判明した。具体的には、
図7(a)に示す従来構成の流路抵抗が8.6〔Pa〕であったのに対して、
図7(c)の流路抵抗は6.8〔Pa〕であった。
この効果は非常に重要である。
【0091】
逆に、熱交換器1の流路長、断面構成を
図7(c)に示す実施形態として、
図7(a)に示す従来構成の断面形態とした場合(即ち流路抵抗を両者間でほぼ同一とすると)、後者では集熱フィン11の熱交換器軸方向の長さが格段に短くなり、伝熱面積が半分以下に低下することが判明した。即ち、同一の流路抵抗条件では、同一の熱交換効率が得られない。
以上、本発明に係る熱交換器1の構造は、熱交換効率及び流路抵抗を総合的に勘案すると、非常に好ましい結果である。
【0092】
上記の検討結果に基づいて、熱交換効率、流路抵抗の両面から従来構成に対して優位となる構成として、集熱フィン11の数を
図7(c)の例より1枚増加させた例が第4実施形態である。
【0093】
1.−4 第4実施形態
この実施形態の構造、温度分布を
図8に、表1に対応する結果を表2に示した。
ここで、
図7(c)と
図8(b)は同一の熱交換器1を対象としている。
一方、
図7(a)に従来構成として示した例は、
図7(a)に示す断面形態を熱交換器の入口側から出口側まで連続させた例であるが、
図8(a)に示した例は、集熱フィンがその断面において所定の上下幅を有するとともに、その軸方向において、特許文献1の
図4、
図5に示されるように、入口側集熱フィンの高さ(外周壁からの立設高さ)が相対的に低く構成され、集熱フィンが多数に分割された構成とした。
図8(a)の例は
図7(a)の例に対して、その伝熱面積が82%程度まで低下している。結果、外周壁の温度が上昇する傾向となった。
【0094】
図8、表2の結果から判明するように、熱交換器出口において、従来に比べて格段に温度分布が均一化されており、流路抵抗を従来構造のものと同程度或いはそれ以下に抑えながら、熱交換効率の向上を図ることができることが判る。
【0096】
〔別実施形態〕
以下順に本願の別実施形態について説明する。
【0097】
上記の本実施形態では、筒状に形成される外周壁体10の断面形状を凸状5角形とする例を示したが、円形、三角形、方形とすることも可能である。
(1) 別実施形態 1
図9(a
)に、この別実施形態の断面を示した。
図からも明らかのように、この例では、外周壁体10が断面形状を円とする円筒状に形成されるとともに、区画領域Zsが円周方向
に均等4分割された均等分割区画領域に分割されている。
この例では、「区画外周壁体部」は、円周を均等分割した円弧状の壁となる。
そして、各「区画外周壁体部」から延設される「集熱フィン群」は、群間で、直線状集熱フィン
が90度を成して配置されている。
断面、中央近傍まで延びる最大延設高さの直線状集熱フィンは、互いに位相のずれた位置関係とされている。
無論、図には内周壁体形成部材を備えない例を示したが、内周壁体形成部材を備える構造を採用してもよい。
図9(b)は円周方向に均等3分割する場合の参考図である。
【0098】
(2) 別実施形態 2
図10(a)に、この別実施形態の断面を示した。
【0099】
図からも明らかのように、この例では、外周壁体10が断面形状を三角とする三角筒状に形成されるとともに、区画線Lsが前記三角形の重心Gと各頂点とを結ぶ線となる3分割区画領域に分割され、複数の直線状集熱フィンが、当該直線状集熱フィンが接続する外周壁体10に直交する方向に平行に形成されている。
この例では、「区画外周壁体部」は、三角の三辺それぞれの壁となる。
そして、各「区画外周壁体部」から延設される「集熱フィン群」は、各辺に直交する方向に延設されている。
この例でも、断面、中央近傍まで延びる最大高さの直線状集熱フィンは、互いに位相のずれた位置関係とされている。
さらに、図には、内周壁体形成部材を備えない例を示したが、内周壁体形成部材を備える構造を採用してもよい。
【0100】
(3) 別実施形態 3
図10(b)に、この別実施形態の断面を示した。
図からも明らかのように、この例では、外周壁体10が断面形状を方形とする方形筒状に形成されるとともに、前記区画線Lsが前記方形の重心Gと各頂点とを結ぶ線となる4分割区画領域に分割されている。
この例では、「区画外周壁体部」は、方形の四辺それぞれの壁となる。
そして、各「区画外周壁体部」から延設される「集熱フィン群」は、各辺に直交する方向に延設されている。
この例でも、断面、中央近傍まで延びる最大延設高さの直線状集熱フィンは、互いに位相のずれた位置関係とされている。
さらに、図には、内周壁体形成部材を備えない例を示したが、内周壁体形成部材を備える構造を採用してもよい。
【0101】
(4) これまで説明してきた例にあっては、外周壁体の軸方向において、直線状集熱フィンの高さは、軸方向において変化しない(熱交換器入口側から出口側まで同一)として説明したが、入口側の給熱媒体の温度が高温であることから、入口側において一部、それらの延設高さを低いものとしてもよい。
但し、出口側の軸方向における所定長さ部位に関しては、吹き抜けを防止する必要があるため、これまで説明してきた断面で示した様な直線状集熱フィンの配置構成とする。このようにして、軸方向に沿った給熱媒体の温度降下に対応することも好ましい。
【0102】
(5) 本発明に係る直線状集熱フィンを、外周壁体の軸方向の全長手領域に渡って同一高さのフィンが連続するものとしたが、軸方向で櫛歯状に立設されていてもよい。ただし、この場合も吹き抜けが過度に発生しない構成とする。このようにして、軸方向で給熱媒体の混合を良好に起こすことができる。