特許第6661432号(P6661432)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6661432
(24)【登録日】2020年2月14日
(45)【発行日】2020年3月11日
(54)【発明の名称】仮囲い構造体
(51)【国際特許分類】
   E04G 21/32 20060101AFI20200227BHJP
【FI】
   E04G21/32 B
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-57678(P2016-57678)
(22)【出願日】2016年3月22日
(65)【公開番号】特開2017-172158(P2017-172158A)
(43)【公開日】2017年9月28日
【審査請求日】2019年2月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】592233439
【氏名又は名称】株式会社ジオシステム
(74)【代理人】
【識別番号】100075557
【弁理士】
【氏名又は名称】西教 圭一郎
(72)【発明者】
【氏名】寺尾 邦憲
【審査官】 五十幡 直子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−058200(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3131808(JP,U)
【文献】 特開2006−009431(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 21/32
E04H 17/00−17/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一部が地中に打設された複数の第1基礎杭であって、地上に突出した第1上端部を有する複数の第1基礎杭と、
各第1基礎杭から離れた位置で地中に一部が打設された複数の第2基礎杭であって、地上に突出した第2上端部を有する複数の第2基礎杭と、
各第1基礎杭の第1上端部と各第2基礎杭の第2上端部とを、それぞれ連結する複数の連結部材と、
各第1基礎杭の第1上端部に固定された下端部を有する、地上に立設された複数の支柱と、
長手板状の、木質材料から成る複数の板状部材であって、長手方向を鉛直方向にして、該長手方向に垂直な幅方向に互いに隣接して配設された複数の板状部材と、
前記複数の板状部材の複数の一方表面にわたって、鉛直方向に互いに間隔をあけて配設された複数の第1垂木であって、互いに隣接して配設された板状部材を接合する複数の第1垂木と、
地上に立設され、各第1基礎杭の第1上端部にそれぞれ固定される下端部を有する複数の支柱と、
各第1垂木と平行にそれぞれ配設され、各支柱に固定された複数の第2垂木と、
各支柱の上端部に一端部が固定され、各第2基礎杭の第2上端部に他端部が固定された複数の控え部材と、
各第1基礎杭の第1上端部と、各第2基礎杭の第1上端部とを連結している複数の連結部材と、を含むことを特徴とする仮囲い構造体。
【請求項2】
前記板状部材各々の前記幅方向一側部には、該板状部材の一方表面に沿って長手方向に延びる第1突部が設けられ、
前記板状部材各々の前記幅方向他側部には、該板状部材の他方表面に沿って長手方向に延びる第2突部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の仮囲い構造体。
【請求項3】
前記各第1垂木は、前記各第2垂木上に配設されていることを特徴とする請求項1または2に記載の仮囲い構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、間伐材などの木質材料を用いて工事現場などの仮囲いを構築することができる仮囲い構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
仮囲い構造体の典型的な従来技術は、たとえば特許文献1に記載されている。この従来技術では、横方向に連接されて仮囲い構造体を構築する木製パネルの上下端の木口部および左右側端の木口部に耐食性金属から成る金具を設け、隣接する木製パネルの連接する部に対応する金具にずれ止めを形成して、木製パネルを金具により補強するとともに、木製パネルの連接部をずれ止めにより整列させ、施工性を向上することができる技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-58200号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来技術では、木製パネルの上下端の木口部および左右側端の木口部に金具がそれぞれ設けられるので、部品点数が多く、金具の木製パネルへの取付けに手間を要し、仮囲い構造体の構築に時間および労力を要するという問題がある。
【0005】
本発明の目的は、構築に要する時間および労力を低減することができる仮囲い構造体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、一部が地中に打設された複数の第1基礎杭であって、地上に突出した第1上端部を有する複数の第1基礎杭と、
各第1基礎杭から離れた位置で地中に一部が打設された複数の第2基礎杭であって、地上に突出した第2上端部を有する複数の第2基礎杭と、
各第1基礎杭の第1上端部と各第2基礎杭の第2上端部とを、それぞれ連結する複数の連結部材と、
各第1基礎杭の第1上端部に固定された下端部を有する、地上に立設された複数の支柱と、
長手板状の、木質材料から成る複数の板状部材であって、長手方向を鉛直方向にして、該長手方向に垂直な幅方向に互いに隣接して配設された複数の板状部材と、
前記複数の板状部材の複数の一方表面にわたって、鉛直方向に互いに間隔をあけて配設された複数の第1垂木であって、互いに隣接して配設された板状部材を接合する複数の第1垂木と、
地上に立設され、各第1基礎杭の第1上端部にそれぞれ固定される下端部を有する複数の支柱と、
各第1垂木と平行にそれぞれ配設され、各支柱に固定された複数の第2垂木と、
各支柱の上端部に一端部が固定され、各第2基礎杭の第2上端部に他端部が固定された複数の控え部材と、
各第1基礎杭の第1上端部と、各第2基礎杭の第1上端部とを連結している複数の連結部材と、を含むことを特徴とする仮囲い構造体である。
【0007】
また本発明は、前記板状部材各々の前記幅方向一側部には、該板状部材の一方表面に沿って長手方向に延びる第1突部が設けられ、
前記板状部材各々の前記幅方向他側部には、該板状部材の他方表面に沿って長手方向に延びる第2突部が設けられていることを特徴とする。
【0008】
また本発明は、前記各第1垂木は、前記各第2垂木上に配設されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、木質材料から成る複数の板状部材の一方表面に第1垂木が配設され、また複数の支柱には第2垂木が配設される。各支柱は、地中に一部が打設された第1基礎杭に固定され、第1基礎杭よりも板状部材から離れた位置には第2基礎杭の一部が地中に打設される。各支柱の上端部には、控え部材の一端部が連結され、この控え部材の他端は、第2基礎杭の第2上端部に連結される。
【0010】
このように、第1垂木が複数の板状部材に配設されるので、各板状部材を連接するために、前記従来技術のように、各板状部材のそれぞれの上下端の木口部および左右側端の木口部に金具を設ける必要がなく、組立ての手間を少なくし、仮囲い構造体を構築するための労力および時間を削減することができる。
【0011】
また本発明によれば、各板状部材の幅方向一端部の一表面側には、第1突部が設けられ、各板状部材の幅方向他端部の他表面側には、第2突部が設けられるので、複数の板状部材において、幅方向に互いに隣接する2つの板状部材のうち、一方の板状部材の第1突部と他方が幅方向一方側に隣接する他方の板状部材の第2突部の背後側へ配設され、一方の板状部材の第2突部が幅方向他方側に隣接する他方の板状部材の第1突部の背後側へ配設される。これによって、各板状部材間に隙間が生じず、遮音性の低下が防がれるとともに、各板状部材が水平方向に互いに位置決めされるので、平面性が得られ、美感に優れた壁面を実現することができる。
【0012】
また本発明によれば、第1垂木が第2垂木に乗載されるので、各板状部材が第2垂木に対して上下方向に位置決めされ、各板状部材の取付け作業の容易化および高精度化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態の仮囲い構造体1を示す鉛直断面図である。
図2図1の右側から見た仮囲い構造体1の背面図である。
図3】パネル体2の正面図である。
図4】パネル体2を図3の切断面線IV−IVから見た断面図である。
図5】パネル体2を図3の切断面線V−Vから見た拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は本発明の一実施形態の仮囲い構造体1を示す鉛直断面図であり、図2図1の右側から見た仮囲い構造体1の背面図である。本実施形態の仮囲い構造体1は、建設工事などの工事現場が外部と区画されるように、工事現場の敷地を取囲むように設置され、図1および図2には、仮囲い構造体1の最小単位長さL1=1.8mとしたときの構成が示されている。
【0015】
仮囲い構造体1は、長手板状の複数の板状部材3と、各板状部材3を長手方向に垂直な幅方向に隣接させた状態で、各板状部材3の工事現場のヤード内に臨む一方表面上に水平方向に延びて配設され、隣接した各板状部材3を接合する複数の第1垂木4と、各第1垂木4に隣接して配置される複数の支柱5と、地中に打込まれた複数の第1基礎杭6と、各板状部材3の一方表面に垂直な方向に第1基礎杭6よりも離れた位置で地中に打込まれた複数の第2基礎杭7と、各支柱5と第2基礎杭7とを連結する複数の控え部材8と、各第1基礎杭6と各第2基礎杭7とを連結する複数の連結部材9と、各支柱5に固定され、水平に延びる複数の第2垂木11とを含んで構成される。
【0016】
図3はパネル体2の正面図であり、図4はパネル体2を図3の切断面線IV−IVから見た断面図である。各板状部材3は、各寸法を一例として述べると、長さ2000〜4000mm、幅600mm、厚み24mmの木質材料から成る。木質材料としては、単板積層材(略称LVL)を好適に用いることができる。この単板積層材は、複数枚、たとえば10枚の厚みが約3mmの薄板状の木板を接着剤で加圧・加熱しながら接合した合板であり、木板としては、杉などの間伐材を好適に用いることができる。間伐材は、炭素の排出と吸収とが同量となるカーボンニュートラルな材料であって、地球温暖化ガスの1つである二酸化炭素の増加を抑制することができる。このような板状部材3の複数枚(本実施形態では、5枚)を幅方向に隣接させて第1垂木4によって接合することによって、パネル体2が形成される。
【0017】
図5は、パネル体2を図3の切断面線V−Vから見た拡大断面図である。板状部材3は、その幅方向一側部の一方表面に沿って、外側方に突出し、長手方向に延びる第1突部13が形成され、その幅方向他側部の他方表面に沿って、外側方に突出し、長手方向に延びる第2突部14が形成される。第1および第2突部13,14の厚みT1,T2は、たとえば12mmであり、突出長さL13,L14は、たとえば15mmである。
【0018】
したがって、板状部材3の厚みTが24mmであるとき、第1突部13と板状部材3の他方表面を含む仮想一平面との間には、長手方向(図5の紙面に垂直な方向)に延びる第1凹溝16が形成され、第2突部14と板状部材3の一方表面を含む仮想一平面との間には、長手方向に延びる第2凹溝17が形成される。各板状部材3が互いに隣接した状態、すなわち第1垂木4によってパネル体2が組立てられた状態では、幅方向両端に配置された2つの板状部材3の間の中間の板状部材3は、第1突部13が、一側方に隣接する板状部材3の第2凹溝17に嵌合し、第2突部14が、他側方に隣接する板状部材3の第1凹溝16に嵌合して、互いの間に隙間を生じることが防がれ、遮音効果の低下が防がれるとともに、各板状部材3を水平方向に位置決めして平面性を得ることができる。
【0019】
前述の第1および第2垂木4,11は、桧などの耐候性の高い木材が用いられる。各第1垂木4には、複数の板状部材3が木ねじなどによって接合される。また、第2垂木11は、支柱5にたとえば垂木止めクランプとも呼ばれる取付金具18によって固定される。支柱5、第1基礎杭6、第2基礎杭7、控え部材8および連結部材9は、鉄パイプとも呼ばれる直径50mm程度の構造用鋼管を用いることができる。
【0020】
第1基礎杭6は、各支柱5の下端部に隣接して地中に打込まれ、水平方向にたとえば1.8mの間をあけて配設される。第1基礎杭6は、地中に打込まれた状態において、地上に突出した第1上端部6aを有する。第2基礎杭7は、各板状部材3の一方表面に垂直な方向に第1基礎杭6よりも離れた位置で地中に打込まれ、各支柱5および各第1基礎杭6と等間隔に並んで配設される。第2基礎杭7は、地中に打込まれた状態において、地上に突出した第2上端部7aを有する。
【0021】
各第1基礎杭6の第1上端部6aには、各支柱5の下端部付近が自在クランプと呼ばれる取付金具19によって固定される。
【0022】
各第1基礎杭6の第1上端部6aと各第2基礎杭7の第2上端部7aとは、連結部材9の両端部に自在クランプである取付金具20によってそれぞれ固定されて、互いに連結されている。各支柱5の上端部には、控え部材8の一端部が自在クランプである取付金具21によって固定され、各第2基礎杭7の第2上端部7aには、控え部材8の他端部が自在クランプである取付金具22によって固定される。
【0023】
上記の各支柱5、各第1基礎杭6、各第2基礎杭7、各控え部材8および各連結部材9を含んで、枠組立体を構成する。枠組立体を現場で構築した後、前述の複数のパネル体2が枠組立体に取付けられる。この状態では、各パネル体2の第1垂木4が枠組立体の第2垂木11に乗載され、各パネル体2を鉛直方向および前後方向(図1では、左右方向)に正確に位置決めし、第1および第2垂木4,11の延在方向に取付位置を調整して設置することができる。各パネル体2を枠組立体に取付けるために、第1垂木4を第2垂木11にボルトおよびナットによって締結してもよく、板状部材3の一方表面に予め固定した図示しないフック状金具を各第2垂木11に掛止めて取付けるようにしてもよい。
【0024】
以上のように、複数の板状部材3が複数の第1垂木4によって接合され、これを枠組立体に掛止め取付けることができるので、組立ての手間が少なくて済み、仮囲い構造体を構築するための労力および時間を削減することができる。
【符号の説明】
【0025】
1 仮囲い構造体
2 パネル体
3 板状部材
4 第1垂木
5 支柱
6 第1基礎杭
7 第2基礎杭
8 控え部材
9 連結部材
11 第2垂木
13 第1突部
14 第2突部
16 第1凹溝
17 第2凹溝
18,19,20,21,22 取付金具
図1
図2
図3
図4
図5