特許第6661441号(P6661441)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6661441
(24)【登録日】2020年2月14日
(45)【発行日】2020年3月11日
(54)【発明の名称】回路装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/28 20060101AFI20200227BHJP
   H01L 23/29 20060101ALI20200227BHJP
   H01L 23/31 20060101ALI20200227BHJP
   B29C 45/02 20060101ALI20200227BHJP
   H05K 3/28 20060101ALI20200227BHJP
【FI】
   H01L23/28 C
   H01L23/28 A
   H01L23/30 R
   B29C45/02
   H05K3/28 G
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-68439(P2016-68439)
(22)【出願日】2016年3月30日
(65)【公開番号】特開2017-183507(P2017-183507A)
(43)【公開日】2017年10月5日
【審査請求日】2019年1月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000141901
【氏名又は名称】株式会社ケーヒン
(74)【代理人】
【識別番号】100067356
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 容一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100160004
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 憲雅
(74)【代理人】
【識別番号】100120558
【弁理士】
【氏名又は名称】住吉 勝彦
(74)【代理人】
【識別番号】100148909
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧澤 匡則
(74)【代理人】
【識別番号】100161355
【弁理士】
【氏名又は名称】野崎 俊剛
(72)【発明者】
【氏名】久保木 禎夫
(72)【発明者】
【氏名】滝岡 秀一
(72)【発明者】
【氏名】堀越 崇
(72)【発明者】
【氏名】許 昌龍
(72)【発明者】
【氏名】湯山 朋宜
【審査官】 豊島 洋介
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−344587(JP,A)
【文献】 特開平07−245367(JP,A)
【文献】 特開平06−188351(JP,A)
【文献】 特開2007−043014(JP,A)
【文献】 特開平06−236952(JP,A)
【文献】 特開2015−130379(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C45/00−45/24
45/46−45/63
45/70−45/72
45/74−45/84
H01L21/56
23/12−23/15
23/28−23/31
H05K 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
端部に複数の端子及びこれらの端子を絶縁するレジストを有する基板と、この基板に前記端子及び前記レジストを露出させるように一体に形成された樹脂部とを含む回路装置であって、
隣り合う前記端子間に設けられた前記レジストは、前記端子全体を囲う外周部に設けられたレジストに連結され、
前記基板の上面から前記レジストの上面までの高さが、前記基板の上面から前記端子の上面までの高さよりも溶融樹脂が流れ込めない程度の極小の隙間が形成される程度に小さく設定されていることを特徴とする回路装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板及び基板に実装された電子部品が樹脂で封止された回路装置に関する。
【背景技術】
【0002】
乗用車や自動二輪車に代表される車両には、基板を備える回路装置が搭載されている。回路装置では、基板への水等の浸入を防ぐために、基板の周囲を樹脂で中実になるように封止する技術が実用化されている。このような回路装置において、加熱ポッドから溶融した樹脂を基板が配置されたキャビティに充填する、トランスファーモールドの技術が知られている(例えば、特許文献1(図6)参照。)。
【0003】
特許文献1に開示されている技術の基本原理を図4(a)に基づいて説明する。
図4(a)に示すように、下型101及び上型102からなるトランスファーモールド用金型100のキャビティ103に、支持部材104に支持された回路基板105が配置され、回路基板105から延びるコネクタ部(コンタクト部)106が下型101と上型102に挟持されている。
【0004】
ゲート107からキャビティ103に溶融樹脂108が注入され、この溶融樹脂108が固まることで、コネクタ部106の一部や回路基板105が封止される。しかし、溶融樹脂を充填する際、キャビティ103からコネクタ部106へ溶融樹脂108が漏れることがある。この対策の一つとして、特許文献2の技術が知られている。
【0005】
特許文献2に開示されている技術の基本原理を図4(b)に基づいて説明する。
図4(b)に示すように、下型111及び上型112からなるトランスファーモールド用金型110のキャビティ113に、電子部品114が実装された回路基板115が配置され、回路基板115から延びるコネクタ部(コンタクト部)116が下型101と上型102に挟持されている。コネクタ部116の基端部117には、溶融樹脂118がコネクタ部116に漏れることを防止するOリング119が配置されている。
【0006】
しかし、Oリング119を配置していたのでは、部品点数や組み付け工数の増加により部品コスト及び組み付けコストが高くなる。また、溶融樹脂の充填時にキャビティ内のガスが抜け難くなり、樹脂を良好に充填することが難しくなる。そのため、良好に樹脂が充填されるとともにコネクタ部への樹脂漏れを防止し、部品コストを低減できる技術が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−56355号公報
【特許文献2】特許第4478007号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、良好に樹脂が充填されるとともにコネクタ部への樹脂漏れを防止し、部品コストを低減できる回路装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項に係る発明では、端部に複数の端子及びこれらの端子を絶縁するレジストを有する基板と、この基板に前記端子及び前記レジストを露出させるように一体に形成された樹脂部とを含む回路装置であって、隣り合う前記端子間に設けられた前記レジストは、前記端子全体を囲う外周部に設けられたレジストに連結され、前記基板の上面から前記レジストの上面までの高さが、前記基板の上面から前記端子の上面までの高さよりも溶融樹脂が流れ込めない程度の極小の隙間が形成される程度に小さく設定されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項に係る発明では、隣り合う端子間に設けられたレジストは、端子全体を囲う外周部に設けられたレジストに連結されているので、樹脂がキャビティから端子間を含めた端子側(コネクタ部)へ回り込んで漏れてくることを防止できる。さらに、基板の上面からレジストの上面までの高さが、基板の上面から端子の上面までの高さよりも溶融樹脂が流れ込めない程度の極小の隙間が形成される程度に小さく設定されているので、溶融樹脂の浸入を防止するとともにキャビティ内の空気を逃がすことができ、良好に樹脂を充填することができる。さらに、レジストの塗布部分を端子の外周部及び端子間に広げただけであるので、従来技術のような別部品が不要となり、部品コストを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施例に係る回路装置の斜視図である。
図2】実施例に係る基板を金型に配置した断面図である。
図3参考例及びさらなる参考例に係る回路装置の斜視図である。
図4】従来技術の基本原理を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。
【0013】
まず、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
図1に示すように、回路装置40は、基板41と、この基板41の端部に並列に設けられる複数の端子42と、基板41に設けられ端子42を絶縁するレジスト43と、基板41に端子42及びレジスト43を露出させるように一体に形成された樹脂部51とを備えている。
【0014】
レジスト43は、端子42全体を囲う外周部に設けられる外周レジスト44と、端子42間に設けられる端子間レジスト45とを備え、端子間レジスト45は外周レジスト44に連結されている。端子42及びレジスト43は、基板41の上面に設けられているが、基板41の下面にも同様に設けられている。
【0015】
また、基板41の先端及び側部には、この基板41を保護する基板保護部52が形成されている。基板保護部52は、樹脂部51に一体に形成された樹脂である。樹脂部51から露出した基板41、端子42、レジスト43及び基板保護部52によって、外部のコネクタと接続されるエッジコネクタ61が構成されている。
【0016】
次にトランスファーモールド用の金型10に配置された基板41について説明する。
図2(a)は端子42間の位置における断面図であり、トランスファーモールド用の金型10は、固定型としての下型11と、可動型としての上型12の2つの型を含んで構成されている。
【0017】
これらの2つの下型11、上型12は、互いに型締めされた状態で、溶融した樹脂を成形するキャビティ13と、このキャビティ13へ溶融樹脂を供給するゲート21と、キャビティ13に配置される基板41の端部を挟持する基板挟持部31を有する。基板挟持部31の先端側には、溶融樹脂が流れ込んで基板保護部52を形成するための先端部キャビティ14が形成されている。
【0018】
基板挟持部31に挟持される基板41の端部が、エッジコネクタ61を構成する。エッジコネクタ61において、基板41の上下面にレジスト43が塗布されている。キャビティ13内において、基板41に複数の電子部品46が設けられている。
【0019】
図2(b)は図2(a)のb−b線断面図であり、基板41の横幅方向側には、溶融樹脂が流れ込んで基板保護部52を形成するための先端部キャビティ14が形成されている。基板41の横幅方向側の先端部キャビティ14は、キャビティ13と連通しており、さらに基板41の先端側の先端部キャビティ14とも連通している。先端部キャビティ14は、基板41の横幅方向側と先端側に形成されている。
【0020】
また、基板41の上面において、端子42全体の外周部に外周レジスト44が形成され、端子42間に端子間レジスト45が形成されている。外周レジスト44の上下面と基板挟持部31には、溶融樹脂が流れ込めない程度の極小の隙間が形成されている(詳細後述)。このため、成形時に先端部キャビティ14から溶融樹脂が、外周レジスト44の上下面と基板挟持部31との間に流れ込むことを防止できる。
【0021】
図2(c)は図2(b)のc部拡大図であり、基板41に設けられた端子42は基板挟持部31に当接している。基板41の上面からレジスト43の上面までの高さH1が、基板41の上面から端子42の上面までの高さH2より小さく設定されている。基板41の上面側において、端子間レジスト45の上面と基板挟持部31との間には、長さL1の隙間47が形成されている。また、端子間レジスト45の側面と端子42との間には、幅W1の隙間48が形成されている。
【0022】
実施例におけるトランスファーモールドで使用される溶融樹脂は、幅が20μm以下の隙間には流れ込まない。隙間47の長さL1及び隙間48の幅W1は、20μm以下である。このため、溶融樹脂が端子42間に浸入することを防止できる。また、隙間47の長さL1及び隙間48の幅W1が20μm以下であっても、空気を通すことができる。このため、キャビティ13及び先端部キャビティ14の空気を通すことができ、良好にガス抜きを行うことができる。
【0023】
また、外周レジスト44においても、端子間レジスト45と同様であり、外周レジスト44の上面と基板挟持部31との間には、長さL1の隙間が形成されている。長さL1の隙間は、溶融樹脂は通らないが空気は抜ける高さに設定されているので、溶融樹脂の浸入を防止するとともにキャビティ13及び先端部キャビティ14内の空気を逃がすことができ、良好に樹脂を充填することができる。
【0024】
さらに、レジスト43の塗布部分を端子42の外周部に広げただけであるので、従来技術のような別部品が不要となり、部品コストを低減できる。さらに、端子42は基板挟持部31に当接しており、溶融樹脂が端子42と基板挟持部31との間に侵入することが防止される。
【0025】
次に、本発明に係る参考例を図面に基づいて説明する。なお、図1に示した構成と同一構成については同一符号を付け、詳細説明は省略する。
図3(a)に示すように、基板41の上面において、隣り合う端子42間に端子間レジスト45が形成されている。このため、溶融樹脂がキャビティ13及び先端部キャビティ14から端子42間(コネクタ部)へ回り込んで漏れてくることを防止できる。
【0026】
また、基板41の上面からレジスト43の上面までの高さH1(図2参照)が、基板41の上面から端子42の上面までの高さH2(図2参照)より小さく設定されている。このため、溶融樹脂の浸入を防止するとともにキャビティ13及び先端部キャビティ14内の空気を逃がすことができ、良好に樹脂を充填することができる。さらに、レジスト43の塗布部分を端子42間に広げただけであるので、従来技術のような別部品が不要となり、部品コストを低減できる。
【0027】
次に、本発明に係るさらなる参考例を図面に基づいて説明する。なお、図1に示した構成と同一構成については同一符号を付け、詳細説明は省略する。
図3(b)に示すように、基板41の上面において、外周レジスト44は端子42全体を囲う外周部に設けられている。このため、溶融樹脂がキャビティ13及び先端部キャビティ14から端子側(コネクタ部)へ回り込んで漏れてくることを防止できる。
【0028】
また、基板41の上面からレジスト43の上面までの高さH1(図2参照)が、基板41の上面から端子42の上面までの高さH2(図2参照)より小さく設定されている。このため、溶融樹脂の浸入を防止するとともにキャビティ13及び先端部キャビティ14内の空気を逃がすことができ、良好に樹脂を充填することができる。さらに、レジスト43の塗布部分を端子42の外周部に広げただけであるので、従来技術のような別部品が不要となり、部品コストを低減できる。
【0029】
尚、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更が可能である。また、実施例では、端子42及びレジスト43を基板41の両面に設けたが、これに限定されず、基板41の一方の面にのみ設けても差し支えない。
【0030】
また、実施例では、トランスファーモールドで使用される溶融樹脂は、幅が0より大きく20μm以下の隙間には流れ込まないものとし、隙間47の長さL1及び隙間48の幅W1は、20μm以下としたが、これに限定されず、空気を通し且つ使用する溶融樹脂が隙間に流れ込まなければ、隙間47の長さL1及び隙間48の幅W1を適宜変更しても差し支えない。
【0031】
また、端子42の数は実施例に限定されず、4本、8本、10本など同じ方向に複数並んでいれば差し支えない。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明は、基板及び基板に実装された電子部品が樹脂で封止された回路装置に好適である。
【符号の説明】
【0033】
40…回路装置、41…基板、42…端子、43…レジスト、44…外周レジスト、45…端子間レジスト、51…樹脂部、52…基板保護部、H1…基板の上面からレジストの上面までの高さ、H2…基板の上面から端子の上面までの高さ。
図1
図2
図3
図4