特許第6661451号(P6661451)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6661451複合粉体及びその製造方法並びにその複合粉体を配合した化粧料
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6661451
(24)【登録日】2020年2月14日
(45)【発行日】2020年3月11日
(54)【発明の名称】複合粉体及びその製造方法並びにその複合粉体を配合した化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/73 20060101AFI20200227BHJP
   A61K 8/25 20060101ALI20200227BHJP
   A61Q 1/12 20060101ALI20200227BHJP
   A61Q 15/00 20060101ALI20200227BHJP
【FI】
   A61K8/73
   A61K8/25
   A61Q1/12
   A61Q15/00
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-79314(P2016-79314)
(22)【出願日】2016年4月12日
(65)【公開番号】特開2017-190289(P2017-190289A)
(43)【公開日】2017年10月19日
【審査請求日】2019年1月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】391015373
【氏名又は名称】大東化成工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141586
【弁理士】
【氏名又は名称】沖中 仁
(74)【代理人】
【識別番号】100097755
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 勉
(74)【代理人】
【識別番号】100102211
【弁理士】
【氏名又は名称】森 治
(72)【発明者】
【氏名】田中 巧
(72)【発明者】
【氏名】鳥山 直樹
(72)【発明者】
【氏名】長谷 昇
【審査官】 松本 直子
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭54−024289(JP,A)
【文献】 特開2014−101349(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/022964(WO,A1)
【文献】 国際公開第2010/026925(WO,A1)
【文献】 特開平06−254373(JP,A)
【文献】 特開2007−320898(JP,A)
【文献】 特開2010−052974(JP,A)
【文献】 特表2003−535032(JP,A)
【文献】 特表平10−507196(JP,A)
【文献】 特開2003−342160(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00− 8/99
A61Q 1/00− 90/00
A61K 9/00− 9/72
A61K 47/00− 47/69
C09C 1/00− 3/12
C08J 3/12− 3/16
C08K 3/00− 3/40
C08L 1/00− 1/32
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイアトマイトと、結晶セルロース及びセルロース末とを含み、球状を呈し崩壊性を有することを特徴とする複合粉体。
【請求項2】
吸水量が120mL/100g以上で、かつ吸油量が100mL/100g以上であることを特徴とする請求項1に記載の複合粉体。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の複合粉体の製造方法であって、
ダイアトマイトと結晶セルロース及びセルロース末とが混合されてなる水スラリー状物を、スプレードライヤーにて噴霧乾燥させることを特徴とする複合粉体の製造方法。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の複合粉を配合してなることを特徴とする化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ファンデーションなどのメイクアップ化粧料、サンスクリーン化粧料又は乳液などの化粧料及びデオドランド化粧料に配合して好適な複合粉体及びその製造方法並びにその複合粉体を配合した化粧料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ファンデーション、アイシャドー、アイブロー、ほほ紅などのメイクアップ化粧料や、ボディーパウダー、ベビーパウダーなどのボディー化粧料、乳液、クリームなどの基礎化粧料において吸水性(保水性)、保水性、吸油性等の効果を演出するためには、粉体を水溶性高分子と脂質で処理すること(特許文献1)や、表面及び内部に空孔を有する球状樹脂粒子(特許文献2)等が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−201113号公報
【特許文献2】特開2001−213727号公報
【0004】
しかしながら、これらの粉体では、肌への伸びの良さなどの感触の点で満足のいくものではなく、さらに消臭効果は得られないものであった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、前述のような問題点に鑑みてなされたもので、化粧料に配合した場合に、吸水性、吸油性があり、肌へ塗布した時の伸びが良く、かつ消臭効果に優れた複合粉体を提供し、併せてその製造方法、並びにその複合粉体を配合した化粧料を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、本発明者らは鋭意研究努力を重ねた結果、ダイアトマイトと結晶セルロース及び/又はセルロース末とが混合されてなる水スラリー状物をスプレードライヤーにて噴霧乾燥させて得られる複合粉体が球状を呈し、崩壊性を有することから吸水性、吸油性及び消臭効果に優れることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0007】
すなわち、第1発明による複合粉体は、ダイアトマイトと、結晶セルロース及び/又はセルロース末とを含み、球状を呈し崩壊性を有することを特徴とするものである。
【0008】
第1発明の複合粉体において、吸水量が120mL/100g以上で、かつ吸油量が100mL/100g以上であるのが好ましい(第2発明)。
【0009】
次に、第3発明による複合粉体の製造方法は、第1発明又は第2発明に係る複合粉体の製造方法であって、ダイアトマイトと結晶セルロース及び/又はセルロース末とが混合されてなる水スラリー状物を、スプレードライヤーにて噴霧乾燥させることを特徴とするものである。
【0010】
また、第4発明による化粧料は、第1発明又は第2発明に係る複合粉体を配合してなることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明においては、ダイアトマイトと結晶セルロース及び/又はセルロース末とが混合されてなる水スラリー状物をスプレードライヤーにて噴霧乾燥させることによって球状を呈し崩壊性を有する複合粉体が得られ、この複合粉体を化粧料に配合することにより、吸水性、吸油性があり、肌へ塗布した時の伸びが良く、かつ消臭効果に優れた化粧料を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】製造実施例1で得られた複合粉体の走査型電子顕微鏡写真である。
図2】製造実施例2で得られた複合粉体の走査型電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明による複合粉体及びその製造方法並びにその複合粉体を配合した化粧料の具体的な実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
【0014】
本発明において、ダイアトマイトとしては、特に限定されないが、例えば天然の珪藻土から得られるものであれば、特に限定されないが、二酸化ケイ素の含有量が90%以上のものが好ましい。
【0015】
本発明において、結晶セルロースは、特に限定されないが、例えば旭化成工業(株)社製のアビセルRC−591NF、FD−301が挙げられる。
【0016】
本発明において、セルロース末は、特に限定されないが、例えば大東化成工業(株)社製のCELLULOBEADS D−5(5μm)が挙げられる。当該セルロース末の平均粒子径は1〜50μmが好ましい。
【0017】
次に、本発明の複合粉体の製造方法について説明する。ダイアトマイト、結晶セルロース及び/又はセルロース末を水などの溶剤に分散してスラリーとし、これをスプレードライヤーにて噴霧乾燥することによって図1及び図2に示されるような球状を呈し崩壊性を有する複合粉体を製造することができる。ここで溶剤としては、水、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール等のアルコール、アセトン等が挙げられるが、水が好ましい。また、結晶セルロースは予め溶剤に分散してから使用すると得られる複合粉体の効果が発揮し易いため好ましい。
【0018】
また、上記分散スラリーの混合分散方法としては、ホモミキサー、ビーズミルなどを選択することができる。
【0019】
複合粉体に用いられる化合物である成分の質量比は、複合粉体全量に対して、ダイアトマイトが40〜95%、結晶セルロースが5〜15%、セルロース末が0〜50%とするのが好ましい。結晶性セルロースが5%未満では複合化に十分な量ではなく、20%を超えると複合粉体の崩壊性が悪くなり伸びが悪くなるので好ましくない。セルロース末を配合すると使用感が更に向上する。
また、複合粉体の吸水量は、120mL(L:リットル)/100g以上であるのが好ましい。吸水量が120mL/100g未満では、汗・水の吸収が十分でない。一方、複合体の吸油量は、100mL/100g以上であるのが好ましい。吸油量が100mL/100g未満では、皮脂の吸収が十分でなく、化粧持ちが向上しない上に、消臭効果も十分に得ることができない。これら吸水量と吸油量の両方の条件を満たす、すなわち吸水量が120mL/100g以上で、かつ吸油量が100mL/100g以上であるのがより好ましい。
【0020】
次に、本発明に係る化粧料について説明する。本発明の化粧料は、上述した複合粉体を配合することによって、吸水性(保水性)、吸油性があり、肌へ塗布した時の伸びが良く、かつ消臭効果に優れるものとなる。化粧料の剤型としては、乳液、化粧水等のスキンケア化粧料、ファンデーション、口紅等のメイクアップ化粧料、頭髪化粧料、デオドランド化粧料等に用いることができる。配合量は特に限定されないが、好ましくは0.01〜40質量%である。
【0021】
さらに、本発明の化粧料には通常化粧料に用いられる成分、例えば、粉体、界面活性剤、油剤、ゲル化剤、高分子、美容成分、保湿剤、色素、防腐剤、香料等を本発明の効果を損なわない範囲で使用することができる。
【0022】
本発明の化粧料の形態としては、パウダー状、乳液状、クリーム状、スティック状、固型状、スプレー、多層分離型などいずれの剤型を用いても構わない。
【実施例】
【0023】
次に、本発明による複合粉体及びその製造方法並びにその複合粉体を配合した化粧料の実施例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0024】
(製造実施例1)
固形を5%とした結晶セルロース(FD−301)の水分散体をビーズミルで調製する。当該水分散体888.9gと水1400.8gをホモミキサーで分散後、ダイアトマイト228.9gとセルロース末(CELLULOBEADS D−5)171.1gを加え更にホモミキサーで分散する。その後、スラリー温度を80℃に加温し、スプレードライヤーにて噴霧乾燥して複合粉末を得た。スプレードライヤーでの噴霧条件は、スプレー圧力2kgf/cm、入口温度220℃、出口温度100℃の設定で行った。また、噴霧乾燥方法は2流体ノズルを使用した。得られた複合粉末の走査型電子顕微鏡写真を図1に示す。
【0025】
(製造実施例2)
固形を5%とした結晶セルロース(FD−301)の水分散体をビーズミルで調製する。当該水分散体888.9gと水1400.8gをホモミキサーで分散後、ダイアトマイト400gを加え更にホモミキサーで分散する。その後、スラリー温度を80℃に加温し、スプレードライヤーにて噴霧乾燥して複合粉末を得た。スプレードライヤーでの噴霧条件は、スプレー圧力2kgf/cm、入口温度220℃、出口温度100℃の設定で行った。また、噴霧乾燥方法は2流体ノズルを使用した。得られた複合粉末の走査型電子顕微鏡写真を図2に示す。
【0026】
<吸水量・吸油量>
吸水量・吸油量については、JIS K 5101−13−1の方法で使用する油を水、オレイン酸及びジメチコン(6CS)に替えて測定した。測定結果を表1に示す
【0027】
【表1】
【0028】
上記表1から明らかなように、本発明の複合粉体は吸水量及び吸油量共に120mL/100g以上と高いものであった。
【0029】
(実施例1)
<パウダーファンデーション>
表2の処方と下記製造方法に従いパウダーファンデーションを製造した。なお、表2中の単位は質量%である。
【0030】
【表2】
【0031】
<製造方法>
成分Aを、ミキサーを用いて良く混合しながら、均一に加熱溶解した成分Bを除々に加えてさらに混合した後、粉砕し、メッシュを通した後、金型を用いて金皿に打型して製品を得た。
【0032】
(比較例1)
実施例1における製造実施例1の複合粉体の代わりに、セルロース末(CELLULOBEADS D−5(大東化成工業社製))を用いた以外は実施例1と同様にしてパウダーファンデーションを得た。
【0033】
実施例1及び比較例1で作製した各パウダーファンデーションについて、女性パネラー10名を使用して、化粧持ち、使用感(伸びの良さ)に関する官能評価試験を実施した。試験はアンケート形式で実施し、各項目に0点から5点の間の点数をつけ、0点は評価が悪い、5点は評価が優れるとして数値化し、結果を全パネラーの平均点として表した。従って、点数が高い程評価が優れていることを示す。なお、試験は乳液状の化粧下地を使用してからパウダーファンデーションを塗布する形式で実施した。その評価結果を表3に示す。
【0034】
【表3】
【0035】
表3の結果より、実施例1のパウダーファンデーションは、本発明の複合粉体を配合していることから、比較例1に比べて、皮脂を吸収しやすいため、化粧持ちが良く、塗布した際の伸びの良さが良好であった。
【0036】
(実施例2)
<デオドランド剤>
表4の処方のデオドランド剤を製造した。なお、表4中の単位は質量%である。
【0037】
【表4】
【0038】
得られたデオドランド剤は、優れた消臭効果とその持続性を有していた。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明の複合粉体を配合した化粧料は、吸水性(保水性)、吸油性があり、且つ消臭効果に優れ、肌へ塗布する時の伸びが良いことから、メイクアップ化粧料、サンスクリーン化粧料、乳液及びデオドラント化粧料などの化粧料に用いて好適であり、産業上の利用効果が大である。

図1
図2