(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
ダイ及びパンチを備えた鍛造加工部が水平方向に複数並設された多段式鍛造プレス機に備えられたトランスファ装置では、把持爪を用いて外周が円形状をなすワークを把持し、次の鍛造加工部へ搬送する。
このような外周が円形状をなすワークを把持する際に用いる把持爪の形状としては様々なものがある。
【0003】
例えば、
図6(A)は一対の把持爪の把持面の形状を円弧形状としたものである。このものは、ワークの外形状と把持面に形成された円弧形状が一致している場合確実な把持機能が発揮される。しかしながらワークの外径が変わった場合には把持爪の交換を行なわなければならず、この場合把持爪の交換及びその後の調整のため、設備の停止が生じ設備稼働率低下の要因となってしまう。
【0004】
一方、
図6(B)は上下に配置されたアームの先端にそれぞれ2本の把持爪を設け、ワークを4点で把持するようになしたものである。この4点支持のものは、下側に位置する把持爪が位置固定で上側の把持爪のみが移動するため、ワークの外径が変わった場合ワーク中心位置が変化してしまう。このため各把持爪の交換又は位置調整が必要となり、
図6(A)の場合と同様の問題が生じる。
【0005】
他方、
図6(C)はワークの左右方向両側に対向配置された一対の把持爪のうち、一方の把持面を平坦面に形成し、他方の把持面をV字溝に形成し、ワークを3点で把持するものである。このような3点支持でも把持するワークの径が変わった際にワークの中心位置がずれてしまう(以下、芯ずれとする場合がある)問題が生じる。この点について
図7を用いて説明する。
【0006】
例えば、把持面を平坦面に形成した把持爪110と把持面をV字溝に形成した把持爪112とで
図7(A)で示す径の大きなワークW
1を把持した場合のワーク中心をO
1とする。
その後、把持爪110,112をそれぞれ同量閉方向に移動させ、
図7(B)で示す径の小さなワークW
2を把持し、その場合のワーク中心をO
2とすると、同図で示すようにワーク中心O
1とO
2との間に位置ずれ(芯ずれ)δが生じてしまう。
ワークを把持した際の芯ずれδはワーク搬送時の搬送位置精度の悪化に繋がり対象製品の加工精度を悪化させてしまう。
【0007】
尚、円形状のワークを把持する把持爪の形状が開示されたものとして、例えば下記特許文献1及び特許文献2に開示されたものがある。
下記特許文献1には「ロボットハンド」についての発明が示され、そこにおいてワークを把持する把持爪の先端部分を長手方向に伸縮可能とし、ワークの外径が変化した場合にはこれに合わせて把持爪の先端部分を伸縮させるようになした点が開示されている。
しかしながらこの特許文献1に記載のものは4点支持を行うものであり、上述の3点支持における課題については開示されていない。また把持爪の開閉機構に関しても本発明とは異なるものである。
【0008】
一方下記特許文献2には「ワーク搬送装置」についての発明が示され、そこにおいて平坦面とV字溝によりワークを3点支持するようになした点が開示されている。
しかしながらこの特許文献2においても3点支持における上記課題、即ちワークの外径が変化した場合に生じる芯ずれの問題についての開示はない。また把持爪の開閉機構に関する具体的な開示もない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
3点支持において先述のような芯ずれが生じるのは、以下のような理由によるものである。
径の大きなワークを把持した
図7(A)の状態から中心位置O
1が同じで、径の小さいワークW
2を把持するため両側の把持爪をそれぞれ同量閉方向に移動させると、
図7(C)で示すように先ず平坦面を備えた把持爪110だけがワークW
2と当接し、このときV字溝を備えた把持爪112とワークW
2との間にはまだ隙間が残っている。この状態から更に両側の把持爪110,112を閉方向に移動させるとワークW
2は平坦面を備えた把持爪110により図中右側に移動せしめられ、最終的にワークW
2は、
図7(B)で示すように
図7(A)とはワーク中心が異なる位置O
2にて両把持爪110,112で把持される。
このことからも分かるように、ワークの径が変化した場合に芯ずれが生じるのは、ワークと把持面との当接位置が左右非対称であるため、ワーク当接までに要する移動量が左右の把持爪で異なり、ワーク中心位置を変化させることなく把持するにはV字溝を備えた把持爪112側の移動量が足りないからである。
本発明は以上のような事情を背景とし、平坦面とV字溝によりワークを3点支持した場合にワークの外径が変化してもワークの芯ずれを良好に防止することができるワークの把持機構を提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
而して請求項1のものは、ワークの左右方向両側に対向配置され、一方の把持面を平坦面に形成し、他方の把持面をV字溝に形成した一対の把持爪と、出力軸を進退移動させる駆動手段と、前記出力軸の進退運動を左右方向の開閉運動に変換し、これを前記一対の把持爪に伝達するリンク機構と、を備え、前記一対の把持爪を左右方向に開閉移動させる際、前記V字溝を備えた把持爪を、前記平坦面を備えた把持爪よりも多く移動させるようになし
た把持機構であって、
前記リンク機構は、(a)前記出力軸に連結され、該出力軸とともに進退する駆動リンクと、(b)左右方向に分かれて延びる一対の傾動リンクと、これら傾動リンクの一端側同士を回転可能に連結するとともに、該一対の傾動リンクと前記駆動リンクとを回転可能に連結する連結ピンと、該一対の傾動リンクのそれぞれの他端に設けられ、基台に形成された左右方向に延びるガイド溝に沿って移動するスライドピンと、を有する開閉運動生成手段と、(c)前記開閉運動生成手段の前記スライドピンと前記把持爪とに連結され、該スライドピンの位置に応じて前記把持爪を左右方向に位置移動させる一対の出力用リンクと、を備え、前記一対の把持爪を閉方向に移動させる際、前記左右方向と直交する上下方向よりも前記平坦面を備えた前記把持爪の側に傾いた傾斜方向に、前記開閉運動生成手段の前記連結ピンを移動させるようになしたことを特徴とする。
【0013】
請求項
2のものは、請求項
1において、前記基台の側に前記開閉運動生成手段の前記連結ピンの移動をガイドするガイド溝を形成するとともに、該ガイド溝を前記傾斜方向に傾けて設けたことを特徴とする。
【0014】
請求項
3のものは、請求項
1,2の何れかにおいて、前記開閉運動生成手段を、前記駆動リンクに沿って上下方向に複数設けたことを特徴とする。
【0015】
先述のように平坦面とV字溝とでワークを3点支持する場合に、外径が大きいワークと外径が小さいワークとで芯ずれが生じてしまうのは、ワークの径が変化した場合にワーク当接までに要する把持爪の移動量が左右の把持爪で異なり、V字溝を備えた把持爪の移動量が足りなくなるからである。
このためワークの径が変化した場合でもワークの中心位置が変化しない状態でワークを把持するためには、一対の把持爪を移動させる際に、V字溝を備えた把持爪の移動量を、平坦面を備えた把持爪の移動量よりも大きくする必要がある。
本発明はこのような知見に基づくもので、駆動手段の出力軸の進退運動を左右方向の開閉運動に変換するリンク機構を用いて、一対の把持爪を開閉方向に移動させる際、V字溝を備えた把持爪を、平坦面を備えた把持爪よりも多く移動させるようになしたものである。
このように一対の把持爪を移動させる際、常にV字溝を備えた把持爪の移動量を大きくすることで、V字溝を備えた把持爪の移動量が足りないことによるワークの芯ずれを有効に防止することが可能となる。
【0016】
具体的にV字溝を備えた把持爪を、平坦面を備えた把持爪よりもどれだけ多く移動させればよいかは、ワークと当接するV字溝の斜面の角度により異なってくる。例えば
図7(A)で示す把持爪112に形成されたV字溝の斜面における左右方向の仮想線に対する角度θが60°の場合、V字溝を備えた把持爪112を平坦面を備えた把持爪110の1.15倍移動させることでワークの芯ずれを有効に防止することができる。
このようにすることで本発明では、ワークの外径が変わった場合における把持爪の交換及び調整作業を不要とし得て、対象設備の設備稼働率を向上させることができる。
【0017】
更に本発明は、出力軸の進退運動を左右方向の開閉運動に変換するリンク機構を、左右方向に分かれて延びる一対の傾動リンクと、これら傾動リンクの一端側同士を回転可能に連結するとともに、一対の傾動リンクと駆動リンクとを回転可能に連結する連結ピンと、一対の傾動リンクのそれぞれの他端に設けられ、基台に形成された左右方向に延びるガイド溝に沿って移動するスライドピンと、を有する開閉運動生成手段を備えた構成とし、一対の把持爪を閉方向に移動させる際、開閉運動生成手段の連結ピンを、左右方向と直交する上下方向よりも平坦面を備えた把持爪の側に傾けた傾斜方向に移動させるようになしたものである。
本発明では、一対の把持爪を閉方向に移動させる際、開閉運動生成手段の連結ピンとともに開閉運動生成手段全体が平坦面を備えた把持爪の側に移動するため、この移動量に応じてV字溝を備えた把持爪を平坦面を備えた把持爪よりも多く移動させることができる。
尚、芯ずれを防止するために連結ピンをどれだけ傾けて移動させれば良いかは、開閉運動生成手段を構成する傾動リンクの長さや把持爪におけるV字溝の斜面の角度によって異なるため必要に応じて適宜最適な傾斜角度を採用することができる。
【0018】
本発明では基台の側に連結ピンの移動をガイドするガイド溝を形成するとともに、ガイド溝を上記傾斜方向に傾けて設けることができる(請求項
2)。
このようにすれば、傾斜方向に移動する連結ピンの軌道を容易に規定することができる。
またV字溝を備えた把持爪の移動量を変更する必要が生じた場合にはこのガイド溝の傾斜角度を変更することで連結ピンの軌道を容易に調整することができる。
【0019】
本発明ではまた、上記開閉運動生成手段を駆動リンクに沿って上下方向に複数設けることができる(請求項
3)。
かかる請求項
3によればスライドピンの位置に応じて把持爪を左右方向に位置移動させる出力用リンクを複数のスライドピンで連結支持することができるので、出力用リンクが傾くのを防止し得て、把持爪の位置精度を高めることができる。
【発明の効果】
【0020】
以上のような本発明によれば、平坦面とV字溝によりワークを3点支持した場合にワークの外径が変化してもワークの芯ずれを良好に防止することが可能な把持機構を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に本発明の実施形態を図面に基づいて詳しく説明する。
図1は本実施形態の把持機構を備えた把持装置の構成を示した図である。
図2は
図1のII−II断面図、また
図3は
図1のIII−III断面図である。
図1において、10は把持装置で、ダイ及びパンチを備えた鍛造加工部が水平方向に複数並設された多段式鍛造プレス機のトランスファ装置に取り付けられ、ワークを次工程に搬送の際にワークを把持するものである。
12は把持装置10の基台を構成するハウジングで、ケース本体14と蓋体15とで構成されている。尚、
図1は蓋体15を取り外した状態を示している。
【0023】
図1において、16は駆動手段としてのエアーシリンダ、18はハウジング12内部に収納されたリンク機構、20,22は一対の把持爪である。
本例ではエアーシリンダ16による上下方向の進退運動をリンク機構18により左右方向の開閉運動に変換し、これをリンク機構18の出力端に接続された把持爪20,22に伝達する。
【0024】
エアーシリンダ16は、その本体部24がハウジング12の上端面に取付固定されており、本体部24からはハウジング12内に出力軸25が図中下向きに延び出している。この出力軸25は本体部24に導入されるエアーによって図中上下方向に進退運動する。
【0025】
出力軸25の先端には、リンク機構18の一部を構成する第1駆動リンク26の一端が連結ピン27を介して回転可能に連結されている。そして第1駆動リンク26の他端には第2駆動リンク28が連結ピン29を介して回転可能に連結されている。
尚、
図2で示すように本例では、これら第1駆動リンク26及び第2駆動リンク28が出力軸25の中心線に対して対称な位置にそれぞれ2本ずつに分割されて設けられている。
而してエアーシリンダ16の出力軸25が上下方向に進退すると、これとともに第1駆動リンク26及び第2駆動リンク28も上下方向に進退する。
本例では第1駆動リンク26及び第2駆動リンク28にて、出力軸25とともに進退する駆動リンクが構成されている。
本例では、第2駆動リンク28が
図1中上下方向に進退移動する際、第2駆動リンク28が
図1の左右方向にも移動することができるよう、出力軸25と第2駆動リンク28との間に生じる左右方向のずれを吸収させる目的で、出力軸25と第2駆動リンク28との間に第1駆動リンク26が設けられている。
【0026】
第2駆動リンク28の一端側には、第2駆動リンク28の進退運動を左右方向の開閉運動に変換する第1の開閉運動生成手段30が連結ピン29により回転可能に連結されている。
第1の開閉運動生成手段30は、左右方向に分かれて延びる一対の傾動リンク32,34と、これらの一端側同士を回転可能に連結する連結ピン29と、傾動リンク32,34のそれぞれの他端に設けられたスライドピン36,38と、を備えている。
尚
図3で示すように本例では、これら傾動リンク32,34は出力軸25の中心線に対して対称な位置にそれぞれ2本ずつに分割されて設けられている。
スライドピン36,38はそれぞれの両端部に平面視四角形状の鍔部39が形成されており、これら鍔部39はケース本体14及び蓋体15に形成された左右方向に延びるガイド溝40にスライド移動可能に係合している。
また、連結ピン29の一方(蓋体15側)の端部にも平面視四角形状の鍔部42が形成されており、この鍔部42が蓋体15に形成されたガイド溝43にスライド可能に係合している。
この第1の開閉運動生成手段30は、連結ピン29が上方向に引き上げられるとスライドピン36,38がそれぞれ左右方向の閉方向に位置移動する。また、連結ピン29が反対に下方向に押し下げられるとスライドピン36,38がそれぞれ左右方向の開方向に位置移動する。
【0027】
第2駆動リンク28の他端側には、第2駆動リンク28の進退運動を左右方向の開閉運動に変換する第2の開閉運動生成手段46が連結ピン48により回転可能に連結されている。
第2の開閉運動生成手段46は、左右方向に分かれて延びる一対の傾動リンク50,52と、これらの一端側同士を回転可能に連結する連結ピン48と、傾動リンク50,52のそれぞれの他端に設けられたスライドピン54,56と、を備えている。
スライドピン54,56はそれぞれの両端部に平面視四角形状の鍔部57が形成されており、これら鍔部57はケース本体14及び蓋体15に形成された左右方向に延びるガイド溝58にスライド移動可能に係合している。
また、連結ピン48の一方(蓋体15の側)の端部にも平面視四角形状の鍔部49が形成されており、この鍔部49が蓋体15に形成されたガイド溝60にスライド可能に係合している。
この第2の開閉運動生成手段46も 第1の開閉運動生成手段30と同様に、連結ピン48が上方向に引き上げられるとスライドピン54,56がそれぞれ左右方向の閉方向に位置移動する。また、連結ピン48が反対に下方向に押し下げられるとスライドピン54,56がそれぞれ左右方向の開方向に位置移動する。
【0028】
第2駆動リンク28に沿って上下方向に設けられたこれら第1の開閉運動生成手段30と第2の開閉運動生成手段46は、それぞれの
図1中左側の傾動リンク32と50を同じリンク長とし、それぞれの図中左側のスライドピン36と54が左右方向同じ位置になるように設定されている。
同様に
図1中右側の傾動リンク34と52についても同じリンク長とし、それぞれの図中右側のスライドピン38と56が左右方向同じ位置になるように設定されている。
【0029】
62,64はそれぞれ上下方向に延びる一対の出力用リンクである。
図1中左側の出力用リンク62は第1の開閉運動生成手段30のスライドピン36及び第2の開閉運動生成手段46のスライドピン54にそれぞれ連結され、また図中右側の出力用リンク64は第1の開閉運動生成手段30のスライドピン38及び第2の開閉運動生成手段46のスライドピン56にそれぞれ連結されており、左右方向に開閉移動する際一対の出力用リンク62,64は互いに平行を維持した状態でこれらスライドピンの位置に応じて左右方向に位置移動する。
尚
図3で示す出力用リンク64のように本例では、一対の出力用リンク62,64は出力軸25の中心線に対して対称な位置にそれぞれ2本ずつに分割されて設けられている。
【0030】
これら一対の出力用リンク62,64の下端にはそれぞれ把持爪20,22が接続されている。
図1に示すように、一対の把持爪20,22はワークを把持するための把持面を内側に向け左右方向に対向配置されている。本例では図中左側の把持爪20の把持面21は平坦面に形成され、図中右側の把持爪22の把持面23はV字溝に形成されている。
把持面23に形成された斜面は、左右方向の仮想線に対して角度θだけ上下方向にそれぞれ傾斜しており、本例ではθ=60°とされている。
本例では外周が円形状のワークをこれら一対の把持爪20,22により3点支持する。
【0031】
図1(B)及び
図2で示すように、蓋体15には第1の開閉運動生成手段30の連結ピン29の移動をガイドするガイド溝43及び第2の開閉運動生成手段46の連結ピン48の移動をガイドするガイド溝60がそれぞれ形成されている。
ガイド溝43は、
図1(B)で示すように左右方向と直交する上下方向の仮想線に対して角度αだけ平坦面を備えた把持爪20の側(図中左側)に傾いて設けられている。このガイド溝43に対しては連結ピン29の鍔部42がスライド移動可能に係合されている。
【0032】
一方、ガイド溝43の下方に設けられたガイド溝60もガイド溝43と同様に上下方向の仮想線に対して角度αだけ傾いて設けられており、このガイド溝60に対しては連結ピン48の鍔部49がスライド移動可能に係合されている。
本例では一対の把持爪20,22を閉方向に移動させる際、開閉運動生成手段30,46の連結ピン29,48を、上下方向よりも平坦面を備えた把持爪20の側に傾けて移動させることで、V字溝を備えた把持爪22を、平坦面を備えた把持爪20よりも多く移動させ、ワークWの外径が変化した場合のワークの芯ずれを有効に防止する。
ガイド溝43,60は連結ピン29,48を上記傾斜方向に位置移動させるために設けられたものである。
【0033】
次にワークの芯ずれを防止するのに好適なガイド溝60の傾きを求める方法を
図4を用いて説明する。尚、
図4では各部材を模式化して示している。
図4(A)は本例の把持装置10が把持を予定している最大径(r
1)のワークW
1を把持した状態を示しており、この時のワーク中心の位置をO
1とする。
この状態で傾動リンク50他端側のスライドピン54の中心から一端側の連結ピン48の中心までのリンク長を半径とする仮想円を描き、更に傾動リンク52他端側のスライドピン56の中心から一端側の連結ピン48の中心までのリンク長を半径とする仮想円を描き、その交点を連結ピン48の位置P
1として求める。
【0034】
次に
図4(B)で示すように、ワーク中心位置O
1はそのままに一対の把持爪20,22を閉方向に移動させ、本例の把持装置10が把持を予定している最小径(r
2)のワークW
2を把持した状態を描く。
この状態で傾動リンク50他端側のスライドピン54の中心から一端側の連結ピン48の中心までのリンク長を半径とする仮想円を描き、更に傾動リンク52他端側のスライドピン56の中心から一端側の連結ピン48の中心までのリンク長を半径とする仮想円を描き、その交点を連結ピン48の位置P
2として求める。
図4(B)の部分拡大図で示すように、求めたP
1とP
2を結んだ線は、左右方向と直交する上下方向の仮想線よりも平坦面を備えた把持爪20の側に角度αだけ傾斜している。
【0035】
このようにして求めた連結ピン48の位置P
1とP
2は共にワークの中心位置がO
1であることから、連結ピン48をP
1とP
2とを結んだ線上に位置させるようにすれば、把持装置10が何れの大きさのワークを把持する場合であっても、把持されたワークの中心位置は常にO
1のまま、若しくはO
1に近接した位置となることから、従来のようにワークの外径を変更した際に芯ずれが生じてしまうことを有効に防止することが可能となる。
従って連結ピン48をガイドするガイド溝60は、連結ピン48がP
1とP
2とを結んだ線上を移動できるように、上記連結ピン48の軌跡と同様に上下方向の仮想線に対して角度αだけ傾斜させて設けるようにする。
以上連結ピン48をガイドするガイド溝60について説明したが、連結ピン29をガイドするガイド溝43についても同様である。
【0036】
次に本例の把持機構を備えた把持装置10におけるワークの把持動作について説明する。
ワークWの左右方向両側に把持爪20,22が位置する状態(
図1に示す状態)で、エアーシリンダ16を駆動させ、出力軸25とともに第1駆動リンク26及び第2駆動リンク28を上方に引き上げると、
図5で示すように第2駆動リンク28に連結されている連結ピン29及び連結ピン48がそれぞれガイド溝43,60に案内され、図中上方に(詳しくは斜め左上に向けて)移動する。
これにより第1の開閉運動生成手段30のスライドピン36,38及び第2の開閉運動生成手段46のスライドピン54,56は何れも中心部に向かって閉方向に移動し、これらスライドピンに連結されている出力用リンク62,64及び出力用リンク62,64の端部に取り付られている把持爪20,22もまた中心部に向けて閉方向に移動する。
【0037】
本例では第1の開閉運動生成手段30の連結ピン29及び第2の開閉運動生成手段46の連結ピン48の軌道が
図4で求めた角度αだけ傾いた軌道になるよう、それぞれガイド溝43,60により規定されており、把持爪20,22が閉方向に移動する際、第1の開閉運動生成手段30及び第2の開閉運動生成手段46がガイド溝43,60の傾きに伴い平坦面を備えた把持爪20の側(図中左側)に移動するため、V字溝を備えた把持爪22は、平坦面を備えた把持爪20の移動量よりも多く移動する。
これによりV字溝を備えた把持爪22の移動量が足りないことによるワークの芯ずれを防止し得て、何れの大きさのワークWを把持する場合であっても、ワーク中心位置を一定に維持した状態でワークWを把持することができる。
【0038】
以上把持爪20,22が閉方向に移動する場合の動作について説明したが、把持爪20,22が開方向に移動する場合は、
図5の状態から出力軸25とともに第1駆動リンク26及び第2駆動リンク28が下方に押し下げられ、第2駆動リンク28に連結されている連結ピン29及び連結ピン48がそれぞれガイド溝43,60に案内され、図中下方に(詳しくは斜め右下方向に)移動する。
これにより第1の開閉運動生成手段30のスライドピン36,38及び第2の開閉運動生成手段46のスライドピン54,56は何れも開方向に移動し、これらスライドピンに連結されている出力用リンク62,64及び把持爪20,22もまた開方向に移動する。
【0039】
このような開方向への移動においても、第1の開閉運動生成手段30の連結ピン29及び第2の開閉運動生成手段46の連結ピン48の軌道がそれぞれガイド溝43,60により規定されており、把持爪20,22が開方向に移動する際、第1の開閉運動生成手段30及び第2の開閉運動生成手段46がガイド溝43,60の傾きに伴いV字溝を備えた把持爪22の側(図中右側)に移動するため、V字溝を備えた把持爪22は、平坦面を備えた把持爪20の移動量よりも多く移動する。
【0040】
以上のように本実施形態では、一対の把持爪を閉方向に移動させる場合、逆に開方向に移動させる場合何れの場合においても、V字溝を備えた把持爪22を平坦面を備えた把持爪20よりも多く移動させるようになしてあり、これにより従来の3点支持において問題であったV字溝を備えた把持爪22の移動量が足りないことによるワークの芯ずれを有効に防止することができる。
このため本実施形態では、ワークの外径が変わった場合における把持爪20,22の交換及び調整作業を不要とし得て、対象設備の設備稼働率を向上させることができる。
【0041】
本実施形態ではまた、開閉運動生成手段30,46を第2駆動リンク28に沿って上下方向に2組設けて、出力用リンク62,64をそれぞれ上下方向2箇所のスライドピンで連結支持しているため、出力用リンク62,64が傾くのを防止し得て把持爪20,22の位置精度を高めることができる。
【0042】
以上本発明の実施形態を詳述したがこれはあくまで一例示である。上記実施形態では出力軸25の図中上向きの運動を把持爪の閉方向の運動に変換する構成であったが、場合によってはこれとは逆に出力軸25の図中下向きの運動を把持爪の閉方向の運動に変換するようなリンク機構を採用することも可能である。
また上記実施形態では連結ピンの斜め方向の軌道をガイド溝により規定しているが、出力軸自体を斜め方向に傾けてその方向に連結ピンを進退させるようにすることも可能である。
更に、本発明の把持機構は、トランスファ装置用把持装置以外の様々な把持装置に適用することが可能である等、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲において種々変更を加えた態様で実施可能である。