特許第6661523号(P6661523)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6661523
(24)【登録日】2020年2月14日
(45)【発行日】2020年3月11日
(54)【発明の名称】パルス発生装置および同装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
   H02M 9/04 20060101AFI20200227BHJP
【FI】
   H02M9/04 Z
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-240221(P2016-240221)
(22)【出願日】2016年12月12日
(65)【公開番号】特開2018-98877(P2018-98877A)
(43)【公開日】2018年6月21日
【審査請求日】2019年1月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】東芝三菱電機産業システム株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504171134
【氏名又は名称】国立大学法人 筑波大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】特許業務法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】久保田 健介
(72)【発明者】
【氏名】山崎 長治
(72)【発明者】
【氏名】今野 修二
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 智宏
(72)【発明者】
【氏名】磯部 高範
【審査官】 東 昌秋
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−169570(JP,A)
【文献】 特開平8−182349(JP,A)
【文献】 特開2009−95160(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 1/00−11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルス発生装置であって、
第1コンデンサと、
前記第1コンデンサと直列に接続される、前記第1コンデンサを放電させるための第1半導体スイッチと、
第2コンデンサを有し、前記第1半導体スイッチと直列に接続される、前記第1半導体スイッチがオンされた前記第1コンデンサの放電期間中における当該パルス発生装置の出力電圧を一定化するための電圧補償装置と、
前記電圧補償装置を制御するコントローラと、
を具備し、
前記電圧補償装置は、
第1ダイオードと前記第1ダイオードのアノードへ接続される第2半導体スイッチとを有する第1回路と、前記第1回路における前記第1ダイオードと前記第2半導体スイッチとの位置関係を逆転させた、第3半導体スイッチと前記第3半導体スイッチへカソードが接続される第2ダイオードとを有する第2回路とを、前記第1回路側を電流の上流、前記第2回路側を電流の下流として並列接続し、かつ、前記第1回路と前記第2回路との間に前記第2コンデンサを前記第1回路および前記第2回路と並列接続して構成され、
前記コントローラは、
前記第1コンデンサの放電期間中における前記出力電圧が所定の範囲に収まるように前記第2コンデンサを充放電させるものであって、
前記第2半導体スイッチおよび前記第3半導体スイッチをオフして、前記第1ダイオードから前記第2コンデンサを経由して前記第2ダイオードへ至る第1経路を形成することにより、前記第2コンデンサを充電させ、
前記第2半導体スイッチおよび前記第3半導体スイッチをオンして、前記第2半導体スイッチから前記第2コンデンサを経由して前記第3半導体スイッチへ至る第2経路を形成することにより、前記第2コンデンサを放電させる、
ルス発生装置。
【請求項2】
前記コントローラは、前記第2半導体スイッチをオンし、前記第3半導体スイッチをオフすることにより形成される、前記第2半導体スイッチから前記第2ダイオードへ至る前記第2コンデンサを経由しない第3経路と、前記第2半導体スイッチをオフし、前記第3半導体スイッチをオンすることにより形成される、前記第1ダイオードから前記第3半導体スイッチへ至る前記第2コンデンサを経由しない第4経路とを、前記第2コンデンサを充放電させない期間を設ける毎に交互に使用する請求項に記載のパルス発生装置。
【請求項3】
複数の前記電圧補償装置が、前記第1半導体スイッチと直列に接続される請求項1又は2に記載のパルス発生装置。
【請求項4】
パルス発生装置であって、
第1コンデンサと、
前記第1コンデンサと直列に接続される、前記第1コンデンサを放電させるための第1半導体スイッチと、
第2コンデンサを有し、前記第1半導体スイッチと直列に接続される、前記第1半導体スイッチがオンされた前記第1コンデンサの放電期間中における当該パルス発生装置の出力電圧を一定化するための電圧補償装置と、
前記電圧補償装置を制御するコントローラと、
を具備し、
前記電圧補償装置は、
第1ダイオードと前記第1ダイオードのアノードへ接続される第2半導体スイッチとを有する第1回路と、前記第1回路における前記第1ダイオードと前記第2半導体スイッチとの位置関係を逆転させた、第3半導体スイッチと前記第3半導体スイッチへカソードが接続される第2ダイオードとを有する第2回路とを、前記第1回路側を電流の上流、前記第2回路側を電流の下流として並列接続し、かつ、前記第1回路と前記第2回路との間に前記第2コンデンサを前記第1回路および前記第2回路と並列接続して構成され、
複数の前記電圧補償装置が、前記第1半導体スイッチと直列に接続され、
前記コントローラは、前記第1コンデンサの放電期間中における前記出力電圧が所定の範囲に収まるように前記第2コンデンサを充放電させるものであって、前記第1コンデンサの放電開始時、すべての前記第2コンデンサが充電を開始し、前記第1コンデンサの放電開始から前記第1コンデンサの出力電圧が第1閾値を下回るまでの第1期間において、充電状態の前記第2コンデンサの数が段階的に減少し、前記第1コンデンサの出力電圧が前記第1閾値よりも小さい第2閾値を下回ってから前記第1コンデンサの放電終了までの第2期間において、放電状態の前記第2コンデンサの数が段階的に増加し、前記第1コンデンサの放電終了時、すべての前記第2コンデンサが放電を終了するように、複数の前記電圧補償装置を制御する
ルス発生装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パルス発生装置および同装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
パルス発生装置は、コンデンサ(コンデンサバンク)と半導体等で構成されたスイッチ(半導体スイッチと称する)とにより構成され、半導体スイッチがオンすると、パルス発生装置、より詳細には、コンデンサの出力電圧が負荷へ印加される。負荷の一例として、加速器に使用されるクライストロンが挙げられるが、電子等のビーム加速器に使用されるクライストロンの負荷に対しては、当該負荷へ印加される、パルス発生装置の出力電圧を一定とすることが要求される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4382665号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のパルス発生装置の構成では、半導体スイッチのオン期間中におけるコンデンサの放電により、出力パルスの電圧、より詳細には、1パルス内での電圧が一定とならないという問題があった。
【0005】
また、電圧の変化(低下)を抑えるために、コンデンサの容量を大きくするという対処法も考えられ得るが、この対処法では、装置の大幅な大型化を招いてしまう。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、装置の大幅な大型化を招くことなく、出力パルスの電圧を一定の値に近づけることができるパルス発生装置および同装置の制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
特許文献1ではパルス電源装置において、電源に接続されないコンデンサを持つブリッジ回路を電源に直列に接続し、ブリッジ回路のコンデンサ電圧を電源電圧とあわせて負荷に与える方式が示されている。しかし特許文献1は負荷が誘導性負荷に限定され、その磁気エネルギーを利用するなどしてブリッジ回路のコンデンサ電圧を電源電圧以上に充電し、主にその電圧を用いてパルス電圧を発生することを想定している。またパルス発生の制御はブリッジ回路のスイッチングによって行われるため、ブリッジ回路のコンデンサに充電される電圧と、負荷に与える電圧の制御に関しては制約がある。たとえば、特許文献1が想定するように誘導性負荷の場合、ブリッジ回路のコンデンサには電源電圧の数倍の電圧が発生し、また正のパルス電圧が発生した後に負のパルス電圧が発生する。これは比較的低い電源電圧で誘導性負荷にパルス電流を急峻に立ち上げ、また立ち下げるためには好適な特性であるが、電圧パルスの発生と制御の観点からは好ましくない。また、負荷にかかる電圧と同程度の電圧がブリッジ回路のコンデンサに発生し、ブリッジ回路に使用する半導体スイッチおよびコンデンサには高い耐圧が必要である。
【0008】
本発明は、コンデンサバンクを電源とし、単極性の電圧パルスを負荷に与えるパルス発生装置において、より平坦なパルス電圧波形を発生可能な装置を実現するためのものである。上記目的を達成するため、従来のパルス発生装置と同様にコンデンサバンクの放電を制御する主スイッチを設け、加えて、電源に接続されないコンデンサを持つブリッジ回路を直列に接続する構成により、ブリッジ回路の発生する電圧をコンデンサバンクの電圧とあわせて負荷に与える。コンデンサバンクの放電を制御する主スイッチとは別にブリッジ回路の制御を行うことができるため、負荷にかかる単極性パルス電圧をある範囲内で制御することを可能とする。負荷は誘導性負荷に限定されない。上記目的を達成するためにブリッジ回路が発生すべき電圧はコンデンサバンクの電圧低下分相当のみであるため、ブリッジ回路は電源電圧およびパルス電圧にくらべ低い耐圧の半導体スイッチおよびコンデンサで実現可能である。
【0009】
本発明の観点に従ったパルス発生装置は、第1コンデンサと、前記第1コンデンサと直列に接続される、前記第1コンデンサを放電させるための第1半導体スイッチと、第2コンデンサを有し、前記第1半導体スイッチと直列に接続される、前記第1半導体スイッチがオンされた前記第1コンデンサの放電期間中における当該パルス発生装置の出力電圧を一定化するための電圧補償装置と、前記電圧補償装置を制御するコントローラとを具備する。前記コントローラは、前記第1コンデンサの放電期間中における出力電圧が第1閾値(上限側)よりも大きい場合、前記第2コンデンサを充電させ、前記第1コンデンサの放電期間中における出力電圧が第2閾値(下限側)よりも小さい場合、前記第2コンデンサを放電させる。さらに両者の閾値の間では前記第2コンデンサは充放電をせずにバイパスさせる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、装置の大幅な大型化を招くことなく、出力パルスの電圧を一定の値に近づけることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態に係るパルス発生装置の構成の一例を示す図。
図2】従来のパルス発生装置の構成の一例を示す図。
図3】同実施形態のパルス発生装置が備える電圧補償装置の構成の一例を示す図。
図4】同実施形態のパルス発生装置が備える電圧補償装置の構成の一変形例を示す図。
図5】同実施形態のパルス発生装置が備える電圧補償装置の動作を説明するための図。
図6】同実施形態のパルス発生装置における出力パルスの電圧を一定の値に近づけるための動作を説明するための図。
図7】同実施形態のパルス発生装置において出力パルスの電圧を一定の値に近づけるために実行される制御の手順を示すフローチャート。
図8】同実施形態のパルス発生装置が複数の電圧補償装置を備える場合における当該複数の電圧補償装置の制御の手順を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施の形態について図面を参照して説明する。
【0013】
図1は、本発明の実施形態に係るパルス発生装置1の構成の一例を示す図である。
【0014】
図1に示すように、パルス発生装置1は、コンデンサ11、半導体スイッチ12、電圧補償装置13およびコントローラ14を有する。つまり、本実施形態のパルス発生装置1は、従来の構成と比較して、電圧補償装置13を半導体スイッチ12と直列に接続した構成となっている。電圧補償装置13は、コントローラ14により制御される。コントローラ14は、半導体スイッチ12のオン/オフ制御も司る。より詳細には、コントローラ14は、半導体スイッチ12を周期的にオン/オフする。なお、図1においては、電圧補償装置13を(半導体スイッチ12の)負荷2側へ配置した例を示しているが、これに限定されず、コンデンサ11側へ配置することも可能である。また、半導体スイッチ12のオン/オフ制御は、コントローラ14とは別に設けられるコントローラにより行うようにしてもよい。したがって、コントローラ14は、少なくとも電圧補償装置13を制御する処理回路である。また、負荷への配線には寄生インダクタンスが存在し、半導体スイッチ12の遮断によって回路の一部にサージ電圧が発生する可能性があるが、それを避けるための還流ダイオードを半導体スイッチ12の出力部と対向電極側に設ける場合もある。
【0015】
ここで、本実施形態のパルス発生装置1の理解を助けるために、図2に、従来のパルス発生装置(パルス発生装置9)の構成の一例を示す。図2中、本実施形態のパルス発生装置1と同一の構成要素については同一の符号を付している。また、半導体スイッチ12のオン/オフ制御を司る、本実施形態のパルス発生装置1におけるコントローラ14に相当する構成要素については図示を省略している。
【0016】
パルス発生装置9は、コンデンサ11と直列に接続される半導体スイッチ12を周期的にオン/オフすることにより、パルスを発生させて出力する。出力パルスの電圧は、一定であることが望ましいが、半導体スイッチ12のオン期間中におけるコンデンサ11の放電により、図2に示されるように、1パルス内で電圧が下がってしまう。
【0017】
本実施形態のパルス発生装置1は、出力パルスの電圧を一定の値に近づけるために、電圧補償装置13を設けたものであり、以下、この点について詳述する。
【0018】
図3は、電圧補償装置13の構成の一例を示す図である。
【0019】
図3に示されるように、電圧補償装置13は、ダイオード131、半導体スイッチ(SL)132、半導体スイッチ(SH)133、ダイオード134およびコンデンサ135を有している。
【0020】
より詳細には、電圧補償装置13は、ダイオード131と半導体スイッチ132とを直列に接続した回路(ダイオード131のアノードへ半導体スイッチ132が接続された回路)と、半導体スイッチ133とダイオード134とを直列に接続した回路(半導体スイッチ133へダイオード134のカソードが接続された回路)とを並列接続し、中央に初期条件として所定の電圧が充電されているコンデンサ135を並列接続した構成を有している。
【0021】
なお、電圧補償装置13は、図4に示されるように、図3に示される構成の回路を複数直列に接続した構成としてもよい。または、複数の電圧補償装置13を半導体スイッチ12と直列に接続するようにしてもよい。複数の電圧補償装置13を半導体スイッチ12と直列に接続し、または、図4に示されるように電圧補償装置13を構成した場合におけるパルス発生装置1の動作については後述する。即ち、ここでは、まず、図3に示される構成を有する1つの電圧補償装置13が半導体スイッチ12と直列に接続されている場合を想定する。
【0022】
図5は、電圧補償装置13の動作を説明するための図である。
【0023】
半導体スイッチ132および半導体スイッチ133がオフすると(図5(A))、ダイオード131→コンデンサ135→ダイオード134の通電経路a1が形成され、コンデンサ135は充電されて(電圧補償装置13の出力電圧を図のVcompの矢印の方向にとれば)マイナスの電圧が出力される。一方、半導体スイッチ132および半導体スイッチ133がオンすると(図5(B))、半導体スイッチ132→コンデンサ135→半導体スイッチ133の通電経路a2が形成され、コンデンサ135は放電してプラスの電圧が出力される。半導体スイッチ132および半導体スイッチ133の一方がオンし、他方がオフした場合には(図5(C),(D))、コンデンサ135を経由しないバイパス経路a3,a4がそれぞれ形成され、電圧補償装置はゼロ電圧を出力する。またコンデンサ135は充放電されない。
【0024】
つまり、コントローラ14は、半導体スイッチ132のオン/オフと、半導体スイッチ133のオン/オフとを制御することで、コンデンサ135を充電させたり、放電させたり、さらにバイパスさせたりすることができる。そこで、コントローラ14は、図6に示されるように、半導体スイッチ12をオンした期間中におけるコンデンサ11の出力電圧(図6(A))の平均値を基準(目標値)として、電圧補償装置13内のコンデンサ135を充放電させることにより、コンデンサ11の出力電圧の平均値からの増減分を相殺するための出力電圧(図6(B))を電圧補償装置13において生成する。
【0025】
より詳細には、コントローラ14は、コンデンサ11の出力電圧が第1閾値よりも大きい場合、コンデンサ135を充電させ、一方、コンデンサ11の出力電圧が第2閾値よりも小さい場合、コンデンサ135を放電させる。さらに両者の閾値の間ではコンデンサ135は充放電をせずにバイパスさせる。これにより、負荷2へ印加される電圧、即ち、パルス発生装置1の出力電圧(図6(C))を一定の値に近づけることができる。また、コンデンサ11の容量を大きくすることと比較して、図3に構成の一例が示される電圧補償装置13を導入することで、装置全体で使用するコンデンサ容量を小さくできる。
【0026】
即ち、本実施形態のパルス発生装置1は、装置の大幅な大型化を招くことなく、出力パルスの電圧を一定の値に近づけることができる。
【0027】
図7は、本実施形態のパルス発生装置1において出力パルスの電圧を一定の値に近づけるために実行される制御の手順を示すフローチャートである。
【0028】
半導体スイッチ12を周期的にオン/オフするコントローラ14は、半導体スイッチ12のオン期間中におけるコンデンサ11の出力電圧が第1閾値(上限側)より大きい場合(ステップS1のYES)、電圧補償装置13の半導体スイッチ132および半導体スイッチ133をオフして、電圧補償装置13のコンデンサ135を充電させる(ステップS2)。
【0029】
コンデンサ11の出力電圧が第1閾値(上限値)以下になったら(ステップS1のNO)、次に第2閾値(下限値)と比較し、この値以上である場合(ステップS3のNO)、半導体スイッチ132または半導体スイッチ133のいずれかひとつをオンして充放電せずにバイパスさせる(ステップS4)。ひとつの半導体をオンする場合、半導体スイッチ132または半導体スイッチ133のいずれかを選択するか、パルス出力ごとに交互にオンするか、いずれでも良い。
【0030】
半導体スイッチ12のオン期間中におけるコンデンサ11の出力電圧が第2閾値(下限側)より小さい場合(ステップS3のYES)、コントローラ14は、電圧補償装置13の半導体スイッチ132および半導体スイッチ133をオンして、電圧補償装置13のコンデンサ135を放電させる(ステップS5)。以上の処理を、コントローラ14は、半導体スイッチ12のオン期間中、継続的に実行する。
【0031】
このように、本実施形態のパルス発生装置1では、電圧補償装置13がコントローラ14の制御下で適切に動作することにより、より詳細には、電圧補償装置13のコンデンサ135がコントローラ14の制御下で適切なタイミングで充放電することにより、コンデンサ11の出力電圧の平均値からの増減分を相殺するための出力電圧が電圧補償装置13において生成され、パルス発生装置1の出力電圧を一定の値に近づけることができる。
【0032】
なお、1パルス内で、コンデンサ11の出力電圧が第1閾値より大きい状態、コンデンサ11の出力電圧が第1閾値以下かつ第2閾値以上の状態、コンデンサ11の出力電圧が第2閾値より小さい状態の3状態を時分割的に用いてデューティ比で平均値を制御すべくPWM(Pulse Width Modulation)を適用することも可能である。また、平滑化のためのフィルタを設けてもよい。
【0033】
また第1閾値(上限値)と第2閾値(下限値)は同じでも良く、この場合はコンデンサ135を充放電するのみで、バイパスさせる動作は無くなる。
【0034】
次に、複数の電圧補償装置13を半導体スイッチ12と直列に接続し、または、図4に示されるように電圧補償装置13を構成した場合におけるパルス発生装置1の動作について説明する。
【0035】
前述の説明では、1つのコンデンサ135の充放電により、コンデンサ11の出力電圧の平均値からの増減分を相殺するための出力電圧を生成することを想定している。これに対して、以下では、複数のコンデンサ135の充放電により、コンデンサ11の出力電圧の平均値からの増減分を相殺するための出力電圧を生成する手法を、図8を参照しながら説明する。
【0036】
いま、パルス発生装置1が、5つの電圧補償装置13([0]〜[4])を有しているものと想定する。より詳細には、5つの電圧補償装置13が、半導体スイッチ12と直列に接続されているものと想定する。なお、図8には、半導体スイッチ12の1回のオン期間、即ち、1パルス分の期間が示されている。
【0037】
コントローラ14は、半導体スイッチ12のオンと同時に、5つの電圧補償装置13すべてにおいてコンデンサ135の充電を一斉に開始させる。より詳細には、コントローラ14は、5つの電圧補償装置13の半導体スイッチ132および半導体スイッチ133をすべてオフにする。その後、コントローラ14は、コンデンサ11の出力電圧が最大値から平均値へ至る1パルスの前半期間において、コンデンサ135を充電させる電圧補償装置13を段階的に減少させるように、5つの電圧補償装置13の半導体スイッチ132および半導体スイッチ133を制御する。たとえば、電圧補償装置13毎にコンデンサ135の充電を停止させる閾値とするコンデンサ11の出力電圧を定めておき、コンデンサ11の出力電圧が各閾値まで低下する毎に、1つずつコンデンサ135の充電を停止させるようにしてもよい。または、コンデンサ135の充電を1つ停止させる契機とするコンデンサ11の出力電圧の変化量を定めておき、コンデンサ11の出力電圧が当該変化量分だけ低下する毎に、1つずつコンデンサ135の充電を停止させるようにしてもよい。さらには、電圧補償装置13毎にコンデンサ135の充電期間を定めておき、その充電期間が満了する毎に、1つずつコンデンサ135の充電を停止させるようにしてもよい。
【0038】
コンデンサ135の充電を停止させるとは、半導体スイッチ132および半導体スイッチ133の一方をオンし、他方をオフすることにより、図5の(C)または(D)に示される、コンデンサ135を経由しないバイパス経路a3またはバイパス経路a4を形成することである。素子の冷却を考慮して、バイパス経路a3とバイパス経路a4とは、交互に使用することが望ましい。
【0039】
また、コントローラ14は、コンデンサ11の出力電圧が平均値から最小値へ至る1パルスの後半期間において、コンデンサ135を放電させる電圧補償装置13を段階的に増加させるように、5つの電圧補償装置13の半導体スイッチ132および半導体スイッチ133を制御する。前述の前半期間と同じ要領で、たとえば、電圧補償装置13毎にコンデンサ135の放電を開始させる閾値とするコンデンサ11の出力電圧を定めておき、コンデンサ11の出力電圧が各閾値まで低下する毎に、1つずつコンデンサ135の放電を開始させるようにしてもよい。または、コンデンサ135の放電を1つ開始させる契機とするコンデンサ11の出力電圧の変化量を定めておき、コンデンサ11の出力電圧が当該変化量分だけ低下する毎に、1つずつコンデンサ135の放電を開始させるようにしてもよい。さらには、電圧補償装置13毎にコンデンサ135の放電期間を定めておき、1パルスの期間終了時までの残存時間がその放電期間と一致するタイミング毎に、1つずつコンデンサ135の充電を停止させるようにしてもよい。あるいは、電圧補償装置13毎にコンデンサ135の充電停止から放電開始までの期間を定めておいてもよい。コントローラ14は、半導体スイッチ12のオフと同時に、5つの電圧補償装置13すべてにおいてコンデンサ135の放電を一斉に停止させる。
【0040】
図8中、(A)は、前述のようなコンデンサ135の制御の下、5つの電圧補償装置13それぞれにおいて生成される出力電圧を示している。また、(B)は、5つの電圧補償装置13それぞれにおいて生成される出力電圧を合計した合計出力電圧を示している。充電させるコンデンサ135の数を段階的に減少させ、かつ、放電させるコンデンサ135の数を段階的に増加させることで、図8に示されるような(コンデンサ11の出力電圧の平均値からの増減分を相殺するための)階段状の出力電圧を生成することができる。
【0041】
複数のコンデンサ135を使用する本手法では、より小容量のコンデンサ135で高精度な電圧補償が可能となる。複数のコンデンサ135は、すべてが同一の容量であることに限定されない。異なる容量のコンデンサ135を組み合わせて、各コンデンサ135の充放電を適切に制御するようにしてもよい。
【0042】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組合せにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0043】
1…パルス発生装置、11…コンデンサ、12…半導体スイッチ、13…電圧補償装置、14…コントローラ、131,134…電圧補償装置内ダイオード、132,133…電圧補償装置内半導体スイッチ、135…電圧補償装置内コンデンサ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8