特許第6661524号(P6661524)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6661524
(24)【登録日】2020年2月14日
(45)【発行日】2020年3月11日
(54)【発明の名称】熱交換器
(51)【国際特許分類】
   F28F 1/40 20060101AFI20200227BHJP
   H01L 23/473 20060101ALI20200227BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20200227BHJP
【FI】
   F28F1/40 H
   H01L23/46 Z
   H05K7/20 N
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-241012(P2016-241012)
(22)【出願日】2016年12月13日
(65)【公開番号】特開2018-96605(P2018-96605A)
(43)【公開日】2018年6月21日
【審査請求日】2019年3月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000141901
【氏名又は名称】株式会社ケーヒン
(74)【代理人】
【識別番号】100067356
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 容一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100160004
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 憲雅
(74)【代理人】
【識別番号】100120558
【弁理士】
【氏名又は名称】住吉 勝彦
(74)【代理人】
【識別番号】100148909
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧澤 匡則
(74)【代理人】
【識別番号】100161355
【弁理士】
【氏名又は名称】野崎 俊剛
(72)【発明者】
【氏名】津久井 肇
【審査官】 庭月野 恭
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−110982(JP,A)
【文献】 特開2015−048973(JP,A)
【文献】 特開2010−093020(JP,A)
【文献】 特開2012−243808(JP,A)
【文献】 特開2016−100456(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/098720(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0073292(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28F 1/40
F28F 3/06
H01L 23/473
H05K 7/20
H01M 10/6567
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
略矩形のアッパプレート及びロアプレートを備える熱交換器において、
前記アッパプレートと前記ロアプレートの間に、冷媒が移動するフィン及びこのフィンを囲うロアカバーを設け、
前記フィンを前記アッパプレートと前記ロアカバーとで挟み込んでおり、
前記アッパプレートは、外周縁から張り出すアッパ側フランジを備え、
前記ロアプレートは、前記アッパ側フランジに重なるロア側フランジを備え、
前記アッパ側フランジと前記ロア側フランジの一方のフランジの縁は、他方のフランジを囲うように折り曲げられたフランジ側補強リブとし、
前記ロアカバーは、前記アッパプレート及び前記ロアプレートよりも厚みを有することを特徴とする熱交換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換装置に好適な熱交換器に関する。
【背景技術】
【0002】
電力変換装置は、例えばバッテリとモータの間に配置されバッテリで貯えた電力を制御してモータへ供給する。
ハイブリッド車両や電動車両に搭載される電力変換装置は、内部に直流−交流間の電力変換を行う電力変換器としてのパワーモジュールを備えている。このパワーモジュールは通電すると発熱するため、冷却する必要がある。冷却対策として、ウオータジャケット、ヒートシンク、冷却器などと呼ばれる熱交換器が、パワーモジュールを囲うパワーモジュールケースに付属される。
【0003】
パワーモジュールケースは、平らな箱である。熱交換器は、箱の底に配置するように、プレート形熱交換器が採用される。プレート形熱交換器の構造が各種提案されてきた(例えば、特許文献1(図1図3図4)参照)。
【0004】
特許文献1の図3に示されるように、熱交換器は、略矩形を呈し、この例では6個の固定部(14)(括弧付き数字は、特許文献1に記載された符号を示す。以下同様)を、外周縁に備えている。固定部(14)はボルト穴(141)を有する。ボルト穴(141)にボルトを通し、このボルトを上位部材(例えば、パワーモジュールケース)にねじ込むことで、熱交換器は電力変換装置に付設される。
【0005】
特許文献1の図4に示されるように、固定部(14)では、補強部材(140)が天板部(2)と底板部(3)との間に嵌められる。補強部(140)は上面が天板部(2)にろう付けされ、下面が底板部(3)にろう付けされる。固定部(14)は、全体的に厚みが増し曲げ剛性や撓み剛性が格段に高まる。
【0006】
結果、特許文献1の図3において、図面表裏方向の荷重に対して、固定部(14)が曲がり難くなる。
ただし、固定部(14)は、天板部(2)の周辺部分に配置されているため、天板部(2)の固定部(14)から離れた部位での剛性は小さい。すなわち、熱交換器の内部剛性は高くない。
ヒートシンク(5)の保護の点から、内部剛性を高くすることが望まれる。
【0007】
また、特許文献1の図1に示されるように、補強部材(140)は管状のカラーである。このような補強部材(140)を底板部(3)と天板部(2)との間に組み付けるには、位置合わせに時間を要し、結果的に組み立て工数が嵩む。
【0008】
さらにまた、複数個(この例では6個)の補強部材(140)を、底板部(3)や天板部(2)とは、別に準備する必要がある。すなわち、部品点数が多くなり部品コストが増加する。
組み立て工数や部品点数の低減が求められる中、内部剛性を高くすると共に部品点数を削減しつつ全体の強度を向上させることが可能な熱交換器が求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2014−176892号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、内部剛性を高くすると共に部品点数を削減しつつ全体の強度を向上させることが可能な熱交換器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に係る発明は、略矩形のアッパプレート及びロアプレートを備える熱交換器において、
前記アッパプレートと前記ロアプレートの間に、冷媒が移動するフィン及びこのフィンを囲うロアカバーを設け、
前記フィンを前記アッパプレートと前記ロアカバーとで挟み込んでおり、
前記アッパプレートは、外周縁から張り出すアッパ側フランジを備え、
前記ロアプレートは、前記アッパ側フランジに重なるロア側フランジを備え、
前記アッパ側フランジと前記ロア側フランジの一方のフランジの縁は、他方のフランジを囲うように折り曲げられたフランジ側補強リブとし、
前記ロアカバーは、前記アッパプレート及び前記ロアプレートよりも厚みを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る発明では、アッパ側フランジとロア側フランジの一方をリブ形状にすることでカラーを用いることなく、フランジの強度を向上させることができる。結果、部品点数を削減しつつ強度を向上させることが可能な構造の熱交換器が提供される。
また、フィンを囲うロアカバーが厚肉とされているため、熱交換器の内部の剛性が高まる。
すなわち、本発明により、内部剛性を高くすると共に部品点数を削減しつつ全体の強度を向上させることが可能な熱交換器が提供される。
【0013】
また、ろう付け工程や、部品の実装工程などの際に、熱による熱交換器の反りの発生が心配されるが、本発明によれば内部剛性が高いため、熱交換器が反ることを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に係る熱交換器を内蔵する電力変換装置の分解斜視図である。
図2】本発明に係る熱交換器の平面図及び要部断面図である。
図3】本発明に係る熱交換器の斜視図である。
図4】本発明に係る熱交換器の変形例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。
【実施例】
【0016】
本発明に係る電力変換装置10は、バッテリとモータとの間に配置される。バッテリ及びモータは周知であるため、図示は省略する。モータが発電機として使用される場合は、発電された電力をバッテリに貯える。よって、本発明の電力変換装置10は、バッテリとモータとの間又は発電機とバッテリの間に配置することができる。
【0017】
図1に示すように電力変換装置10は、例えば、ロアケース11と、ミドルケース12と、アッパカバー13とで構成される筐体と、この筐体に内蔵されるコンデンサ14と、モータへ向かうモータ側バスバー15と、パワーモジュールを内蔵するパワーモジュールケース17とを備える。パワーモジュールケース17は、上面に回路基板18を備え、下面に熱交換器20を備える。
【0018】
図2(a)に示すように、熱交換器20は、平面視で横長の略矩形を呈している。
図2(a)のb−b線断面図である図2(b)に示すように、熱交換器20は、アッパプレート21と、このアッパプレート21の下面に当てられるフィン22と、このフィン22を囲うロアカバー23と、このロアカバー23を下から支えるロアプレート24とを備えている。
【0019】
図2(c)は図2(b)の分解図であり、アッパプレート21は、外周縁21aから張り出すアッパ側フランジ26を備え、ロアプレート24は、アッパ側フランジ26に重なるロア側フランジ27を備えている。加えて、アッパ側フランジ26の縁は、ロア側フランジ27を囲うように折り曲げられたフランジ側補強リブ28とされている。図2(a)に示すように、外周縁21aは、アッパ側フランジ26を含まない平面部である。
【0020】
例えば、図2(c)において、アッパ側フランジ26とロア側フランジ27との間にろう材W1を置き、アッパプレート21とロアカバー23との間にろう材W2を置き、アッパプレート21とフィン22との間にろう材W3を置きつつ、アッパプレート21にフィン22を当て、ロアカバー23を取り付け、ロアプレート24を取り付ける。この取り付けは、天地を逆、すなわちアッパプレート21を下にして、フィン22、ロアカバー23及びロアプレート24を上から取り付けることが推奨される。なお、ろう材W1〜W3は一例を示したものであって、適宜変更することは差し支えない。
【0021】
取り付けの際に、フランジ側補強リブ28があるため、アッパプレート21にロアプレート24を位置決めしつつ容易に組み付けることができ、作業性が向上する。
取り付け後に、ろう材W1〜W3を溶融し、凝固させることで、図2(b)が得られる。
【0022】
図2(b)にて、アッパ側フランジ26は、フランジ側補強リブ28を備えているため、剛性が格段に向上する。このようなアッパ側フランジ26にロア側フランジ27が重ねられるため、アッパ側フランジ26とロア側フランジ27とフランジ側補強リブ28とを組み合わせてなる固定部は、十分な強度を有する。
【0023】
アッパ側フランジ26とロア側フランジ27の一方をリブ形状にすることでカラーを用いることなく、フランジ26、27の強度を向上させることができる。結果、部品点数を削減しつつ強度を向上させることが可能な熱交換器が提供される。加えて、アッパプレート21にロアプレート24を組み付けるときに、フランジ側補強リブ28がロア側フランジ27を囲うため、プレート21、24同士の位置決めが容易になり、組み立て工数を低減することができる。
【0024】
図2(a)にて、平面視で、アッパプレート21の4つの隅を時計回りに第1隅31〜第4隅34としたときに、第1隅31近傍に冷媒(水、空気、その他の流体)の入口35(又は出口)が配置され、第3隅33近傍に冷媒の出口36(又は入口)が配置されている。
そして、第2隅32にアッパ側フランジ26が設けられ、第2隅32と第3隅33の中間位置にアッパ側フランジ26が設けられ、第4隅34にアッパ側フランジ26が設けられ、第4隅34と第1隅31の中間位置にアッパ側フランジ26が設けられている。
【0025】
すなわち、アッパプレート21の外周縁21aにおいて、第2隅32と第4隅34を通る対角線37上に2つのアッパ側フランジ26、26が設けられ、対角線37に交叉する線38上に2つのアッパ側フランジ26、26が設けられている。アッパ側フランジ26は各々ボルト穴39を有している。
【0026】
ボルト穴39にボルトを通し、このボルトでアッパプレート21等が、上位部材(パワーモジュールケース17など)に取り付けられるが、アッパ側フランジ26が対角線37上及びこの対角線に交叉する線38上に設けられるため、アッパプレート21等を固定するために必要な固定部(フランジ26等)を必要最小限にすることができる。
【0027】
図3(a)に熱交換器20の斜視図を示し、図3(b)に図3(a)のb部拡大図を示す。
図3(b)に示すように、アッパプレート21の外周縁21aに部分的にプレート側補強リブ41、41を設け、これらのプレート側補強リブ41、41をフランジ側補強リブ28に連続させるようにした。フランジ側補強リブ28がプレート側補強リブ41に繋がっているため、アッパ側フランジ26の曲げ強度をより高めることができる。
ただし、プレート側補強リブ41、41を設けるか否かは任意である。
【0028】
ところで、フランジ側補強リブ28及びプレート側補強リブ41を折り曲げ形成するときに、折り曲げ力がアッパプレート21の平面部分に伝わり、薄いアッパプレート21を局部変形させることがある。局部変形が発生した場合には、平坦化工程が別途必要になる。
【0029】
対策として、プレート側補強リブ41とアッパプレート21の外周縁21aとの間に、アッパ側フランジ26側へ開口する切り込み部42、42を設けた。切り込み部42、42で折り曲げ力が遮断され、アッパプレート21の平面部分に伝わらないため、アッパプレート21の変形を防止することができる。
切り込み部42、42の形状は、V字、U字、I字の何れでもよい。
【0030】
図3(c)は図3(b)の変形例を示し、図3(c)に示すように、アッパプレート21にフランジ側補強リブ28だけを付属してもよい。この場合には、フランジ側補強リブ28とアッパプレート21の外周縁21aとの間に、アッパ側フランジ26側へ開口する切り込み部42、42を設ければよい。
【0031】
以上の実施例では、アッパ側フランジ26にフランジ側補強リブ28を設けたが、このフランジ側補強リブ28はロア側フランジ27に設けることができる。その具体例を図4に基づいて説明する。
【0032】
図4に示すように、パワーモジュールケース17の下面にアッパプレート21が当てられ、フランジ側補強リブ28は、アッパ側フランジ26を囲うと共にパワーモジュールケース17を囲うようにロア側フランジ27からパワーモジュールケース17側へ折り曲げられている。フランジ側補強リブ28が補強作用に加えて位置決め作用を発揮する。すなわち、パワーモジュールケース17に熱交換器20を取り付ける際に、パワーモジュールケース17と熱交換器20の位置決めが容易になる。
【0033】
また、図2(b)にて、アッパプレート21とロアプレート24の間に、冷媒が図面表裏方向へ移動するフィン22及びこのフィン22を囲うロアカバー23が設けられ、フィン22はアッパプレート21とロアカバー23とで挟み込まれている。
好ましくは、ロアカバー23は、アッパプレート21及びロアプレート24より厚みを有するようにする。
【0034】
ロアカバー23の剛性は高い。高い剛性のロアカバー23でフィン22が保護される。すなわち、熱交換器20の内部の剛性が高まる。
また、アッパプレート21及びロアプレート24は、ロアカバー23より薄いため、アッパ側フランジ26(及び/又はロア側フランジ27)は、折り曲げ易くなり、加工費を低減することができる。
【0035】
すなわち、アッパ側フランジ26とロア側フランジ27の一方を折り曲げ易くするために薄肉とした場合でも、厚肉のロアカバー23にてフィン22を囲っているので、熱交換器20の内部の剛性を保つことができる。
その結果、ろう付け工程や、部品の実装工程などの熱による熱交換器20の反りを防止することができ、熱交換器20の出来上がり寸法精度をよくすることができる。
【0036】
尚、電力変換装置10は、電動車両や、いわゆるハイブリッド車両に搭載される他、船舶用や一般産業用に供することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、車両に搭載される電力変換装置に好適である。
【符号の説明】
【0038】
20...熱交換器、21...アッパプレート、21a...外周縁、22...フィン、23...ロアカバー、24...ロアプレート、26...アッパ側フランジ、27...ロア側フランジ、28...フランジ側補強リブ、41...プレート側補強リブ。
図1
図2
図3
図4