【実施例】
【0016】
本発明に係る電力変換装置10は、バッテリとモータとの間に配置される。バッテリ及びモータは周知であるため、図示は省略する。モータが発電機として使用される場合は、発電された電力をバッテリに貯える。よって、本発明の電力変換装置10は、バッテリとモータとの間又は発電機とバッテリの間に配置することができる。
【0017】
図1に示すように電力変換装置10は、例えば、ロアケース11と、ミドルケース12と、アッパカバー13とで構成される筐体と、この筐体に内蔵されるコンデンサ14と、モータへ向かうモータ側バスバー15と、パワーモジュールを内蔵するパワーモジュールケース17とを備える。パワーモジュールケース17は、上面に回路基板18を備え、下面に熱交換器20を備える。
【0018】
図2(a)に示すように、熱交換器20は、平面視で横長の略矩形を呈している。
図2(a)のb−b線断面図である
図2(b)に示すように、熱交換器20は、アッパプレート21と、このアッパプレート21の下面に当てられるフィン22と、このフィン22を囲うロアカバー23と、このロアカバー23を下から支えるロアプレート24とを備えている。
【0019】
図2(c)は
図2(b)の分解図であり、アッパプレート21は、外周縁21aから張り出すアッパ側フランジ26を備え、ロアプレート24は、アッパ側フランジ26に重なるロア側フランジ27を備えている。加えて、アッパ側フランジ26の縁は、ロア側フランジ27を囲うように折り曲げられたフランジ側補強リブ28とされている。
図2(a)に示すように、外周縁21aは、アッパ側フランジ26を含まない平面部である。
【0020】
例えば、
図2(c)において、アッパ側フランジ26とロア側フランジ27との間にろう材W1を置き、アッパプレート21とロアカバー23との間にろう材W2を置き、アッパプレート21とフィン22との間にろう材W3を置きつつ、アッパプレート21にフィン22を当て、ロアカバー23を取り付け、ロアプレート24を取り付ける。この取り付けは、天地を逆、すなわちアッパプレート21を下にして、フィン22、ロアカバー23及びロアプレート24を上から取り付けることが推奨される。なお、ろう材W1〜W3は一例を示したものであって、適宜変更することは差し支えない。
【0021】
取り付けの際に、フランジ側補強リブ28があるため、アッパプレート21にロアプレート24を位置決めしつつ容易に組み付けることができ、作業性が向上する。
取り付け後に、ろう材W1〜W3を溶融し、凝固させることで、
図2(b)が得られる。
【0022】
図2(b)にて、アッパ側フランジ26は、フランジ側補強リブ28を備えているため、剛性が格段に向上する。このようなアッパ側フランジ26にロア側フランジ27が重ねられるため、アッパ側フランジ26とロア側フランジ27とフランジ側補強リブ28とを組み合わせてなる固定部は、十分な強度を有する。
【0023】
アッパ側フランジ26とロア側フランジ27の一方をリブ形状にすることでカラーを用いることなく、フランジ26、27の強度を向上させることができる。結果、部品点数を削減しつつ強度を向上させることが可能な熱交換器が提供される。加えて、アッパプレート21にロアプレート24を組み付けるときに、フランジ側補強リブ28がロア側フランジ27を囲うため、プレート21、24同士の位置決めが容易になり、組み立て工数を低減することができる。
【0024】
図2(a)にて、平面視で、アッパプレート21の4つの隅を時計回りに第1隅31〜第4隅34としたときに、第1隅31近傍に冷媒(水、空気、その他の流体)の入口35(又は出口)が配置され、第3隅33近傍に冷媒の出口36(又は入口)が配置されている。
そして、第2隅32にアッパ側フランジ26が設けられ、第2隅32と第3隅33の中間位置にアッパ側フランジ26が設けられ、第4隅34にアッパ側フランジ26が設けられ、第4隅34と第1隅31の中間位置にアッパ側フランジ26が設けられている。
【0025】
すなわち、アッパプレート21の外周縁21aにおいて、第2隅32と第4隅34を通る対角線37上に2つのアッパ側フランジ26、26が設けられ、対角線37に交叉する線38上に2つのアッパ側フランジ26、26が設けられている。アッパ側フランジ26は各々ボルト穴39を有している。
【0026】
ボルト穴39にボルトを通し、このボルトでアッパプレート21等が、上位部材(パワーモジュールケース17など)に取り付けられるが、アッパ側フランジ26が対角線37上及びこの対角線に交叉する線38上に設けられるため、アッパプレート21等を固定するために必要な固定部(フランジ26等)を必要最小限にすることができる。
【0027】
図3(a)に熱交換器20の斜視図を示し、
図3(b)に
図3(a)のb部拡大図を示す。
図3(b)に示すように、アッパプレート21の外周縁21aに部分的にプレート側補強リブ41、41を設け、これらのプレート側補強リブ41、41をフランジ側補強リブ28に連続させるようにした。フランジ側補強リブ28がプレート側補強リブ41に繋がっているため、アッパ側フランジ26の曲げ強度をより高めることができる。
ただし、プレート側補強リブ41、41を設けるか否かは任意である。
【0028】
ところで、フランジ側補強リブ28及びプレート側補強リブ41を折り曲げ形成するときに、折り曲げ力がアッパプレート21の平面部分に伝わり、薄いアッパプレート21を局部変形させることがある。局部変形が発生した場合には、平坦化工程が別途必要になる。
【0029】
対策として、プレート側補強リブ41とアッパプレート21の外周縁21aとの間に、アッパ側フランジ26側へ開口する切り込み部42、42を設けた。切り込み部42、42で折り曲げ力が遮断され、アッパプレート21の平面部分に伝わらないため、アッパプレート21の変形を防止することができる。
切り込み部42、42の形状は、V字、U字、I字の何れでもよい。
【0030】
図3(c)は
図3(b)の変形例を示し、
図3(c)に示すように、アッパプレート21にフランジ側補強リブ28だけを付属してもよい。この場合には、フランジ側補強リブ28とアッパプレート21の外周縁21aとの間に、アッパ側フランジ26側へ開口する切り込み部42、42を設ければよい。
【0031】
以上の実施例では、アッパ側フランジ26にフランジ側補強リブ28を設けたが、このフランジ側補強リブ28はロア側フランジ27に設けることができる。その具体例を
図4に基づいて説明する。
【0032】
図4に示すように、パワーモジュールケース17の下面にアッパプレート21が当てられ、フランジ側補強リブ28は、アッパ側フランジ26を囲うと共にパワーモジュールケース17を囲うようにロア側フランジ27からパワーモジュールケース17側へ折り曲げられている。フランジ側補強リブ28が補強作用に加えて位置決め作用を発揮する。すなわち、パワーモジュールケース17に熱交換器20を取り付ける際に、パワーモジュールケース17と熱交換器20の位置決めが容易になる。
【0033】
また、
図2(b)にて、アッパプレート21とロアプレート24の間に、冷媒が図面表裏方向へ移動するフィン22及びこのフィン22を囲うロアカバー23が設けられ、フィン22はアッパプレート21とロアカバー23とで挟み込まれている。
好ましくは、ロアカバー23は、アッパプレート21及びロアプレート24より厚みを有するようにする。
【0034】
ロアカバー23の剛性は高い。高い剛性のロアカバー23でフィン22が保護される。すなわち、熱交換器20の内部の剛性が高まる。
また、アッパプレート21及びロアプレート24は、ロアカバー23より薄いため、アッパ側フランジ26(及び/又はロア側フランジ27)は、折り曲げ易くなり、加工費を低減することができる。
【0035】
すなわち、アッパ側フランジ26とロア側フランジ27の一方を折り曲げ易くするために薄肉とした場合でも、厚肉のロアカバー23にてフィン22を囲っているので、熱交換器20の内部の剛性を保つことができる。
その結果、ろう付け工程や、部品の実装工程などの熱による熱交換器20の反りを防止することができ、熱交換器20の出来上がり寸法精度をよくすることができる。
【0036】
尚、電力変換装置10は、電動車両や、いわゆるハイブリッド車両に搭載される他、船舶用や一般産業用に供することもできる。