【実施例】
【0042】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、これらの実施例によって限定されるものではない。
【0043】
<フィラ非含有ポリイミド前駆体溶液PAA−S1〜PAA−S2の調製>
(PAA−S1)
ガラス製反応容器に、窒素雰囲気下、PDA(0.6モル)と脱水したDMAc(重合溶媒)を投入して攪拌し、PDAを溶解した。この溶液をジャケットで30℃以下に冷却しながら、BPDA(0.6モル)を徐々に加えた後、50℃で100分重合反応させることにより、ポリイミド前駆体溶液 PAA−S1を得た。PAA−S1の固形分濃度は15質量%であり、GPCによるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は62000であった。
【0044】
(PAA−S2)
「PDA(0.6モル)」を「PDA(0.5モル)およびODA(0.1モル)の混合物」としたこと以外は、PAA−S1と同様にして、ポリイミド前駆体溶液PAA−S2を得た。PAA−S2の固形分濃度は16質量%であり、GPCによるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は72000であった。
【0045】
<フィラ含有ポリイミド前駆体溶液PAA−F2〜PAA−F6の調製>
〔実施例1〕
(PAA−F2)
PAA−S1に、シリコン粒子(平均粒径:0.5μm、CTE:4.7ppm/℃)と脱水したDMAc(希釈溶媒)を加え、プラネタリーミキサーを用いて60分間混合処理を行い、固形分が16質量%、シリコン粒子含有量が全固形分質量(シリコン粒子質量+ポリイミド換算質量)に対し、30質量%のフィラ含有ポリイミド前駆体溶液 PAA−F2を得た。
【0046】
(PAA−F3)
シリコン粒子含有量を全固形分質量に対し、20質量%としたこと以外は、PAA−F2と同様にして、PAA−F3を得た。
【0047】
(PAA−F4)
フィラとして黒鉛粒子(平均粒径:0.3μm、CTE:0.5ppm/℃)を用いたこと以外は、PAA−F2と同様にして、PAA−F4を得た。
【0048】
(PAA−F5)
フィラとしてカーボンブラック(平均粒径0.03μmのチャンネルブラック、CTE:0.5ppm/℃)を用い、カーボンブラック含有量を、全固形分質量に対し、23質量%としたこと以外は、PAA−F2と同様にして、PAA−F5を得た。
【0049】
(PAA−F6)
PAA−S2に、シリコン粒子(平均粒径:0.5μm、CTE:4.7ppm/℃)、ステアリン酸、脱水したDMAc(希釈溶媒)を加え、プラネタリーミキサーを用いて60分間混合処理を行い、全固形分質量(シリコン粒子質量+ポリイミド換算質量+ステアリン酸)に対し、シリコン粒子を30質量%、ステアリン酸を0.5質量%含有したポリイミド前駆体溶液PAA−F6を得た。
【0050】
〔比較例1〕
(PAA−F7)
フィラとして銅粒子(平均粒径:0.6μm、CTE:17ppm/℃)を用いたこと以外は、PAA−F2と同様にして、PAA−F7得た。
【0051】
<単層構造型積層体の製造>
〔実施例2〕
厚み0.7mmの無アルカリガラス基板(CTE:3.2ppm/℃)の表面上に、フィラ含有ポリイミド前駆体溶液PAA−F2をテーブルコータにより塗布し、130℃で10分間乾燥してPAA被膜を形成した。次いで、窒素ガス気流下で、100℃から400℃まで2時間かけて昇温した後、400℃で2時間熱処理し、PAAを熱硬化させてイミド化した。これによって、ガラス基板と厚み約15μmのフィラ含有ポリイミド被膜とからなる積層体A−2を得た。
【0052】
(被膜のCTE)
積層体A−2からポリイミド被膜を剥離して、CTEを測定した結果、CTEは6.3ppm/℃であった。なお、CTEの測定は、パーキンエルマー社製TMA−7を用い、13mm×3mmの試料に対して長手方向に20mNの荷重を加え、10℃/分の昇温速度で測定したときの100℃〜250℃における寸法変化量を測定することにより行った。A−2のポリイミド被膜のCTE測定結果を表1に示す。
【0053】
(剥離特性)
積層体A−2のポリイミド被膜とガラス基板界面との剥離特性を以下のようにして評価した。すなわち、ポリイミド被膜とガラス基板界面との接着強度をJIS K6854に基づいて180°剥離試験により測定し、接着強度が0.1N/cm未満の場合、界面での剥離特性が「良好」と判定した。逆に、接着強度が0.1N/cm以上の場合、剥離特性が「不良」と判定した。A−2の剥離特性評価結果を表1に示す。
【0054】
(カール特性)
次に、積層体から剥離されたポリイミド被膜のカール特性を以下のようにして評価した。すなわち、ガラス基板から剥離して、10cm角に切り出したポリイミド被膜の曲率半径を測定した。その曲率半径が50mm以上の場合、カール特性が「良好」と判定した。逆に、曲率半径が50mm未満の場合、カール特性が「不良」と判定した。A−2から得られたポリイミド被膜のカール特性評価結果を表1に示す。
【0055】
〔実施例3〕
フィラ含有ポリイミド前駆体溶液として、PAA−F3を用いたこと以外は、実施例2と同様に行い、フィラ含有ポリイミド被膜からなる積層体A−3を得た。A−3の被膜CTE、剥離特性、およびカール特性を実施例2と同様の方法により測定または評価し、表1に示す。
【0056】
〔実施例4〕
フィラ含有ポリイミド前駆体溶液として、PAA−F4を用いたこと以外は、実施例2と同様に行い、フィラ含有ポリイミド被膜からなる積層体A−4を得た。A−4の被膜CTE、剥離特性、およびカール特性を実施例2と同様の方法により測定または評価し、表1に示す。
【0057】
〔実施例5〕
フィラ含有ポリイミド前駆体溶液として、PAA−F5を用いたこと以外は、実施例2と同様に行い、フィラ含有ポリイミド被膜からなる積層体A−5を得た。A−5の被膜CTE、剥離特性、およびカール特性を実施例2と同様の方法により測定または評価し、表1に示す。
【0058】
〔実施例6〕
厚み0.7mmの無アルカリガラス基板(CTE:3.2ppm/℃)の表面上に、PAA−F6をテーブルコータにより塗布し、130℃で10分間乾燥してPAA被膜を形成した。次いで、窒素ガス気流下で、100℃から380℃まで2時間かけて昇温した後、380℃で2時間熱処理し、PAAを熱硬化させてイミド化した。これによって、ガラス基板と厚み約20μmのフィラ含有ポリイミド被膜とからなる積層体A−6を得た。A−6の被膜CTE、剥離特性、およびカール特性を実施例2と同様の方法により測定または評価し、表1に示す。
【0059】
〔比較例2〕
ポリイミド前駆体溶液として、PAA−S1を用いたこと以外は、実施例2と同様に行い、フィラを含有しないポリイミド被膜からなる積層体AR−1を得た。AR−1の被膜CTE、剥離特性、およびカール特性を実施例2と同様の方法により測定または評価し、表1に示す。
【0060】
〔比較例3〕
フィラ含有ポリイミド前駆体溶液として、PAA−S2を用いたこと以外は、実施例2と同様に行い、フィラ含有ポリイミド被膜からなる積層体AR−2を得た。AR−2の被膜CTE、剥離特性、およびカール特性を実施例2と同様の方法により測定または評価し、表1に示す。
【0061】
〔比較例4〕
フィラ含有ポリイミド前駆体溶液として、PAA−F7を用いたこと以外は、実施例2と同様に行い、フィラ含有ポリイミド被膜からなる積層体AR−7を得た。AR−7の被膜CTE、剥離特性、およびカール特性を実施例2と同様の方法により測定または評価し、表1に示す。
【0062】
【表1】
【0063】
表1に示したように、本発明の積層体A−2〜A−6は、ガラス基板に接している層に、所定のフィラが含有されている。このため、ポリイミド被膜の剥離特性が良好であり、かつCTEが低く、カール特性も良好であることが判る。
【0064】
これに対し、比較例4で示したAR−7のポリイミド被膜には、フィラが含有されているので、剥離特性は良好であっても、フィラである銅粒子のCTEが高いために、カール特性が不良であることが判る。
また、比較例2,3で示したように、フィラ非含有のポリイミド被膜では、剥離特性およびカール特性が共に不良であることが判る。
【0065】
<複層構造型積層体の製造>
〔実施例7〕
前記無アルカリガラス基板の表面上にPAA−F2をテーブルコータにより塗布し、130℃で10分間乾燥してPAA被膜を形成した。次いで、室温(25℃)に戻し、このPAA被膜上に、PAA−S1をテーブルコータによって塗布し、130℃で10分間乾燥して2層目のPAA被膜を形成した。次いで、窒素ガス気流下で、100℃から400℃まで2時間かけて昇温した後、400℃で2時間熱処理し、PAAを熱硬化させてイミド化した。これによって、ガラス基板と、このガラス基板上に層−1(フィラ含有ポリイミド層:厚み3μm)および層−2(フィラ非含有ポリイミド層:厚み20μm)がこの順に形成されたポリイミド被膜(厚み:23μm)とからなる積層体L−2を得た。この剥離特性およびカール特性を実施例2と同様の方法により評価し、表2に示す。
【0066】
〔実施例8〕
層−1形成用として、PAA−F3を用いたこと以外は、実施例7と同様にして、ガラス基板と、このガラス基板上に、層−1(フィラ含有ポリイミド層:厚み3μm)および層−2(フィラ非含有ポリイミド層:厚み21μm)がこの順に形成されたポリイミド被膜(厚み:24μm)とからなる積層体L−3を得た。この剥離特性およびカール特性を実施例2と同様の方法により評価し、表2に示す。
【0067】
〔実施例9〕
層−1形成用として、PAA−F4を用いたこと以外は、実施例7と同様にして、ガラス基板と、このガラス基板上に、層−1(フィラ含有ポリイミド層:厚み2μm)および層−2(フィラ非含有ポリイミド層:厚み20μm)がこの順に形成されたポリイミド被膜(厚み:22μm)とからなる積層体L−4を得た。この剥離特性およびカール特性を実施例2と同様の方法により評価し、表2に示す。
【0068】
〔実施例10〕
層−1形成用として、PAA−F5を用いたこと以外は、実施例7と同様にして、ガラス基板と、このガラス基板上に、層−1(フィラ含有ポリイミド層:厚み2μm)および層−2(フィラ非含有ポリイミド層:厚み21μm)がこの順に形成されたポリイミド被膜(厚み:23μm)とからなる積層体L−5を得た。この剥離特性およびカール特性を実施例2と同様の方法により評価し、表2に示す。
【0069】
〔実施例11〕
層−1形成用として、PAA−F6を用いたこと以外は、実施例7と同様にして、ガラス基板と、このガラス基板上に、層−1(フィラ含有ポリイミド層:厚み2μm)および層−2(フィラ非含有ポリイミド層:厚み21μm)がこの順に形成されたポリイミド被膜(厚み:23μm)とからなる積層体L−6を得た。この剥離特性およびカール特性を実施例2と同様の方法により評価し、表2に示す。
【0070】
〔比較例5〕
層−1形成用として、フィラ非含有のPAA−S1を用いたこと以外は、実施例7と同様にして、ガラス基板と、このガラス基板上に、層−1(フィラ非含有ポリイミド層:厚み3μm)および層−2(フィラ非含有ポリイミド層:厚み20μm)がこの順に形成されたポリイミド被膜(厚み:23μm)とからなる積層体LR−1を得た。この剥離特性およびカール特性を実施例2と同様の方法により評価し、表2に示す。
【0071】
〔比較例6〕
層−1形成用として、PAA−F7を用いたこと以外は、実施例7と同様にして、ガラス基板と、このガラス基板上に、層−1(フィラ含有ポリイミド層:厚み3μm)および層−2(フィラ非含有ポリイミド層:厚み20μm)がこの順に形成されたポリイミド被膜(厚み:23μm)とからなる積層体LR−7を得た後、この剥離特性およびカール特性を実施例2と同様の方法により評価し、表2に示す。
【0072】
【表2】
【0073】
表2に示したように、本発明の積層体L−2〜L−6は、ガラス基板に接している層−1には、所定のフィラが含有されている。このため、剥離特性が良好であり、かつ層−1のCTEが低く、カール特性も良好であることが判る。
【0074】
これに対し、比較例6で示したLR−7の層−1には、フィラが含有されているので、剥離特性は良好であっても、フィラである銅粒子のCTEが高いために、カール特性が不良であることが判る。
また、比較例5より、層−1としてフィラ非含有のポリイミド被膜を用いると、ポリイミド被膜が多層であっても、剥離特性およびカール特性が共に不良であることが判る。