(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0017】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る錠剤印刷装置Sの全体構成を示す正面図である。錠剤印刷装置Sは、印刷対象となる錠剤を搬送する搬送装置Cと、その搬送装置Cによって搬送される錠剤に対して印刷を行う印刷部Pとを備えている。
【0018】
図1に示すように、搬送装置Cは第1の搬送装置1及び第2の搬送装置2により構成されており、それらの第1の搬送装置1及び第2の搬送装置2は上下に配置されている。
【0019】
印刷部Pは第1の印刷部3及び第2の印刷部4により構成されている。第1の印刷部3は第1の搬送装置1に設けられており、第2の印刷部4は第2の搬送装置2に設けられている。
【0020】
すなわち、第1の印刷部3が第1の搬送装置1の上側に設けられ、第2の印刷部4が第2の搬送装置2の上側に設けられ、全体として錠剤印刷装置Sが構成されている。
【0021】
なお、第1の実施形態においては、第1の搬送装置1と第2の搬送装置2、或いは、第1の印刷部3と第2の印刷部4とは、それぞれ基本的な構成をともに同じくする。
【0022】
第1の搬送装置1は、第1のプーリ11と、第2のプーリ12と、無端状の搬送ベルト13と、吸引チャンバ14とを備えている。
【0023】
第1のプーリ11は、
図1中の第1の搬送装置1に円形状に示される2つのプーリのうち、左側のプーリである。また、第2のプーリ12は、
図1中の前述の2つのプーリのうち、右側のプーリである。
【0024】
搬送ベルト13は、第1のプーリ11と第2のプーリ12とに掛け渡され、端部が設けられない無端状である。従って、搬送ベルト13は、第1のプーリ11と第2のプーリ12とが回転することで回転する。
【0025】
搬送ベルト13の表面には、印刷対象となる錠剤を収めるための図示しないポケット(凹部)が設けられている。さらに、凹部に収納された錠剤を搬送中に確実に保持しておくために、第1の実施形態においては、空気を吸引することで凹部内の錠剤を吸着して保持する吸引チャンバ14が、搬送ベルト13の内周側(背面側)に設けられている。
【0026】
なお、以下では、凹部が形成されていることを前提に説明するが、例えば、搬送ベルト13に図示しない吸着孔だけあいていて、搬送ベルト13上に吸引保持する凹部が形成されていなくても良い。
【0027】
吸引チャンバ14は、搬送ベルト13の吸着孔に吸引力を付与する。吸引チャンバ14が空気を吸引することによって、吸着孔を介して錠剤は凹部内に吸着されて保持される。吸引チャンバ14は、このような機能を備えることで、搬送ベルト13の全周のうち、任意の位置において吸着孔に対して吸引力を付与することができるように構成されている。
【0028】
第1の搬送装置1は、上述したような構成を採用しており、第1のプーリ11及び第2のプーリ12は、ともに右回転を行う。このため、第1の搬送装置1では、搬送ベルト13は、上側の水平領域において実線で示す矢印の方向、すなわち、第1のプーリ11から第2のプーリ12に向けて右向きに進むことになる。
【0029】
第1の搬送装置1の上側には、第1の印刷部3が第1のプーリ11から第2のプーリ12に向けて進む搬送ベルト13の表面に対向する位置に位置付けられて設けられている。従って、第1の印刷部3において錠剤に印刷を行う際には、搬送ベルト13上に錠剤が載置され、第1の印刷部3の下方に搬送される。
【0030】
第1の印刷部3は、錠剤に印刷を行うインクジェット印刷部31と、錠剤の位置(例えば、錠剤が収納された凹部における相対位置)を検出する位置検出装置32と、錠剤に対して印刷の状態を確認する印刷状態確認装置33とを有している。
【0031】
インクジェット印刷部31は、錠剤の上面に印刷を行う。このインクジェット
印刷部31は、例えば、インクジェット方式の塗布ヘッドであるインクジェットヘッド311を備えている。使用されるインクは、上述したような可食性インクである。
【0032】
位置検出装置32は、インクジェット印刷部31が備えるインクジェットヘッド311よりも搬送ベルト13の進行方向上流側に設けられており、搬送ベルト13の表面に形成される凹部内に適切に錠剤が収納されているか、その位置を検出する装置である。
【0033】
この位置検出装置32は、錠剤を撮影する撮影装置321と、撮影の対象となる錠剤を照らすための照明322とから構成されている。撮影装置321は錠剤を撮影し、その撮影画像を取り込んで制御部5に送信する。すなわち、制御部5は、一例として、第1の印刷部3(位置検出装置32)の構成の一部を担う。制御部5では、この検出された位置(検出結果)に基づいて適切な印刷(位置ずれが生じていたら、そのずれを補正して印刷)を行うべく、インクジェット印刷部31を駆動させ、或いは、印刷を行わない、といった判断を行う。
【0034】
印刷状態確認装置33は、インクジェットヘッド311よりも搬送ベルト13の進行方向下流側に設けられており、インクジェットヘッド311によって錠剤の上面にされた印刷の状態を確認する装置である。
【0035】
この印刷状態確認装置33は、錠剤における印刷状態を撮影する撮影装置331と、撮影の対象となる錠剤を照らすための照明332とから構成されている。撮影装置331は錠剤を撮影し、その撮影画像を取り込んで制御部5に送信する。従って、制御部5は、一例として、第1の印刷部3(印刷状態確認装置33)の構成の一部を担う。
【0036】
制御部5は、撮影装置331によって撮影された画像を基に印刷状態を検出し、印刷の良否を判断する。印刷不良と判断した錠剤については、後述するように、不良品回収ボックスへと移す処理を行う。
【0037】
さらに、第1の搬送装置1の第1のプーリ11の左側には、ホッパ15が設けられている。このホッパ15内には多数の錠剤が収容されており、搬送ベルト13の凹部に錠剤を1つずつ供給可能に構成される。
【0038】
また、搬送装置1の下側には、印刷が終了した錠剤のインクを乾燥させるための乾燥装置16が設けられている。詳述すると、乾燥装置16は、第2のプーリ12から第1のプーリ11へと搬送ベルト13が進む領域(
図1中における符号E、F間に位置する、搬送装置1における下側の水平部分)に対向する位置に設けられている。すなわち、乾燥装置16は、搬送ベルト13と対向する位置に設けられており、例えば、錠剤に熱風を吹き付けることで、錠剤に印刷されたインクを乾燥させる。
【0039】
なお、乾燥装置16の配置位置については、錠剤印刷装置Sを構成する他の機構に干渉せず、錠剤に印刷されたインクを乾燥させることができるのであれば、いずれの位置に配置されても良い。
【0040】
図1に示すように、錠剤印刷装置Sの上側部分に第1の搬送装置1が配置されており、錠剤印刷装置Sの下側部分に第2の搬送装置2が配置されている。第2の搬送装置2は、第1の印刷部3により一方の面に印刷された錠剤に対し、自身の上側に設けられている第2の印刷部4により錠剤の他方の面に印刷を行うために錠剤を搬送する装置である。
【0041】
第2の搬送装置2は、上述した通り、第1の搬送装置1と基本的に同様である。すなわち、第2の搬送装置2は、駆動源である第1のプーリ21と、従動プーリとしての第2のプーリ22と、無端状の搬送ベルト23と、吸引チャンバ24とを備えている。
【0042】
第1のプーリ21は、
図1中の第2の搬送装置2に円形状に示される2つのプーリのうち、右側のプーリである。また、第2のプーリ22は、
図1中の前述の2つのプーリのうち、左側のプーリである。
【0043】
搬送ベルト23は、第1のプーリ21と第2のプーリ22とが回転することで、錠剤を搬送する。また、搬送ベルト23の表面には、錠剤を収納するポケット(凹部)と、ベルト面に錠剤を吸着する吸着孔(いずれも図示せず)が形成されている。
【0044】
吸引チャンバ24は、搬送ベルト23の吸着孔に吸引力を付与する。吸引チャンバ24が空気を吸引することによって、吸着孔を介して錠剤は凹部内に吸着されて保持される。吸引チャンバ24は、このような機能を備えることで、搬送ベルト23の全周のうち、任意の位置において吸着孔に対して吸引力を付与することができるように構成されている。
【0045】
第2の搬送装置2は、上述したような構成を採用しており、第1のプーリ21及び第2のプーリ22は、ともに左回転を行う。このため、第2の搬送装置2では、搬送ベルト23は、上側の水平領域において実線で示す矢印の方向、すなわち、第1のプーリ21から第2のプーリ22に向けて左向きに進むことになる。
【0046】
第2の搬送装置2の上側には、第2の印刷部4が第1のプーリ21から第2のプーリ22に向けて進む搬送ベルト23の表面に対向する位置に位置付けられて設けられている。従って、第2の印刷部4において錠剤に印刷を行う際には、搬送ベルト23上に錠剤が載置され、第2の印刷部
4の下方に搬送される。
【0047】
第2の印刷部4は、錠剤に印刷を行うインクジェット印刷部41と、インクジェット印刷部41が備えるインクジェットヘッド411よりも搬送ベルト23の進行方向上流側に設けられる位置検出装置42と、インクジェットヘッド411よりも搬送ベルト23の進行方向下流側に設けられる印刷状態確認装置43とを有している。
【0048】
位置検出装置42は、錠剤を撮影する撮影装置421と、撮影の対象となる錠剤を照らすための照明422とから構成されている。また、印刷状態確認装置43は、錠剤における印刷状態を撮影する撮影装置431と、撮影の対象となる錠剤を照らすための照明432とから構成されている。
【0049】
なお、ここでのインクジェット印刷部41、位置検出装置42、及び印刷状態確認装置43の役割、働きは、上述した第1の印刷部3の各構成要素と同様である。
【0050】
また、搬送装置2の下側には、印刷が終了した錠剤のインクを乾燥させるための乾燥装置25が設けられている。詳述すると、乾燥装置25は、搬送ベルト23が第2のプーリ22から第1のプーリ21へと進む領域(
図1中における符号I、J間に位置する、搬送装置2における下側の水平部分)に対向する位置に設けられている。
【0051】
なお、乾燥装置25の配置位置については、上述した乾燥装置16の配置位置と同様、錠剤印刷装置Sを構成する他の機構に干渉せず、錠剤に印刷されたインクを乾燥させることができるのであれば、いずれの位置に配置されても良い。
【0052】
第2の搬送装置2における乾燥装置25の下流側の位置には、上下両面の表面に対する印刷が終了した錠剤を、印刷の良否に応じて回収するボックス26、27が設けられている。印刷状態確認装置33及び印刷状態確認装置43からの確認結果に基づいて、制御部5が錠剤ごとに印刷の良否を判断する。
【0053】
例えば、印刷状態が適切であると判断された場合には、錠剤は良品として搬送ベルト23から良品回収ボックス26へと送られる。一方、印刷状態が不適切であると判断された場合には、錠剤は不良品として搬送ベルト23から不良品回収ボックス27へと送られる。この不良品回収手段の一例としては、搬送ベルト23から良品回収ボックス26へと落下する途中で錠剤に対して空気を吹き付けることによって、不良品の錠剤を不良品回収ボックス27に収納することが可能である。
【0054】
(印刷動作)
次に、
図1を用いて錠剤印刷装置Sを利用した錠剤への印刷処理を行う印刷動作について順を追って説明する。
【0055】
まず、ホッパ15に収納されている錠剤が、右向きに回転する第1の搬送装置1の第1のプーリ11に向けて供給される。ホッパ15から供給された錠剤は、搬送ベルト13の各凹部内に1つずつ順次収納される。
【0056】
図1のような位置でホッパ15から錠剤が供給されるが、吸引チャンバ14から吸着孔に対して吸引力が付与されており、凹部に収納された錠剤は落下することなく凹部内に吸着、保持される。
【0057】
錠剤は、吸引チャンバ14によって搬送ベルト13の凹部内に収納されたまま搬送され、第1の搬送装置1の上側に設けられている第1の印刷部3によって、その上面に文字や図形等が印刷される。文字や図形等は予め設定されている。
【0058】
具体的には、まず、位置検出装置32によって、搬送ベルト13の凹部内に収納された錠剤の位置が確認される。撮影装置321によって撮影された凹部や錠剤の位置は、制御部5に送信され、印刷の可否が判断される。
【0059】
なお、ここで印刷の対象となる錠剤に割り線が設けられていたり、外形が三角形や四角形であったりして、印刷に先立って向きを判別する必要がある場合には、位置に加えて、錠剤の向きを検出するようにしても良い。
【0060】
もし錠剤が印刷不可能な位置に収納されており、印刷が不可であると判断された場合には、印刷を行わず、そのまま第1の印刷部3の下を通過する等の処理が行われる。一方、錠剤が印刷可能な位置に収納されており、印刷が可であると判断された場合には、錠剤は、そのまま搬送ベルト13によって、インクジェットヘッド311の下へと搬送される。
【0061】
インクジェットヘッド311では、搬送されてきた錠剤の上面に印刷を行う。印刷が終了すると、そのまま錠剤は搬送されて、次に印刷状態確認装置33の下へと移動する。
【0062】
印刷状態確認装置33は、搬送されてきた錠剤を撮影し、その撮影画像を制御部5へと送信する。制御部5は、印刷状態確認装置33より送られてきた情報を基に、印刷状態の良否を判断する。
【0063】
この後、錠剤は搬送ベルト13の凹部内に収納された状態のまま、第2のプーリ12によって反転されて、第1の搬送装置1の上側から下側へと移動する。
【0064】
搬送ベルト13が第2のプーリ12から第1のプーリ11へと
図1において左向きに移動する間には、乾燥装置16が設けられている。左向きに移動する錠剤の印刷面は、乾燥装置16に対向するため、錠剤の片面に付着しているインクは乾燥装置16によって乾燥する。
【0065】
さらに、乾燥装置16の下流側において、搬送ベルト13が第2の搬送装置2の搬送ベルト23と対向する。第2の搬送装置2における第1のプーリ21及び第2のプーリ22は、左回りに回転している。従って、これらのプーリに掛け渡されている搬送ベルト23は、左向きに回転する。すなわち、搬送ベルト23は、上側の水平領域で、
図1において左向きに移動する。
【0066】
従って、第1の搬送装置1の搬送ベルト13が第2の搬送装置2の搬送ベルト23と出会う領域においては、両者ともに同じ方向、すなわち、
図1において左向きに進んでいることになる。
【0067】
ここで、第1の搬送装置1の第1のプーリ11と第2の搬送装置2の第1のプーリ21とは、互いにその軸線が鉛直方向で一致するように位置合わせがなされている。従って、第1の搬送装置1の第1のプーリ11に搬送ベルト13が接触する位置Fであって、第2の搬送装置2の第1のプーリ21から搬送ベルト23が離間する位置Fにおいて錠剤の受け渡しが行われる。
【0068】
但し、第1の搬送装置1の第1のプーリ11と第2の搬送装置2の第1のプーリ21との位置関係については、第1の実施形態におけるような位置関係に固定されるわけではなく、両者の位置がずれていても良い。
【0069】
第1の搬送装置1から第2の搬送装置2へと受け渡された錠剤は、搬送ベルト23を上方から見た場合、第1の印刷部3により印刷された面は凹部の底部を向き、その反対側の面が見える状態で凹部内に収納されている。
【0070】
第2の搬送装置2においては、錠剤の未印刷の片面に印刷が行われる。印刷の流れはこれまで説明したのと同様であり、位置検出装置42において錠剤の位置が確認され、インクジェットヘッド411で印刷が行われた後、印刷状態確認装置43からの情報に基づいて印刷状態の確認が行われる。
【0071】
印刷が終了した錠剤は、第2の搬送装置2における下側の水平領域において、乾燥装置25によるインクの乾燥が行われる。この場合、第2の印刷部4において印刷された錠剤の片面は乾燥装置25と対向する向きになっており、第2のプーリ22から第1のプーリ21に向けて搬送ベルト23が移動する間にインクの乾燥処理が行われる。
【0072】
乾燥が終了した錠剤は、回収ボックス26、27に収納されて回収される。つまり、印刷状態確認装置33、および、印刷状態確認装置43からの確認結果に基づいて適切に印刷がなされたと制御部5によって判断された錠剤は、良品回収ボックス26により収納される。一方、印刷が不適切であると制御部5によって判断された錠剤は、不良品回収ボックス27により回収される。なお、第1の実施形態では、位置検出装置32、42の検出結果から印刷を行なわないと判断された錠剤も不良品回収ボックス27へと送られるようになっている。
【0073】
(印刷部)
次に、第1の実施形態における印刷部Pの説明を行う。なお、上述したように、印刷部Pを構成する第1の印刷部3と第2の印刷部4とは、略同じ構成を採用していることから、ここでも第1の印刷部3を例に挙げて、以下説明する。
【0074】
図2は、本発明の第1の実施形態に係る第1の印刷部3のインクジェット印刷部31の構成を示す構成図である。
【0075】
図2に示すように、インクジェット印刷部31は、錠剤に対向して位置するインクジェットヘッド311を備えている。このインクジェットヘッド311は、図示しないノズルを備えており、このノズルからインクが吐出されることで錠剤に対して印刷が行われる。また、パージやダミー吐出といったメンテナンス処理が行われる場合にも、ノズルからインクが吐出される。
【0076】
なお、インクジェットヘッド311は、インクジェットヘッド311のノズル形成面312の高さL1とインクタンクB内のインクの液面の高さL2との水頭差hの維持を図るために移動することはない。もちろん、印刷対象となる錠剤とのインク吐出距離を調整するためにインクジェットヘッド311が移動することはあるが、水頭差hの維持を行うに当たってインクジェットヘッド311が移動することはない。これにより、印刷時、錠剤とインクジェットヘッド311の距離が変動しないため、吐出されたインクが錠剤に到達する到達距離が一定となるため、小さな錠剤への印刷であってもきれいな印刷を行うことができる。
【0077】
インクジェットヘッド311には、インクタンクBからのインクの供給を受けるためのインク供給経路34が接続されている。すなわち、インク供給経路34の一端はインクジェットヘッド311に接続されており、その他端はインクタンクBに接続されている。インク供給経路34は、例えば可撓性を備える管を好適に使用することができる。
【0078】
また、インク供給経路34の途中には、インクタンクBからインクジェットヘッド311に対してインクの供給を行い、或いは、供給を停止することができるようにバルブ341が設けられている。バルブ341は、手動でその開閉ができるようにされていても良い。或いは、制御部5からの指示に基づき、その開閉が制御されるようにされていても良い。
【0079】
インクタンクBは、印刷処理、或いは、メンテナンス処理(以下、まとめて印刷処理等と表わす)において使用されるインクを収容するボトルである。このインクタンクBには、例えば、一日の印刷処理等において使用され、補充せずに使い切ることのできる量のインクが収容されている。
【0080】
なお、第1の実施形態に係る錠剤印刷装置Sでは、人が口に入れる錠剤に対して印刷を行う。このため、例えば様々な異物等がインクに混入したり、インク自体が劣化したりすることを防止するために、例えば一日の印刷処理等で使い切ることが望ましい。また、場合によっては、インクタンクBに対して他のタンク等からインクを補給することによって、インクタンクB内のインクに対して、異物が混入しやすくなったり、消費期限が管理しにくくなったりすることがあるため、インクタンクBを使い切り用とすることが望ましい。
【0081】
そこで、第1の実施形態に係るインクタンクBには、例えば、一日の印刷処理等にて使い切ることのできる量のインク、或いは、この使い切ることのできる量に誤差などの余分を見込んだ量のインクが収容される。
【0082】
このため、例えば、印刷処理等が開始される前に新しいインクタンクBが用意され、印刷処理等にて必要なインク量が使用される。そして一日の印刷処理等が終了すると、インクが残っていたとしてもインクタンクBも交換されることになる。なお、交換されたインクタンクBは、それを洗浄することで再利用することが可能である。洗浄が困難である場合には、インクタンクBを使い捨てとすることもできる。
【0083】
このようなインクタンクBの上部には、管B1が接続されており、その管B1には、バルブB2が設けられている。これらの管B1とバルブB2は、インクタンクB内を大気開放する際に用いられる。
【0084】
また、インクタンクBの上部には、加圧装置35につながる管351も接続されている。加圧装置35は、インクタンクB内に収容されているインクに対して圧力を掛けるための装置である。インクタンクBと加圧装置35とをつなぐ管351の途中にはバルブ352が設けられており、加圧処理に応じてバルブ352の開閉が行われる。
【0085】
なお、バルブB2及びバルブ352のいずれも、上述したバルブ341同様、手動により、或いは、制御部5からの指示に基づき、その開閉が制御されるようにされていても良い。
【0086】
インクタンクBは、インクタンクB内に収容されるインクの液面の高さL2を所定の高さに維持するための移動装置36上に載置される。
【0087】
移動装置36は、インクタンクBを載置する載置台361と、この載置台361を移動させる移動機構362と、移動機構362を駆動する駆動装置363とから構成されている。
【0088】
なお、
図2においては特に図示していないが、例えば、載置台361上に載置されたインクタンクBの転倒等を防止するための器具、装置等が設けられていても良い。
【0089】
載置台361は、移動機構362が駆動装置363からの駆動力をもって駆動されることによって、
図2に示すZ軸方向に移動する。このように載置台361がZ軸方向に移動することによってインクタンクBも合わせて移動する。
【0090】
移動機構362は、例えば、ボールねじなど、インクタンクBをZ軸方向に移動させることが可能な機構であれば、各種の機構を採用することができる。
【0091】
駆動装置363は、移動機構362に駆動力を付与してインクタンクBをZ軸方向に移動させる。この駆動装置363は、
図1に示す制御部5に電気的に接続されており、その制御部5からの制御信号に基づいて移動機構362を駆動する。
【0092】
駆動装置363としては、例えば移動機構362がボールねじを採用している場合には、ボールねじを回転させるモータ等を採用することができる。但し、移動機構362によって載置台361(インクタンクB)をZ軸方向に移動させることができるだけの駆動力を与えることが可能であれば、どのような装置を採用しても良い。
【0093】
インクジェットヘッド311には、排液管37が接続されている。この排液管37の途中には、バルブ371が設けられている。このバルブ371についても、手動により、或いは、制御部5からの指示に基づき、その開閉が制御される。
【0094】
なお、第1の実施形態においては、例えば1日の印刷処理等においてインクタンクB内に収容されているインクを使い切ることを前提としている。従って、インクジェットヘッド311内に残ったインクをインクタンクBへと戻すことはせず、印刷処理等が終了したら、排液管37よりインクジェットヘッド311内のインクは排液される。
【0095】
上述したように、インクタンクB内には、印刷処理等において使用されるインクが収容されている。そして、印刷処理等において、インクジェットヘッド311からインクを吐出可能とするため、インク供給経路34を通じてインクタンクBからインクジェットヘッド311へとインクが供給される。その後、インクジェットヘッド311のノズルからのインク漏れを防止するため、水頭差hを所定値(所定の水頭差)に維持する必要がある。
【0096】
(水頭差)
水頭差hは、インクジェットヘッド311内に負圧を生じさせるためのものであり、インクジェットヘッド311の図示しないノズルが形成されるノズル形成面312の高さL1とインクタンクB内に収容されるインクの液面の高さL2との差である。この水頭差hは、印刷処理時においては、一般的にインクジェットヘッド311のノズル形成面312の高さL1を基準に、インクタンクB内のインク液面の高さL2を少し下にして設定される。従って、
図2においてもノズル形成面312の高さL1よりもインク液面の高さL2が下となるように示されている。
【0097】
インクタンクB内のインクの液面の高さL2(以下、インク液面の高さL2とする)は、基準面からインクタンクBの底面までの高さL3と、インクタンクBの底面からインクタンクB内のインクの液面までの高さL(以下、インク高さLとする)との合計である。基準面は、例えば、第1の印刷部3におけるベース板などの共通の土台の上面である。この上面には、駆動装置363などが載置されている。
【0098】
印刷処理中において、前述の水頭差hの変化が大きいと、ノズルから吐出されるインク量も大きく変化してしまう。錠剤印刷装置Sにおいて、錠剤に対して印刷を行う場合、印刷に使用されるインク量が微小であるため、吐出されるインク量が大きく変化すると、印刷のかすれやにじみが生じることになる。よって、錠剤への印刷が適切に行われない。このため、少なくとも印刷処理が行われている最中、水頭差hを所定値に維持するようにして、吐出されるインク量を安定させる必要がある。
【0099】
水頭差hの所定値は、錠剤への印刷に適した水頭差の幅を有する所定の許容範囲内で決められる。具体的には、インクジェットヘッド311のノズル形成面312の高さL1とインクタンクB内のインク液面の高さL2との差である水頭差hは、例えば−5mmから+5mmの間というように、ある幅をもって許容された所定の許容範囲内で設定される。なお、印刷処理等での使用上許容できる水頭差hおよびその範囲については、インクジェットヘッド311内の流路構成や形状、ノズルの断面形状や孔径、使用するインクの粘度や比重などの特性等によって影響されるため、実験等で決められる。
【0100】
(印刷処理中の水頭差の維持方法)
以下、適宜図面を使用しながら、印刷処理等の最中に水頭差hを所定値に維持する方法について説明する。
【0101】
図3は、第1の実施形態に係る錠剤印刷の流れを示すフローチャートである。ここでは、例えば、1日における錠剤への印刷処理等の流れを示している。
【0102】
図3に示すように、まず印刷処理等を開始するに当たって、インクタンクBが載置台361に載置される(ST1)。インクタンクBの種類は多種にわたるが、印刷対象となる錠剤や印刷内容に合わせて適切なインクタンクBが選択されて載置される。
【0103】
載置台361に載置されたインクタンクBには、インクジェットヘッド311に対してインクの供給を行うことができるように、インク供給経路34の一端が接続される。また、加圧装置35につながる管351の一端もインクタンクBの上部に接続される。さらに、インクタンクBの上部には、バルブB2を備える管B1も接続される。
【0104】
インクタンクBの準備が整うと、次に、インクジェットヘッド311に対するインクの充填が行われる(ST2)。充填処理では、まず、加圧装置35とインクタンクBとをつなぐ管351に設けられているバルブ352、及び、インクタンクBとインクジェットヘッド311とをつなぐインク供給経路34に設けられているバルブ341が開放される。さらに、排液管37に設けられているバルブ371も開放される。その上で、加圧装置35が用いられ、インクタンクB内のインクに対して圧力が掛けられる。
【0105】
この圧力印加に応じて、インクタンクB内のインクは、インク供給経路34を通ってインクジェットヘッド311内に充填される。インクジェットヘッド311内にインクが充填されると、それ以降にインクジェットヘッド311内からあふれたインクは排液管37を介してインクジェットヘッド311の外へと排液される。
【0106】
制御部5は、充填処理が行われている間、インクジェットヘッド311内がインクで満たされたか否か、すなわちインクの充填処理が終了したか否かを随時確認する(ST3)。これは、排液管37にインクが到達すれば、インクジェットヘッド311内の図示しない流路がインクで満たされたことを示し、充填処理が終了したと判断することができる。したがって、例えば、排液管37に設けた図示しないセンサによって、排液管37内にインクがあるかどうかを検出することや、排液管37からのインクの排液を検出することで、充填処理が終了したとみなすことができる(ST3のYES)。充填作業が終了したと判断されると、排液管37のバルブ371が閉じられる。
【0107】
次に、制御部5は、インクタンクB内のインク液面の高さL2を調整する必要があるか否かを確認する(ST4)。
【0108】
ここで、
図2に示すように、移動機構362の載置台361の移動経路中には、センサKが設置されている。このセンサKは、インクタンクB内のインク液面の高さL2を検出するためのものである。したがって、液面の検出ができれば良く、移動機構362以外に備えられていても良い。そして、このセンサKが液面を検出する高さL4は、インクタンクB内のインク液面の高さL2が所定値となる高さより下に設置されている。
【0109】
制御部5は、充填処理が終了した時点で、インクタンクB内の液面がセンサKで検出されるかどうかを確認する。制御部5は、センサKで液面が検出されていない場合には(ST4のYES)、検出されるまで載置台361をZ方向に上昇あるいは下降移動させるよう制御する。例えば、予め設定された距離あるいは時間、載置台361を上昇させても液面が検出されない場合には、載置台361を下降させる。制御部5は、センサKが液面を検出したら、載置台361を停止させる。このとき、センサKの設置高さ(液面検出高さ)L4が、インクタンクB内のインク液面の高さL2となる。つまり、所定値(所定の水頭差)と現時点のインク液面の高さL2との差を算出することができる。制御部5は、この差がゼロになるように載置台361を駆動する。これにより、インクタンクB内のインク液面の高さL2は、水頭差hが所定値となる高さに調整される(ST5)。
【0110】
上述したように、充填処理が終了した時点で、排液管37のバルブ371が閉じられる。そして、インクジェットヘッド311からインクの吐出を開始するためには、さらに、加圧装置35とインクタンクBとをつなぐ管351に設けられているバルブ352が閉じられる。一方、充填処理においては、閉じているインクタンクBの上部に設けられているバルブB2が開かれ、インクジェットヘッド311内が大気開放される。この状態でインクタンクBとインクジェットヘッド311とをつなぐインク供給経路34に設けられているバルブ341は開かれているため、インクタンクBからインクジェットヘッド311へインクが供給され、インクが吐出される。
【0111】
なお、充填処理が終了した時点では、大気解放を行わないほうが良い。インクタンクB内を加圧し続けることで、例えインクタンクB内のインクの液面が下がり過ぎても、インクジェットヘッド311からインクタンクBにインクが戻ることを抑制することができる。
【0112】
ここで、インク消費量に関して、例えば1日の印刷処理等により消費されるインクの量を予め把握しておくことが可能である。例えば、1日の印刷処理等において印刷対象となる錠剤の数は予め定められている。そして、錠剤の印刷内容から、1つの錠剤に対して塗布されるインクの量も予め定められている。これらの情報から、例えば、1日の印刷処理等により消費されるインクの量が把握される。その上で、錠剤の印刷数当たりの、あるいは、印刷処理の単位時間当たりのインク消費量を把握することが可能となる。
【0113】
このような印刷数や単位時間当たりのインクの消費量は、すなわち、インクタンクB内から消費されるインクの量である。インクタンクBの内径も予め把握することが可能であるため、結果として印刷数や単位時間当たりのインクタンクB内のインク高さLの変化も把握できることになる。したがって、印刷数や単位時間当たりの水頭差hの変化を把握することができる。
【0114】
図4は、
図2に示すインクタンクB内のインクが消費されて、インクタンクBが上昇した状態を示す図である。従って第1の印刷部3の構成を説明する際に用いた
図2に対して、インクタンクBの高さL3が異なる。
【0115】
図2では、
図3のステップST1において説明したように、新しいインクタンクBが載置台361に載置された状態が示されている。そのため、インクタンクB内にはインクが十分に収容されており、その際のインク液面の高さL2に合わせて、水頭差hが所定値となるように、インクタンクBの高さL3が位置付けられている状態が示されている。
【0116】
一方、
図4では、印刷処理等が進み、ノズルからのインクの吐出によりインクタンクB内のインクが使用されて、インクタンクB内のインク高さLが低くなった状態が示されている。そして、低くなったインクタンクB内のインク液面を、移動装置36を用いてインクタンクB自体を上方へと移動させ、水頭差hが所定値となるように位置付けた状態が示されている。つまり、印刷処理が進んでインクが消費されても、水頭差hは所定値に維持されていることが示されている。
【0117】
図3のステップST7に示すように、予め把握している印刷処理等において使用されるインクの量から、印刷数や単位時間でのインクタンクB内の液面低下の状態を予測することができる。そこで、この液面低下の予測状態に合わせてインクタンクB自体を上方へと移動させることでインク高さL、すなわちインク液面の高さL2の変化を相殺し、水頭差hを所定値に維持する。
【0118】
このように予めインクタンクB内のインク高さLの変化を把握しておくことで、印刷処理等によってインクが消費され、次第にインクタンクB内の液面が下がることに対応して、水頭差hを所定値に維持するようにインクタンクB内のインク液面の高さL2を変化させることができる。例えば、所定の錠剤数毎や所定の単位時間毎に、先に述べたインクタンクB内のインク高さLの変化分、載置台361を上昇させるように制御する。
【0119】
前述のステップST5の後、印刷処理等によってインクジェットヘッド311のノズルからインクの吐出が開始されると、予め把握されているインクの使用量に合わせてインクタンクBを上方へと移動させるべく、制御部5は移動装置36の駆動装置363を制御する(ST7)。
【0120】
このとき、予め消費されるインクの量を把握しておき、このインクの量の情報を基に、印刷処理等にインクが使用されることで収容されているインク量が減少しインクタンクB内のインク高さLが低くなったとしても、その変化に合わせてインクタンクBの高さL3が高くなるように移動装置36を用いてインクタンクBを上方へと移動させる制御を行う。これにより、印刷処理等によりインクタンクB内のインクが使用されてそのインク高さLが低くなったとしても常に水頭差hを所定値に維持することができる。
【0121】
制御部5は、印刷処理等が終了したか否かを随時判断する(ST8)。例えば、制御部5は、ホッパ15からの錠剤の供給が終了したとき、あるいはオペレータによる操作ボタンの押下によって、印刷処理等が終了したと判断する。制御部5は、錠剤印刷装置Sによる錠剤への印刷処理等が終了したことをもって、移動装置36に対してインクタンクBの移動も終了するよう指示する。
【0122】
印刷処理等が終了すると、載置台361からこれまで使用されたインクタンクBが撤去されて、改めて載置台361は、下方へと移動し、次のインクタンクBが載置されることに備える(ST9)。この載置台361の下方への移動について、制御部5は、次に使用されるインクを収納するインクタンクB内のインク高さL(水頭差h)を考慮して、その移動距離を駆動装置363に指示する。
【0123】
ここで、液面の初期位置は、水頭差hの所定の許容範囲が例えば−5mmから+5mmのように、センサKの検出精度(例えば−2mmから+2mm)より大きければ、水頭差hの所定の許容範囲内に入ることになる。ところが、水頭差hの所定の許容範囲が例えば−1mmから+1mmのように、センサKの検出精度(例えば−2mmから+2mm)より小さくなると、初期位置が所定の許容範囲内に入っているか否かがわからなくなる(1)。また、その上で、センサKがOFF(所定の許容範囲から外れた)とするタイミングが不正確である(2)。さらに、その上で、再度センサKがONとなる値も不正確である(3)。
【0124】
このため、センサ精度による誤差をもつ制御が行われることになる。一般的に、センサはヒステリシスを有する。例えば、液面を検出した状態から検出できなくなったため、液面を上昇させようとする場合、液面を検出した状態から検出できなくなる時(ON→OFF)と、液面が検出されない状態から検出する時(OFF→ON)とで、検出の結果(高さ)が相違することが多い。
【0125】
前述の(2)及び(3)の問題に関しては、特定の状態、すなわち必ず液面が検出されない状態から検出するように初期位置の液面を検出することで、検出時の誤差を小さくすることができる。したがって、センサKによる液面の検出は、必ずセンサKに検出されない状態からインク液面が検出される状態、つまり、センサKがOFFからONなる場合だけの誤差での検出とすれば、センサKのヒステリシスによる誤差を解消することができる。
【0126】
さらに、センサKがOFFからONになる場合でのセンサKの検出精度を予め把握しておけば、その精度を加味して液面を位置付けることができる。前述のように、センサKが液面を検出する高さL4は、インクタンクB内のインク液面の高さL2が所定値となる高さより下に設置されている。このため、インクタンクBは、必ずセンサKで液面が検出された高さ(L4)から、一定の距離上昇移動し、水頭差hが所定値となる高さにインク液面が位置付けられるようになっている。つまり、上述のように、センサKが特定の状態での検出誤差を実験等で予め把握し、この検出誤差を見込んでインクタンクBを上昇移動させるようにして、液面を位置付ければ、前述の(1)の問題を解消することができる。したがって、液面の初期位置を所定の許容範囲内に入れることができる。
【0127】
上述したように、予め把握されている印刷数や単位時間に消費されるインクの量に関する情報に基づいて、インクタンクB内のインク液面の高さL2、すなわち水頭差hを所定値に維持するようにインクタンクBの高さL3を徐々に変化させていくように制御する。これにより、インクジェットヘッド311からのインクの吐出量を安定させることができ、錠剤への印刷を良好に行うことができる。
【0128】
また、印刷処理等を開始する前に水頭差hを所定値に調整するべくインクタンクB内のインク高さLを検出するセンサKは利用するものの、インクタンクB内のインクの量の変化を常に検出するセンサは不要である。従って、錠剤印刷装置Sをより簡易な構成とすることができる。すなわち、最初のインク液面の高さL2(初期位置)を所定の許容範囲内に位置付けられれば良く、センサを使わずに目視で合わせてもよい。
【0129】
なお、定期的なメンテナンスのダミー吐出、パージなどで使用されるインクの量も把握することができる。その分をインク消費量に加味しても良い。よって、このようなメンテナンス時もその後の印刷開始時に水頭差hを所定値に調整することができる。
【0130】
詳述すると、インクジェットヘッド311においてパージやダミー吐出といったメンテナンス処理が行われる。このメンテナンス処理においても、ノズルからインクが吐出される。このようなメンテナンス処理におけるインク消費量も予め把握することができる。したがって、例えば一日の印刷処理等において吐出されるインクの量については、印刷対象となる錠剤の数、各錠剤に対して吐出されるインクの量、メンテナンス処理において吐出されるインクの量という、各情報をインク消費量に加味しても良い。
【0131】
特に、メンテナンス処理でのパージでは、印刷やダミー吐出より多くの量のインクを消費する。よって、パージが行われる時には、他の時間の消費量とは別な消費量を設定しておき、この別な消費量に基づいてインクタンクBの高さを変化させることで、パージ直後であっても水頭差hを所定値に維持することができる。また、所定のタイミングで行われるメンテナンス直後においても、水頭差hを所定値に維持することができる。さらに、搬送方向に整列されずにランダムで錠剤が搬送されてきて、単位時間内に消費するインク量がばらついても、これに対応することが可能である。
【0132】
以上説明したように、第1の実施形態によれば、予め使用されるインクの量を把握することで印刷数や単位時間当たりのインク消費量を把握することができる。このため、その消費量に基づいてインクタンクB自体の高さを調整することによって、インクジェットヘッド311のノズル形成面312の高さL1とインクタンクB内のインク液面の高さL2との水頭差hを所定値に維持することが可能となる。これにより、インクジェットヘッド311からのインクの吐出量を安定させることができ、錠剤への印刷を良好に行うことができる。従って、錠剤のように小さな印刷対象物に適切に印刷を行うことのできる錠剤印刷装置S及び錠剤印刷方法を提供することができる。
【0133】
また、小さな錠剤への印刷では、水頭差hの少しの変化が、吐出されるインク量の大きな変化となって現れる。第1の実施形態では、ほぼリアルタイムで水頭差hを所定値に維持することができるので、吐出されるインク量の大きな変化はなく、印刷のかすれやにじみが生じることなく錠剤への印刷が適切に行われる。
【0134】
また、第1の実施形態においては、水頭差hの維持を行うためにインクジェットヘッド311を移動させない。つまり、錠剤への印刷の間、インクジェットヘッド311は固定される。したがって、錠剤とインクジェットヘッド311との間隔は、印刷に最適な間隔となり、その間隔は変わらない。よって、インクが吐出されて錠剤に到達するまでの距離が一定となり、小さな錠剤への印刷であっても綺麗な印刷を行うことができる。
【0135】
なお、前述では加圧装置35を利用する例を挙げて充填処理を行うことを説明したが、例えば、インクタンクB自体を、少なくともインクタンクB内の液面がノズル形成面312よりも高くなるように上昇させることによって、充填処理を行うこととしても良い。もちろん、これらの方法を利用してパージも可能である。
【0136】
(変形例1)
次に、上述した第1の実施形態の変形例1について
図5を用いて説明する。
図5は、第1の実施形態に係る第1の印刷部3のインクジェット印刷部31の別の構成を示す構成図である。この変形例1は、これまで説明してきた移動装置36の構成が異なるものである。他の構成は、
図2に示した第1の実施形態と同じ構成であるので、それらの構成を利用して説明するとともに各部の詳細な説明は省略する。
【0137】
図5に示すように、変形例1に係る移動装置38は、予め把握されているインクの消費量に合わせて、載置台381上のインクタンクBを上方へ移動させる際に、モータ等の駆動力を用いるのではなく、移動機構382として載置台381に支持されるバネ3821を利用する。
【0138】
この移動装置38は、インクタンクBを載置する載置台381と、載置台381を支持することでインクタンクBを移動させるバネ3821と、バネ3821の長さを調整する調整機構383と、載置台381を固定する固定装置384とを備えている。
【0139】
バネ3821の一端は、載置台381に連結されて支持されており、他端は、移動機構382の上部に設けられている調整機構383と連結されている。このため、インクタンクBが載置台381に載置されると、インクタンクBの重量によって載置台381が下方に押し下げられ、バネ3821は伸びることになる。そして、印刷処理等が行われることによって、インクが消費されてインクタンクBの重量が軽くなるに従って、伸びていたバネ3821は次第に縮むことになる。
【0140】
ここで、バネ3821のバネ定数は、予め把握されているインクの使用量を基に定められている。そのため、印刷処理等によりインクが消費されて、インクタンクB内のインク高さLが次第に下がるのに合わせて、インクタンクBの重量が軽くなることによりインクタンクBは上方へと移動することになる。
【0141】
すなわち、予め印刷処理等において使用されるインクの量が把握されていることから、この使用量から、印刷数や単位時間でのインクタンクB内の液面低下の状態を予測することができる。そこで、この液面低下の予測状態に合わせてその低下量分だけ載置台381を上昇させ得るバネ定数を有するバネ3821を用いることによって、インクタンクB内のインク高さLが下がるのに合わせてインクタンクB自体を上方へと移動させることが可能となる。
【0142】
このようにインクタンクBの高さを変化させることによって、インクが消費されることに伴うインク高さLの変化を相殺し、水頭差hを所定値に維持する。なお、バネ定数は、載置台381の重量、インクを収容したインクタンクBの重量等を考慮して予め実験によって求められる。
【0143】
調整機構383は、載置台381上にインク入りのインクタンクBを設置したときのインクタンクB内のインク高さLの位置を、バネの高さ方向の支持位置を調整することで調整するための機構である。この調整機構383は、例えば、バネ3821と連結される雄ネジとこの雄ネジとかみ合う雌ネジ(定位置でまわる)とから構成されている。
【0144】
固定装置384は、移動機構382に設けられ、設定された位置(高さ)で載置台381を固定する。この固定装置384は、主に使用済みのインクタンクBを撤去して新たなインクタンクBを載置台381に載置する際に用いられる。例えば、固定装置384は、ピンを載置台381に貫通させることで載置台381を固定する構成となっている。但し、この構成に限らず、載置台381を固定することができるのであればどのような構成を採用しても良い。
【0145】
インクタンクBを交換する際には、固定装置384によって予め載置台381が固定されるので、バネ3821が伸縮せず、インクタンクBを載置台381上に載置しやすくなる。
【0146】
なお、固定装置384による固定位置は、適宜設定されれば良い。例えば、固定位置をオペレータが作業しやすい高さとしても良いし、使い終わったインクタンクBの高さ近傍、これから交換する新しいインクタンクBの重さで釣り合う高さ近傍としても良い。
【0147】
以上説明したように、変形例1によれば、予め使用されるインクの量を把握することで、印刷数や単位時間当たりのインク消費量を把握することができる。このため、その消費量に基づいて設定されたバネ定数をもって製造されたバネ3821を用いてインクタンクB自体の高さを調整することによって、インクジェットヘッド311のノズル形成面312の高さL1とインクタンクB内のインク液面の高さL2との水頭差hを所定値に維持することが可能となる。これにより、インクジェットヘッド311からのインクの吐出量を安定させることができ、錠剤への印刷を良好に行うことができる。従って、錠剤のように小さな印刷対象物に適切に印刷を行うことのできる錠剤印刷装置S及び錠剤印刷方法を提供することができる。
【0148】
また、バネ3821によりインクの消費に伴って、自律的にインクタンクBを移動させることができる。これにより、駆動機構を必要とせず、装置構成を簡素化することができる。
【0149】
また、インクタンクBにインクの液面の上限と下限を検知するセンサを設けなくて足りるメリット、ほぼリアルタイムで水頭差hを所定値に維持できるメリット、錠剤への印刷の間にインクジェットヘッドを固定するメリットは上述した通りである。
【0150】
なお、変形例1においては、インクタンクBを吊すようにバネ3821を用いる例を挙げて説明したが、バネの利用の仕方はこのような方法に限られるのではなく、例えば、下からインクタンクBを押し上げるように用いても良い。
【0151】
(変形例2)
次に、上述した第1の実施形態の他の変形例2について
図6を用いて説明する。この変形例2は、インクタンクの構成が異なるものである。他の構成は、
図2に示した第1の実施形態と同じ構成であるので、それらの構成を利用して説明するとともに各部の詳細な説明は省略する。
【0152】
図6に示すように、インクタンク60は、筒状に形成され、その胴部は蛇腹状に形成されている。このインクタンク60の蛇腹状の胴部は、移動装置36の移動機構362に固定された固定具61に保持されている。また、このインクタンク60の底部は、Z方向に上下動する移動装置36の載置台361上に載置されている。したがって、このインクタンク60は、この固定具61に保持された胴部と底部との間の蛇腹部分で上下方向に伸縮可能に構成されている。
【0153】
このような構成によれば、次のようにしてインクタンク60内のインク高さLの変化は相殺され、水頭差hが所定値に維持される。すなわち、印刷処理等が進むとノズルからのインクの吐出により、インクタンク60内のインクが使用されてインクタンク60内のインク高さLは低くなってくる。このインク高さLの変化(低下)は、上述した通り予め把握されている。この予め把握されているインク高さLの変化に基づき、移動装置36の載置台361は、インクタンク60内のインク高さLを維持するためにZ方向上方に移動する。この載置台361が上方に移動すると、インクタンク60の固定具61に保持されている胴部の高さ位置は維持されたまま、底部だけが載置台361とともに上方へ移動する。これにより、載置台361に載置されているインクタンク60に上方に向けた圧力が加わることなる。この底部から受ける圧力により、固定具61に保持されたインクタンク60の胴部と底部との間の蛇腹部分が圧縮され、インクタンク60の底部が上昇し、インクタンク60内の液面が押し上げられる。これにより、インク高さLの変化が相殺され、そのインク高さLが維持される。
【0154】
このようにして、変形例2によれば、水頭差hを所定値に維持することが可能となる。これにより、インクジェットヘッド311からのインクの吐出量を安定させることができ、錠剤への印刷を良好に行うことができる。従って、錠剤のように小さな印刷対象物に適切に印刷を行うことができる。さらに、水頭差hを所定値に維持するための構造が簡易になり、また、可動域が少ないため省スペース化を実現することができる。
【0155】
(変形例2−1)
なお、前述の変形例2では、蛇腹状の胴部を有するインクタンク60を用いて説明したが、この形状に限らず弾性部材あるいは可撓性部材で構成し、その伸縮性を利用してインク高さLの変化を相殺するようにしても良い。また、移動装置36の載置台361の上下動により、インクタンク60を圧縮するようにして説明したが、インクタンク60を上下に圧縮して変形させずに、インクタンク60を両側から挟み込んだ一対のローラを用い、このローラの移動によりインク高さLの変化を相殺するように構成することもできる。
【0156】
(変形例3)
次に、上述した第1の実施形態の他の変形例3について
図7を用いて説明する。この変形例3は、インクタンクの移動装置の構成が異なるものである。他の構成は、
図2に示した第1の実施形態と同じ構成であるので、それらの構成を利用して説明するとともに各部の詳細な説明は省略する。
【0157】
図7は、インクタンク70の動作を説明するもので、図中左から右へとその傾きが変化していく状態を示している。このインクタンク70は、第1の実施形態で説明したインクタンクBのようにその位置を上方へ移動させることでそのインク液面の高さL2を維持するものではなく、インクタンク70を回動させることでインク液面の高さL2を維持するように構成したものである。
【0158】
図7に示すように、インクタンク70の移動装置は、インクタンク70内のインク液面の高さL2の変化に応じて回転する回動軸71を有している。この回動軸71は、インクタンク70に定量のインク72が収容された際のインク液面の高さL2の位置に設けられている。この回動軸71は、この回動軸71の回転に伴い回動可能に構成された図示しないホルダが連結されており、このホルダにインクタンク70が載置されている。このインクタンク70は、回動軸71を中心に回動することにより傾き、インク72が収容された際のインク液面の高さL2が維持される。
【0159】
すなわち、
図7中の一番左の状態は、インクタンク70に定量のインク72が収容されている初期状態を示している。そして、印刷処理等が進みノズルからインク72が吐出されてインクが使用されることにより、インクタンク70におけるインク72の量は、減少していく。前述した通り、インクタンク70内のインク消費量は予め把握されているため、このインクタンク70内に収容されているインク72の減少に応じて、回動軸71は、反時計方向に回転していく。そして、この回動軸71の回転に伴いインクタンク70は図の左から右方向に示すように順次傾斜していき、インク72のインク液面の高さL2を常に一定に維持している。
【0160】
このようにして、変形例3によれば、インクジェットヘッド311のノズル形成面312の高さL1とインクタンク60のインク液面の高さL2との水頭差hが所定値に維持される。これにより、インクジェットヘッド311からのインクの吐出量を安定させることができ、錠剤への印刷を良好に行うことができる。従って、錠剤のように小さな印刷対象物に適切に印刷を行うことができる。
【0161】
また、前述のようにインクタンク70が回動することで、インク72の消費に従ってインクタンク70の傾斜角度が変わるので、オペレータがインク72の消費状態を容易に目視で確認することができる。第1の実施形態のような上下動では、その動きが非常にわずかでありインクタンクBの形状によっては目視でインクの消費量を把握することが難しい。この変形例3によれば、インクタンク70を回動させて傾斜させることで、インク72の消費量に応じたインクタンク70の配置変化が拡大されるので、インク72の消費量の観察がよりしやすくなる。
【0162】
また、インクタンク70を回動させるだけなので、ボールネジ等の駆動軸や上下動のガイド等の機構を簡素にすることができるので、上下動の移動機構に比べてコンパクトな移動機構となり、装置コストも低減される。さらに、簡素な機構で有るので故障の発生率も低減することができる。
【0163】
(変形例3−1)
なお、装置の構成によって、インクタンク70の回動半径を適宜設定することができる。例えば、装置内の各構成ユニットの配置からインクタンク70を大きく回すことができない場合には、回動中心をインクタンク70から離して回動半径を大きくすることで、回動量を少なくすることができる。また、
図7における上下方向の空間は用意できるが、左右方向の空間が十分に用意できない場合には回動中心をインクタンク70に近付けて回動半径を小さくすることもでき、よりコンパクトにできる。また、インク72の使用量に対応して回動させる角度が大きくなるので、回動のための駆動制御がしやすくなり、液面の制御が容易となる。インクタンク70の傾斜角度の変化も大きくなるので、より容易にインク72の消費状態を確認することができる。このように、装置の構成上の配置の都合やインク72の使用量の確認のしやすさ、液面の制御性等を考慮して、インクタンク70の回動半径を適宜決定することができる。
【0164】
(変形例3−2)
また、インク72をインクジェットヘッド311に供給するための供給経路の一端が、インクタンク70の回動によってインクタンク70におけるインク72が寄る側に位置するように設けられているとより良い。こうすることでインクタンク70内のインク量が非常に少なくなった場合においても、インク72をインクジェットヘッド311に供給することが可能となるので、インク72を無駄なく使用することができる。
【0165】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について説明する。なお、第2の実施形態において、上述の第1の実施形態において説明した構成要素と同一の構成要素には同一の符号を付し、同一の構成要素の説明は重複するので基本的に省略する。
【0166】
これまで第1の実施形態において例に挙げて説明してきた印刷部は、インクタンクB内のインクの量が減少してその液面が低下したとしても、予め把握されているインクの消費量を基にその低下に合わせてインクタンクBの位置を上方へと移動させることによって、液面の低下をインクタンクB自体の高さL3を変化させることによって相殺し、もって水頭差hを所定値に維持するものである。
【0167】
第2の実施形態においては、インクタンクBの高さL3を調整することで水頭差hを所定値に維持するのではなく、予め把握されているインクの消費量分に基づいて設定される所定量のインクをインクタンクBへ供給することによって水頭差hを所定値に維持するものである。
【0168】
図8は、第2の実施形態に係る第2の印刷部のインクジェット印刷部の構成を示す構成図である。第2の実施形態においては、印刷部Pを構成する第2の印刷部4を例に挙げて、以下説明する。また、
図8においても第1の実施形態において示した第1の印刷部3と同様、第2の印刷部4のうち、インクジェット印刷部41のみを示している。
【0169】
図8に示すように、インクジェット印刷部41は、錠剤に対向して位置するインクジェットヘッド411と、インク供給ユニット45と、インクバッグ46と、昇降装置
47とを備えている。
【0170】
インクジェットヘッド411は、ノズル形成面412に図示しないノズルを備えており、このノズルからインクが吐出されることで錠剤に対して印刷が行われる。また、パージやダミー吐出といったメンテナンス処理が行われる場合にも、ノズルからインクが吐出されることは、第1の実施形態におけるインクジェットヘッド311と同様である。
【0171】
インクバッグ46は、印刷処理等において使用されるインクが充填されているインクタンクである。このインクバック46は第1のインクタンクに該当する。このインクバッグ46には、例えば、血液製剤を入れるようなバックを使用することができる。このようなバックを用いることで、インクに雑菌等の異物が入ることを防ぎ、鮮度を保つことが可能となる。このインクバッグ46に充填されているインクが、インク供給ユニット45を介してインクジェットヘッド411へと供給されて、印刷処理等において吐出される。
【0172】
インク供給ユニット45は、インクバック46から供給されるインクをインクジェットヘッド411に供給する。このインク供給ユニット45は、インクタンク451と、供給管452と、受給管453とを備えている。
【0173】
インクタンク451は、インクバッグ46から供給されたインクであって、インクジェットヘッド411に供給するインクを貯留する。このインクタンク451は、インクバッグ46からインクの供給を受ける第2のインクタンクに該当する。この第2のインクタンクと前述の第1のインクタンクが合わされて、第1の実施形態におけるインクタンクBに相当する。
【0174】
このインクタンク451内に貯留されているインクは、インクジェットヘッド411のノズルからインクが吐出されるに従って、インクジェットヘッド411へと供給される。このインクタンク451からインクジェットヘッド411へのインクの供給は、供給管452を介して行われる。この供給管452の一端がインク供給経路44と接続され、その他端がインクタンク451の底面に接続されている。また、インクタンク451とインクバッグ46とは、受給管453によって接続されている。この受給管453を介してインクバッグ46からインクタンク451へインクが供給される。
【0175】
受給管453の途中には、開閉弁454と絞り455が設けられている。開閉弁454は、その開閉を行うことによって、インクバッグ46からインクタンク451へインクを供給するか、或いは、供給を停止することを行うことができる。また、絞り455は、受給管453の途中、開閉弁454とインクタンク451との間に設けられている。絞り455は、受給管453を介してインクがインクバッグ46からインクタンク451へと供給される場合に、その流量を制御することでインクタンク451へのインクの供給量を調整するために設けられている。
【0176】
インクタンク451の上部には、管456が接続されており、その管456には開閉弁457が設けられている。これらの管456及び開閉弁457は、インクタンク451内を大気開放する際に用いられる。
【0177】
なお、各開閉弁454、457と絞り455の動作は、手動であっても、或いは、制御部5からの指示に基づいて自動で行われるように構成されても良い。
【0178】
インクジェットヘッド411には、インク供給ユニット45からのインク供給を受けるためのインク供給経路44が接続されている。すなわち、インク供給経路44の一端はインクジェットヘッド411に接続されており、その他端はインク供給ユニット45の供給管452に接続されている。インク供給経路44としては、例えば可撓性を備える管を好適に使用することができる。
【0179】
また、インク供給経路44の途中には、開閉弁441が設けられており、インク供給ユニット45からインクジェットヘッド411に対してインクの供給を行い、或いは、供給を停止することができるようになっている。この開閉弁441は、手動でその開閉ができるようにされていても良いし、制御部5からの指示に基づき、その開閉が制御されるようになっていても良い。
【0180】
このような構成において、第2の実施形態におけるインクバッグ46には、例えば、1日の印刷処理等において使用され、補充せずに使い切ることのできる量のインクが収容されている。そのため、例えば、印刷処理等が開始される前に新しいインクバッグ46が用意され、印刷処理等にて必要なインク量が使用される。そして印刷処理等が終了するのに合わせてインクバッグ46は交換されることになる。
【0181】
ここで、インクを使い切りとするということは、インクが触れるものをすべて交換することが望ましい。したがって、インクバック46の他に、供給管461、管継手462、管継手459、受給管453、開閉弁454、絞り455、インクタンク451を交換することになる。この場合、個別に交換してもよいし、インク供給ユニット45ごと交換してもよい。また、交換したものは使い捨てでも、洗浄することで再利用してもよい。
【0182】
インクバッグ46に充填されているインクは、点滴のようにしてインク供給ユニット45へと供給される。インクバッグ46の構造からインク供給ユニット45へのインクの供給は、あくまでもインクが自然に上から下に流れる状態に任せている。このため、インクバッグ46とインク供給ユニット45との位置関係は、インクバッグ46がインク供給ユニット45の上部に位置することになる。
【0183】
インクバッグ46には、インク供給ユニット45にインクを供給するための供給管461が、インクバッグ46の中央下端部に設けられている。但し、例えば、インクバッグ46内のインクの量が減少したときにインクの供給量を維持するため、インクバッグ46を傾けて用いる場合には、インクバッグ46を傾けた際にインクバッグ46の中で最も低い位置となる位置に供給管461が設けられても良い。
【0184】
また、インクバッグ46は、供給管461を介してインク供給ユニット45へとインクを供給するため、インクバッグ46を懸垂させて吊すよう、昇降装置47が備える固定具472により支持されている。
【0185】
(ユニット化)
前述のインク供給ユニット45とインクバッグ46は、それぞれが備える各構成部を含み、ユニット化されている。ユニット化されているのは、例えばインクの交換を容易に行うためである。インクジェットヘッド411とインク供給ユニット45、インク供給ユニット45とインクバッグ46をそれぞれ連結するためには、それぞれが備える管の端部に設けられている管継手を用いる。
【0186】
インク供給経路44のインク供給ユニット45との接続端部に管継手442が設けられている。一方、供給管452のインクジェットヘッド411との接続端部には、管継手458が設けられている。従って、これら管継手442と管継手458とを互いに連結することで、インク供給経路44と供給管452が接続される。すなわち、インクジェットヘッド411とインク供給ユニット45とが連結されて、インク供給ユニット45からインクジェットヘッド411へのインクの供給が可能となる。
【0187】
また、受給管453のインクバッグ46との接続端部に管継手459が設けられている。供給管461のインク供給ユニット45との接続端部には、管継手462が設けられている。従って、これら管継手459と管継手462とを互いに連結することで、受給管453と供給管461が接続される。すなわち、インク供給ユニット45とインクバッグ46とが連結されて、インク供給ユニット45に対してインクバッグ46からインクの供給が可能となる。
【0188】
また、これら各管継手442と458、各管継手459と462は、互いに着脱自在に構成されている。従って、インク供給ユニット45とインクバッグ46がそれぞれユニット化されていることと相まって、各ユニットの連結に特別な技術を要することがなく、誰でも容易かつ確実に各ユニットを連結させることができる。また、このように各管継手442、458、459、462を用いて各ユニットを接続する構成とされていることで、ユニットごとにメンテナンスを行うことができるため、メンテナンス処理の簡素化を達成することができる。
【0189】
なお、インクバック46と管継手462の間、およびインクタンク451と管継手458の間に、開閉弁を設けてもよい。こうすることで、インクバック46、インクタンク451を取り外す時に、その開閉弁を閉じることで、内部に残ったインクが漏れ出ることを防止することができる。
【0190】
上述したように、インクバッグ46、インク供給ユニット45、インクジェットヘッド411の各ユニットをこれらの順に管継手462、459、458、442を利用して接続することによって、インクバッグ46からインクジェットヘッド411へインクが供給される。
【0191】
具体的には、インクバッグ46から供給管461を介してインク供給ユニット45へとインクが供給される。インク供給ユニット45では、受給管453に設けられている開閉弁454と絞り455がそれぞれ開閉され、必要な量のインクがインクバッグ46から供給される。なお、開閉弁454が開状態とされることで、インクがインクバッグ46からインク供給ユニット45へと供給される。
【0192】
絞り455は、インクタンク451へ供給されるインクの量を調整するために使用される。具体的には、絞り455は、受給管453を挟み込むように設けられており、受給管453の内径を変えて流路抵抗を変化させることによって、受給管453内を通るインクの流量を調整する。この絞り455は、流路抵抗調整機構として機能する。
【0193】
なお、ここでの絞り455は、受給管453の内径を変えて流路抵抗を変化させることで、インクの流量を調整するものであるが、このような方法に限られず、流路抵抗を変化させることでインクの流量を調整できるものであれば良い。
【0194】
インクタンク451は、インクバッグ46から供給されたインクを貯留するとともに、供給管452を介して接続されるインクジェットヘッド411へとインクを供給する。
【0195】
ここで、インクジェットヘッド411のノズル形成面412の高さL1との関係で問題となるのは、インクタンク451内のインク液面の高さL2である。両者の差が、制御すべき水頭差hである。第2の実施形態においては、この水頭差hを所定値に維持するべく、以下の方法を採用している。
【0196】
すなわち、第1の実施形態においても説明したように、例えば一日の印刷処理等において吐出されるインクの量については、印刷対象となる錠剤の数、各錠剤に対して吐出されるインクの量、メンテナンス処理における、例えばダミー吐出やパージにおいて吐出されるインクの量といった、各情報を加味することで算出することができる。一方で、上述したように、インクジェットヘッド411のノズルからインクが吐出されることによって、インクタンク451内のインク液面の高さL2は低下する。このインクの液面の低下によって、水頭差hが維持できなくなる状態が生ずると、吐出抜け等、錠剤への印刷処理等に不具合が発生してしまう。
【0197】
そこで、第2の実施形態においては、予め把握することができるインクの使用量についての情報を基に、インクタンク451に対してインクバッグ46から供給されるインクの量を調整することによってインクタンク451内のインク高さLを極力一定に維持し、もって水頭差hを所定値に維持する。但し、インクの使用量についての情報は、例えば、印刷処理での消費量である。
【0198】
ここで、インクバッグ46からインクタンク451へ供給されるインクの量は、上述したように、受給管453の内径を絞り455によって変化させることによって調整される。絞り455を調整することによって、受給管453からインクタンク451へ供給されるインクの液滴の数が変化する。1滴の液滴量は、受給管453の内径、インクの粘度や表面張力によって変わる。
【0199】
そこで、インクタンク451へ供給される1時間あたりのインクの液滴の数「N」は、次に示される式(1)を基に算出することができる。
【0201】
ここで、「X」は、錠剤印刷装置Sにおいて1時間当たりに処理する錠剤の数を示している。「L」は、錠剤の片面に印刷を行う際に必要となる1錠あたりの液量であり、インクジェットヘッド411の1つのノズルから吐出されるインク量と印刷する文字等に使用するドット数とを乗ずることで求められる。さらに「d」は、点滴方式で受給管453からインクタンク451に落ちるインク1滴の液量を示している。この「d」の値については、予め実験で求める。
【0202】
これら各パラメータを用いて式(1)を利用することで、インクバッグ46からインクタンク451へと供給される1時間当たりのインクの液滴の数「N」を算出することができる。そして、液滴の数を把握することができる、ということは、インクバッグ46からインク供給ユニット45へのインクの供給量を予め把握することができることに他ならない。このようにして把握されるインクバッグ46からインク供給ユニット45へのインクの供給量についての情報を基に、受給管453からインクタンク451にインクの液滴を落下させる速度が決定され、絞り455が調節される。
【0203】
このようにインクをインクタンク451へ供給することによって、印刷処理等によってインクが使用されたとしてもインクジェットヘッド411のノズル形成面412の高さL1とインクタンク451内のインク液面の高さL2との水頭差hを所定値に維持することができる。
【0204】
なお、インクバッグ46内に充填されているインクの量が減ってきた場合には、インクタンク451へのインクの供給量を確保するために、例えば、加圧装置を用いるようにしても良い。加圧装置としては、例えば、インクバッグ46を両側から挟んで加圧する装置等を採用することができる。また、絞り455での流量を増やす、或いは、インクバッグ46自体を傾けるようにしても良い。さらに、インクバッグ46内のインクの減少速度をセンサでチェックし、インクバッグ46内のインクの減る速度が遅くなってきているか否かをモニタし、これに応じてインクタンク451へのインクの供給量を調整しても良い。
【0205】
なお、上述のように印刷処理の場合に対して、メンテナンス処理でのダミー吐出やパージでは、より多くの量のインクを消費する。よって、このようなメンテナンスが行われる時は、印刷処理を行っている時の消費量とは別なダミー吐出用、パージ用等のメンテナンス用消費量を設定しておき、この別な消費量に基づいてインクバック46からインクタンク451へのインクの供給量を調整すると良い。
【0206】
第2の実施形態においては、上述したように、インクジェットヘッド411のノズル形成面412の高さL1とインクタンク451内のインク液面の高さL2との水頭差hが所定値に維持される。従って、印刷処理等の際には、
図8に示すように、インクジェットヘッド411のノズル
形成面412よりも水頭差hの分だけインクタンク451の液面が下となるように、インクタンク451が位置している。
【0207】
図9は、第2の実施形態に係る第2の印刷部4のインクジェット印刷部41の構成を示す構成図である。
図9では、上述した各構成を用いてインクジェットヘッド411に対してインクを充填する処理を行う際の各構成の位置を示している。
【0208】
ところで、インクジェットヘッド411にインクを充填する場合には、インクジェットヘッド411に大量のインクを供給しなければならない。そこで、この場合には、水頭差hを所定値に維持する位置にあるインクタンク451を、少なくともインクタンク451内の液面がノズル形成面412よりも高い位置になるように配置する。
図9では、インク供給ユニット45とインクバッグ46とを、インクジェットヘッド411よりも高くなるように配置する状態を示している。
【0209】
ここでは、
図8及び
図9に示すように、インク供給ユニット45とインクバッグ46のZ軸方向への昇降を行うべく、昇降装置47を利用する。昇降装置47には、インクタンク451を載置する載置台471と、インクバッグ46を固定する固定具472と、インクタンク451を含むインク供給ユニット45全体とインクバッグ46とを昇降させる移動機構473と、移動機構473を駆動する駆動装置474とから構成されている。例えば、載置台471と固定具472との距離を変化させずに両者を昇降させることによって、インク供給ユニット45とインクバッグ46との位置関係に変化を与えることなく両者を昇降させることができる。
【0210】
この昇降装置47の制御は、
図1に示す制御部5によって行われる。また、インク供給ユニット45とインクバッグ46の交換時あるいは充填処理後に印刷処理を開始するため、水頭差hが所定値となる停止位置へのインク供給ユニット45及びインクバッグ46の移動は、第1の実施形態と同様に、センサK(図示せず)を利用して行われる。
【0211】
具体的な処理の流れでは、まず、インク供給ユニット45とインクバッグ46とが、インクジェットヘッド411よりも高くなるように上方へ移動する。その上で、絞り455が全開にされる。但し、インクが流れる受給管453にあって絞り455よりも上流に位置する開閉弁454はこのとき全閉となる。この開閉弁454が開状態にあると、インク供給ユニット45、インクバッグ46が上方へ移動する際に意図しないタイミングでインクがインクジェットヘッド411に供給されてしまうからである。このとき、インクタンク451は空である。なお、例えば、メンテナンスでのパージを行う場合など、インクタンク451は空でないことがある。このため、インクタンク451からの意図しない供給を防止するためには、開閉弁454と同様、開閉弁441も閉じることが望ましい。
【0212】
その後、インク供給経路44の開閉弁441、インクタンク451の上方に設けられている開閉弁457、及び、排液管37に設けられているバルブ371の全てのバルブが開状態とされる。そして開閉弁454も開状態にされる。これにより、インクバッグ46からインクジェットヘッド411、さらには排液管37までインクの流路が確保されたことになる。そして、インクジェットヘッド411に対してインクが充填される。また、インクジェットヘッド411に対してインクが充填されることによって、インクジェットヘッド411内に残留していたインクは排液管37を介してインクジェットヘッド411の外部に排液される。
【0213】
インクが充填されたことが確認された後、まず、排液管37に設けられているバルブ371が閉じられる。その上でインクタンク451の開閉弁457と開閉弁454が閉じられる。そして、
図8に示すように、インクジェットヘッド411のノズル形成面412の高さL1とインクタンク451内のインク液面の高さL2との水頭差hが所定値となる位置までインク供給ユニット45とインクバッグ46が下げられ、装置は印刷処理等の開始に備える。
【0214】
なお、昇降装置47の構成の一例を
図8や
図9に示したが、昇降装置47の構成は、これらの構成に限定されるわけではなく、インク供給ユニット45とインクバッグ46の昇降が可能であれば、どのような機構を採用することも可能である。また、インク供給ユニット45とインクバッグ46の昇降を別に行っても良い。さらに、ここではインクバッグ46を昇降装置47の固定具472に固定しているが、例えば、固定具472自体にインク供給の際におけるインクバッグ46の高さを維持する役割を併せて担わせるようにしても良い。
【0215】
なお、メンテナンス処理におけるパージにおいても、上述した流れでインクバッグ46からインクジェットヘッド411へとインクを供給することができる。
【0216】
また、前述の充填処理やパージは、インクバッグ46及びインク供給ユニット45を上方へ移動させずに、例えば、上述したように、インクバッグ46を両側から挟んで加圧することで、インクバッグ46から強制的にインクをインクジェットヘッド411へと供給する方法も採用し得る。さらには、例えばインクタンク451とインクジェットヘッド411との間にコンプレッサ等の圧送装置を組み込むことも考えられる。第1の実施形態の様に、加圧装置35を利用してもよい。この場合には、インクタンク451内にある程度のインクを貯留しておき、そのインクを加圧する。また、
図8、
図9では供給管452をインクタンク451の底部に接続するように示しているが、第1の実施形態と同様にインクタンク上部から差し込んでも良い。
【0217】
以上説明した通り、第2の実施形態においては、水頭差hを所定値に維持するために、予め把握することができるインクの使用量についての情報を基に、インクタンク451に対してインクバッグ46から供給されるインクの量を調整することによってインクタンク451内のインク高さLを維持する。これにより、インクジェットヘッド411のノズル形成面412の高さL1とインクタンク451内のインク液面の高さL2との水頭差hを所定値に維持することが可能となる。このため、インクジェットヘッド411からのインクの吐出量を安定させることができ、錠剤への印刷を良好に行うことができる。従って、錠剤のように小さな印刷対象物に適切に印刷を行うことのできる錠剤印刷装置S及び錠剤印刷方法を提供することができる。
【0218】
また、水頭差hを所定値に維持するためにインクを貯留させておく容器に、貯留させるインク量の上限と下限を設定する必要はなく、ましてセンサを設けてこれら上限、下限を検知させる必要もない。このため、錠剤印刷装置にセンサ等の装置を付加する必要がなくなるため、装置構成がシンプルとなり、錠剤印刷装置を構成する各部の配置の自由度も高くなり、メンテナンスも容易になる。
【0219】
また、充填やパージのためにインクバック46やインクタンク451を加圧するようにすれば、昇降装置47を不要とすることが可能である。さらに、最初に単位時間当たりのインク供給量を設定してしまえば、あとは制御部5による制御も不要とすることができる。但し、印刷処理中に点滴の速度変化が必要である場合には、制御部5を使う場合もある。
【0220】
また、小さな錠剤への印刷では、水頭差hの少しの変化が、吐出されるインク量の大きな変化となって現れる。第2の実施形態では、ほぼリアルタイムで水頭差hを所定値に維持することができるので、吐出されるインク量の大きな変化がなく、印刷のかすれやにじみが生じることなく錠剤への印刷が適切に行わる。
【0221】
また、第2の実施形態においても、第1の実施形態と同様、水頭差hの維持を行うためにインクジェットヘッド
411を移動させない。つまり、錠剤への印刷の間、インクジェットヘッド
411は固定される。したがって、錠剤とインクジェットヘッド
411との間隔は、印刷に最適な間隔となり、その間隔は変わらない。よって、インクが吐出されて錠剤に到達するまでの距離が一定となり、小さな錠剤への印刷であっても綺麗な印刷を行うことができる。
【0222】
以上、第1の実施形態においては、水頭差hを所定値に維持するべく、予め把握されているインクの消費量に合わせてインクタンクB自体を上昇させることでインクの消費に伴う液面の低下を相殺する。また、第2の実施形態においては、水頭差hを所定値に維持するべく、予め把握されているインクの消費量分に基づいて設定される所定量のインクをインクタンク451へ供給することによってインクの消費に伴う液面の低下を相殺する。これらいずれの制御においても、上述したように水頭差hの所定値は所定の許容範囲内で設定されていることから、水頭差hを所定値に維持して所定の許容範囲内に保持することが可能である。これにより、インクジェットヘッド311
、411からのインクの吐出量を安定させることができ、錠剤への印刷を良好に行うことができる。
【0223】
(他の実施形態)
さらに、上記いずれの実施形態においても、印刷装置のオペレータが位置する側に開放扉を設け、この開放扉の内側にインクタンクB、60、70、451を保持する保持部を設けることが好ましい。このような構成によれば、インクタンクB、60、70、451の交換時にこの開放扉を手前に開放することにより、インクタンクB、60、70、451がオペレータ側に引き出されることになる。こうすることで、インクタンクB、60、70、451の交換を容易にし、また、インクの消費状態の目視確認を容易にすることができる。なお、載置台361、381、471が保持部として機能する。
【0224】
また、開放扉に観察用の窓部を設け、この窓部からインクタンクB、60、70、451が見えるようにすると良い。いちいち開放扉を開けなくてもインクの消費状態の目視確認することができる。装置内に観測用照明を設けても良いし、撮像装置用の照明の光を利用しても良い。この場合には、撮像装置用の照明の光が届く場所にインクタンクB、60、70、451を保持するようにすればよい。これらの光をインクタンクB、60、70、451に透過させることで、液面の観察がさらに容易となる。インクタンクB、60、70、451と照明の間にスリットを設け、液面部分だけが透過光で見えるようにするとさらに視認性が向上する。これにより、液面を常時検出するためのセンサが不要となり装置構成を簡素化することができる。また、インクによってはセンサによる検出が困難な場合もあるが、目視によりどのようなインクであっても消費状態を確認することができる。
【0225】
また、上記の各実施形態においては、搬送ベルト13、23を用いて錠剤を搬送するとしたが、これに限らず、パレットのようなものに錠剤を載置し、パレットを搬送することによって印刷を行うようにしても良く、また、錠剤を回転式のドラムの表面に吸着保持して搬送するようにしても良い。錠剤とインクジェットヘッド311、411とが相対的に移動して印刷が可能な構成を有していればどのような搬送機構であっても良い。
【0226】
また、例えば、インクジェットヘッド311、411に対して充填処理を行う場合やパージの際には、タンク側から、加圧することでインクを充填する方法を説明したが、インクジェットヘッド311、411に接続される排液管にタンクを設けて、このタンクを負圧にすることによって、インクタンクB、60、70、451からインクジェットヘッド311、411へとインクを送り、充填する方法も採用することができる。
【0227】
なお、錠剤としては、例えば、裸錠(素錠)、糖衣錠、フィルムコーティング錠、腸溶錠、ゼラチン被包錠、多層錠、有核錠等を挙げることができる。また、硬カプセル、軟カプセルなどの各種カプセル錠についても錠剤に含めることができる。これら錠剤は、医薬用、飲食用を念頭に置いて説明を行ったが、洗浄用、工業用、芳香用として使用されるものも含む。
【0228】
印刷対象とされる錠剤が医薬用、飲食用である場合には、使用するインクは、可食性インクが好適である。具体的には、可食性色素としてアマランス、エリスロシン、ニューコクシン(以上、赤色)、タートラジン、サンセットイエローFCF、β−カロチン、クロシン(以上、黄色)、ブリリアントブルーFCF、インジゴカルミン(以上、青色)等を用い、これらをビヒクルに分散または溶解し、必要に応じて色素分散剤(界面活性剤)を配合したものを使用することができる。また、可食性インクとしては、合成色素インク、天然色素インク、染料インク、顔料インクのいずれを使用しても良い。
【0229】
本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することを意図していない。この実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。したがって、この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。