特許第6661612号(P6661612)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6661612
(24)【登録日】2020年2月14日
(45)【発行日】2020年3月11日
(54)【発明の名称】リニアモータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 41/02 20060101AFI20200227BHJP
   H02K 41/03 20060101ALI20200227BHJP
   H02K 9/19 20060101ALI20200227BHJP
【FI】
   H02K41/02 Z
   H02K41/03 A
   H02K9/19 A
   H02K9/19 Z
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-510345(P2017-510345)
(86)(22)【出願日】2015年7月24日
(65)【公表番号】特表2017-524330(P2017-524330A)
(43)【公表日】2017年8月24日
(86)【国際出願番号】AU2015000438
(87)【国際公開番号】WO2016025975
(87)【国際公開日】20160225
【審査請求日】2018年7月24日
(31)【優先権主張番号】2014903318
(32)【優先日】2014年8月22日
(33)【優先権主張国】AU
(73)【特許権者】
【識別番号】501088512
【氏名又は名称】アンカ・ピーティーワイ・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】特許業務法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マクルスキー、パット
(72)【発明者】
【氏名】ウィソッキ、フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】ハール、ティム
【審査官】 池田 貴俊
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−218443(JP,A)
【文献】 特開2010−063313(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/025162(WO,A1)
【文献】 特開2011−247215(JP,A)
【文献】 特開2008−301646(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0025138(US,A1)
【文献】 米国特許第06323567(US,B1)
【文献】 中国特許出願公開第102377287(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 41/02
H02K 9/19
H02K 41/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可動子および固定子を含み、前記可動子は細長い円形のボアを形成する円筒体を有し、前記固定子は前記ボア内に設けられた細長いシャフトであり、前記円筒体はシリンダおよび前記シリンダ内に配置された複数の電気巻線を含み、前記シャフトは同期または可変リラクタンストポロジーを含むかまたは複数の磁石を含み、前記巻線の電気的な付勢により前記円筒体と前記シャフトとの間の相対運動および/または力の発生がもたらされ、前記円筒体は前記巻線に対して前記シリンダの対向側にあるハウジングの内部に面する円筒形内面と前記シリンダとの間に形成される冷媒スペースを有する前記ハウジング内に配置され、前記冷媒スペースは前記円筒体の長さの少なくとも大部分に沿って形成され、前記冷媒スペースは実質的に円筒形状でかつ実質的に一定の断面を有し、入口と出口を含み、かつ螺旋状または渦巻状の通路において前記入口と前記出口との間に冷媒の流れを導く螺旋または渦巻きを含み、前記巻線は樹脂中に浸漬されたものであり、前記シリンダは前記巻線の最外面で前記樹脂と接触しているため、前記巻線からの熱は前記シリンダに直接伝導され、前記冷媒スペースに散逸されることを特徴とするリニアモータ。
【請求項2】
前記ハウジングの円筒状の内面に取り付けられた断熱層を有し、前記断熱層は熱伝導率が低いことを特徴とする請求項1記載のリニアモータ。
【請求項3】
前記リニアモータの対向端部は、該モータの各端部に熱障壁を形成するための断熱層または断熱材料でできていることを特徴とする請求項1記載のリニアモータ。
【請求項4】
前記リニアモータの対向端部は、該モータの各端部に導電性バリアを形成するための電気絶縁層または電気絶縁材料でできていることを特徴とする請求項1記載のリニアモータ。
【請求項5】
前記冷媒スペースは、入口と出口を含むことを特徴とする請求項1記載のリニアモータ。
【請求項6】
前記円筒体は、該円筒体内に電磁誘導を防止するための長手ギャップを形成するために、該円筒体の対向端部間において長手方向に分割されていることを特徴とする請求項1記載のリニアモータ。
【請求項7】
前記ハウジングは対向する第1及び第2の端部を有し、前記円筒体は該円筒体を前記ハウジング内に設置するために前記第1及び第2の端部の一方に取り付けるためのフランジを含むことを特徴とする請求項1記載のリニアモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はリニアモータに関する。
【背景技術】
【0002】
リニアモータは様々な機械や装置に幅広く利用されている。リニアモータのタイプにはフラットベッド型およびチューブラー型が含まれる。歯車やスクリュウ、ベルトやプーリーのような回転運動を直線運動に変換する回転モータにより付与される直線運動とは対照的にリニアモータは直接の直線運動を提供するものである。回転運動を直線運動に変換するための装置を排除することは、駆動配置の複雑さとコストを低減する。リニアモータは非常に高速かつ高加速度で動作することができる。リニアモータは、いくつかの可動部を有し、高精度であり、低振動で動作することができることを考えると、非常に信頼性もある。
【0003】
リニアモータは力動子(フォーサー)または可動子(ムーバー)および固定子(ステータ)を含む。可動子はコイルを含み、固定子は磁石を含むような磁気または磁場が作用するものであることから、コイルに通電すると可動子と固定子との間に相対運動及び/又は力が発生する。
【0004】
代表的なリニアモータは、横断面が正方形であり、円形状の中心穴を有するハウジングを含む。ハウジングは穴(ボア)の周囲に巻かれた巻線を含む。円形状断面のシャフトは、ボアを通って延び出し、いずれかの端部から外方に突出する。使用時であればシャフトには磁石が収納されている。ハウジングまたはシャフトの一方は、ハウジングまたはシャフトの他方が移動または力を付与できるように固定することができる。結果として生じる運動及び/又は力は直線的である。
【0005】
リニアモータは動作時に熱を発生するため、熱を散逸させるための冷却システムをしばしば備えている。いくつかの先行技術の構成では、冷媒システムは、ハウジングの1つ以上の表面に取り付けられ、熱を散逸させるために冷媒がアタッチメントを通り抜けるようにする冷媒アタッチメントを含む。いくつかの構成では、冷媒アタッチメントは正方形のハウジングの一方の側面に塗布され、ハウジングの長さだけ延び出している。他の構成では、冷媒アタッチメントがハウジングの2つ以上の側面に適用され、各アタッチメントはハウジングの長さにわたって延び出している。ハウジングが機械または装置に取り付けるための構成部品のような外部取付け具または接続部を有することから、冷媒アタッチメントがハウジングの4つの側面のすべてに適用されることは通常の場合はなく、しばしば1つの側面のみかまたは2つの側面に適用される。これは、冷媒アタッチメントまたはアタッチメントがリニアモータの冷媒アタッチメントが取り付けられている箇所から離れた部分で発生する熱を散逸させる効果があまりないことを意味している。
【0006】
例えば図1を参照すると、従来のリニアモータ10の概略断面図が示されている。リニアモータ10は円形状コイルまたは巻線12を取り囲む正方形のハウジング11を有する。冷媒アタッチメント13がハウジング11の上壁に取り付けられている。図1では底壁15が冷媒アタッチメント13から最も離れたところに配置されていることが分かる。底壁15に隣接する巻線12で発生した熱は、上壁14に隣接して、または側壁16または17に隣接して発生する熱よりも散逸され難くなる。
【0007】
また、冷媒アタッチメントに近接するリニアモータの部分においても、コイルとハウジングの外側側壁との間の間隔が変化する。例えば、図1では、ハウジングの頂部、底部、および側壁から図示されたコーナーの中間よりもハウジング11のコーナー部分でより多く離間しているので、冷媒アタッチメントが提供されるハウジングは種々様々に変わり得るものである。
【0008】
したがって、従来技術のいくつかの形態では、リニアモータで発生した熱が均一に散逸されず、さらにモータ内で発生する熱に大きな熱変動があり、両方ともリニアモータのすぐ近くにある熱感受性の部品に対して熱的影響を及ぼし得る。これは、リニアモータが精密研削およびフライス加工機械のような高精度機械に採用されている場合にとくに問題であり、わずかな温度変動であっても機械の精度に影響を及ぼすおそれがある。
【0009】
また、リニアモータはボールネジのような他のアクチュエータよりも効率的であり、発生する熱が適切に散逸される場合は、その使用が好ましい。
【0010】
また、リニアモータは機械や装置に取り付けるのが難しい場合もある。本願出願人に知られているほとんどのリニアモータは、「フェース取り付け可能」なものであり、これはモータのハウジングの面がモータが使用される機械の面に取り付けられることを意味する。図2はそのような取り付けを示し、正方形断面の矩形ハウジング21と該ハウジング21を貫通する細長いシャフト22とを有するリニアモータ20を示す。斜線で示したハウジング面23は、取付け面を形成し、リニアモータ20を機械に固定するための留め具を受ける4つのネジ穴24を含む。リニアモータ20を前面から機械に固定するためにハウジング21の前面27には、4つのねじ切りされた開口部26(そのうちの3つが図2中に見える)が形成されている。表面23または27のいずれかが確実に固定されるが、リニアモータ20を機械に固定する留め具に容易にアクセスすることができないため、機械へのリニアモータ20の取り付けおよび取り外しが容易ではない。
【0011】
本発明の目的は、先行技術の構成に関連する1つ以上の困難を克服するか、あるいは少なくとも軽減することにある。
【発明の概要】
【0012】
本発明の一実施形態では、可動子と固定子を含むリニアモータが提供され、可動子は細長い円形のボアを形成する円筒体を有し、固定子はボア内に設けられた細長いシャフトであり、円筒体は複数の電気巻線を含み、シャフトは同期または可変リラクタンストポロジーを含むかまたは複数の磁石を含み、巻線の電気的な付勢により円筒体とシャフトとの間の相対運動および/または力の発生がもたらされ、円筒体はその内部に面する円筒形表面と該円筒体との間に形成される冷媒スペースを有するハウジング内に配置され、冷媒スペースは円筒体の長さの少なくとも大部分に沿って形成され、冷媒スペースは実質的に円筒形状でかつ実質的に一定の断面を有する。
【0013】
上記の種類のリニアモータは、巻線まわりの熱散逸を均一にするために、従来技術に優る利点を提供することが想定されている。すなわち、円筒状冷媒スペースは、巻線と冷媒スペースとの間隔が一定となるように、冷媒スペースに対する巻線の近接度が一定であるか、またはそれが変化しないように巻線を取り囲むようになっている。有利なことに、これは、リニアモータが他のモータよりも多くの熱をモータの一部で生成しないように、巻線のすべての部分が等しく冷却されることを意味する。これにより、本発明によるリニアモータは、これらの構成要素の動作に影響を及ぼすことなく、またはこれらの構成要素に対してさらに予測可能な方法で影響を及ぼすことなく、感熱構成要素のすぐ近くに容易に設置することができる。いずれの結果も、リニアモータのすぐ近くの構成要素への熱影響が本発明への使用の結果として無視することができるかまたは予測可能である場合に、リニアモータを採用する機械または装置の設計はそれほど難しくならない点で有利である。さらに、従来技術のリニアモータに関連した困難性のためにこれまではリニアモータを採用することができないであろうとされてきた機械または装置において、リニアモータの採用によりその利点を引き出すことができるようになる。
【0014】
本発明のリニアモータは、上述した種類の冷媒アタッチメントがないことによりハウジングの形状をよりコンパクトにすることができるため、従来のリニアモータよりもさらにコンパクトな形状にすることができる。さらに、本発明のリニアモータの円筒体は、例えばハウジングの内径を大きくした後などのように、必要に応じてハウジングを適切に修正した後に、円筒体をハウジング内にスライドさせることにより、ボールネジハウジングのような既存のアクチュエータハウジングにぴったりと適合するように配置することができる。これは、後付けが可能であることを意味し、それによって以前には他の方式の駆動装置を用いていた機械または装置に対してリニアモータの組み込みを採用することの利点を引き出すことができる。
【0015】
例えば熱の散逸の改善および改造の容易さのために、本発明のリニアモータは、既存のボールネジアクチュエータの比較的容易な交換を可能にすることが期待される。
【0016】
上述の冷媒アレンジメントではリニアモータと周囲の部品との間に熱障壁を形成することができる。実質的に円筒形状である冷媒スペースによる巻線の完全な包囲により、リニアモータからの熱移動を最小限に抑えるかまたは無視することができる。このことは、冷媒アタッチメントを持たないハウジングの側面を通して熱の逃げ出しが起こり得るように、正方形ハウジングの片側だけかまたはハウジングの2つか3つの側面だけに適用される冷媒アタッチメントを採用する従来技術とは異なる点である。
【0017】
加えて、本発明のリニアモータでは、冷媒スペースからの熱の伝達を低減する目的から、ハウジングの内部に面する円筒面に向かうように、冷媒スペースのなかに断熱層を配置することができる。これは、リニアモータの冷媒系が冷媒スペース内に捕捉された生成熱の全てまたは実質的に全てを除去することができる場合に適切である。断熱層は熱伝導性の低いものである必要がある。断熱層は例えばゴムまたはセラミックでつくることができる。その他の可能性としてプラスチック、複合材料(ガラス繊維、G11、炭素繊維)またはエポキシが含まれる。
【0018】
さらに、リニアモータの対向端部は、モータの各端部に熱障壁及び/又は導電性バリアを形成するための熱的及び/又は電気的に絶縁された層または材料でつくることができる。熱的及び/又は電気的に絶縁された層または材料は、上述の断熱層に関して列記したものと同じ材料でつくることができる。
【0019】
冷媒スペースはいかなる適切な方法でも形成することができる。本発明のいくつかの形態では、円筒体の巻線は巻線の長さに延びるシリンダ内に配置され、冷媒スペースは巻線に対してシリンダに対向する側に形成されている。本発明のこの形態では、円筒状のハウジングは、シリンダまわりに延び出し、冷媒スペースを形成するためにシリンダから離れている。シリンダは、アルミニウムまたは他の適当な金属材料または非金属材料で形成することができる。シリンダは、巻線の外面と接触するか、または可能な限り巻線の外面に近接しているので、巻線からの熱がシリンダに直接伝導されて冷媒スペースに散逸される。本発明のいくつかの形態では、巻線はエポキシ樹脂のような樹脂に浸漬されるかまたは埋め込まれ、シリンダは最も外側の巻線の樹脂被覆と接触することができる。
【0020】
円筒体の巻線がシリンダ内に配置される本発明の上記形態では、円筒体はハウジング内に後れて挿入するためにハウジング無しで提供することができる。これは、例えばハウジングが機械の一部品である場合、例えば機械の鋳造部品の一部である場合に適する。また、これは、本発明のリニアモータがボールネジを交換するために使用され、ボールネジのハウジングが場合によってはある種の変更を伴って使用されて円筒体を収容する場合にも適する。したがって、本発明は、本明細書ではハウジングに対して別個の構成要素として説明されているが、記載された方法でハウジングと相互作用するように構成された円筒体にまで及ぶものである。本発明はこの点でユニークなものであり、本発明で提案された方法で既存のハウジング内に挿入することができるリニアモータは本出願人が知っている限りではない。
【0021】
冷媒スペースは少なくとも1つの入口と出口を有することができ、冷媒は入口を通って冷媒スペースのなかに導入され、出口を通って排出される。冷媒は、入口を介して冷媒スペースに再導入される前に冷却され得るか、あるいは再使用されない種類のものとして例えば水であり得る。
【0022】
冷媒スペースは、その全長にわたって開放されていてもよく、または冷媒スペースを通る冷媒の流れを誘導するかまたは妨害するための通路または障害物を含むことができ、または冷媒の流れを乱す撹乱物を含むことができる。本発明のいくつかの形態では、冷媒スペースは、冷媒がスパイラル(渦巻状)またはヘリックス(螺旋状)通路の入口および出口の間を流れるようにスパイラルまたはヘリックスを含むことができる。これにより冷媒が出口に到達する前に冷媒スペース内で費やす時間(冷媒の滞留時間)が増加する。
【0023】
これに変えて、冷媒スペースは、冷媒が入口と出口の間のまわりを流れるようにする突起物を含むことができる。他の構造にはリニアモータの長手方向に伸び出すフィンを含むことができる。フィンは、一方向のみの隣り合う一対のフィンの間に冷媒を導くことができ、または隣り合う一対のフィンに沿って冷媒を戻す動きとなるようにフィンを構成することができる。冷媒は液体または気体とすることができるが、液体が最も好ましい。
【0024】
本発明の他の実施形態では、可動子と固定子を含み、可動子は細長い円形ボアが形成された円筒体を有し、固定子は前記ボア内に設けられた細長いシャフトであり、円筒体は複数の電気巻線を含み、シャフトは同期または可変リラクタンストポロジーを含むかまたは複数の磁石を含み、これにより前記巻線の電気的な付勢により円筒体とシャフトとの間に相対運動及び/又は力の発生がもたらされ、円筒体は対向する第1及び第2の端部を持つハウジング内に設けられ、円筒体は該円筒体をハウジングのなかに設置するために前記第1及び第2の端部の一方に取り付けるためのフランジを含む、リニアモータを提供する。
【0025】
第1及び第2の端部の一方に形成されたフランジを用いてリニアモータを適所にしっかりと確実に固定することができるが、さらにリニアモータを機械に固定するための留め具(ファスナー)に容易にアクセスすることができる。これは、リニアモータの機械への取付けおよび機械からの取り外しが、フェース取付け(フェースマウンティング)を用いる従来のリニアモータに比べて容易になることを意味する。
【0026】
本発明の実施形態では、ハウジングは、該ハウジングを機械に取り付けるための第1及び第2の端部に形成されたフランジを含み、円筒形のハウジングであってもよいし、あるいはフェース取付けを採用する従来のリニアモータにも対応する正方形のハウジングであってもよい。いずれの形態においても、リニアモータの取付けおよび取外しのための留め具に対するアクセスの改善の利点が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
本発明がより十分に理解されるように以下の図面を参照していくつかの実施形態を説明する。
図1図1は、冷媒アタッチメントを有する従来のリニアモータ配置を示す概略断面図である。
図2図2は、フェース取付け配置をもつ従来のリニアモータを示す分解斜視図である。
図3図3は、本発明の一実施形態のリニアモータを示す断面図である。
図4図4は、機械構成要素に取り付けるための本発明の一実施形態のリニアモータを示す分解斜視図である。
図5図5は、本発明のリニアモータに用いられる円筒体を示す分解斜視図である。
図6図6は、本発明の変形例のリニアモータに用いられる円筒体を示す分解斜視図である。
図6a図6aは、図6の円筒体の一部を詳細に示す部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図3を参照すると、モータの長手軸に直交するリニアモータ30の横断面が示されている。モータ30は、電気巻線32(銅巻線)とシリンダまたは円筒体33とによって画定された細長い円形ボア31を含む。シリンダまたは円筒体33は、本実施形態では巻線32の外面34と接触するように示されているが、他の実施形態では巻線の外面34から僅かに離間している。
【0029】
冷媒スペース35は、円筒体33の周囲を取り囲んでおり、巻線32により発生した熱を散逸させるための冷媒が通流する空間を形成する。冷媒は液体または気体とすることができるが、液体が最も可能性がある。冷媒スペース35は、円筒体33の外面36と対面する円筒形ハウジング37の内面38との間に画定される。図3では、ハウジング37は外面39ばかりでなく内面38も円筒形状で示されている。しかし、外面に関する限りではハウジングの形状は、本発明にとって特に重要なことではなく、例えばハウジングは一例として正方形または矩形の形状であってもよく、あるいはその他の形状であってもよいということを理解されたい。同様に、外面は、放熱のためのフィン、取付ラグ、または機械や機械構成部品に対してハウジングを適所に固定するために必要とされるような多種多様な他の取付け具を含むことができる。
【0030】
断熱層は、ハウジング37の内面38に接触して冷媒スペース35のなかに配置することができる。断熱層は、低い熱伝導率をもつことができ、例えばゴムまたはセラミックでつくることができる。断熱層は、冷媒スペース35からハウジング37を通ってリニアモータ30の外部への熱伝導を低減するものである。
【0031】
また、リニアモータ30は、ボア31内に密着して配置された細長いシャフトを含む。図示されたものに限定されない本発明の実施形態では、シャフトは非磁性の中空軸であり、希土類磁石のような複数の磁石を含んでもよく、本発明のいくつかの実施形態ではスチール製のスペーサによって離間させることができる。シャフトは、磁石の極性を逆向きにして横並びに配列して組み立てられた磁石を含む。いくつかの配置構成では、2つ以上の磁石が磁石の極性と同じ方向に横並びに配列され、次いで、磁石の次の組が反対向きの極性を有する第1の組に隣接して組み立てられる。スペーサは、隣接する磁石または隣接する磁石の組の間に挿入することができる。図3に関してこの配置構成では、巻線32に通電すると、シャフトがボア31内を移動するか、またはシャフトが固定されていれば巻線32および巻線32まわりに延び出していると記載された他の構成要素がシャフトに対して相対的に移動する。巻線32への給電を制御することによってシャフトと巻線との間の相対運動及び/又は力が制御される。
【0032】
冷媒スペース35は、巻線32内で発生した熱を消散させる目的で、冷媒が入口と出口との間に通流できる空間を形成する。円筒形ハウジング37は、冷媒を円筒体33の外面36とハウジング37の内面38との間に閉じ込める冷却ジャケットを効果的に形成する。冷媒スペース35内への冷媒の流入およびスペース35からの冷媒の排出を容易にする入口および出口は、任意の適切な位置に設けられ、任意の適切な形態をとることができる。冷媒は、加圧されたポートを通って冷媒スペース35内に注入されるようにしてもよいし、または重力で供給されるようにしてもよい。
【0033】
図3では、冷媒スペース35は開放空間として示されている。これは許容可能であるが、図4に好ましい配置構成が示されており、そこではヘリックスまたはスパイラル構造40が円筒体33の長手に沿って延び出し、冷媒が流れることができる長さに沿ってスパイラルまたはヘリカル経路が形成される。これは、冷媒が冷媒スペース35から出ていくのに掛かる時間を増加させることができ、冷媒スペース35内の冷媒がより多くの熱を吸収して熱を散逸させることを可能にする。このようなヘリカルまたはスパイラル構造に対する代替え的な構成は、冷媒がリニアモータの対向する端部間のフランジまたはフィンを通って流れることを可能とするために、互いに平行で離間した円筒形状のフランジまたはフィンの組を含み、それは開口部または破れ部を含む。これらの構成は、液冷または空冷で使用することができる。他の配置構成では、冷媒スペースを通る冷媒の流れの速度を遅くし、乱流を発生させることを目的として、または冷媒を冷媒スペース35まわりに完全に均一に通流させることを保証するために、冷媒スペース35内に回旋状の経路を形成するために用いることができ、巻線32のまわりに配置される。
【0034】
重要なのは、ハウジング内面38が実質的に円筒形であり、これにより冷媒スペース35も実質的に円筒形の形状に形成されていること、および上述したようにヘリカル(螺旋状)またはスパイラル(渦巻状)の構造あるいはフランジまたはフィンが存在しているにもかかわらず冷媒スペース35が巻線32の全長にわたって実質的に一定の断面に形成されていることである。
【0035】
図4を参照すると、円筒体33の外面36に形成されたスパイラル40を示すために、円筒体33を円筒形ハウジング37から取り外したところを示している。スパイラル40の外面41は、ハウジング37の内面38に極めて近接して密接にフィットされるかまたは近接する高さにある。この近接フィットは、外面41の頂部上のスパイラル40を通る冷媒流体の漏れ出しを防止することを意図している。いくらかの漏れ出しは許容できるが、冷媒の大部分はスパイラル40に沿ってリニアモータ30の一方の端部から他方の端部まで螺旋状の経路をとることが意図されている。
【0036】
図4中では明らかでないが、巻線32は円筒体33内において半径方向にある。
【0037】
また、図4中では明らかでないが、冷媒スペース35からリニアモータ30の外部への熱移動を低減する目的のために、ハウジング37の内面38に塗布された断熱層がある。
【0038】
また、図4は円筒形ハウジング37が一体的に形成された機械構成部品45を示している。ハウジング37の内面38および外面39もまた図4中に示されている。
【0039】
図4の構成の代わりに、ハウジング37は、機械構成部品45に適合しうる締結具により機械構成部品45の端部または下面に取り付けることができる。
【0040】
リニアモータ30の他の構成要素はハウジング37の外部に組み立てられており、図4ではハウジング37内への挿入の準備が整えられている。図4には、ハウジング37の外面39が円筒形状である必要はなく、むしろハウジング外面39は機械構成部品45への取付けに適した形状または輪郭を含み、冷媒の入口および出口ポートのような他の部品をハウジング37に取り付けるのに適することを都合よく示している。
【0041】
図5に示す円筒体47の形態は、図4の円筒体33に非常に類似しているが、本体47の長手方向に延び出すフィン48の使用を示す。フィン48は、冷媒を一方向に(図示した実施形態では軸方向に)向けて隣接する一対のフィンの間に導くものであるが、図示した終点よりも手前でフィンのうちのいくつかを終端させることにより、隣接する一対のフィンに沿って冷媒が戻る動きとなるようにフィンを構成することができる。
【0042】
図4に戻ると、本発明の第2の実施形態の例も示されており、リニアモータ30は、円筒体33の一方の端部に取り付けられ、ネジ開口51を含む取付フランジ50を有する。これらのネジ開口51は、ハウジング37の取付面54のネジ穴53に螺合されるネジ52を受けるものである。ネジ52の代わりとしてスタッド、溶接、または接着の採用が挙げられる。図示された構成は、円筒体33およびハウジング37の内部で関連する部品またはハウジング37に対して関連する部品を機械構成部品45にしっかりと固定することを可能にする。図示の構成では、スクリュウアクセスがより難しくなり得る図2の配置構成と比べてみてもネジ52へのアクセスが容易に促進されることが理解される。
【0043】
フランジ50の形状が他の形状をとり得ることは明らかであり、また、より多くのまたはより少ない数のネジ穴とネジを用いることができることは明らかである。
【0044】
図6図6aに示す円筒体60は、図4の円筒体33と非常に類似しているが、対向する端部62と63との間の本体60を完全に貫通する長手スリットまたはギャップGを含んでいる(ギャップGをより良く説明するために図6aを参照のこと)。このような円筒体の形態は円筒体60内での電磁誘導の形成を排除するため、リニアモータの可動子と固定子との間の相対運動に逆向きに作用する磁場が発生しない。換言すれば、本発明のリニアモータでは、円筒体を円形に形成できるが、円筒体を長手方向に分割して電磁誘導(大きな渦電流)を防止し、高速適用のための大きなコギング力を排除することが有利である。
【0045】
図3図4のリニアモータ30の構成から、モータ30が巻線32の全周囲にわたって均一な熱の消散を提供できることが理解される。さらに、開示された構成により、冷媒スペースは、リニアモータと機械構成部品45のような他の機械構成部品との間に熱障壁を形成する。したがって、機械構成部品が熱に対して敏感である場合、リニアモータ30によって生成された熱は、これらの構成部品に影響を及ぼすようなところに蓄積されることがないか、または滞留することがない。ハウジング37の内面と接触する上述の断熱層を採用すると、モータ30の各端部での熱障壁の使用と同様にこれを助ける。さらに、円筒体33の一体部品として形成された(例えば機械加工または鋳造によって形成される)スパイラル40を設けることにより、冷媒スペース35をリニアモータ30と容易に一体化することができる。これは、冷媒アタッチメントがリニアモータのハウジングの壁に図1に示すように取り付けられている上述したような不利な欠点をもつ従来のリニアモータとは対照的である。
【0046】
図3図4に開示したリニアモータは、同じサイズの従来技術のリニアモータの力の出力(フォース出力)を増加させることが期待される。これは、フォース出力がモータによって引き出される電流量に比例するために発生する。電流と力が増加すると、熱も増加する。熱の一部が除去されると、熱の蓄積に伴う困難が実現されないために、電流を増加させることができる。
【0047】
さらに、取付フランジ50を用いる本発明開示の構成は、改善された性能のために、ボールネジ及びボールナットに代わるフランジ取付けされる本発明のリニアモータを可能にすることが期待される。
【0048】
本発明のリニアモータに使用することができ、図3および図4の実施形態に含まれる冷媒は、適当ないかなる形態の冷却液体であり得るか、またはその代替えとして空気冷却を用いることができる。上述のように、冷媒経路は必ずしもヘリックスまたはスパイラルの形状をとる必要はなく、むしろ冷媒スペースは単に開放円筒形空間であってもよく、または冷媒スペースを通る流れの向きを変えるかまたはその流れに乱流を発生させるための突起物、フィン、またはその他の撹乱物や障害物を含むことができる。
【0049】
本発明は、冷媒スペースまたはジャケットをリニアモータに一体化するという有利な点があり、代替え形態ではフランジ取付けを提供するものである。これらの改良点のそれぞれは、工作機械産業におけるリニアモータの利用に特に適するものである。リニアモータは、リニアモータが与える熱出力および取り付けの難しさの点で不利であることから、これまで提供されてきた利点があるにもかかわらず、これまでの工作機械産業界においては一般的なプラクティスでは採用されてこなかった。リニアモータの熱出力は、高精密機械、特に高精度の再現性が要求される機械でとくに問題になる。そのタイプの機械ではリニアモータからの熱出力の結果として生じる構成部品の熱成長を許容できない。リニアモータが工作機械産業内で実施されてきたところでは、これまでに提供されていた貧弱な熱散逸の対策では、モータと機械構成部品との間の熱伝導を最小にするために使用される冷却装置(チラーシステム)を部位ごとに別々に設ける必要性があった。不都合なことにこれはコストと複雑さを増大させる。
【0050】
本明細書に記載された発明は、具体的に記載されたもの以外の変形、修正及び/又は付加を受け入れる余地があり、本発明はこれらの変形、修正及び/又は付加を本開示の範囲に含むものと理解されるべきである。
【0051】
本明細書の記述説明を通して、「有する(comprise)」という用語およびその用語の変形である「有する(comprises)」および「有する(comprising)」は、他の付加物または構成部品または整数を排除することを意図していない。
以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1]可動子および固定子を含み、前記可動子は細長い円形のボアを形成する円筒体を有し、前記固定子は前記ボア内に設けられた細長いシャフトであり、前記円筒体は複数の電気巻線を含み、前記シャフトは同期または可変リラクタンストポロジーを含むかまたは複数の磁石を含み、前記巻線の電気的な付勢により前記円筒体と前記シャフトとの間の相対運動および/または力の発生がもたらされ、前記円筒体はその内部に面する円筒形内面と該円筒体との間に形成される冷媒スペースを有するハウジング内に配置され、前記冷媒スペースは前記円筒体の長さの少なくとも大部分に沿って形成され、前記冷媒スペースは実質的に円筒形状でかつ実質的に一定の断面を有する、ことを特徴とするリニアモータ。
[2]前記円筒体はシリンダを含み、前記巻線は前記シリンダ内に配置され、前記冷媒スペースは前記シリンダの前記巻線に対して対向配置されることを特徴とする[1]に記載のリニアモータ。
[3]前記シリンダは前記巻線の外面と接触し、これにより前記巻線からの熱は前記巻線から前記シリンダへ直接伝えられて前記冷媒スペース内に散逸されることを特徴とする[2]に記載のリニアモータ。
[4]前記巻線は樹脂中に浸漬されたものであり、前記シリンダは前記巻線の最外面で前記樹脂と接触するものであることを特徴とする[2]または[3]のいずれか1に記載のリニアモータ。
[5]前記シリンダは前記巻線の外面から離間しており、前記シリンダの対向面と前記巻線との間に円筒状のギャップが形成されていることを特徴とする[2]に記載のリニアモータ。
[6]前記ハウジングの円筒状の内面に取り付けられた断熱層を有し、前記断熱層は熱伝導率が低いことを特徴とする[1]乃至[5]のいずれか1に記載のリニアモータ。
[7]前記リニアモータの対向端部は、該モータの各端部に熱障壁を形成するための断熱層または断熱材料でできていることを特徴とする[1]乃至[6]のいずれか1に記載のリニアモータ。
[8]前記リニアモータの対向端部は、該モータの各端部に導電性バリアを形成するための電気絶縁層または電気絶縁材料でできていることを特徴とする[1]乃至[6]のいずれか1に記載のリニアモータ。
[9]前記冷媒スペースは、入口と出口を含むことを特徴とする[1]乃至[8]のいずれか1に記載のリニアモータ。
[10]前記冷媒スペースは、その全長を通して開放されていることを特徴とする[1]乃至[9]のいずれか1項に記載のリニアモータ。
[11]前記冷媒スペースは、流路を含むか、または該冷媒スペースを通る冷媒の流れを誘導または妨害するための障害物を含むことを特徴とする[1]乃至[9]のいずれか1に記載のリニアモータ。
[12]前記冷媒スペースは、螺旋状または渦巻状の通路において前記入口と前記出口との間に冷媒の流れを導くスパイラルまたはヘリックスを含むことを特徴とする[1]乃至[9]のいずれか1に記載のリニアモータ。
[13]前記円筒体は、該円筒体内に電磁誘導を防止するための長手ギャップを形成するために、該円筒体の対向端部間において長手方向に分割されていることを特徴とする[1]乃至[12]のいずれか1に記載のリニアモータ。
[14]前記ハウジングは対向する第1及び第2の端部を有し、前記円筒体は該円筒体を前記ハウジング内に設置するために前記第1及び第2の端部の一方に取り付けるためのフランジを含むことを特徴とする[1]乃至[13]のいずれか1に記載のリニアモータ。
[15]細長い円形ボアを形成する円筒体と、前記ボア内に配置された細長いシャフトとを具備し、前記円筒体は複数の電気巻線を含み、前記シャフトは複数の磁石を含み、前記巻線の電気的付勢により前記円筒体と前記シャフトとの間の相対運動がもたらされ、前記円筒体は対向する第1及び第2の端部を有するハウジング内に設けられ、前記円筒体は該円筒体を前記ハウジングのなかに設置するために前記第1及び第2の端部の一方に取り付けるためのフランジを含むことを特徴とするリニアモータ。
【符号の説明】
【0052】
30…リニアモータ、31…ボア、32…巻線、33…円筒体、34…巻線の外面、35…冷媒スペース、36…円筒体の外面、37…ハウジング、38…ハウジングの内面、39…ハウジングの外面、40…スパイラルまたはヘリックス構造(螺旋構造)、41…螺旋構造の外面、45…機械構成部品、47…円筒体、48…フィン、50…フランジ、51…開口、52…ネジ、53…ネジ穴、54…取付面、60…円筒体、62,63…端部、G…ギャップ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図6a