【文献】
各種物質の性質:非金属固体の性質、八光電機、[online]、平成26年4月9日、[平成31年3月20日検索]、インターネット<URL: https://www.hakko.co.jp/qa/qakit/html/h01010.htm>
【文献】
フッ素樹脂特性表、株式会社大東化成、[online]、平成26年4月6日、[平成31年3月20日検索]、インターネット<URL: http://www/daitohchemical.jp/product12.html>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記プロセッサーは、利用者が入力した試料容器のタイプに応じてライブラリにアクセスして平均解凍時間を特定し、特定された平均解凍時間を解凍開始時間に足すことによって、解凍終了時間を確定するように構成されている、
請求項35に記載のシステム。
前記プロセッサーは、記録された温度測定結果によって得られた加熱曲線の一次導関数における本質的な変化を特定することによって凍結試料の解凍開始時間を確定するように構成されている、
請求項30に記載のシステム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本特許に使われている用語「発明」(invention)、「当該発明」(the invention)、「この発明」(this invention)、及び「本発明」(the present invention)は、本特許及び特許請求の範囲の全ての内容を概括的に指すことを意図している。これらの用語を含む記述は、本特許に記載された内容を限定する又は特許請求の意義又は範囲を限定するものではないように理解されるべきである。本特許に含まれる本発明の実施形態は、本発明の概要ではなく、以下の請求項によって定義される。本発明の概要は、本発明に係る種々の方面の高水準の概観であって、以下の詳細の記述部分において更に記載されるいくつかの概念を紹介する。本発明の概要は、請求項の内容の要部又は基本的特徴を特定する意図ではなく、請求項の内容の範囲を分離して判断するために利用される意図でもない。本発明の内容は、本特許の全体、任意の又は全ての図面、及び各請求項における適切な部分を参照して理解されるべきである。
【0007】
細胞の解凍にあたって、従来技術では、温水浴(例えば、37℃)において、最後の僅かの氷が溶けそうな時点まで急速に細胞を暖め、その後増殖培地中に細胞をゆっくり希釈する。試料を暖めすぎると、細胞が代謝し始め、凍結プロセスにおいて利用されたDMSO(ジメチルスルホキシド:dimethyl sulfoxide)によって細胞中毒が生じる。一般に、凍結保存された細胞及び組織の解凍は、研究室の技術者によって実行され、実際の操作は、個々の技術者によって異なり、技術力にも依存する。試料解凍の完了は、一般に個人の技術者によって主観的に判断されるため、解凍速度の相違又は試料を暖めすぎる場合が生じる。水浴及びバイアル挿入の手動制御を利用して、理論的に再現可能な解凍プロフィールが実現可能であるが、技術的及び操作順守のレベルに相違が推測される。特に頻繁に水浴からバイアルを外して解凍状態を観察する必要がある場合は、標準的な解凍プロフィールからほぼ確実に逸脱することになる。水浴からバイアルを外して、水浴からバイアルへの熱エネルギー伝導を中断させ、解凍状態を目視で判断することは通常困難であり、バイアルラベル及びバイアル製品の付加的な特徴として提供された印字された表面が存在する場合に、判断しづらい可能性がある。更に、水浴は、汚染源にもなり得る。バイアルの本体とキャップとの結合部分を不注意に水浸することは、バイアルのキャップを外すときに水浴の液体をバイアルの内容物への混入をもたらすことになる。
【0008】
簡便で、自動的、且つ/又はより一貫性のある試料解凍を提供するシステム、装置、及び方法は、有効的であり、細胞の蘇生率を向上させることができる。また、簡単に構成された簡便な操作方法と自律的に機能する装置とを組み合わせることによって、学術及び/又は臨床を統合した標準的な解凍プロセスに適応する方法を提供することができ、実験結果と治療効果との相違を生じさせる1つの原因を回避することができる。試料バイアルの解凍プロセスの自動化及び標準化を提供する装置及び方法は、目的達成するための実施における複数の課題を解決できる。本発明の実施形態は、1つ以上のこれらの課題に取り組む。実質的な解凍(例えば、僅かに一部の試料がまだ固相状態である、又は試料の固相から液相への相転移が充分に完了したとき)の後に加熱が中断される解凍プロセスを再現するために、解凍システムは、1つ以上のセンサ及び/又は解凍アルゴリズムを利用して解凍プロセスにおける様々な状態を判断してもよい。いくつかの実施形態において、解凍期間、凍結保護剤に触れる期間、及び解凍プロセス期間内に、液体温度の上昇に伴う細胞内氷晶の成長の影響に易感染の範囲が存在するため、一定種類の細胞又は混合細胞に対して、均一の回復状態を得るためには、時間に関する解凍温度の上昇プロフィールに対して密接な制御が重要である。
【0009】
従って、本発明のいくつかの実施形態において、一貫した均一の条件下で試料を解凍するためのシステム及び方法が提供される。通常、凍結温度に保存されている試料は、回復が実行されるときに、挿入されるヒーターから遠く離れる場所にある。解凍の開始が早すぎないこと又は−75℃以上の温度に不要な長い時間を費やさないことを保証するために、試料が搬送される間の温度を規制するためのシステムを構築する必要がある。理想的に、凍結保存から回収される時間と、解凍プロセスが開始される時間との間に、試料が凍結保存液のガラス転換温度(約−150℃)以下に保持されるべきであるが、多数の細胞培養液は、回復及び培養期間における細胞の生存率は、検知可能レベルの低減がなく、−150℃〜−75℃の温度範囲で少なくとも数日の一時保存が可能である。このような試料に対して、約−75℃の搬送及び一時保存温度が、冷却剤として使われる固体二酸化炭素の相転移温度に一致するため、容易に適用されている。より温度に敏感の試料に対して、液体窒素を冷却剤として利用することによって、約−195℃の搬送及び一時保存温度が得られる。システムは、−75℃又はそれ以下の温度において試料を熱平衡させるための試料バイアルを受け入れる容器を備えてもよく、試料を保持し、解凍するための試料ベッセルを受け入れる容器を備えてもよい。いくつかの実施形態において、物理的に試料ベッセルの外側面に接触している試料ホルダーの接触面(以下「ウオーミングブロック」と称す)は、一定の温度に加熱される(例えば、37℃)。マイクロプロセッサーは、試料容器ホルダーに接続され、当該プロセッサーは、予測解凍モデルを用いて試料解凍プロセスの終了時間を推定してもよい。予測解凍モデルは、部分的に解凍プロセスの開始時間に基づいて解凍完了時間を推定してもよい。いくつかの実施形態において、実験値から得られたルックアップデータテーブル(look-up data table)を参照することによって、一定の加熱温度における、一定の試料容量ペイロードを含有する一定の試料容器フォーマットに係る予め決められた平均解凍時間によって、解凍完了時間が得られる。他の実施形態において、本発明は、試料ベッセルの外側面に接触し続ける温度センサからデータを受信し、実験データに基づいて試料の固相から液相への相転移の開始を確定してもよく、更に同等の試料質量及びバイアル構造に対して実験的に得られた相転移期間と組み合わせることによって、相転移の完了又は完了付近の時間を推定する。他の実施形態において、動作可能に試料ベッセルに接触している(例えば、外側面に直接接触する、非接触の赤外線熱センサ又はそのようなものを通じて接触する)温度センサから受信したデータの分析に基づいた推定計算によって、解凍完了時間を全て確定してもよい。他の実施形態において、相転移期間の終点は、データストリームにおけるノイズ信号によって検出される。前記ノイズ信号は、バイアル内の固相残留物のランダムな運動によって生じたものであって、動作可能に試料ベッセルに接触している温度センサによって検知される。いくつかの実施形態において、バイアル外側面温度センサは、バイアルの側面に接触し、他の実施形態において、温度センサは、バイアルの底面に接触する。他の実施形態において、試料ベッセルの内容物の温度は、物理的に試料ベッセルの内部の中央に位置するセンサによって測定され、当該センサは、ベッセルの外部の連続延伸である材料によって覆われてベッセルの内容物に断熱される。いくつかの実施形態において、バイアル外側面センサは、解凍装置の一構成部であってもよく、他の実施形態において、前記センサは、ベッセルの一構成部である。センサが試料ベッセルの一構成部である場合は、センサは、解凍装置への接続(例えば、電気、無線、又は光接続)を備え、その接続を通じてデータ交換が行われてもよい。いくつかの実施形態において、データストリームは、検温データのみを含み、他の実施形態において、データストリームは、付加情報、例えば、以下に限定されないが、ベッセル追跡情報、バイアル内容物の由来及び組成、及び保管歴チェーンを含んでもよい。いくつかの実施形態において、温度センサは、熱電対、サーミスタ、及び抵抗センサであってもよく、他の実施形態において、バイアル温度は、赤外非接触温度検知器によって検知される。
【0010】
いくつかの実施形態において、1つ以上の温度トランスデューサーが備えられ、ウオーミングブロックの温度を監視するために用いられる。いくつかの実施形態において、ウオーミングブロックの温度は、ウオーミングブロック温度トランスデューサーから温度信号のフィードバックを受信するマイクロプロセッサーによって制御される。システムは、試料及び/又は試料容器の1つ以上の温度を記録するための1つ以上のトランスデューサーを備えてもよい。いくつかの実施形態において、1つ以上のトランスデューサーは、試料容器の外側面の温度を測定する及び/又は記録するために設けられてもよい。いくつかの実施形態において、1つ以上のトランスデューサーは、試料の温度を測定する及び/又は記録するために設けられてもよい。
【0011】
いくつかの実施形態において、システムは、ユーザーインターフェースを備えてもよく、試料及び/又は試料容器の温度を記録する前に、当該ユーザーインターフェースを通じて利用者の入力を受信してもよい。代替的に、システムは、試料容器が試料ホルダーに挿入された後に、自動的にトリガーされ、試料及び/又は試料容器の温度の記録を開始してもよい。いくつかの実施形態において、システムは、自動トリガー機構のみを利用して解凍期間の開始を合図してもよい。いくつかの実施形態において、システムは、自動トリガー機構を利用して解凍期間の開始を合図し、更に時間値定数で開始信号と組み合わせることによって解凍プロセスの完了を確定してもよい。他の実施形態において、試料容器の外側面の温度測定のアルゴリズム分析を利用して、試料の固相から液相への相転移期間の開始時及び終了時を確定する。試料が固相状態のみである期間における温度の上昇は、線形時間不変集中システム式によってモデル化されてもよく、線形時間不変集中システム式における時間係数は、温度上昇の速度を制御する。他の実施形態において、解凍期間の開始は、線形時間不変集中システム式における時間係数を変化させ、線形時間不変集中システム式の温度出力値がバイアル表面温度センサから得られた時間−温度データの固相部分に重ね合わせることによって時間係数の値を計算し、複数の時間係数の値を用いて固相から液相への相転移の開始時間を示してもよい。他の実施形態において、自動解凍システムは、解凍挿入信号、時間値、及び試料容器表面の温度データのアルゴリズム分析の組み合わせを利用して解凍プロセスの開始時及び終了時を確定してもよい。
【0012】
いくつかの実施形態において、凍結保存システムから回収された後に、試料がドライアイスの上に設置され、ドライアイスに囲まれているアルミニウム合金ホルダー(「平衡ブロック」)に試料を挿入し、凍結試料バイアルの温度を約−78℃と−75℃との間に平衡させる。本実施形態において、バイアルは、平衡ブロックから外され、直ちに一定の既知温度のウオーミングブロック内に設置される。本実施形態及び方法を利用すれば、一定の外形のバイアル及びペイロードに対して、非常に均一で、推定可能な解凍期間(総解凍期間)を確定することができ、従って、ウオーミングブロックに挿入された後の時間のみによって解凍の完了を確定することができる。他の実施形態において、平衡ブロック内で温度平衡させ、ウオーミングブロック内に挿入された後、総解凍期間とバイアル外側の温度データのアルゴリズム分析との組み合わせによって解凍期間を確定してもよい、従って、解凍期間推定システムの内部自己参照検査が提供されている。
【0013】
いくつかの実施形態において、ウオーミングブロックは、複数の適切な寸法の受器穴を設けることによって、複数の試料容器の外形(例えば、バイアル、ベッセル、バッグ、またはそのようなもの)を受け入れるように構成されている。他の実施形態において、ウオーミングブロックは、1つの試料容器のみを受け入れるように構成され、当該ウオーミングブロックのみに対応する解凍試料容器の適切な寸法が決められている。他の実施形態において、具体的な試料容器のために設計された適切なバイアルアダプタを交換することによって、ウオーミングブロックは、複数の試料容器のサイズ及び外形を受け入れるように設計されている。複数の試料容器のサイズ及び外形を受け入れるために、ウオーミングブロックは選択的に、モーフィングコンタクト(morphing contacts)、フレキシブルラップ(flexible wraps)、回転ブロックフェース(rotating block faces)、ヒートローラ(heat rollers)、IRヒーター(IR heaters)、及び/又はスクロールジョーチャック(scroll jaw chucks)を利用してもよい。いくつかの実施形態において、システムは、部分的に試料容器のタイプに基づいて完了時間を調節してもよい。選択的に、システムは、自動的に解凍される試料容器のタイプを判断するように構成されてもよい。例えば、ある試料容器は、システムのバーコードリーダー又はRFIDチップセンサによって読取可能な1Dバーコード、2Dバーコード、RFIDチップ、又は他のコンピュータ可読印証を有してもよい。容器のバーコード、RFIDチップ、又は他のコンピュータ可読印証は、容器の解凍プロフィールにリンクしてもよく、システムが具体的な容器に係る解凍期間、又は具体的な容器のタイプに係る解凍終了時間を自動的に確定することができる(例えば、ルックアップテーブル、式、又はそのようなものに通じて)。いくつかの実施形態において、ルックアップテーブルは、数学関数によって定義されてもよい。選択的に、解凍される試料容器のタイプを特定するために、システムは、ユーザーインターフェースを通じて利用者の入力を受信してもよい。いくつかの実施形態において、解凍終了時間及び総解凍時間は、ベッセル外側面の開始温度、ウオーミングブロックの温度(例えば、非柔軟性固体材料)、及びベッセルのタイプによって確定されてもよい。
【0014】
いくつかの実施形態において、ウオーミングブロックの試料受器穴は、熱伝導性柔軟性材料ライニングを備え、試料容器との均一且つ再現可能な熱接触を提供する。いくつかの実施形態において、ウオーミングブロックは、二部に分けられ、二部が分割された場合に、試料受器穴の内壁は、試料容器に非接触又は最小に接触し、試料容器の挿入又は受器穴から外れることが容易にできるようになるとともに、決められた時間に解凍プロセスを開始する手段、及びウオーミングブロックから試料バイアルへの熱エネルギー流入を中断させる手段が提供される。いくつかの実施形態において、ウオーミングブロックの試料バイアル受器穴は、試料受器穴の中心軸線に一致する縦方向の平面によって分割される。他の実施形態において、ウオーミングブロックは、二部以上に分割され(例えば、三部、四部、又は更に多い部分)、一時的にウオーミングブロックを横方向へ又は角度方向へ移動させることによって、ウオーミングブロックの試料バイアル受器穴と試料バイアルの外壁との間に選択的に空間を導入することができる。いくつかの実施形態において、ウオーミングブロックセグメントは、スライド機構、ヒンジ結合、動的係合、液圧機構、電気ソレノイド機構、ねじ機構、磁性係合、又はこれらの任意の組み合わせなどの係合機構によって接続されている。いくつかの実施形態において、ウオーミングブロックの試料バイアル受器穴に試料バイアルが挿入されるとウオーミングブロックの分割されたパーツが自動的に閉止し、試料容器の全ての又は大部分の側面に効率的に接触するように構成されている。
【0015】
本発明のいくつかの実施形態において、音声又は可視フィードバックが提供され、装置の状態及び試料の解凍プロセスの状態を利用者に知らせる。いくつかの実施形態において、所望の融解プロセスの終点に達すと、可視又は音声信号を利用したアラートが利用者に提供される。
【0016】
いくつかの実施形態において、本発明は、オン-オフ状態の選択以外に利用者によって入力されることがなく、普通のタイプ及び形状の試料バイアルに適応する。他の実施形態において、本発明は、利用者からの入力を受ける。いくつかの実施形態において、予測解凍モデルは、以下に限定されないが、利用者の入力によって調整され、利用者の入力によって、試料を保持する試料容器のタイプ、試料容器にラベルの存在、試料容器の充填レベル、及び/又はウオーミングブロックとベッセルとの間の熱伝導性媒体の使用経過期日などについて説明される。
【0017】
オプションで、融解試料が残りの固相が所望のレベルまでに達したときに、システムは、利用者にアラートを提供してもよい。いくつかの実施形態において、所望の状態終点は、固相が固体材料の開始時の総量のごく一部である状態である。他の実施形態において、解凍プロセスの所望の終点は、溶液が完全に液相になったときであってもよい。いくつかの実施形態において、システムによって提供される終点アラートは、音声又は可視表示、或いは音声及び可視信号の組み合わせであってもよい。他の実施形態において、終点アラートは、遠隔の受信機に無線伝送され、解凍装置の可視又は音声通知範囲外にいる操作者を呼び出してもよい。いくつかの実施形態において、アラート信号は、試料バイアルがウオーミングブロックから外されることによって終了される。オプションで、システムは、1つ以上の加熱面を容器から自動的に離して、容器の加熱を自動的に軽減させてもよい。いくつかの実施形態において、システムは、所望の終点で解凍を終了した後に、1つ以上の加熱面を容器に接触させて、試料を特定の温度に維持又は保持させるように構成されてもよい。
【0018】
本発明のいくつかの態様において、試料容器内の試料を解凍する方法が提供される。前記解凍方法は、ウオーミングブロックを加熱し、ウオーミングブロック内に試料容器を受け入れるステップを含む。その後、試料容器及び/又は試料に対して温度測定を行ってもよい。プロセスの残留物のために時間間隔値を利用してトリガーポイントを決めてもよい。例えば、解凍開始時間(例えば、相転移の開始時)は、解凍プロセスの終点を確定する時間間隔の開始時のトリガーポイントであってもよい。解凍開始時間は、温度測定に基づいて決められてもよい。試料及び/又は試料容器に関する情報は、受信されてもよい。解凍完了時間は、部分的に解凍開始時間によって決められてもよい。解凍完了時間は、試料及び/又は試料容器に関する情報を受信する毎に調整されてもよい。利用者にアラート信号を提供して解凍完了時間を知らせてもよい。
【0019】
解凍期間の推定は、均一の開始温度、均一のウオーミングブロック温度、及び均一の試料バイアル構造のみによって非常に容易にできるため、本発明の他の態様において、ドライアイスを直接に試料バイアルに接触させることなく、試料バイアルを開始時の超低温標準温度ウェイポイントに平衡させるための装置及び方法が提供される。本発明のいくつかの態様において、断熱容器が設けられ、前記断熱容器の内部に固体二酸化炭素又はドライアイスが設置されてもよく、前記断熱容器の上部に、試料バイアルの熱伝導性容器が設置され、或いは埋め込まれてもよい。本発明の他の態様において、凍結温度の極低温貯蔵から凍結保存されている試料標本を回収し、解凍プロセスが開始する前に再び試料バイアルを超低温標準温度ウェイポイントに平衡させる方法が提供される。そうすることによって、その後試料を標準化した均一温度のウオーミングブロックに平衡させ、解凍プロセス期間は、既知の時間係数のみに基づいて推定することができる。本発明の他の実施態様において、前述した方法が応用されたうえに、試料バイアルの外側面の温度測定データを用いて、コンピュータ分析によって解凍時間が推定できる更なる高性能が提供される。
【0020】
更に本発明の実施形態において、ベッセル内の試料を固相から液相に変換させる装置が提供されてもよい。当該装置は、柔軟性固体材料によって形成されたベッセルを受け入れるための容器と、前記柔軟性固体材料を試料の融点よりも高い温度まで加熱するヒーターとを備えてもよい。柔軟性固体材料によって形成された容器にベッセルが挿入されたときに、前記柔軟性固体材料は、ベッセルと非柔軟性固体材料の間に挟まれてもよい。非柔軟性固体材料は、熱伝導率が10W/(m・k)と410W/(m・k)との間の材料を含み、典型的に、熱伝導率が100W/(m・k)と300W/(m・k)との間であり、いくつかの態様において、熱伝導率が150W/(m・k)と180W/(m・k)との間である。前記範囲内の熱伝導率を有する材料は、ショアージュロメーター(Shore durometer)のスケールDの値が75より大きい材料硬度を示し、ベッセルの表面に合わせた精密公差に加工された場合でも、ベッセルと固体容器との間に微細なエアギャップが形成され、材料の界面を渡る熱伝導パスの中断をもたらす原因となり、熱抵抗における発生の程度及び頻度の予期できない変化が起こされる。更に、凍結保存ベッセルの全体の形状及び寸法が類似であっても、製造元による相違があり得る。従って、試料ベッセルと固体材料容器との間にコンプライアント材料の薄い層を挿入することによって、エアギャップのサイズ及び数を排除する又は実質的に軽減することができ、固体材料から試料ベッセル内容物への熱エネルギーが伝導される均一な経路が提供される。柔軟性材料の一例は、以下に限定されないが、Berquist社によって市販されているGap Pad VO(商標)である熱伝導性柔軟材料を含み、当該材料は、ASTM D2240テスト仕様によって判定されたショアー00硬度級25を有する。試料ベッセルと固体材料容器との間のエアギャップを排除するために必要な柔軟性材料は、薄い層であってもよいため、典型的な厚さは、以下に限定されないが、0.5mmと2mmとの間の厚さは、充分な熱接触を保証するために十分である。しかしながら、柔軟性材料は、固体材料よりも低い熱伝導率を示すため、0.01W/(m・k)よりも大きい熱伝導率を有する柔軟性材料が用いられてもよい。典型的な柔軟性材料は、0.1W/(m・k)よりも大きい熱伝導率を有する。いくつかの態様において、柔軟性材料は、0.5W/(m・k)よりも大きい熱伝導率を有する。
【0021】
柔軟性固体材料と非柔軟性固体材料とは、外されないように接合されてもよい。オプションで、柔軟性固体材料と非柔軟性固体材料とは、脱着可能のように接合されてもよい。
【0022】
いくつかの態様において、柔軟性固体材料及び非柔軟性固体材料は、2つ以上の別個のセグメントに分割されてもよい。これら別個のセグメントは、機械的な係合によって接続され、移行することによって、開放構造又は閉止構造が形成される。前記開放構造は、ベッセルを受け入れ又は解除するための構造であって、前記閉止構造は、受器を形成し、ベッセルを解凍するための構造である。前記柔軟性材料は、前記セグメントを開放構造から閉止構造へ移行させるときに、選択的にベッセルに接触するように設置され、又は、前記セグメントを閉止構造から開放構造へ移行させるときに、ベッセルに接触する状態から外されるように構成されてもよい。
【0023】
なお、ベッセルセンサを備えてもよく、前記ベッセルセンサは、前記セグメントが開放構造及び閉止構造の状態にあるときに、前記柔軟性固体材料のセグメントの間に前記ベッセルの存在を検知するために用いられる。
【0024】
また、マイクロコントローラを備えてもよく、前記セグメントが開放構造の状態にあるときに、前記マイクロコントローラは、前記開放状態のセグメントの間の位置にベッセルの設置を検知するように構成されてもよい。また、前記開放状態のセグメントの間の位置にベッセルが挿入されたときに、前記マイクロコントローラは、機械的な係合を作動してセグメントを閉止構造へ移行させ、セグメントの柔軟性固体材料をベッセルに接触させるための制御信号を伝達するように構成されてもよい。
【0025】
前記セグメントが閉止構造の状態であって、ベッセルが解凍されるときに、前記マイクロコントローラは、制御信号を伝達し、機械的な係合を作動してセグメントを開放構造へ移行させ、セグメントの柔軟性固体材料をベッセルに接触させないようにすることによって、ベッセルの解凍を中断するように構成されてもよい。
【0026】
いくつかの態様において、非柔軟性固体材料は、ヒーターによって加熱されてもよい。
【0027】
また、温度センサが備えられ、前記非柔軟性固体材料内に固定されてもよい。
前記温度センサは、前記非柔軟性固体材料から断熱され、且つ接触位置においてベッセルに接触するように固定されるように構成されることによって、前記温度センサによって検知された温度信号は、前記接触位置におけるベッセルの外側面の温度に対応してもよい。
【0028】
いくつかの態様において、解凍試料の相転移の開始は、ベッセル内の試料の最上位より低い位置においてベッセルに動作可能に接続されている1つ以上の温度センサからの温度データのアルゴリズム分析によって確定されてもよい。
【0029】
前記柔軟性材料を加熱することによって、ベッセルが放射状に加熱され、主にベッセルの充填レベルに依存しない解凍時間が実現されてもよい。
【0030】
更に、本発明の実施形態において、ベッセル内の試料の解凍方法が提供される。当該解凍方法は、ベッセルに動作可能に接続されている(例えば、ベッセル内の試料の最上位より下の位置においてベッセルの外側面に沿って、直接にベッセルの外側面に接続されている赤外温度センサ、又はそのようなもの)温度センサから温度データを受信するステップと、受信した温度データを処理することによってベッセル内の試料の固相から液相への相転移を特定するステップとを含む。解凍終了時間は、ベッセル内の試料の固相から液相への相転移の開始時間に基づいて算出されてもよい。
【0031】
更に、本発明の実施形態において、ベッセル内の試料の他の解凍方法が提供される。当該解凍方法は、試料及びベッセルを、中間温度に平衡させるステップを含み、当該中間温度は、試料の融解温度より低い温度であってもよい。従って、ベッセルの側面を解凍温度に保持されている固体材料に接触させてもよい。解凍温度は、試料の融解温度より5℃±2℃高い温度であってもよい。解凍プロセスにおける氷の再結晶によって生じるダメージを抑えるために、可能な限り早い解凍速度が望ましい。ベッセルの受器の温度を上げることは、解凍期間の短縮に有利であるが、一定のベッセルの形状、例えば円筒状のベッセルにおいて、固相試料の厚さは、直径1cmを超えており、内部の固相試料の融解過程は、温度勾配に伴い、ベッセルの内壁の温度が高く、中央部に向かって固相残留物の温度が次第に降下する。標準の1.8ml凍結バイアルの37℃水浴解凍において生じる温度勾配によって発生される液相試料の温度遷移は、樹立された細胞株の大半の生存率に影響を与えないようであるが、データセットは、包括的ではなく、細胞単離物及び初代培養体には確実な適応性がなく、低温5℃の一部の凍結保存流体において不利な結果が観察された。従って、一定の細胞源又はウィルス株のための最適な解凍速度は、特定の場合によるものであるが、受器の温度は、−1℃と100℃との間、典型的に20℃と55℃との間、いくつかの態様において、37℃と50℃との間にあると見られる。ベッセル内の試料の相転移の完了は、平衡温度及び加熱温度に基づいて算出された相転移期間の時間間隔によって推定されてもよい。ベッセル内の試料の相転移の推定完了時に信号が出力され、ベッセル内の試料の解凍が中断される。
【0032】
中間温度は、−78℃と−70℃との間であってもよい。固体二酸化炭素に接触している受け容器に前記試料ベッセルを設置することによって、前記中間温度の範囲内に試料を平衡させてもよい。受け容器及び前記固体二酸化炭素は、側面及び底面において断熱材によって囲まれてもよい。いくつかの態様において、前記断熱材は、ポリマー発泡材料を含み、以下に限定されないが、ポリエチレン発泡体、ポリウレタン発泡体、ポリビニル発泡体、ポリスチレン発泡体、及びこれらの組合せブレンドを含む。いくつかの実施形態において、断熱材は、ポリマー発泡材料のみを含み、他の実施形態において、断熱材は、硬質の内側と外側シェルと、その間に充填されているポリウレタン発泡体などの反応成型発泡体とを含む。他の実施形態において、断熱材は、ステンレス鋼真空容器を含む。
【0033】
いくつかの実施形態において、中間温度は、摂氏温度−196度と−180度との間であってもよい。液体窒素に直接に接触している受け容器に前記試料ベッセルを設置することによって、前記中間温度に試料を平衡させてもよい。受け容器と前記液体窒素とは、側面及び底面において断熱材によって囲まれてもよい。
【0034】
いくつかの実施形態において、前記方法は、温度センサからのデータを受信するステップを更に含む。前記温度センサは、ベッセルの外側面に接触するように固定されることによって、検知された温度信号は、前記ベッセルの外側面の温度に対応する。他の実施形態において,温度信号は、試料ベッセルに直接に接触していない赤外線熱センサによって検知され、ベッセルの内容物から光学的にベッセルの内壁を透過した赤外信号又は直接にベッセルの内壁から発された赤外信号を受信することによって得られる。算出された相転移期間の時間間隔は、受信した温度センサのデータに基づいて調整されてもよい。
【0035】
添付図面を参照しながら以下の詳細の説明を読むことによって、本発明についてよりよく理解できる。添付図面は、説明のためのみ提供されたものであり、本発明を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1A】熱エネルギーフローパターン及びバイアル温度の検知方法を説明するために用いられる典型的な凍結保存バイアルの解凍システムモデルを示す図。
【
図1B】動態熱エネルギーフローの条件下でウオーミングブロック温度から試料固相までの降温プロセスの概念図。
【
図1C】一実施形態に係るバイアル表面温度検知システムの断面図。
【
図2】一実施形態に係るドライアイス冷媒を利用してバイアル温度を約−77℃に平衡させるバイアル温度平衡装置を示す図。
【
図4】第2実施形態に係るバイアル温度調整装置を示す図。
【
図6】グラフAは、
図2及び
図3に示されている実施形態における冷却及び温度保持期間を示す図であり、グラフBは、試料バイアルの内容物が液体窒素から
図2及び
図3に示されている温度平衡装置に移転されたときの温度遷移の均一性を示す図である。
【
図7】一実施形態に係るバイアル解凍装置のスプリットブロックを示す図。
【
図9A】
図7及び
図8に示されている装置における複数の解凍イベントにおいて、試料バイアルの中心軸線と一致する方位における試料の中央深さに設置された熱電対によって検知された温度データを示すグラフ。
【
図9B】
図9Aと同じ深さで、同じ試料バイアルの内壁付近に、当該バイアルの中心軸線と平行して設置され、
図9Aと同様にデータを検知するために用いられる熱電対によって検知された温度データを示すグラフ。
【
図10】バイアルが37℃の水浴に浸漬された又は
図7及び
図8に示されている装置のウオーミングブロックに設置されたときに、
図9Bに示された解凍バイアルの内壁付近に設置された熱電対によって得られた一系列の温度変化データのプロフィールを示すグラフ。
【
図11】バイアルが37℃の水浴に浸漬された又は
図7及び
図8に示されている装置の45℃のウオーミングブロックに設置されたときに、解凍バイアルの内壁付近に設置された熱電対によって更に得られた一系列の温度変化データのプロフィールを示すグラフ。
【
図12】試料搭載の2つの異なるレベルにおいて保存バイアル内の熱伝導経路及び熱流量を示す図。
【
図13】バイアルが0.5mlのテスト溶液及び1.0mlのテスト溶液に注入され、45℃のスプリットウオーミングブロックに設置されたときに、バイアルの内壁付近に設置された熱電対によって得られた一系列の温度変化データのプロフィールを示すグラフ。
【
図14】
図1に示されている解凍試料バイアルの外壁に接触して設置された熱電対によって得られた温度プロフィールを示すグラフ。用いられたウオーミングブロックは、スプリットブロックモデルであって、バイアルの初期温度は、−77℃であった。
【
図15A】
図14に示されているバイアル外側面温度データをインプットとした場合、計算式により得られた時間係数値のアウトプットを示すグラフ。及び同じ計算式を用いて、
図14に示されたデータの固相部分に重ね合わせるように調整された可変パラメーターを有する線形時間不変式(LTI)をインプットとし場合に得られたグラフ。
【
図15B】パートAは、
図1に示されている解凍試料バイアルの外壁に接触して設置された熱電対によって検知されたデータを用いて得られた温度−時間プロットの固相部分を重ね合わせるように調整された可変パラメーターを利用して、線形時間不変(LTI)集中システム分析(LSA)により描画されたグラフ。パートBは、パートAに示されているLSA式のアウトプットにフィッティングしたプロットと、実際に検知されたその時間の温度データとの相違を示す温度−時間グラフ。このグラフは、試料の融解開始の時間点を示しており、グラフBのプロットに示されているように、予め設定された0.2の値を超えている。
【
図16】以下に限定されないが、本発明を利用して解凍できる3つの代表的な試料バイアルの寸法を示す図。以下のバイアルを含む:(A)基準容量1.8mlのねじ込みキャップ型の凍結保存バイアル、(B)基準容量2mlの隔壁キャップ型の凍結保存バイアル、(C)基準容量10mlの隔壁キャップ型の凍結保存バイアル。
【
図17】本発明に係る代表的な実施形態の外観を示す図。
【
図18】
図17に示されているデバイスの内部機構に係る代表的な実施形態の二方向の投影図。
【
図21】
図17から
図20に示される実施形態の解凍サイクルの最初の2つのステップ(ステップ0及びステップ1)を示す図。図示されているように(
図22及び
図23も同様)、6つのサイクルステップにおける機構の位置及び動作を明確に示すために、最前面のヒーターブロックハーフが外されている。
【
図22】
図21に示された解凍サイクルのステップに続き、ステップ2及びステップ3を示す図。
【
図23】
図22に示された解凍サイクルのステップに続き、ステップ2及びステップ3を示す図。
【
図24】二系列の解凍プロフィールの時間−温度プロットを示す図。第1系列では、解凍過程において45℃のウオーミングブロックの顎部が150秒間開放され、バイアルは、ウオーミングブロックの中に残される。第2系列では、解凍過程において45℃のウオーミングブロックの顎部が150秒間開放され、バイアルは、ウオーミングブロックから外され、室温下に保持される。比較例として、バイアルが、顎部が約5分間閉止された45℃のウオーミングブロックの中に残された場合のプロットも示されている。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本発明に係る実施形態の内容について以下に具体的に説明する。ここの説明は、本発明の特許請求の範囲を限定する意図ではない。クレームされた発明主題は、他の方法によって実施されてもよく、異なる要素又はステップが含まれてもよく、既存の又は将来の技術に結合して利用されてもよい。本明細書は、個々のステップの順序又は要素の配列について明白に説明しない限り、個々のステップ又は要素の間に特別な順序又は配列を暗示するように解釈されるべきではない。
【0038】
本発明のいくつかの実施形態において、試料が部分的に水浴に浸漬されることをもたらす可能性があるため、試料バイアルの外側面に液相の直接な接触が除外されている。これより、本発明に係る複数の実施形態において、試料バイアルの外側面、場合によっては試料バイアルとラベル又は収縮包装スリーブなどのラミネーションとの外側面は、固体材料のみに接触する。いくつかの実施形態において、バイアルの外側面に接触している固体材料は、均質の固体であり、他の場合は、前記固体材料は、混合物である。いくつかの実施形態において、固体材料は、熱伝導率が0.2W/(m・k)以上である。いくつかの実施形態において、固体材料は、アルミニウム、銅、亜鉛、マグネシウム、チタニウム、鉄、クロム、ニッケル、カーボン、及びこれらの合金を含む。他の実施形態において、固体材料は、人工合成の熱伝導性柔軟材料を含んでもよい、例えば、そして、以下に限定されないが、Berquist Companyにより提供されている、ブランド名がGap Pad VO(商標)であるシリコンポリマー発泡体であってもよい。いくつかの実施形態において、固体材料は、複数の材料の組み合わせ、例えば、そして、以下に限定されないが、熱伝導性柔軟材料と菌属合金との組み合わせを含む。いくつかの実施形態において、試料バイアルの外側面に接触している固体材料は、ポリマーシェル又は液体充填を含有するタンクを含む。他の実施形態において、固体材料は、ポリマーシェル又は液体充填を含有するタンクを含み、前記ポリマーシェル又はタンクは、その内部に包含されている試料バイアルに接触している、熱伝導性ライナーを有する柔軟性材料を含む。いくつかの実施形態において、ポリマーシェルの中の液体は、水又は水溶液であり、他の実施形態において、前記液体は、オイル又は液体有機物である。また、他の実施形態において、シェルはワックスに充填され、ある温度では液体であり、他の温度では固体である。
【0039】
いくつかの実施形態において、試料バイアル又は試料バイアルの一部は、継続的にバイアル周辺の固体材料に接触する。他の実施形態において、バイアルは、断続的に固体材料に接触する。いくつかの実施形態において、試料バイアルが部分的に直接固体材料に入り込み且つ密接に接触するように試料バイアルを受け入れるため、固体材料は、試料バイアルの外側面に密接にマッチするように設けられた凹部又はキャビティを有する。いくつかの実施形態において、コンテナキャビティは、1つ以上の側面及び1つの底面を含む。他の実施形態において、コンテナキャビティは、1つ以上の側面のみを含む。また、他の実施形態において、試料の挿入及び移動を容易にする、また、固体材料と試料バイアルとの間に熱伝導経路を中断するために、試料バイアルが内包されている固体材料は、分けられている。いくつかの実施形態において、コンテナの固体材料部分は、試料の挿入及び移動を容易にする、また、固体材料と試料バイアルとの間に熱伝導経路を中断するために分離された後に、容易に密接に結合された構造になるように再構成できるように、関連付けて制限されている。以下に限定されないが、いくつかの実施形態において、前記コンテナの固体材料部分は、スライド機構、ヒンジ機構、トラック機構、液圧又は気圧ピストン、レール、動的係合、ピン及びグルーブ結合、電磁、又は磁性インターフェースによって結合される。他の実施形態において、以下に限定されないが、前記コンテナの固体材料部分は、電気モータ、ソレノイド駆動器、気圧又は水力アクチュエーター、リニアアクチュエーターが直接又はギアシステム、動的係合、カムシステム、プッシュロッド、ケーブルシステム、及びねじ機構によって積極的に分離され又は結合される。
【0040】
いくつかの実施形態において、試料バイアルの固体材料コンテナは、試料バイアルが受け入れキャビティの中に設置されたときに、固体材料の温度を上昇させ、熱エネルギーを試料バイアル内に伝達するための1つ以上の加熱素子を備えている(以下「ウオーミングブロック」を称する)。いくつかのウオーミングブロックにおいて、加熱素子は、電気抵抗型加熱器であり、他のウオーミングブロックにおいて、加熱素子は、熱電素子型加熱器である。いくつかの実施形態において、ウオーミングブロックは、熱電素子によって交互的に加熱及び冷却される。いくつかの実施形態において、ウオーミングブロックは、1つ以上の温度センサを備え、ブロックの温度を検知し、マイクロコントローラにアナログ又はデジタル信号を提供する。マイクロコントローラは、熱電信号を中断して、加熱素子に提供するパワー又はデューティサイクルを調整し、ウオーミングブロックの温度を所望の温度に保持するように構成されている。
【0041】
いくつかの実施形態において、ウオーミングブロックは、1つ以上の温度センサを備え、これらの温度センサは、ウオーミングブロック材料に熱的に隔離され、試料バイアルの外側面に接触している。バイアルの表面の温度を確認し、且つ経時的にトレースすることができる(以下「バイアルセンサ」と称する)。いくつかの実施形態において、バイアルセンサは、熱電対であり、他の実施形態において、バイアルセンサは、サーミスタ又はRTDセンサである。また、他の実施形態において、バイアルの温度は、非接触赤外線熱センサによって検知される。
【0042】
低い温度、例えば、そして、以下に限定されないが、−77℃の平衡状態の円筒状の試料バイアルが、高い温度、例えば、そして、以下に限定されないが、45℃の平衡状態のウオーミングブロック、に挿入されたときに、熱エネルギーの再分布過程が始まり、最終的に複合体が全体的に同一の温度になる。ウオーミングブロックの温度、例えば、45℃が積極的に保持されている場合は、複合体が45℃の温度で平衡状態となる。熱エネルギーの再分布パターンは、複合体の中心軸線に向けて半径方向の熱エネルギーの転移又は流れるように考えられてもよい。
【0043】
ウオーミングブロックの代表的なモデルの正面の断面図が
図1AのパートAに示され、上面断面図は、
図1AのパートBに示されている。
図1Aを参照すれば、アルミニウム合金製の円筒状コンテナ120は、中央キャビティを備え、熱伝導性柔軟材料125のライナーは、中央キャビティの縦壁を囲み、サーミスタ温度センサ130は、熱伝導性柔軟材料125に設けられた開口部を通して中央キャビティまで差し込まれている。
図1Aを参照すれば、中央キャビティに、ねじ込みキャップ115によって封止されている試料バイアル110が設置され、バイアル110とキャップ115との組み合わせによって液相140と固相135を含む試料内容物が隔離されている。バイアルの内部は、気相体積145を更に含む。温度センサ130は、測定された温度がバイアルの外側面の温度であるように、試料バイアルの外側面に直接接触している。分割線150は、アルミニウム合金製コンテナ及び熱伝導性柔軟材料を二等分している。全体的に考えられるように、
図1Aに示されているコンポーネントの集合体は、以下の熱動態の説明に係るシステムを示している。
【0044】
図1Bは、
図1AのパートAと同様な図を示し、示された半径における具体的な材料の境界をマークしている。境界線180から185は、アルミニウム合金の領域を定義し、境界線175から180は、熱伝導性柔軟材料の領域を定義し、境界線170から175は、ポリプロピレン、ポリエチレン、又はポリプロピレン、ポリエチレン、及び他のプラスチック材料の混合物などによって構成された試料バイアル材料の領域を定義し、境界線165から170は、試料液相領域を定義し、境界線160から165は、試料固相領域を定義している。示されているモデルは、液相と固相とを両方含むため、示されている試料は、融解又は相転移プロセス途中の状態である。示されているシステムが熱エネルギーの再分布プロセス中の場合は、異なる材料の内部に動的な温度勾配が発生し、異なる材料の境界線における温度は、材料の熱抵抗に依存することになる。
図1BのパートBに示されているように、アルミニウム材料は、低い熱抵抗又は高い熱伝導率(約170W/(m・k))を有するため、材料中の温度が、概ね均一である。柔軟性材料は、比較的高い熱抵抗又は比較的低い熱伝導率(約0.8W/(m・k))を有するため、動的な熱フローに連れて、熱伝導性柔軟材料領域(175から180まで)に亘って温度低下が発生されている。最も高い熱抵抗又は最も低い熱伝導率(約0.2W/(m・k))を有するバイアルの壁材料領域(170から175まで)に亘って、更に大きな温度低下が発生されている。液相試料は、熱伝導性発泡体に近い熱抵抗値(熱伝導率約0.6W/(m・k))を有するため、液相試料領域(165から170まで)では、比較的浅い温度低下が発生されている。更に、固相試料は、液相に比べて低い熱抵抗(熱伝導率約2W/(m・k))を有するため、固相領域には、更に浅い温度低下が発生されている。異なる材料に亘って発生される温度低下の大きさは、ウオーミングブロックの温度T1と試料の温度T2との差の増加に伴って増加するため、試料バイアルがウオーミングブロックに設置された直後に異なる材料に亘って発生される温度低下値が最も大きく、システムが平衡温度に近い状態ではその温度低下値が最も小さい。熱エネルギー転移期間における任意の時間に、システムに含まれている個々の材料領域の相対的な温度低下は、個々の材料の熱抵抗の関数であり、その値は、熱エネルギー転移過程を通して一定である。従って、液相−固相の境界線165(r1)を除き、任意の一材料境界線における温度は、他の材料境界線における温度に比例すると考えられる。液相−固相の境界線165(r1)は、相転移期間を通して移動するため、半径の値が変化し、液相−固相の境界線における温度は、システムにおけるその境界線の位置に依存する。従って、熱伝導性柔軟材料の境界線175(r3)における時間−温度トレースは、バイアルの管壁−液相境界線における時間−温度トレースの正確な比例表示であり、液相の平均温度の近似値であってもよい。すなわち、解凍過程において、バイアルの外側の温度をモニタリングすることによって、バイアル内容物の近似的な時間−温度プロフィールが得られ、非侵襲的に試料の解凍過程を把握できる。
【0045】
試料バイアル及びその内容物を一の温度から第2温度まで昇温させるために必要な熱エネルギーは、試料バイアル及び含有する試料の熱容量のみによって決められる。従って、材料及び温度遷移の実現に必要な熱エネルギーが一定で、且つウオーミングブロックの初期温度及び試料バイアルの初期温度が定数である場合は、同一の試料に対して繰り返して行った凍結−解凍サイクルは、同様な時間−温度プロフィールが期待できる。また、複数の試料における、試料バイアルの寸法、バイアルの材料及び質量、試料のペイロード質量及び組成が均一であれば、同じ試料に対して凍結−解凍サイクルを繰り返して実行する場合でも、異なる試料に対して同様な凍結−解凍サイクルを実行する場合でも、同様な時間−温度プロフィールが得られる。従って、全ての試料を均一な初期温度に平衡させるためのステップ又は装置、及び正確且つ均一なウオーミングブロック温度によって、先行実験のみに基づいて、解凍の経過期間を推定することが可能になる。
【0046】
図1Cに、試料ベッセル表面の温度センサ(
図1A及び1Bの130で示されている)の一実施形態に係る詳細の断面が示されている。
図1Cを参照すれば、ガラス封止サーミスタバルブ132は、熱伝導性連結部131に直接に接触している。いくつかの実施形態において、熱伝導性連結部は、高熱伝導性材料、例えば、そして、以下に限定されないが、アルミニウム、銀、銅、又はアルミニウム、銀、銅を含む合金を含む。連結部131は、試料ベッセルの管壁110の外側面に直接に接触している。半固定の発泡体断熱スリーブ133は、連結部131を支えて試料ベッセルの表面に当て、断熱材料によって構成されたラムピストン(Ram piston)134によって押圧されるように固定されている。いくつかの実施形態において、ラム材料は、以下に限定されないが、アセタール又はフェノール類ポリマーである。ラムピストンは、スプリング136に押圧されるように設置され、スプリング136は、滑走ラム134とねじ込みプラグ137との間に挟まれるように設置され、ねじ込みプラグ137は、ウオーミングブロックの中のネジ付きアクセス穴の中に固定されている。ねじ込みプラグ137の中の貫通孔を通して、サーミスタのリード線139がブロックの外へ引出されている。熱伝導性発泡体125に設けられたギャップによって、連結部131が試料ベッセルの管壁110に直接に接触するとともに、ウオーミングブロック120からの熱エネルギーの流入が抑えられる。ウオーミングブロック120から、ラムピストン134、断熱スリーブ133、及び連結部131を通して、試料ベッセルの管壁110まで形成された熱エネルギーパスは、熱抵抗スタックを形成し、ピストン134とスリーブ133とを構成する熱抵抗性材料、及び連結部131を構成する熱伝導性材料を選択することによって、連結部の温度、そしてサーミスタバルブ132の温度は、試料ベッセル外側面110の温度と密着し、従って、サーミスタは、試料ベッセル表面の温度を密接に追うように温度を検知することができる。いくつかの実施形態において、厚さが0.005インチと0.04インチとの間の厚さを有する柔軟性材料の薄い層(図示せず)は、連結部131に接着され、連結部131と試料ベッセルの管壁110との間に挿入され、熱伝導率を増加させる。他の実施形態において、サーミスタ配置(131、132、133、134、136、137、139)の代わりに、赤外線熱センサが用いられる。凍結管の構造に使われる材料は、赤外線透明の材料を含んでもよいため、試料ベッセルの内容物の温度は、直接に赤外線によって測定することも可能である。試料ベッセルの材料が赤外線に不透明の場合、又は試料ベッセルが不透明のラベルを有する場合は、試料ベッセルの表面の温度が赤外線熱センサによって測定でき、固相から液相への相転移の進行を検知することができる。赤外線熱センサは、センサと試料ベッセルとの物理的な接触が不要のため、センサが試料ベッセルの管壁に圧力を加えことによって熱検知経路における熱導電率の変化が生じる問題、及び試料ベッセルの不適切な挿入によるセンサの損傷を回避することができる、といったメリットがある。
【0047】
図2に試料バイアルをレファレンス温度(又は中間温度)に平衡させるために用いられる装置が示されている。
図2を参照すれば、試料バイアル受器は、矩形状の固体材料215の上部ブロックと、水平方向に設けられているフランジ230を含み、フランジ230と上部ブロックとの組み合わせによって、試料受器ブロックが形成されている。上部ブロック215は、1つ以上の凹部220を有し、凹部220は、バイアルの内部の試料の上面がブロックの頂部表面以下に位置するように試料バイアルを受け入れて囲むために充分の直径及び深さを有する。いくつかの実施形態において、フランジ230と上部ブロック215とは、連続体物質のインターフェースで接続されている。他の実施形態において、上部ブロック215とフランジ230とは、分離された部分が、以下に限定されないが、機械ファスナー、接着剤、磁性ファスナー、又は鍛接によって接続されている。いくつかの実施形態において、上部ブロックに、温度センサが挿入され、且つ固定される孔(図示せず)が設けられている。いくつかの実施形態において、試料受器ブロックは、金属によって作製される。いくつかの実施形態において、前記金属は、アルミニウム、銅、マグネシウム、亜鉛、チタニウム、鉄、クロム、ニッケル、又はこれら金属の合金を含む。いくつかの実施形態において、受器ブロックの周辺及び底部は、断熱コンテナ210によって囲まれ、コンテナ210は、キャビティ245を備え、キャビティ245は、内側の高さが受器ブロックより1インチ以上高い。いくつかの実施形態において、断熱コンテナは、断熱発泡体を含む。いくつかの実施形態において、断熱発泡体は、ポリエチレン、ポリウレタン、又はポリスチレンを含み、他の実施形態において、断熱材料は、ポリエチレンポリマープレンドなどの混合材料を含む。いくつかの実施形態において、断熱コンテナは、カバーを備えている(図示せず)。受器ブロックは、断熱コンテナの内部に設置され、固体二酸化炭素又はドライアイス層225がフランジ230の横向きの側面の上下に設けられている。固体二酸化炭素が温度−78.5℃以上の表面に接触すると昇華が発生するため、固体二酸化炭素と表面との間にギャップが形成され、材料間の熱エネルギー伝導経路の直接な接触が中断される。重力の作用によって、ドライアイスと、受器ブロックの下表面、及び受器ブロック横向きフランジの上表面との直接な接触が維持されている。いくつかの実施形態において、受器ブロックは、以下に限定されないが、16W/(m・k)より大きい熱伝導率を有する固体材料、例えば、アルミニウム合金を含む。
図2に示されている受器ブロックは、頂部開口構造において、−77℃の安定温度を保つ。コンテナの内壁が受器ブロックより少なくとも1インチ高くなっているため、受器ブロックの下のドライアイスの量は、受器穴の中に設置される試料バイアルの全体が断熱コンテナの上面以下に位置し、試料が低温ガスに囲まれ、バイアルの上部を環境温度から断熱されるように制限される。このような構造では、バイアルの温度は、内部熱電対によって測定されているように、平衡状態になり、−77℃のレファレンス温度に保持される。このようにして、
図2に示されているレファレンス温度装置を利用することによって、試料解凍プロセスのために標準的な開始温度が提供され、解凍の経過期間のみに基づいて解凍状態を推定することが可能になる。
【0048】
図3には、
図2に示されている装置の寸法が示されている。本実施形態において、外側の幅が約7インチ、約5.5インチであり、深さが約3.5インチである。内部キャビティは、長さ約5.25インチであって、幅が約3.6インチであり、深さが約2.8インチである。受器ブロックは、長さ約5インチであって、幅が約3.4インチであり、深さが約1.35インチである。受器ブロックの試料バイアル受器穴は、直径が約0.55インチであって、深さが約1.1インチである。いくつかの実施形態において、受器ブロックの試料バイアル受器穴は、孔の底部に設けられた通路を含み、当該通路は、受器ブロックの下表面まで延びて、液体窒素などの冷却液体とともに効率的に受器ブロックを利用することが可能である。
図3によれば前記通路の直径は、約0.2インチである。示されている試料受器穴の直径は、標準的な実験室用ねじ込みキャップ型の凍結保存バイアルを受け入れるためであるが、試料受器穴の直径、間隔及び数は、他の寸法の試料バイアルに適応するように調整されてもよい。いくつかの実施形態において、試料受器穴は、試料バイアルのゴ−・ノーゴ−ゲージ(go no-go gauge)を提供するように調整され、これによって、利用者は、解凍プロセスに利用される予定のバイアルが解凍装置に対して大き過ぎる又は小さすぎるかを判断できる。
【0049】
図4に温度平衡装置の第2実施形態が示されている。本実施形態において、半径方向に分布されている試料バイアル受器穴440を含む円形の受器ブロック430が示されている。いくつかの実施形態において、受器ブロックは、中央孔450によって付属バイアル受器穴を備え、当該中央孔は、貫通孔であって、この孔を通じて受器ブロックの下にドライアイスの存在を確認するために用いられる。或いは、解凍装置に対応する適切なバイアルの直径を確認するためのゲージを提供する。受器ブロック430は、断熱コンテナ410の内部キャビティに設置されている。いくつかの実施形態において、受器ブロック430は、温度センサが挿入且つ固定されるための孔を備える(図示せず)。いくつかの実施形態において、断熱コンテナ410は、キャビティ壁の内側に拡張部420を備え、受器ブロック430を支持する又は受器ブロック430の移動を限定するために用いられる。他の実施形態において、断熱筐体410の内壁は、拡張部なしの円筒状である。いくつかの実施形態において、受器ブロック及び断熱コンテナは、
図2及び
図3に示された実施形態の記載と同様の材料を含む。いくつかの実施形態において、受器ブロック430は、底面に接触する円盤形状のフランジを備え(図示せず)、他の実施形態において、受器ブロックは、上部ブロックのみを備えている。
【0050】
図5は
図4に示されている装置の寸法を示している。断熱コンテナは、外径約5.5インチで、高さ約3.5インチである。その内部キャビティは、直径約2インチで、深さ約2.8インチである。受器ブロックは、外径約2.5インチであ、高さ約1.4インチである。受器ブロックのバイアル受器穴は、直径約0.51インチで、深さ約1.15インチである。中央キャビティは、直径約0.7インチであって、本実施形態に示されているように、ブロックの下面まで延びている。いくつかの実施形態において、受器ブロックのバイアル受器穴は、バイアル受器穴の底面を通って延びる通路470を備え、受器ラックが液体窒素などの液体冷却とともに利用される場合に、バイアル受器穴のフラッジングが可能である。いくつかの実施形態において、通路は、直径約0.2インチである。他の実施形態において、試料バイアル受器穴の底面は、通路を有しない中実体である。
【0051】
図6のグラフAは、
図2及び
図3に示されている実施形態に係る受器ブロックの温度データのグラフを示している。温度測定は、バイアル受器ブロックにおいて深さ0.5インチまであけられた受器穴に設置された熱電対センサによって行われた。受器ブロックは、厚さ約0.75インチのドライアイス層の上に設置され、更にドライアイスは、受器ブロックのフランジ部の上に、受器の頂部と同等のレベルまで設置されている。受器は、温度平衡を実現させる。グラフを参照すれば、受器ブロックは、約5分で−77℃の温度に達し、その後ドライアイスが完全に消耗されるまでの7時間において温度を保持する。7時間の間に、試料バイアルの中に、90%の緩衡食塩水及び10%のジメチルスルホキシドを含有する1mlの溶液であって、熱電対温度センサは、軸配向し、液体の中央高さに設置されている。次に、試料バイアルは、液体窒素の中で−194℃の平衡状態に達した後、−77℃の平衡ブロックに移行される。
図6のグラフBを参照すれば、バイアル内容物の温度が10分の間以内に−77℃の平衡状態に達した。液体窒素において平衡させるステップと、−77℃の受器ブロックに移行させるステップとを含む解凍サイクルが繰り返して実施された結果、試料内容物の温度プロフィールは、高い再現性を示した。この簡単な平衡装置及び平衡方法を利用することによって、凍結温度に保存された試料は、保存状態から回復し、迅速に安定温度−77℃の平衡状態になる。なお、試料は、7時間まで保存され、ドライアイスが補充されれば更に長く保存することができる。−77℃の受器ブロックは、解凍プロセスに再現性の高い初期温度を提供し、次に試料が一定の温度の平衡状態であるウオーミングブロックに移行されたときの解凍時間が正確に推定することができる。更に、受器ブロックは、試料とドライアイス冷却剤との直接な接触を防止する。一部のバイアルの設計は、底面に裾状拡張部を有するため(
図16、バイアルAを参照)、このようなバイアルを直接にドライアイスに挿入すると、底面の凹部にドライアイスが付着する。その後バイアルがウオーミングブロックに挿入される場合は、付着したドライアイスを気化するために熱エネルギーが消費されるため解凍時間が大きく変動することになる。従って、解凍プロセスを標準化させるためには、受器ブロックを利用して試料バイアルを隔離し、ドライアイスとの直接な接触を回避することが望ましい。
【0052】
図7は、基本のウオーミングブロックを示している。本実施形態において、ウオーミングブロック710は、2つの直角の平面境界面770及び780によって分割され、独立の部分ブロック720が形成されている。縦方向の分割面は、受器穴における円筒状の試料バイアルの中心を通しており、試料バイアルの中心は、受器穴の円筒状の中心軸線に一致している。市販の標準のねじ込みキャップ型の凍結保存バイアル750のテーパーに合うように、示されている受器穴は、1度の円柱テーパーを有し、熱伝導率が2W/(m・k)以下の材料、例えば、以下に限定されないが、ポリプロピレン、ポリエチレン、又はポリプロピレン、ポリエチレン、及び他のプラスチック材料の混合物、プラスチック樹脂及び樹脂混合物、及びガラスを含む。受器穴の壁は、厚さ0.5mmの熱伝導性材料層、例えば、以下に限定されないが、熱伝導性発泡体760を含み、その最内面が、標準のねじ込みキャップ型の凍結保存バイアルの表面に合うように設けられ、凍結保存バイアルが受器穴に設置されたときに、2つの受器ブロックは、表面770において近接に接触する。凍結保存バイアルの表面は、熱伝導性発泡体に近接且つ全ての点において完全に接触する。移動可能な滑動セグメント720は、2つの押し棒(本透視図において遮蔽されている)によって直線的な水平移動に限定されている。2つの押し棒は、ブッシュ−バー730によって端部に固定されている。ブッシュ−バーの水平方向の加速によって、ウオーミングブロックの一部を分離することによって、凍結保存バイアルを挿入又は外すことができる。注意すべきなのは、熱伝導性発泡体を有しない実施形態も構成できるが、凍結保存バイアルのテーパーに完璧にマッチングすることは困難である。製造メーカによって、テーパーの角度が異なったり、バイアルの直径が異なったりする場合がある。更に、凍結状態において、試料バイアル内の水溶液の膨張により生じた応力によって、凍結保存バイアルの外側面に歪みが発生する可能性がある。また、予想外の識別ラベルがバイアルの外側面に付された場合、受器穴の表面をこのようなバイアルにマッチングさせることは、更に複雑である。物理的な界面における何らかの分裂が生じると、その分裂部において熱抵抗が発生し、熱伝導の変化が発生するため、受器穴の内側に、コンプライアントな表面が、均一で、完全な、且つ再現性良い接触の実現に重要である。従って、いくつかの実施形態において、熱伝導性且つコンプライアントな界面760が望ましい。ウオーミングブロック710は、下面に組み込まれて、電流で駆動される電気抵抗ヒーター(本図面において遮蔽されている)によって加熱される。ウオーミングブロックの温度は、ウオーミングブロックセグメント710に挿入されている熱電対740によって検知される。ブロックセグメント720及び710は、挿入されたバイアルに圧力を加えるとともに、縦方向の界面770及び横方向の界面に組み込まれた一対のマグネットによって更に結合されるように構成され、両部分の密接な熱伝導接触が保証されている。本実施例に係る710、720、730は、アルミニウム合金によって作製されている。熱伝導性発泡体ライナーは、Laird Technologiesから販売されているブランド名Tflex(商標)である熱伝導性シリコン組成物である。
【0053】
図8は、
図7に示されている装置の拡大図を示している。
図8を参照すれば、L字形状のウオーミングブロック810は、2つの界面811及び812を通じて矩形ブロック815に接触する。2つのブロックセグメントは、2つのマグネットペア830の界面を通じて縦方向界面811に移動可能に固定される。マグネットペア830は、ブロック810に設けられた受器キャビティ835、及び矩形ブロック815に設けられたミラーホール(
図8に図示せず)に設置される。水平方向界面812において、2つのブロックセグメント810及び815は、1つのマグネットペアを通じて連結される。マグネットペアにおける一のマグネット850は、ブロック815の下面に埋め込まれており、2つに分離されている反対側のマグネット840は、水平方向界面812における受器ホール845に埋め込まれている。滑動ブロック815は、縁部841に定められた軸に沿って直線的な位置を変えることによって2つのマグネット840の中の任意1つに接触させることができる。マグネット840の中心が0.28インチに離れており、ブロック815に2つの安定的な位置が定められる。位置1は、滑動ブロック815が界面811及び812を通じてブロック810に接触する位置であり、位置2は、滑動ブロック815とブロック810とは、界面812において接触し、両縦方向界面の間に約0.27インチのギャップが形成されている。このように、開放及び閉止状態のウオーミングブロックが構成される。2つの熱伝導性柔軟材料ライナー885は、バイアル受器穴857の2つの片割れの内壁に設けられている。ブロックセグメントは、ブロック810の下面の楔形キャビティに埋め込まれた電気抵抗ヒーター855によって暖められる。また、ヒーター素子855は、楔形セグメント860の圧力によってキャビティの壁に密接に熱接触しており、前記圧力は、ネジで楔形セグメントの後部に加えられた圧力によって調整される(図示せず)。ヒーターは、導線865を通して流れる電流によって駆動される。ウオーミングブロックの温度は、ウオーミングブロック810のセンサ受器ホール875に挿入された熱電対センサ870によってモニターされてもよい。ブロック815は、2本のプッシュロッド820によって横から支持されており、2本のプッシュロッド820は、末端部のプッシュバー825によって繋いでいる。プッシュロッドは、アクセスチャンネル826を通して、ブロック810を貫いて延びる。アクセスチャンネル826は、プッシュロッドの側面のみに接触し、縦方向のスロット構造に設けられ、縦方向に一定の自由度を持ち、ブロック815は、ブロック810の水平方向表面812のみに支持されるように構成されている。ウオーミングブロックを操作するときは、プッシュバー825に圧力を加えることによって、ブロックセグメント810と815とを手動で分離させる。試料バイアルは、開放された受器キャビティ857に挿入され、マグネット850が近い方のマグネット845から離れるまでブロック815を軽く押し、更にマグネットペア830を引いて末端マグネット845に合わせることによって、顎部を閉じる。他の実施形態において、
図8に示されているウオーミングブロックは、能動的な推進機構によって繋ぐ及び自動化される。推進機構は、以下に限定されないが、モータ、ソレノイドアクチュエーター、液圧及び空気圧アクチュエーター、及び電磁アクチュエーターなどを含む。推進機構は、以下に限定されないが、螺旋マシーン、動的リンゲージ、ヒンジ、ケーブル、ベルト、チェーン、ピン、及びスロット、軌道、レール、リニアスライド及び回転ベアリング、カムス、及びギアによってブロックセグメントにリンクする。いくつかの実施形態において、
図8に示されているシステムは、ウオーミングブロックの温度をモニタリングするための複数の温度センサを備えてもよい。いくつかの実施形態において、ヒーターブロックは、ウオーミングブロックから断熱されているが、試料バイアルに接触している1つ以上の温度センサを備えている。いくつかの実施形態において、前記温度センサは、熱電対、サーミスタ、及びRTDセンサを含む。他の実施形態において、ウオーミングブロックは、マイクロプロセッサー回路板を備え、ウオーミングブロックの温度のフィードバック信号を受信し、ヒーターに対する供給電力を調節することによって所望のブロック温度を保持する。他の実施形態において、マイクロプロセッサーボードは、ウオーミングブロックに近接のセンサからの位置検知データを受信し、ブロックの開放状態又は閉止状態を判断する。他の実施形態において、マイクロプロセッサーボードは、解凍プロセスを実行する状態アルゴリズムに応じて、能動的にウオーミングブロックを開放又は封止する。他の実施形態において、マイクロプロセッサーは、ウオーミングブロックに挿入されている試料バイアルの表面に接触しているセンサから測温信号のデータを受信する。他の実施形態において、マイクロプロセッサーは、測温データのアルゴリズム解釈によってバイアルの解凍状態を判断する。いくつかの実施形態において、マイクロプロセッサーボードは、解凍プロセスの状態を表示するユーザーインターフェースを制御し、故障状態を利用者への警報、試料バイアルを受け入れるためのウオーミングブロックの準備完了状態の表示、及び連続解凍の開始を行う。
【0054】
いくつかの実施形態において、マグネットペア830のサイズ及び/又はマグネットペアの磁場強度を利用することによって、熱伝導性柔軟材料ライナー885の試料ベッセル880に対する挟圧力を調整し、ライナーと試料ベッセルとの間の熱伝導率を変化させる。他の実施形態において、前記挟圧力は、以下に限定されないが、マグネット、電磁マグネット、バネ、空気圧、液圧、又は機械力、又はこれらの任意の組み合わせによって発生する。
【0055】
図9Aは、試料バイアルの内部に位置し、バイアルの中心軸線に沿って、90%の緩衝食塩水及び10%のジメチルスルホキシドを含有する1mlの試料の半分の深さまで吊り下げて設けられた熱電対センサによって得られた一系列の時間−温度トレースを示している。バイアルは、液体窒素において−194℃の平衡状態に達した後、
図2及び
図3に示されている平衡装置に設置され、10分間−77℃に平衡された。次にバイアルは、
図7及び
図8に示されているウオーミングブロック装置に移行され、6分間37℃で前平衡させるとともに、データレコーダは、10秒の間隔で温度トレースデータを採取した。凍結解凍サイクルは、6回繰り返し、時間温度トレースが合わせて描画された。グループ分けしてみると、解凍プロフィールは、約3分まで高い再現性を有することが分かる。3分付近の時間に、軸線上の熱電対が固体物の中に埋められていることから試料の中央部に固相試料が残留していることが確認された。この固相残留物が熱電対センサから離れるに連れて、低温の固相試料がセンサに接触、又は断続的に接触している状態からランダムな分離状態になるため、データストリームに影響を与える。3分前のトレースデータの再現性は、一定の試料温度で開始され、規制された温度ウオーミングブロックを利用することによって、実験的に得られた間隔時間の値のみを用いて解凍プロセスの進行を正確に推定できることを示した。従って、いくつかの実施形態において、所定の試料バイアルの解凍プロセス期間を正確に推定するために、時間計測器、
図2及び
図5に示されている温度平衡装置、及び
図7及び
図8に示されている恒温ウオーミングブロックが利用された。他の実施形態において、バイアル内に部分的に固相状態がまだ残っている状態に解凍プロセスを終了させるために、相転移の完了時間が一定の値で短縮される。
【0056】
図9Bは、同様の試料バイアルの内部に位置し、バイアルの内壁の付近に設置された熱電対センサによって得られた一群の温度トレースを示している。初めから約1分までに
図9Aに示されているトレースが再現され、1分間経過の時点に相転移が開始した。温度トレースにおいて、
図9Aより高い値が示され、バイアルの内壁付近の温度が、中央部の試料より高いことが示された。この結果は、複合の熱抵抗経路によって推定されたように、熱エネルギーは、必ず
図1Bに示されたように転移する。更に、3分付近に、一群の温度トレースに与えられた影響が現れたが、
図9Aに比べ、平均温度との偏差が小さい。
【0057】
図10は、液体窒素凍結及び−77℃のドライアイス温度平衡装置を用いて更に採取した
図9に係るデータを示している。熱電対センサは、
図9Bと同様に、バイアルの内壁付近に設置された。データに示されているように、3つのサイクルを含む一群のデータは、
図7及び
図8に示されている37℃のウオーミングブロックが採用された場合に採取されたものであり、3つのサイクルを含む他の一群のデータは、バイアルが37℃の水浴に部分的に浸漬された場合に採取されたものである。トレースを比較すれば、ウオーミングブロックの中で解凍されるバイアル(図面上に「分割ブロック」と称する)は、遅い速度で解凍されている。もう一度
図1Bに示されている複合の熱抵抗経路を通過する熱エネルギーフローモデルを参照すれば、この結果が理解されるように、37℃の水浴中の試料バイアルに比べ、熱伝導性発泡体を通過するときに温度低下が生じるため、37℃の水浴中の試料バイアルに比べ、同様の試料バイアルは、より低い温度環境に保持されているためである。
【0058】
図11を参照すれば、同様のシステムを用いて、ウオーミングブロック又は分割ブロックを、解凍プロセスの前に45℃に平衡させて、
図10と同様の解凍プロセスが実行された。時間温度グラフに示されているように、2つのトレース群が重なっていることから、ウオーミングブロックの温度を上げることによって、熱伝導性発泡体と試料バイアルとの界面の温度が37℃まで上昇し、固体ウオーミングブロックを利用して効率的に水浴と同様の平衡速度を有する解凍を実現することができる。
【0059】
図12は、2つの試料バイアルの断面が示され、円筒状試料バイアルにおいて、負荷量に依存しない解凍バイアル温度トレースが示される。内容物量が多いバイアルAにおいて、バイアルの内壁が試料に直接に接触している場所を示す2つの矢印の位置に同様の熱伝導経路が存在している。試料の量が少ないバイアルBにおいて、上方の矢印の位置では、バイアルの内壁が試料に直接に接触していないため、ここからバイアルに入り込んだ熱エネルギーは、熱抵抗型のポリマーであるバイアルの管壁を通して下方へ転移する、または、ポリマーの試料ベッセルの壁の約十分の一の熱伝導率を有するバイアル上方のガスを通して転移する。従って、バイアル内部の試料に入る熱エネルギーの量は、バイアル内部の試料の量に比例する。この効果は、実験によって実証され、
図13に示されている。
【0060】
図13において、
図11と同様なウオーミングブロック解凍システム及び方法を用いて、2つの異なる試料負荷量の試料バイアルより生成された温度トレースが示されている。一の試料バイアルは、1mlのテスト試料流体を含み、他の試料バイアルは、1.5mlのテスト試料流体を含む。時間−温度プロットに示されているように、両系列の結果が重なっていることから、解凍プロフィールがバイアルの充填量に依存しないことが示された。
図14の検討に示されるように、相転移は、バイアルがウオーミングブロックに挿入されて約50秒後に開始し、バイアルがウオーミングブロックに挿入されて約160秒後に完了した。
【0061】
生体試料を凍結保存状態から回復させる過程において、理想的な生細胞の回復は、−75℃の過冷却温度範囲を通して快速に液相状態まで相転移させることが望ましい。このような回復方法は、細胞内氷晶の成長の発生を最小限に抑制することができる。水浴又はウオーミングブロックの温度を上げることによって、試料バイアルへの熱エネルギー流入の速度が増加し、温度遷移の時間を短縮することができる。
図9の実験結果に示されたように、解凍プロセスにおいて、一部の試料の温度は、試料の相転移温度よりも高い温度に達していた。動的な熱流入による試料内の温度上昇が一時的であるが、細胞懸濁液を凍結保存するための凍結保存培地に含まれる凍結保護剤の細胞毒性は、温度の上昇に連れて増強されるため、水浴又はウオーミングブロックの温度を上げて解凍時間を短縮させるのは、一部の試料に危険をもたらすことに繋がる。解凍された試料が高めの温度に触れることを回避するため、試料解凍における通常採用されるのは、僅かに一部の固相試料が残留している状態で、試料バイアルが水浴の高めの温度に触れることを中断させる方法である。この手法では、固相残留物は、試料中の液相部分から熱エネルギーを吸収し、最終的に解凍した試料がより低い温度の平衡状態になる。解凍プロセスにおいて、完全な相転移に近い状態の正確な判断及び推定が必要である。試料バイアルの手動水浴解凍プロセスにおいて、通常の手法は、頻繁の目視で試料の状態を判断することを含む。この手法では、水浴から試料を取り出すことが必要であるため、バイアルと水浴熱源との熱接触が頻繁に中断されることによって、解凍時間に変化が生じる。試料の状態を判断するために他の方法が採用されない限り、同じように試料バイアルを固体ウオーミングブロックから取り出して繰り返して試料を目視で検査することが必要となる。このような状況では、標準化した解凍方法論が適用できない。バイアル内の温度測定によって試料における相転移の状態をモニタリングできる。しかしながら、試料に直接温度測定用プローブを導入することは、試料汚染をもたらす危険性が非常に高い。従って、本発明のいくつかの実施形態において、試料バイアルの外側面温度の熱モニタリングによって、相転移の初期及び進行状態を検知し、バイアル内の温度測定による試料汚染の危険を回避することができる。相転移の完了に近い状態では、固相試料残留物の確率的な運動が原因で、バイアルの外側の温度測定によって得られた温度測定データに分散が生じるが、バイアルの低い部分、又はバイアルの下面に温度センサを設置することによって、固相残留物のランダムな運動によって生じた温度の変動を回避することができる。その理由は、液相に比べ、固相の密度が低いため、バイアル内で浮かんでおり、バイアルの低い領域に滞在しないことにある。従って、いくつかの実施形態において、本発明は、試料バイアルの外側面の上部の中央部に設置されるバイアル外側面温度センサを備えるが、他の実施形態において、温度センサは、試料バイアルの外下面を含む、バイアルの下部の中央部に設置されている。いくつかの実施形態において、バイアルの外側面の温度測定は、試料相転移の開始を確定するために利用され、他の実施形態において、バイアルの外側面の温度測定は、試料相転移の開始及び終了の両方を確定するために利用される。
【0062】
図14は、
図13に示された、解凍サイクルプロセスにおいて、内部の1mlの試料の約中央部の対面側に設置され、試料バイアルの外側面に接触している熱電対を利用して得られた時間−温度トレースを示している。外部温度トレースにおいて、断熱された熱電対(
図1の130)が−77℃のバイアルの外側面に接触したときに、センサの温度が急速に降下し、11秒で最低温度においてセンサとバイアルの外側面とが熱平衡に達している。バイアルの温度上昇に連れ、外側の温度トレースは、相転移の始まりが想定される、約60秒の時点で偏向が生じる。トレースは、相転移の完了が想定される、約160秒の時点まで緩やかなスロープで上昇する。
【0063】
バイアル内温度センサ又は外側面の温度検出器によって得られた時間−温度トレースは、3つの領域に分けられる。第1領域は、バイアルの内容物が固相状態にある時間帯であって、第2領域は、バイアルの内容物が固相と液相との混合状態にある時間帯であって、第3領域は、バイアルの内容物が液相のみの状態にある時間帯である。第1及び第3領域において、バイアルの内容物が二種の均一相態の1つであって、バイアル及びバイアル内容物の総体は、1つの熱容量システムとして扱われ、その温度遷移は、以下の線形時間不変式で表す。
【数1】
【0064】
ここで、T(t)は、時間tのシステムの温度であって、以上の関数によって決められる。T
hは、水浴温度であって、T
cは、バイアルの初期温度である。t
pcは、時間オフセットであって(計算値を数学的に測定値にマッチングする必要がある)、τ
νは、バイアル及び内容物の有効熱時間係数である。前記公式は、外側境界における一定の温度を条件に、物質のウオーミングプロセスを表している。この式のアウトプットを
図14に示したバイアル外側面の温度データにフィッティングさせ、結果を
図15に示す。
【0065】
バイアルがウオーミングブロックに挿入された後、センサの測定が最低温度に達している約11秒の時点から、約60秒の時点までの間に、バイアルの固相内容物のウオーミングプロセスは、数式1を利用して密に近似することができる。ここで、T
hの値は、ウオーミングブロックの温度(39℃)であり、T
cは、バイアルの表面のセンサ及びバイアルが熱平衡に達した後、固相ウオーミングブカーブの始端において選ばれた温度であって、またバイアルがウオーミングブロックに挿入されてから31秒後に、有効熱時間係数が最小値に達している(23.8℃)。時間係数τ
νの値は、T
h及びT(t)の値を利用して下記の式から得られる。
【数2】
【数3】
【0067】
バイアルの外側に接触している温度センサより受信した時間−温度データから約5又6個の時間点の温度データを選び、最小回帰スロープ分析(least regression slope analysis)によって、数4の分母が得られる。また、前記選んだバイアル外側温度データの平均値を求め、T
hの値を引くと、数4の分子が得られる。τ
νの値は、除算結果の負の値である。このようなデータ処理法によって得られたτ
νの値は、ウオーミングブカーブにおける相転移が始まる前の部分に対応するバイアルと固相試料とが一の熱容量システムを表す線形時間不変式のみに適応する。従って、予め設定された範囲を超えて、定数のτ
νからの逸脱は、相転移の開始を見極めるために用いられる。
【0068】
図15Aは、
図14に示されている例示データのためのτ
νの時間グラフを示している(黒いトレース)。このグラフを参照すれば、ウオーミングプロセスにおける31から50秒の範囲内に、τ
νの値は、約55の最小値を保持している。更に、線形時間不変(LTI)式のアウトプットを用いて同一の処理によって得られたτ
νの値の時間グラフ(薄いグレー色の線)が示されている。LTI式における定数のインプット値は、T
h=30℃、T
c=23.8℃、τ
ν=55秒(
図15の実験データによって決められた)、t
pc時間オフセット値は、32秒であって、
図14における31から50秒の範囲内のデータにLTI式の回帰分析フィッティングすることによって決められた。予想の通り、LTI式から得られたτ
νの値は、変化しない。
図15Aの2セットのτ
νの値を比べると、τ
νの値の実験値が理論値から離れることによって、約50秒の時点でテストバイアルの内容物の相転移の開始を確定することができる。従っていくつかの実施形態において、バイアルの内容物の相転移の開始を確定するために、本発明のソフトウエアにデータ処理アルゴリズムが含まれている。下記の式に基づいて、相転移開始の時間値に時間オフセット値を足すことによって、解凍期間(T
thaw)を計算することができる。ここで、ΔH
fは試料の融解熱であって、m
solnは、試料の質量であって、R
vは、試料バイアルの管壁の熱抵抗であって、T
vialは、バイアル外側面の温度であって、T
mは、試料の融解温度である。
【数5】
【0069】
一般に凍結試料バイアルに保存されている生体試料は、水溶液であるため、融解温度は、均質材料の場合の単一の値ではなく、一定の温度範囲である。ただし、具体的なバイアルに対して、実験値に基づいて具体的なバイアルのT
mを確定することによって数5を修正すれば、実際のT
thawの値にフィッティングでき、異なる試料物質のT
thawの値を推定するために更に正確な方法を提供することができる。しかしながら、
図12及び
図13に示されているように、熱エネルギーが試料バイアルの中の解凍する試料への流入速度は、試料の体積及び試料の質量に依存しない。従って、本発明のいくつかの実施形態において、相転移の終了は、ソフトウエアアルゴリズムによって決められる。当該ソフトウエアアルゴリズムは、前述したように相転移の開始を計算して得られた時間値と、実験によって得られた所定の試料バイアルの相転移期間値とを組み合わせて、相転移の完了時間を確定する。他の実施形態において、前述したように得られた相転移完了時間値から一定の値を短縮させ、バイアル内に一部の固相が残留している状態で解凍プロセスを終了させる。
【0070】
図15Bは、他のデータ処理結果を示しており、確定された相転移の開始時点が示されている。
図15BのAを参照すれば、
図14に示されているバイアル外側の温度に係る実験データのプロット、及び同じ実験におけるウオーミングブロックの温度トレースが共に示されている。同時に、LTI式のアウトプット値は、ウオーミングシーケンスにおける固相部分に重なっており、そのプロットは、実験データと共に示されている。前記数1に示されているLTI式における変数の値は、ウオーミングブロックの温度によって決められ(T
h=39℃)、バイアル表面の温度センサの平衡に基づいて、上記数2−4によって、最小τ
νの値が決められ、当該最小τ
νに対応する時間のバイアル表面の温度を初めて観察された(T
c=23.8)。最小τ
νに対応する時間以降のバイアル表面温度データポイントの線形回帰分析結果とLTI式のアウトプットとの間の相違が最小であるように、反復処理することによってt
pcの値が決められる。
【0071】
図15BのBは、実験データとLTI式のアウトプットとの相違の時間に関するグラフを示している。約60秒に位置する縦方向の矢印は、実験データとLTI式の計算値との分岐点である0.2℃の温度値を示している。本発明のいくつかの実施形態において、アルゴリズムソフトウエアにおいて、前記分岐点に基づいて相転移の開始が確定されている。
【0072】
図16は、以下に限定されないが、本発明が適応可能な3種の試料バイアルの寸法を示している。本発明のいくつかの実施形態において、ウオーミングブロック(続きの
図20における2008及び2010)は、バイアル受器穴(続きの
図20における2033)の寸法を調節することによって、示されている試料バイアルの寸法の相違に対応する。試料コンテナは、任意の凍結バイアルであってもよい。例えば、試料コンテナは、標準の5.0mLバイアル、4.0mLバイアル、2.0mLバイアル、1.2mLバイアル、500μLバイアル、等であってもよい。バイアルは、ポリプロピレン又は他の材料で作製されてもよく、例えば、丸底又は平底であってもよい。試料ホルダーは、熱伝導可能のように挿入されたバイアルの側壁に接触してもよい。選択的に、試料ホルダーは、試料コンテナの頂部又は底部からの熱伝導を制限するように構成されてもよい。試料コンテナが一般的にバイアルと表現される場合は、本開示の方法及びシステムを用いて他のコンテナの内部の試料を解凍することが可能であることは、理解されるべきである。例えば、コンテナは、バッグ又は所望の他の試料ベッセルであってもよい。
【0073】
他の実施形態において、ウオーミングブロックは、単一寸法のバイアル受器穴を備えるとともに、複数のタイプ及び寸法のバイアルの装着に対応するためのアダプタ部を備えてもよい。
【0074】
図17は、本発明の代表的な実施形態の外観を示している。本実施形態は、本発明の実用的な例示のみとして示され、本発明の他の実施形態を限定する意図ではない。
図17には、外側上部筐体1710と透明又は半透明の基部1720とを備える内部機構のカバーが示されている。本実施形態において、利用者が試料バイアル1740を頂部の開口1730に挿入してウオーミングシーケンスを開始する。挿入されたバイアルが一定の深さに達すと、内部機構によってトリガーされ、開放状態のウオーミングブロックが快速に閉止し、ウオーミングプロセスの間に、試料バイアルに接触し、且つバイアルを把持して固定する。
【0075】
図18は、内部機構の一実施形態の2つの斜視図を示している。本実施形態において、メインフレーム1810は、二部式ウオーミングブロック1820に接続され、前記の二部は、実質同じであり、片方の部が合わせ部に関して180度の回転角度で他方の部に連結されている。2つのブロックハーフは、ヒンジピン1825によって連結され、回転でき、それぞれの縦方向の中央面が10度の夾角を形成するように離れることが可能のように構成されている。2つのブロックハーフは、ピン軸1817と連動するスライド・スプレッダー・フレーム1815によってヒンジの軸1825に繋がっている。両方の部において、ピン軸1817は、ウオーミングブロック部1820に埋め込まれ、角度スロット1819を通過している。スライド・スプレッダー・フレーム1815がメインフレーム1810に関して上がったり、下がったりするときに、スロット1819は、ウオーミングブロックハーフ1820を開放及び閉止する。スライド・スプレッダー・フレーム1815は、2つのソレノイドアクチュエーター1850に繋がり、一のアクチュエーター1850は、作動するときにスプレッダー・フレーム(spreader frame)1815を持ち上げるように構成され、他のアクチュエーター1850は、作動するときにスプレッダー・フレーム1815をメインフレーム1810に関して下げるように構成されている。2つのウオーミングブロックハーフ1820は、中央バイアル受器穴1865を備え、中央バイアル受器穴1865は、2つのウオーミングブロックハーフの縦方向の分割面に一致する縦方向の面に分割されている。中央バイアル孔は、ウオーミングブロックの全体を通して延び、厚さ2mmの熱伝導性発泡体1860のライナーを含み、熱伝導性発泡体1860は、ウオーミングブロックの頂部表面から1.1インチ下までの中央バイアル孔の内側面の全体を覆うように構成されている。サーミスタ温度センサ1835は、両方のウオーミングブロックハーフに埋め込まれており、温度データの信号は、有線接続(図示せず)を通じてマイクロプロセッサーボード1805に伝送される。1つ又は両方のウオーミングブロックは、更に温度センサ1830を備え、温度センサ1830は、ウオーミングブロック1820に断熱されており、試料バイアルが中央バイアル孔に挿入され、且つウオーミングブロックの顎部1820が閉止されたときに、温度センサ1830は、試料バイアル1870の外側面に接触し続ける。センサ1830のデータ信号は、有線接続(図示せず)を通じてマイクロプロセッサーボード1805に伝送される。
【0076】
図19は、
図18に示されている実施形態の全体の寸法を示している。パートAに示されている外筐体は、高さ5インチであって、外径約4インチである。バイアル受器穴を利用するための頂部開口は、直径約0.6インチである。パートBに示されている内部機構は、全体の高さ約4.9インチであって、外径約4インチである。バイアル受器穴の直径は、約0.5インチである。
【0077】
図20は、
図18及び
図19に示されている実施形態の拡大図を示している。
図20を参照すれば、メインフレーム2002は、残りの内部機構を支持し、ファスナー(図示せず)によって基部2003に連結されており、ファスナーは、マイクロプロセッサー回路板を通して延びている。2つのウオーミングブロックハーフ2008と2010とは、ヒンジピン2012を通じてメインフレーム2002に連結されている。ウオーミングブロックハーフは、ヒンジピン2012に関して回転し、移動範囲は、両ブロックハーフの中央面が平行位置である閉止位置と、両ブロックハーフの中央面が離れて、10度の夾角を形成する位置である開放位置との間に限定されている。ウオーミングブロックハーフのアーム延長機構2009は、円筒状ホールを備え、選択的に円筒状マグネット(図示せず)を入れる。円筒状マグネットが設置された場合は、反対のウオーミングブロックに設置されたマグネットに合わせることによって、把持力が生じ、他の部品との接合又は他の部品から提供される把持力がない場合は、開放又は閉止位置のウオーミングブロック顎部を把持する。2つのウオーミングブロック2008及び2010は、滑走型スプレッダーフレーム2006によって接続され、滑走型スプレッダーフレーム2006は、斜めのスロット特徴2017を通じてウオーミングブロックに接続され、スロット特徴2017は、ウオーミングブロックの凹部2018に埋め込まれているピン支承2016と噛み合うように構成されている。滑走型スプレッダーフレームがメインフレームに関して上昇する時に、ウオーミングブロックは、ヒンジピン2012に関して回転し、10度に開くように、滑走型スプレッダーフレームに設けられているスロット2017は、一定の角度を有している。滑走型スプレッダーフレームがメインフレームに関して降下する時に、ウオーミングブロックは、縦方向の内側面が平行になるように閉止方向に回転する。滑走型スプレッダーフレームがメインフレームに関する位置は、光センサ2048によって監視され、光センサ2048は、光源2046とともにメインフレームに設けられ、光源2046によって発生される光信号を検知する。滑走型スプレッダーフレームが上昇するときに、光源2046から発された光信号は、遮断されずに、滑走型スプレッダーフレームに設けられたスロット2049を通し、開放状態のウオーミングブロック部を通過することによって、中央バイアル受器に試料バイアルのような遮断物が存在しないことを判断することができる。滑走型スプレッダーフレームがメインフレームに関して降下するときに、光源2046から発された光信号は、滑走型スプレッダーフレームによってブロックされる。光源2046と光検知器2048は、電源線(図示せず)を通じてマイクロプロセッサー回路板2004から受電するとともに、マイクロプロセッサーは、電線導管(図示せず)を通じて光センサ2048からデジタル信号を受信する。滑走型スプレッダーフレーム2006は、複数のソレノイドアクチベーターに接続されており、一のソレノイドアクチベーターは、2052を駆動することによってスプレッダーフレームを上昇させ、他のソレノイドアクチベーターは、2050を駆動することによってスプレッダーフレームを降下させる。複数のソレノイドアクチベーターは、L字状ブラケット2038を通じてスプレッダーフレームに連結され、L字状ブラケット2038は、孔2043を通して六角ナット2044によってスプレッダーフレーム及びメインフレームに固定されている。熱伝導性発泡体パッド2030及び2032は、ウオーミングブロック2008及び2010内の中央バイアル受器穴2033の2つの片割れの壁面を覆うように設けられ、1つ以上の熱伝導性発泡体パッド2030及び2032は、通路2035を備え、ウオーミングブロックに埋め込まれた温度センサ2042は、通路2035を通して、ウオーミングブロックのバイアル受器穴の内部の熱伝導性発泡体パッド2030と2032との間の試料バイアルの外側面に接触する。それぞれのウオーミングブロック2008及び2010は、1つ以上の加熱素子2034を備え、加熱素子2034は、ウオーミングブロックパートの下部のキャビティ(見えない)の中に設置されている。ウオーミングブロック2008及び2010の温度は、1つ以上の温度センサ2040によって検知され、温度センサ2040は、ウオーミングブロック内の受器キャビティ2041の中に設置され、垂直に設置されているネジ(図示せず)によって固定される。中央柱台2024は、中央バイアル受器穴と同軸に位置し、滑走型サポート2026に設けられ、滑走型サポート2026は、スロットを備え、ヒンジピン2012は、前記スロットを通して滑走型サポートをキャプチャーして、横から固定する。滑走型サポートは、更に2つのブッシュ軸受2028によって引き止められ、支持されている。ヒンジピンがブッシュ軸受2028を通過して、滑走型サポート両側の平面の上に位置している。滑走型サポートは、メインフレーム2002の下面に設置されている運動ダンパー2054の摺動シャフトに連動されることによって垂直の直線運動に制限される。滑走型サポート2026は、更に切り欠き穴2029を備え、上昇に応じて、L字状ブラケット2038に設置されている光センサ2036の光信号を通過させる又はブロックする。滑走型支え台2026と滑走型スプレッダーフレーム2006との相対位置に応じて、光センサ2036からの高い及び低いデジタル信号が、滑走型スプレッダーフレーム位置センサ2048からの垂直位置信号と組み合わせることによって、下記4つの位置状態の1つを示すことができる。1)滑走型サポート2026が上昇、滑走型スプレッダーフレーム2006が上昇、2)滑走型サポート2026が降下、滑走型スプレッダーフレーム2006が上昇、3)滑走型サポート2026が降下、滑走型スプレッダーフレーム2006が降下、4)滑走型サポート2026が上昇、滑走型スプレッダーフレーム2006が降下(次の図に示される故障状態である)。いくつかの実施形態において、ダンパー2054は、スプリング(図示せず)を備え、当該スプリングは、中央柱台2024と、滑走型支え台2026と、摺動シャフトとが降下するときに、スプリングが圧縮されて、上昇位置に戻す力が生じる。いくつかの実施形態において、スプリング力による上昇運動は、試料バイアルの外側面に接触している熱伝導性発泡体2030及び2032の摩擦力のみの抵抗を受ける。他の実施形態において、引き上げスプリング力は、能動的に調整された機械式リストリクタ、例えば、以下に限定されないが、ソレノイドラッチによって制御される。代替的な実施形態において、引き上げ力は、部分的に又は完全に能動的制御されているアクチュエーター、例えば、以下に限定されないが、ソレノイド及びモータ、によって発生する。いくつかの実施形態において、以下を含むユーザーインターフェース、例えば、以下に限定されないが、LEDライト及びLEDライトアレイ、LCDスクリーン、キーパッド、ボタンスイッチ、スライディングスイッチ、タッチスクリーン、ノブ、スライドスイッチ、容量性スイッチ、及び遠隔制御インターフェースとの無線リンク、が備えられている。
図20に示されている実施形態において、放射状に配列されたLEDライト2080は、メインフレームに固定され、半透明の筐体材料で作製された外側の筐体(図示せず)を通して見えるように構成されている。LEDアレー照明は、リボンワイヤコネクター(図示せず)を通じてマイクロプロセッサー回路板2004によって制御され、試料バイアルの解凍状態、準備ができている状態、及びエラーコードを表示することができる。装置の頂部表面に設置されたライトについて記載したが、他の実施形態において、装置の側面に設けられたLEDアレイが含まれることを理解すべきである。いくつかの実施形態において、マイクロプロセッサー回路板は、保存したデータを伝送する又は外部からデータストリームを受信するため、例えば、更新されたソフトウエアをインストールするためのデータポートを備える。
【0078】
図21−23は、
図19及び
図20に示されている実施形態の実行結果の一例を示している。
図21−23において、部品の内部機構及び位置を示すため、前部のウオーミングブロックが外されている。下記の記述において、
図2−5に係る実施形態に記載された温度平衡装置の中に試料バイアル2001を十数分設置して、試料バイアル2001の前置温度が77℃の平衡温度に達したものである。解凍サイクルは、
図21のパートAに示されているウオーミングブロックバイアル受器キャビティ内に試料バイアル2001を挿入することによって開始される。この状態において、ウオーミングブロックは、一定のウオーミング温度に平衡され、前置温度である。滑走型サポートフレーム2006が上昇し、ウオーミングブロック2008及び2010(図示せず)は、開放状態である。解凍サイクルのステップ1において、
図21のパートBに示されているように、試料バイアルは、手動で下ろされ、中央柱台2024及び滑走型サポートフレーム2026は、滑走型サポート光トリガー2029が光センサ2036を通過する位置まで降下する。
図22のパートAを参照すれば、試料バイアルが適切な深さまで下がっていることを検知すると、マイクロプロセッサー回路板は、ソレノイド(
図20の2050で示す)を駆動し、滑走型スプレッダーフレーム2006を降下させ、試料バイアル2001をウオーミングブロック内に閉止し、バイアル及びその内容物に熱エネルギー伝導のプロセスを開始させる。
【0079】
図22のパートBを参照すれば、解凍プロセスが完了し、マイクロプロセッサーは、上昇ソレノイド(
図20の2052で示す)を駆動し、滑走型スプレッダーフレーム2006を持ち上げ、ウオーミングブロック2008及び2010(図示せず)を開放し、熱伝導性発泡体ライナー2030(図示せず)及び2032と、バイアルとの間の摩擦拘束を緩める。ウオーミングブロックの開放は、熱伝導性発泡体からの熱伝導経路を中断し、バイアル内容物における望まれない温度上昇を阻止する又は大幅に遅らせることができる。
【0080】
図23のパートAを参照すれば、バイアルにおける摩擦拘束が解放され、滑走型サポートフレーム2026及びバイアルサポート柱台2024は上昇し、試料が操作者の前に差し出されているとともに、滑走型サポート光トリガー2029が光センサ2036を通過しているため、マイクロプロセッサーは、バイアルが存在する信号を受信する。
図23のパートAを参照すれば、バイアルがウオーミングブロックのバイアル受器から撤去されると、光源2046と光センサ2048との間の光通路は遮断され、マイクロプロセッサーは、バイアルが外されたことを示す信号を受信し、警報又はアラート信号を発生するアルゴリズムの起動が止められる。
【0081】
図24は、解凍実験系列の時間−温度プロットのグラフが示され、ウオーミングブロックの開放が、試料への熱エネルギーの流入を中断させ、解凍プロセスを完了させるために有効であることが示されている。本実験系列において、液体窒素の中でバイアルを凍結させるステップと、
図2及び
図3に示された装置において平衡させるステップと、
図7及び
図8に示された45℃のウオーミングブロックに挿入するステップと、バイアル内試料の半分高さの位置におけるバイアルの内壁の付近に熱電対センサを挿入して1mlペイロードの試料の内部温度を監視するステップとを含むサイクルが繰り返して実行された。1テストサイクルにおいて、時間測定によって確定された解凍終了時に、ウオーミングブロックが閉止状態で、バイアルが約6分間の間にウオーミングブロック内に残された状態である。本実験において、試料の温度がブロックの温度へ上昇し続けていた。第2サイクルにおいて、解凍終了時に、ウオーミングブロックが開放され、バイアルがウオーミングブロックから外され、約6分間の間に外気環境に保持された。本実験において、ブロック開放した後の3分間に試料の温度がほぼ上昇しなかった。第3サイクルにおいて、ウオーミングブロックが開放された後に、バイアルがウオーミングブロック内に残された状態で前記の実験を繰り返して実行された。本実験において、解凍終了時にバイアルがブロックから外される場合に比べ、バイアルの内容物の温度が少し高い速度で上昇したが、温度の上昇が、解凍終了時にウオーミングブロックが閉止状態の場合に比べ大きく減少した。この実験は、解凍プロセスの終了時に、試料への熱エネルギーの流入を回避するために、熱伝導経路を中断する手法の有効性を実証した。本発明のいくつかの実施形態において、ウオーミングブロックの固体材料と試料バイアルの外側面との間に空気間隙を入れることによって、試料バイアルがウオーミングブロックの受器穴に挿入された後のウオーミングプロセスは、中断される。いくつかの実施形態において、システムは、解凍の終了段階に、試料が所望の温度に保持されるように構成されている。
【0082】
いくつかの実施形態において、解凍終了時間を確定するために、複数のアルゴリズムが提供される。選択的に、個々のアルゴリズムは、同時に実行され、独自に解凍終了時間を確定する。システムは、最先に解凍終了時間の推定を提供したアルゴリズムに基づいて解凍を終了させるように構成されてもよい。選択的に、システムは、各アルゴリズムが解凍終了時間の推定を完了させ、算出された最短の解凍期間を利用するように構成されてもよい。更にいくつかの実施形態において、システムは、算出された解凍期間の平均値を利用して解凍終了時間を確定するように構成されてもよい。
【0083】
図面に示された又は前記の記載と異なる構成の配置、及び示されていない又は記載されていない構成及びステップも可能である。類似的に、ある特徴及び部分的組み合わせは、他の特徴及び部分的組み合わせを参考することなく、有効であり、利用されてもよい。本発明の実施形態は、説明するために記載されており、本発明を限定する意図ではない。なお、代替的な実施形態は、本発明の読者にとって明らかになるであろう。従って、本発明は、図面に示された又は前述した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲から逸脱することなく、様々な実施形態及び変更態様が可能である。