特許第6661629号(P6661629)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ローム アンド ハース カンパニーの特許一覧

特許6661629メチルメタクリレートを作成するための酸化的エステル化方法
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6661629
(24)【登録日】2020年2月14日
(45)【発行日】2020年3月11日
(54)【発明の名称】メチルメタクリレートを作成するための酸化的エステル化方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 67/39 20060101AFI20200227BHJP
   C07C 69/54 20060101ALI20200227BHJP
   B01J 23/644 20060101ALI20200227BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20200227BHJP
【FI】
   C07C67/39
   C07C69/54 Z
   B01J23/644 Z
   !C07B61/00 300
【請求項の数】15
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-522600(P2017-522600)
(86)(22)【出願日】2015年10月7日
(65)【公表番号】特表2017-534622(P2017-534622A)
(43)【公表日】2017年11月24日
(86)【国際出願番号】US2015054437
(87)【国際公開番号】WO2016069225
(87)【国際公開日】20160506
【審査請求日】2018年9月25日
(31)【優先権主張番号】62/073,290
(32)【優先日】2014年10月31日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】590002035
【氏名又は名称】ローム アンド ハース カンパニー
【氏名又は名称原語表記】ROHM AND HAAS COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】110000589
【氏名又は名称】特許業務法人センダ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】カーク・ダブリュ・リンバッハ
(72)【発明者】
【氏名】ディミトリ・エイ・クラプトシェトフ
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー・ディー・フリック
【審査官】 桜田 政美
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−263399(JP,A)
【文献】 特公昭53−015492(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 67/39
B01J 23/644
C07C 69/54
C07B 61/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化的エステル化を介するメチルメタクリレート(MMAの調製方法であって、メタクロレイン、メタノール、及び酸素含有ガスを、MMAを生成するために十分な反応条件下で、パラジウム、ビスマス、及びアンチモンを含む触媒の存在する反応領域において接触させることを含む、方法。
【請求項2】
前記触媒が、多孔質担体または支持体上に触媒金属を含む不均質触媒であり、前記触媒金属が、パラジウム、ビスマス、及びアンチモンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記触媒中のパラジウムとビスマスとの重量比が20:1〜1:10である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
アンチモンとビスマスとの重量比が100:1〜1:10である、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記触媒が担持触媒であり、前記支持体が、活性炭素、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化チタン、炭酸カルシウム、シリカ−アルミナ、アルミナ−シリカ、シリカ、またはアルミナのうちの少なくとも1つを含む、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記触媒が担持触媒であり、前記支持体上の前記触媒金属の量が、前記支持体の重量に基づいて0.1〜20重量%である、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記触媒が担持触媒であり、前記触媒の表面積が、少なくとも50m/gである、請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記触媒が担持触媒であり、前記担持触媒のメジアン粒径が1〜200ミクロンである、請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記触媒が担持触媒であり、前記支持体がアルミナ及びシリカのうちの少なくとも1つを含む、請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記触媒が担持触媒であり、前記支持体がマグネシアで改質されたシリカを含む、請求項1〜9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記触媒が担持触媒であり、前記支持体が主としてシリカを含む、請求項1〜10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記触媒が担持触媒であり、前記支持体がアルミナ、マグネシア、またはそれらの組み合わせで改質されている、請求項1〜11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記触媒中のパラジウムとビスマスとの重量比が5:1〜1:1であり、アンチモンとビスマスとの重量比が1:1〜1:4である、請求項1〜12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記反応領域内の前記触媒と前記反応領域に供給されるメタクロレインとの重量比が、1:1000〜20:1である、請求項1〜13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
前記反応領域内の温度が、0℃〜120℃であり、前記反応領域内の圧力が、50〜2000kPa(7.3〜290psia)である、請求項1〜14のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化的エステル化を介するカルボン酸エステルの調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
メタクロレイン(MAL)、メタノール、及び酸素からのメチルメタクリレート(MMA)の生成については既知である。例えば、米国特許第4,518,796号は、Pd−ビスマス(Bi)触媒の使用について開示している。しかし、この触媒では、この反応で所望される高MMA選択性を得られなかった。
【0003】
米国特許第5,892,102号は、ZnOまたはCaCO支持体上の、Pd−Bi−X金属間化合物(Xは種々の元素であり得る)を含むMAL酸化的エステル化触媒について開示している。これらの支持体は、機械的安定性、けだし耐酸性、及び長期的な触媒寿命の観点から望ましくない。
【0004】
先行技術の欠陥を考慮して、MMAを選択的に生成するための、改善された酸化的エステル化触媒を得ることが所望される。
【発明の概要】
【0005】
本発明の方法は、酸化的エステル化を介するMMAの調製方法であって、MAL、メタノール、及び酸素含有ガスを、MMAを生成するために十分な反応条件下で、パラジウム、ビスマス、及びアンチモンを含む触媒の存在する反応領域において接触させることを含む、方法である。
【0006】
驚くべきことに、本発明の酸化的エステル化方法は、MMAへの高選択性をもたらす。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本明細書で使用される場合、「a」、「an」、「the」、「少なくとも1つの」、及び「1つ以上」は、同じ意味で使われる。「備える」、「含む」、及びそれらの変形の用語は、これらの用語が現れる明細書及び請求項において、限定的意味を有さない。それ故、例えば、「1つの」疎水性ポリマーの粒子を含む水性組成物は、「1つ以上」の疎水性ポリマーの粒子を含む水性組成物を意味すると解釈され得る。
【0008】
また、本明細書で、終了点による数値範囲の列挙は、その範囲に包含される全ての数字を含む(例えば、1〜5は、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、5等を含む)。本発明の目的上、当業者が理解しているであろうことと一貫する、数値範囲はその範囲に含まれる全ての考えられる副範囲を含み裏付けることを意図することが、理解される。例えば、1〜100の範囲は、1.01〜100、1〜99.99、1.01〜99.99、40〜60、1〜55等を伝えることを意図する。
【0009】
また、本明細書で、請求項のそのような列挙を含む数値範囲及び/または数値の列挙は、「約」という用語を含むと読むことができる。そのような場合、「約」という用語は、本明細書に列挙されるこれらと実質上同一である数値範囲及び/または数値を指す。
【0010】
異なるように述べられない限り、または文脈から含意されない限り、全ての割合及びパーセントは重量に基づき、全ての試験方法は、本出願の出願日付けで最新である。米国特許実務の目的上、参照される特許、特許出願、または公開の内容は、特に定義の開示(本開示に具体的に提供されるあらゆる定義に反しない程度において)及び当該分野の一般知識に関し、その全体が参照によって組み込まれる(またはその同等の米国版が、参照によりそのように組み込まれる)。
【0011】
本発明の方法は、酸化的エステル化を介するMMAの調製方法であって、MAL、メタノール、及び酸素含有ガスを、パラジウム、ビスマス、及びアンチモンを含む触媒の存在する反応領域において接触させることを含む、方法である。
【0012】
メタノールは、広く市販されている。MALは、当業者には既知のとおり、種々の工業的規模の方法で生成し得る。例えば、米国特許第4,329,513号及び同第5,969,178号を参照されたい。
【0013】
本発明の反応における、供給されるメタノール対供給されるMALの量の比率は特に制限されていない。反応は、1:10〜1、000:1、好ましくは1:2〜50:1、より好ましくは2:1〜15:1などの、広範なメタノール対MALのモル比にわたって行われ得る。
【0014】
酸素含有ガスは、酸素ガスまたは酸素ガス及び、例えば、窒素、二酸化炭素等を含む反応に不活性な希釈剤を含む混合ガスのいずれかであり得る。空気は、酸素含有ガスとして使用し得る。酸素含有ガスは、空気よりも高い酸素濃度を有するエンリッチドエアであり得るか、または純酸素であることができる。反応系に有利に存在し得る酸素の量は、反応に必要な理論量以上で、好ましくは理論量の1.2倍以上である。本発明の一実施形態において、反応系に存在する酸素の量は、必要とされる理論量の1.2〜2倍である。過酸化水素は、酸化剤として反応系に導入され得る。酸素含有ガスは、当業者には既知のとおり、好適な方法により反応系に導入され得る。例えば、酸素含有ガスは、スパージャまたは管を介して反応器に導入し得る。酸素含有ガスを反応系へ吹き付ける簡易な方法が、使用され得る。
【0015】
触媒は、有利には、多孔質担体または支持体上に触媒金属を含む不均質触媒であり、触媒金属は、パラジウム、ビスマス、及びアンチモンを含む。好ましくは、任意の触媒金属は、還元状態、すなわち零原子価であり、陽イオン状態ではなく、還元状態で、または1つ以上の化合物として存在し得る。触媒金属は、反応系に、互いに何らかの相互作用を有し得るような形態で存在する。例えば、パラジウム、ビスマス、及びアンチモンは、合金を形成してもよく、または金属間化合物等の、何らかの他の相互作用を有してもよい。本発明の一実施形態において、触媒は、パラジウムの格子が、別種の金属、例えば、ビスマスまたはアンチモンで置き換えられている、パラジウム金属間化合物を含み得る。本発明の別の実施形態において、触媒は、パラジウム及び別種の金属が固溶体を形成している、パラジウム合金を含み得る。触媒中のパラジウム対ビスマスの比率は、好ましくは20:1〜1:10(重量比)であり、より好ましくは5:1〜1:1である。Sb対ビスマスの比率は、有利には、100:1〜1:10(重量比)であり、本発明の種々の実施形態においては1:1〜1:4である。本発明の一実施形態において、触媒及び/または触媒金属は、添加された鉛を含まない。
【0016】
触媒金属は、活性炭素、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化チタン、炭酸カルシウム、シリカ、またはアルミナなどの担体または支持体上に支持され得、担体上の担持された触媒成分の量は有利には、担体の重量に基づいて、0.1〜20重量%、好ましくは1〜10重量%であり得る。本発明の一実施形態において、担体は、シリカ、アルミナ、及びシリカ−アルミナのうちの少なくとも1つを含む。担体の例としては、シリカゲル、沈降シリカ、ヒュームドシリカ、噴霧乾燥コロイドシリカ、アルミナ(本明細書ではシリカ−アルミナとしても称される)または他の材料でドープしたシリカ、デルタアルミナ、シータアルミナ、シリカ(本明細書ではアルミナ−シリカとしても称される)または他の材料でドープしたアルミナ、及びガンマアルミナが挙げられる。担体は、当業者には既知のとおり、改質され得る。例えば、シリカ担体は、例えばアルミナ及び/またはマグネシアなどの、1つ以上の追加の材料で改質され得る。担体の組み合わせが、使用され得る。触媒成分はまた、金属形態または化合物の形態で、担体上にこれらを担持することなく使用され得る。本発明の一実施形態において、触媒は均質である。
【0017】
触媒は、従来の様式で調製され得る。例えば、塩化パラジウム等の可溶塩を、ホルマリン等の還元剤を用いて水溶液中で還元して金属パラジウムを析出させてもよく、析出した金属パラジウムを濾過して金属パラジウム触媒を調製してもよく、あるいは好適な担体を可溶性パラジウム塩の酸性水溶液で含浸して、この含浸させた担体を、還元剤を用いる還元に供して、パラジウム支持触媒を調製してもよい。本発明の一実施形態において、パラジウム、ビスマス、及びアンチモンが担体上に担持される触媒の調製を意図する場合、好適な担体を可溶性パラジウム塩の水溶液で含浸して、この含浸させた担体を、好適な還元剤で還元して、その後、還元された担体は、ビスマス化合物及びアンチモンの化合物の水溶液に浸漬され、次いで乾燥される。あるいは、触媒は、まず、担体上にビスマス化合物を担持し、次いで担体をパラジウム及び少なくとも1つのアンチモンの化合物で含浸し、その後、ヒドラジン等の還元剤を添加することにより、調製され得る。本発明の一実施形態において、3つの触媒金属化合物は、還元の前に全て導入される。したがって、これらの金属は、使用可能な触媒を生成するために適切である任意の順序及び任意の組み合わせで添加され得る。還元剤の他の例としては、ギ酸、メタノール、水素ガス等が挙げられる。
【0018】
ビスマス化合物が上記の触媒の調製において使用されるとき、任意の好適なビスマス含有化合物が使用され得る。例えば、酢酸ビスマス、ステアリン酸ビスマス等の、ビスマスの脂肪酸塩が、使用され得る。他の好適な化合物は、酸化ビスマス、水酸化ビスマス、及び硝酸ビスマスを含む。これらのビスマス化合物は、無水であってもよく、または水和物の形態であってもよい。アンチモン化合物が上記の触媒の調製において使用されるとき、任意の好適なアンチモン含有化合物が使用され得る。アンチモン含有化合物の例としては、酢酸アンチモン、塩化アンチモン、硝酸アンチモン、及び硫酸アンチモンが挙げられる。これらのアンチモン化合物は、無水であってもよく、または水和物の形態であってもよい。
【0019】
パラジウム化合物が触媒の調製において使用されるとき、任意の好適なパラジウム含有化合物が使用され得る。例えば、酢酸パラジウム、ステアリン酸パラジウム等のパラジウムの脂肪酸塩が使用され得る。他の好適な化合物としては、酸化パラジウム、水酸化パラジウム、及び硝酸パラジウムが挙げられる。これらのパラジウム化合物は、無水であってもよく、または水和物の形態であってもよい。
【0020】
触媒の表面積は、有利には、反応を進めるために十分である。本発明の種々の実施形態において、触媒の表面積は、少なくとも50m/g、少なくとも60m/g、少なくとも70m/g、または少なくとも100m/gである。これらの表面積は、Brunauer−Emmett−Teller(BET)法によって測定した。BET法は、R.B.Anderson,Experimental Methods in Catalytic Research,pp. 48−66,Academic Press(1968)によって記述される。本発明の種々の実施形態において、触媒の表面積は、400m/g以下、350m/g以下、または300m/g以下である。
【0021】
触媒のメジアン粒径は、特に触媒がスラリー中で使用されるとき、有利には、1〜200ミクロン、好ましくは3〜120ミクロン、及びより好ましくは5〜100ミクロンである。メジアン粒径は量に基づき、ミクロン単位のD50サイズであり、これは、観察された量の半分がその直径よりも上、及び半分がその直径よりも下であるように粒径分布を分割したものである。本発明の種々の実施形態において、触媒が固定床において使用されるとき、メジアン粒径は、有利には、例えば1〜10mmなど、より大きくなるであろう。
【0022】
担体の外表面の周辺の特定の浅部領域に担持触媒金属層を有し、担体の外表面上に実質的に触媒金属を含まない層を更に有する物品を、触媒として使用することが可能である。この種類の触媒は、米国特許第6,228,800号に記載され、その教示は本明細書に参照によって組み込まれる。触媒はまた、担体の表面上に均一に分散した触媒金属を有するか、または担体全体にわたって均一または均質に分散した触媒金属を有することができる。
【0023】
触媒は、当業者には既知のとおり、活性化及び/または再生に供され得る。例えば、米国特許第6,040,472号は、種々の触媒活性化技術を開示する。
【0024】
触媒は、触媒量で使用される。触媒、すなわち、触媒金属及び任意選択の担体の量は、出発物質の種類及び量、触媒の調製方法、触媒の組成、方法の操作条件、反応器の種類等により、自由に変更され得るが、触媒と出発アルデヒドとの重量比は、一般に1:1000〜20:1である。有利には、触媒とアルデヒドとの比率は、1:100〜4:1である。しかし、触媒は、これらの範囲の外側の量で使用されてもよい。
【0025】
MMAの生成方法は、MAL、メタノール、及び酸素含有ガスを含む反応物質を、酸化的エステル化条件化で触媒の存在下で、接触させることを含む。酸化的エステル化条件としては、例えば、所望の反応生成物を生成するために好適な、酸素分圧、反応全圧、温度、反応物質の濃度、pH、及び反応時間が挙げられる。本発明の一実施形態において、反応は、反応帯で液相の触媒のスラリーを使用し行われ得る。反応は、0℃〜120℃、好ましくは40℃〜90℃の温度で行われ得る。反応は、減圧、大気圧、または過圧で行われ得る。酸化的エステル化反応のための反応圧は、触媒が酸化的エステル化反応について活性である範囲内から有利に選択される。反応は、50〜2000kPa(7.3〜290psia)、好ましくは100〜1000kPa(14.5〜145psia)の圧力で行われ得る。反応は、バッチ式、半バッチ式、または連続的に行われ得る。
【0026】
反応は、任意の好適な反応器の種類、例えば、CSTR、気泡塔反応器、または固定床反応器で行われ得る。反応器は、撹拌され得るかまたは撹拌され得ず、一般に反応液と移動する移動触媒を有し得るか、またはそこを通って反応液が流れる触媒の固定床を含有し得る。反応器を通る反応液の再利用は、これらの構成のいずれかで行われ得る。ある実施形態において、単一の反応領域を有する単一の反応器が使用される。
【0027】
本発明の一実施形態において、反応はスラリー相で実行される。触媒は、次いで、生成物混合物から、例えば濾過またはデカンテーションによって分離され得る。本発明の種々の実施形態において、固体、液体、及び気体を含む混合相組成物であり得る「反応液」は、不均質触媒、例えば、スラリー、を含有し得るか、または反応液の少なくとも一部分が、プロセスの間に触媒の固定床と接触し得る。
【0028】
ある実施形態において、酸素分圧は反応物質、反応条件、及び反応器の種類に応じて変化する。ある実施形態において、反応器の出口側の酸素分圧は、35kPa(5psia)以下の陽圧である。ある実施形態において、反応器の出口側の酸素分圧は、200kPa(29psia)以下の陽圧である。
【0029】
ある実施形態において、反応のpHは、6〜9の範囲に維持される。pHを維持するために必要な場合、アルカリ金属化合物またはアルカリ土類金属化合物などの、アルカリ性物質が、反応に添加され得る。例示的なアルカリ性物としては、酸化物、水酸化物、炭酸塩、カルボン酸塩を含むが、これらに限定されない、アルカリ金属及びアルカリ土類金属化合物が挙げられる。
【0030】
反応時間は、反応に影響を与え得る、反応条件、反応物質、及び他の要因に応じて変化する。しかしながら、典型的には、反応時間は0.5〜20時間である。連続撹はん槽反応器CSTRを使用する実施形態などの連続工程に対して、反応時間(滞留時間)は、圧力、温度、及び使用される触媒によって決定されるように、システムの動態によって決定される。
【0031】
ある実施形態において、本方法は粗生成物ストリームを反応器から取り除くことを含む。粗生成物ストリームは、未反応のメタノール、MAL、及び酸素、並びに例えば、水、メタクリル酸、ギ酸メチル、及び他の副生成物などの種々の量の副生成物と共に、MMAを含む。
【0032】
生成物が重合性化合物の場合、重合抑制剤が本方法で使用されてもよい。幅広い種々の抑制剤が既知であり、市販されている。抑制剤の実施例は、ハイドロキノン(HQ)、フェノチアジン(PTZ)、ハイドロキノンのメチルエステル(MEHQ)、4−ヒドロキシ−2 2 6 6−テトラメチルピペリジン−n−オキシル(4−ヒドロキシ−TEMPO、または4HT)、メチレンブルー、アルキル−アリール−フェニレンジアミン、サリチル酸銅、ジアルキルジチオカルバミン酸銅等を含む。
【0033】
本発明の種々の実施形態において、触媒は該エステル化において使用され、MALに基づいて少なくとも90%、または少なくとも95%、または少なくとも98%、または少なくとも99%のMMAへの選択性を提供する。本発明の目的のために、収率は、変換率掛ける選択性という数学的な積として計算される。
【0034】
本発明の特定の実施形態
下記の実施例は、本発明を例示説明するために挙げられており、その範囲を限定すると解釈されるべきではない。
【0035】
変換率及び選択性の算出:
変換率及び選択性を、5時間の触媒活性化期間を無視して算出する。種々の成分の濃度を、作業5時間目及び作業22時間目に得る。ドライアイス凝縮器からの凝縮物を反応器に戻し、試料は、本質的に希釈である。有機蒸気損失及び試料重量の変化は、最小限であると想定される。反応器内容物を、ガスクロマトグラフ(GC)を介して、水素炎イオン化検出器(FID)で分析する。
【0036】
MAL変換率は、関連時間中に反応したMALのモル(すなわち、5時間目に存在するMALのモル引く、22時間目に存在するMALのモル)を、5時間目に存在するMALのモルで割ることで算出され、パーセントで表される。
【0037】
MMAへの選択性は、(5時間目から22時間目に)作製されたMMAのモルを、その時間中に消費されたMMAのモルで割ることで算出され、これもまたパーセントで表される。
【実施例1】
【0038】
触媒の調製:アルミナ担体上に5重量%のPd、2重量%のBi、及び1重量%のSbを有する触媒を、Sigma Aldrichのアルミナ上の5重量%のPdを起点として使用し調製する。スラリーを、0.90グラムの硝酸ビスマス五水和物を、100mlの脱イオン水に溶解し、次いで、担体に基づいて1重量%のSbを提供するため0.47gの酢酸アンチモンを添加し、次いで20.0グラムのAldrichのPd/アルミナを添加することにより調製する。スラリーを1時間、60℃で撹拌し、次いで10.0グラムの水和ヒドラジンをゆっくりと滴加し、得られた混合物を追加で1時間、90℃で撹拌する。得られた固形物を、次いで、真空濾過を介して分離し、500mlの脱イオン水で洗浄し、45℃で10時間真空乾燥させる。
【0039】
MMAの調製:5グラムの触媒の試料を、300mlのガラス反応器の中に、100gのメタノール中の4.0重量%のMALの溶液と共に入れる。ガラス反応器は、傾斜翼タービンインペラ、ドライアイス凝縮器、及びドライアイストラップを装備している。反応器を、一定温度の浴槽に浸漬することによって40℃に維持し、大気圧で動作する。反応器は、バッチ液相有機反応物質及びNガス中の8%のOによって連続的にスパージングする触媒スラリーを有するセミバッチモードで稼働する。ガスは、小さい気泡を生み出すファインガラスフリットを通って、液体内に連続的に流れる。気泡及び触媒は、インペラによって誘発される撹拌のために、液体全体にわたって良好に分散される。溶液はまた、重合抑制剤として、PTZ(およそ10ppm)及びHQ(およそ10ppm)と組み合わせて、およそ50ppmの4−HTを含有する。反応器はこの様式で、合計でおよそ22時間動作し、試料は実験の始め、実験の5時間目、及び実験の終わりに得る。
【0040】
MALの変換率は100%である。MMAへの選択性は、MALに基づいて、およそ86%である。収率は、1×0.86=86%として計算する。
【実施例2】
【0041】
実施例1を、メタノール中のMALの溶液が、4.7重量%のMALを含有していることを除いて繰り返す。
【0042】
MALの変換率は92%である。MMAへの選択性は、MALに基づいて99%を超える。収率は、0.92×0.99=91%として計算する。
【実施例3】
【0043】
触媒の調製:5重量%のPd、2重量%のBi、及び1重量%のSbをガンマアルミナ担体上に有する触媒を、5重量%のPd及び2重量%のBiを、アルミナ上で起点として使用して調製する。担体は、Clariant社からの、55〜80ミクロンのメジアン粒径及び120〜150m/gの表面積を有するT−2610微小球ガンマアルミナである。この触媒を、まずPdの硝酸塩の初期湿潤含浸を使用し、続いて空気中、大気圧で材料を脱窒するのに十分な時間焼成することにより作製する。Biを次に、Biの硝酸塩の初期湿潤含浸により、続いて空気中、大気圧でその材料を脱窒するのに十分な時間焼成することにより、材料に添加する。スラリーを、担体に基づいて1重量%のSbを提供するため0.47gの酢酸アンチモンを溶解し、次いで20.0グラムのPd/Bi材料を添加することにより調製する。スラリーを1時間、60℃で撹拌し、その後、10.0グラムの水和ヒドラジンをゆっくりと滴加し、追加で1時間、90℃で撹拌する。得られた固形物を、次いで、真空濾過を介して分離し、500mlの脱イオン水で洗浄し、45℃で10時間真空乾燥させる。
【0044】
MMAの調製:5グラムの触媒の試料を、ガラス反応器の中に、100gのメタノール中の4.4重量%のMALの溶液と共に入れる。溶液はまた、重合抑制剤として、PTZ(およそ10ppm)及びHQ(およそ10ppm)と組み合わせて、およそ50ppmの4−HTを含有する。
【0045】
MALの変換率は100%である。MMAへの選択性は、MALに基づいて、およそ82%である。収率は、1×0.82=82%として計算する。
【実施例4】
【0046】
MMAの調製:実施例3を、メタノール中のMALの溶液が、4.5重量%のMALを含有することを除いて繰り返す。
【0047】
MALの変換率は100%である。MMAへの選択性は、MALに基づいて、およそ93%である。収率は、1×0.93=93%として計算する。
【実施例5】
【0048】
触媒の調製:5重量%のPd、2重量%のBi、及び1重量%のSbをシリカ−アルミナ担体上に有する触媒を、5重量%のPd及び2重量%のBiを、シリカ−アルミナ上で起点として調整する。担体は、Clariant社からの、55〜80ミクロンのメジアン粒径及び120〜150m/gの表面積を有するT−2865微小球シリカ改質ガンマアルミナである。この触媒を、まずPdの硝酸塩の初期湿潤含浸を使用し、続いて空気中、大気圧で材料を脱窒するのに十分な時間焼成することにより作製する。Biを次に、Biの硝酸塩の初期湿潤含浸により、続いて空気中、大気圧でその材料を脱窒するのに十分な時間焼成することにより、材料に添加する。スラリーを、担体に基づいて1重量%のSbを提供するため0.47gの酢酸アンチモンを溶解し、次いで20.0グラムのPd/Bi材料を添加することにより調製する。スラリーを1時間、60℃で撹拌し、その後、10.0グラムの水和ヒドラジンをゆっくりと滴加し、追加で1時間、90℃で撹拌する。得られた固形物を、次いで、真空濾過を介して分離し、500mlの脱イオン水で洗浄し、45℃で10時間真空乾燥させる。
【0049】
MMAの調製:実施例3を、メタノール中のMALの溶液が4.4重量%のMALを含有することを除いて繰り返す。
【0050】
MALの変換率は100%である。MMAへの選択性は、MALに基づいて99%を超える。収率は99%を超える。
【実施例6】
【0051】
MMAの調製:実施例5を繰り返す。
【0052】
MALの変換率は100%である。MMAへの選択性は、MALに基づいて99%を超える。収率は99%を超える。