特許第6661656号(P6661656)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6661656
(24)【登録日】2020年2月14日
(45)【発行日】2020年3月11日
(54)【発明の名称】医療機器
(51)【国際特許分類】
   A61B 34/20 20160101AFI20200227BHJP
【FI】
   A61B34/20
【請求項の数】24
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-545274(P2017-545274)
(86)(22)【出願日】2016年1月26日
(65)【公表番号】特表2018-509964(P2018-509964A)
(43)【公表日】2018年4月12日
(86)【国際出願番号】EP2016051582
(87)【国際公開番号】WO2016134904
(87)【国際公開日】20160901
【審査請求日】2018年11月19日
(31)【優先権主張番号】102015102768.2
(32)【優先日】2015年2月26日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】502154016
【氏名又は名称】アエスキュラップ アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110001069
【氏名又は名称】特許業務法人京都国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヨーゼフ コザック
(72)【発明者】
【氏名】イエンス ベーガー
【審査官】 宮下 浩次
(56)【参考文献】
【文献】 特表2015−516228(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0305786(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0225999(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 34/00 − 34/37
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カメラ(26)を有する光検出ユニット(24)と、データ処理ユニット(22)と、光ディスプレイユニット(28)とを含む手持ち式の統合医療ナビゲーションシステム(12)であって、
前記データ処理ユニット(22)が、前記検出ユニット(24)及び前記ディスプレイユニット(28)に連結され、
前記検出ユニット(24)を用いて検出可能である医療用標示装置(38、40)の位置及び/又は配向データが前記データ処理ユニット(22)により処理され且つ該データに関する情報が前記ディスプレイユニット(28)上に提示されることが可能であり、
前記ナビゲーションシステム(12)が更に、絶対参照系の少なくとも1つの空間方向における前記ナビゲーションシステム(12)の傾斜に関する信号を提供するためのセンサユニット(30)を含む、
ナビゲーションシステム(12)と、
前記検出ユニット(24)を用いて検出可能な前記標示装置(38、40)の方向に光を照射可能である照明ユニット(34)
前記照明ユニット(34)の前記光を反転するように構成される複数の標示要素(42)を各々が有する2つ以上の標示装置(38、40)
を含む医療機器において、
前記データ処理ユニット(22)が、
前記標示装置(38、40)により参照される参照点を結ぶ空間ベクトルを各々決定、前記標示装置(38、40)のうちの1つが、参照座標系を規定するための参照標示装置(38、40)として使用可能であること、
前記空間ベクトルの向き、前記絶対参照系において、前記センサユニット(30)の信号に基づいて決定すること、及び
2つ以上の前記空間ベクトルの向きに基づいて、前記絶対参照系において平面を規定し、該平面の、任意の参照面に対する傾斜、前記絶対参照系において決定すること、
を特徴とする機器。
【請求項2】
請求項1に記載の機器であって、前記参照面が水平面であること、を特徴とする機器。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の機器であって、前記ナビゲーションシステム(12)が、スマートフォン(20)として又はタブレットコンピュータとして構成されること、を特徴とする機器。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の機器であって、前記ナビゲーションシステム(12)が、前記照明ユニット(34)を含むこと、を特徴とする機器。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の機器であって、前記照明ユニット(34)が、少なくとも1つのLED光源(36)を含むこと、を特徴とする機器。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の機器であって、前記照明ユニット(34)により可視光が照射可能であること、を特徴とする機器。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の機器であって、前記検出ユニット(24)が、厳密に1つのカメラ(26)を含むこと、を特徴とする機器。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の機器であって、前記カメラ(26)を用いて記録可能な画像が、前記ディスプレイユニット(28)上に提示可能であること、を特徴とする機器。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の機器であって、前記ナビゲーションシステム(12)が、データを外部受信ユニットに送信するための通信インタフェース(32)を含むこと、を特徴とする機器。
【請求項10】
請求項9に記載の機器であって、前記データが、前記カメラ(26)を用いて撮影される又は撮影された画像であること、を特徴とする機器。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の機器であって、前記ナビゲーションシステム(12)、自由に空間移動させることが可能であり、手術器具又はインプラントとのいかなる機械的連結もないこと、を特徴とする機器。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の機器であって、少なくとも1つの標示装置(38、40)が、4つ以上の標示要素(42)を含むこと、を特徴とする機器。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか1項に記載の機器であって、少なくとも1つの標示装置(38、40)が、前記標示要素(42)が保持される保持要素(44)と、コントラスト強調要素(46)とを含み、各々のコントラスト強調要素(46)が、前記標示要素(42)と前記保持要素(44)との間のコントラストを増すために、前記標示要素(42)に関連付けられること、を特徴とする機器。
【請求項14】
請求項13に記載の機器であって、前記コントラスト要素(46)がリング(48)として構成され、該リング(48)が、各々の標示要素(42)を包囲すると共に、前記照明ユニット(34)により照射される前記光に対して、前記標示要素(42)の反射率よりも低い反射率を有すること、を特徴とする機器。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれか1項に記載の機器であって、少なくとも1つの標示装置(38、40)がフード形の保護要素(50)を含み、該保護要素(50)が、各々の標示要素(42)に関連付けられると共に、前記照明ユニット(34)により照射される前記光に対して透明であること、を特徴とする機器。
【請求項16】
請求項1〜15のいずれか1項に記載の機器であって、前記標示装置(38、40)が、前記検出ユニット(24)を用いて同時に検出可能であり、前記空間ベクトルが、前記カメラ(26)の画像に基づいて、前記データ処理ユニット(22)を用いて決定可能であること、を特徴とする機器。
【請求項17】
請求項1〜16のいずれか1項に記載の機器であって、
前記機器(10)が、参照されるべき2つ以上の参照要素を含むこと、及び
前記標示装置(38、40)が、前記参照要素に選択的に連結するように適合され、前記参照要素の相対的位置が、前記データ処理ユニット(22)により、前記参照座標系において決定可能であること、
を特徴とする機器。
【請求項18】
請求項17に記載の機器であって、
前記参照要素が、骨ねじ(52)であり又は骨ねじを含むこと、及び
前記標示装置(38、40)が、延長要素を用いて、前記骨ねじ(52)に連結するように適合されていること、
を特徴とする機器。
【請求項19】
請求項18に記載の機器であって、前記標示装置(38、40)が、延長要素を用いて、経皮的に前記骨ねじ(52)に連結するように適合されていること、を特徴とする機器。
【請求項20】
請求項18又は19に記載の機器であって、前記延長要素が延長管(56)であること、を特徴とする機器。
【請求項21】
請求項17〜20のいずれか1項に記載の機器であって、
前記機器(10)が、前記参照要素を接続するための接続要素を含むこと、及び
前記接続要素の幾何学形状が、前記参照要素を接続するために、前記データ処理ユニット(22)により決定可能であること、
を特徴とする機器。
【請求項22】
請求項21に記載の機器であって、前記接続要素に関する指示が、前記ディスプレイユニット(28)上に提供可能であること、を特徴とする機器。
【請求項23】
請求項21又は22に記載の機器であって、前記接続要素が、前記標示装置(38、40)のうちの1つに連結するように適合され、前記接続要素の前記参照要素に対する位置が、前記データ処理ユニット(22)により決定可能であり、前記接続要素を案内するための指示が、使用者に対して前記ディスプレイユニット(28)上で提供可能であること、を特徴とする機器。
【請求項24】
請求項21〜23のいずれか1項に記載の機器であって、
前記接続要素がロッド(54)であること、及び
前記標示装置(40)が、前記ロッド(54)を案内するための挿入具又は埋込み具(60)に固定される又は固定可能であること、
を特徴とする機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療ナビゲーションシステムを含む医療機器に関する。
【背景技術】
【0002】
ナビゲーション支援型外科手術において、ナビゲーションシステムを備える機器等が外科医を支援するために使用される。ナビゲーションシステムを使用して、医療用標示装置によって標示される特徴点又は患者上の目印を記録することができる。患者に対する、そして特に患者上に配置された参照標示に対するその位置及び/又は配向が決定される標示装置を、手術器具又はインプラントに提供することも知られている。
【0003】
医療ナビゲーションシステムは実施において良好に機能することが分かる。ところが、医療ナビゲーションシステムは、少なからぬ空間要件を有し、無視できないほどの費用を伴う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】WO 2013/164770 A2
【特許文献2】WO 2011/020505 A1
【特許文献3】DE 20 2015 100313 U1
【特許文献4】WO 03/020146 A2
【特許文献5】DE 10 2008 022254 A1
【特許文献6】EP 2 910 206 A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、構造的に単純な設計であると共に極力費用効果的に製造することのできる医療ナビゲーションシステムを含む医療機器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的は、本発明によれば、カメラを有する光検出ユニットと、データ処理ユニットと、光ディスプレイユニットとを含む手持ち式の統合医療ナビゲーションシステムを備えた医療機器であって、前記データ処理ユニットが前記検出ユニット及び前記ディスプレイユニットに連結され、前記検出ユニットを用いて検出可能である医療用標示装置の位置及び/又は配向データが前記データ処理ユニットにより処理され且つ該データに関する情報が前記ディスプレイユニット上に提示されることが可能であり、前記機器が、前記検出ユニットを用いて検出可能な前記標示装置の方向に光を照射可能である照明ユニットを含む、医療機器により成就される。
【0007】
本発明による前記機器では、使い勝手のよい仕方で採用することのできる手持ち式の統合医療ナビゲーションシステムが使用される。本明細書において使用するように、「統合」とは、特に、前記ナビゲーションシステムの部品‐データ処理ユニット、ディスプレイユニット、照明ユニット‐が前記ナビゲーションシステムの共通のハウジング内に収容され、前記ナビゲーションシステムが好ましくはハウジングを1つのみ有することを意味すると理解することができる。例えば、外科医は前記ナビゲーションシステムを、検出されるべき前記標示装置に関して任意の所望の配向において位置決めすることができるため、前記ナビゲーションシステムは、従来の、空間的に固定された医療ナビゲーションシステムよりも一層容易に使用できるだけでなく、より広い用途に使用できるものでもあることが分かる。検出されるべき前記標示装置の方向に、前記照明ユニットによって光を照射することができ、前記光を、前記標示装置の標示要素により反射させて前記検出ユニットのカメラにより受信することができる。前記照明ユニットのおかげで、前記ナビゲーションシステム及び前記標示装置のほとんどどの相対的配向においても前記標示装置を確実に検出できることを保証することができる。更に、前記部品を手持ち式の装置内で一体化することにより、前記機器の製造費用を抑えたままにすることができる。
【0008】
前記検出ユニットの前記カメラは、特に環境の及び環境内に配置された前記標示装置の画像又は画像シーケンスを作り出す。前記データ処理ユニットが、画像処理アルゴリズムにより前記検出ユニットの1つ以上の前記画像を解析して前記標示装置の位置及び/又は配向を認識することができる。前記標示装置によって、以下でより詳細に説明するように、特に参照座標系を規定することが可能である。前記参照座標系では、付加的な標示装置による標示を用いて更なる特徴点、参照点、又は目印を記録することができる。この参照座標系は、前記標示装置に対して前記ナビゲーションシステムが空間的に固定されることを必要としない。
【0009】
前記ナビゲーションシステムが、スマートフォンとして又はタブレットコンピュータとして構成されることが特に有利である。前記スマートフォン又はタブレットコンピュータの前記データ処理ユニット内では、データ処理プログラムが実行可能である。特に、前記データ処理プログラムを用いることで、前記カメラにより作り出された画像が画像処理アルゴリズムの助けを借りて解析され、前記標示装置の前記標示要素が認識され追跡される。
【0010】
前記機器の、構造的に単純な設計を達成するために、前記ナビゲーションシステムは、有利なことに前記照明ユニットを含む。
【0011】
前記照明ユニットが、少なくとも1つのLED光源を含むことが好都合である。
【0012】
好ましくは、前記照明ユニットにより例えば約400nmから約800nmまでのスペクトル範囲の又はその一部の可視光が照射可能である。
【0013】
前記ナビゲーションシステムの前記構造的設計を簡易にするために、前記検出ユニットは、有利なことに厳密に1つのカメラを含む。ステレオカメラの用意は不要である。前記1つのカメラの画像に基づいて、前記データ処理ユニットは前記標示装置を確実に空間内で追跡することができる。
【0014】
前記カメラを用いて記録可能な画像は、好都合なことに前記ディスプレイユニット上に提示可能である。このようにして、前記標示装置の追跡の他に追加情報を記録することができる。例えば外科手順を文書化することができる。
【0015】
特に最後に言及した有利な実施形態に関連して、前記ナビゲーションシステムが、データ、特に前記カメラを用いて撮影される又は撮影された画像を外部受信ユニットに送信するための通信インタフェースを含むことが好都合である。例えば訓練の又は文書化の目的で、前記カメラの画像に加えて、前記標示装置の位置及び/又は配向データ、特徴点、参照点、又は解剖学的目印の前記データを送信することができる。
【0016】
前記ナビゲーションシステムを自由に空間移動可能であり、手術器具又はインプラントとのいかなる機械的連結もないことが特に有利である。結果として、前記ナビゲーションシステムは使用における用途がより広くなり、操作者にとって前記機器の取扱いが簡単になる。
【0017】
前記機器は、前記照明ユニットの前記光を反転するように構成された複数の標示要素を有する少なくとも1つの医療用標示装置を含むことができる。例えば前記標示要素は、特に、例えば400nm〜800nmの範囲の可視光を反転するように最適化される。
【0018】
前記標示装置の位置及び/又は配向の決定の精度を上げるために、前記標示装置が4つ以上の標示要素を含むことが好都合である。
【0019】
前記標示装置が、保持要素であって、前記標示要素が該保持要素上で保持される保持要素と、前記標示要素と前記保持要素との間のコントラストを増すために、前記標示要素にそれぞれが関連付けられるコントラスト強調要素とを含むことが有利であると分かる。
【0020】
例えば前記コントラスト要素は、各々の標示要素を包囲すると共に、前記照明ユニットにより照射される前記光に対して反射率を有するリングとして構成され、この反射率は前記標示要素の反射率よりも低い。照明中、前記標示要素は、前記照明ユニットにより照射される前記光を、前記コントラスト強調要素よりも大きい程度に反射する。これによって、前記カメラの前記画像において、前記データ処理ユニットにより前記標示要素の画像成分をより良好に検出し、前記標示装置の位置及び/又は配向をより正確に決定することができる。
【0021】
前記標示装置は、有利なことに各々の標示要素に関連付けられると共に、前記照明ユニットにより照射される前記光に対して透明である、フード形の保護要素を含む。前記保護要素は、例えば球状のキャップ形の構成を有すると共に、可視光に対して光学的に透明である。前記保護要素により、前記標示要素は例えば血液による汚れから保護される。
【0022】
有利な実施形態において、前記機器が2つ以上の標示装置を含み、前記標示装置により参照される参照点を結ぶ空間ベクトルが前記データ処理ユニットを用いて決定可能であり、前記標示装置のうちの1つが、前記参照座標系を規定するための参照標示装置として使用可能であることが好都合である。前記更なる標示装置の位置及び配向は、前記標示装置のうちの1つによって規定される前記参照座標系において決定することができる。これによって、前記標示装置により参照される参照点を、空間ベクトルを介して接続することができる。このことは、前記標示装置に対する前記ナビゲーションシステムの位置とは無関係に可能である。これによって、外科医が手術部位及び前記標示装置を極力良好に視認できるようにするために、この外科医が前記ナビゲーションシステムを自由に位置決めすることが可能になる。
【0023】
有利なことに、前記標示装置は前記検出ユニットを用いて同時に検出可能であり、前記空間ベクトルは、前記カメラの画像、特に唯一の画像に基づいて、前記データ処理ユニットを用いて決定可能である。
【0024】
前記ナビゲーションシステムが、絶対参照系の少なくとも1つの空間方向における前記ナビゲーションシステムの傾斜に関する信号を提供するためのセンサユニットを含み、前記空間ベクトルの向きが前記絶対参照系において前記データ処理ユニットを用いて決定可能であることが好都合である。これによって、位置及び配向データが前記標示装置の前記参照座標系から前記絶対参照系に及びその逆に変換されることが可能になる。このことにより、例えば解剖学的目印のある軸及び平面を、前記絶対参照系における患者の位置を事前の知識なしに決定することができる。
【0025】
前記絶対参照系において、例えば2つ以上の複数の空間ベクトルの向きに基づいて、これらの向きにより規定される平面、例えば骨盤入口平面の参照面、特に水平面に対する傾斜を決定することができる。
【0026】
有利な実施形態において、前記機器は、参照されるべき2つ以上の参照要素を含み、前記標示装置は、好ましくは前記参照要素に選択的に連結するように適合され、前記参照要素の相対的位置が前記データ処理ユニットによって前記参照座標系において決定可能である。各々の標示装置を、参照要素に関して空間的に規定された位置へともたらすことができる。これによって、前記参照座標系において前記参照要素の位置及び配向を決定することができる。標示装置が前記参照要素のうちの1つに留まるおかげで、そして、参照されるべき更なる参照要素が、前記更なる標示装置を用いて標示されるおかげで、前記参照要素の相対的位置を、例えば開いた又は閉じた折れ線の形態において決定することができる。
【0027】
前記標示要素が、前記参照要素に間接的に又は直接的に連結するように適合されていることを実現することができる。
【0028】
前記参照要素は、例えば骨ねじであり又は骨ねじを含み、前記標示装置が、好ましくは延長要素、特に延長管を用いて、好ましくは経皮的に前記骨ねじに連結できるように適合されている。このことにより、前記骨ねじの相対的位置を好ましくは経皮的に決定することができる。
【0029】
前記機器が、前記参照要素を接続するための接続要素を含み、前記参照要素を接続するために前記接続要素の幾何学形状が前記データ処理ユニットにより決定可能であり、好ましくは、前記接続要素に関する指示が前記ディスプレイユニット上に提供可能であることが有利である。前記参照要素の相対的位置が既知である場合、前記データ処理ユニットは、前記参照要素を互いに接続するためにどの種類の接続要素が必要であるかを計算することができる。前記ディスプレイユニット上に、適切な接続要素を選択又は形成するためのこれに関する指示を提示することができる。
【0030】
好都合なことに、前記接続要素は前記標示装置のうちの1つに連結するように適合され、前記参照要素に対する前記接続要素の位置が、好ましくは前記データ処理ユニットにより決定可能であり、前記接続要素を案内するための指示が前記ディスプレイユニット上で使用者に対して提供可能である。前記使用者に、前記参照要素を前記ナビゲーションシステム及びそのディスプレイユニットを介して前記接続要素に接続するための指示を与えることができる。この目的で、前記接続要素は標示装置に連結されるように適合され又は標示装置に連結され、例えば前記標示装置は、前記接続要素がそうであるように、前記接続要素の埋込み具に固定される。前記接続要素を前記参照座標系において追跡することにより、前記参照要素の互いへの接続が、外科医にとってかなり簡素化される。このことにより、特に前記参照要素の互いへの単純な経皮的接続が可能になる。
【0031】
前記接続要素は、例えばロッドとすることができ、前記標示装置は、上述のように前記ロッドを案内するための挿入具又は埋込み具に固定される又は固定可能である。
【0032】
本発明の好適な実施形態の以下の記載は、図面と合わせると本発明をより詳細に説明するように役立つであろう。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】手持ち式の統合ナビゲーションシステム及び外科用固定システムを含む本発明による機器の有利な実施形態の略図。
図2図1のナビゲーションシステムの略ブロック図。
図3】医療用標示装置の標示要素の略部分図。
図4】更なる図における図1の機器。
図5図1の機器の更なる図。
図6】接続要素を選択するための指示がナビゲーションシステムにより表示される図1のナビゲーションシステムの略図。
図7図6に対応する更なる図。
図8】接続要素を挿入する際の図1の機器。
図9】接続要素を挿入するための指示を与えるナビゲーションシステムの略図。
図10図9に対応する更なる図。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図1は参照符号10で表す、本発明による医療機器の有利な実施形態の略斜視図を示す。機器10は、医療ナビゲーションシステム12及び外科用固定システム14を含む。外科用固定システム14は、図1において部分的にのみ示す。図1は、互いに対して安定化されるべき複数の椎骨16も示す。
【0035】
ナビゲーションシステム12(図2も参照のこと)は、手持ち式の統合ナビゲーションシステムである。本明細書において使用するように、「統合」とは、特にナビゲーションシステム12の部品全てが共通のハウジング18内に配置されることを意味すると理解されるべきである。ナビゲーションシステム12は、特にタブレットコンピュータとして又は本事例ではスマートフォン20として構成される。スマートフォン20は、使い勝手のよい仕方で外科医により操作され、好ましくは自由に空間移動させることができる。
【0036】
ナビゲーションシステム12は、例えばマイクロプロセッサを含む又はマイクロプロセッサとして構成されるデータ処理ユニット22を含む。データ処理ユニット22により、データ処理プログラムが実行可能である。データ処理プログラムを用いて、ナビゲーションシステム12の検出ユニット24の光学画像を、解析することができる。それ故に、データ処理プログラムは、特に画像処理アルゴリズムを含む。検出ユニット24は、1つの好ましくは厳密に1つのディジタルカメラ26を含む。
【0037】
データ処理ユニット22は、検出ユニット24に加えて、ナビゲーションシステム12のディスプレイユニット28、センサユニット30、及び通信インタフェース32とも電気接続している。
【0038】
ディスプレイユニット28は、特にタッチスクリーンとして構成される。
【0039】
センサユニット30は傾斜センサを含み、傾斜センサを用いて絶対参照系、具体的にはワールド座標系において、空間内の複数方向におけるナビゲーションシステム12の傾斜が決定可能である。これによって、例えば水平面に対するナビゲーションシステム12の傾斜を決定することが可能である。
【0040】
ナビゲーションシステム12により、空間的に離れた外部受信器に、通信インタフェース32を介してデータを送信することができる。この通信インタフェースは、好ましくは無線通信インタフェース32である。データは、特にカメラ26の画像を含めることができ、医療用標示装置の位置及び/又は配向データ、医療用標示装置により参照される特徴点、参照点、又は解剖学的目印をも含めることができる。
【0041】
ナビゲーションシステム12は、カメラ26の視野を少なくとも部分的に照明するための照明ユニット34を更に含む。照明ユニット34は、好ましくは少なくとも1つのLED光源36を含む。好都合なことに、照明ユニット34は約400nm〜約800nmの可視スペクトル範囲の又はその一部の光を照射する。
【0042】
機器10は少なくとも1つの医療用標示装置38を含む。標示装置38は、固定システム14の部品とすることができる。本事例において、2つの標示装置38、40が設けられる。標示装置38及び40は機能的に同一であるが、空間的に構成が異なる。このことにより、位置及び/又は配向に関して、標示装置38、40の両方を、ナビゲーションシステム12を用いて、空間内で別々に又は同時に検出、特定及び追跡することが可能である。
【0043】
標示装置38、40は各々、図3に部分的に概略的に示す複数の医療用標示要素42を含む。標示要素42は、保持要素44上に固定される。標示要素42は、LED光源36により照射された光を反射するように設計される。このようにして、標示要素42の信号成分をカメラ26により確実に検出し、データ処理ユニット22により確実に特定することができる。
【0044】
標示要素42と保持要素44との間のコントラストを増すために、標示装置38、40は各々のコントラスト強調要素46を含む。コントラスト強調要素46はリング48として構成される。LED光源36により照射された光に対するリング48の反射率は、標示要素42の反射率よりも低い。
【0045】
リング48は、標示要素42、及びこれらの標示要素に関連付けられる各々の保護要素50を包囲する。保護要素50は球状のキャップ形であり、標示要素42を包囲する。従って、保護要素50はフード形の構成を有する。これらの保護要素は、LED光源36により照射された光に対して透明であり、標示要素42を例えば血液による汚れから保護する。
【0046】
固定システム14は、椎骨16を互いに対して安定化するように働く。この目的で、固定システム14は、骨ねじ52の形態の固着要素を、それ自体知られているやり方で含む。骨ねじ52は各々の椎骨16内で固定することができる。更に、ナビゲーションシステム12は、ロッド54の形態の接続要素(図8)を含む。ロッド54は骨ねじに、緊締式のやり方で固定することができる。
【0047】
固定システム14は、延長管56の形態の延長要素を更に含む。延長管56は骨ねじ52に、それ自体知られているやり方で、力ロック式及び/又はポジティブロック式に接続することができる。骨ねじ52は、好ましくは経皮的に作用させることができる。
【0048】
標示装置38、40は延長管56に、解放可能に及び選択的に固定することができる。この目的で、例えば延長管56上で保持されるアダプタ要素58が設けられる。
【0049】
アダプタ要素58及び延長管56の幾何学形状は、ナビゲーションシステム12内に記憶される。標示装置38、40のうちの一方の位置及び/又は配向を検出することにより、この位置及び/又は配向から、対応する延長管56が接続される骨ねじ52の位置及び配向を推断することができる。
【0050】
機器10の、特にナビゲーションシステム12の動作モード及び使用を以下で説明することにする。
【0051】
ナビゲーションシステム12を用いて、骨ねじ52により規定される参照点が参照座標系において決定される。それ故に、骨ねじ52は参照要素である。参照座標系は、標示装置38、40のうちの1つにより、本事例では例えば標示装置38により規定される。
【0052】
外科医は、ナビゲーションシステム12のカメラ26を用いて、特に標示装置38、40(図1)を包含する手術部位の画像を撮影する。標示装置38は骨ねじ52のうちの1つに連結され、標示装置40は、該骨ねじ52の横にある骨ねじに連結される。
【0053】
カメラ26の画像において、標示要素42をその反射特性及びLED光源36による照明のおかげで確実に認識することができ、これによって、標示装置38、40の位置及び配向を、データ処理ユニット22により、画像処理アルゴリズムによって決定することができる。このことにより、骨ねじ52により規定される参照点の空間ベクトルを参照座標系において決定することが可能になる。
【0054】
センサユニット30の信号を考慮することにより、空間ベクトルの向きが絶対座標系においてどのように広がるのかを判定できることが特に有利である。このことは、患者の位置及び配向の事前の知識なしに、且つ、このために患者を固定する必要なしに可能である。
【0055】
手術の更なる過程において、標示装置40を更なる延長管56に接続することができる。更なる延長管56は、骨ねじ52のうちの次の1つに連結される(図5)。標示装置38は、第1の骨ねじ52に連結されたままである。標示装置38により参照座標系が規定され続けるため、今回標示装置40により参照される更なる骨ねじ52の位置も参照座標系において決定することができる。
【0056】
カメラ26を用いて、手術部位の更なる画像が撮影される。この画像は、標示装置38及び40を含む。個々の画像ではなくビデオの形態の画像シーケンスが撮影されることも考えられる。1つ以上の更なる画像を用いて、骨ねじ52により規定されるものとしての参照点を結ぶ更なる空間ベクトルを参照座標系において決定することができる。
【0057】
空間ベクトルから、参照点の(本事例では開いた)折れ線を参照座標系において計算することができる。この情報に基づいて、データ処理ユニット42は使用すべきロッド54の提案をディスプレイユニット28上で外科医に与えることができる。使用すべきロッド54によって、骨ねじ52を所望の相対的配向に固定することができる。図6及び図7は、例として提案されたロッド54の長さ、その種類、及びそのロッド曲率をそれぞれ示す。
【0058】
ナビゲーションシステム12は、ロッド54の埋込みを支援するために使用することもできる(図8図10)。ロッド54は、埋込みのため挿入具又は埋込み具60に固定される。標示装置、本事例では標示装置40が埋込み具60に接続される。埋込み具60及びロッド54の幾何学形状が既知であるおかげで、ロッド54の位置及び配向を参照座標系において決定することができる。参照座標系は、延長管56のうちの第1の延長管及び第1骨ねじ52に固定されたままである標示装置38により規定され続ける。
【0059】
使用者はカメラ26を用いて、標示装置38及び40が撮影された、手術部位の更なる画像又は画像シーケンスを作り出す。データ処理ユニット22は、骨ねじ52に対するロッド54の位置及び配向を、画像処理によって決定することができる。操作者には、埋込み具60を案内するための命令を、ディスプレイユニット28を介して与えることができる。図9及び図10は、このことを概略的に示す。ディスプレイユニット28上で、ロッド54及び骨ねじ52の記号を挿入することができる。これらの記号に基づいて、使用者は、骨ねじ52上に配置された挿入開口を通してロッド54が導かれるような仕方で、埋込み具60を案内することができる。命令は、カメラ26により作り出される画像の代わりに挿入することができる又は画像に重ね合わせることができる。
【0060】
ディスプレイユニット28上の骨ねじ52及びロッド54の記号を、図面において、同じ参照符号及び付加的なプライムマーク(’)により表す。
【0061】
上述のように、動作中に記録された情報、例えば参照点、解剖学的目印等の、又は、特にカメラ26の画像も、通信インタフェース32を介して外部受信器に送信することができる。この情報は、例えば動作を文書化するために又は訓練の目的で使用することができる。
【0062】
機器10を用いれば、ナビゲーションシステム12が統合であり、手持ち式で空間における何ら固定されないことが特に好都合であると分かる。このことにより、手術部位の極力良好な画像を撮影するために、外科医はナビゲーションシステム12を自由に空間移動させることができる。このことを、ナビゲーションシステム12を固定システム14に対する2つの異なる配向において示す図4に、例として示す。
【符号の説明】
【0063】
10 機器
12 ナビゲーションシステム
14 固定システム
16 椎骨
18 ハウジング
20 スマートフォン
22 データ処理ユニット
24 検出ユニット
26 カメラ
28 ディスプレイユニット
30 センサユニット
32 通信インタフェース
34 照明ユニット
36 LED光源
38 標示装置
40 標示装置
42 標示要素
44 保持要素
46 コントラスト強調要素
48 リング
50 保護要素
52 骨ねじ
54 ロッド
56 延長管
58 アダプタ要素
60 埋込み具
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10