特許第6661661号(P6661661)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6661661
(24)【登録日】2020年2月14日
(45)【発行日】2020年3月11日
(54)【発明の名称】リリーフ弁構造体
(51)【国際特許分類】
   F16K 17/04 20060101AFI20200227BHJP
   F01M 1/16 20060101ALI20200227BHJP
【FI】
   F16K17/04 D
   F16K17/04 A
   F01M1/16 C
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-555890(P2017-555890)
(86)(22)【出願日】2015年12月14日
(86)【国際出願番号】JP2015084965
(87)【国際公開番号】WO2017103979
(87)【国際公開日】20170622
【審査請求日】2018年8月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000144810
【氏名又は名称】株式会社山田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100067356
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 容一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100160004
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 憲雅
(74)【代理人】
【識別番号】100120558
【弁理士】
【氏名又は名称】住吉 勝彦
(74)【代理人】
【識別番号】100148909
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧澤 匡則
(72)【発明者】
【氏名】王 宇
(72)【発明者】
【氏名】董 孝▲鋒▼
(72)【発明者】
【氏名】井上 宏和
【審査官】 冨永 達朗
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−219028(JP,A)
【文献】 特開2013−019365(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3179934(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 17/04
F01M 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポンプボディに付属されるリリーフ弁構造体であって、
このリリーフ弁構造体は、前記ポンプボディに一体形成される弁ハウジングと、この弁ハウジングに移動可能に収納されるスプールと、前記弁ハウジングに収納され前記スプールを所定方向へ付勢する弁ばねと、前記弁ハウジングの一端に取付けられ前記弁ばねの抜け止めを図るばね抑え部材とを備え、
前記スプールは、筒部と、この筒部の一端を塞ぐと共に前記弁ばねに当接する底部と、前記筒部を貫通する貫通穴とを有し、
前記弁ハウジングは、前記ポンプボディの吐出側からオイルを導入する導入部と、吐出圧が第1所定圧に高まり前記導入部から導入したオイルで前記弁ばねが縮む方向へ前記スプールが移動したときに前記貫通穴に通じて前記導入したオイルを前記ポンプボディの吸入側へ排出する第1排出部と、
吐出圧が前記第1所定圧より高圧の第2所定圧に高まり前記導入部から導入したオイルで前記弁ばねが縮む方向へ前記スプールが移動したときに開いて前記導入したオイルを前記ポンプボディの吸入側へ排出する第2排出部及びこの第2排出部とほぼ同時に前記貫通穴に連通し前記導入したオイルを前記ポンプボディの吸入側へ排出する第3排出部と、
前記弁ばね周りのオイルを前記ポンプボディの吸入側へ逃がす圧逃がし孔とを有し、
前記導入部から前記ばね抑え部材までの間に、前記第2排出部、前記第1排出部、前記第3排出部及び前記圧逃がし孔がこの順で設けられており、
吐出圧が前記第1所定圧と前記第2所定圧との間にあるときに、前記貫通穴が前記第1排出部と前記第3排出部との中間に位置し、前記貫通穴は前記筒部で塞がれ、前記第1排出部及び前記第2排出部が前記筒部で塞がれて、弁閉じ状態になることを特徴とするリリーフ弁構造体。
【請求項2】
前記第2排出部は、鋳抜き穴であることを特徴とする請求項1記載のリリーフ弁構造体。
【請求項3】
前記第3排出部は、切削穴であることを特徴とする請求項1記載のリリーフ弁構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オイルポンプに付属するリリーフ弁構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載される内燃機関は、クランク軸やカム軸などの回転軸を備え、回転軸を支える軸受を備え、軸受に適量の給油を行うオイルポンプを備えている。
オイルポンプは、リリーフ弁を備える。吐出圧が所定圧又は開弁圧より高くなるとオイルをリリーフ弁から逃がすことにより、吐出圧の適正化を図る。
【0003】
吐出圧が所定圧又は開弁圧に達するとリリーフ弁が開くが、これだけでは吐出圧の制御が単純すぎる場合がある。そこで、従来から、よりきめ細かく開閉が行えるリリーフ弁が提案されてきた(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1の技術を次図に基づいて説明する。
図4(a)、(b)は従来のリリーフ弁構造体の基本構成を説明する図であり、図4(a)に示されるように、ポンプボディ101に、吸入ポート102と、ローター室103と、吐出ポート104とが形成されている。
【0005】
ローター室103には、インナーローター105と、このインナーローター105を囲うアウターローター106とが収納される。
内燃機関のクランク軸で直接又は間接的にインナーローター105が回されると、アウターローター106が連れ回る。この回転により、インナーローター105とアウターローター106との間の容積の大きさが変化する。この変化により、吸入、圧縮、吐出からなるポンプ作用が発生する。
【0006】
ポンプボディ101には、さらに、図面奥に配置される弁ハウジング114が付属される。この弁ハウジング114内に通じる第1排出部111と第2排出部112と圧逃がし孔113とが、ポンプボディ101に設けられている。
図4(b)に示されるように、弁ハウジング114に、移動自在にスプール115が収納されると共にスプール115を所定方向へ付勢する弁ばね116が収納されている。
【0007】
第1排出部111と第2排出部112はスプール115で開閉される。
一方、圧逃がし孔113は、弁ばね116周りの空間が密閉化されることを防ぐ貫通孔であって、常に開かれている。
【0008】
吐出圧は、弁ばね116とは反対側に設けられるリリーフ流入部117を介してスプール115の正面(弁ばね116が押す後面とは逆の面)に作用する。
スプール115は、リリーフ流入部117側が開口する底付き筒体であり、筒部分に径方向の貫通穴118を備えている。
【0009】
図4(b)では、弁ハウジング114の内周面で貫通穴118が塞がれているため、オイルが第1・第2排出部111、112から排出されることはなく、リリーフ弁は閉じている。
【0010】
吐出圧が高まると、スプール115の正面が押され、スプール115は弁ばね116を圧縮する方向へ移動する。この移動により、貫通穴118が第1排出部111に合致すると、吐出側のオイルが、貫通穴118及び第1排出部111を介して吸入側へ排出され、吐出圧の上昇が緩和される。
【0011】
吐出圧がさらに高まると、スプール115は弁ばね116を圧縮する方向へさらに移動する。この移動により、貫通穴118が第1排出部111を通り過ぎた位置に至る。この際に、弁ばね116周りのオイルが圧逃がし孔113を介して排出されるため、スプール115の移動が妨げられることはない。
弁ハウジング114の内周面で貫通穴118が塞がれ、オイルが第1・第2排出部111、112から排出されることはなく、リリーフ弁は閉状態になる。結果、吐出圧が急増する。
【0012】
吐出圧がさらに高まると、スプール115は弁ばね116を圧縮する方向へさらに移動する。この移動により、スプール115の正面が第2排出部112に至る。すると、吐出側オイルが、第2排出部112を介して吸入側へ排出され、吐出圧の上昇が緩和される。
【0013】
ところで、第2排出部112を用いてオイルを排出する場合に、吐出圧の上昇をより穏やかにすることが求められることがある。また、オイルが排出される開弁圧の精度を高くすることが求められることがある。
【0014】
この要求に対応するために、第2排出部112の開口面積を大きくしようとすると、図4(a)において、2個の第2排出部112、112の間の残存肉部119が細くなり、残存肉部119の強度が低下する。また、第2排出部112の開口面積が大きくなると、第2排出部112の配置(レイアウト)が困難になる。
【0015】
また、第2排出部112は、一般に切削又は鋳抜きで形成される。切削では加工費が嵩む。鋳抜きは切削加工費を節約することができる利点を有するが、寸法精度がばらつきやすい。ばらつくと、残存肉部119を安定的に確保することが難しく、第2排出部112の断面積拡大が更に難しくなる。さらに、鋳抜きではオイルが排出される開弁圧がばらつき、精度の高い油圧制御が難しくなる。
【0016】
しかし、吐出圧の一層の緩和が求められる中、オイル排出量を増やすことができるリリーフ弁構造体が望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特開2010−107036号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明は、オイル排出量を増やすことで吐出圧の上昇をより緩和でき、開弁圧のばらつきを低減することができるリリーフ弁構造体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
請求項1に係る発明は、ポンプボディに付属されるリリーフ弁構造体であって、
このリリーフ弁構造体は、前記ポンプボディに一体形成される弁ハウジングと、この弁ハウジングに移動可能に収納されるスプールと、前記弁ハウジングに収納され前記スプールを所定方向へ付勢する弁ばねと、前記弁ハウジングの一端に取付けられ前記弁ばねの抜け止めを図るばね抑え部材とを備え、
前記スプールは、筒部と、この筒部の一端を塞ぐと共に前記弁ばねに当接する底部と、前記筒部を貫通する貫通穴とを有し、
前記弁ハウジングは、前記ポンプボディの吐出側からオイルを導入する導入部と、吐出圧が第1所定圧に高まり前記導入部から導入したオイルで前記弁ばねが縮む方向へ前記スプールが移動したときに前記貫通穴に通じて前記導入したオイルを前記ポンプボディの吸入側へ排出する第1排出部と、
吐出圧が前記第1所定圧より高圧の第2所定圧に高まり前記導入部から導入したオイルで前記弁ばねが縮む方向へ前記スプールが移動したときに開いて前記導入したオイルを前記ポンプボディの吸入側へ排出する第2排出部及びこの第2排出部とほぼ同時に前記貫通穴に連通し前記導入したオイルを前記ポンプボディの吸入側へ排出する第3排出部と、
前記弁ばね周りのオイルを前記ポンプボディの吸入側へ逃がす圧逃がし孔とを有し、
前記導入部から前記ばね抑え部材までの間に、前記第2排出部、前記第1排出部、前記第3排出部及び前記圧逃がし孔がこの順で設けられており、
吐出圧が前記第1所定圧と前記第2所定圧との間にあるときに、前記貫通穴が前記第1排出部と前記第3排出部との中間に位置し、前記貫通穴は前記筒部で塞がれ、前記第1排出部及び前記第2排出部が前記筒部で塞がれて、弁閉じ状態になるリリーフ弁構造体を提供する。
【0020】
請求項2に係る発明では、好ましくは、第2排出部は鋳抜き穴である。
【0021】
請求項3に係る発明では、好ましくは、第3排出部は、切削穴である
【発明の効果】
【0023】
請求項1に係る発明では、吐出圧が第2所定圧に達するときに第3排出部からオイルを排出させる。第2排出部は、吐出圧が第2所定圧に達するとオイルを排出する。したがって、吐出圧が第2所定圧に達すると、第3排出部に加えて第2排出部からもオイルを排出させることができる。第2排出部と第3排出部の両方からオイルを排出するため、吐出圧の上昇を大幅に緩和することができる。
また、第2排出部を無理に大きくする必要はない。第2排出部の大きさを抑えることができるため、レイアウトの自由度を高めることができる。
よって、本発明によれば、オイル排出量を増やすことで吐出圧の上昇をより緩和できるリリーフ弁構造体が提供される。
【0024】
請求項2に係る発明では、第2排出部は、鋳抜き穴である。第2排出部は切削穴でもよいが加工費が嵩む。鋳抜き穴であれば加工費が不要又は低減できる。
【0025】
請求項3に係る発明では、第3排出部は切削穴である。切削穴は、鋳抜き穴に比較して寸法精度がよい。精度のよい第3排出部からオイルを排出させるため、開弁圧のばらつきを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明に係るリリーフ弁構造体の基本構成を説明する図である。
図2】リリーフ弁構造体の作用を説明する図である。
図3】リリーフ弁構造体の変更例を説明する図である。
図4】従来のリリーフ弁構造体の基本構成を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。
【実施例】
【0029】
図1(a)に示されるように、ポンプボディ10に、吸入ポート11と、ローター室12と、吐出ポート13とが形成されている。
【0030】
ローター室12には、インナーローター14と、このインナーローター14を囲うアウターローター15とが収納される。インナーローター14とアウターローター15からなるポンプは、内接歯車ポンプ又はトロコイドポンプと呼ばれる。
【0031】
内燃機関のクランク軸で直接又は間接的にインナーローター14が回されると、アウターローター15が連れ回る。この回転により、インナーローター14とアウターローター15との間の隙間の大きさが変化する。隙間の大きさが変化することで、吸入、圧縮、吐出からなるポンプ作用が発生する。
ポンプボディ10には、さらに、図面奥に配置されるリリーフ弁構造体20が付属されている。
【0032】
図1(b)に示されるように、リリーフ弁構造体20は、ポンプボディ10に一体形成される弁ハウジング21と、この弁ハウジング21に移動可能に収納されるスプール22と、弁ハウジング21に収納されスプール22を所定方向へ付勢する弁ばね23と、弁ハウジング21の一端に取付けられ弁ばね23の抜け止めを図るばね抑え部材24とを備えている。ばね抑え部材24は、弁ばね23の一端を抑えるねじ込みプラグ、打ち込みプラグ、蓋部材、その他の部材であればよく、種類や形態は問わない。
【0033】
スプール22は、筒部25と、この筒部25の一端を塞ぐと共に弁ばね23に接触する底部26と、筒部25を径方向に貫通する貫通穴27とを有している。スプール22の外周面に環状溝28を設け、この環状溝28に貫通穴27の一端を臨ませるようにすれば、スプール22が移動軸周りに回転することが許容される。
【0034】
弁ハウジング21は、ポンプボディ10の吐出ポート13側からオイルを導入する導入部29を有する。第2排出部32、第1排出部31、第3排出部33及び圧逃がし孔34は、導入部29からばね抑え部材24までの間にこの順で配置されている。
【0035】
図1(a)に示されるように、第2排出部32、第1排出部31、第3排出部33及び圧逃がし孔34は、ポンプボディ10の吸入ポート11側に開口している。
以上の構成からなるリリーフ弁構造体20の作用を次に述べる。
なお、便宜上、使用範囲内で弁ばね23が最も伸びたときにスプール22が後退限位置に達したと呼ぶことにする。
【0036】
図2(a)は、吐出圧が十分に小さい場合を示し、導入部29からスプール22に加わる圧力が小さいため、弁ばね23の付勢作用により、スプール22は後退限位置にある。この後退限位置にあるときは、貫通穴27は、第1排出部31と第2排出部32との中間に位置しており、貫通穴27は弁ハウジング21の内面で塞がれている。すなわち、リリーフ弁構造体20は弁閉じ状態にある。
吐出圧が上昇すると、弁ばね23を圧縮する方向へ、スプール22は前進する。
【0037】
図2(b)に示されるように、吐出圧が第1所定圧に達すると、貫通穴27が第1排出部31に合致する。すると、導入部29から流入したオイルが、貫通穴27及び第1排出部31を介して排出される。この排出により、吐出圧の上昇が緩和される。
吐出圧がさらに上昇すると、弁ばね23を圧縮する方向へ、スプール22はさらに前進する。
【0038】
すると、図2(c)に示されるように、貫通穴27が第1排出部31と第3排出部33との中間に位置し、貫通穴27は弁ハウジング21の内面で塞がれている。すなわち、リリーフ弁構造体20は弁閉じ状態になる。
吐出圧がさらに上昇すると、弁ばね23を圧縮する方向へ、スプール22はさらに前進する。
【0039】
すると、図2(d)に示されるように、今まで閉じられていた第2排出部32が開き、オイルが第2排出部32を介して排出される。また、吐出圧が第2所定圧に達すると、貫通穴27が第3排出部33に合致する。すると、導入部29から流入したオイルが、第2排出部32及び第3排出部33を介して排出される。
すなわち、第2排出部32と第3排出部33の両方からオイルが排出される。この排出により、吐出圧の上昇がより一層緩和される。
【0040】
なお、図1に示される第3排出部33を、図1に示される位置よりも第1排出部31に若干近づけて設けてもよい。または、図1に示される第2排出部32を図1に示される位置よりも第1排出部31に若干近づけて設けてもよい。
これで、吐出圧が第1所定圧を超え第2所定圧未満の圧力になると、第3排出部33からオイルを排出させることができる。
【0041】
第3排出部33が切削穴である場合、切削穴は、鋳抜き穴に比較して寸法精度がよい。第2排出部32より先に、精度のよい第3排出部33からオイルを排出させるため、開弁圧のばらつきを低減することができる。第2排出部32を鋳抜き穴とした場合、第3排出部33を切削穴にすることにより、第2所定圧のばらつきを低減できる。
吐出圧が第2所定圧に達したら第3排出部33と第2排出部32の両方からオイルを排出する。
【0042】
ところで吐出圧が第2所定圧に達したら第3排出部33と第2排出部32の両方からオイルを排出するとは以下を意味する。理想的には第2所定圧で第3排出部33と第2排出部32とが同時にオイルを排出するものであるが、製造公差分まで第3排出部33の方が第2排出部32よりも僅かに高い油圧でオイルが排出するものも含まれる。
【0043】
従来、第2排出部32のみからオイルを排出していたものを、本発明では、第2排出部32と第3排出部33の両方からオイルを排出する。オイルの排出量を大幅に増加することができる。また、第2排出部32を無理に大きくする必要がないため、寸法精度の公差が大きい鋳抜きで第2排出部32を形成することができる。鋳抜きであれば、機械加工による穴加工を省くことができ、加工費用を下げることができる。
【0044】
また、図1(a)、(b)から明らかなように、第1排出部31と第2排出部32の間を適度に広げることができ、第1排出部31と第3排出部33の間を適度に広げることができ、更に第3排出部33と圧逃がし孔34の間を適度に広げることができるため、第1〜第3排出部31〜33及び圧逃がし孔34の配置自由度が高まる。
さらに、最も面積が大きい第2排出部32の面積を抑制できる。この点からも配置自由度を高くすることができる。
【0045】
吐出圧がさらに上昇すると、弁ばね23を圧縮する方向へ、スプール22はさらに前進する。
図2(e)では、弁ばね23周りのオイルは圧逃がし孔34を通って弁ハウジング21の外へ逃げる。弁ばね23周りのオイルが、スプール22で封じ込められることはない。また、スプール22が後退するときには、弁ハウジング21の外のオイルが弁ばね23周りへ流入する。よって、スプール22の移動が円滑になる。
【0046】
以上の説明から明らかなように、弁ハウジング21は、吐出圧が第1所定圧に高まり導入部29から導入したオイルで弁ばね23が縮む方向へスプール22が移動したときに貫通穴27に通じて導入したオイルをポンプボディ10の吸入側へ排出する第1排出部31(図2(b))を備えている。
【0047】
加えて、弁ハウジング21は、吐出圧が第1所定圧より高圧の第2所定圧に高まり導入部29から導入したオイルで弁ばね23が縮む方向へスプール22が更に移動したときに開いて導入したオイルをポンプボディ10の吸入側へ排出する第2排出部32(図2(d))を備えている。
【0048】
さらに加えて、弁ハウジング21は、吐出圧が、第1所定圧を超え第2所定圧又は第2所定圧未満の圧力になり導入部29から導入したオイルで弁ばね23が縮む方向へスプール22が移動したときに貫通穴27に通じて導入したオイルをポンプボディ10の吸入側へ排出する第3排出部33(図2(d))を備えている。
【0049】
次に、第1〜第3排出部31〜33の形態の変更例を、図3に基づいて説明する。
図3(a)に示す例では、図1(b)と同位置に、第2排出部32、第1排出部31、第3排出部33及び圧逃がし孔34が配置されている。第2排出部32は2個の矩形の鋳抜き穴で構成され、第1排出部31は2個の切削丸穴で構成され、第3排出部33は1個の切削丸穴で構成される。
【0050】
図3(b)に示す例でも、図1(b)と同位置に、第2排出部32、第1排出部31、第3排出部33及び圧逃がし孔34が配置されている。第2排出部32は1個の丸穴(鋳抜き穴と切削穴の何れでもよい。)で構成され、第1排出部31は2個の切削丸穴で構成され、第3排出部33は1個の切削丸穴で構成される。
【0051】
図3(c)に示す例でも、図1(b)と同位置に、第2排出部32、第1排出部31、第3排出部33及び圧逃がし孔34が配置されている。第2排出部32は2個の丸穴(鋳抜き穴と切削穴の何れでもよい。)で構成され、第1排出部31は2個の切削丸穴で構成され、第3排出部33は1個の矩形穴(鋳抜き穴と切削穴の何れでもよい。)で構成される。
【0052】
図3(d)に示す例でも、図1(b)と同位置に、第2排出部32、第1排出部31、第3排出部33及び圧逃がし孔34が配置されている。第2排出部32は互いに穴径が異なる2個の丸穴(鋳抜き穴と切削穴の何れでもよい。)で構成され、第1排出部31は2個の切削丸穴で構成され、第3排出部33は1個の矩形穴(鋳抜き穴と切削穴の何れでもよい。)で構成される。
【0053】
よって、第1〜第3排出部31〜33の形状、形態、大きさ、製法は任意に設定することができる。加えて、第1〜第3排出部31〜33及び圧逃がし孔34は相互に十分に離れているため、第1〜第3排出部31〜33及び圧逃がし孔34の配置の自由度が高まる。
【0054】
尚、実施例では、オイルポンプは、インナーローター14とアウターローター15からなるトロコイドポンプとしたが、ギヤポンプやルーツポンプ、その他のポンプであっても差し支えない。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明は、ポンプボディに付属されるリリーフ弁構造体に好適である。
【符号の説明】
【0056】
10…ポンプボディ、11…吸入ポート、13…吐出ポート、20…リリーフ弁構造体、21…弁ハウジング、22…スプール、23…弁ばね、24…ばね抑え部材、25…筒部、26…底部、27…貫通穴、29…導入部、31…第1排出部、32…第2排出部、33…第3排出部、34…圧逃がし孔。
図1
図2
図3
図4