【実施例】
【0029】
図1(a)に示されるように、ポンプボディ10に、吸入ポート11と、ローター室12と、吐出ポート13とが形成されている。
【0030】
ローター室12には、インナーローター14と、このインナーローター14を囲うアウターローター15とが収納される。インナーローター14とアウターローター15からなるポンプは、内接歯車ポンプ又はトロコイドポンプと呼ばれる。
【0031】
内燃機関のクランク軸で直接又は間接的にインナーローター14が回されると、アウターローター15が連れ回る。この回転により、インナーローター14とアウターローター15との間の隙間の大きさが変化する。隙間の大きさが変化することで、吸入、圧縮、吐出からなるポンプ作用が発生する。
ポンプボディ10には、さらに、図面奥に配置されるリリーフ弁構造体20が付属されている。
【0032】
図1(b)に示されるように、リリーフ弁構造体20は、ポンプボディ10に一体形成される弁ハウジング21と、この弁ハウジング21に移動可能に収納されるスプール22と、弁ハウジング21に収納されスプール22を所定方向へ付勢する弁ばね23と、弁ハウジング21の一端に取付けられ弁ばね23の抜け止めを図るばね抑え部材24とを備えている。ばね抑え部材24は、弁ばね23の一端を抑えるねじ込みプラグ、打ち込みプラグ、蓋部材、その他の部材であればよく、種類や形態は問わない。
【0033】
スプール22は、筒部25と、この筒部25の一端を塞ぐと共に弁ばね23に接触する底部26と、筒部25を径方向に貫通する貫通穴27とを有している。スプール22の外周面に環状溝28を設け、この環状溝28に貫通穴27の一端を臨ませるようにすれば、スプール22が移動軸周りに回転することが許容される。
【0034】
弁ハウジング21は、ポンプボディ10の吐出ポート13側からオイルを導入する導入部29を有する。第2排出部32、第1排出部31、第3排出部33及び圧逃がし孔34は、導入部29からばね抑え部材24までの間にこの順で配置されている。
【0035】
図1(a)に示されるように、第2排出部32、第1排出部31、第3排出部33及び圧逃がし孔34は、ポンプボディ10の吸入ポート11側に開口している。
以上の構成からなるリリーフ弁構造体20の作用を次に述べる。
なお、便宜上、使用範囲内で弁ばね23が最も伸びたときにスプール22が後退限位置に達したと呼ぶことにする。
【0036】
図2(a)は、吐出圧が十分に小さい場合を示し、導入部29からスプール22に加わる圧力が小さいため、弁ばね23の付勢作用により、スプール22は後退限位置にある。この後退限位置にあるときは、貫通穴27は、第1排出部31と第2排出部32との中間に位置しており、貫通穴27は弁ハウジング21の内面で塞がれている。すなわち、リリーフ弁構造体20は弁閉じ状態にある。
吐出圧が上昇すると、弁ばね23を圧縮する方向へ、スプール22は前進する。
【0037】
図2(b)に示されるように、吐出圧が第1所定圧に達すると、貫通穴27が第1排出部31に合致する。すると、導入部29から流入したオイルが、貫通穴27及び第1排出部31を介して排出される。この排出により、吐出圧の上昇が緩和される。
吐出圧がさらに上昇すると、弁ばね23を圧縮する方向へ、スプール22はさらに前進する。
【0038】
すると、
図2(c)に示されるように、貫通穴27が第1排出部31と第3排出部33との中間に位置し、貫通穴27は弁ハウジング21の内面で塞がれている。すなわち、リリーフ弁構造体20は弁閉じ状態になる。
吐出圧がさらに上昇すると、弁ばね23を圧縮する方向へ、スプール22はさらに前進する。
【0039】
すると、
図2(d)に示されるように、今まで閉じられていた第2排出部32が開き、オイルが第2排出部32を介して排出される。また、吐出圧が第2所定圧に達すると、貫通穴27が第3排出部33に合致する。すると、導入部29から流入したオイルが、第2排出部32及び第3排出部33を介して排出される。
すなわち、第2排出部32と第3排出部33の両方からオイルが排出される。この排出により、吐出圧の上昇がより一層緩和される。
【0040】
なお、
図1に示される第3排出部33を、
図1に示される位置よりも第1排出部31に若干近づけて設けてもよい。または、
図1に示される第2排出部32を
図1に示される位置よりも第1排出部31に若干近づけて設けてもよい。
これで、吐出圧が第1所定圧を超え第2所定圧未満の圧力になると、第3排出部33からオイルを排出させることができる。
【0041】
第3排出部33が切削穴である場合、切削穴は、鋳抜き穴に比較して寸法精度がよい。第2排出部32より先に、精度のよい第3排出部33からオイルを排出させるため、開弁圧のばらつきを低減することができる。第2排出部32を鋳抜き穴とした場合、第3排出部33を切削穴にすることにより、第2所定圧のばらつきを低減できる。
吐出圧が第2所定圧に達したら第3排出部33と第2排出部32の両方からオイルを排出する。
【0042】
ところで吐出圧が第2所定圧に達したら第3排出部33と第2排出部32の両方からオイルを排出するとは以下を意味する。理想的には第2所定圧で第3排出部33と第2排出部32とが同時にオイルを排出するものであるが、製造公差分まで第3排出部33の方が第2排出部32よりも僅かに高い油圧でオイルが排出するものも含まれる。
【0043】
従来、第2排出部32のみからオイルを排出していたものを、本発明では、第2排出部32と第3排出部33の両方からオイルを排出する。オイルの排出量を大幅に増加することができる。また、第2排出部32を無理に大きくする必要がないため、寸法精度の公差が大きい鋳抜きで第2排出部32を形成することができる。鋳抜きであれば、機械加工による穴加工を省くことができ、加工費用を下げることができる。
【0044】
また、
図1(a)、(b)から明らかなように、第1排出部31と第2排出部32の間を適度に広げることができ、第1排出部31と第3排出部33の間を適度に広げることができ、更に第3排出部33と圧逃がし孔34の間を適度に広げることができるため、第1〜第3排出部31〜33及び圧逃がし孔34の配置自由度が高まる。
さらに、最も面積が大きい第2排出部32の面積を抑制できる。この点からも配置自由度を高くすることができる。
【0045】
吐出圧がさらに上昇すると、弁ばね23を圧縮する方向へ、スプール22はさらに前進する。
図2(e)では、弁ばね23周りのオイルは圧逃がし孔34を通って弁ハウジング21の外へ逃げる。弁ばね23周りのオイルが、スプール22で封じ込められることはない。また、スプール22が後退するときには、弁ハウジング21の外のオイルが弁ばね23周りへ流入する。よって、スプール22の移動が円滑になる。
【0046】
以上の説明から明らかなように、弁ハウジング21は、吐出圧が第1所定圧に高まり導入部29から導入したオイルで弁ばね23が縮む方向へスプール22が移動したときに貫通穴27に通じて導入したオイルをポンプボディ10の吸入側へ排出する第1排出部31(
図2(b))を備えている。
【0047】
加えて、弁ハウジング21は、吐出圧が第1所定圧より高圧の第2所定圧に高まり導入部29から導入したオイルで弁ばね23が縮む方向へスプール22が更に移動したときに開いて導入したオイルをポンプボディ10の吸入側へ排出する第2排出部32(
図2(d))を備えている。
【0048】
さらに加えて、弁ハウジング21は、吐出圧が、第1所定圧を超え第2所定圧又は第2
所定圧未満の圧力になり導入部29から導入したオイルで弁ばね23が縮む方向へスプール22が移動したときに貫通穴27に通じて導入したオイルをポンプボディ10の吸入側へ排出する第3排出部33(
図2(d))を備えている。
【0049】
次に、第1〜第3排出部31〜33の形態の変更例を、
図3に基づいて説明する。
図3(a)に示す例では、
図1(b)と同位置に、第2排出部32、第1排出部31、第3排出部33及び圧逃がし孔34が配置されている。第2排出部32は2個の矩形の鋳抜き穴で構成され、第1排出部31は2個の切削丸穴で構成され、第3排出部33は1個の切削丸穴で構成される。
【0050】
図3(b)に示す例でも、
図1(b)と同位置に、第2排出部32、第1排出部31、第3排出部33及び圧逃がし孔34が配置されている。第2排出部32は1個の丸穴(鋳抜き穴と切削穴の何れでもよい。)で構成され、第1排出部31は2個の切削丸穴で構成され、第3排出部33は1個の切削丸穴で構成される。
【0051】
図3(c)に示す例でも、
図1(b)と同位置に、第2排出部32、第1排出部31、第3排出部33及び圧逃がし孔34が配置されている。第2排出部32は2個の丸穴(鋳抜き穴と切削穴の何れでもよい。)で構成され、第1排出部31は2個の切削丸穴で構成され、第3排出部33は1個の矩形穴(鋳抜き穴と切削穴の何れでもよい。)で構成される。
【0052】
図3(d)に示す例でも、
図1(b)と同位置に、第2排出部32、第1排出部31、第3排出部33及び圧逃がし孔34が配置されている。第2排出部32は互いに穴径が異なる2個の丸穴(鋳抜き穴と切削穴の何れでもよい。)で構成され、第1排出部31は2個の切削丸穴で構成され、第3排出部33は1個の矩形穴(鋳抜き穴と切削穴の何れでもよい。)で構成される。
【0053】
よって、第1〜第3排出部31〜33の形状、形態、大きさ、製法は任意に設定することができる。加えて、第1〜第3排出部31〜33及び圧逃がし孔34は相互に十分に離れているため、第1〜第3排出部31〜33及び圧逃がし孔34の配置の自由度が高まる。
【0054】
尚、実施例では、オイルポンプは、インナーローター14とアウターローター15からなるトロコイドポンプとしたが、ギヤポンプやルーツポンプ、その他のポンプであっても差し支えない。