特許第6661700号(P6661700)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6661700タキサンを含有するナノ粒子およびその使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6661700
(24)【登録日】2020年2月14日
(45)【発行日】2020年3月11日
(54)【発明の名称】タキサンを含有するナノ粒子およびその使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/337 20060101AFI20200227BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20200227BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20200227BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20200227BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20200227BHJP
【FI】
   A61K31/337
   A61K47/34
   A61K9/14
   A61K39/395 C
   A61P35/00
【請求項の数】12
【外国語出願】
【全頁数】36
(21)【出願番号】特願2018-115890(P2018-115890)
(22)【出願日】2018年6月19日
(62)【分割の表示】特願2015-556980(P2015-556980)の分割
【原出願日】2014年2月1日
(65)【公開番号】特開2018-158939(P2018-158939A)
(43)【公開日】2018年10月11日
【審査請求日】2018年7月19日
(31)【優先権主張番号】61/760,890
(32)【優先日】2013年2月5日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506166572
【氏名又は名称】エイエヌピー テクノロジーズ, インコーポレイテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】515214682
【氏名又は名称】フルゲント・セラピューティクス・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【弁理士】
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100122644
【弁理士】
【氏名又は名称】寺地 拓己
(72)【発明者】
【氏名】イン,レイ
(72)【発明者】
【氏名】パン,ジン
(72)【発明者】
【氏名】チャン,ユーベイ
(72)【発明者】
【氏名】チョウ,ビンセン
(72)【発明者】
【氏名】イェン,ユン
【審査官】 新熊 忠信
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/094620(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00−33/44
A61K 9/00− 9/72
A61K 47/00−47/69
A61K 39/00−39/44
A61P 35/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)疎水性部分で修飾された少なくとも1つの末端基を含むポリオキサゾリンであって、前記ポリオキサゾリンが、線状部分、分岐部分または両方をさらに含み、前記分岐部分が、対称分岐ポリマー、非対称分岐ポリマーまたはそれらの組合せを含み、前記ポリオキサゾリン製造におけるモノマー対開始剤の比率が、60:1である、ポリオキサゾリンと、b)タキサンとを含み、前記ポリオキサゾリンおよび前記タキサンが、6:1〜8:1のポリマー対タキサン重量比を有し、
0.22μmフィルターを通過する、凝集体を有効成分として含む、癌を治療するための医薬組成物
【請求項2】
前記開始剤が疎水性の求電子分子を含む、請求項1に記載の組成物
【請求項3】
前記開始剤が炭化水素を含む、請求項1または2に記載の組成物
【請求項4】
前記開始剤が、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素または両方の組合せを含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物
【請求項5】
前記開始剤が、ハロゲン化アルキル、ハロゲン化アラルキル、ハロゲン化アシルまたはそれらの組合せを含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物
【請求項6】
前記炭化水素が、飽和であっても不飽和であってもよい、2個から約22個の炭素を含む、請求項3に記載の組成物
【請求項7】
凍結乾燥前に50nmから約100nmの大きさを含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の組成物
【請求項8】
前記ポリオキサゾリンがポリ(2−置換オキサゾリン)を含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載の組成物
【請求項9】
標的指向性部分をさらに含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載の組成物
【請求項10】
前記標的指向性部分が、抗体、その抗原結合部分、抗原、細胞受容体、細胞受容体リガンドまたはレクチンリガンドを含む、請求項に記載の組成物
【請求項11】
前記ポリオキサゾリンが、ポリ(2−メチルオキサゾリン)、ポリ(2−エチルオキサゾリン)、ポリ(2−プロピルオキサゾリン)またはポリ(2−ブチルオキサゾリン)を含む、請求項1〜10のいずれか1項に記載の組成物
【請求項12】
前記タキサンがパクリタキセルまたはドセタキセルを含む、請求項1〜11のいずれか1項に記載の組成物
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本開示は、表面修飾された分岐ポリマー(MBP)または線状ポリマーに関し、該ポリマーは、少なくとも1つの鎖末端が疎水基で修飾された、表面修飾された対称分岐ポリマー(SBP)、表面修飾された非対称分岐ポリマー(ABP)、または線状ポリマーの何れでもよく、これは、水に不溶性または難溶性のタキサンに暴露されると複合ナノ粒子またはナノ凝集体を形成し、ここでは、該薬剤は、疎水性部分、疎水性セグメントまたは疎水性部位がある表面または構造などの疎水性ドメインまたはその近くに分散または付着する。目的の粒子または凝集体は安定であり、例えば、乾燥させることができ、再水和させることができる。ナノ粒子またはナノ凝集体は、直径が約20nmから約500nmの範囲であり得る。水に不溶性または難溶性のタキサンと凝集体を形成するホモポリマーとの間の自発的な相互作用には、疎水的、静電的、金属−リガンド各相互作用、水素結合および他の分子相互作用が関与することができる。目的の粒子または凝集体には制御放出特性があるので、例えば、適切な障害を治療するために受容者体内でタキサンを制御放出するための担体としてなどの有用性が見出される。例えば、本開示は、癌の治療において、パクリタキセルおよびその誘導体などのタキサンを、毒性を下げ、溶解性を向上させ、生物学的利用率を上げ、効力を高めてin vivo送達するための、かかるポリマーの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
対称分岐ポリマー
[0002]スターバーストデンドリマー(Starburst dendrimer)(または高密度星型ポリマー(Dense Star polymer))およびコームバーストデンドリグラフト(Combburst dendrigraft)(または超櫛型分岐ポリマー(hyper comb−branched polymer))を含めた、樹状ポリマーと呼ばれる新規なクラスのポリマーが最近開発され、種々の産業用途のために研究された。これらのポリマーは、ポリアミドアミン(PAMAM)系分岐ポリマーならびに米国特許第4,435,548号;第4,507,466号;第4,568,737号;第4,587,329号;第5,338,532号;第5,527,524号;および第5,714,166号に記載されるデンドリマーなど、多くの場合、(a)明確に規定されたコア分子、(b)対称な(同一の長さの)分岐および分岐接合部(branch juncture)を有する少なくとも2つの同心円状の樹状層(世代)、ならびに(c)外表面基を持つ。他の例には、ポリエチレンイミン(PEI)デンドリマー、例えば、米国特許第4,631,337号に開示されるものなど;ポリプロピレンイミン(PPI)デンドリマー、例えば、米国特許第5,530,092号、第5,610,268号、および第5,698,662号に開示されるものなど;Frechet型ポリエーテルおよびポリエステルデンドリマー、コアシェル型テクトデンドリマーなど、例えば、「Dendritic Molecules」、Newkomeら編、VCH ワインハイム、1996年、「Dendrimers and Other Dendritic
polymers」、FrechetおよびTomalia編、John Wiley&Sons,Ltd.、2001年;および米国特許第7,754,500号に記載されるようなものが含まれる。
【0003】
[0003]コームバーストデンドリグラフトは、段階的な合成方法を通して、コア分子と、対称的な分岐を有する同心円状の層とで構築される。デンドリマーとは対照的に、コームバーストデンドリグラフトまたはポリマーは、単分散の線状ポリマーの構成単位で作成される(米国特許第5,773,527号、第5,631,329号および第5,919,442号)。さらに、分岐様式がデンドリマーのそれとは異なる。例えば、コームバース
トデンドリグラフトはポリマー主鎖に沿って分岐接合部を形成する(鎖分岐)のに対して、スターバーストデンドリマーは、多くの場合終端で分岐する(末端分岐)。使用するリビング重合技法に起因して、これらのポリマー(コアおよび分岐)の分子量分布(M/M)は、多くの場合狭い。よって、グラフトオングラフト法(graft−on−graft process)を通して生成されるコームバーストデンドリグラフトは、明確に規定され、M/M比は多くの場合1に近い。
【0004】
[0004]デンドリマーなどのSPBは、主に、ダイバージェントまたはコンバージェント合成手法の何れかを通して、保護および脱保護する手順を繰り返すことによって生成される。デンドリマーは、コアおよび分岐の構成単位として小分子を利用するので、デンドリマーの分子量分布は多くの場合規定されている。低い世代が小さければ、単一分子量のデンドリマーが得られることが多い。デンドリマーが多くの場合小分子モノマーを構成単位として利用するのに対し、デンドリグラフトは、線状ポリマーを構成単位として使用する。
【0005】
[0005]デンドリマーおよびデンドリグラフトに加えて、他のSBPには、対称な星形または櫛形ポリマー、例えば、対称な星形または櫛形ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリエチレングリコール(PEG)、PEI、PPI、ポリオキサゾリン(POX)、ポリメチルオキサゾリン(PMOX)、ポリエチルオキサゾリン(PEOX)、ポリスチレン、ポリメタクリル酸メチル、ポリジメチルシロキサンまたはそれらの組合せが含まれる。非対称分岐ポリマー
[0006]SBPとは異なり、非対称分岐ポリマー(ABP)、特に非対称分岐デンドリマーまたは規則性ABP(reg−ABP)は、米国特許第4,289,872号、第4,360,646号、および第4,410,688号に記載されるように、多くの場合、コアと、制御され、明確に規定された非対称(不均等な長さの)分岐および非対称な分岐接合部とを持つ。
【0006】
[0007]一方、不規則性ABP(ran−ABP)は、a)コアを持たず、b)外部および内部の両方に存在する官能基、c)不規則な/可変の分岐長さおよび様式(すなわち、末端分岐および鎖分岐)、ならびにd)不均等に分布する内部の空隙を有する。
【0007】
[0008]ran−ABP、例えばPEIから作製されたものの合成および機構は、Jonesら、J.Org.Chem.9、125(1944年)、Jonesら、J.Org.Chem.30、1994(1965年)およびDickら、J.Macromol.Sci.Chem.、A4(6)、1301〜1314、(1970年))により報告された。Ran−ABP、例えば、POXすなわちポリ(2−メチルオキサゾリン)およびポリ(2−エチルオキサゾリン)から作製されたものは、Litt(J.Macromol.Sci.Chem.A9(5)、703〜727(1975年))およびWarakomski(J.Polym.Sci.Polym.Chem.28、3551(1990年))によって報告された。ran−ABPの合成は、多くの場合、ワンポットダイバージェント法またはワンポットコンバージェント法を使用できる。
ホモポリマー
[0009]ホモポリマーは、同一の繰り返し単位から構成されるポリマーまたはポリマー主鎖に関係している可能性があり、つまり、ホモポリマーは、同一のモノマー(例えば、PEI線状ポリマー、POX線状ポリマー、PEIデンドリマー、ポリアミドアミン(PAA)デンドリマーまたはPOXデンドリグラフトおよび不規則性分岐ポリマー)から作成される。モノマーは、単純な化合物であっても、化合物の複合体または集合体であってもよく、その場合、集合体または複合体はホモポリマー中の繰り返し単位である。よって、集合体が3つの化合物、A、BおよびCから構成されるならば、複合体はABCと表記することができる。一方で、(ABC)−(ABC)−(ABC)…から構成されるポリマ
ーは、本開示の目的のためのホモポリマーである。ホモポリマーは、線状であっても分岐していてもよい。よって、不規則性分岐PEIの場合、異なる長さの分岐が存在し、また分岐が不規則に起こっているが、その分岐ポリマーが単一のモノマー、すなわちエチレンイミンまたはアジリジンの繰り返し単位から構成されるので、その分子は本開示の目的のためのホモポリマーである。また、モノマーまたは複合体モノマーの構成成分の1種または複数を、修飾、置換、誘導体化することなどができ、例えば、官能基を担うように修飾できる。かかる分子は、主鎖が単一の単純なまたは複合したモノマーから構成されているので、本開示の目的のためのホモポリマーである。
水に難溶な薬剤:タキサン
[0010]パクリタキセルは、Bristol−Myers SquibbによってTaxol(登録商標)として販売される、水に不溶な薬剤である。パクリタキセルは、タイヘイヨウイチイ、学名Taxus brevifoliaに由来する(Wanら、J.Am.Chem.Soc.93:2325、1971年)。パクリタキセルおよびドセタキセル(これもTaxotere(登録商標)として販売される)を含めたタキサンは、乳癌、卵巣癌および肺癌、ならびに結腸および頭頸部の癌などを含めた種々の癌を治療するために使用される。
【0008】
[0011]しかし、パクリタキセルは水に難溶性であることから、その広範な使用が妨げられてきた。現在、Taxol(登録商標)およびそのジェネリック薬は、薬剤を可溶化させるために、1:1のエタノール:Cremaphor(登録商標)(ポリエトキシ化ヒマシ油)溶液を使用して製剤化されている。Cremaphor(登録商標)の存在は重度の過敏性反応につながっており、その結果として、副腎皮質ステロイド(例えばデキサメタゾン)および抗ヒスタミン剤で患者を薬物治療することが必要となる。
【0009】
[0012]代わりに、複合化パクリタキセル、例えば、パクリタキセルにヒト血清アルブミンを混合することによって生成される、Abraxane(登録商標)を用いることによって、副腎皮質ステロイドおよび抗ヒスタミン剤の注射が不要となった。しかし、Abraxane(登録商標)は、望ましくない副作用、例えば、胸痛、心拍停止、上室性頻拍、浮腫、血栓症、肺血栓塞栓症、肺塞栓症、高血圧などを含めた重度の心血管イベントを引き起こすので、心血管リスクのある患者はこの薬剤を使用することができない。
水に難溶性の薬剤の送達
[0013]SBPおよびABPを含めた分岐ポリマーが薬剤送達に使用されてきたが、これらの試みは、主に、薬剤を化学的にポリマーに付すこと、または単分子カプセル化(unimolecular encapsulation)を通してかかる薬剤を内部に物理的にカプセル化することに集中している(米国特許第5,773,527号、第5,631,329号、第5,919,442号、および第6,716,450号)。
【0010】
[0014]例えば、高密度星型ポリマーについては米国特許第5,338,532号、第5,527,524号および第5,714,166号に、超櫛型分岐ポリマーについては米国特許第5,919,442号に記載される通りに、デンドリマーおよびデンドリグラフトは、単分子カプセル化手法を使用して、生理活性分子を物理的に封入すると考えられている。同様に、「デンドリマーボックス(dendrimer box)」を形成する、SBPを使用した種々の薬剤の単分子カプセル化が、Tomaliaら、Angew.Chem.Int.Ed.Engl.、1990年、29、138、および「Dendrimers and Other Dendritic Polymers」Frechet&Tomalia編、John Wiley&Sons,Ltd.、2001年、387〜424頁に報告された。
【0011】
[0015]分子カプセル化を通して水に難溶性の薬剤を封入するために、疎水性のコアと親水性のシェルとを有する分岐コアシェルポリマーが使用されてもよい。親水性のコアと疎
水性のシェルとを有する不規則に分岐した超分岐コアシェル構造を使用して、単分子カプセル化および予め形成されたナノミセルを通して薬剤を担うこともなされてきた(米国特許第6,716,450号およびLiuら、Biomaterials 2010年、10、1334〜1341)。しかし、これらの単分子および予め形成されたミセル構造は、薬剤不在で作成される。
【0012】
[0016]実施形態において、ブロックコポリマー、例えば、ミクトアームポリマー(すなわち、Y形/AB型の星型ポリマー)および(A)が樹状である(B)の線状ブロックコポリマーが、パクリタキセルとステレオコンプレックスを形成することが観察された(Nederbergら、Biomacromolecules 2009年、10、1460〜1468およびLuoら、Bioconjugate Chem.2010年、21、1216)。これらのブロックコポリマーは、ミセルの生成に使用されるよく知られた界面活性剤である、従来の脂質またはAB型線状ブロックコポリマーに酷似している。
【0013】
[0017]しかし、かかる分岐ブロックコポリマーは作製することが困難であり、よって大量生産に適さない。
【0014】
[0018]分岐または線状ホモポリマーを疎水基で修飾することによって、水に難溶性または不溶性の薬剤に暴露したときに、制御された薬剤送達に適した安定な凝集体を自発的に形成させるという記載は存在していない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0015】
本明細書は以下の発明の開示を包含する。
[1]a)疎水性部分で修飾された少なくとも1つの末端基を含むポリオキサゾリンであって、前記ポリオキサゾリンが、線状部分、分岐部分または両方をさらに含み、前記分岐部分が、対称分岐ポリマー、非対称分岐ポリマーまたはそれらの組合せを含み、前記ポリオキサゾリンが、50:1から80:1のモノマー対開始剤の比率を含む、ポリオキサゾリンと、
b)タキサンと
を含み、前記ポリオキサゾリンおよび前記タキサンが、2:1〜10:1のポリマー対タキサン重量比を有する、
凝集体。
[2]前記開始剤が疎水性の求電子分子を含む、[1]に記載の凝集体。
[3]前記開始剤が炭化水素を含む、[1]に記載の凝集体。
[4]前記開始剤が、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素または両方の組合せを含む、[1]に記載の凝集体。
[5]前記開始剤がハライド官能基を含む、[1]に記載の凝集体。
[6]前記開始剤が、ハロゲン化アルキル、ハロゲン化アラルキル、ハロゲン化アシルまたはそれらの組合せを含む、[5]に記載の凝集体。
[7]前記炭化水素が、飽和であっても不飽和であってもよい、2個から約22個の炭素を含む、[3]に記載の凝集体。
[8]前記開始剤が、ヨウ化メチル、臭化メチル、塩化メチル、ヨウ化エチル、臭化エチル、塩化エチル、1−ヨードブタン、1−ブロモブタン、1−クロロブタン、1−ヨードヘキサン、1−ブロモヘキサン、1−クロロヘキサン、1−ヨードドデカン、1−ブロモドデカン、1−クロロドデカン、1−ヨード−オクタドデカン、1−ブロモ−オクタドデカン、1−クロロ−オクタドデカン、ヨウ化ベンジル、臭化ベンジル、塩化ベンジル、臭化アリル、塩化アリル、臭化アシル、塩化アシル、臭化ベンゾイルまたは塩化ベンゾイルを含む、[1]に記載の凝集体。
[9]前記開始剤がトシル基を含む、[1]に記載の凝集体。
[10]凍結乾燥前に50nmから約100nmの大きさを含む、[1]に記載の凝集体。
[11]前記ポリオキサゾリンの第2の末端基が、エチレンジアミンまたはその誘導体によって修飾された部位を含む、[1]に記載の凝集体。
[12]前記タキサンが前記少なくとも1つの末端基と会合している、[1]に記載の凝集体。
[13]前記ポリオキサゾリンがポリ(2−置換オキサゾリン)を含む、[1]に記載の凝集体。
[14]標的指向性部分をさらに含む、[1]に記載の凝集体。
[15]前記標的指向性部分が、抗体、その抗原結合部分、抗原、細胞受容体、細胞受容体リガンドまたはレクチンリガンドを含む、[14]に記載の凝集体。
[16]前記ポリオキサゾリンが、ポリ(2−メチルオキサゾリン)、ポリ(2−エチルオキサゾリン)、ポリ(2−プロピルオキサゾリン)またはポリ(2−ブチルオキサゾリン)を含む、[1]に記載の凝集体。
[17]前記タキサンがパクリタキセルまたはドセタキセルを含む、[1]に記載の凝集体。
[18]凍結乾燥後に70〜90nmの大きさを含む、[1]に記載の凝集体。
[0019]一態様では、本開示は、パクリタキセルおよびその誘導体などのタキサンの溶解
性を増大させるための、修飾された分岐ポリマー(MBP)または線状ポリマーの使用を
対象とする。
【0016】
[0020]本開示の別の態様では、非対称分岐ポリマー(ABP)は、不規則性または規則性の何れかの非対称分岐を含む。不規則性ABPは、混在した末端分岐様式と鎖分岐様式とを有することもできる。
【0017】
[0021]本開示の別の態様では、ABPおよびSBPは両方とも、新たな材料特性を実現することができるように、所与の時間で追加的な分岐を形成することができる少なくとも1つの分子または基でさらに修飾することができ、この場合、追加的な官能基がさらに付されてもよい。修飾されたポリマーはすべて、修飾SBPまたは修飾ABPとして定義することができる。
【0018】
[0022]本開示の別の態様では、非修飾分岐ポリマーおよび修飾分岐ポリマーは何れもダイバージェント法またはコンバージェント法で生成することができ、段階的または一段階合成プロセスの何れかを使用することができる。
【0019】
[0023]本開示の別の態様では、SBPには、これらに限定されないが、PAAデンドリマー;PEIデンドリマー;PPIデンドリマー;ポリエーテルデンドリマー;ポリエステルデンドリマー;櫛型分岐/星型分岐ポリマー、例えば、PAA、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリエチレングリコール(PEG)、PMOX、PEOX、ポリメタクリル酸メチル(PMA)、ポリスチレン、ポリブタジエン、ポリイソプレンおよびポリジメチルシロキサン;櫛型分岐デンドリグラフト、例えば、PEOX、PMOX、ポリプロピルオキサゾリン(PPOX)、ポリブチルオキサゾリン、PEI、PAA;などが含まれる。
【0020】
[0024]本開示のさらなる態様では、SBPは内部に空隙を有することができ、一方、ABPは不均等に分布する空隙を有することができる。
【0021】
[0025]本開示の別の態様では、上述のSBP、例えば、デンドリマーもしくはデンドリグラフト、およびABP、例えば、規則性もしくは不規則性分岐ポリマー、ならびに、星型分岐および櫛型分岐ポリマー、またはそれらの組合せを含むハイブリッド分岐ポリマーも、目的の前記薬剤誘起凝集体またはナノ粒子を生成するために使用することができる。
【0022】
[0026]本開示の別の態様では、分岐ポリマーは、官能基、例えば、これらに限定されないが、NH、NHR、NR、NR、COOR、COOH、COO、OH、C(O)R、C(O)NH、C(O)NHRまたはC(O)NR(式中、Rは、任意の脂肪族基、芳香族基またはそれらの組合せでもよい);脂肪族基(例えば炭化水素鎖)(分岐していてもよく、1つもしくは複数の二重および/もしくは三重結合を含有してもよく、ならびに/または置換されていてもよい);芳香族基(複数の環を含有してもよく、それらが縮合していても別々でもよく、環が様々な大きさであってもよく、および/または環が置換基を含有してもよい);ペルフルオロカーボン鎖;単糖類および/または多糖類(様々な大きさの環であってもよく、環がイオウもしくは窒素原子などのヘテロ原子を含有していても置換されていてもよく、2種以上の単糖類を含有してもよく、分岐していてもよく、および/または置換されていてもよい);ポリエチレングリコールなどで修飾される。
【0023】
[0027]MBPの分子量は、約500から5,000,000超、約500から約1,000,000、約1,000から約500,000、約2,000から約100,000までの範囲とすることができる。
【0024】
[0028]本開示の別の態様では、SBPおよびABPの表面は、表面基の物理的特性とタキサンとの適合性が上がり、それによってMBPの表面基領域、ドメイン、部分、またはセグメントとタキサンとの混和性が上がるように、修飾される。
【0025】
[0029]ある実施形態では、鎖末端での分岐ポリマーまたは線状ポリマーの修飾は、疎水性官能基、例えば、脂肪族鎖(例えば、線状であるか分岐であるかを問わず、1から約22個の炭素を含む炭化水素鎖)、芳香族構造(例えば、1つまたは複数の芳香族環を含有し、それらは縮合していてもよい)またはそれらの組合せで行われる。
【0026】
[0030]公知の薬剤担体とは対照的に、本発明の分岐または線状ポリマー構造は、各ポリマー分子内にタキサンを物理的に封入するものではない。その代わりに、タキサンは、各分岐または線状ポリマーの、官能基を含有するドメイン/領域に位置するか、または分散するかの何れかであり得る。
【0027】
[0031]生じた目的の構造は、例えば、凍結乾燥またはその他の形態の乾燥によって任意選択により保存することができ、それによって目的の構造をさらに安定化させることができる。水または緩衝液に再溶解させると、直径が約50から約500nmの範囲内の大きさのナノ粒子を得ることができる。
【0028】
[0032]多くの場合官能基化されている、多重分岐が存在すれば、分子内および分子間架橋の形成が可能となり、それによりタキサン含有ナノ粒子を安定化させることができる。希釈すると、前記物理的凝集体またはナノ粒子は分解し、制御された速度で薬剤を放出する。
【0029】
[0033]本開示の別の態様では、タキサンをカプセル化するために、線状ポリマーと分岐
ポリマーの混合物も利用することができる。前記線状および/または分岐ポリマーの少なくとも1つの末端基が、疎水性部分または官能基で修飾される。疎水性部分または官能基には、これらに限定されないが、炭化水素鎖(例えば、飽和化学結合または不飽和化学結合の何れかを有する1〜22個の炭素を含有する)、およびアラルキル、芳香族環、フルオロカーボンなどを含有する疎水基が含まれ得る。
【0030】
[0034]本開示の別の態様では、分岐または線状ポリマーは、これらに限定されないが、抗体またはその抗原結合部分、抗原、同種炭水化物(例えばシアル酸)、細胞表面受容体リガンド、細胞表面受容体によって結合される部分、例えば前立腺特異的膜抗原(PSMA)、細胞表面の糖類に結合する部分、細胞外マトリックスリガンド、サイトゾル受容体リガンド、増殖因子、サイトカイン、インクレチン、ホルモン、レクチン、レクチンリガンド、例えば、ガラクトース、ガラクトース誘導体、N−アセチルガラクトサミン、マンノース、マンノース誘導体など、ビタミン、例えば、葉酸塩またはビオチン;アビジン、ストレプトアビジン、ニュートラアビジン、DNA、RNAなどを含めた、標的指向性部分/基を含むことができる。かかる標的指向性ナノ粒子は、好ましい治療位置で薬剤を放出するので、局所有効濃度を高め、望ましくない副作用を最小化することができる。
【0031】
[0035]本開示の別の態様では、標的指向性部分/基、ならびに疎水性、親水性、および/またはイオン性官能基を含めた官能基は、標的薬剤送達のための複合ナノ粒子の形成に先立って、分岐ポリマーに付される。
【0032】
[0036]本開示の別の態様では、モノマー対開始剤比およびポリマー対タキサン比を特定の範囲にすることによって、薬剤ナノ粒子が適正な大きさとなって、薬剤ナノ粒子の大規模製造および薬剤ナノ粒子の殺菌が容易になり、また、他のモノマー対開始剤比および/またはポリマー対タキサン比と比較して薬剤の効力が向上する。
【0033】
[0037]本開示のさらなる特徴および利点は、以下の「発明を実施するための形態」および添付の図面において説明され、これらから明らかとなろう。
【0034】
[0038]以下の図の説明および対応する図面は、本開示を例示する種々の実施形態を表す非限定的な例である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】[0039]図1は、デンドリマー、星形ポリマー、デンドリグラフトおよび櫛形ポリマーを含めた、SBPを表す図である。球状または線状を問わず、すべてコアを有する。
図2】[0040]対称分岐PPIデンドリマーの化学構造を表す図である。
図3】[0041]対称分岐PPIデンドリマーの化学修飾反応を示す図である。8、16、32などの数字は、デンドリマーの表面の反応性基の数を示す。
図4】[0042]図4Aは、非対称の分岐接合部および様式を有する、不規則性(A)ABPを示す図である。図4Bは、非対称の分岐接合部および様式を有する、規則性(B)ABPを示す図である。
図5】[0043]不規則性非対称分岐PEIホモポリマーの化学構造を示す図である。
図6A】[0044]合成スキームを表し、不規則性非対称分岐PEIホモポリマーの化学修飾反応を示す図である。
図6B】合成スキームを表し、ポリマーのフォーカルポイントに一級アミノ基を有する、疎水性に修飾された不規則性分岐ポリ(2−エチルオキサゾリン)のワンポット合成を表す図である。開始剤/表面基(I)は、臭化炭化水素である。この反応は、オキサゾリン環を開環する。
図7】[0045]分岐ポリマー(SBPおよびABP)の表面ドメインまたは領域内または表面ドメインまたは領域上に担持された薬剤を示す図である。この図および他の図において、Rは表面基を示し、塗り潰された円は目的の薬剤を表す。
図8】[0046]薬剤分子と分岐ポリマーの両方を含有する複合系ナノ粒子の一種を示す図である。
図9】[0047]分岐ポリマー(SBPおよびABP)の疎水性表面基に担持された、水に不溶性または難溶性の薬剤を示す図である。この図および他の図において、細い波線は、疎水性表面基を表す。
図10】[0048]ここでおよび他の図で「Y」として表される、抗体などの少なくとも1つの標的指向性基または部分も担う、種々の薬剤含有ナノ粒子を例示する図である。
図11】[0049]生理食塩水中、ポリマー濃度25mg/mLおよび薬剤濃度5mg/mLでの、ポリマー単独凝集体およびポリマー−薬剤凝集体の大きさの比較を示す図である。ポリマーは、疎水性に修飾された不規則性分岐PEOXであり、薬剤はパクリタキセルである。
図12】[0050]生理食塩水中、ポリマー濃度2.5mg/mLおよび薬剤濃度0.5mg/mLでの、ポリマー単独凝集体およびポリマー−薬剤凝集体の大きさの比較を示す図である。ポリマーは、疎水性に修飾された不規則性分岐PEOXであり、薬剤はパクリタキセルである。
図13】[0051]生理食塩水中、ポリマー濃度250μg/mLおよび薬剤濃度50μg/mLでの、ポリマー単独凝集体およびポリマー−薬剤凝集体の大きさの比較を示す図である。ポリマーは、疎水性に修飾された不規則性分岐PEOXであり、薬剤はパクリタキセルである。
図14】[0052]生理食塩水中、ポリマー濃度25μg/mLおよび薬剤濃度5μg/mLでの、ポリマー単独凝集体およびポリマー−薬剤凝集体の大きさの比較を示す図である。ポリマーは、疎水性に修飾された不規則性分岐PEOXであり、薬剤はパクリタキセルである。
図15】[0053]3種のタキサン製剤に暴露したときの正常細胞の生存率を表す図である。
図16】[0054]3種のタキサン製剤に暴露したときのA549肺癌細胞の細胞障害を表す図である。
図17】[0055]3種の異なるタキサン製剤に暴露したときのMDA−MB−231トリプルネガティブ乳癌の細胞障害を表す図である。
図18】[0056]3種の異なるタキサン製剤に暴露したときのOV−90卵巣癌の細胞障害を表す図である。
図19】[0057]時間の経過に対する血漿中濃度を表す、3種の異なるタキサン製剤の薬物動態(PK)プロファイルを表す図である。
図20】[0058]2種の対照で処置したマウスの異種移植モデルおよび3種の異なるタキサン製剤に暴露したマウスの異種移植モデルにおけるA549肺癌腫瘍量を表す図である。
図21】[0059]切除された肺癌細胞腫瘍の画像を示す図であり、細胞腫瘍はマウス内で異種移植片として増殖し、そのマウスが2種の対照および2つの形態のタキサンで処置されたものである。
図22】[0060]マウス異種移植モデルにおいて2種の負の対照および3種のタキサン製剤が卵巣癌の腫瘍の大きさに与える影響を表す図である。
図23】[0061]切除された卵巣癌細胞腫瘍の画像を示す図であり、細胞腫瘍は、マウス内で異種移植片として増殖し、そのマウスが2種の対照および3つの形態のタキサンで処置されたものである。
【発明を実施するための形態】
【0036】
[0062]本開示における薬剤の溶解性は、薬剤1部を可溶化するのに必要とされる溶媒の部数に応じて、<30(可溶)、30〜100(難溶)および>100(不溶)と定義さ
れる。
【0037】
[0063]本開示の目的のために、「約」、「実質的に」などの単語は、記載の値または数字から10%を超えない範囲の値として定義される。「ホモポリマー」は上述の通りである。
目的の薬剤
[0064]記載する目的の薬剤はタキサンであり、パクリタキセルおよびドセタキセルなどの他のタキサン誘導体を含む。パクリタキセルは非水溶性であり、様々な種類の癌の治療において、低い最大耐用量(MTD)、PKプロファイルおよび限定的な効力などの、明確に規定された性能特性を有する。本開示は、これらの性能特性を向上させる上での、前述の通りのABPの使用を範囲内に含む。
ナノ複合体、ナノ粒子またはナノ凝集体
[0065]ナノ複合体は、2種以上の材料または構成成分(例えば、ポリマーおよびタキサン)の物理的な混合物である。本開示では、かかる混合物は、固体または液体の何れかの状態である、タキサンと分岐ホモポリマー分子の間に形成される様々なナノスケールの相またはドメインを含有することができると考えられる。ナノ複合体は、バルクマトリックス(例えば、分岐ホモポリマーおよびタキサン)と、構造および化学的性質の相違のために異なる特性を呈し得るナノ寸法相(例えば、タキサンおよび分岐ポリマーの表面基によって形成されるドメイン、ならびに分岐ポリマーの内部によって形成されるドメイン)との組合せを含むことができる。ドメイン/相の溶解性が異なる可能性があるので、ナノ複合体を水溶液に溶解させると、相のうち1相は他の相(1つまたは複数)より速やかに溶解し、それによって複合凝集体が徐々に分解し、結果的に、複合体構成成分を段階的に制御放出することができ、また任意により構成成分の1つまたは複数を新規な形態、例えば新たな凝集体に再形成することができる。「ナノ複合体」、「ナノ粒子」および「ナノ凝集体」という用語は、本明細書では等しく、互換的に使用される。
【0038】
[0066]本開示に記載される凝集体の大きさは、直径約10から約500nm、直径約30nmから約300nmの間の範囲である。凝集体は、微小粒子またはバルク材料に観察されるものとは著しく異なる、大きさに関連する特性を呈することができる。
【0039】
[0067]対称な分岐を有するSBPが図1に表され、ここでは、目的のホモポリマーすべてがコアを持ち、ホモポリマー全体にわたって、末端または鎖分岐の何れかからなる対称な分岐接合部を呈する。官能基は、主として外面に存在する。
【0040】
[0068]修飾SBPは、例えば、官能基を化学的に結合することを通して得られ、例えば、Aldrichから市販される対称分岐PAMAMまたはPPIデンドリマー、ポリエーテルデンドリマー、ポリエステルデンドリマー、櫛型分岐/星型分岐ポリマー、例えば、PEO、PEG、PMOXまたはPEOX、ポリスチレンを含有するもの、および櫛型分岐デンドリグラフト、例えば、PEOX、PMOXまたはPEIを含有するものに対して行われる。
【0041】
[0069]市販の試薬を使用して(例えば、種々の世代のPPIデンドリマー、図2)、かかるSBP/デンドリマーを作製する合成手順は公知であり(例えば、「Dendrimers and Other Dendritic Polymers」Frechet&Tomalia編、John Wiley&Sons,Ltd.,2001年を参照されたい)、または幾つものSBPが市販されている。櫛型分岐およびコームバーストポリマーの合成は、公知である(例えば、米国特許第5,773,527号、第5,631,329号および第5,919,442号を参照されたい)。
【0042】
[0070]SBPの分岐密度が高くなると、ポリマーは分子的に緻密になり、明確な内部の
空隙を有するようになるので、かかる分子は、その中にタキサンを封入するまたは包み込む担体として適切なものとなる。
【0043】
[0071]表面修飾によって、生じた修飾SBPの特性および用途を増大させることができる。例えば、適切に修飾すれば、水に不溶性のSBPを水溶性にすることができる一方で、高電荷密度のSBPを修飾して、ポリマー上またはポリマー表面に極めて少ない電荷を帯びるか電荷を帯びないように修飾することができる。その一方で、水溶性のSBPを疎水性の表面基で修飾して、その表面において水に不溶性または難溶性の薬剤の可溶化能力を高めるようにすることができる。修飾は、ポリマーの任意の部位、例えば、終端、分岐、主鎖残基などで行うことができる。
【0044】
[0072]本開示の一実施形態では、SBP(例えば、対称分岐PEIデンドリマー、PPIデンドリマー、PAMAMデンドリマーまたは対称分岐PEIデンドリグラフトなどの何れか)は、様々な種類の、例えば第一級アミン基で、例えば、マイケル付加またはホモポリマーのアミン基上へのアクリル酸エステルの付加を通して、修飾することができる。よって、例えばマイケル付加反応を通して、PEI、PPIおよびポリリジン(PLL)ホモポリマーの第一級および/または第二級アミノ基上にアクリル酸メチルを導入することができる。次に、エステル基を、例えばアミド化反応によって、さらに誘導体化することができる。よって、例えば、かかるアミド化反応、例えばエチレンジアミン(EDA)とのアミド化反応によって、新しく形成される分岐の終端にアミノ基を付加することができる。ホモポリマーへの他の修飾は、例えば、「Poly(amines) and Poly(ammonium salts)」、「Handbook of Polymer Synthesis」(Part A)中、Kricheldorf編、ニューヨーク、Marcel Dekker、1994年、および「Dendrimers and
Other Dendritic Polymers」、Frechet&Tomalia編、John Wiley&Sons,Ltd.、2001年に提示される通りの、公知の化学反応を使用して作製することができる。EDAの誘導体も使用することができ、それには、ポリエチレンアミン、テトラメチルエチレンジアミンなどを含めた、反応性EDA、置換されたEDA、または、例えば、ポリエチレンアミンファミリーの他のメンバー(例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミンなど)を含む任意の分子的実体が含まれる。
【0045】
[0073]実施形態では、修飾は、ポリマーまたはポリマーの一部の疎水性に寄与するまたは疎水性を高める部分を含むことができる。例えば、疎水性官能基として、例えば、脂肪族鎖(例えば、飽和もしくは不飽和、線状、環状または分岐を問わず、1から約22個の炭素を含む炭化水素鎖)、芳香族構造(例えば、1つまたは複数の芳香族環を含有し、それらは縮合していてもよい)またはそれらの組合せを、修飾剤として使用し、本明細書に提示する化学反応を実施して、本明細書に教示するポリマーに付加することができる。
【0046】
[0074]そのように付加すると、修飾SBP、例えば、修飾PEI、PPI、PAMAMデンドリマーまたはPEIデンドリグラフトが形成される。PPIおよびPEIなどのSBPの延長として、生じた修飾SBPも対称に分岐している。溶媒の環境(すなわち、pHまたは極性)に応じて、表面官能基は、様々な電荷および/もしくは電荷密度、ならびに/または疎水基を担うことができる。次に、分子の形状および表面官能基の位置(すなわち、表面官能基の折り返し(back folding))を、これらの特徴的な特性に基づいてさらに調節することができる。
【0047】
[0075]本開示の別の実施形態では、修飾SBPは、例えば、ホモポリマー上の適切な部位との反応に適用できることが知られている種々の合成スキームの何れかを使用して生成することができる。さらに、選択した合成スキームに種々の試薬の何れかを使用して、ホ
モポリマーの主鎖に種々の修飾または付加の何れかをもたらすことができる。よって、例えば、上述のアミンへのマイケル付加反応の場合、種々の置換基の何れかの付加を使用することができ、例えば、アルキル化段階で、例えば、種々のアクリレート試薬の何れか(1から約22個の炭素を含み、置換されていてもよく、脂肪族、芳香族、環状の、1つもしくは複数の結合で飽和した、またはそれらの組合せである、飽和または不飽和炭化水素などの炭化水素置換基を含むアクリレートなど)を使用して、付加を使用することができる。よって、適切な反応物には、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ペンチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸ヘプチル、アクリル酸オクチル、アクリル酸ノニル、アクリル酸デシル、アクリル酸ウンデシル、アクリル酸ドデシルなど、およびそれらの混合物が含まれる。同様に、上で例示した例におけるアミド化段階では、種々のアミンの何れかを使用することができる。例えば、EDA、モノエタノールアミン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、アルキルアミン、アリルアミン、または、PEG、PEO、ペルフルオロポリマー、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリジメチルシロキサン、ポリアクリレート、ポリメタクリル酸メチルなど、およびそれらの混合物を含むものを含めた、任意のアミノ修飾ポリマーを使用することができる。
【0048】
[0076]かかる合成戦略を用いれば、様々な化学組成を有するさらなる分岐を導入することができる分子の対称的な成長を可能とするだけでなく、構造の外面に複数の官能基を付加することが可能となろう。前駆体ホモポリマーを修飾し、引き続き、適正な分子量および官能基を有する所望のSBPが得られるまで、同じまたは異なる合成プロセスを使用して修飾することができる。加えて、かかるポリマーの疎水性および親水性の特性ならびに電荷密度を、ホモポリマーを構築するのに適したモノマーおよび適切な修飾反応を使用して、特定の用途のニーズに適合するように合せることができる。
【0049】
[0077]本開示の別の実施形態では、ダイバージェント合成手順が使用されるならば、ポリ(2−置換オキサゾリン)(例えば、ポリ(2−メチルオキサゾリン)、ポリ(2−エチルオキサゾリン)、ポリ(2−プロピルオキサゾリン)およびポリ(2−ブチルオキサゾリンなど)を含む)、PEI、PEO/グリコール、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリホスフェート、ポリビニルアルコール(PVA)またはポリスチレンなどの対称星型分岐または櫛型分岐ホモポリマーの鎖末端を、別の小分子またはポリマーで修飾して、ホモポリマーの鎖末端に、第一級、第二級もしくは三級アミン、カルボキシレート、ヒドロキシル、脂肪族(例えば、炭化水素鎖)、芳香族、フルオロアルキル、アリール、PEG、PEO、アセテート、アミドおよび/またはエステル基を含めた、種々の官能基を生じることができる。あるいは、コンバージェント合成手法を利用するならば、同じ種類の官能基を鎖端末に導入できるように、種々の開始剤を利用することもできる(「Dendritic Molecules」、Newkomeら編、VCH、ワインハイム、1996年、「Dendrimers and Other Dendritic Polymers」Frechet&Tomalia編、John Wiley&Sons,Ltd.、2001年、およびJ.Macromol.Sci.Chem.A9(5)、703〜727頁(1975年))。
【0050】
[0078]開始剤は、炭化水素、すなわち、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素または両方の組合せ、それに加えて、ハライド官能基、例えば、ハロゲン化アルキル、ハロゲン化アラルキル、ハロゲン化アシルまたはそれらの組合せを含めた、疎水性の求電子分子であり得る。かかる化合物の例は、一官能性開始剤であり、例えば、飽和または不飽和化学結合の何れかを有する、1から約22個の炭化水素を含有する炭化水素、例えば、ヨウ化/臭化/塩化メチル、ヨウ化/臭化/塩化エチル、1−ヨード/ブロモ/クロロブタン、1−ヨード/ブロモ/クロロヘキサン、1−ヨード/ブロモ/クロロドデカン、1−ヨード/ブロモ/クロロオクタデカン、ヨウ化/臭化/塩化ベンジルなどである。他の開始剤には、
臭化/塩化アリルが含まれる。臭化/塩化アシル、臭化/塩化ベンゾイルなどのハロゲン化アシル、およびp−トルエンスルホン酸、メチルトシレート、および他のトシレートエステルなどのトシル基含有化合物も使用することができる。任意の1種または複数の開始剤を組み合わせて使用することができる。
【0051】
[0079]重合中、開始剤は重合を開始するために使用することができる。使用するとき、モノマー対開始剤の種々のモル比を使用して特定のポリマーを得ることができる。特定のポリマーは、分子の大きさなど、異なる特性を有することができる。したがって、モノマー対開始剤の適切なモル比は、20:1から80:1、例えば、25:1、30:1、35:1、40:1、45:1、50:1、55:1、60:1、65:1、70:1または75:1(21:1、22:1、23:1、24:1、26:1、27:1、28:1、29:1、31:1、32:1、33:1、34:1、36:1、37:1、38:1、39:1、41:1、42:1、43:1、44:1、46:1、47:1、48:1、49:1、51:1、52:1、53:1、54:1、56:1、57:1、58:1、59:1、61:1、62:1、63:1、64:1、66:1、67:1、68:1、69:1、71:1、72:1、73:1、74:1、76:1、77:1、78:1、79:1など含む)であり得る。
【0052】
[0080]非対称の分岐を有するABPが図4Aおよび4Bに表され、ここでは、目的のポリマーのあるものはコアを持たず、鎖および末端分岐の両方からなる非対称な分岐接合部をホモポリマー全体にわたって呈する。官能基は、多くの場合、外面と内部の両方に存在する。しかし、より大きい官能基(例えば、大きい疎水性または親水性基)が使用された場合、官能基は、優先的におよび恐らく必然的に、例えば恐らく立体効果によって、ABPの外面に付される場合が多い。したがって、かかる表面MBPは、不溶性または難溶性の薬剤を可溶化させるまたはそれらの凝集体を形成するために利用することができる。
【0053】
[0081]修飾ABPは、例えば、規則性ABP(ポリリジン(例えば分岐PLL)など)、不規則性ABP(PEI(Aldrich、Polysciencesから、またはBASFからLupasol(商標)の商品名で市販される)またはLittの手順に従って調製することができるポリオキサゾリン(J.Macromol.Sci.Chem.A9(5)、703〜727頁(1975年))など)に、官能基を化学的に結合することを通して得ることができる。他のABPには、これらに限定されないが、ポリアクリルアミド、ポリホスフェート、PVP、PVAなどが含まれ得る。
【0054】
[0082]かかる修飾ABPを作製するために、種々の公知の出発物質を使用することができる。かかるモノマーおよびポリマーは、大量に、穏当な価格で市販される。例えば、目的のホモポリマーを合成するために使用することができる、かかる前駆体モノマーの1つはPEIである。不規則性非対称分岐PEIの合成は公知である(Jonesら、J.Org.Chem.9、125(1944年))。種々の分子量のPEIが、様々な供給源から、例えば、Aldrich、PolysciencesおよびBASF(商品名Luposal(商標)の商品名で)から市販されている。不規則性非対称分岐PEIは、主に、ルイス酸またはブレンステッド酸を開始剤として使用する、アジリジン(エチレンイミン)およびアゼチジン(プロピレンイミン)などの環歪みを有する環状イミンモノマーのカチオン性開環重合を通して生成される(Dermerら、「Ethylenediamine and Other Aziridines」、Academic Press、ニューヨーク、(1969年)、およびPell、J.Chem.Soc.71(1959年))。方法の多くが本質的にワンポットプロセスなので、大量の不規則性ABPを容易に生成することができる。不規則に分岐したポリ(2−置換オキサゾリン)ポリマーは、Littの手順(J.Macromol.Sci.Chem.A9(5)、703〜727頁(1975年))を使用して調製することができる。
【0055】
[0083]ABPを作製するための合成プロセスは、多くの場合、巨大分子の中に種々の分岐接合部を生じる。言い換えれば、末端分岐接合部と鎖分岐接合部とが混合した状態が分子構造にわたって分布している。デンドリマーおよびデンドリグラフトと比較して、不規則性ABPの分岐密度は低くなり、分子構造はオープンになり得る。分岐様式は不規則であるが、Dickら、J.Macromol.Sci.Chem.、A4(6)、1301〜1314(1970年)およびLukovkin、Eur.Polym.J.9、559(1973年)に記載されるように、第一級、第二級および三級アミン基の平均比率は、約1:2:1という比率に比較的一致し得る。
【0056】
[0084]分岐接合部が存在すると、非対称性分岐PEIなどの不規則性ABPは、可能な球形、卵形または同様の外形を有する巨大分子を形成することができるようになる。球状構造の中に、巨大分子の内部の不完全な分岐接合部から形成された種々の大きさのポケットが存在する。内部のポケットが常に分子の中心のコアの周辺に位置するデンドリマーおよびデンドリグラフトとは異なり、不規則性ABPのポケットは、分子全体にわたって不均等に散在する。その結果、不規則性ABPは、種々の分子とさらに反応することができる外面の官能基と不均等に分散する内部の官能基の両方を持ち、これによって、新たな巨大分子構造、すなわち目的の修飾不規則性ABPが形成される。
【0057】
[0085]コアを有するものの、規則性ABPの官能基も外面と内部の両方に分布し、それは不規則性ABPと極めてよく似ている。かかるホモポリマーの1つはPLLであり、それは、米国特許第4,289,872号、第4,360,646号、および第4,410,688号に記載される通りに作製することができる。かかるホモポリマーも、不規則性ABPに関するものと同様の方式で、本明細書で教示した通りに、また当技術分野で公知の通りに修飾することができる。
【0058】
[0086]本開示のある実施形態では、ABP(例えば、不規則性非対称分岐PEIまたは規則性非対称分岐PLLの何れか)は、例えば、マイケル付加またはポリマーのアミン上へのアクリル酸エステルの付加を通して、様々な種類の第一級アミン基で修飾される。よって、例えば、マイケル付加反応を通して、アクリル酸メチルまたは本明細書で提示する通りの他のアクリレートを、例えば、PEIおよびPLLホモポリマーの第一級および/または第二級アミノ基上に導入することができる。次に、エステル基を、例えばアミド化反応によって、さらに誘導体化することができる。よって、例えば、かかるアミド化反応、例えばEDAとの反応によって、新たに形成された分岐の終端にアミノ基を付加することができる。ポリマーへの他の修飾は、例えば、「Poly(amines) and Poly(ammonium salts)」、「Handbook of polymer Synthesis」(Part A)中、Kricheldorf編、ニューヨーク、Marcel Dekker、1994年に提示される通りの、公知の化学反応を使用して行うことができる。
【0059】
[0087]そのように付加すると、修飾ABP、例えば、修飾PEIまたはPLLホモポリマーが形成される。PEIおよびPLLなどのABPの延長として、生じた修飾ABPも非対称に分岐している。溶媒の環境(すなわち、pHまたは極性)に応じて、表面官能基は、様々な電荷および電荷密度を担うことができる。次に、分子の形状および官能基の位置(すなわち、官能基の折り返し)を、これらの特徴的な特性に基づいてさらに調節することができる。
【0060】
[0088]別の実施形態では、修飾ABPは、例えば、ホモポリマー上の適した部位との反応に適用できることが知られている種々の合成スキームの何れかを使用して生成することができる。さらに、選択した合成スキームに種々の試薬の何れかを使用して、ポリマーの
主鎖に種々の修飾または付加の何れかをもたらすことができる。よって、例えば、上述のアミンへのマイケル付加反応の場合、上文で提示する通りに、種々の置換基の何れかの付加をアルキル化段階で使用することができ、例えば、飽和または不飽和炭化水素を含むことができるアクリレート(脂肪族、分岐、飽和、芳香族、環状またはそれらの組合せであってもよい、炭素1個から炭素約22個を含むものなど)を用いて、付加を使用することができる。適切な反応物には、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ペンチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸ヘプチル、アクリル酸オクチル、アクリル酸ノニル、アクリル酸デシル、アクリル酸ウンデシル、アクリル酸ドデシルなど、およびそれらの混合物が含まれる。同様に、上で例示した例におけるアミド化段階では、本明細書で提示される、当技術分野で公知の方法で、種々のアミンの何れかを使用することができる。例えば、EDA、モノエタノールアミン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、アルキルアミン、アリルアミン、または、PEG、ペルフルオロポリマー、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリジメチルシロキサン、ポリアクリレート、ポリメタクリル酸メチルなどを含めた任意のアミノ修飾ポリマー、およびそれらの混合物を使用することができる。加えて、脂肪族(例えば、Cから約C22の炭化水素)基、芳香族基を含めた疎水基、ポリエチレンポリマー、ポリスチレンポリマー、ペルフルオロポリマー、ポリジメチルシロキサン、ポリアクリレート、ポリメタクリル酸メチル、ならびに、OH基を含めた親水性基、PEOX、PEG、PEOなどの親水性ポリマーなどの修飾ABPへの結合は、例えば、エポキシ反応、アミド化反応、マレイミドと反応した−SH基または−NH基を使用することを含むマイケル付加反応、アルデヒド/ケトン−アミン/ヒドラジドのカップリング反応、ヨード/ヨードアセチル−SHのカップリング反応、ヒドロキシルアミン−アルデヒド/ケトンのカップリング反応などを使用して実現することができる。かかる合成戦略を用いれば、より多くのポケットが導入された分子の非対称的な成長を可能とするだけでなく、構造の内部と外面の両方に複数の官能基を付加することが可能となる。ホモポリマーは、適正な分子量および官能基を有する所望のABPが得られるまで、同じまたは異なる合成プロセスを使用してさらに修飾することができる。加えて、かかるホモポリマーの疎水性および親水性の特性、ならびに電荷密度を、ホモポリマーを構築するのに適したモノマーおよび適切な修飾反応を使用して、特定の用途のニーズに適合するように合せることができる。
【0061】
[0089]本開示の別の実施形態では、POXなどの不規則性ABPのフォーカルポイント(コンバージェント合成の間に種々の反応性鎖末端が合流する)は、末端となるか、または別の小分子と反応して、ホモポリマーの鎖末端に、第一級、第二級または第三級アミン、カルボキシレート、ヒドロキシル、アルキル、フルオロアルキル、アリール、PEG、アセテート、アミドおよび/またはエステル基を含めた種々の官能基を生じることができる。あるいは、重合がコンバージェント合成の間に開始される場合、同じ種類の官能基を表面基に導入できるように、種々の開始剤を利用することもできる(J.Macromol.Sci.Chem.A9(5)、703〜727頁(1975年))。
【0062】
[0090]分岐ポリマーのフォーカルポイントに第一級アミン基を有する、アルキルで表面修飾された不規則性分岐ポリ(2−エチルオキサゾリン)は、上記のLittおよびWarakomskiの手順を使用して調製することができる。例えば、カチオン開環プロセスによる2−エチルオキサゾリン重合のためにCH(CH17−Brを開始剤として利用して不規則性分岐ポリマーを作成し、次いでN−tert−ブチルオキシカルボニルピペラジン(N−Boc−ピペラジン)またはEDAで反応停止させることができる。大過剰のEDAで終了させると、疎水性に修飾された分岐ポリ(2−エチルオキサゾリン)ポリマーを、フォーカルポイントにおいて第一級アミン基で官能化することができる(図6B)。あるいは、N−Boc−ピペラジンで終了させた、疎水性に修飾された分岐ポリ(2−エチルオキサゾリン)ポリマーを脱保護して、フォーカルポイントに遊離アミノ基を作成することもできる。終了させない場合は、ポリマーのフォーカルポイントを加水
分解することができ、例えば、水(例えば、1N NaCOなどを含有する)に溶解させてヒドロキシル基にすることができる。
【0063】
[0091]疎水性に修飾された分岐ポリ(2−オキサゾリン)ホモポリマーに第一級アミン基を導入すると、薬剤の溶解性が高まり、タキサン誘起凝集体が生じる一方で、第一級アミン基によって、種々の標的指向性基、例えば、抗体、その抗原結合部分、抗原または結合対のメンバーなどを、疎水性に修飾された分岐ポリ(2−オキサゾリン)ポリマーに付すことも可能となる(図10)。かかる標的指向性基およびその修飾を含有するかかる凝集体またはナノ粒子によって、タキサンを有する凝集体に標的指向能がもたらされ、タキサンが所望の治療位置で優先的にまたは単独で放出されることが可能となる。
【0064】
[0092]本明細書で教示する通りに、疎水性に修飾されたホモポリマー(SBPとABPの両方が含まれる)などのMBPを使用して、水に不溶性または難溶性のタキサンを可溶化させるため、または、パクリタキセルなどの水に不溶性または難溶性のタキサンを有する、タキサン誘起ナノ粒子を形成するために、カプセル化ポリマーまたはナノカプセルを作成することができる。有機溶媒環境において、親水性または両親媒性の内部は、ポリ(2−オキサゾリン)、ポリ(2−置換オキサゾリン)(ポリ(2−メチルオキサゾリン、ポリ(2−エチルオキサゾリン)、ポリ(2−プロピルオキサゾリン)およびポリ(2−ブチルオキサゾリン)などが含まれる)、PEG、PEO、ポリホスホネートなどでもよい。疎水性の外面は、脂肪族炭化水素(Cから約C22など)、芳香族炭化水素、ポリエチレンポリマー、ポリスチレンポリマー、ペルフルオロポリマー、ポリジメチルシロキサン、ポリアクリレート、ポリメタクリル酸メチルなどを含むことができる。水性環境では、その逆が当てはまる。水性環境での薬剤誘起凝集体において、タキサンなどの薬剤分子は、MBPの疎水基/ドメインと会合している(図9)。分岐ホモポリマーの分岐密度(例えば、星型および櫛型ホモポリマーなどの低世代から、デンドリマーおよびデンドリグラフトなどの高世代まで)ならびに疎水性表面基の被覆量(例えば、0%から100%の被覆率)は、著しくホモポリマーの溶解性に影響を与えることができ、その結果として、タキサンの溶解能または吸着/吸収能にも影響を与える。例えば、分岐密度および疎水基の被覆量が増大すると、ホモポリマーとタキサンの適合性が上がることとなる。
【0065】
[0093]ある場合では、約0.1から約30重量%以上の表面疎水性構成成分を有するABPおよびSBPが、パクリタキセルなどの水に難溶性または不溶性のタキサンを可溶化または分散させるのに有効である。加えて、利用する分岐ホモポリマー、例えば、POX、PEOX、PMOX、PEO/PEG、ポリアクリルアミド、ポリホスフェート、PVPおよびPVAが、水と種々の有機溶媒の両方に可溶であることによって、種々のタキサン含有ナノ粒子または凝集体の形成が容易となる。水に良好に可溶するとともに、他の有機溶媒の有無にかかわらず水溶液中で疎水性薬剤と良好に混和するので、かかるホモポリマーは、水に難溶性のタキサンの溶解性を高めるのに有用なものとなる。例えば、目的のホモポリマーは、製剤ステップ、加工時間に加えて、製薬産業で現在使用されている複雑で高価な装置を使用する必要性を低減することにより、製造プロセスを簡略化し、製造コストを減少させる。追加的な分岐密度が必要であれば、SBPまたはABPを最初に本明細書で記載した通りに追加的な基で修飾し、次に、例えば、タキサンの溶解性を高めるための追加的な疎水性官能基を付すことができる。
【0066】
[0094]疎水性に修飾されたSBPまたはABPを、パクリタキセルなどの水に不溶性または難溶性のタキサンと混合すると、ポリマー単独で形成された凝集体とは異なる大きさを有する、異なる物理的凝集体が形成される(図11〜13)。ホモポリマーおよびタキサンの濃度が減少すると、ポリマー/タキサン凝集体の大きさおよび分布がポリマー単独凝集体のものに酷似するようになることから、誘起凝集体またはナノ粒子からタキサンが放出されることが示唆される。ポリマー単独凝集体の幅広い粒度分布は、脂質から構成さ
れる他の構造(タキサンと会合しているいないにかかわらず)に観察されるものと類似している。一方、目的のタキサン誘起凝集体は、それより分布の狭い特定の大きさを有する、すなわち、ある特定の大きさの独特な凝集体が生成される。凝集体中のタキサン濃度の減少、凝集体中のホモポリマー濃度の減少、凝集体濃度の減少につれて、またはそれらが任意に組み合わさったときに、凝集体の大きさが減少するおよび/または凝集体の大きさの分布が広くなることによって証明される通りに、目的の凝集体はパクリタキセルを放出する。分布が広くなるのは、タキサンが放出されることによってホモポリマー単独凝集体と種々の大きさのポリマー/タキサン凝集体が混合しているからであり、それは観察される唯一の凝集体がホモポリマー単独の特性を有するものになるまで続く。言い換えれば、タキサンは、受容者に導入された後、循環系などで徐々に放出される。その機構は、静脈内(IV)、経口、経皮、眼、筋肉内などの投与様式を含めた種々の薬剤送達用途のために、および遅延放出または持続放出プロファイルが望ましい可能性がある場合に重要である。
【0067】
[0095]ポリマー対タキサンの適切な重量比は6から8であり、例えば、6.5、7または7.5であり、6.1、6.2、6.3、6.4、6.6、6.7、6.8、6.9、7.1、7.2、7.3、7.4、7.6、7.7、7.8、7.9などが含まれる。
【0068】
[0096]重合におけるモノマー対開始剤のモル比と、ナノ粒子におけるポリマー対タキサンの重量比との組合せによって、薬剤ナノ粒子の大規模製造性、ナノ粒子の大きさ、および腫瘍縮小治療としての効力が決まる。一例として、100:1のモノマー対開始剤モル比で合成されたポリマーを使用して、5:1のポリマー対タキサン重量比で調製したタキサン誘導凝集体は、ナノ粒子が大きくなり、例えば、凍結乾燥前に120〜140nmの範囲内となる。大量に製造するとき、かかる大きいナノ粒子を、0.2μmのフィルターに通す(注射液に必要とされる殺菌ステップ)ことは難しい。
【0069】
[0097]それと比べて、60:1のモノマー対開始剤モル比を使用して合成されたポリマーを7:1のポリマー対タキサン重量比でタキサンと混合したとき、形成されたナノ粒子は凍結乾燥前に70〜90nmの大きさであったために、粒子を0.2μmのフィルターにほとんど難なく通すことが可能であった。
【0070】
[0098]凍結乾燥前に大きさが約100nm以下である小さいナノ粒子は、大きい粒子よりも低い投与濃度で腫瘍を縮小させた。例えば、小さいナノ粒子は、大きいナノ粒子と比較すると、たった1/5のタキサン含有率で同じ癌治療効力を実現する。よって、より低い用量の薬剤を使用することができ、副作用の危険性が最小限に抑えられる。
【0071】
[0099]タキサン誘起凝集体は、標的指向性部分または基(これらに限定されないが、抗体(またはその抗原結合部分)、抗原、同種炭水化物(例えばシアル酸)、細胞表面受容体リガンド、細胞表面受容体に結合する部分、例えば前立腺特異的膜抗原(PSMA)、細胞表面の糖類に結合する部分、細胞外マトリックスリガンド、サイトゾル受容体リガンド、増殖因子、サイトカイン、インクレチン、ホルモン、レクチン、レクチンの標的、例えば、ガラクトース、ガラクトース誘導体、N−アセチルガラクトサミン、マンノース、マンノース誘導体など、ビタミン、例えば、葉酸塩、ビオチンなど、アビジン、ストレプトアビジン、ニュートラアビジン、DNA、RNAなどが含まれる)と結合して、コンジュゲートを形成し、標的指向性基が目的のナノ複合体粒子に組み込まれるようにすることもできる(図10)。
薬剤の製剤およびナノ粒子の調製
[00100]タキサンおよび修飾ホモポリマーは個々に、適切な緩衝液および/または溶媒
、例えば、緩衝液、メタノール、アセトン、エタノールなどに、適切な濃度で、例えば、一般にミリグラムまたはナノグラムの量である、in vivoでの使用が確立している
濃度などで、懸濁させることができる。次に、2つの溶液は、室温またはタキサンおよびホモポリマーの完全性を維持するのに許容可能であることが公知である他の温度などの適切な温度で、1時間、2時間などの適切な期間、混合される。目的の凝集体は一旦形成されると安定なので、他のインキュベーション時間は、数分から数時間まで変動する可能性がある。凝集体は、当技術分野で公知の方法を実施して、例えば、濾過、遠心分離、蒸発、凍結乾燥、透析などによって、濃縮するまたは収集することができる。凝集体は、貯蔵寿命を延ばすために乾燥させることができる。
【0072】
[00101]例えば、パクリタキセルなどのタキサンを、40mg/mLまでの種々の量で
メタノールまたはエタノールに溶解させた。炭化水素(CH(CH17)で修飾された不規則性分岐PEOX60(モノマー対開始剤の比率=60:1)を、本明細書で教示する通りに調製し、100mg/mLまでの種々の濃度でメタノールまたはエタノールに溶解させた。
【0073】
[00102]次に、2つの溶液を種々の量で混合して、混合物中の最終的なホモポリマー対
タキサンの重量比が2:1から10:1の範囲内になるようにし、回転蒸発させて乾燥させた。次に、この混合物を水または生理食塩水に再溶解させ、次いで0.2μMのフィルターによって滅菌濾過し、量に応じて20から72時間凍結乾燥して、乾燥粉末を得た。
【0074】
[00103]凝集体またはナノ粒子の大きさは、光散乱によって測定すると、凍結乾燥前に
直径約50から約100nm、約60から約95nm、約70から約90nmの範囲内であり(例えば、1mL当たりパクリタキセル3mgにおける)、凍結乾燥後に直径約110まで、約150nmまで、約115から約145nm、約120から約140nm(例えば、1mL当たりパクリタキセル5mgにおける)の範囲内であり得る。
【0075】
[00104]本明細書で開示する通りの使用のための本開示の医薬組成物は、意図される投
与経路に適合するように製剤化される。投与経路の例には、非経口(例えば、静脈内、皮内、皮下)、経口(例えば吸入)、経皮(局所)、経粘膜および直腸投与が含まれる。非経口、皮内または皮下用途に使用するための溶液または懸濁液は、滅菌希釈剤、例えば、注射用水、生理食塩水、油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールまたは他の合成溶媒;抗菌剤、例えば、ベンジルアルコールまたはメチルパラベン;酸化防止剤、例えば、アスコルビン酸または重亜硫酸ナトリウム;錯化剤、例えばEDTA;緩衝液、例えば、酢酸塩、クエン酸塩またはリン酸塩;および張度調整剤、例えば、塩化ナトリウムまたはデキストロースを含むことができる。pHは、酸または塩基、例えばHClまたはNaOHで調整することができる。非経口調製物は、ガラス製またはプラスチック製のアンプル、使い捨て注射器または複数用量バイアルに製品として封入することができる。一般に、in vivo診断薬は、経口、直腸、静脈内、腹腔内などに投与されることとなろう。
【0076】
[00105]注射液として使用するのに適切な医薬組成物は、滅菌水溶液または分散液およ
び滅菌注射用溶液または分散液を即時調製するための滅菌粉末を含む。静脈内投与の場合、最適な担体には、生理食塩水、静菌水またはリン酸緩衝食塩水(PBS)が含まれる。組成物は一般に、滅菌されており、注射針通過性が存在する程度に流動性がある。組成物は、製造および保管条件下で安定でなければならず、かつ細菌および真菌などの微生物の汚染作用から保護されなければならない。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセリン、プロピレングリコール、液体PEG、ポリソルベートなど)およびそれらの適切な混合物を含有する溶媒または分散媒であり得る。妥当な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングの使用によって、分散液の場合は必要とされる粒径を維持することによって、増粘剤の使用および界面活性剤の使用によって、維持することができる。微生物の作用の防止は、種々の抗菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロ
ブタノール、フェノール、アスコルビン酸などによって実現することができる。等張化剤、例えば、マンニトール、ソルビトールなどの糖、多価アルコール、または塩化ナトリウムを、組成物に含めることができる。吸収を遅らせる作用剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウムまたはゼラチンを組成物中に含めることによって、注射用組成物の吸収を延長させることができる。
【0077】
[00106]滅菌注射用溶液は、活性化合物を、必要とされる量の妥当な溶媒中に、必要に
応じて上で列挙した成分の1種または組合せと共に組み込み、その後濾過滅菌することによって、調製することができる。一般に、分散液は、基剤となる分散媒および必要とされる他の成分(例えば、上で列挙したものおよび当技術分野で知られるようなものからの)を含有する滅菌ビヒクル中に、活性化合物を組み込むことによって調製される。滅菌注射用溶液を調製するための滅菌粉末の場合、調製物は、例えば、凍結乾燥、真空乾燥またはフリーズドライによって調製することができ、それらによって、活性成分に任意の所望の追加成分を加えた粉末が、予め濾過滅菌されたその溶液から得られる。目的の調製物は、保管可能であり、適切な液体で再構成して使用することができる。
【0078】
[00107]経口組成物は一般に、不活性希釈剤、風味剤(flavorant)、着臭剤
または食用担体を含む。組成物は、ゼラチンカプセルに封入するまたは錠剤に圧縮することができる。経口での治療的投与のために、活性化合物を賦形剤に組み込み、錠剤、トローチ剤またはカプセル剤の形態で使用することができる。経口組成物は、液状担体を使用して調製し、シロップまたは液体製剤とすることもでき、または、液状担体中の化合物を経口的に施し、うがいし、吐き出すまたは飲み込む、うがい液として使用するために調製することもできる。
【0079】
[00108]薬学的に適合する結合剤および/または補助物質を組成物の一部として含むこ
とができる。錠剤、丸剤、カプセル剤、トローチ剤などは、結合剤、例えば、微結晶性セルロース、トラガカントゴムもしくはゼラチン;賦形剤、例えば、デンプンもしくはラクトース、崩壊剤、例えば、アルギン酸、Primogelもしくはコーンスターチ;滑沢剤、例えば、ステアリン酸マグネシウムもしくはSterotes;流動促進剤、例えば、コロイド状二酸化ケイ素;甘味料、例えば、スクロースもしくはサッカリン;または香味剤、例えば、ペパーミント、サリチル酸メチルもしくはオレンジ香味剤を含有することができる。
【0080】
[00109]吸入による投与の場合、化合物は、適切な噴射剤、例えば二酸化炭素などのガ
スを含有する加圧容器もしくはディスペンサーまたはネブライザーからの湿式または乾式エアロゾル噴霧剤、あるいはミストの形態で送達される。
【0081】
[00110]全身投与も経粘膜的または経皮的手段によって行うことができる。経粘膜また
は経皮投与の場合、透過させようとするバリアに適した浸透剤が製剤に使用される。かかる浸透剤は一般に当技術分野で公知であり、それには、例えば、経粘膜投与の場合、洗浄剤、胆汁酸塩およびフシジン酸誘導体が含まれる。経粘膜投与は、鼻腔用スプレーまたは坐剤の使用を通して達成することができる。経皮投与の場合、活性化合物は、一般に当技術分野に公知の通りに軟膏剤、油薬、ゲルまたはクリームに製剤化される。適切な担体には、ジメチルスルホキシドが含まれる。
【0082】
[00111]化合物は、直腸に送達するために、坐剤(例えば、カカオ脂および他のグリセ
リドなどの従来の坐剤の基剤と共に)または保持浣腸剤の形態に調製することもできる。
【0083】
[00112]一実施形態では、活性化合物は、埋込体およびマイクロカプセル化送達系を含
めた制御放出製剤など、化合物が体から急速に排出されることを防ぐ担体を用いて調製さ
れる。エチレン酢酸ビニル、ポリ酸無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステルおよびポリ乳酸など、生分解性の、生体適合性ポリマーを使用することができる。
【0084】
[00113]かかる製剤を調製する方法は、当業者であれば明らかであろう。材料は、例え
ば、Alza CorporationおよびNova Pharmaceuticals,Incから、市販品として入手することもできる。
【0085】
[00114]本発明の凝集体は、クリーム、軟膏剤、ローション、膏薬、他の化粧品などの
、局所用形態で使用することができる。目的のタキサンなどの薬学的に活性な薬剤(PAA)および他の生理活性または不活性化合物を担うことができ、それには、皮膚軟化薬、漂白剤、制汗剤、薬剤、保湿剤、芳香、色素、顔料、染料、酸化防止剤、油、脂肪酸、脂質、無機塩、有機分子、乳白剤、ビタミン、薬剤、角質溶解剤、UV遮断剤、日焼け促進剤、脱色剤、脱臭剤、香料、害虫忌避薬などが含まれる。
【0086】
[00115]投与を容易にし、投与量を均一にするために、経口または非経口組成物を単位
剤形で製剤化すると有利であり得る。単位剤形は、本明細書で使用される場合、治療すべき対象のための単位投与量として適切な、物理的に別々の単位を指し、各単位は、所望の治療的エンドポイントを生じるように計算された活性化合物の所定の分量を含有する。
【0087】
[00116]投与量、例えば、好ましい投与経路および量は、当技術分野で公知の方法を実
施して、前臨床および臨床試験から得られる経験的データに基づいて得ることができる。剤形および送達形態は、PAAの特性、ポリマー、実現しようとする特定の治療効果、受容者の特性および状態などによって決定付けられる場合およびそれらに依存する場合がある。数日間およびそれ以上におよぶ反復投与の場合、状態に応じて、所望のエンドポイントが得られるまで治療を持続することができる。例示的な投薬計画が、WO94/04188に開示されている。
【0088】
[00117]治療法の進捗は、患者データの入力(patient input)だけでな
く、従来の技法およびアッセイによってモニタリングすることができる。
【0089】
[00118]医薬組成物を、投与の指示書と共に容器、パック、またはディスペンサーに含
めることができる。
【0090】
[00119]別の投与方法は、目的の化合物を、栄養補助食品もしくは添加剤として、また
はビタミンと同様に予防ベースで摂取される剤形として、食品または飲料中にまたはそれらに添加することを含む。目的の凝集体は、胃の環境を通り抜けて残存すると見込まれる形態にカプセル化することができる。かかる形態は一般に知られており、例えば腸溶コーティング製剤である。あるいは、目的の凝集体は、当技術分野で公知の通りに化学的修飾するまたは遅延、持続もしくは制御放出をもたらすことが知られる作用剤と組み合わせるなど、半減期を延ばすために改変することができる。
【0091】
[00120]本開示を、ここから以下の非限定的な例で例示する。
【実施例】
【0092】
材料
[00121]対称分岐PPIデンドリマーは、Sigma−Aldrichから購入した。
対称分岐PEIデンドリマーおよびデンドリグラフトは、米国特許第4,631,337号、第5,773,527号、第5,631,329号および第5,919,442号に提示される手順に従って調製した。すべての抗体は、Sigma−Aldrich、Bi
odesignまたはFitzgeraldから購入した。様々な世代のPAMAMデンドリマーは、Dendritech,Incから購入した。
アミノ官能基を有する修飾された対称分岐PPI(m−SB−PPI−NH−1.0)
[00122]以下を含めた試薬、対称分岐PPI(SB−PPI−4、8、16、32、6
4、MW316、773、1,687、3,514および7,168)、アクリル酸メチル(MA、FW=86.09)、EDA(FW=60.10)およびメタノール、を利用した。
【0093】
[00123]丸底フラスコに、1.0gのPPI−64デンドリマー(MW7168)およ
び20mlのメタノールを添加した(溶液A)。別の丸底フラスコに、2.4gのアクリル酸メチル(MA)および10mlのメタノールを添加した(溶液B)。次に、室温で撹拌しながら溶液Aを溶液Bにゆっくりと滴下した。生じた溶液を40℃で2時間反応させた。反応完了後、溶媒および未反応のMAモノマーを回転蒸発によって除去し、次に、生成物である2.5gのMA官能基化PPIを20mlのメタノールに再溶解させた。
【0094】
[00124]丸底フラスコに160gのEDAおよび50mlのメタノールを添加し、その
後MA官能基化PPIを0℃でゆっくりと添加した。次に、この溶液を4℃で48時間反応させた。溶媒および過剰なEDAを、回転蒸発によって除去した。次に、粗生成物をエチルエーテル溶液から沈殿させ、透析によってさらに精製して、分子量が約21,760である、約2.8gの第一級アミン官能基化対称分岐PPI(m−SB−PPI−NH−1.0)を得た。生成物を、Hおよび13C核磁気共鳴(NMR)ならびにサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によって特性決定した。
【0095】
[00125]種々の分子量を有する他のMAまたは第一級アミンで修飾された対称分岐PP
Iデンドリマーおよび対称分岐PEIデンドリグラフトを、同様の方法で調製した。
ヒドロキシルおよびアミノ混合官能基を有する修飾された対称分岐PPI(mix−m−SB−PPI−64−NH/OH−2)
[00126]アミノ官能基化対称分岐PPI(m−SB−PPI−64−NH−1.0)
、MA、EDA、モノエタノールアミン(MEA、FW=61.08)およびメタノールを利用した。
【0096】
[00127]丸底フラスコに、前の手順から生成された1.0gのアミノ修飾PPIすなわ
ちm−SB−PPI−NH−1.0および20mlのメタノールを添加した(溶液A)。別の丸底フラスコに2.4gのMAおよび10mlのメタノールを添加した(溶液B)。次に、室温で撹拌しながら溶液Aを溶液Bにゆっくりと滴下した。生じた溶液を40℃で2時間反応させた。反応完了後、溶媒および未反応のモノマーMAを回転蒸発によって除去し、次に生成物である2.5gのMA官能基化m−SB−PPI−64−MA−1.5を20mlのメタノールに再溶解させた。
【0097】
[00128]丸底フラスコに、32gのEDA、130gのMEAおよび100mlのメタ
ノール(EDA:MEAのモル比は20:80であった)を添加し、その後、m−SB−PPI−64−MA−1.5を0℃でゆっくり添加した。次に、この溶液を4℃で48時間反応させた。溶媒および過剰なEDAを回転蒸発によって除去した。次に、粗生成物をエチルエーテル溶液から沈殿させ、透析によってさらに精製して、約2.8gのヒドロキシルおよびアミノ混合官能基化(混合表面)SBP(mix−m−SB−PPI−64−NH/OH−2.0、平均NH表面基20%およびOH表面基80%、ならびに分子量約21,862)を得た。
【0098】
[00129]ヒドロキシルとアミノ基の種々の比率ならびに様々な分子量を有する、修飾さ
れた他の不規則性AB−PEIおよび規則性AB−PLL分子を同様の方法で調製した。
【0099】
[00130]不規則性非対称分岐PEIは、AldrichおよびPolyscience
sから購入した。規則性ABPは、米国特許第4,289,872号に提示される手段に従って調製した。すべての抗体は、Sigma−Aldrich、BiodesignまたはFitzgeraldから購入した。
アミノ官能基を有する修飾された不規則性非対称分岐PEI(m−ran−AB−PEI−NH−1.0)
[00131]不規則性非対称分岐PEI(ran−AB−PEI、MW2,000、25,
000および75,000)、MA、EDAおよびメタノールを利用した。
【0100】
[00132]丸底フラスコに1.0gのPEI(MW2,000)および20mlのメタノ
ールを添加した(溶液A)。別の丸底フラスコに、3.0gのMAおよび10mlのメタノールを添加した(溶液B)。次に、室温で撹拌しながら溶液Aを溶液Bにゆっくりと滴下した。生じた溶液を40℃で2時間反応させた。反応完了後、溶媒および未反応のMAを回転蒸発によって除去し、次に生成物であるMA官能基化PEIを20mlのメタノールに再溶解させた。
【0101】
[00133]丸底フラスコに、80gのEDAおよび50mlのメタノールを添加し、その
後、MA官能基化PEIを0℃でゆっくり添加した(メタノール20ml中にMA1gが溶解)。次に、この溶液を4℃で48時間反応させた。溶媒および過剰なEDAを回転蒸発によって除去した。次に、粗生成物をエチルエーテル溶液から沈殿させ、透析によってさらに精製して、分子量が約7,300である、約3.0gの第一級アミン官能基化不規則性非対称分岐PEI(m−ran−AB−PEI−NH−1.0)を得た。生成物を、Hおよび13CNMRならびにSECによって特性決定した。
【0102】
[00134]種々の分子量を有する、他のMAまたは第一級アミンで修飾された不規則性非
対称分岐PEIおよび規則性非対称分岐PLLポリマーを、同様の方法で調製した。
炭化水素鎖での分岐ポリマーの修飾
[00135]不規則性分岐PEIの10%炭化水素鎖での修飾を一例として使用する。1グ
ラムの分岐PEI(FW=25000)を10mLのメタノールに溶解させた。この溶液に、0.23gの1,2−エポキシヘキサン(FW=100.16)を添加し、混合物を40℃で2時間加熱した。次に、溶媒を回転蒸発させ、残留物を水に再溶解させた。透析(3,500カットオフ)後、修飾されたPEIが生じた。
【0103】
[00136]種々の割合(%)および長さ(例えば、C、C12、C18およびC22
の炭化水素鎖を有する他のMBP、例えば、PAMAM、PEIおよびPPIのデンドリマーおよびデンドリグラフト、ならびに非対称PLLを同様の方法で調製した。
ヒドロキシルおよびアミノ混合官能基を有する修飾された不規則性非対称分岐PEI(m−ran−AB−PEI−NH/OH−2)
[00137]アミノ官能基化不規則性非対称分岐PEI(m−ran−AB−PEI−NH
−1.0)、MA、EDA、モノエタノールアミン(MEA、FW=61.08)およびメタノールを利用した。
【0104】
[00138]丸底フラスコに、前の手順から生成された1.0gのアミノ修飾PEIすなわ
ちm−ran−AB−PEI−NH−1.0および20mlのメタノールを添加した(溶液A)。別の丸底フラスコに3.0gのMAおよび10mlのメタノールを添加した(溶液B)。次に、室温で撹拌しながら溶液Aを溶液Bにゆっくりと滴下した。生じた溶液を40℃で2時間反応させた。反応完了後、溶媒および未反応のMAを回転蒸発によって除去し、次に、生成物であるMA官能基化m−ran−AB−PEI−MA−1.5を20mlのメタノールに再溶解させた。
【0105】
[00139]丸底フラスコに、60gのEDA、244gのMEAおよび100mlのメタ
ノール(EDA:MEAのモル比は20:80であった)を添加し、その後、m−ran−AB−PEI−MA−1.5を0℃でゆっくり添加した(メタノール20ml中にMA1gが溶解)。次に、この溶液を4℃で48時間反応させた。溶媒および過剰なEDAを回転蒸発によって除去した。次に、粗生成物をエチルエーテル溶液から沈殿させ、透析によってさらに精製して、約2.4gのヒドロキシルおよびアミノ混合官能基化不規則性ABP(m−ran−AB−PEI−NH/OH−2.0、平均NH表面基20%およびOH表面基80%、ならびに分子量は約18,000であった)を得た。
【0106】
[00140]ヒドロキシル基とアミノ基の種々の比率ならびに様々な分子量を有する、他の
修飾された不規則性AB−PEIおよび規則性AB−PLLポリマーを同様の方法で調製した。
第一級アミン鎖末端基を有する、アルキル修飾された不規則性非対称分岐ポリ(2−エチルオキサゾリン)(PEOX)
[00141]CH−(CH11−PEOX−ABP100(C12ABP100は、
初期反応におけるモノマー対開始剤の比率を表すための独断的な名称である)を、コアシェル構造を調製する一般的手順の通りに合成する。CH(CH11−Br(2.52g)を500mlのトルエン中に混合したものに蒸留ヘッドを付け、N下で約15分間共沸して水を除去した。2−エチルオキサゾリン(100g)を、添加漏斗を通して滴加し、混合物を24〜48時間の間還流した。重合完了後、12.12gのEDAを反応性ポリマー溶液(A)に添加し、アミン官能基を導入した。POX鎖末端対EDAのモル比は1対20であった。
【0107】
[00142]あるいは、N−Boc−ピペラジンまたは水(例えば、1N NaCO
有する)を添加して反応を終了させることもできる。モルホリンまたはPEIを反応性ポリマー溶液(A)に添加して反応を終了させることもできる。粗生成物をメタノールに再溶解させ、次に大過剰のジエチルエーテルから沈殿させる。最下層をメタノールに再溶解させ、回転蒸発および真空によって乾燥させ、非対称不規則性分岐PEOXポリマーを白色固体(101g)として得た。
【0108】
[00143]他の非対称不規則性分岐ポリマー、例えば、C−PEOX ABP20、5
0、100、200、300および500、C12−PEOX ABP20、50、200、300および500、C22−PEOX ABP20、50、100、200、300および500、ならびにポリスチレン−PEOXなど、ならびに非修飾および修飾ポリ(2−置換オキサゾリン)、例えばポリ(2−メチルオキサゾリン)、を同様の方法で調製した。すべての生成物をSECおよびNMRによって分析した。
第一級アミン鎖末端基を有する、アルキル修飾された不規則性非対称分岐ポリ(2−エチルオキサゾリン)(PEOX)
[00144]CH−(CH17−PEOX−ABP60(C18ABP60は、初期
反応におけるモノマー対開始剤の比率を表すための独断的な名称である)を、コアシェル構造を調製する一般的手順の通りに合成する。CH(CH17−Br(5.61g)を500mlのトルエン中に混合したものに蒸留ヘッドを付け、N下で約15分間共沸して水を除去した。2−エチルオキサゾリン(100g)を添加漏斗を通して滴加し、混合物を24〜48時間の間還流した。重合完了後、10.1gのEDAを反応性ポリマー溶液(A)に添加し、アミン官能基を導入した。ポリオキサゾリン反応性鎖末端対EDAのモル比は1対10であった。
【0109】
[00145]あるいは、N−Boc−ピペラジンまたは水(例えば、1N NaCO
有する)を添加して反応を終了させることもできる。モルホリンまたはPEIを反応性ポ
リマー溶液(A)に添加して反応を終了させることもできる。粗生成物をメタノールに再溶解させ、次に大過剰のジエチルエーテルから沈殿させる。最下層をメタノールに再溶解させ、回転蒸発および真空によって乾燥させ、非対称不規則性分岐PEOXポリマーを白色固体として得た。
【0110】
[00146]他の非対称不規則性分岐ポリマー、例えば、C18−PEOX ABP20、
40、50、70、80、100、120、200、300、500など、ならびに非修飾および修飾ポリ(2−置換オキサゾリン)、例えば、ポリ(2−メチルオキサゾリン)、を同様の方法で調製した。すべての生成物をSECおよびNMRによって分析した。
混合表面で修飾された対称分岐ポリマー−IgGコンジュゲート
[00147]混合表面(OH/NH混合)で修飾された対称分岐PPI−IgGコンジュ
ゲート(mix−m−SB−PPI−64−NH/OH−2−IgGコンジュゲート)を、ポリマー抗体を調製する一般的手順の通りに調製する。
【0111】
[00148]他のコンジュゲート、例えば、m−SB−PPI−4−NH−1−IgG、
m−SB−PPI−8−NH−1−IgG、m−SB−PPI−16−NH−1−IgG、m−SB−PPI−32−NH−1−IgG、m−SB−PPI−4−NH−2−IgG、m−SB−PPI−8−NH−2−IgG、m−SB−PPI−16−NH−2−IgG、m−SB−PPI−32−NH−2−IgG、m−SB−PPI−4−NH−3−IgG、m−SB−PPI−8−NH−3−IgG、m−SB−PPI−16−NH−3−IgG、m−SB−PPI−32−NH−3−IgG、mix−m−SB−PPI−4−NH/OH−1(OH/NH混合)−IgG、mix−m−SB−PPI−8−NH/OH−1(OH/NH混合)−IgG、mix−m−SB−PPI−16−NH/OH−1(OH/NH混合)−IgG、mix−m−SB−PPI−32−NH/OH−1(OH/NH混合)−IgG、mix−m−SB−PPI−4−NH/OH−2(OH/NH混合)−IgG、mix−m−SB−PPI−8−NH/OH−2(OH/NH混合)−IgG、mix−m−SB−PPI−16−NH/OH−2(OH/NH混合)−IgG、mix−m−SB−PPI−32−NH/OH−2(OH/NH混合)−IgG、mix−m−SB−PPI−4−NH/OH−3(OH/NH混合)−IgG、mix−m−SB−PPI−8−NH/OH−3(OH/NH混合)−IgG、mix−m−SB−PPI−16−NH/OH−3(OH/NH混合)−IgG、mix−m−SB−PPI−32−NH/OH−3(OH/NH混合)−IgG、ならびに第一級アミンおよび混合OH/NHで修飾されたコームバーストPEIデンドリグラフト(0〜5世代)も、同様の方法で得た。目的の修飾SBPに付された他の標的指向性部分の合成も同様の方法で得た。
LC−SPDP−混合表面m−SB−PPI−64−NH/OH−2
[00149]混合表面不規則分岐mix−m−SB−PPI−64−NH/OH−2(4
×10−7mol)を含む400μlのリン酸塩緩衝液(20mMリン酸塩および0.1M NaCl、pH7.5)に、4.0×10−6molのスルホ−LC−SPDP(Pierce、IL)を含む水400μLを添加した。混合物をボルテックスし、30℃で30分間インキュベートした。LC−SPDP−mix−m−SB−PPI−64−NH/OH−2をゲル濾過クロマトグラフィーによって精製し、緩衝液A(0.1Mリン酸塩、0.1M NaClおよび5mM EDTA、pH6.8)で平衡化した。生成物をさらに濃縮し、およそ0.77nmolの濃度の465μLの溶液を得た。
チオール化mix−m−SB−PPI−64−NH/OH−2
[00150]LC−SPDP mix−m−SB−PPI−64−NH/OH−2(65
μlの緩衝液A中に50nmol)を、100μLのジチオスレイトール(DTT)(緩衝液A中に50mM))と混合し、室温で15分間インキュベートした。過剰なDTTおよび副生物を、緩衝液Aを用いたゲル濾過によって除去した。生成物を10K Centricon Concentrator中で濃縮し、390μLのチオール化mix−m
−SB−PPI−64−NH/OH−2を得て、これを活性化抗体とのコンジュゲーションに使用した。
マレイミドR(MAL−R)活性化抗体
[00151]抗体を含むPBS(310μL、5.1mgすなわち34nmol)に、20
.4μLのMAL−R−NHS(N−ヒドロキシスクシンイミド)溶液(10mM水溶液)を添加した。混合物をボルテックスし、30℃で15分間インキュベートした。生成物を、緩衝液Aを用いたゲル濾過によって精製した。マレイミド−R活性化抗体を、チオール化mix−m−SB−PPI−64−NH/OH−2とのコンジュゲーションに使用した。
mix−m−SB−PPI−64−NH/OH−2−抗体コンジュゲート
[00152]チオール化mix−m−SB−PPI−64−NH/OH−2(310μL
または35.7nmol)にMAL−R活性化抗体(4.8mLまたは34nmol)を添加した。反応混合物をおよそ800μLに濃縮し、次に、4℃で一晩および/または室温で約1時間インキュベートした。完了後、反応を100μLのエチルマレイミド(50mM溶液)で停止させ、次に、コンジュゲートを、pH6の20mMリン酸塩緩衝液中塩化ナトリウムの段階的勾配を用いるカルボキシメチルセルロース(CM)カラム(5mL)で分画した。コンジュゲートを塩化ナトリウムの勾配で溶離し、陽イオン交換クロマトグラフィー、紫外分光法およびポリアクリルアミドゲル電気泳動によって特性決定した。還元カップリングによるコンジュゲーション−抗体の還元
[00153]抗体2.1mgすなわち14nmolを含む160μLの緩衝液B(0.1M
リン酸ナトリウム、5mM EDTAおよび0.1M NaClを含有する、pH6.0)に、40μLのDTT(緩衝液B中に50mM)を添加した。この溶液を室温で30分間静置した。生成物を、緩衝液Bで平衡化したSephadex G−25カラムでのゲル濾過によって精製した。還元した抗体を220μLに濃縮し、コンジュゲーションに使用した。
MAL−R−混合表面修飾SBP
[00154]400μL(400x10−9モル)、pH7.4における混合表面修飾SB
Pに、400μLのMAL−R−NHS(10mM水溶液)を添加した。これを混合し、30℃で15分間インキュベートした。完了後、生成物を緩衝液Bで平衡化したSephadex G−25カラムで精製した。MAL−R−混合表面修飾SBPを収集し、同じ緩衝液中で一定分量にして−40℃で保管した。
混合表面修飾SBP−抗体コンジュゲート
[00155]還元された抗体(220μL中14nmol)に、撹拌しながらMAL−R−
mix−m−SB−PPI−64−NH/OH−2(154μL、16.6nmol)を添加した。12.5μLの炭酸ナトリウム(1.0M溶液)を添加することによってpHを約6.8に調整し、反応を1時間室温で継続し、100μLのシステアミン(0.4mM溶液)を添加して終了させた。コンジュゲーション混合物を、塩化ナトリウム勾配溶離を用いるCMセルロースカラムで精製した。
IgG−非対称不規則性分岐ポリマーコンジュゲート
[00156]不規則性分岐混合表面(OH/NH混合)m−ran−AB−PEI−NH
/OH−2−IgGコンジュゲートを、ポリマー−抗体コンジュゲートを調製する一般的手順の通りに調製する。
【0112】
[00157]他のコンジュゲート、例えば、PEI−IgG、m−ran−AB−PEI−
NH−1−IgG、m−ran−AB−PEI−NH−2−IgG、m−ran−AB−PEI−NH−3−IgG、m−ran−AB−PEI−NH−4−IgG、ならびにm−ran−AB−PEI−NH/OH−1(OH/NH混合)−IgG、m−ran−AB−PEI−NH/OH−2(OH/NH混合)−IgG、m−ran−AB−PEI−NH/OH−3(OH/NH混合)−IgG、規則性ポリリジンポリマー、第一級アミン鎖末端を有するアルキル修飾不規則性分岐ポリ(2−エチルオキサ
ゾリン)をすべて同様の方法で合成した。非対称不規則性分岐PEOXポリマーとの種々のタンパク質コンジュゲートの合成も同様の方法で行う。
LC−SPDP−混合表面m−ran−AB−PEI−NH/OH−2
[00158]混合表面不規則分岐m−ran−AB−PEI−NH/OH−2(4×10
−7mol)を含む400μLのリン酸塩緩衝液(20mMリン酸塩および0.1M NaCl、pH7.5)に、4.0×10−6molのスルホ−LC−SPDP(Pierce、IL)を含む水400mLを添加した。これをボルテックスし、30℃で30分間インキュベートした。LC−SPDP−m−ran−AB−PEI−NH/OH−2をゲル濾過クロマトグラフィーによって精製し、緩衝液A(0.1Mリン酸塩、0.1M NaClおよび5mM EDTA、pH6.8)で平衡化した。生成物をさらに濃縮し、およそ0.77nmol/μmolの濃度の465μlの溶液を得た。
チオール化m−ran−AB−PEI−NH/OH−2
[00159]LC−SPDP m−ran−AB−PEI−NH/OH−2(65mlの
緩衝液A中に50nmol)を、100μLのジチオスレイトール(DTT)(緩衝液A中に50mM)と混合し、室温で15分間インキュベートした。過剰なDTTおよび副生物を、緩衝液Aを用いたゲル濾過によって除去した。生成物を10K Centricon Concentrator中で濃縮し、390μLのチオール化m−ran−AB−PEI−NH/OH−2を得て、これを活性化抗体とのコンジュゲーションに使用した。
【0113】
[00160]上で記載した通りに作製したマレイミド−R活性化抗体を、チオール化m−r
an−AB−PEI−NH/OH−2とのコンジュゲーションに使用した。
m−ran−AB−PEI−NH/OH−2−抗体コンジュゲート
[00161]チオール化m−ran−AB−PEI−NH/OH−2(310μLすなわ
ち35.7nmol)をMAL−R活性化抗体(4.8mLすなわち34nmol)に添加した。反応混合物をおよそ800μLに濃縮し、4℃で一晩および/または室温で約1時間インキュベートした。完了後、反応を100μLのエチルマレイミド(50mM溶液)で反応停止させ、次に、コンジュゲートを、pH6の20mMリン酸塩緩衝液中塩化ナトリウムの段階的勾配を用いるCMセルロースカラム(5mL)で分画した。コンジュゲートを塩化ナトリウムの勾配で溶離し、陽イオン交換クロマトグラフィー、紫外分光法およびポリアクリルアミドゲル電気泳動によって特性決定した。
パクリタキセル製剤およびナノ粒子の調製
[00162]一般的手順の通りに、パクリタキセルを40mg/mLの濃度までメタノール
に溶解させた。別にC18PEOXABP60ポリマーを100mg/mLの濃度までメタノールに溶解させた。次に、2つの溶液を種々の量で混合し、混合物中の最終的なポリマー対パクリタキセルのモル比が3:1から10:1の範囲内になるようにした。続いて、混合物を量に応じて20〜96時間凍結乾燥した。
【0114】
[00163]光散乱で測定した凝集体の大きさは、凍結乾燥前は直径約70nmから90n
m、凍結乾燥後は120〜140nmの範囲内であった。
【0115】
[00164]あるいは、パクリタキセルとC18PEOXABP60ポリマーの両方を、ア
セトン、メタノールまたはエタノールなどの共通の溶媒に溶解させ、次に撹拌または超音波処理しながら水に滴加し、その後0.22μmのフィルターで滅菌濾過することができる。次に、凍結乾燥によって最終生成物を生じ、凝集体の大きさを光散乱によって測定することができる。
【0116】
[00165]疎水性に表面修飾された種々の分岐ポリマー、例えば、C、C、C12
たはC22炭化水素で修飾された不規則分岐PEOX、PEIおよびPPIポリマー;C、C、C12、C18およびC22炭化水素で修飾されたPAMAM、PEIおよび
PPIのデンドリマーおよびデンドリグラフト;ならびにC、C、C12、C18およびC22炭化水素で修飾された分岐PLL/ポリマーを使用する、他のタキサン誘起凝集体またはナノ粒子は、同様の方法で調製することができる。
18PEOXABP60ポリマー対パクリタキセルの比率が7:1であるナノ粒子
[00166]C18PEOXABP60(700mg)を9.33mLのメタノールに溶解
させ、75mg/mLの溶液を得た。パクリタキセルの15mg/mL溶液も、100mgを6.67mLのメタノールに溶解させることによって調製した。2つの溶液を20分間混合すると、1mL当たり6.25mgのパクリタキセルと43.75mgのポリマーとを含有する溶液が得られ、ポリマー対薬剤の比率が7:1である溶液となった。混合物を回転蒸発器に入れて、メタノールを蒸発除去させて乾燥させた。生じた固体を撹拌しながら33.3mLの水に再溶解させて、最終的なパクリタキセル濃度である3mg/mLとした。この溶液調製物を0.8μmのフィルターに通し、次に0.22μmのフィルターに通した。濾液を、使用した量に応じて24〜72時間にわたって凍結乾燥した。このバイアルに栓をし、即時使用可能な白色粉末を室温で保管した。この調製物をFID−007と名付けた。
ナノ粒子の測定
[00167]種々のポリマー、ポリマー単独凝集体、ならびに薬剤誘起ポリマー凝集体の大
きさを、Malvern Zetasizer Nano−ZS Zen3600粒径分析器を使用する動的光散乱法によって測定した。
活性試験
[00168]生細胞は代謝によってNADHまたはNADPHなどの「還元当量」を生成す
る。かかる還元性化合物は、中間的な電子輸送試薬に電子を渡し、それはテトラゾリウム製品、MTS(Promega)を還元して水溶性、着色性のホルマザン産物にすることができる。細胞は、死ぬとテトラゾリウム製品を還元する能力を急速に失う。したがって、着色したホルマザン産物の産生は、培養物中の生細胞の数に比例する。
【0117】
[00169]CellTiter96(登録商標)Aqueous製品(Promega)
は、培養物中の生細胞の数を決定するためのMTSアッセイである。MTSテトラゾリウムはMTTテトラゾリウムと類似しているが、MTS還元のホルマザン産物が細胞培養培地に可溶であり、可溶化させる溶液の使用を必要としないという利点がある。アッセイウェルに直接添加する単一の試薬を、培養培地100μlに対して試薬20μlという推奨比率で使用した。細胞を37℃で1〜4時間インキュベートし、次に490nmでの吸光度を測定した。
ナノカプセル化パクリタキセル/ABP60(FID−007)の毒性および効力
[00170]前述の通りに、ナノカプセル化パクリタキセルを、C18ABP60ポリマー
を使用して、7:1のポリマー対パクリタキセル比で調製した。FID−007と名付けたその調製物を、正常なヒト皮膚線維芽細胞株および種々の癌細胞株を用いた細胞障害性試験、ならびに3種のマウス異種移植モデルでの毒性(最大耐用量、すなわちMTD)および腫瘍増殖の阻害に関するin vivo試験において、TaxolおよびAbraxaneと比較した。
FID−007のIn Vitro活性
[00171]FID−007を、in vitro細胞障害性実験において、Taxolお
よびAbraxaneと共に正常なヒト線維芽細胞および種々の癌細胞株で試験した。FID−007は、乳癌、卵巣癌および肺癌細胞に由来する細胞株を含めた一連のヒト癌細胞株の増殖をin vitroで阻害する一方で、FID−007は、TaxolおよびAbraxaneに観察されるレベルと同様の、正常細胞に対するより低い毒性を示した(図15)。総じて、FID−007は、正常細胞に対して腫瘍細胞に対するよりも10倍毒性が低く、100μM超という極めて高いEC50を示した。FID−007は、ヒト肺癌細胞株A549での72時間の毒性アッセイで活性であり、IC50は2.8ng/mLであった(図16)。正常細胞に対するFID−007の細胞障害は、Taxol
およびAbraxaneのそれと同等であった。FID−007はMDA−MB−231(トリプルネガティブ乳癌細胞)に対して細胞障害性であり、IC50は4.9ng/mLであった(図17)。FID−007は、OV−90(卵巣癌細胞)に対して細胞障害性であり、IC50は5.0ng/mLであった(図18)。3種の癌細胞株すべてについて、FID−007の細胞障害は、TaxolおよびAbraxaneのそれと同等であった。
FID−007のIn Vivo活性
[00172]一連の実験を行って、マウスに静脈内投与されたFID−007のin vi
voでの忍容性、活性、および 基本的薬物動態を、TaxolおよびAbraxaneと比較して決定した。FID−007は、毎日最大150mg/kgの投薬まで忍容性が高かった。抗新生物活性を確認するために、3種の異なるマウス異種移植モデル(肺癌、卵巣癌および乳癌を含む)において、FID−007を忍容性が高い用量でマウスに毎日静脈内投与した。概して、FID−007は、マウス異種移植モデルにおいて、TaxolおよびAbraxaneなどの同様の標的を有する標準的な細胞障害剤より忍容性が高く、腫瘍の増殖を選択的に阻害した。
【0118】
[00173]マウスでのFID−007の半減期を、最適化したHPLC法を使用して決定
すると、およそ9.3時間であった。肝臓および脾臓、次いで血液が、1時間目に最大のFID−007濃度を有する器官であった。FID−007、TaxolおよびAbraxaneのPKプロファイルを図19に示す。
【0119】
[00174]健康なCD−1マウスおよびSCID(免疫不全)マウスの尾静脈を介して種
々の用量の薬剤を数週間にわたって投与した試験において、FID−007の単回投与のMTDをTaxolおよびAbraxaneのそれと比較した。対照のマウスには生理食塩水を投与した。CD−1マウスの単回投与のMTDは、Taxol、Abraxane、およびFID−007について、それぞれ20mg/kg、240mg/kg、および175mg/kgであることが見出された。大きな副作用は、生存したすべてのマウスでは観察されなかった。しかし、対照群(生理食塩水で処置)と比較して、体重増加がAbraxaneおよびFID−007の投与群すべてに観察された。120mg/kg以上のAbraxaneによって、用量依存的な体重の増加が生じた。同じことが150mg/kg以上の用量のFID−007で観察された。
【0120】
[00175]FID−007の多回投与のMTDを、0日目、3日目、6日目に、健康なC
D−1およびSCIDマウス(10週、雌)に尾静脈を介してFID−007(100および150mg/kg)を投与することによって、同様に決定した。動物を1日当たり2回モニタリングし、3日毎に計量した。FID−007の場合、CD−1マウスでの多回投与のMTDは100mg/kgであり、SCIDマウスでは30mg/kgであることが判明し、SCIDマウスでは注射後直ちに幾つかの副作用があった。FID−007多回投与群は、対照群と比較して過度の体重増加がなかった。
【0121】
[00176]腫瘍増殖を阻害するFID−007のin vivoでの効力を、ヒトの肺癌
、乳癌および卵巣癌の腫瘍を異種移植したマウスモデルで、TaxolおよびAbraxaneのそれと比較した。60匹の雌および雄のSCIDマウス(6〜8週、20〜26g、Charles River、乳癌および卵巣癌用に40匹の雌マウス、肺癌用に20匹の雄マウス)に、肺A549、乳房MDA−MB−231または卵巣OV90の各種細胞を含む無血清培地の懸濁液0.1mLを、胴体の各側(左および右)に注射した。細胞は、加湿したインキュベーター(37℃、5%CO、95%空気)内で予め培養した。マウスの腫瘍1つ当たり3×10個(A549)、10個(MDA−MB−231)、および5×10個(OV−90)の量の細胞を使用した。腫瘍を7〜9日間増殖させ、その後処置を開始し、すべての腫瘍量測定値をデジタル式カリパス(VWR Inc
.)を使用して得た。腫瘍量を、式(W×L)/2(式中、Wは最大腫瘍幅およびLは最大腫瘍長さ)によって算出した。腫瘍および体重の測定値は、最初の処置前の同日に、その後3日毎に得た。0日目を処置の最初の日として示した。0日目に腫瘍を生じた動物を5つの群に無作為に分けると[1群当たりマウス約4匹(腫瘍8個)]、各処置群は広範な腫瘍の大きさを示した。
【0122】
[00177]Abraxane(80mg/kg)、FID−007(20mg/kg)、
Taxol(20mg/kg)および、ナノ担体001−Bと名付けた、C18ABP60ポリマーから出発した物質(20mg/kg)を、注射毎に新しく調製した。生理食塩水を、ビヒクル対照として使用した。薬剤または生理食塩水は、尾静脈注射を介して3日毎に投与した。薬剤の用量は、予め決定された単回および多回投与MTDに基づいて、すべての処置群に対して等毒性であるように選択した。肺癌、乳癌、および卵巣癌群はそれぞれ、合計4回の注射を受けた。対照、AbraxaneおよびFID−007の注入量は、全試験を通して注射当たり0.1mLであった。Taxol製剤は粘性なので、20mg/kg用量のために注射当たり0.2mLを投与した。平均体重および腫瘍量測定値を、同じ群中のすべての動物の平均値を求めることによって算出した。肺癌および卵巣癌の場合は最後の処置から21日目、乳癌の場合は10日目に、イソフルランを用いてマウスを安楽死させた。血液および単離した血清、ならびに腫瘍組織および肝臓を収集して−80℃で保管した。
【0123】
[00178]肺癌(A549)異種移植群の場合、総じて、何れの処置群でも死亡は発生し
なかった。恐らくTaxolの毒性が原因で、処置後最初の30分間に数匹のマウスで荒い息遣いおよび不活動が観察された。平均体重および腫瘍量測定値を、同じ群中のすべての動物の平均値を求めることによって算出した。生理食塩水対照、Taxol、FID−007およびナノビヒクル対照の全平均体重増加は、それぞれ6.05%、5.87%、6.38%および12.3%であった。しかし、Abraxane群のすべてのマウスは悪性の神経毒性を発現し、20%を超える体重が減少した。これらのマウスを13日目に屠殺した。腫瘍量は、生理食塩水対照群の場合1827mm、ナノ担体−001Bビヒクル対照群の場合1311mm、Taxol群の場合305.8mm増加した。しかし、FID−007群は、腫瘍量が39.7mm減少した(図20)。図21および22は、処置群の腫瘍の代表的画像を示す。
【0124】
[00179]乳癌(MDA−MB−231)異種移植群の場合、何れの処置群でも死亡は発
生しなかった。恐らくTaxolの毒性が原因で、処置後最初の30分間に荒い息遣いおよび不活動が観察された。Abraxane群において、すべてのマウスが3回の処置後に後肢の弱りおよび20%の体重減少という副作用を示したので、その群では4回目の処置を中止することを決定した。平均体重および腫瘍量測定値を、同じ群中のすべての動物の平均値を求めることによって算出した。生理食塩水、Taxol、FID−007およびナノ担体−001Bの場合の全平均体重増加は、それぞれ3.76%、0.46%、1.8%、および4.2%であった。Abraxane群の場合、平均体重の低下は7.66%であった。腫瘍量は、生理食塩水およびナノ担体−001B群において、それぞれ328.6mmおよび458.8mm増加した。FID−007、TaxolおよびAbraxane群では、腫瘍量はそれぞれ108.7mm、75.5mmおよび70.2mm減少した。腫瘍量の観察を図23に示す。図24および25は、処置群の腫瘍の代表的画像を示す。
【0125】
[00180]卵巣癌(OV−90)異種群の場合、Taxol処置群は、処置後最初の30
分間に2匹のマウスで観察された、荒い息遣いおよび不活動を有するある毒性を示した。平均の体重増加は生理食塩水対照、Taxol、Abraxane、FID−007およびナノ担体−001B対照群で、それぞれ、3.23%、17.1%、13.5%、15
.4%および2.24%であった。腫瘍量は、生理食塩水対照、ナノ担体−001B対照およびTaxol群で、それぞれ、652.7mm、271.9mmおよび9.1mm増加した一方で、FID−007群では93.1mmおよびAbraxane群(80mg/kg)では72.4mm腫瘍量が減少した。図26は、各処置群について観察される腫瘍量をまとめて示す。図27および28は、解剖前後の腫瘍の代表的な画像である。
【0126】
[00181]FID−007は、正常細胞に対して低レベルの毒性を維持しながら、肺、乳
房および卵巣の細胞株に対して、確立された抗新生物薬であるTaxolおよびAbraxaneと同様のin vitro細胞障害性を明示した。腫瘍増殖を阻害し、腫瘍塊を縮小する、FID−007のin vivo効力は、ヒトの肺癌、乳癌、および卵巣癌のマウス異種移植モデルにおいて、2つの承認薬と同程度に良好またはそれらより有意に良好であった。
【0127】
[00182]本明細書に引用されるすべての参考文献は、参照により全体が本明細書に組み
込まれる。
【0128】
[00183]本開示の趣旨および範囲から逸脱することなく、本明細書の教示に種々の変更
および改変を為すことができることが認識されよう。
図1
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