特許第6661721号(P6661721)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6661721
(24)【登録日】2020年2月14日
(45)【発行日】2020年3月11日
(54)【発明の名称】複合粒子及びその用途
(51)【国際特許分類】
   C08F 291/00 20060101AFI20200227BHJP
   C09D 7/65 20180101ALI20200227BHJP
   A61K 8/81 20060101ALI20200227BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20200227BHJP
   A61Q 1/00 20060101ALI20200227BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20200227BHJP
   G02B 5/02 20060101ALI20200227BHJP
   C09D 201/00 20060101ALI20200227BHJP
【FI】
   C08F291/00
   C09D7/65
   A61K8/81
   A61K8/73
   A61Q1/00
   A61Q19/00
   G02B5/02 B
   C09D201/00
【請求項の数】11
【全頁数】48
(21)【出願番号】特願2018-173415(P2018-173415)
(22)【出願日】2018年9月18日
(62)【分割の表示】特願2016-514830(P2016-514830)の分割
【原出願日】2015年3月26日
(65)【公開番号】特開2019-35079(P2019-35079A)
(43)【公開日】2019年3月7日
【審査請求日】2018年10月15日
(31)【優先権主張番号】特願2014-91668(P2014-91668)
(32)【優先日】2014年4月25日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002440
【氏名又は名称】積水化成品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】特許業務法人あーく特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼山 真由美
(72)【発明者】
【氏名】竹中 俊貴
(72)【発明者】
【氏名】日下 明芳
(72)【発明者】
【氏名】後藤 孝至
【審査官】 西山 義之
(56)【参考文献】
【文献】 特表2007−535584(JP,A)
【文献】 特開平05−214053(JP,A)
【文献】 韓国公開特許第10−2011−0066332(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F291/00−291/18
C08F 2/00− 2/60
C08L101/00−101/14
C08J 3/00− 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子径20〜500nmの重合体小粒子と、
この重合体小粒子よりも大きく、重合性ビニル系モノマーを含むモノマー混合物の重合体からなる重合体大粒子と、
水溶性セルロースとを含み、
前記重合体小粒子が、前記重合体大粒子の表面に付着しており、
前記水溶性セルロースが、前記重合体小粒子の表面に吸着している複合粒子であって、
体積平均粒子径が1〜100μmであることを特徴とする複合粒子。
【請求項2】
請求項1に記載の複合粒子であって、
前記重合体小粒子への前記水溶性セルロースの吸着量が、前記重合体小粒子1gあたり0.05g〜0.5gであることを特徴とする複合粒子。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の複合粒子であって、
前記重合体小粒子が、架橋重合体からなることを特徴とする複合粒子。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1つに記載の複合粒子であって、
前記モノマー混合物が、さらに、下記式(1);
【化3】
(式(1)中、nは1〜5であり、aが1のとき、bは2であり、aが2のとき、bは1である。)又は下記式(2);
【化4】
(式(2)中、Rは水素、メチル基、又はクロロメチル基であり、mは1〜20であり、aが1のとき、bは2であり、aが2のとき、bは1である。)で表される少なくとも1つの重合性リン酸系モノマーを含むことを特徴とする複合粒子。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1つに記載の複合粒子であって、
前記重合体大粒子の表面の少なくとも一部が、前記重合体小粒子からなる層で被覆されていることを特徴とする複合粒子。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1つに記載の複合粒子であって、
粒子流動性を示す、なだれ前後のアバランシェエネルギー変化AEの数値が10〜45kJ/kgの範囲内であることを特徴とする複合粒子。
〔なだれ前後のアバランシェエネルギー変化AEの測定方法〕
測定対象の粒子(複合粒子)を100g計量して測定試料とする。そして、この測定試料中の粒子について、粉体流動性測定装置(Mercury Scientific社製の「パウダーアナライザー REVOLUTION」)を用いて、回転数0.3rpm、なだれ150回という条件で、なだれ前後のアバランシェエネルギー変化AE(kJ/kg)を測定する。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1つに記載の複合粒子を含むことを特徴とする外用剤。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか1つに記載の複合粒子を含むことを特徴とするコーティング剤。
【請求項9】
請求項8に記載のコーティング剤を基材に塗工してなることを特徴とする光学フィルム。
【請求項10】
請求項1〜6のいずれか1つに記載の複合粒子と、基材樹脂とを含むことを特徴とする樹脂組成物。
【請求項11】
請求項10に記載の樹脂組成物を成形してなることを特徴とする成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重合体大粒子と、この重合体大粒子の表面に付着した重合体小粒子とを含む複合粒子、この複合粒子の製造方法、及び、その用途(外用剤、コーティング剤、光学フィルム、樹脂組成物、および成形体)に関する。
【背景技術】
【0002】
粒子径が1〜100μmの重合体粒子は、例えば、塗料等のコーティング剤用の添加剤(艶消し剤等)、インク用の添加剤(艶消し剤等)、接着剤の主成分または添加剤、人工大理石用の添加剤(低収縮化剤等)、紙処理剤、化粧品等の外用剤の充填材(滑り性向上のための充填剤)、クロマトグラフィーに用いるカラム充填材、静電荷像現像に使用されるトナー用の添加剤、フィルム用のアンチブロッキング剤、光拡散体(光拡散フィルム等)用の光拡散剤等の用途で使用されている。
【0003】
上記重合体粒子は、通常、重合性モノマーの懸濁重合により製造されている。懸濁重合法は、水性媒体中、懸濁安定剤(分散剤)の存在下で、重合性モノマーの液滴を、攪拌機を用いて機械的せん断力により分散させ、懸濁した前記重合性モノマーの液滴内で重合を行う方法である。このような懸濁重合法では、分散した液滴の形態のままで重合が進行するため、上記液滴の分布や大きさは、上記撹拌機の特性、構造、形状、及び回転数等に依存する。しかし、液滴の大きさを微細にすることができても、その液滴の分散安定性を維持できなければ、重合中に液滴同士の合着や凝集が引き起こされるおそれがある。そのため、懸濁重合法では、重合性モノマーの液滴を微細に分散させた後に、分散した重合性モノマーの液滴をいかに安定化させて液滴の合着を防止するかが重要となる。
【0004】
重合中の液滴の合着や凝集を確実に防ぐためには、上記懸濁安定剤の選定が重要であり、懸濁重合法において、様々な懸濁安定剤を使用することが報告されている。例えば、前記懸濁安定剤として、ポリビニルアルコール、ゼラチン、澱粉等の水溶性高分子や、難溶性の微粉末状の無機化合物が一般に使用されている。前記無機化合物としては、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム、第三リン酸カルシウム、ピロリン酸マグネシウム等の難水溶性塩類;珪酸、粘土、シリカ、金属酸化物の粉末等が知られている。
【0005】
しかしながら、上記懸濁安定剤として、上記水溶性高分子を用いた場合、懸濁重合によって得られた粒子は、粒子径分布が広いという欠点があった。加えて、併発する乳化重合により微粒子(所望の粒径範囲よりも微細な粒径を持つ粒子)が多く発生すること、及び重合体粒子表面に付着した水溶性高分子の除去が困難であるという欠点もあった。
【0006】
一方、懸濁安定剤として、上記無機化合物を用いた場合、比較的粒子径分布を狭くできる。例えば、特許文献1には、水性媒体中での重合性モノマーの懸濁重合において、懸濁安定剤(分散剤)としてシリカを使用して得られる重合体粒子(樹脂粒子)の粒子径の変動係数(CV値)が、10〜50%であることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2011/062173号
【特許文献2】特開2014−185230号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、懸濁安定剤として、上記無機化合物を用いて微小な重合体粒子を得るためには、上記無機化合物の量を比較的多くする必要があり、併発する乳化重合により微粒子が多く発生するという欠点があった。加えて、重合体粒子の表面に付着した無機化合物は、粒子表面から脱落しやすく、当該重合体粒子を含む製品(例えば、外用剤、コーティング剤、光拡散体)の特性を阻害する要因となるおそれがあった。そのため、重合後に、比較的多量の酸による洗浄、引き続き多量の水による洗浄を行う必要があり、製造工程が煩雑となっていた。
【0009】
また、前記重合体粒子の粒子流動性を向上させる方法として、重合体粒子にシリカ粒子などの無機物を付着させて重合体粒子の流動性を向上させる方法(例えば、特許文献2参照)などが知られている。
【0010】
しかしながら、上記方法によって得られる複合粒子の場合、複合粒子を含む製品(外用剤、コーティング剤、光学フィルム、樹脂組成物、成形体等)中に、必然的に重合体以外の成分として無機物が含有されることになり、製品の特性を阻害する要因となるおそれがあるという問題や、重合体粒子表面に付着させた無機物が重合体粒子表面から脱離することによって製品の表面にブツ(肉眼で見える粒状の突起)が発生するなど問題がある。
【0011】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、モノマーの分散安定性に優れ、かつ、洗浄工程の簡略化を図ることが可能な懸濁重合による粒子の製造方法、この製造方法により得られうる複合粒子、及び、この複合粒子の用途を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の複合粒子の製造方法は、水溶性セルロース類が表面に吸着した体積平均粒子径20〜500nmの重合体小粒子の存在下で、重合性ビニル系モノマーを含むモノマー混合物を水系懸濁重合させて、前記重合体小粒子と前記重合体小粒子よりも大きい重合体大粒子とを含む複合粒子を得る重合工程を含むことを特徴とする。なお、本出願書類において、「重合性ビニル系モノマー」とは、リン酸エステル結合を有さず、重合可能な炭素−炭素二重結合(広義のビニル結合)を有する化合物をいう。
【0013】
本発明の製造方法におけるモノマー混合物の水系懸濁重合において、重合体小粒子は、その表面に水溶性セルロース類が吸着した状態で、懸濁安定剤として機能する。また、上記水系懸濁重合により得られる複合粒子において、上記重合体小粒子は、上記水溶性セルロース類の作用により、上記モノマー混合物の重合体からなる重合体大粒子の表面に付着して、当該複合粒子の一部を構成するため、上記水系懸濁重合後、洗浄による除去を必要としない。つまり、本発明の製造方法によれば、従来の懸濁重合法において懸濁安定剤として使用され、重合後に洗浄による粒子表面からの除去を要する上述の水溶性高分子(水溶性セルロース類を除く)や無機化合物を実質的に用いなくとも、水溶性セルロース類が表面に吸着した重合体小粒子の存在により、水性媒体中に、モノマー混合物の液滴を安定に分散させることができるから、懸濁重合により得られる粒子の洗浄の簡略化を図ることができる。
【0014】
さらに、本発明の製造方法によって得られる複合粒子は、重合体小粒子が重合体大粒子の表面に付着していることで、重合体小粒子由来の凹凸が複合粒子表面に形成されるため、真球状の重合体粒子と比較して、粒子同士の接触面積が小さくなり、粒子流動性が向上する。また、本発明の製造方法では、水系懸濁重合時に水溶性セルロース類が表面に吸着した重合体小粒子の存在下で、重合性モノマーを含むモノマー混合物を水系懸濁重合させることから、重合体小粒子の表面に吸着した水溶性セルロース類の作用により、重合体大粒子の表面に重合体小粒子を強固に付着させることができる。このため、重合体大粒子の表面から重合体小粒子が脱落し難い複合粒子を得ることができる。
【0015】
本発明の複合粒子は、粒子径20〜500nmの重合体小粒子と、この重合体小粒子よりも大きく、重合性ビニル系モノマーを含むモノマー混合物の重合体からなる重合体大粒子と、水溶性セルロース類とを含み、前記重合体小粒子が、前記重合体大粒子の表面に付着していることを特徴とする。なお、本出願書類において、単に、「粒子径」という場合には、後述する実施例の項に記載の方法により測定される体積平均粒子径、又は、透過型電子顕微鏡(TEM)画像等の画像から求められる粒子径を意味するものとする。
【0016】
この複合粒子は、水溶性セルロース類の含有により、重合体大粒子の表面に重合体小粒子が付着したものであり、従来にない新規の構造を有する。さらに、この複合粒子は、重合体小粒子が重合体大粒子の表面に付着していることで、重合体小粒子由来の凹凸が複合粒子表面に形成されるため、真球状の重合体粒子と比較して粒子流動性が向上する。
【0017】
また、本発明の外用剤は、本発明の複合粒子を含むことを特徴とする。
【0018】
本発明の外用剤は、本発明の複合粒子を含むことにより、良好な滑り性を有する。
【0019】
また、本発明のコーティング剤は、本発明の複合粒子を含むことを特徴とする。
【0020】
本発明のコーティング剤は、本発明の複合粒子を含むことにより、当該コーティング剤から形成された塗膜に光拡散性を付与することができる。
【0021】
また、本発明の光学フィルムは、コーティング剤を基材に塗工してなることを特徴とする。
【0022】
本発明の光学フィルムは、本発明のコーティング剤を含むことから、光拡散性を有する。
【0023】
また、本発明の樹脂組成物は、本発明の複合粒子と、基材樹脂とを含むことを特徴とする。
【0024】
本発明の樹脂組成物では、本発明の複合粒子の含有により、光拡散性を有する。
【0025】
また、本発明の成形体は、本発明の樹脂組成物を成形してなることを特徴とする。
【0026】
本発明の成形体は、本発明の複合粒子を含む樹脂組成物を成形してなるものであるから、本発明の成形体では、本発明の複合粒子の含有により、光拡散性を有する。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、モノマーの分散安定性に優れ、かつ、洗浄工程の簡略化を図ることが可能な懸濁重合による粒子の製造方法、この製造方法により得られうる複合粒子、及び、この複合粒子の用途を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1図1は、本発明の実施例12で得られる複合粒子の断面の一部を拡大して示す透過型電子顕微鏡(TEM)画像である。
図2図2は、本発明の実施例9で得られる複合粒子の断面の一部を拡大して示す透過型電子顕微鏡(TEM)画像である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明をより詳細に説明する。
【0030】
〔複合粒子の製造方法〕
本発明の製造方法は、水溶性セルロース類が表面に吸着した体積平均粒子径20〜500nmの重合体小粒子の存在下で、重合性ビニル系モノマーを含むモノマー混合物を水系懸濁重合させて、前記重合体小粒子と前記重合体小粒子よりも大きい重合体大粒子とを含む複合粒子を得る重合工程を含む。
【0031】
(重合性ビニル系モノマー)
本発明の製造方法において使用される重合性ビニル系モノマーは、リン酸エステル結合を有さず、重合可能な炭素−炭素二重結合(広義のビニル結合)を有する化合物である。
【0032】
前記重合性ビニル系モノマーとしては、特に限定されず、1個のアルキレン基(広義のビニル基)を有する単官能モノマー、2個以上のアルキレン基(広義のビニル基)を有する多官能モノマー等が挙げられる。
【0033】
前記単官能モノマーとしては、例えば、α−メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル;スチレン;o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレン、p−クロロスチレン、3,4−ジクロロスチレン等のスチレンの誘導体;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル等のカルボン酸ビニル;アクリロニトリル、アクリルアミド等のようなアクリル酸エステル以外のアクリル酸誘導体;メタクリロニトリル、メタクリルアミド等のようなメタクリル酸エステル以外のメタクリル酸誘導体等が挙げられる。
【0034】
前記α−メチレン脂肪族モノカルボン酸エステルとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸2−クロロエチル、アクリル酸フェニル、アクリル酸2−(ジメチルアミノ)エチル、アクリル酸2−(ジエチルアミノ)エチル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル等のアクリル酸エステル;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸2−(ジメチルアミノ)エチル、メタクリル酸2−(ジエチルアミノ)エチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル等のメタクリル酸エステル;α−クロロアクリル酸メチル等のα−ハロアクリル酸エステル等が挙げられる。
【0035】
場合によっては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸等のようなα,β−不飽和カルボン酸を単官能モノマーとして使用することもできる。さらに、これらを2種以上組み合わせて用いてもよい。また、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル等のビニルエーテル類;ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、メチルイソプロペニルケトン等のビニルケトン類;N−ビニルピロール、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルインドール、N−ビニルピロリドン等のN−ビニル化合物;ビニルナフタリン塩等を、本発明の効果を妨げない範囲で1種または2種以上を組み合わせて単官能モノマーとして使用することもできる。
【0036】
なお、本発明において、上記した単官能モノマーは、1種または2種以上を組み合わせて使用してよい。また、上記した単官能モノマーの中でも、スチレンやメタクリル酸メチル等は、安価であることから、本発明で使用する単官能モノマーとしてより好ましい。
【0037】
前記多官能モノマーとしては、ジビニルベンゼン;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート(繰り返し単位数が2〜10)、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート(繰り返し単位数が2〜10)、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、アルコキシ化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジオキサングリコールジ(メタ)アクリレート等の2官能アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート;ブチレンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、アルコキシ化ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ドデカンジオールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジオールジ(メタ)アクリレート等の2官能アルキレンジオールジ(メタ)アクリレート;エトキシ化(繰り返し単位数が2〜10)ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート等の2官能エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリアクリロイルオキシエチルフォスフェート等の3官能トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート類;ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート等の4官能テトラ(メタ)アクリレート;ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の6官能ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート類;ポリ(ペンタエリスリトール)アクリレート等の8官能ペンタエリスリトール(メタ)アクリレート類;エトキシ化イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレートのような3官能の窒素原子含有環状(メタ)アクリレート類等が挙げられる。なお、本出願書類において、「(メタ)アクリレート」は、メタクリレート又はアクリレートを意味する。
【0038】
本発明の製造方法では、前記重合性ビニル系モノマーとして、単官能モノマーと、多官能モノマーとを併用することが好ましい。これにより、重合体大粒子中に良好な架橋構造を形成して、複合粒子に良好な耐溶剤性を付与することができる。多官能モノマーの使用量は、重合性ビニル系モノマーの総使用量に対して、0.5〜50重量%の範囲内であることが好ましく、1〜40重量%の範囲内であることがより好ましい。これにより、重合体大粒子中にさらに良好な架橋構造を形成して、複合粒子にさらに優れた耐溶剤性を付与することができる。
【0039】
本発明の製造方法では、上記重合性ビニル系モノマーを含むモノマー混合物に、さらに、下記式(1)又は下記式(2)で表される少なくとも1つの重合性リン酸系モノマーを含ませることが好ましい。前記モノマー混合物に、さらに、前記重合性リン酸系モノマーを含ませることにより、前記モノマー混合物の水系懸濁重合において、水性媒体中におけるモノマー混合物の液滴の安定性を向上させることができる。
【0040】
【化1】
【0041】
(式(1)中、nは1〜5であり、aが1のとき、bは2であり、aが2のとき、bは1である。)
【0042】
【化2】
【0043】
(式(2)中、Rは水素、メチル基、又はクロロメチル基であり、mは1〜20であり、aが1のとき、bは2であり、aが2のとき、bは1である。)
【0044】
上記式(1)で示される重合性リン酸系モノマーの具体例としては、日本化薬株式会社製の「KAYAMER(登録商標)PM−21」(上記式(1)においてn=1、a=1、b=2である化合物と、上記式(1)においてn=1、a=2、b=1である化合物とのモル比1対1の混合物)等が挙げられる。
【0045】
また、上記式(2)で示される重合性リン酸系モノマーの具体例としては、株式会社ADEKA製の「アデカリアソープ(登録商標)PP−70」(上記式(2)において、Rがメチル基で、mが10〜12である化合物);日本化薬株式会社製の「KAYAMER(登録商標)PM−1」(上記式(2)において、Rが水素であり、m=1、a=1、b=2である化合物)及び「KAYAMER(登録商標)PM−2」(上記式(2)において、Rが水素であり、m=1、a=2、b=1である化合物);共栄社化学株式会社製の「ライトエステル P−1M」(上記式(2)において、Rが水素であり、m=1、a=1、b=2である化合物)及び「ライトエステル P−2M」(上記式(2)において、Rが水素であり、m=1、a=2、b=1である化合物);ユニケミカル株式会社製の「ホスマー(登録商標)M」(上記式(2)において、Rが水素であり、m=1、a=1、b=2である化合物)、「ホスマー(登録商標)PE」(上記式(2)において、Rが水素で、m=4〜5、a=1、b=2である化合物)、「ホスマー(登録商標)CL」(上記式(2)において、Rがクロロメチル基で、m=1、a=1、b=2である化合物)、及び「ホスマー(登録商標)PP」(上記式(2)において、Rがメチル基で、m=5〜6、a=1、b=2である化合物)等が挙げられる。
【0046】
本発明において、前記重合性ビニル系モノマーを含むモノマー混合物に、さらに、前記重合性リン酸系モノマーを含有させる場合、前記重合性リン酸系モノマーの使用量は、前記重合性ビニル系モノマーの使用量100重量部に対し0.01〜1重量部の範囲内であることが好ましく、0.01〜0.8重量部の範囲内であることがより好ましい。前記重合性リン酸系モノマーの使用量が、前記重合性ビニル系モノマーの使用量100重量部に対して、1重量部を超えると、重合時に乳化粒子(乳化重合による副生微粒子)等のような、粒子径の小さすぎる複合粒子ができ易くなり、複合粒子の粒子径の変動係数が大きくなるおそれがある。
【0047】
(水性媒体)
本発明の製造方法の前記重合工程において、前記重合性ビニル系モノマーを含むモノマー混合物を水系懸濁重合させるための水性媒体としては、水、又は、水と水溶性媒体(例えば、メタノール、エタノール等のアルコール)との混合媒体が挙げられる。水性媒体の使用量は、複合粒子の安定化を図るために、通常、前記重合性ビニル系モノマーの使用量100重量部に対して、100〜1000重量部であることが好ましい。
【0048】
(重合開始剤)
本発明の製造方法の前記重合工程において、前記重合性ビニル系モノマーを含むモノマー混合物の水系懸濁重合は、重合開始剤の存在下で行うことが好ましい。
【0049】
前記重合開始剤としては、通常、水系懸濁重合に用いられる油溶性の過酸化物系重合開始剤又はアゾ系重合開始剤を好適に使用することができる。
【0050】
前記過酸化物系重合開始剤としては、例えば、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、過酸化オクタノイル、オルソクロロ過酸化ベンゾイル、オルソメトキシ過酸化ベンゾイル、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、キュメンハイドロパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド等が挙げられる。
【0051】
前記アゾ系重合開始剤としては、例えば、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2'−アゾビス(2,3−ジメチルブチロニトリル)、2,2'−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2'−アゾビス(2,3,3−トリメチルブチロニトリル)、2,2'−アゾビス(2−イソプロピルブチロニトリル)、1,1'−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2'−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、(2−カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル、4,4'−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、ジメチル−2,2'−アゾビスイソブチレート等が挙げられる。
【0052】
上記した重合開始剤のなかでも、分解速度等の観点から、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル等が本発明の製造方法で使用され得る重合開始剤として好ましい。また、上記した重合開始剤は、1種を単独で使用しても、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0053】
前記重合開始剤の使用量は、前記重合性ビニル系モノマーの使用量100重量部に対して、0.01〜10重量部であることが好ましく、0.1〜5.0重量部であることがより好ましい。前記重合開始剤の使用量が、前記重合性ビニル系モノマーの使用量100重量部に対して、0.01重量部未満であると、重合開始の機能を十分に果たし難く、また、10重量部を超えると、使用量に見合った効果が得られず、コスト的に不経済的であるため好ましくない。
【0054】
(水溶性セルロース類が表面に吸着した重合体小粒子)
本発明の製造方法の前記重合工程において、前記重合性ビニル系モノマーを含むモノマー混合物の水系懸濁重合は、水溶性セルロース類が吸着した重合体小粒子の存在下で行われる。前記重合工程において、前記水溶性セルロース類が吸着した重合体小粒子は、懸濁安定剤として、機能する。
【0055】
前記重合体小粒子としては、体積平均粒子径が20〜500nmのもの、好ましくは、体積平均粒子径が20〜120nmのものを使用する。前記重合体小粒子の体積平均粒子径が20nm未満であると、前記重合工程において粒子径の揃った複合粒子を安定的に得ることが難しくなる。また、体積平均粒子径が500nmより大きいと、前記重合工程において安定に懸濁重合を行うために必要な重合体小粒子の量が多くなるため、不経済であり、また、安定に前記重合性ビニル系モノマーを含む混合物を分散させることが困難となる。
【0056】
前記重合体小粒子を構成する重合体は、特に限定されないが、例えば、上記重合性ビニル系モノマーの重合体を挙げることができる。
【0057】
前記重合性ビニル系モノマーは、親水性単官能モノマーを含むことが好ましい。すなわち、前記重合体小粒子は、親水性単官能モノマーを含む重合性ビニル系モノマーの重合体からなることが好ましい。これにより、重合体小粒子が親水性となり、重合体小粒子への水溶性セルロースの吸着量が増加するので、水系懸濁重合時の分散安定性を向上させることができる。
【0058】
前記親水性単官能モノマーは、1つのエチレン性不飽和基を有する単官能モノマーであって、カルボキシル基(又はその塩)、スルホン酸基(又はその塩)、リン酸基(又はその塩)、水酸基(ヒドロキシ基)、エーテル基、アミノ基、アミド基等の親水性基を有する単官能モノマーである。前記親水性単官能モノマーは、エーテル基と水酸基とを有する単官能モノマー、及び/又は、エステル基と水酸基とを有する単官能モノマーであることが好ましい。前記エステル基と水酸基とを有する単官能モノマーとしては、2つ以上のエステル基と水酸基とを有する単官能モノマーが好ましい。これにより、重合体小粒子の親水性をさらに高め、重合体小粒子への水溶性セルロースの吸着量をさらに増加させることができるので、水系懸濁重合時の分散安定性をさらに向上させることができる。前記エーテル基としては、エチレングリコールに由来する基(オキシエチレン基)、プロピレングリコールに由来する基(オキシプロピレン基)が挙げられる。前記エステル基としては、ラクトンに由来する基が挙げられる。
【0059】
前記親水性単官能モノマーは、下記一般式
CH2=CR1−COO[(C24O)m−(C36O)n]−H…(3)
(上記式中、R1はH又はCH3を表し、mは0〜50であり、nは0〜50であり、但し、m及びnは同時に0にならない)で表される親水性単官能モノマー、及び/又は下記一般式
CH2=CR2−COOCH2CH2O[CO(CR325O]p−H…(4)
(上記式中、R2及びR3はそれぞれ独立してH又はCH3を表し、pは1〜50である)で表される親水性単官能モノマーであることが好ましい。
【0060】
なお、一般式(3)における[(C24O)m−(C36O)n]の部分は、この部分の任意の位置に(C24O)の構造単位がm個存在し、かつ、この部分の任意の位置に(C36O)の構造単位がn個存在することを意味するものであり、これら構造単位の結合順序は限定されるものではない。すなわち、(C24O)及び(C36O)の構造単位は、ブロック状に結合してもよく、ランダム状に結合していてもよく、交互に結合していてもよく、それらの組み合わせであってもよい。
【0061】
一般式(3)で表される化合物において、m及びnの少なくとも一方が50より大きい場合、重合安定性が低下して合着粒子が発生することがあり、好ましくない。m及びnはそれぞれ1〜30であることが好ましい。一般式(3)で表される化合物は、エーテル基と水酸基とを有する単官能モノマーであること、すなわちm+n>1であることが好ましい。これにより、重合体小粒子の親水性をさらに向上させることができる。
【0062】
一般式(4)で表される化合物において、pが50より大きい場合、重合安定性が低下して合着粒子が発生することがあり、好ましくない。pは1〜30であることが好ましい。
【0063】
前記一般式(3)又は一般式(4)で表される親水性単官能モノマーとして、市販品を利用できる。前記一般式(3)で表される親水性単官能モノマーの市販品として、例えば、日油株式会社製の「ブレンマー(登録商標)」シリーズが挙げられ、前記一般式(4)で表される親水性単官能モノマーの市販品として、例えば、株式会社ダイセル製の「プラクセル(登録商標)F」シリーズが挙げられる。
【0064】
前記「ブレンマー(登録商標)」シリーズの中で、「ブレンマー(登録商標)50PEP−300」(前記一般式(3)において、R1がCH3、mが約3.5、nが約2.5のもの)、「ブレンマー(登録商標)70PEP−350B」(前記一般式(3)において、R1がCH3、mが約5、nが約2のもの)、「ブレンマー(登録商標)PP−1000」(前記一般式(3)において、R1がCH3、mが0、nが約4〜6のもの)、「ブレンマー(登録商標)PP−500」(前記一般式(3)において、R1がCH3、mが0、nが約9のもの)、「ブレンマー(登録商標)PP−800」(前記一般式(3)において、R1がCH3、mが0、nが約13のもの)、「ブレンマー(登録商標)PE−90」(前記一般式(3)において、R1がCH3、mが約2、nが0のもの)、「ブレンマー(登録商標)PE−200」(前記一般式(3)において、R1がCH3、mが約4.5、nが0のもの)、「ブレンマー(登録商標)PE−350」(前記一般式(3)において、R1がCH3、mが約8、nが0のもの)等が本発明に好適である。
【0065】
前記「プラクセル(登録商標)F」シリーズの中で、「プラクセル(登録商標)FM1」及び「プラクセル(登録商標)FM1D」(前記一般式(4)において、R2がCH3、R3がH、pが1のもの)、「プラクセル(登録商標)FM2D」(前記一般式(4)において、R2がCH3、R3がH、pが2のもの)、「プラクセル(登録商標)FM3」(前記一般式(4)において、R2がCH3、R3がH、pが3のもの)、「プラクセル(登録商標)FM4」(前記一般式(4)において、R2がCH3、R3がH、pが4のもの)、「プラクセル(登録商標)FM5」(前記一般式(4)において、R2がCH3、R3がH、pが5のもの)等が本発明に好適である。
【0066】
前記親水性単官能モノマーとしては、他にも、他の水酸基を有する単官能モノマー、カルボキシル基(又はその塩)を有する単官能モノマー、スルホン酸基(又はその塩)を有する単官能モノマー、リン酸基(又はその塩)を有する単官能モノマー、他のエーテル基を有する単官能モノマー、アミノ基を有する単官能モノマー、アミド基を有する単官能モノマー等が挙げられる。
【0067】
前記他の水酸基を有する単官能モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、2−ヒドロキシブチルメタクリレート、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、マレイン酸2−ヒドロキシエチルメチル、マレイン酸ジ(2−ヒドロキシプロピル)、α−ヒドロキシスチレン、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸グルコシルエチル等が挙げられる。なお、本出願書類において、「(メタ)アクリル」は、メタクリル又はアクリルを意味する。
【0068】
前記カルボキシル基(又はその塩)を有する単官能モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノ2−エチルヘキシル、及びこれらの塩(アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、アミン塩等)、カルボキシベタイン含有モノマー等が挙げられる。前記カルボキシベタイン含有モノマーとしては、例えば、N−メタクリロイルオキシエチル−N,N−ジメチルアンモニウム−α−N−メチルカルボキシベタイン、N−メタクリロイルオキシメチル−N,N−ジメチルアンモニウム−α−N−メチルカルボキシベタイン、N−アクリロイルオキシエチル−N,N−ジメチルアンモニウム−α−N−メチルカルボキシベタイン、N−メタクリロイルオキシメチル−N,N−ジエチルアンモニウム−α−N−メチルカルボキシベタイン等が挙げられる。
【0069】
前記スルホン酸基(又はその塩)を有する単官能モノマーとしては、例えば、tert−ブチルアクリルアミドスルホン酸、p−スチレンスルホン酸ナトリウム、アリルスルホン酸、ビニルスルホン酸、ビニルスルホン酸ナトリウム、2−スルホエチル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、スチレンスルホン酸、スルホベタイン含有モノマー等が挙げられる。前記スルホベタイン含有モノマーとしては、例えば、1−(3−スルホプロピル)−2−ビニルピリジニウムベタイン、N,N−ジメチル−N−アクリロイルオキシエチル−N−(3−スルホプロピル)−アンモニウムベタイン、N,N−ジメチル−N−メタクリロイルオキシエチル−N−(3−スルホプロピル)−アンモニウムベタイン、N,N−ジメチル−N−メタクリルアミドプロピル−N−(3−スルホプロピル)−アンモニウムベタイン等が挙げられる。
【0070】
前記リン酸基(又はその塩)を有する単官能モノマーとしては、例えば、ビニルホスホン酸、ビニルホスフェート、アシッドホスホキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0071】
前記他のエーテル基を有する単官能モノマーとしては、例えば、末端にアルキル基又はアリール基を有するポリオキシアルキレン鎖(オキシアルキレン鎖の繰り返し回数が2回等のような少ない回数の場合も含む)を含む(メタ)アクリル酸エステル、ビニルエーテル類、(メタ)アクリルモルホリン等が挙げられる。前記の末端にアルキル基又はアリール基を有するポリオキシアルキレン鎖を含む(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、メトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコールアクリレート、エトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、オクトキシポリエチレングリコール・ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、オクトキシポリ(エチレングリコール・プロピレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、ラウロキシポリエチレングリコールモノメタクリレート、ステアロキシポリエチレングリコール・ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ステアロキシポリ(エチレングリコール・プロピレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート等が挙げられる。前記ビニルエーテル類としては、例えば、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル等が挙げられる。
【0072】
前記アミノ基を有する単官能モノマーとしては、例えば、第4級アミノ基を有する単官能モノマー、アルキルアミノ基を有する(メタ)アクリル酸エステル、アミノメチル(メタ)アクリレート、アルキルアミノ基を有する不飽和アミド、ビニルピリジン類、ジメチルアミノエチルビニルエーテル、ビニルイミダゾール等が挙げられる。前記第4級アミノ基を有する単官能モノマーとしては、例えば、メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、メタクリロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムメチルサルフェート、メタクリロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウムメチルサルフェート等が挙げられる。前記アルキルアミノ基を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、N−メチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N−メチルアミノエチルアクリレート、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジプロピルアミノエチル等が挙げられる。前記アルキルアミノ基を有する不飽和アミドとしては、例えば、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。前記ビニルピリジン類としては、例えば、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン等が挙げられる。
【0073】
前記アミド基を有する単官能モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−ビニル−2−ピロリドン、α−エチルアクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、N−ビニルピペリドン等が挙げられる。これら親水性単官能モノマーは、それぞれ単独で、又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0074】
前記重合性ビニル系モノマー中における親水性単官能モノマーの含有量は、前記重合性ビニル系モノマー100重量部に対して、50重量部以下であることが好ましい。前記重合性ビニル系モノマー中における親水性単官能モノマーの含有量が50重量部より多い場合、重合体小粒子の親水性が高くなり過ぎ、重合体大粒子の表面に付着しにくくなる。
【0075】
また、前記重合体小粒子を構成する重合体は、架橋重合体、例えば、上記単官能モノマーと上記多官能モノマーの共重合体であることが好ましい。前記重合体小粒子が、架橋重合体からなるものであると、上記水系懸濁重合において、当該重合体小粒子の膨潤を抑制することができ、より粒子径の揃った複合粒子を得ることができる。加えて、上記重合工程で得られた複合粒子を、塗料等のコーティング剤や塗膜に配合する場合には、前記コーティング剤や塗膜に含まれる溶剤に対する上記重合体小粒子の膨潤を防ぐことができ、かつ、耐傷つき性も得られる。前記重合体小粒子が、架橋重合体からなる場合、その架橋度は、0.01〜50重量%であることが好ましく、5〜40重量%であることがより好ましい。なお、前記重合体小粒子の架橋度は、前記重合体小粒子中における前記多官能モノマーに由来する構造単位の含有量(重量%)であり、前記重合体小粒子の製造に使用するモノマー混合物中における多官能モノマーの含有量(重量%)と略同一である。
【0076】
上記重合体小粒子は、体積平均粒子径が20〜500nmの重合体粒子であれば、いかなる重合方法により得られるものであってもよいが、上記重合体小粒子の重合方法としては、乳化重合(ソープフリー乳化重合を含む)法、懸濁重合法等の公知の方法を用いることができる。これらの重合方法の中でも、重合体小粒子の粒子径の均一性や製造法の簡便性を考慮すると、乳化重合法が上記重合体小粒子の重合方法として好ましい。以下に乳化重合法を用いた重合体小粒子の製造方法について述べるが、この方法に限定されるものではない。
【0077】
乳化重合法により上記重合体小粒子を製造する場合には、まず、上記重合性ビニル系モノマーを水性媒体中に分散させて水性乳化液を作製する。例えば、上記重合性ビニル系モノマーを水性媒体に添加し、主撹拌機、ホモジナイザー、超音波処理機、ナノマイザー等の微細乳化機により前記重合性ビニル系モノマーを水性媒体中に分散させて水性乳化液を作製する。そして、作製した水性乳化液を重合温度まで昇温する。次いで、反応系を窒素等の不活性気体でパージ(置換)した後、重合開始剤を水に溶解したものを順次、上記水性乳化液中に滴下して重合を開始させることで、重合体小粒子が得られる。重合温度は、上記重合性ビニル系モノマーの種類や重合開始剤の種類に応じて、適宜選択することができるが、25〜110℃の範囲内であることが好ましく、50〜100℃の範囲内であることがより好ましい。また、重合時間は、上記重合性ビニル系モノマーの種類や使用量、及び重合開始剤の種類や使用量等により適宜設定すればよいが、例えば、2〜10時間であることが好ましい。微細乳化機の攪拌回転数は、用いる微細乳化機の種類や攪拌能力等により適宜設定すればよいが、例えば、容量5Lの反応器を用いる場合、100〜500rpmであることが好ましい。必要に応じて、重合完了後、濾過や遠心分離等によって水性媒体から重合体小粒子を分離し、分離した重合体小粒子を、水および溶剤で洗浄した後、乾燥させてもよい。
【0078】
上記重合体小粒子を製造するための上記乳化重合法で使用する上記水性媒体としては、水、あるいは、水と水溶性溶媒(例えば、低級アルコール(炭素数5以下のアルコール))との混合物が挙げられる。水性媒体には、界面活性剤を添加しても、しなくともよい。
【0079】
前記水性媒体の使用量は、上記乳化重合法で使用する上記重合性ビニル系モノマー100重量部に対して、200〜2000重量部の範囲内であることが好ましく、300〜1500重量部の範囲内であることがより好ましい。前記水性媒体の使用量が200重量部より少ないと、重合中の粒子の安定性が悪くなり、重合後に重合体粒子(上記重合体小粒子)の凝集物が生じてしまう場合があるので、好ましくない。前記水性媒体の使用量が2000重量部より多いと、生産性が悪くなる場合があるので、好ましくない。
【0080】
上記重合体小粒子を製造するための上記乳化重合法で使用する上記界面活性剤としては、非反応性アニオン性界面活性剤(エチレン性不飽和基を有さないアニオン性界面活性剤)、反応性アニオン性界面活性剤(エチレン性不飽和基を有するアニオン性界面活性剤)、カチオン性界面活性剤、両性イオン界面活性剤及びノニオン性界面活性剤のいずれをも用いることができるが、反応性アニオン性界面活性剤を使用することが好ましい。これらの界面活性剤は、1種を単独で使用しても、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0081】
上記非反応性アニオン性界面活性剤としては、オレイン酸ナトリウム;ヒマシ油カリ石鹸等の脂肪酸石鹸;ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム等のアルキル硫酸エステル塩;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩;アルキルナフタレンスルホン酸塩;ドデシルスルホン酸ナトリウム等のアルキルスルホン酸塩(アルカンスルホン酸塩);コハクスルホン酸塩;ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム等のジアルキルスルホコハク酸塩;アルキルリン酸エステル塩;ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸ナトリウム、ポリオキシアルキレンアリールエーテルリン酸ナトリウム等のリン酸エステル塩;ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物及びその塩;ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩;ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩等が挙げられる。
【0082】
上記反応性アニオン性界面活性剤は、アニオン性部位として、スルホン酸塩、硫酸塩、リン酸塩、リン酸エステル、スルホコハク酸塩、カルボン酸塩、アシルアミノ酸塩等を有している。このアニオン性部位が、得られる重合体小粒子表面の官能基となる。ここで、これらの塩としては、アンモニウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩等が挙げられる。
【0083】
上記反応性アニオン性界面活性剤の具体例としては、ポリオキシアルキレン部位を有する反応性アニオン性界面活性剤、例えば、第一工業製薬株式会社製のポリオキシエチレン−1−(アリルオキシメチル)アルキルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩である「アクアロン(登録商標)KH−10」(商品名、ポリオキシエチレン鎖長10)及び「アクアロン(登録商標)KH−1025」(商品名、「アクアロン(登録商標)KH−10」の25重量%水溶液);第一工業製薬株式会社製のポリオキシエチレンアルキルプロペニルフェニルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩である「アクアロン(登録商標)HS−10」(商品名、ポリオキシエチレン鎖長10)、「アクアロン(登録商標)HS−20」(商品名、ポリオキシエチレン鎖長20)、「アクアロン(登録商標)BC−10」(商品名、ポリオキシエチレン鎖長10)、及び「アクアロン(登録商標)BC−20」(商品名、ポリオキシエチレン鎖長20);花王株式会社製のポリオキシアルキレンアルケニルエーテル硫酸アンモニウムである「ラテムル(登録商標)PD−104」(商品名);株式会社ADEKA製のα−スルホ−ω−(1−アルコキシメチル−2−(2−プロペニルオキシ)エトキシ)−ポリ(オキシ−1,2−エタンジイル)アンモニウム塩である「アデカリアソープ(登録商標)(登録商標)SR−10」(商品名、ポリオキシエチレン鎖長10)及び「アデカリアソープ(登録商標)SR−20)(商品名、ポリオキシエチレン鎖長20);株式会社ADEKA製のポリオキシプロピレンアリルエーテルリン酸エステルである「アデカリアソープ(登録商標)PP−70」(商品名);日本乳化剤株式会社製のビス(ポリオキシエチレンフェニルエーテル)メタクリレート硫酸エステル塩である「アントックスMS−60」(商品名)等が挙げられる。
【0084】
前記ポリオキシアルキレン部位を有する反応性アニオン性界面活性剤以外の反応性アニオン性界面活性剤としては、例えば、p−スチレンスルホン酸ナトリウム、アリルアルキルスルホン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0085】
上記ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレントリデシルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル;ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル;ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル;アルキレン基の炭素数が3以上であるポリオキシアルキレントリデシルエーテル等のポリオキシアルキレンアルキルエーテル;ポリオキシエチレン脂肪酸エステル;ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノパルミテート等のソルビタン脂肪酸エステル;モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンアルキルアミン;グリセリン脂肪酸エステル;オキシエチレン−オキシプロピレンブロックポリマー;ショ糖脂肪酸エステル(例えば、三菱化学フーズ株式会社製の商品名「リョートー(登録商標)シュガーエステル」)等が挙げられる。
【0086】
上記カチオン性界面活性剤としては、例えば、ラウリルアミンアセテート、ステアリルアミンアセテート等のアルキルアミン塩;ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド等の第四級アンモニウム塩等が挙げられる。
【0087】
上記両性イオン界面活性剤としては、ラウリルジメチルアミンオキサイド、リン酸エステル系両性イオン界面活性剤、亜リン酸エステル系両性イオン界面活性剤等が挙げられる。
【0088】
上記重合体小粒子を製造するための上記乳化重合法において、前記界面活性剤の使用量は、当該乳化重合法で使用する上記重合性ビニル系モノマー100重量部に対して0.01〜5重量部の範囲内であることが好ましい。
【0089】
上記重合体小粒子を製造するための上記乳化重合法で使用する上記重合開始剤としては、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、アセチルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、tert−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド等の有機過酸化物類;2,2'−アゾビスイソブチロニトリル、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2'−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二塩酸塩、2,2'−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二硫酸塩二水和物、2,2'−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩、2,2'−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]水和物、2,2'−アゾビス{2−[1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリン−2−イル]プロパン}二塩酸塩、2,2'−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]、2,2'−アゾビス(1−イミノ−1−ピロリジノ−2−メチルプロパン)二塩酸塩、2,2'−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}、2,2'−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、4,4−アゾビス(4−シアノペンタン酸)等のアゾ化合物類;過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩類等が挙げられる。これら重合開始剤は、単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、前記過硫酸塩類又は有機過酸化物類と、還元剤とを組み合わせたものを重合開始剤として用いてもよい。このような組み合わせの重合開始剤は、レドックス系重合開始剤と呼ばれる。前記還元剤としては、例えば、ナトリウムスルホキシレートホルムアルデヒド、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸水素アンモニウム、チオ硫酸ナトリウム、チオ硫酸アンモニウム、過酸化水素、ヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウム、L−アスコルビン酸又はその塩、第一銅塩、第一鉄塩等が挙げられる。これら還元剤は、単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0090】
上記重合体小粒子を製造するための上記乳化重合法において、前記重合開始剤は、その種類により相違するが、当該乳化重合法で使用する上記重合性ビニル系モノマー100重量部に対して、0.1〜5重量部の範囲内で使用することが好ましく、0.3〜3重量部の範囲内で使用することがより好ましい。
【0091】
また、上記重合体小粒子を製造するための上記乳化重合法において、前記水性媒体には、連鎖移動剤を添加してもよい。前記連鎖移動剤としては、例えば、n−オクチルメルカプタン、tert−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、tert−ドデシルメルカプタン、n−ヘキシルメルカプタン等のメルカプタン類;γ−テルピネン、ジペンテン等のテルペン類;クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロメタン、ジブロモメタン等のハロゲン化炭化水素;α−メチルスチレンダイマー;2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、スチレン化フェノール等のフェノール系化合物;アリルアルコール等のアリル化合物等が挙げられる。前記連鎖移動剤は、上記乳化重合法で使用する上記重合性ビニル系モノマー100重量部に対して、0.1〜5重量部の範囲内で使用することが好ましく、0.3〜3重量部の範囲内で使用することがより好ましい。
【0092】
また、上記重合体小粒子を製造するための上記乳化重合法において、前記水性媒体には、当該水性媒体中での上記重合性ビニル系モノマーの分散をより安定化させるために、必要に応じて高分子分散安定剤を添加してもよい。高分子分散安定剤は、一種を単独で使用しても、二種以上を組み合わせて併用してもよい。前記高分子分散安定剤の使用量は、上記乳化重合法で使用する上記重合性ビニル系モノマー100重量部に対して0.01〜5重量部の範囲内であることが好ましい。
【0093】
また、本発明の製造方法の前記重合工程において、前記重合体小粒子の使用量(以下、添加量という)は、本製造方法で得られる複合粒子の単位表面積あたり、0.010〜0.15g/m2であることが好ましい。前記重合体小粒子の添加量が、0.010g/m2未満である場合には、上記複合粒子において、重合体大粒子表面への重合体小粒子の付着が不十分となるおそれがあり、0.15g/m2を超える場合には、それに見合った効果が得られず、不経済となるおそれがある。
【0094】
前記重合体小粒子に吸着される前記水溶性セルロースとしては、例えば、メチルセルロース等のアルキルセルロース;ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等のヒドロキシアルキルセルロース;ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等のヒドロキシアルキルアルキルセルロース等の化合物が挙げられる。これらの化合物の中でも、ヒドロキシアルキルセルロースヒドロキシアルキルアルキルセルロースが好ましく、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)がより好ましい。また、これら化合物は、1種または2種以上を組み合わせて使用してよい。
【0095】
ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)は、一般的に、45℃の下限臨界共溶温度(LCST)を有することが知られており、市販品としては、例えば、日本曹達株式会社製のNISSO(登録商標)HPCシリーズ(「SSL」、「SL」、「L」、「M」、「H」等)を挙げることができる。
【0096】
また、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)の市販品としては、信越化学工業株式会社製のメトローズ(登録商標)シリーズ、より具体的には、60℃の曇点を有するメトローズ(登録商標)60SHシリーズ(「60SH−50」、「60SH−4000」、「60SH−10000」)、65℃の曇点を有するメトローズ(登録商標)65SHシリーズ(「65SH−50」、「65SH−400」、「65SH−1500」、「65SH−4000」)、90℃の曇点を有するメトローズ(登録商標)90SHシリーズ(「90SH−100」、「90SH−400」、「90SH−4000」、「90SH−15000」)等を挙げることができる。
【0097】
前記重合体小粒子への前記水溶性セルロースの吸着量は、特に限定されず、本発明において使用する重合体小粒子の比表面積に応じて適宜設定することができるが、前記重合体小粒子1gあたり0.05〜0.5gであることが好ましい。なお、水溶性セルロース類の重合体小粒子への吸着量は、例えば、後述する実施例の項に記載の〔重合体小粒子への水溶性セルロース類の吸着量の測定方法〕により、測定することができる。
【0098】
本発明の製造方法は、前記重合工程の前に、前記重合体小粒子を前記水溶性セルロース類で処理して、前記重合体小粒子の表面に前記水溶性セルロース類を吸着させる吸着工程を含むことが好ましい。
【0099】
前記重合体小粒子の表面に前記水溶性セルロース類を吸着させるための、前記水溶性セルロース類による前記重合体小粒子の処理方法としては、特に限定されず、公知の方法を適用することができ、例えば、水系媒体中において前記重合体小粒子および水溶性セルロース類を共存させ、前記重合体小粒子の表面に水溶性セルロース類を物理的に吸着させる方法が好ましい。この処理方法により重合体小粒子に吸着させた水溶性セルロース類は、前記重合工程において、前記重合体小粒子からほとんど脱離せず、安定した状態にある。
【0100】
また、前記水溶性セルロース類の(T−15)℃(Tは、前記水溶性セルロース類の下限臨界共溶温度(℃)または曇点(℃)を意味する。)以上の温度条件下、より好ましくは、(T−15)℃以上、(T+20)℃以下の温度条件下で、前記重合体小粒子と前記水溶性セルロース類とを共存させることにより、より効果的に前記重合体小粒子の表面に水溶性セルロース類を物理的に吸着させることができる。なお、前記水溶性セルロース類は、その特性により、下限臨界共溶温度または曇点のどちらか一方のみを有する。
【0101】
なお、前記吸着工程において、前記重合体小粒子に吸着されなかった水溶性セルロース類は、前記重合工程前に遠心分離等によって取り除いてもよいし、前記重合工程の後、前記重合工程で得られた複合粒子を精製する精製工程において洗浄によって取り除いてもよい。
【0102】
前記吸着工程において、前記水溶性セルロース類の使用量は、前記重合体小粒子の使用量100gに対して、5〜50gであることが好ましく、5〜30gであることがより好ましい。前記水溶性セルロース類の使用量が、前記重合体小粒子の使用量100gに対して5g未満であると、前記重合体小粒子の表面に十分な量の前記水溶性セルロースが吸着せず、前記重合工程において安定に懸濁重合を行うことが困難となるおそれがあるため、好ましくない。また、前記水溶性セルロース類の使用量が、前記重合体小粒子の使用量100gに対して50gを超えると、水溶性セルロース類の使用量に見合った効果が得られず、不経済であるため、好ましくない。
【0103】
また、本発明の製造方法における前記重合工程では、本願発明の効果を妨げない範囲内で、前記水溶性セルロース類が吸着した前記重合体小粒子以外の他の懸濁安定剤を更に使用してもよい。なお、炭酸カルシウム、第三リン酸カルシウム、ピロリン酸カルシウム、水酸化マグネシウム、ピロリン酸マグネシウム、コロイダルシリカ等の無機塩;ポリビニルピロリドン;ポリビニルアルコール等は、上記重合工程により得られる複合粒子の表面に付着し易く、当該複合粒子を後述する外用剤やコーティング剤等の用途で使用する場合に、洗浄による除去を必要とし、本願発明の効果を妨げる要因となるため、本願発明で使用する上記他の懸濁安定剤として好ましくない。
【0104】
(界面活性剤)
本発明の製造方法の前記重合工程において、前記重合性ビニル系モノマーを含むモノマー混合物の水系懸濁重合は、懸濁安定性をより向上させるために、界面活性剤の存在下で行ってもよい。前記界面活性剤としては、上記非反応性アニオン性界面活性剤、上記カチオン性界面活性剤、上記両性イオン界面活性剤及び上記ノニオン性界面活性剤のいずれをも用いることができる。重合工程において、上記界面活性剤は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。界面活性剤は、得られる複合粒子の径や水系懸濁重合時における重合性モノマーの分散安定性等を考慮して、種類が適宜選択され、使用量が適宜調整される。
【0105】
(重合禁止剤)
本発明の製造方法の前記重合工程において、前記重合性ビニル系モノマーを含むモノマー混合物の水系懸濁重合は、水系での乳化粒子の発生を抑えるために、水溶性の重合禁止剤の存在下で行ってもよい。
【0106】
前記水溶性の重合禁止剤としては、例えば、亜硝酸塩類、亜硫酸塩類、ハイドロキノン類、アスコルビン酸類、水溶性ビタミンB類、クエン酸、ポリフェノール類等を挙げることができる。
【0107】
(その他添加剤)
本発明の製造方法の前記重合工程において、前記重合性ビニル系モノマーを含むモノマー混合物の水系懸濁重合は、本発明の効果を妨げない範囲で、その他の添加剤、例えば、顔料、染料、酸化防止剤、紫外線吸収剤などの存在下で行われてよい。
【0108】
前記顔料としては、例えば、鉛白、鉛丹、黄鉛、カーボンブラック、群青、酸化亜鉛、酸化コバルト、二酸化チタン、酸化鉄、チタン黄、チタンブラック等の無機顔料;ネーブルスイエロー、ナフトールイエローS、ハンザイエロー10G、ベンジジンイエローG、ベンジジンイエローGR、キノリンイエローレーキ、パーマネントイエローNCG、タートラジンレーキ等の黄色顔料;モリブデンオレンジ、パーマネントオレンジRK、ベンジジンオレンジG、インダンスレンブリリアントオレンジGK等の橙色顔料;パーマネントレッド4R、リソールレッド、ピラゾロン、レッド4R、ウォッチングレッドカルシウム塩、レーキレッドD、ブリリアントカーミン6B、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、アリザリンレーキ、ブリリアントカーミンB等の赤色顔料;ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ、ジオキサンバイオレット等の紫色顔料;アルカリブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、フタロシアニンブルー、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー部分塩化物;ファストスカイブルー、インダンスレンブルーBC等の青色顔料;ピグメントグリーンB、マラカイトグリーンレーキ、ファナルイエローグリーンG等の緑色顔料;イソインドリノン顔料、キナクリドン顔料、ペリノン顔料、ペリレン顔料、不溶性アゾ顔料、溶性アゾ顔料、染色レーキ顔料等の有機顔料を挙げることができる。
【0109】
前記染料としては、例えば、ニトロソ染料、ニトロ染料、アゾ染料、スチルベンアゾ染料、ジフェニルメタン染料、トリフェニルメタン染料、キサンテン染料、アクリジン染料、キノリン染料、メチン染料、ポリメチン染料、チアゾール染料、インダミン染料、インドフェノール染料、アジン染料、オキサジン染料、チアジン染料、硫化染料等を挙げることができる。
【0110】
前記酸化防止剤としては、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール(BHT)、n−オクタデシル−3'−(3',5'−ジ−t−ブチル−4'−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、1,3,5−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、3,9−ビス〔2−{3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}−1,1−ジメチルエチル〕−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカン等のフェノール系酸化防止剤;ジステアリルペンタエリスリトールジフォスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジフォスファイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)4,4'−ビフェニレンジフォスフォナイト、ビス(2−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジフォスファイト、2,4,8,10−テトラ−t−ブチル−6−[3−(3−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)プロポキシ]ジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン等のリン系酸化防止剤;フェニル−1−ナフチルアミン、オクチル化ジフェニルアミン、4,4−ビス(α,α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、N,N'−ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミン等のアミン系酸化防止剤等を挙げることができる。
【0111】
前記紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(例えば、株式会社ADEKA製の「アデカスタブ(登録商標)LA−31」)、ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤等が例示できる。
【0112】
(懸濁重合の方法)
本発明の製造方法の重合工程では、前記水溶性セルロース類が表面に吸着した重合体小粒子の存在下で、上記重合性ビニル系モノマーを含むモノマー混合物を、水系懸濁重合させる。例えば、前記重合工程では、重合性ビニル系モノマーを含むモノマー混合物に、必要に応じて重合性リン酸系モノマー及び/又は重合開始剤及び/又は重合禁止剤及び/又はその他の添加剤を添加し、上記モノマー混合物を、水溶性セルロース類が表面に吸着した上記重合体小粒子を含む(必要に応じて、さらに、界面活性剤及び/又はその他の懸濁安定剤含む)水性媒体中に分散させて、水系懸濁重合を行う。
【0113】
上記モノマー混合物を水性媒体中に分散させる方法としては、例えば、水性媒体中にモノマー混合物を直接添加して、プロペラ翼等の攪拌力によりモノマー滴として分散させる方法;水性媒体中にモノマー混合物を直接添加して、ローターとステーターとから構成される高剪断力を利用する分散機であるホモミキサーを用いてモノマー混合物を水性媒体中に分散させる方法;水性媒体中にモノマー混合物を直接添加して、超音波分散機を用いてモノマー混合物を水性媒体中に分散させる方法;水性媒体中にモノマー混合物を直接添加して、マイクロフルイダイザーやナノマイザー等の高圧型分散機を用いて、モノマー混合物の液滴同士の衝突や反応容器内壁に対するモノマー混合物の液滴の衝突を利用して、モノマー混合物を水性媒体中に液滴として分散させる方法;MPG(マイクロポーラスガラス)多孔膜を通してモノマー混合物を水性媒体中に圧入させる方法等が挙げられる。これらの方法の中でも、上記のマイクロフルイダイザーやナノマイザー等の高圧型分散機を用いる方法や、上記のMPG(マイクロポーラスガラス)多孔膜を通す方法は、粒子径をより均一に揃えられるため、モノマー混合物を水性媒体中に分散させる方法として好ましく用いることができる。
【0114】
次いで、上記モノマー混合物が分散された水性媒体(水性懸濁液)を、加熱することにより懸濁重合を開始させる。重合反応中は、水性懸濁液を攪拌するのが好ましい。攪拌は、例えば、モノマー混合物が液滴として浮上すること、および重合により生成した複合粒子が沈降することを防止できる程度に行えばよい。
【0115】
懸濁重合において、重合温度は、30〜120℃の範囲内にするのが好ましく、40〜80℃の範囲内にするのがより好ましい。この重合温度を保持する時間は、0.1〜20時間の範囲内であることが好ましい。
【0116】
重合完了後、得られた複合粒子は、吸引濾過、遠心脱水、遠心分離、加圧脱水等の方法により含水ケーキとして分離され、さらに、必要に応じて得られた含水ケーキを水洗し、乾燥する。こうして得られた複合粒子を必要により粉砕し分級することにより、1〜100μmの粒子径の微粒子を得ることができる。
【0117】
本発明の複合粒子の大きさ及び形状は特に限定されないが、上記複合粒子の製造方法によれば、1〜100μmの体積平均粒子径で、粒子径の変動係数が50%以下の複合粒子を得ることができる。
【0118】
なお、モノマー混合物と水性媒体との混合条件、水溶性セルロース類が表面に吸着した重合体小粒子や他の懸濁安定剤や界面活性剤等の添加量及び上記攪拌機の攪拌条件、分散条件等を調整することで、得られる複合粒子の平均粒子径を調整することができる。
【0119】
上記複合粒子の製造方法によれば、上記重合体小粒子と、前記重合体小粒子よりも大きい重合体大粒子とを含む複合粒子を製造することができる。この複合粒子の製造方法では、水溶性セルロース類が表面に吸着した重合体小粒子の存在下で、重合性ビニル系モノマーを含むモノマー混合物を水系懸濁重合させることから、重合体小粒子の表面に吸着した水溶性セルロース類の作用により、前記重合性ビニル系モノマーの重合体からなる重合体大粒子の表面に重合体小粒子が付着した複合粒子、例えば、前記重合体大粒子の表面の少なくとも一部が、前記重合体小粒子からなる層で被覆された複合粒子を得ることができる。また、上記複合粒子の製造方法では、水溶性セルロース類が表面に吸着した重合体小粒子の存在下で水系懸濁重合を行うことで、十分な懸濁安定性が得られるため、水溶性セルロース類が表面に吸着した重合体小粒子以外の懸濁安定剤(特に、水溶性セルロース類を除く水溶性高分子、無機化合物等)を使用する必要がほとんどない。このため、上記複合粒子の製造方法によれば、懸濁重合により得られる粒子の洗浄の簡略化を図ることができる。
【0120】
上記製造方法は、前記重合体大粒子の表面の全体が、複数個の前記重合体小粒子からなる層で被覆されている複合粒子が得られる方法であることが好ましい。これにより、水系懸濁重合時の分散安定性をさらに向上させて複合粒子を容易に製造できると共に、得られる複合粒子の粒子流動性をさらに向上させることができる。
【0121】
〔複合粒子〕
本発明の複合粒子は、上述の複合粒子の製造方法により得られるものである。具体的には、本発明の複合粒子は、粒子径20〜500nm、好ましくは粒子径20〜120nmの上述の重合体小粒子と、この重合体小粒子よりも大きく、上述した重合性ビニル系モノマーを含むモノマー混合物の重合体からなる重合体大粒子と、上述した水溶性セルロース類とを含む。本発明の複合粒子において、重合体大粒子の表面には、重合体小粒子が付着しており、前記重合体大粒子の表面の少なくとも一部は、例えば、図1及び図2に示されるように、複数個の前記重合体小粒子(図1及び図2中の粒子表面部分参照)からなる層で被覆されている。本発明の複合粒子は、例えば図2に示されるように、前記重合体大粒子の表面の全体が複数個の前記重合体小粒子からなる層で被覆されたものであることが好ましい。これにより、さらに向上した粒子流動性を有すると共に、製造が容易な複合粒子を実現できる。
【0122】
本発明の複合粒子において、前記重合体小粒子は、前記水溶性セルロース類を介して前記重合体大粒子の表面に付着していてもよいし、前記重合体大粒子の表面に直接付着していてもよい。言い換えれば、本発明の複合粒子において、前記水溶性セルロース類は、前記重合体大粒子及び前記重合体小粒子の両方に付着していてもよいし、前記重合体大粒子及び前記重合体小粒子の一方にのみ付着していてもよい。
【0123】
上記したような本発明の複合粒子では、水溶性セルロース類の含有により、重合体大粒子の表面に重合体小粒子が強固に付着されている。
【0124】
なお、本発明の複合粒子において、上記重合体大粒子の表面に付着している上記重合体小粒子の粒子径は、上記重合体大粒子の表面から剥離した上記重合体小粒子を後述の実施例の項で説明する体積平均粒子径の測定にかけることで、測ることができる。或いは、本発明の複合粒子において、上記重合体大粒子の表面に付着している上記重合体小粒子の粒子径は、図1及び図2に示すような透過電子顕微鏡(TEM)画像に基づき、測ることができる。例えば、TEM画像により確認される重合体小粒子のうち、ランダムに選定した10個の重合体小粒子について、当該TEM画像より粒子径を求め、これら10個の重合体小粒子の粒子径の平均値を、重合体小粒子の粒子径とする。
【0125】
また、本発明の複合粒子中における各モノマー(重合性ビニル系モノマー又は重合性リン酸系モノマー)に由来する構造単位の定量及び定性等は、ガスクロマトグラフィー、液体クロマトグラフィー、赤外分光法(IR)、核磁気共鳴分光法(NMR)等のような公知の分析方法を用いることにより、確認することができる。なお、本発明の製造方法の上記重合工程で使用したモノマー混合物中における各モノマーの重量比と、本発明の複合粒子を構成する上記重合体大粒子における各モノマーに由来する構造単位の重量比とは略同一である。また、上記重合体小粒子の製造に用いたモノマー混合物中における各モノマーの重量比と、本発明の複合粒子を構成する重合体小粒子における各モノマーに由来する構造単位の重量比とは略同一である。
【0126】
本発明の複合粒子は、粒子流動性を示す、なだれ前後のアバランシェエネルギー変化AE(Avalanche Energy)の数値が、10〜45kJ/kgの範囲内であることが好ましい。これにより、粒子流動性の高い複合粒子を実現することができる。
【0127】
〔外用剤〕
本発明の複合粒子は、滑り性等の使用感を向上させるための添加剤や、光拡散効果により、毛穴、シミ、シワ等の肌の欠点を目立たなくするための添加剤等として、外用剤に含有させることができる。本発明の外用剤は、本発明の複合粒子を含んでいる。
【0128】
本発明の外用剤における複合粒子の含有量は、外用剤の種類に応じて適宜設定できるが、1〜80重量%の範囲内であることが好ましく、3〜70重量%の範囲内であることがより好ましい。外用剤全量に対する複合粒子の含有量が1重量%を下回ると、複合粒子の含有による明確な効果が認められないことがある。また、複合粒子の含有量が80重量%を上回ると、含有量の増加に見合った顕著な効果が認められないことがあるため、生産コスト上好ましくない。
【0129】
本発明の外用剤は、例えば、外用医薬品や化粧料等として使用できる。外用医薬品としては、皮膚に適用するものであれば特に限定されないが、具体的には、クリーム、軟膏、乳剤等が挙げられる。化粧料としては、例えば、石鹸、ボディシャンプー、洗顔クリーム、スクラブ洗顔料、歯磨き等の洗浄用化粧品;おしろい類、フェイスパウダー(ルースパウダー、プレストパウダー等)、ファンデーション(パウダーファンデーション、リキッドファンデーション、乳化型ファンデーション等)、口紅、リップクリーム、頬紅、眉目化粧品(アイシャドー、アイライナー、マスカラ等)、マニキュア等のメイクアップ化粧料;プレシェーブローション、ボディローション等のローション剤;ボディパウダー、ベビーパウダー等のボディー用外用剤;化粧水、クリーム、乳液(化粧乳液)等のスキンケア剤、制汗剤(液状制汗剤、固形状制汗剤、クリーム状制汗剤等)、パック類、洗髪用化粧品、染毛料、整髪料、芳香性化粧品、浴用剤、日焼け止め製品、サンタン製品、ひげ剃り用クリーム等が挙げられる。
【0130】
本発明の外用剤中に配合される複合粒子は、油剤、シリコーン化合物およびフッ素化合物等の表面処理剤や有機粉体、無機粉体等で処理したものであってもよい。
【0131】
前記油剤としては、通常外用剤に使用されているものであればいずれでもよく、例えば流動パラフィン、スクワラン、ワセリン、パラフィンワックス等の炭化水素油;ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、ベヘニン酸、ウンデシレン酸、ヒドロキシステアリン酸、リノール酸、ラノリン脂肪酸、合成脂肪酸等の高級脂肪酸;トリオクタン酸グリセリル、ジカプリン酸プロピレングリコール、2−エチルヘキサン酸セチル、ステアリン酸イソセチル等のエステル油;ミツロウ、鯨ロウ、ラノリン、カルナウバロウ、キャンデリラロウ等のロウ類;アマニ油、綿実油、ヒマシ油、卵黄油、ヤシ油等の油脂類;ステアリン酸亜鉛、ラウリン酸亜鉛等の金属石鹸;セチルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール等の高級アルコール等が挙げられる。また、複合粒子を前記油剤で処理する方法は特に限定されないが、例えば、複合粒子に油剤を添加し、ミキサー等で撹拌することにより油剤をコーティングする乾式法や、油剤をエタノール、プロパノール、酢酸エチル、ヘキサン等の適当な溶媒に加熱溶解し、それに複合粒子を加えて混合撹拌した後、溶媒を減圧除去または加熱除去することにより、油剤をコーティングする湿式法等を利用することができる。
【0132】
前記シリコーン化合物としては、通常外用剤に使用されるものであればいずれでもよく、例えばジメチルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、アクリル−シリコーン系グラフト重合体、有機シリコーン樹脂、部分架橋型オルガノポリシロキサン重合物等が挙げられる。複合粒子をシリコーン化合物で処理する方法は特に限定されないが、例えば、上記の乾式法や湿式法を利用できる。また、必要に応じて焼き付け処理を行ったり、反応性を有するシリコーン化合物の場合は反応触媒等を適宜添加してもよい。
【0133】
前記フッ素化合物は、通常外用剤に配合されるものであればいずれでもよく、例えばパーフルオロアルキル基含有エステル、パーフルオロアルキルシラン、パーフルオロポリエーテル、パーフルオロ基を有する重合体等が挙げられる。複合粒子をフッ素化合物で処理する方法も特に限定されないが、例えば、前記の乾式法や湿式法を利用できる。また、必要に応じて焼き付け処理を行ったり、反応性を有するフッ素化合物の場合は反応触媒等を適宜添加してもよい。
【0134】
前記有機粉体としては、例えばアラビアゴム、トラガントガム、グアーガム、ローカストビーンガム、カラヤガム、アイリッシュモス、クインスシード、ゼラチン、セラック、ロジン、カゼイン等の天然高分子化合物;カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、エステルガム、ニトロセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、結晶セルロース等の半合成高分子化合物;ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸ナトリウム、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルメチルエーテル、ポリアミド樹脂、シリコーン油、ナイロン粒子、ポリメタクリル酸メチル粒子、架橋ポリスチレン粒子、シリコーン粒子、ウレタン粒子、ポリエチレン粒子、フッ素樹脂粒子等の樹脂粒子が挙げられる。また、前記無機粉体としては、例えば酸化鉄、群青、コンジョウ、酸化クロム、水酸化クロム、カーボンブラック、マンガンバイオレット、酸化チタン、酸化亜鉛、タルク、カオリン、雲母、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸バリウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、シリカ、ゼオライト、硫酸バリウム、焼成硫酸カルシウム(焼セッコウ)、リン酸カルシウム、ヒドロキシアパタイト、セラミックパウダー等が挙げられる。
【0135】
また、これら有機粉体や無機粉体は、予め表面処理を行ったものでもよい。表面処理方法としては、公知の表面処理技術が利用でき、例えば、炭化水素油、エステル油、ラノリン等による油剤処理、ジメチルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン等によるシリコーン処理、パーフルオロアルキル基含有エステル、パーフルオロアルキルシラン、パーフルオロポリエーテルおよびパーフルオロアルキル基を有する重合体等によるフッ素化合物処理、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等によるシランカップリング剤処理、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート等によるチタンカップリング剤処理、金属石鹸処理、アシルグルタミン酸等によるアミノ酸処理、水添卵黄レシチン等によるレシチン処理、コラーゲン処理、ポリエチレン処理、保湿性処理、無機化合物処理、メカノケミカル処理等の処理方法が挙げられる。
【0136】
また、本発明の外用剤には、本発明の効果を損なわない範囲で、一般に用いられている主剤または添加物を目的に応じて配合できる。そのような主剤または添加物としては、例えば、水、低級アルコール(炭素数5以下のアルコール)、油脂及びロウ類、炭化水素、高級脂肪酸、高級アルコール、ステロール、脂肪酸エステル、金属石鹸、保湿剤、界面活性剤、高分子化合物、色材原料、香料、粘土鉱物類、防腐・殺菌剤、抗炎症剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、有機無機複合粒子、pH調整剤(トリエタノールアミン等)、特殊配合添加物、医薬品活性成分等が挙げられる。
【0137】
前記油脂及びロウ類の具体例としては、アボガド油、アーモンド油、オリーブ油、カカオ脂、牛脂、ゴマ脂、小麦胚芽油、サフラワー油、シアバター、タートル油、椿油、パーシック油、ひまし油、ブドウ油、マカダミアナッツ油、ミンク油、卵黄油、モクロウ、ヤシ油、ローズヒップ油、硬化油、シリコーン油、オレンジラフィー油、カルナバロウ、キャンデリラロウ、鯨ロウ、ホホバ油、モンタンロウ、ミツロウ、ラノリン等が挙げられる。
【0138】
前記炭化水素の具体例としては、流動パラフィン、ワセリン、パラフィン、セレシン、マイクロクリスタリンワックス、スクワラン等が挙げられる。
【0139】
前記高級脂肪酸の具体例としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、ベヘニン酸、ウンデシレン酸、ヒドロキシステアリン酸、リノール酸、ラノリン脂肪酸、合成脂肪酸等の炭素数11以上の脂肪酸が挙げられる。
【0140】
前記高級アルコールの具体例としては、ラウリルアルコール、セチルアルコール、セトステアリルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、ベヘニルアルコール、ラノリンアルコール、水素添加ラノリンアルコール、へキシルデカノール、オクチルデカノール、イソステアリルアルコール、ホホバアルコール、デシルテトラデカノール等の炭素数6以上のアルコールが挙げられる。
【0141】
前記ステロールの具体例としては、コレステロール、ジヒドロコレステロール、フィトコレステロール等が挙げられる。
【0142】
前記脂肪酸エステルの具体例としては、リノール酸エチル等のリノール酸エステル;ラノリン脂肪酸イソプロピル等のラノリン脂肪酸エステル;ラウリン酸ヘキシル等のラウリン酸エステル;ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸ミリスチル、ミリスチン酸セチル、ミリスチン酸オクチルデシル、ミリスチン酸オクチルドデシル等のミリスチン酸エステル;オレイン酸デシル、オレイン酸オクチルドデシル等のオレイン酸エステル;ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル等のジメチルオクタン酸エステル;イソオクタン酸セチル(2−エチルヘキサン酸セチル)等のイソオクタン酸エステル;パルミチン酸デシル等のパルミチン酸エステル;トリミリスチン酸グリセリン、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリン、ジオレイン酸プロピレングリコール、トリイソステアリン酸グリセリン、トリイソオクタン酸グリセリン、乳酸セチル、乳酸ミリスチル、リンゴ酸ジイソステアリル、イソステアリン酸コレステリル、12−ヒドロキシステアリン酸コレステリル等の環状アルコール脂肪酸エステル等が挙げられる。
【0143】
前記金属石鹸の具体例としては、ラウリン酸亜鉛、ミリスチン酸亜鉛、ミリスチン酸マグネシウム、パルミチン酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ウンデシレン酸亜鉛等が挙げられる。
【0144】
前記保湿剤の具体例としては、グリセリン、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ポリエチレングリコール、dl−ピロリドンカルボン酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、ソルビトール、ヒアルロン酸ナトリウム、ポリグリセリン、キシリット、マルチトール等が挙げられる。
【0145】
前記界面活性剤の具体例としては、高級脂肪酸石鹸、高級アルコール硫酸エステル、N−アシルグルタミン酸塩、リン酸エステル塩等のアニオン性界面活性剤;アミン塩、第4級アンモニウム塩等のカチオン性界面活性剤;ベタイン型、アミノ酸型、イミダゾリン型、レシチン等の両性界面活性剤;脂肪酸モノグリセリド、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル(例えば、イソステアリン酸ソルビタン等)、蔗糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、酸化エチレン縮合物等の非イオン性界面活性剤が挙げられる。
【0146】
前記高分子化合物の具体例としては、アラビアゴム、トラガントガム、グアーガム、ローカストビーンガム、カラヤガム、アイリッシュモス、クインスシード、ゼラチン、セラック、ロジン、カゼイン等の天然高分子化合物;カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、エステルガム、ニトロセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、結晶セルロース等の半合成高分子化合物;ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸ナトリウム、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルメチルエーテル、ポリアミド樹脂、シリコーン油、ナイロン粒子、ポリ(メタ)アクリル酸エステル粒子(例えば、ポリメタクリル酸メチル粒子等)、ポリスチレン粒子、シリコーン系粒子、ウレタン粒子、ポリエチレン粒子等の樹脂粒子等の合成高分子化合物が挙げられる。なお、本出願書類において、「(メタ)アクリル」は、メタクリル又はアクリルを意味する。
【0147】
前記色材原料の具体例としては、酸化鉄(赤色酸化鉄、黄色酸化鉄、黒色酸化鉄等)、群青、コンジョウ、酸化クロム、水酸化クロム、カーボンブラック、マンガンバイオレット、酸化チタン、酸化亜鉛、タルク、カオリン、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、雲母、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸バリウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、シリカ、ゼオライト、硫酸バリウム、焼成硫酸カルシウム(焼セッコウ)、リン酸カルシウム、ヒドロキシアパタイト、セラミックパウダー等の無機顔料、アゾ系、ニトロ系、ニトロソ系、キサンテン系、キノリン系、アントラキノリン系、インジゴ系、トリフェニルメタン系、フタロシアニン系、ピレン系等のタール色素が挙げられる。
【0148】
なお、上記した高分子化合物の粉体原料や色材原料などの粉体原料は、予め表面処理を行ったものも使用することができる。表面処理の方法としては、上述したような、公知の表面処理技術が利用できる。
【0149】
前記粘土鉱物類の具体例としては、体質顔料および吸着剤などの数種の機能を兼ね備えた成分、例えば、タルク、雲母(例えば、白雲母)、セリサイト、チタンセリサイト(酸化チタンで被覆されたセリサイト)、バンダービルト社製のVEEGUM(登録商標)等が挙げられる。
【0150】
前記香料の具体例としては、アニスアルデヒド、ベンジルアセテート、ゲラニオール等が挙げられる。前記防腐・殺菌剤の具体例としては、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、ベンザルコニウム、ベンゼトニウム等が挙げられる。前記酸化防止剤の具体例としては、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、没食子酸プロピル、トコフェロール等が挙げられる。前記抗炎症剤の具体例としては、ε−アミノカプロン酸、グリチルリチン酸、グリチルリチン酸ジカリウム、β−グリチルレチン酸、塩化リゾチーム、グアイアズレン、ヒドロコルチゾン等を挙げることができる。これらは、単独又は2種以上を混合して用いることができる。前記紫外線吸収剤の具体例としては、微粒子酸化チタン、微粒子酸化亜鉛、微粒子酸化セリウム、微粒子酸化鉄、微粒子酸化ジルコニウム等の無機系吸収剤、安息香酸系、パラアミノ安息香酸系、アントラニリック酸系、サルチル酸系、桂皮酸系、ベンゾフェノン系、ジベンゾイルメタン系等の有機系吸収剤が挙げられる。
【0151】
前記特殊配合添加物の具体例としては、エストラジオール、エストロン、エチニルエストラジオール、コルチゾン、ヒドロコルチゾン、プレドニゾン等のホルモン類、ビタミンA、ビタミンB、ビタミンC、ビタミンE等のビタミン類、クエン酸、酒石酸、乳酸、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム・カリウム、アラントインクロルヒドロキシアルミニウム、パラフェノールスルホン酸亜鉛、硫酸亜鉛等の皮膚収斂剤、カンタリスチンキ、トウガラシチンキ、ショウキョウチンキ、センブリエキス、ニンニクエキス、ヒノキチオール、塩化カルプロニウム、ペンタデカン酸グリセリド、ビタミンE、エストロゲン、感光素等の発毛促進剤、リン酸−L−アスコルビン酸マグネシウム、コウジ酸等の美白剤等が挙げられる。
【0152】
上記した本発明の外用剤は、本発明の複合粒子を含むことから、良好な滑り性を有する。
【0153】
〔コーティング剤〕
本発明の複合粒子は、塗膜軟質化剤、塗料用艶消し剤、光拡散剤等としてコーティング剤に含有させることが可能である。本発明のコーティング剤は、本発明の複合粒子を含んでいる。
【0154】
前記コーティング剤は、必要に応じてバインダー樹脂を含んでいる。バインダー樹脂としては、有機溶剤もしくは水に可溶な樹脂、または水中に分散できるエマルジョン型の水性樹脂を使用でき、公知のバインダー樹脂をいずれも利用できる。バインダー樹脂としては、例えば、三菱レイヨン株式会社製の商品名「ダイヤナール(登録商標)LR−102」や「ダイヤナール(登録商標)BR−106」、或いは、大日精化工業株式会社製の商品名「メジウム VM」等のアクリル系樹脂;アルキド樹脂;ポリエステル樹脂;ポリウレタン樹脂;塩素化ポリオレフィン樹脂;アモルファスポリオレフィン樹脂;シリコーン樹脂等が挙げられる。これらバインダー樹脂は、塗工される基材へのコーティング剤の密着性や使用される環境等によって適宜選択され得る。
【0155】
複合粒子の配合量は、バインダー樹脂を含むコーティング剤により形成される塗膜の膜厚、複合粒子の平均粒子径、塗工方法、使用する用途等によって適宜調整されるが、バインダー樹脂100重量部に対して、1〜300重量部の範囲内であることが好ましく、5〜100重量部の範囲内であることがより好ましい。複合粒子の配合量が、バインダー樹脂100重量部に対して、1重量部未満である場合、艶消し効果が十分得られないことがある。また、複合粒子の配合量が、バインダー樹脂100重量部に対して、300重量部を超える場合にはコーティング剤の粘度が大きくなりすぎるために複合粒子の分散不良が起こることがあり、この結果、コーティング剤の塗工によって得られる塗膜表面にマイクロクラックが発生する、或いは、得られる塗膜表面にザラツキが生じる等のような、塗膜表面の外観不良が起こることがある。
【0156】
前記コーティング剤は、必要に応じて、媒体を含んでいる。前記媒体として、バインダー樹脂を溶解できる溶剤(溶媒)、またはバインダー樹脂を分散できる分散媒を使用することが好ましい。分散媒または溶媒としては、水性の媒体および油性の媒体がいずれも使用できる。油性の媒体としては、トルエン、キシレン、シクロヘキサン等の炭化水素系溶剤;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤;ジオキサン、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル等のエーテル系溶剤等が挙げられる。水性の媒体としては、水、アルコール類(例えばイソプロパノール)等が挙げられる。これら媒体は、1種のみを使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。コーティング剤中における媒体の含有量は、コーティング剤全量に対し、通常、20〜60重量%の範囲内である。
【0157】
さらに、コーティング剤には、硬化剤、着色剤(体質顔料、着色顔料、金属顔料、雲母粉顔料、染料等)、帯電防止剤、レベリング剤、流動性調整剤、紫外線吸収剤、光安定剤等の他の添加剤が含まれていてもよい。
【0158】
コーティング剤の被塗布基材としては、特に限定されず、用途に応じた基材が使用できる。
【0159】
例えば、光学用途では、ガラス基材、透明基材樹脂からなる透明基材等が被塗布基材として使用される。被塗布基材として透明基材を使用し、着色剤を含まないコーティング剤(光拡散用コーティング剤)を透明基材上に塗工して透明の塗膜を形成することで、光拡散フィルムや防眩フィルム等の光学フィルムを製造することができる。この場合、複合粒子は光拡散剤として機能する。
【0160】
また、被塗布基材として紙を使用し、着色剤を含まないコーティング剤(紙用コーティング剤)を塗工して透明の塗膜を形成することで、艶消し紙を製造することができる。
【0161】
コーティング剤の塗工方法は、特に限定されず、公知の方法をいずれも使用できる。塗工方法としては、例えば、コンマダイレクト法、スピンコーティング法、スプレーコーティング法、ロールコート法、ディッピング法、ナイフコート法、カーテンフロー法、ラミネート法等の方法が挙げられる。コーティング剤は、必要に応じて粘度を調整するために、希釈剤を加えて希釈してもよい。希釈剤としては、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶剤;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤;ジオキサン、エチレングリコールジエチルエーテル等のエーテル系溶剤;水;アルコール系溶剤等が挙げられる。これら希釈剤は、単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。光学フィルムを製造する場合には、塗工方法として、複合粒子に由来する凹凸が塗膜表面に形成されるような方法を使用することが好ましい。
【0162】
上記したような本発明のコーティング剤は、本発明の複合粒子を含むことから、当該コーティング剤から形成された塗膜に光拡散性を付与することができる。
【0163】
〔光学フィルム〕
本発明の光学フィルムは、本発明のコーティング剤をフィルム状の基材に塗工したものである。光学フィルムの具体例としては、光拡散フィルムや防眩フィルム等を挙げることができる。
【0164】
光学フィルムの基材の具体例としては、ガラス基材や、透明基材樹脂からなる透明基材等を挙げることができる。
【0165】
前記透明基材樹脂としては、例えば、ポリメチルメタクリレート等のアクリル樹脂、(メタ)アクリル酸アルキル−スチレン共重合体、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート(以下「PET」と略記する)等のポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等が挙げられる。これら透明基材樹脂の中でも、優れた透明性が透明基材樹脂に求められる場合には、アクリル樹脂、(メタ)アクリル酸アルキル−スチレン共重合体、ポリカーボネート、ポリエステル、およびポリスチレンが好ましい。これらの透明基材樹脂は、それぞれ単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0166】
また、光学フィルムにおいて、コーティング剤を塗工して得られる塗膜の厚みは、5〜100μmの範囲であることが好ましい。
【0167】
〔樹脂組成物〕
本発明の樹脂組成物は、本発明の複合粒子と基材樹脂とを含むものである。この本発明の樹脂組成物は、本発明の複合粒子を含み、光拡散性に優れることから、照明カバー(発光ダイオード(LED)照明用照明カバー、蛍光灯照明用照明カバー等)、光拡散シート、光拡散板等の光拡散体の原料として使用できる。
【0168】
前記基材樹脂としては、通常、複合粒子を構成する重合体の成分と異なる熱可塑性樹脂が使用される。前記基材樹脂として使用する熱可塑性樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、(メタ)アクリル酸アルキル−スチレン共重合体、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等が挙げられる。これら熱可塑性樹脂の中でも、優れた透明性が基材樹脂に求められる場合には、アクリル樹脂、(メタ)アクリル酸アルキル−スチレン共重合体、ポリカーボネート、ポリエステル、およびポリスチレンが好ましい。これらの熱可塑性樹脂は、それぞれ単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0169】
前記基材樹脂への複合粒子の添加割合は、基材樹脂100重量部に対して、0.1〜70重量部の範囲内であることが好ましく、1〜50重量部の範囲内であることがより好ましい。前記基材樹脂への複合粒子の添加割合が、基材樹脂100重量部に対して、0.1重量部未満の場合、光拡散体に光拡散性を与えにくくなることがある。前記基材樹脂への複合粒子の添加割合が、基材樹脂100重量部に対して、70重量部より多い場合、上記した光拡散体に光拡散性を与えられるが上記光拡散体の光透過性が低くなることがある。
【0170】
樹脂組成物の製造方法は、特に限定されず、複合粒子と基材樹脂とを機械式粉砕混合方法等のような従来公知の方法で混合することにより製造できる。機械式粉砕混合方法では、例えば、ヘンシェルミキサー、V型混合機、ターブラミキサー、ハイブリダイザー、ロッキングミキサー等の装置を用いて複合粒子と基材樹脂とを混合し撹拌することにより、樹脂組成物を製造できる。
【0171】
〔成形体〕
本発明の成形体は、本発明の樹脂組成物を成形してなるものである。本発明の成形体の具体例としては、照明カバー(発光ダイオード(LED)照明用照明カバー、蛍光灯照明用照明カバー等)、光拡散シート、光拡散板等の光拡散体を挙げることができる。
【0172】
例えば、複合粒子と基材樹脂とを混合機で混合し、押出機等の溶融混練機で混練することで樹脂組成物からなるペレットを得た後、このペレットを押出成形するか、あるいはこのペレットを溶融後に射出成形することにより、任意の形状の成形体を得ることができる。
【実施例】
【0173】
以下、実施例及び比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。まず、実施例及び比較例中の各測定方法について説明する。
【0174】
〔重合体小粒子の体積平均粒子径の測定方法〕
重合体小粒子の体積平均粒子径の測定は、レーザー回折・散乱方式粒度分布測定装置(ベックマン・コールター株式会社製「LS 13 320」)およびユニバーサルリキッドサンプルモジュールによって行った。
【0175】
測定には、測定対象の粒子(重合体小粒子)0.1gを0.1重量%ノニオン性界面活性剤水溶液10m1中にタッチミキサー(ヤマト科学株式会社製、「TOUCHMIXER MT−31」)および超音波洗浄器(株式会社ヴェルヴォクリーア社製、「ULTRASONIC CLEANER VS−150」)を用いて分散させ、分散液としたものを使用する。
【0176】
また、上記のレーザー回折・散乱方式粒度分布測定装置のソフトウェアにおいて、ミー理論に基づいた評価のために必要となる以下に示す光学的なパラメータを、設定する。
【0177】
<パラメータ>
液体(ノニオン性界面活性剤水溶液)の屈折率B.I.の実部=1.333(水の屈折率)
固体(測定対象の粒子)の屈折率の実部=測定対象の粒子の屈折率
固体の屈折率の虚部=0
固体の形状因子=1
また、測定条件及び測定手順は、以下の通りとする。
【0178】
<測定条件>
測定時間:60秒
測定回数:1
ポンプ速度:50〜60%
PIDS相対濃度:40〜55%程度
超音波出力:8
【0179】
<測定手順>
オフセット測定、光軸調整、バックグラウンド測定を行った後、上記した分散液を、スポイトを用いて、上記のレーザー回折・散乱方式粒度分布測定装置のユニバーサルリキッドサンプルモジュール内へ注入する。上記のユニバーサルリキッドサンプルモジュール内の濃度が上記のPIDS相対濃度に達し、上記のレーザー回折・散乱方式粒度分布測定装置のソフトウェアが「OK」と表示したら、測定を開始する。なお、測定は、ユニバーサルリキッドサンプルモジュール中でポンプ循環を行うことによって上記測定対象の粒子(重合体小粒子)を分散させた状態、かつ、超音波ユニット(ULM ULTRASONIC MODULE)を起動させた状態で行う。
【0180】
また、測定は室温で行い、得られたデータから、上記のレーザー回折・散乱方式粒度分布測定装置のソフトウェアにより、上記の予め設定された光学的なパラメータを用いて、測定対象の粒子(重合体小粒子)の体積平均粒子径(体積基準の粒度分布における算術平均径)を算出する。
【0181】
なお、測定対象の粒子(重合体小粒子)の屈折率については、当該粒子(重合体小粒子)を構成する重合体の屈折率を入力し測定を実施した。例えば、測定対象の粒子(重合体小粒子)を構成する重合体がポリメタクリル酸メチル(メタクリル酸メチルを主成分とするモノマー混合物の重合体)又はポリメタクリル酸エチル(メタクリル酸エチルを主成分とするモノマー混合物の重合体)である場合には、既知であるポリメタクリル酸メチル及びポリメタクリル酸エチルの屈折率1.495を入力し、上記測定対象の粒子(重合体小粒子)を構成する重合体がポリスチレン(スチレンを主成分とするモノマー混合物の重合体)である場合には、既知であるポリスチレンの屈折率1.595を入力した。
【0182】
〔粒子の体積平均粒子径及び粒子径の変動係数(CV値)の測定方法〕
後述する実施例及び比較例で最終的に得られた粒子(複合粒子又は重合体粒子)の体積平均粒子径は、コールターマルチサイザーIII(ベックマン・コールター株式会社製測定装置)により測定する。測定は、ベックマン・コールター株式会社発行のMultisizerTM 3ユーザーズマニュアルに従って校正されたアパチャーを用いて実施するものとする。
【0183】
なお、測定に用いるアパチャーの選択は、測定する粒子(複合粒子又は重合体粒子)の想定の体積平均粒子径が1μm以上10μm以下の場合は50μmのサイズを有するアパチャーを選択し、測定する粒子(複合粒子又は重合体粒子)の想定の体積平均粒子径が10μmより大きく30μm以下の場合は100μmのサイズを有するアパチャーを選択し、粒子(複合粒子又は重合体粒子)の想定の体積平均粒子径が30μmより大きく90μm以下の場合は280μmのサイズを有するアパチャーを選択し、粒子(複合粒子又は重合体粒子)の想定の体積平均粒子径が90μmより大きく150μm以下の場合は400μmのサイズを有するアパチャーを選択するなど、適宜行う。測定後の体積平均粒子径が想定の体積平均粒子径と異なった場合は、適正なサイズを有するアパチャーに変更して、再度測定を行う。
【0184】
又、50μmのサイズを有するアパチャーを選択した場合、Current(アパチャー電流)は−800、Gain(ゲイン)は4と設定し、100μmのサイズを有するアパチャーを選択した場合、Current(アパチャー電流)は−1600、Gain(ゲイン)は2と設定し、280μmおよび400μmのサイズを有するアパチャーを選択した場合、Current(アパチャー電流)は−3200、Gain(ゲイン)は1と設定する。
【0185】
測定用試料としては、測定する粒子(複合粒子又は重合体粒子)0.1gを0.1重量%ノニオン性界面活性剤水溶液10m1中にタッチミキサー(ヤマト科学株式会社製、「TOUCHMIXER MT−31」)および超音波洗浄器(株式会社ヴェルヴォクリーア社製、「ULTRASONIC CLEANER VS−150」)を用いて分散させ、分散液としたものを使用する。コールターマルチサイザーIIIの測定部に、ISOTON(登録商標)II(ベックマン・コールター株式会社製:測定用電解液)を満たしたビーカーをセットし、ビーカー内を緩く攪拌しながら、前記分散液を滴下して、コールターマルチサイザーIII本体画面の濃度計の示度を5〜10%に合わせた後に、測定を開始する。測定中はビーカー内を気泡が入らない程度に緩く攪拌しておき、粒子を10万個測定した時点で測定を終了する。粒子(複合粒子又は重合体粒子)の体積平均粒子径は、10万個の粒子の体積基準の粒度分布における算術平均である。
【0186】
粒子径の変動係数(CV値)を、以下の数式によって算出する。
粒子径の変動係数=(測定対象の粒子の体積基準の粒度分布の標準偏差
÷測定対象の粒子の体積平均粒子径)×100
【0187】
〔比表面積の測定方法〕
測定対象の粒子(複合粒子)を0.25g計量した。計量した粒子を、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.025gと、純水50gと混合し、この混合物を超音波にて10分間撹拌して、上記粒子(複合粒子)を分散させたものを測定試料とした。そして、この測定試料中の粒子の比表面積を、レーザー回折式粒度分布測定装置(Malvern Instruments Ltd製、「マスターサイザー2000」)を用いて、下記測定条件で測定した。
【0188】
<測定条件>
分散媒;水
解析モデル;汎用
粒子屈折率;1.495(複合粒子がポリメタクリル酸メチル系粒子である場合)
1.595(複合粒子がポリスチレン系粒子である場合)
分散媒屈折率;1.33
【0189】
〔重合体小粒子への水溶性セルロース類の吸着量の測定方法〕
複合粒子の製造工程で得た水溶性セルロース類が吸着した重合体小粒子を含む分散媒を用いて、重合体小粒子1gあたりの水溶性セルロース類の吸着量(g)を以下の方法により、求める。
【0190】
(1)分散媒1gあたりの水溶性セルロース類の吸着濃度(g/g)の測定
まず、分散媒1gあたりの水溶性セルロース類の吸着濃度(すなわち、分散媒1g中における重合体小粒子に吸着している水溶性セルロース類の量)(g/g)を以下の方法により、測定する。
【0191】
複合粒子の製造工程で得た水溶性セルロース類が吸着した重合体小粒子を含む分散媒25gを密閉容器に投入し、前記密閉容器内の前記分散媒に食塩1gを添加して、前記密閉容器を、上記分散媒中の水性媒体に食塩が溶け均一になるまで振動させる。次いで、前記密閉容器内の内容物を、50ml遠心管に移し、遠心分離機(日立ハイテクノロジー製の「日立高速冷却遠心機 HIMAC CR22GII」)にて、25000Gで、30分間遠心分離する。
【0192】
上記遠心分離により得られた上澄み液0.2gに0.8gのイオン交換水を加えて希釈液(希釈倍率:5倍)を得る。この希釈液1gに、5%フェノール水溶液1gを添加し、更に、5mlの濃硫酸を添加して10分間放置し、25℃の水溶液中に20分間静置して測定試料を得る(フェノール−硫酸法)。
【0193】
前記測定試料について、紫外可視分光光度計(株式会社島津製作所製の「紫外可視分光光度計UV−2450」)を用い、以下の測定条件にて、485nmにおける吸光度を測定する。
【0194】
<測定条件>
測定モード:シングル
測光値:吸光度
スリット幅:2.0nm
S/R切替:標準
測定波長:485nm
セル:石英セル
【0195】
そして、上記測定の結果得られた吸光度と、較正曲線(吸光度と水溶性セルロース類の濃度との関係を表す曲線)とに基づき、上記上澄み液1g中における水溶性セルロース類の濃度(g/g)を求める。
【0196】
具体的には、次に示す方法により、較正曲線を作成する。すなわち、イオン交換水100gに、分散媒の作製時に使用する水溶性セルロース類を0.01g、0.05g、0.1g添加した濃度の異なる3種の水溶液(標準溶液)を作製する。作製した各標準溶液0.2gを、それぞれ、0.8gのイオン交換水で希釈する(希釈倍率:5倍)。希釈後の各標準溶液1gに、5%フェノール水溶液1gを添加し、更に、5mlの濃硫酸を添加して10分間放置し、25℃の水溶液中に20分間静置することにより、各標準溶液に対応する測定試料を得る。そして、得られた各標準溶液に対応する各測定試料について、紫外可視分光光度計(株式会社島津製作所製の「紫外可視分光光度計UV−2450」)を用い、上述の測定条件にて、吸光度を測定する。上記標準溶液(希釈前の標準溶液)1g中の水溶性セルロース類の濃度(g/g)を横軸、当該標準溶液の測定試料の吸光度を縦軸にプロットすることで原点通過する一次曲線の較正曲線を作成する。上澄み液及び標準溶液の希釈倍率については、必ずしも5倍に限られるものではない。
【0197】
上記の通り作成した較正曲線と、上記上澄み液の測定試料の吸光度とに基づき、上澄み液1g中における水溶性セルロース類の濃度を得る。
【0198】
そして、以下の算出式により、分散媒1gあたりの水溶性セルロース類の吸着濃度(g/g)を求める。
X=CY−CZ
X;分散媒1gあたりの水溶性セルロース類の吸着濃度(g/g)
Y;分散媒1g中の水溶性セルロース類の濃度(すなわち、複合粒子の製造工程で作製した分散媒1gに対する水溶性セルロース類の使用重量)(g/g)
Z;上澄み液1g中における水溶性セルロース類の濃度(g/g)
【0199】
(2)水溶性セルロース類の吸着率(%)の算出
以下の算出式により、水溶性セルロース類の吸着率(%)を算出する。
R=CX÷CY×100
R;吸着率(%)
X;分散媒1gあたりの水溶性セルロース類の吸着濃度(g/g)
Y;分散媒1g中の水溶性セルロース類の濃度(すなわち、複合粒子の製造工程で作製した分散媒1gに対する水溶性セルロース類の使用重量)(g/g)
【0200】
(3)重合体小粒子1gあたりの水溶性セルロース類の吸着量(g)の算出
以下の算出式により、重合体小粒子1gあたりの水溶性セルロース類の吸着量(g)を算出する。
D=(R×WH)÷WP
D;重合体小粒子1gあたりの水溶性セルロース類の吸着量(g)
R;吸着率(%)
H;複合粒子の製造における水溶性セルロース類の使用重量(g)
P;複合粒子の製造における重合体小粒子の使用重量(g)
【0201】
〔重合体小粒子の添加量の算出方法〕
複合粒子の製造における重合体小粒子の使用重量と、重合性ビニル系モノマーの使用重量と、上記比表面積の測定方法により測定された粒子(複合粒子)の比表面積とを用いて、以下の算出式により、上記製造で得られた粒子の単位表面積あたりの重合体小粒子の添加量(g/m2)を求める。
添加量=(WP÷Wm)÷X
P:複合粒子の製造における重合体小粒子の使用重量(g)
m:複合粒子の製造における重合性ビニル系モノマーの使用重量(g)
X:上記比表面積の測定方法により測定された粒子の比表面積(m2/g)
【0202】
〔粒子流動性を示す評価値の測定方法〕
測定対象の粒子(複合粒子又は重合体粒子)を100g計量して測定試料とした。そして、この測定試料中の粒子について、粉体流動性測定装置(Mercury Scientific社製の「パウダーアナライザー REVOLUTION」)を用いて、粒子流動性を示す評価値として、なだれ前後のアバランシェエネルギー変化AE(kJ/kg)を下記測定条件で測定した。このAEの値が低いほど、粒子流動性が高いことを示す。
<測定条件>
回転数0.3rpmで、150回のなだれを測定
【0203】
〔製造例1:実施例で使用する、重合体小粒子の製造例〕
攪拌装置を備える重合容器内に、水性媒体としての水260gと、反応性アニオン性界面活性剤としてのポリオキシエチレン−1−(アリルオキシメチル)アルキルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩(第一工業製薬株式会社製、商品名「アクアロン(登録商標)KH−10」)1.09gとを供給した。次いで、上記重合容器内へ、予め調製しておいた重合性ビニル系モノマー(単官能モノマー)としてのメタクリル酸メチル(MMA)29gと重合性ビニル系モノマー(多官能モノマー)としてのエチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)12.6gとの混合液(モノマー混合物)を供給した。上記重合容器の内容物を200rpmの攪拌回転数で攪拌しつつ、70℃に加熱した。次に、重合開始剤としての過硫酸カリウム0.21gを供給した後、70℃にて7時間に亘って攪拌を続けながら乳化重合を行い、架橋ポリメタクリル酸メチル粒子を含む分散液を得た。
【0204】
得られた架橋ポリメタクリル酸メチル粒子の体積平均粒子径を測定した結果、架橋ポリメタクリル酸メチル粒子の体積平均粒子径は97nmであった。
【0205】
〔製造例2:実施例で使用する、重合体小粒子の製造例〕
重合性ビニル系モノマー(単官能モノマー)としてのメタクリル酸メチル(MMA)の使用量を14.7gに変更し、重合性ビニル系モノマー(多官能モノマー)としてのエチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)の使用料を6.3gに変更した以外は、製造例1と同様にして、架橋ポリメタクリル酸メチル粒子の分散液を得た。
【0206】
得られた架橋ポリメタクリル酸メチル粒子の体積平均粒子径を測定した結果、架橋ポリメタクリル酸メチル粒子の体積平均粒子径は40nmであった。
【0207】
〔製造例3:実施例で使用する、重合体小粒子の製造例〕
重合性ビニル系モノマー(単官能モノマー)としてのメタクリル酸メチル(MMA)29gに代えて、重合性ビニル系モノマー(単官能モノマー)としてのスチレン(St)29.4gを使用したこと以外は、製造例1と同様にして、架橋ポリスチレン粒子の分散液を得た。
【0208】
得られた架橋ポリスチレン粒子の体積平均粒子径を測定した結果、架橋ポリスチレン粒子の体積平均粒子径は80nmであった。
【0209】
〔製造例4:実施例で使用する、重合体小粒子の製造例〕
重合性ビニル系モノマー(単官能モノマー)としてのメタクリル酸メチル(MMA)29gに代えて、重合性ビニル系モノマー(単官能モノマー)としてのスチレン(St)14.7gを使用し、重合性ビニル系モノマー(多官能モノマー)としてのエチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)の使用量を6.9gに変更したこと以外は、製造例1と同様にして、架橋ポリスチレン粒子の分散液を得た。
【0210】
得られた架橋ポリスチレン粒子の体積平均粒子径を測定した結果、架橋ポリスチレン粒子の体積平均粒子径は39nmであった。
【0211】
〔製造例5:実施例で使用する、重合体小粒子の製造例〕
重合性ビニル系モノマー(単官能モノマー)としてのメタクリル酸メチル(MMA)29gに代えて、重合性ビニル系モノマー(単官能モノマー)としてのスチレン(St)3.1gと、親水性単官能モノマーとしての「ブレンマー(登録商標)50PEP−300」(日油株式会社製)11.6gとを使用し、重合性ビニル系モノマー(多官能モノマー)としてのエチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)の使用量を6.9gに変更したこと以外は、製造例1と同様にして、親水性架橋ポリスチレン粒子の分散液を得た。
【0212】
得られた親水性架橋ポリスチレン粒子の体積平均粒子径を測定した結果、親水性架橋ポリスチレン粒子の体積平均粒子径は40nmであった。
【0213】
〔実施例1:複合粒子の製造例〕
撹拌装置を有する重合容器に、水性媒体としての水50gと、水溶性セルロース類としてのメトローズ(登録商標)65SH−4000(略称「HPMC(65SH−4000)」、信越化学工業株式会社製ヒドロキシプロピルメチルセルロース、曇点65℃)0.09gと、重合体小粒子としての上記製造例1で得られた体積平均粒子径97nmの架橋ポリメタクリル酸メチル粒子を含む分散液0.88g(架橋ポリメタクリル酸メチル粒子純分量)とを投入し、60℃の温度で6時間混合した。これにより、水溶性セルロース類が吸着した重合体小粒子を含む分散媒を得た。この分散媒を用いて重合体小粒子(架橋ポリメタクリル酸メチル粒子)に対する水溶性セルロース類の吸着量の測定を実施したところ、水溶性セルロース類の吸着率は70.3%であり、重合体小粒子(架橋ポリメタクリル酸メチル粒子)1gあたり、0.072gの水溶性セルロース類が重合体小粒子(架橋ポリメタクリル酸メチル粒子)に吸着していることが認められた。
【0214】
別途、重合性ビニル系モノマーとしてのメタクリル酸メチル(MMA)50g及びエチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)2.5gと、重合開始剤としての2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(ADVN)0.5gと、重合性リン酸系モノマーとしてのKAYAMER(登録商標)PM−21(略称「PM−21」、日本化薬株式会社製)0.2gとを均一に混合し、溶解させて、重合開始剤を含むモノマー混合物を調製した。
【0215】
この重合開始剤を含むモノマー混合物を前記重合容器内の上記分散媒に加え、さらに水100gを加えた後、ホモミキサー(SMT社製ハイフレックスディスパーサーHG−2)にて4500rpmで約5分攪拌し、上記分散媒中に上記モノマー混合物を微分散させた。
【0216】
その後、攪拌速度100rpmで攪拌を継続させ、上記モノマー混合物を加えた分散媒の温度が55℃になってから6時間懸濁重合を行った。
【0217】
次いで、攪拌しながら重合容器内の反応液を室温まで冷却した。次いで、前記反応液を、定性ろ紙101(アドバンテック東洋社製「東洋 定性ろ紙」)を用いて吸引ろ過し、イオン交換水で洗浄、続いて脱液し、その後、60℃のオーブン中で6時間乾燥させることで複合粒子を得た。
【0218】
本実施例1の製造工程で得られた複合粒子の体積平均粒子径は20.7μmで、CV値は37.0%で、比表面積は0.28m2/g、粒子流動性を示すAEは26.5kJ/kgであり、重合体小粒子としての製造例1で得られた体積平均粒子径97nmの架橋ポリメタクリル酸メチル粒子の添加量は0.060g/m2であった。
【0219】
〔実施例2:複合粒子の製造例〕
水溶性セルロース類として、メトローズ(登録商標)65SH−4000(HPMC(65SH−4000))0.09gに代えて、メトローズ(登録商標)65SH−50(略称「HPMC(65SH−50)」、信越化学工業株式会社製ヒドロキシプロピルメチルセルロース、曇点65℃)を0.09g使用したこと以外は、実施例1と同様にして複合粒子を得た。
【0220】
本実施例2の製造工程で得られた複合粒子の体積平均粒子径は18.8μmで、CV値は46.0%で、比表面積は0.31m2/g、粒子流動性を示すAEは29.1kJ/kgであり、重合体小粒子としての製造例1で得られた体積平均粒子径97nmの架橋ポリメタクリル酸メチル粒子の添加量は0.054g/m2であった。
【0221】
〔実施例3:複合粒子の製造例〕
水溶性セルロース類として、メトローズ(登録商標)65SH−4000(HPMC(65SH−4000))0.09gに代えて、メトローズ(登録商標)65SH−50(略称「HPMC(65SH−50)」、信越化学工業株式会社製ヒドロキシプロピルメチルセルロース、曇点65℃)を0.09g使用し、重合体小粒子として、製造例1で得られた体積平均粒子径97nmの架橋ポリメタクリル酸メチル粒子の水溶液0.88g(架橋ポリメタクリル酸メチル粒子純分量)に代えて、上記製造例3で得られた体積平均粒子径80nmの架橋ポリスチレン粒子0.64g(架橋ポリスチレン粒子純分量)を使用したこと以外は、実施例1と同様にして複合粒子を得た。
【0222】
本実施例3の製造工程で得られた複合粒子の体積平均粒子径は21.5μmで、CV値は36.8%で、比表面積は0.28m2/g、粒子流動性を示すAEは25.4kJ/kgであり、重合体小粒子としての上記製造例3で得られた体積平均粒子径80nmの架橋ポリスチレン粒子の添加量は0.044g/m2であった。
【0223】
〔実施例4:複合粒子の製造例〕
水溶性セルロース類として、メトローズ(登録商標)65SH−4000(HPMC(65SH−4000))0.09gに代えて、NISSO HPC H(日本曹達株式会社製ヒドロキシプロピルセルロース、下限臨界共溶温度45℃)0.09gを使用したこと以外は、実施例1と同様にして複合粒子を得た。
【0224】
本実施例4の製造工程で得られた複合粒子の体積平均粒子径は19.1μmで、CV値は32.6%で、比表面積は0.31m2/g、粒子流動性を示すAEは28.7kJ/kgであり、重合体小粒子としての上記製造例1で得られた体積平均粒子径97nmの架橋ポリメタクリル酸メチル粒子の添加量は0.054g/m2であった。
【0225】
〔実施例5:複合粒子の製造例〕
水溶性セルロース類として、メトローズ(登録商標)65SH−4000(HPMC(65SH−4000))0.09gに代えて、メトローズ(登録商標)65SH−400(略称「HPMC(65SH−400)」、信越化学工業株式会社製ヒドロキシプロピルメチルセルロース、曇点65℃)0.09gを使用し、モノマー混合物の調製において、重合性リン酸系モノマーとしてのKAYAMER(登録商標)PM−21(略称「PM−21」、日本化薬株式会社製)を用いなかったこと以外は、実施例1と同様にして複合粒子を得た。
【0226】
本実施例5の製造工程で得られた複合粒子の体積平均粒子径は21.2μmで、CV値は34.2%で、比表面積は0.28m2/g、粒子流動性を示すAEは25.8kJ/kgであり、重合体小粒子としての上記製造例1で得られた体積平均粒子径97nmの架橋ポリメタクリル酸メチル粒子の添加量は0.060g/m2であった。
【0227】
〔実施例6:複合粒子の製造例〕
重合体小粒子として、上記製造例1で得られた体積平均粒子径97nmの架橋ポリメタクリル酸メチル粒子を含む分散液0.88g(架橋ポリメタクリル酸メチル粒子純分量)に代えて、上記製造例3で得られた体積平均粒子径80nmの架橋ポリスチレン粒子0.64g(架橋ポリスチレン粒子純分量)を使用し、水溶性セルロース類として、メトローズ(登録商標)65SH−4000(HPMC(65SH−4000))0.09gに代えて、メトローズ(登録商標)65SH−400(略称「HPMC(65SH−400)」、信越化学工業株式会社製ヒドロキシプロピルメチルセルロース、曇点65℃)0.09gを使用し、モノマー混合物の調製において、重合性リン酸系モノマーとしてのKAYAMER(登録商標)PM−21(略称「PM−21」、日本化薬株式会社製)を用いなかったこと以外は、実施例1と同様にして複合粒子を得た。
【0228】
本実施例6の製造工程で得られた複合粒子の体積平均粒子径は22.3μmで、CV値は37.5%で、比表面積は0.26m2/g、粒子流動性を示すAEは24.3kJ/kgであり、重合体小粒子としての上記製造例3で得られた体積平均粒子径80nmの架橋ポリスチレン粒子の添加量は0.047g/m2であった。
【0229】
〔実施例7:複合粒子の製造例〕
水溶性セルロース類として、メトローズ(登録商標)65SH−4000(HPMC(65SH−4000))0.09gに代えて、メトローズ(登録商標)65SH−400(略称「HPMC(65SH−400)」、信越化学工業株式会社製ヒドロキシプロピルメチルセルロース、曇点65℃)0.09gを使用したこと以外は、実施例1と同様にして複合粒子を得た。
【0230】
本実施例7の製造工程で得られた複合粒子の体積平均粒子径は21.2μmで、CV値は48.8%で、比表面積は0.28m2/g、粒子流動性を示すAEは25.8kJ/kgであり、上記製造例1で得られた体積平均粒子径97nmの架橋ポリメタクリル酸メチル粒子の添加量は0.060g/m2であった。
【0231】
〔実施例8:複合粒子の製造例〕
重合体小粒子として、上記製造例1で得られた体積平均粒子径97nmの架橋ポリメタクリル酸メチル粒子を含む分散液0.88g(架橋ポリメタクリル酸メチル粒子純分量)に代えて、上記製造例2で得られた体積平均粒子径40nmの架橋ポリメタクリル酸メチル粒子を含む分散液0.36g(架橋ポリメタクリル酸メチル粒子純分量)を使用し、ホモミキサー(SMT社製ハイフレックスディスパーサーHG−2)の回転数4500rpmを5500rpmに変更したこと以外は、実施例1と同様にして複合粒子を得た。
【0232】
本実施例8の製造工程で得られた水溶性セルロース類が吸着した重合体小粒子(架橋ポリメタクリル酸メチル粒子)を含む分散媒において、水溶性セルロース類の吸着率は82.0%であり、重合体小粒子(架橋ポリメタクリル酸メチル粒子)に対する水溶性セルロース類の吸着量は、重合体小粒子(架橋ポリメタクリル酸メチル粒子)1gあたり0.205gであった。また、本実施例8の製造工程で得られた複合粒子の体積平均粒子径は16.2μmで、CV値は36.6%で、比表面積は0.36m2/g、粒子流動性を示すAEは32.6kJ/kgであり、上記製造例2で得られた体積平均粒子径40nmの架橋ポリメタクリル酸メチル粒子の添加量は0.019g/m2であった。
【0233】
〔実施例9:複合粒子の製造例〕
水溶性セルロース類として、メトローズ(登録商標)65SH−4000(HPMC(65SH−4000))0.09gに代えて、メトローズ(登録商標)65SH−50(略称「HPMC(65SH−50)」、信越化学工業株式会社製ヒドロキシプロピルメチルセルロース、曇点65℃)を0.09g使用し、重合性ビニル系モノマーとして、メタクリル酸メチル(MMA)50g及びエチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)2.5gに代えて、スチレン(St)50g及びエチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)2.5gを使用し、上記製造例1で得られた体積平均粒子径97nmの架橋ポリメタクリル酸メチル粒子を含む分散液0.88g(架橋ポリメタクリル酸メチル粒子純分量)に代えて、上記製造例2で得られた体積平均粒子径40nmの架橋ポリメタクリル酸メチル粒子を含む分散液0.41g(架橋ポリメタクリル酸メチル粒子純分量)を使用したこと以外は、実施例1と同様にして複合粒子を得た。
【0234】
本実施例9の製造工程で得られた複合粒子の体積平均粒子径は20.2μmで、CV値は40.7%で、比表面積は0.29m2/g、粒子流動性を示すAEは27.2kJ/kgであり、重合体小粒子としての上記製造例2で得られた体積平均粒子径40nmの架橋ポリメタクリル酸メチル粒子の添加量は0.027g/m2であった。
【0235】
〔実施例10:複合粒子の製造例〕
重合体小粒子として、上記製造例1で得られた体積平均粒子径97nmの架橋ポリメタクリル酸メチル粒子を含む分散液0.88g(架橋ポリメタクリル酸メチル粒子純分量)に代えて、上記製造例4で得られた体積平均粒子径39nmの架橋ポリスチレン粒子を含む分散液0.35g(架橋ポリスチレン粒子純分量)を使用し、重合性ビニル系モノマーとして、メタクリル酸メチル(MMA)50g及びエチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)2.5gに代えて、スチレン(St)50g及びエチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)2.5gを使用したこと以外は、実施例1と同様にして複合粒子を得た。
【0236】
本実施例10の製造工程で得られた複合粒子の体積平均粒子径は20.9μmで、CV値は33.8%で、比表面積は0.28m2/g、粒子流動性を示すAEは26.2kJ/kgであり、重合体小粒子としての上記製造例4で得られた体積平均粒子径39nmの架橋ポリスチレン粒子の添加量は0.024g/m2であった。
【0237】
〔実施例11:複合粒子の製造例〕
重合性ビニル系モノマーとして、メタクリル酸メチル(MMA)50g及びエチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)2.5gに代えて、メタクリル酸メチル(MMA)50g及びトリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)2.5gを使用し、重合開始剤として、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(ADVN)0.5gに代えて、ラウロイルパーオキサイド(LPO)を0.5g使用したこと以外は、実施例1と同様にして複合粒子を得た。
【0238】
本実施例11の製造工程で得られた水溶性セルロース類が吸着した重合体小粒子(架橋ポリメタクリル酸メチル粒子)を含む分散媒において、水溶性セルロース類の吸着率は、70.3%であり、重合体小粒子(架橋ポリメタクリル酸メチル粒子)に対する水溶性セルロース類の吸着量は、重合体小粒子(架橋ポリメタクリル酸メチル粒子)1gあたり0.072gであった。また、本実施例11の製造工程で得られた複合粒子の体積平均粒子径は17.3μmで、CV値は42.6%で、比表面積は0.34m2/g、粒子流動性を示すAEは31.1kJ/kgであり、重合体小粒子としての上記製造例1で得られた体積平均粒子径97nmの架橋ポリメタクリル酸メチル粒子の添加量は0.049g/m2であった。
【0239】
〔実施例12:複合粒子の製造例〕
重合体小粒子として、上記製造例1で得られた体積平均粒子径97nmの架橋ポリメタクリル酸メチル粒子を含む分散液0.88g(架橋ポリメタクリル酸メチル粒子純分量)に代えて、上記製造例4で得られた体積平均粒子径39nmの架橋ポリスチレン粒子を含む分散液0.31g(架橋ポリスチレン粒子純分量)を使用し、モノマー混合物の調製において、重合性リン酸系モノマーとしてのKAYAMER(登録商標)PM−21(略称「PM−21」、日本化薬株式会社製)を用いず、ホモミキサー(SMT社製ハイフレックスディスパーサーHG−2)の回転数4500rpmを5500rpmに変更したこと以外は、実施例1と同様にして複合粒子を得た。
【0240】
本実施例12の製造工程で得られた複合粒子の体積平均粒子径は14.4μmで、CV値は32.5%で、比表面積は0.41m2/g、粒子流動性を示すAEは35.0kJ/kgであり、重合体小粒子としての上記製造例4で得られた体積平均粒子径39nmの架橋ポリスチレン粒子の添加量は0.014g/m2であった。
【0241】
〔実施例13:複合粒子の製造例〕
水溶性セルロース類として、メトローズ(登録商標)65SH−4000(HPMC(65SH−4000))0.09gに代えて、メトローズ(登録商標)65SH−400(略称「HPMC(65SH−400)」、信越化学工業株式会社製ヒドロキシプロピルメチルセルロース、曇点65℃)を0.09g使用し、上記製造例1で得られた体積平均粒子径97nmの架橋ポリメタクリル酸メチル粒子を含む分散液0.88g(架橋ポリメタクリル酸メチル粒子純分量)に代えて、上記製造例2で得られた体積平均粒子径40nmの架橋ポリメタクリル酸メチル粒子を含む分散液0.36g(架橋ポリメタクリル酸メチル粒子純分量)を使用し、モノマー混合物の調製において、重合性リン酸系モノマーとしてのKAYAMER(登録商標)PM−21(略称「PM−21」、日本化薬株式会社製)0.2gに代えて、アデカリアソープ(登録商標)PP−70(略称「PP−70」、株式会社ADEKA製)0.2gを用いたこと以外は、実施例1と同様にして複合粒子を得た。
【0242】
本実施例13の製造工程で得られた複合粒子の体積平均粒子径は16.7μmで、CV値は46.6%で、比表面積は0.35m2/g、粒子流動性を示すAEは31.9kJ/kgであり、重合体小粒子としての上記製造例2で得られた体積平均粒子径40nmの架橋ポリメタクリル酸メチル粒子の添加量は0.020g/m2であった。
【0243】
〔実施例14:複合粒子の製造例〕
メトローズ(登録商標)65SH−4000(HPMC(65SH−4000))の使用量を0.36gに変更し、重合体小粒子としての上記製造例1で得られた体積平均粒子径97nmの架橋ポリメタクリル酸メチル粒子を含む分散液の使用量を、3.51g(架橋ポリメタクリル酸メチル粒子純分量)に変更し、ホモミキサー(SMT社製ハイフレックスディスパーサーHG−2)の回転数4500rpmを8000rpmに変更したこと以外は、実施例1と同様にして複合粒子を得た。
【0244】
本実施例14の製造工程で得られた複合粒子の体積平均粒子径は8.2μmで、CV値は46.0%で、比表面積は0.71m2/g、粒子流動性を示すAEは42.4kJ/kgであり、重合体小粒子としての上記製造例1で得られた体積平均粒子径97nmの架橋ポリメタクリル酸メチル粒子の添加量は0.094g/m2であった。
【0245】
〔実施例15:複合粒子の製造例〕
重合体小粒子として、上記製造例1で得られた体積平均粒子径97nmの架橋ポリメタクリル酸メチル粒子を含む分散液0.88g(架橋ポリメタクリル酸メチル粒子純分量)に代えて、上記製造例4で得られた体積平均粒子径39nmの架橋ポリスチレン粒子を含む分散液0.30g(架橋ポリスチレン粒子純分量)を使用し、ホモミキサー(SMT社製ハイフレックスディスパーサーHG−2)の回転数4500rpm及び攪拌時間5分を、それぞれ、2000rpm及び1分に変更し、懸濁重合時の撹拌速度100rpmを200rpmに変更したこと以外は、実施例1と同様にして複合粒子を得た。
【0246】
本実施例15の製造工程で得られた複合粒子の体積平均粒子径は45.6μmで、CV値は40.6%で、比表面積は0.13m2/g、粒子流動性を示すAEは13.1kJ/kgであり、重合体小粒子としての上記製造例4で得られた体積平均粒子径39nmの架橋ポリスチレン粒子の添加量は0.044g/m2であった。
【0247】
〔実施例16:複合粒子の製造例〕
重合体小粒子として、上記製造例1で得られた体積平均粒子径97nmの架橋ポリメタクリル酸メチル粒子を含む分散液0.88g(架橋ポリメタクリル酸メチル粒子純分量)に代えて、上記製造例5で得られた体積平均粒子径40nmの親水性架橋ポリスチレン粒子を含む分散液0.36g(親水性架橋ポリスチレン粒子純分量)を使用したこと以外は、実施例1と同様にして複合粒子を得た。
【0248】
本実施例16の製造工程で得られた複合粒子の体積平均粒子径は20.2μmで、CV値は36.6%で、比表面積は0.30m2/g、粒子流動性を示すAEは27.2kJ/kg、上記製造例5で得られた体積平均粒子径40nmの親水性架橋ポリスチレン粒子の添加量は0.023g/m2であった。
【0249】
〔実施例17:複合粒子の製造例〕
重合体小粒子として、上記製造例1で得られた体積平均粒子径97nmの架橋ポリメタクリル酸メチル粒子を含む分散液0.88g(架橋ポリメタクリル酸メチル粒子純分量)に代えて、上記製造例5で得られた体積平均粒子径40nmの親水性架橋ポリスチレン粒子を含む分散液2.32g(親水性架橋ポリスチレン粒子純分量)を使用し、メトローズ(登録商標)65SH−50(HPMC(65SH−50))の使用量を0.24gに変更したこと以外は、実施例2と同様にして複合粒子を得た。
【0250】
本実施例17の製造工程で得られた複合粒子の体積平均粒子径は5.5μmで、CV値は38.0%で、比表面積は1.09m2/g、粒子流動性を示すAEは43.4kJ/kg、上記製造例5で得られた体積平均粒子径40nmの親水性架橋ポリスチレン粒子の添加量は0.041g/m2であった。
【0251】
〔比較例1:複合粒子の比較製造例〕
水溶性セルロース類として、メトローズ(登録商標)65SH−4000(HPMC(65SH−4000))0.09gに代えて、メトローズ(登録商標)65SH−400(略称「HPMC(65SH−400)」、信越化学工業株式会社製ヒドロキシプロピルメチルセルロース、曇点65℃)を0.09g使用し、重合体小粒子としての上記製造例1で得られた体積平均粒子径97nmの架橋ポリメタクリル酸メチル粒子を含む分散液0.88g(架橋ポリメタクリル酸メチル粒子純分量)を使用せず、モノマー混合物の調製において、重合性リン酸系モノマーとしてのKAYAMER(登録商標)PM−21(略称「PM−21」、日本化薬株式会社製)を使用しないこと以外は、実施例1と同様にして、懸濁重合を試みたが、分散媒中におけるモノマー混合物の液滴の安定性が低く、重合体粒子を得ることができなかった。
【0252】
〔比較例2:複合粒子の比較製造例〕
重合体小粒子としての上記製造例1で得られた体積平均粒子径97nmの架橋ポリメタクリル酸メチル粒子を含む分散液0.88g(架橋ポリメタクリル酸メチル粒子純分量)を使用せず、重合性ビニル系モノマーとして、メタクリル酸メチル(MMA)50g及びエチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)2.5gに代えて、スチレン(St)50g及びエチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)2.5gを使用し、モノマー混合物の調製において、重合性リン酸系モノマーとしてのKAYAMER(登録商標)PM−21(略称「PM−21」、日本化薬株式会社製)を使用しないこと以外は、実施例1と同様にして、懸濁重合を試みたが、分散媒中におけるモノマー混合物の液滴の安定性が低く、重合体粒子を得ることができなかった。
【0253】
〔比較例3:複合粒子の比較製造例〕
水溶性セルロース類としてのメトローズ(登録商標)65SH−4000(HPMC(65SH−4000))を使用せず、モノマー混合物の調製において、重合性リン酸系モノマーとしてのKAYAMER(登録商標)PM−21(略称「PM−21」、日本化薬株式会社製)を使用しないこと以外は、実施例1と同様にして、懸濁重合を試みたが、分散媒中におけるモノマー混合物の液滴の安定性が低く、複合粒子を得ることができなかった。
【0254】
〔比較例4:複合粒子の比較製造例〕
水溶性セルロース類としてのメトローズ(登録商標)65SH−4000(HPMC(65SH−4000))を使用せず、重合体小粒子として、上記製造例1で得られた体積平均粒子径97nmの架橋ポリメタクリル酸メチル粒子を含む分散液0.88g(架橋ポリメタクリル酸メチル粒子純分量)に代えて、上記製造例3で得られた体積平均粒子径80nmの架橋ポリスチレン粒子を含む分散液0.64g(架橋ポリスチレン粒子純分量)を使用し、モノマー混合物の調製において、重合性リン酸系モノマーとしてのKAYAMER(登録商標)PM−21(略称「PM−21」、日本化薬株式会社製)を使用しないこと以外は、実施例1と同様にして、懸濁重合を試みたが、分散媒中におけるモノマー混合物の液滴の安定性が低く、複合粒子を得ることができなかった。
【0255】
〔比較例5:複合粒子の比較製造例〕
水溶性セルロース類として、メトローズ(登録商標)65SH−4000(HPMC(65SH−4000))0.09gに代えて、メトローズ(登録商標)65SH−400(略称「HPMC(65SH−400)」、信越化学工業株式会社製ヒドロキシプロピルメチルセルロース、曇点65℃)を0.09g使用し、攪拌装置を有する重合容器に水と上記製造例1で得られた体積平均粒子径97nmの架橋ポリメタクリル酸メチル粒子を含む分散液と水溶性セルロース類とを投入した後、60℃の温度で24時間混合せずに(水溶性セルロース類を重合体小粒子に吸着させるための処理を行わずに)、水溶性セルロース類及び上記製造例1で得られた体積平均粒子径97nmの架橋ポリメタクリル酸メチル粒子を含む分散媒を得たこと以外は、実施例1と同様にして複合粒子の製造を試みたが、重合中に、粒子同士が合着してしまい、複合粒子を得ることができなかった。
【0256】
〔比較例6:比較対象の重合体粒子の製造例〕
重合容器内に、水性媒体としての水150gと、分散剤としてのポリビニルアルコール(PVA)(日本合成化学工業株式会社製、商品名「ゴーセノール(登録商標)GL−05」)1.95gとを加えて、分散媒を得た。
【0257】
別途、重合性ビニル系モノマーとしてのメタクリル酸メチル(MMA)50g及びエチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)2.5gと、重合開始剤としての2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(ADVN)0.5gとを均一に混合し、溶解させて、重合開始剤を含むモノマー混合物を調製した。
【0258】
この重合開始剤を含むモノマー混合物を前記重合容器内の上記分散媒に加え、さらに水100gを加えた後、ホモミキサー(株式会社エスエムテー製、商品名「ハイフレックスディスパーサーHG92」)にて回転数(攪拌速度)6000rpmで約5分間攪拌し、上記分散媒中に上記モノマー混合物を微分散させた。その後、回転数100rpmで攪拌を継続させ、上記モノマー混合物を加えた分散媒の温度が55℃になってから6時間懸濁重合を行った。
【0259】
次いで、攪拌しながら重合容器内の反応液を室温まで冷却した。次いで、前記反応液を、定性ろ紙101(アドバンテック東洋社製「東洋 定性ろ紙」)を用いて吸引ろ過し、イオン交換水で洗浄、続いて脱液し、その後、60℃のオーブン中で6時間乾燥させることで真球状の重合体粒子を得た。
【0260】
本比較例6の製造工程で得られた重合体粒子の体積平均粒子径は20.1μmで、CV値は46.0%で、粒子流動性を示すAEは59.0kJ/kgであった。
【0261】
〔比較例7:比較対象の重合体粒子の製造例〕
ホモミキサーの回転数を6000rpmから8000rpmに変更したこと以外は、比較例6と同様にして真球状の重合体粒子を得た。
【0262】
本比較例7の製造工程で得られた重合体粒子の体積平均粒子径は8.1μmで、CV値は43.0%で、粒子流動性を示すAEは56.8kJ/kgであった。
【0263】
〔比較例8:比較対象の重合体粒子の製造例〕
ホモミキサーの回転数を6000rpmから10000rpmに変更したこと以外は、比較例6と同様にして真球状の重合体粒子を得た。
【0264】
本比較例8の製造工程で得られた重合体粒子の体積平均粒子径は5.5μmで、CV値は41.1%で、粒子流動性を示すAEは、測定装置のドラム内の粒子付着が多かったために測定することができなかった。
【0265】
実施例1〜17及び比較例1〜8について、製造に使用した各種原料の使用量、製造に使用した重合体小粒子の体積平均粒子径の測定結果、製造により得られた複合粒子又は重合体粒子の体積平均粒子径、比表面積、CV値、重合体小粒子の添加量の算出結果、及び粒子流動性を示すAEを表1〜3に示す。なお、表1〜3中、「PMMA97」は、製造例1で得られた体積平均粒子径97nmの架橋ポリメタクリル酸メチル粒子を意味し、「PMMA40」は、製造例2で得られた体積平均粒子径40nmの架橋ポリメタクリル酸メチル粒子を意味し、「PS80」は、製造例3で得られた体積平均粒子径80nmの架橋ポリスチレン粒子を意味し、「PS39」は、製造例4で得られた体積平均粒子径39nmの架橋ポリスチレン粒子を意味し、「PS40」は、製造例5で得られた体積平均粒子径40nmの親水性架橋ポリスチレン粒子を意味する。
【0266】
【表1】
【0267】
【表2】
【0268】
【表3】
【0269】
表1〜3に示すように、本発明の実施例1〜17の製造方法によれば、水溶性セルロース類が吸着した重合体小粒子の存在により、重合性ビニル系モノマーを含むモノマー混合物の液滴を、水性媒体中に安定して分散させることができ、粒子径の揃った(CV値が50%以下の)複合粒子を得ることができることが認められた。
【0270】
また、図1に示す実施例12の複合粒子の透過型電子顕微鏡(TEM)画像及び図2に示す実施例9の複合粒子の透過型電子顕微鏡(TEM)画像より、本願発明の実施例1〜17の製造方法により得られた複合粒子は、上記重合体大粒子の表面に、重合体小粒子が付着した複合粒子であると認められた。また、図1及び図2のTEM画像より、実施例12の製造方法により得られた複合粒子は、上記重合体大粒子の表面の一部が複数個の前記重合体小粒子からなる層で被覆された複合粒子である一方、実施例9の製造方法により得られた複合粒子は、上記重合体大粒子の表面の全体が複数個の前記重合体小粒子からなる層で被覆された複合粒子であると認められた。
【0271】
なお、実施例12の複合粒子について、図1に示すTEM画像より確認される重合体小粒子のうち、ランダムに選定した10個の重合体小粒子について、当該TEM画像より粒子径を求め、これら10個の重合体小粒子の粒子径の平均値を求めた結果、図1に示すTEM画像に基づき測定される実施例12の複合粒子における重合体小粒子の粒子径の平均値は、44.1nmであり、この粒子径の平均値は、実施例12の複合粒子の製造に用いた製造例4の重合体小粒子(架橋ポリメタクリル酸メチル粒子)の体積平均粒子径39nmに対して、1割程度大きかった。同様に、実施例9の複合粒子について、図2に示すTEM画像に基づき、10個の重合体小粒子の粒子径の平均値を求めた結果、図2に示すTEM画像に基づき測定される実施例9の複合粒子における重合体小粒子の粒子径の平均値は、43.7nmであり、この粒子径の平均値は、実施例9の複合粒子の製造に用いた製造例2の重合体小粒子(架橋ポリスチレン粒子)の体積平均粒子径40nmに対して、1割程度大きかった。これらのことから、製造例1〜5の重合体小粒子(体積平均粒子径が39〜97nmの重合体小粒子)を用いて製造された複合粒子についてTEM画像に基づき決定される重合体小粒子の粒子径は、39〜110nm程度であると推測される。よって、実施例1〜17の複合粒子における重合体小粒子の粒子径の範囲は、20〜500nmの範囲内にあると認められた。
【0272】
また、比較例1〜5の製造方法では、重合性ビニル系モノマーを含むモノマー混合物の液滴を水性媒体中に安定して分散させることができず、粒子を得ることができなかった。
【0273】
また、表1〜3に示すように、本発明の実施例1〜17の複合粒子は、比較例6・7の真球状の重合体粒子と比較して、粒子流動性を示すAEが向上しており10〜45kJ/kgの範囲内にあった。これは、本発明の実施例1〜17の複合粒子では、重合体小粒子が重合体大粒子の表面に付着していることで、重合体小粒子由来の凹凸が複合粒子表面に形成されているためと考えられる。
【0274】
〔実施例18:光学フィルムの製造例〕
実施例1で得られた複合粒子30gと、バインダー樹脂としてのアクリルポリオール(商品名:メジウム VM、大日精化工業株式会社製、樹脂固形分34重量%、溶剤分散系)100g、硬化剤としてイソシアネート(商品名:VM−D、大日精化工業株式会社)30gとを混合してコーティング剤を得た。この後、得られたコーティング剤を、基材としての厚み100μmのポリエステルフィルム上に、アプリケーターを用いて塗布した後、70℃で10分間熱風乾燥し、光学フィルムを得た。得られた光学フィルムの全光線透過率、ヘイズ、およびグロスを測定した。結果を以下の表4に示す。
【0275】
【表4】
【0276】
〔全光線透過率及びヘイズの測定方法〕
実施例18で得られた光学フィルムのヘイズおよび全光線透過率は、日本電色工業株式会社製のヘイズメーター「NDH−4000」を使用して測定した。全光線透過率の測定はJIS K 7361−1に、ヘイズの測定はJIS K 7136にそれぞれ従って実施した。なお、表4に示すヘイズおよび全光線透過率は、3個の測定サンプルの測定値の平均値である(測定サンプル数n=3)。ヘイズの値は、光学フィルムを透過した光(透過光)の拡散性が高い程、高くなる。
【0277】
〔グロスの測定方法〕
実施例18で得られた光学フィルムのグロスは、株式会社堀場製作所製のグロスチェッカ(光沢計)「IG−331」を使用して、測定した。具体的には、JIS Z8741に記載の方法に準拠して、上記グロスチェッカ(光沢計)「IG−331」により、光学フィルムの60°でのグロスを測定した。グロスの値は、光学フィルムの表面(具体的には、コーティング剤が塗工されて形成された塗膜表面)で反射した光の拡散性が高い程、低くなり、艶消し性がよいことを意味する。
【0278】
〔実施例19:外用剤(ボディーローション)の製造例〕
実施例2で得られた複合粒子3重量部と、エタノール50重量部と、グリチルリチン酸0.1重量部と、香料0.5重量部と、精製水46.4重量部とをミキサーにて十分混合し、ボディローションを得た。
【0279】
本発明は、その精神または主要な特徴から逸脱することなく、他のいろいろな形で実施することができる。そのため、上述の実施例はあらゆる点で単なる例示にすぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、なんら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【0280】
また、この出願は、2014年4月25日に日本で出願された特願2014−091668に基づく優先権を請求する。これに言及することにより、その全ての内容は本出願に組み込まれるものである。
【産業上の利用可能性】
【0281】
本発明の複合粒子は、例えば、塗料、紙用コーティング剤、情報記録紙用コーティング剤、又は光学フィルム等の光学部材用コーティング剤等として用いられるコーティング剤(塗布用組成物)の添加剤(艶消し剤、塗膜軟質化剤、意匠性付与剤等);光拡散体(照明カバー、光拡散板、光拡散フィルム等)を製造するための光拡散性樹脂組成物に配合される光拡散剤;食品包装用フィルム等のフィルムのブロッキング防止剤;化粧品等の外用剤用の添加剤(滑り性向上、又は、シミやシワ等の肌の欠点補正のための添加剤)等のような外用剤の原料として、利用可能である。
図1
図2