特許第6661724号(P6661724)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6661724反射型マスクブランク、反射型マスク及びその製造方法、並びに半導体装置の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6661724
(24)【登録日】2020年2月14日
(45)【発行日】2020年3月11日
(54)【発明の名称】反射型マスクブランク、反射型マスク及びその製造方法、並びに半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 1/24 20120101AFI20200227BHJP
   G02B 5/26 20060101ALI20200227BHJP
   G02B 5/28 20060101ALI20200227BHJP
   G02B 5/22 20060101ALI20200227BHJP
   G02B 5/30 20060101ALI20200227BHJP
   G02B 5/08 20060101ALI20200227BHJP
【FI】
   G03F1/24
   G02B5/26
   G02B5/28
   G02B5/22
   G02B5/30
   G02B5/08 A
【請求項の数】14
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2018-177262(P2018-177262)
(22)【出願日】2018年9月21日
(62)【分割の表示】特願2014-108772(P2014-108772)の分割
【原出願日】2014年5月27日
(65)【公開番号】特開2019-49720(P2019-49720A)
(43)【公開日】2019年3月28日
【審査請求日】2018年10月18日
(31)【優先権主張番号】特願2013-115201(P2013-115201)
(32)【優先日】2013年5月31日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000113263
【氏名又は名称】HOYA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113343
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 武史
(72)【発明者】
【氏名】池邊 洋平
(72)【発明者】
【氏名】尾上 貴弘
【審査官】 植木 隆和
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−179553(JP,A)
【文献】 特開平01−187818(JP,A)
【文献】 特開平07−240364(JP,A)
【文献】 特開平01−175736(JP,A)
【文献】 特開2002−280291(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
G03F 7/20
G03F 1/00〜1/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上にEUV光を反射する多層反射膜と、保護膜と、吸収体膜とをこの順に備える反射型マスクブランクであって、
前記吸収体膜は、高屈折率材料層と低屈折率材料層とを交互に積層してなる積層膜で構成されており、
前記高屈折率材料層は、Si、Al、Cu、Zn、Te、Ge、Mg、Hf及びZrから選ばれる少なくとも1種の金属、若しくは該金属を含む合金、並びに前記金属又は合金の酸化物、窒化物、炭化物、酸化窒化物、酸化炭化物、窒化炭化物、酸化窒化炭化物、硼化物、硼化酸化物、硼化窒化物又は硼化酸化窒化物を含む材料からなり、
前記低屈折率材料層は、Ta、Cr、Ag、Pd、W、Fe、Pt、Au、Co、Ir、Ni及びSnから選ばれる少なくとも1種の金属、若しくは該金属を含む合金、並びに前記金属又は合金の酸化物、窒化物、炭化物、酸化窒化物、酸化炭化物、窒化炭化物、酸化窒化炭化物、ホウ化物、ホウ化酸化物、ホウ化窒化物又はホウ化酸化窒化物を含む材料からなり、
前記吸収体膜に対するEUV光の反射率が2%以下であることを特徴とする反射型マスクブランク。
【請求項2】
前記積層膜は、前記高屈折率材料層と前記低屈折率材料層との積層構造を1周期とした場合、2周期以上であることを特徴とする請求項1に記載の反射型マスクブランク。
【請求項3】
前記吸収体膜は、位相制御層をさらに備え、該位相制御層の上に、前記積層膜の前記高屈折率材料層及び前記低屈折率材料層がこの順に設けられることを特徴とする請求項1又は2に記載に記載の反射型マスクブランク。
【請求項4】
前記位相制御層は、Ta、Cr、Ag、Pd、W、Fe、Pt、Au、Co、Ir、Ni及びSnから選ばれる少なくとも1種の金属、若しくは該金属を含む合金、並びに前記金属又は合金の酸化物、窒化物、炭化物、酸化窒化物、酸化炭化物、窒化炭化物、酸化窒化炭化物、ホウ化物、ホウ化酸化物、ホウ化窒化物又はホウ化酸化窒化物を含む材料からなることを特徴とする請求項に記載に記載の反射型マスクブランク。
【請求項5】
前記位相制御層と前記低屈折率材料層とが同一の材料からなることを特徴とする請求項又はに記載に記載の反射型マスクブランク。
【請求項6】
前記位相制御層は、前記反射型マスクブランクに入射し、前記多層反射膜を構成する低屈折率層と高屈折率層との交互積層膜の前記低屈折率層と前記高屈折率層の各界面での反射、及び、前記保護膜表面での反射による反射光(A)と、前記吸収体膜を構成する前記位相制御層、前記高屈折率材料層及び前記低屈折率材料層との各界面での反射による反射光(B)との位相が、180°±10°異なるように膜厚が設定されていることを特徴とする請求項乃至のいずれか一項に記載の反射型マスクブランク。
【請求項7】
請求項1乃至のいずれか一項に記載の反射型マスクブランクにおける前記吸収体膜をパターニングすることを特徴とする反射型マスクの製造方法。
【請求項8】
基板上にEUV光を反射する多層反射膜と、保護膜と、吸収体膜からなる転写パターンとをこの順に備える反射型マスクであって、
前記吸収体膜は、高屈折率材料層と低屈折率材料層とを交互に積層してなる積層膜で構成されており、
前記高屈折率材料層は、Si、Al、Cu、Zn、Te、Ge、Mg、Hf及びZrから選ばれる少なくとも1種の金属、若しくは該金属を含む合金、並びに前記金属又は合金の酸化物、窒化物、炭化物、酸化窒化物、酸化炭化物、窒化炭化物、酸化窒化炭化物、硼化物、硼化酸化物、硼化窒化物又は硼化酸化窒化物を含む材料からなり、
前記低屈折率材料層は、Ta、Cr、Ag、Pd、W、Fe、Pt、Au、Co、Ir、Ni及びSnから選ばれる少なくとも1種の金属、若しくは該金属を含む合金、並びに前記金属又は合金の酸化物、窒化物、炭化物、酸化窒化物、酸化炭化物、窒化炭化物、酸化窒化炭化物、ホウ化物、ホウ化酸化物、ホウ化窒化物又はホウ化酸化窒化物を含む材料からなり、
前記吸収体膜に対するEUV光の反射率が2%以下であることを特徴とする反射型マスク。
【請求項9】
前記積層膜は、前記高屈折率材料層と前記低屈折率材料層との積層構造を1周期とした場合、2周期以上であることを特徴とする請求項に記載の反射型マスク。
【請求項10】
前記吸収体膜は、位相制御層をさらに備え、該位相制御層の上に、前記積層膜の前記高屈折率材料層及び前記低屈折率材料層がこの順に設けられることを特徴とする請求項8又は9に記載に記載の反射型マスク。
【請求項11】
前記位相制御層は、Ta、Cr、Ag、Pd、W、Fe、Pt、Au、Co、Ir、Ni及びSnから選ばれる少なくとも1種の金属、若しくは該金属を含む合金、並びに前記金属又は合金の酸化物、窒化物、炭化物、酸化窒化物、酸化炭化物、窒化炭化物、酸化窒化炭化物、ホウ化物、ホウ化酸化物、ホウ化窒化物又はホウ化酸化窒化物を含む材料からなることを特徴とする請求項10に記載に記載の反射型マスク。
【請求項12】
前記位相制御層と前記低屈折率材料層とが同一の材料からなることを特徴とする請求項10又は11に記載に記載の反射型マスク。
【請求項13】
前記位相制御層は、前記反射型マスクに入射し、前記多層反射膜を構成する低屈折率層と高屈折率層との交互積層膜の前記低屈折率層と前記高屈折率層の各界面での反射、及び、前記保護膜表面での反射による反射光(A)と、前記吸収体膜を構成する前記位相制御層、前記高屈折率材料層及び前記低屈折率材料層との各界面での反射による反射光(B)との位相が、180°±10°異なるように膜厚が設定されていることを特徴とする請求項10乃至12のいずれか一項に記載の反射型マスク。
【請求項14】
請求項に記載の製造方法により得られる反射型マスク、もしくは、請求項乃至13のいずれか一項に記載の反射型マスクを用いて半導体基板上にパターン形成する工程を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置製造等に使用される露光用マスクを製造するための原版である反射型マスクブランク、反射型マスク及びその製造方法、並びに半導体装置の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年における超LSIデバイスの高密度化、高精度化の更なる要求に伴い、極紫外(ExtremeUltraviolet:以下、「EUV」と略称する。)光を用いた露光技術であるEUVリソグラフィが有望視されている。ここで、EUV光とは、軟X線領域又は真空紫外線領域の波長帯の光を指し、具体的には波長が0.2〜100nm程度の光のことである。
【0003】
このような反射型マスクは、基板上に露光光を反射する多層反射膜が形成され、該多層反射膜上に露光光を吸収する吸収体膜がパターン状に形成されたものである。露光機(パターン転写装置)に搭載された反射型マスクに入射した光は、吸収体膜のある部分では吸収され、吸収体膜のない部分では多層反射膜により反射された光像が反射光学系を通して半導体基板上に転写される。
【0004】
このような反射型マスクを用いて半導体デバイスの高密度化、高精度化を達成するためには、反射型マスクにおける反射領域(多層反射膜の表面)が露光光であるEUV光に対して高反射率を備え、露光光を吸収する吸収体膜パターンとの間で高いコントラストの得られることが必要とされる。
上記多層反射膜は、屈折率の異なる元素が周期的に積層された多層膜であり、一般的には、重元素又はその化合物の薄膜と、軽元素又はその化合物の薄膜とが交互に40〜60周期程度積層された多層膜が用いられる。例えば、波長13〜14nmのEUV光に対する多層反射膜としては、Mo膜とSi膜を交互に40周期程度積層したMo/Si周期積層膜が好ましく用いられる。
【0005】
このEUVリソグラフィにおいて用いられる反射型マスクを製造するための原版である反射型マスクブランクとしては、たとえば下記特許文献1に記載されたEUVリソグラフィ用反射型マスクブランクが提案されている。
すなわち、特許文献1には、基板上に、EUV光を反射する反射層と、EUV光を吸収する吸収体層とがこの順に形成され、当該吸収体層が、タンタル(Ta)、ホウ素(B)、ケイ素(Si)および窒素(N)を所定の含有比率で含有するEUVリソグラフィ用反射型マスクブランクが開示されている。また、特許文献1には、上記吸収体層上に、マスクパターンの検査に使用する検査光における低反射層が形成され、当該低反射層が、タンタル(Ta)、ホウ素(B)、ケイ素(Si)および酸素(O)を所定の含有比率で含有するEUVリソグラフィ用反射型マスクブランクについても開示されている。
【0006】
また、下記特許文献2には、光学定数の異なる少なくとも2種類の物質を所定の膜厚で交互に積層した多層反射膜からなる反射面上に、光学定数の異なる少なくとも2種類の物質を上記多層反射膜における所定の膜厚とは異なる膜厚で交互に積層した多層反射防止膜をパターン状に形成した非反射部を設けた反射型マスクが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第4867695号公報
【特許文献2】特許第2545905号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述したような特許文献1に開示された従来の反射型マスクブランク及びこの反射型マスクブランクより製造される反射型マスクにおいては、吸収体層の膜厚は、露光光であるEUV光を十分に吸収できる厚みとする必要があり、通常は60nmを超える厚みが必要であった。また、吸収体層と低反射層との積層構成とする場合においては、さらに厚い70nm以上としていた。
【0009】
しかし、反射型マスクに対して所定の角度(入射角6度程度)で露光光を入射させる露光装置においては、上記のように60nmを超える厚みの吸収体層のパターンが形成されていると、反射領域が吸収体層パターンにより影となる(シャドウイング)領域が生じ、反射領域により反射された像とパターニングの像が一致せず、転写パターンの精度が劣化するという重大な問題が発生する。また、幅の狭い(例えば20nm以下)吸収体パターンの形成においては、アスペクト比が高くなりパターンの脆化、倒れによる欠損が生じる可能性がある。
【0010】
一方、上記特許文献2に開示された多層膜の非反射部を有する反射型マスクにおいては、非反射部での露光光反射率をせいぜい3%程度までしか抑えることはできない。EUVリソグラフィにおいて高精度のパターン転写を行うためには、非反射部での露光光反射率を例えば2%以下に抑える必要があり、上記特許文献2に開示された反射型マスクでは実現が困難である。また、上記特許文献2に開示された反射型マスクを製造するためには、所定の多層反射膜からなる反射面上にレジストパターンを形成してから、多層膜の非反射部を成膜し、最後に上記レジストパターンを剥離するため、高精細なマスクパターンを形成することが困難である上に、非反射部の多層膜中にプロセス欠陥が生じやすい。
【0011】
そこで本発明の目的は、第1に、吸収体膜に対するEUV光の反射率を2%以下に抑えることができる反射型マスクブランク及び反射型マスクを提供することであり、第2に、従来よりも薄い吸収体膜の膜厚でEUV光に対する低い反射率を得ることができる反射型マスクブランク及び反射型マスクを提供することであり、第3に、このような反射型マスクブランクを用いた反射型マスクの製造方法、及び半導体装置の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意研究した結果、以下の構成を有する本発明を完成したものである。
(構成1)
基板上にEUV光を反射する多層反射膜と、前記多層反射膜上に該多層反射膜を保護するためのエッチング防止機能を有する保護膜と、該保護膜上に吸収体膜とを備える反射型マスクブランクであって、前記多層反射膜は、前記基板上に、低屈折率層と高屈折率層を積層した積層構造を1周期として複数周期積層した構成のものであり、前記吸収体膜は、位相制御層と、該位相制御層上に、高屈折率材料層と低屈折率材料層とを交互に積層した積層膜とで構成されており、前記反射型マスクブランクに入射し、前記多層反射膜を構成する前記低屈折率層と前記高屈折率層の各界面での反射、及び、前記保護膜表面での反射による反射光(A)と、前記吸収体膜を構成する前記位相制御層、前記高屈折率材料層、及び前記低屈折率材料層との各界面での反射による反射光(B)の位相が異なることにより、前記吸収体膜に対するEUV光の反射率が2%以下となるように、前記位相制御層の膜厚が設定されていることを特徴とする反射型マスクブランク。
【0013】
上記構成1にあるように、本発明の反射型マスクブランクは、基板上にEUV光を反射する多層反射膜と、前記多層反射膜上に該多層反射膜を保護するためのエッチング防止機能を有する保護膜と、該保護膜上に吸収体膜とを備える反射型マスクブランクであって、前記多層反射膜は、前記基板上に、低屈折率層と高屈折率層を積層した積層構造を1周期として複数周期積層した構成のものであり、前記吸収体膜は、位相制御層と、該位相制御層上に、高屈折率材料層と低屈折率材料層とを交互に積層した積層膜とで構成されており、前記反射型マスクブランクに入射し、前記多層反射膜を構成する前記低屈折率層と前記高屈折率層の各界面での反射、および、前記保護膜表面での反射による反射光(A)と、前記吸収体を構成する前記位相制御層、前記高屈折率材料層、及び前記低屈折率材料層との各界面での反射による反射光(B)の位相が異なることにより、前記吸収体膜に対するEUV光の反射率が2%以下となるように、前記位相制御層の膜厚が設定されていることにより、吸収体膜に対するEUV光の反射率を2%以下に抑えることができ、反射領域とのコントラストを高めて、本発明の反射型マスクブランクを用いて製造される反射型マスクを使用して高精細なパターン転写を実現することができる。
また、構成1によれば、従来よりも薄い吸収体膜の膜厚でEUV光に対する低い反射率(例えば2%以下)が得られるので、吸収体膜を従来よりも薄膜化することができ、従来のシャドウイングや高アスペクト比による種々の問題点を解消することができる。
【0014】
(構成2)
前記位相制御層は、前記反射型マスクブランクに入射し、前記反射光(A)と、前記反射光(B)との位相が、180°±10°異なるように膜厚が設定されていることを特徴とする構成1に記載の反射型マスクブランク。
上記構成2にあるように、前記位相制御層は、前記反射型マスクブランクに入射し、前記反射光(A)と、前記反射光(B)との位相が、180°±10°異なるように膜厚が設定されていることにより、吸収体膜を透過し多層反射膜からの反射光を、これと逆位相の吸収体膜からの反射光で打ち消し、EUV光吸収領域での反射光を抑制することができるので、結果的に、吸収体膜に対するEUV光の反射率を2%以下に抑えることができ、しかも従来よりも薄い吸収体膜の膜厚でEUV光に対する低い反射率を得ることができる。
【0015】
(構成3)
前記位相制御層は、波長13.5nmにおける消衰係数kが0.03以上の材料とすることを特徴とする構成1又は2に記載の反射型マスクブランク。
本発明においては、上述の吸収体膜のEUV光反射率を2%以下に抑え、かつ吸収体膜を従来よりも薄膜化する観点からは、前記位相制御層は、消衰係数kが0.03以上の材料を選択することが好ましい。
【0016】
(構成4)
前記吸収体膜を構成する前記低屈折率材料層は、波長13.5nmにおける屈折率n(low)は0.95以下、消衰係数k(low)は0.03以上であり、前記吸収体膜を構成する前記高屈折率材料層は、波長13.5nmにおける屈折率n(high)は、
n(high)≧1.46×n(low) −0.41
で示される条件を満たすことを特徴とする構成1乃至3のいずれかに記載の反射型マスクブランク。
本発明においては、上述の吸収体膜のEUV光反射率を2%以下に抑え、かつ吸収体膜を従来よりも薄膜化する観点からは、前記吸収体膜を構成する低屈折率材料層及び高屈折率材料層は、各々の屈折率と消衰係数が上記構成4の条件を満たすことが好ましい。
【0017】
(構成5)
基板上にEUV光を反射する多層反射膜と、前記多層反射膜上に該多層反射膜を保護するためのエッチング防止機能を有する保護膜と、該保護膜上に吸収体膜とを備える反射型マスクブランクであって、前記多層反射膜は、前記基板上に、低屈折率層と高屈折率層を積層した積層構造を1周期として複数周期積層した構成のものであり、前記吸収体膜は、位相制御層と、該位相制御層上に、高屈折率材料層と低屈折率材料層とを交互に積層してなる積層膜とで構成され、かつ前記吸収体膜の膜厚は60nm以下であり、前記位相制御層は、波長13.5nmにおける消衰係数kが0.03以上の材料であって、前記低屈折率材料層は、波長13.5nmにおける屈折率n(low)は0.95以下、消衰係数k(low)は0.03以上であり、前記吸収体膜を構成する前記高屈折率材料層は、波長13.5nmにおける屈折率n(high)は、
n(high)≧1.46×n(low) −0.41
で示される条件を満たす材料であって、前記吸収体膜に対するEUV光の反射率が所定の反射率以下になるように、前記位相制御層の膜厚が設定されていることを特徴とする反射型マスクブランク。
【0018】
上記構成5にあるように、本発明の反射型マスクブランクは、基板上にEUV光を反射する多層反射膜と、前記多層反射膜上に該多層反射膜を保護するためのエッチング防止機能を有する保護膜と、該保護膜上に吸収体膜とを備える反射型マスクブランクであって、前記多層反射膜は、前記基板上に、低屈折率層と高屈折率層を積層した積層構造を1周期として複数周期積層した構成のものであり、前記吸収体膜は、位相制御層と、該位相制御層上に、高屈折率材料層と低屈折率材料層とを交互に積層してなる積層膜とで構成され、かつ前記吸収体膜の膜厚は60nm以下であり、前記位相制御層は、波長13.5nmにおける消衰係数kが0.03以上の材料であって、前記低屈折率材料層は、波長13.5nmにおける屈折率n(low)は0.95以下、消衰係数k(low)は0.03以上であり、前記吸収体膜を構成する前記高屈折率材料層は、波長13.5nmにおける屈折率n(high)は、
n(high)≧1.46×n(low) −0.41
で示される条件を満たす材料であって、前記吸収体膜に対するEUV光の反射率が所定の反射率以下になるように、前記位相制御層の膜厚が設定されているので、従来よりも薄い吸収体膜の膜厚(60nm以下)でEUV光に対する低い反射率(例えば、2%以下)が得られるので、吸収体膜を従来よりも薄膜化することができ、従来のシャドウイングや高アスペクト比による種々の問題点を解消することができる反射型マスクブランクが得られる。
【0019】
(構成6)
前記位相制御層は、前記吸収体膜に対するEUV光の反射率が2%以下となるように膜厚が設定されていることを特徴とする構成5に記載の反射型マスクブランク。
上記構成6にあるように、前記位相制御層の膜厚が、前記吸収体膜に対するEUV光の反射率が2%以下となるように設定されていることにより、吸収体膜に対するEUV光の反射率を2%以下に抑えることができ、反射領域とのコントラストを高めて、本発明の反射型マスクブランクを用いて製造される反射型マスクを使用して高精細なパターン転写を実現することができる。
【0020】
(構成7)
構成1乃至6のいずれかに記載の反射型マスクブランクにおける前記吸収体膜をパターニングすることを特徴とする反射型マスクの製造方法。
上記構成7にあるように、本発明の反射型マスクブランクを用いて反射型マスクを製造することにより、吸収体膜に対するEUV光の反射率を2%以下に抑えることができ、従来よりも薄い吸収体膜の膜厚でEUV光に対する低い反射率が得られる反射型マスクが得られる。
【0021】
(構成8)
基板上にEUV光を反射する多層反射膜と、前記多層反射膜上に該多層反射膜を保護するためのエッチング防止機能を有する保護膜と、該保護膜上に吸収体膜からなる転写パターンとを備える反射型マスクであって、前記多層反射膜は、前記基板上に、低屈折率層と高屈折率層を積層した積層構造を1周期として複数周期積層した構成のものであり、前記吸収体膜は、位相制御層と、該位相制御層上に、高屈折率材料層と低屈折率材料層とを交互に積層した積層膜とで構成されており、前記反射型マスクに入射し、前記多層反射膜を構成する前記低屈折率層と前記高屈折率層の各界面での反射、および、前記保護膜表面での反射による反射光(A)と、前記吸収体を構成する前記位相制御層、前記高屈折率材料層、及び前記低屈折率材料層との各界面での反射による反射光(B)の位相が異なることにより、前記吸収体膜に対するEUV光の反射率が2%以下となるように、前記位相制御層の膜厚が設定されていることを特徴とする反射型マスク。
【0022】
上記構成8にあるように、本発明の反射型マスクは、基板上にEUV光を反射する多層反射膜と、前記多層反射膜上に該多層反射膜を保護するためのエッチング防止機能を有する保護膜と、該保護膜上に吸収体膜からなる転写パターンとを備える反射型マスクであって、前記多層反射膜は、前記基板上に、低屈折率層と高屈折率層を積層した積層構造を1周期として複数周期積層した構成のものであり、前記吸収体膜は、位相制御層と、該位相制御層上に、高屈折率材料層と低屈折率材料層とを交互に積層した積層膜とで構成されており、前記反射型マスクに入射し、前記多層反射膜を構成する前記低屈折率層と前記高屈折率層の各界面での反射、および、前記保護膜表面での反射による反射光(A)と、前記吸収体を構成する前記位相制御層、前記高屈折率材料層、及び前記低屈折率材料層との各界面での反射による反射光(B)の位相が異なることにより、前記吸収体膜に対するEUV光の反射率が2%以下となるように、前記位相制御の膜厚が設定されていることにより、吸収体膜に対するEUV光の反射率を2%以下に抑えることができ、反射領域とのコントラストを高めて、本発明の反射型マスクを使用して高精細なパターン転写を実現することができる。
また、構成8によれば、本発明の反射型マスクは、従来よりも薄い吸収体膜の膜厚でEUV光に対する低い反射率(例えば2%以下)が得られるので、吸収体膜を従来よりも薄膜化することができ、従来のシャドウイングや高アスペクト比による種々の問題点を解消することができる。
【0023】
(構成9)
前記位相制御層は、前記反射型マスクに入射し、前記反射光(A)と、前記反射光(B)との位相が、180°±10°異なるように膜厚が設定されていることを特徴とする構成8に記載の反射型マスク。
上記構成9にあるように、前記位相制御層は、前記反射型マスクに入射し、前記反射光(A)と、前記反射光(B)との位相が、180°±10°異なるように膜厚が設定されていることにより、吸収体膜を透過し多層反射膜からの反射光を、これと逆位相の吸収体膜からの反射光で打ち消し、EUV光吸収領域での反射光を抑制することができるので、結果的に、吸収体膜に対するEUV光の反射率を2%以下に抑えることができ、しかも従来よりも薄い吸収体膜の膜厚でEUV光に対する低い反射率を得ることができる。
【0024】
(構成10)
基板上にEUV光を反射する多層反射膜と、前記多層反射膜上に該多層反射膜を保護するためのエッチング防止機能を有する保護膜と、該保護膜上に吸収体膜からなる転写パターンとを備える反射型マスクであって、前記多層反射膜は、前記基板上に、低屈折率層と高屈折率層を積層した積層構造を1周期として複数周期積層した構成のものであり、前記吸収体膜は、位相制御層と、該位相制御層上に、高屈折率材料層と低屈折率材料層とを交互に積層してなる積層膜とで構成され、かつ前記吸収体膜の膜厚は60nm以下であり、前記位相制御層は、波長13.5nmにおける消衰係数kが0.03以上の材料であって、前記低屈折率材料層は、波長13.5nmにおける屈折率n(low)は0.95以下、消衰係数k(low)は0.03以上であり、前記吸収体膜を構成する前記高屈折率材料層は、波長13.5nmにおける屈折率n(high)は、
n(high)≧1.46×n(low) −0.41
で示される条件を満たす材料であって、前記転写パターン形成領域におけるEUV光の反射率が、前記転写パターンが露出している反射領域におけるEUV光の反射率に対して、前記転写パターンを認識できる程度に差を有するように、前記位相制御層の膜厚が設定されていることを特徴とする反射型マスク。
【0025】
上記構成10にあるように、本発明の反射型マスクは、基板上にEUV光を反射する多層反射膜と、前記多層反射膜上に該多層反射膜を保護するためのエッチング防止機能を有する保護膜と、該保護膜上に吸収体膜からなる転写パターンとを備える反射型マスクであって、前記多層反射膜は、前記基板上に、低屈折率層と高屈折率層を積層した積層構造を1周期として複数周期積層した構成のものであり、前記吸収体膜は、位相制御層と、該位相制御層上に、高屈折率材料層と低屈折率材料層とを交互に積層してなる積層膜とで構成され、かつ前記吸収体膜の膜厚は60nm以下であり、前記位相制御層は、波長13.5nmにおける消衰係数kが0.03以上の材料であって、前記低屈折率材料層は、波長13.5nmにおける屈折率n(low)は0.95以下、消衰係数k(low)は0.03以上であり、前記吸収体膜を構成する前記高屈折率材料層は、波長13.5nmにおける屈折率n(high)は、
n(high)≧1.46×n(low) −0.41
で示される条件を満たす材料であって、前記転写パターン形成領域におけるEUV光の反射率が、前記転写パターンが露出している反射領域(すなわち前記転写パターンのない領域)におけるEUV光の反射率に対して、前記転写パターンを認識できる程度に差を有するように、前記位相制御層の膜厚が設定されているので、従来よりも薄い吸収体膜の膜厚(60nm以下)でEUV光に対する低い反射率(例えば、2%以下)が得られるので、吸収体膜を従来よりも薄膜化することができ、従来のシャドウイングや高アスペクト比による種々の問題点を解消することができる反射型マスクが得られる。
【0026】
(構成11)
前記位相制御層は、前記吸収体膜に対するEUV光の反射率が2%以下となるように膜厚が設定されていることを特徴とする構成10に記載の反射型マスク。
上記構成11にあるように、前記位相制御層の膜厚が、前記吸収体膜に対するEUV光の反射率が2%以下となるように設定されていることにより、吸収体膜に対するEUV光の反射率を2%以下に抑えることができるので、転写パターン形成領域と、転写パターンが露出している反射領域とのコントラストを高め、反射型マスクを使用して高精細なパターン転写を実現することができる。
【0027】
(構成12)
構成7に記載の製造方法により得られる反射型マスク、もしくは、構成8乃至11のいずれかに記載の反射型マスクを用いて半導体基板上にパターン形成する工程を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
上記構成12にあるように、本発明の反射型マスクを用いたパターン転写により半導体基板上にパターン形成を行って半導体装置を製造することにより、欠陥の少ない高品質の半導体装置を得ることができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、吸収体膜に対するEUV光の反射率を2%以下に抑えることができる反射型マスクブランク及び反射型マスクを得ることができる。
また、本発明によれば、従来よりも薄い吸収体膜の膜厚でEUV光に対する低い反射率が得られる反射型マスクブランク及び反射型マスクを得ることができる。
また、本発明の反射型マスクブランクを用いて反射型マスクを製造することにより、吸収体膜に対するEUV光の反射率を2%以下に抑えることができ、従来よりも薄い吸収体膜の膜厚でEUV光に対する低い反射率が得られる反射型マスクを得ることができる。
またさらには、本発明の反射型マスクを用いたパターン形成により半導体装置を製造することにより、欠陥の少ない高品質の半導体装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明に係る反射型マスクブランクの一実施形態の層構成を示す断面図である。
図2】本発明に係る反射型マスクブランクの一実施形態の詳細な層構成を示す断面図である。
図3】本発明に係る反射型マスクの層構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明を実施の形態により詳細に説明する。
[反射型マスクブランク]
最初に、本発明に係る反射型マスクブランクについて説明する。
図1は、本発明に係る反射型マスクブランクの一実施形態の層構成を示す断面図であり、基板1の上に、露光光であるEUV光を反射する多層反射膜2と、該多層反射膜を保護するための保護膜3と、EUV光を吸収する転写パターン形成用の吸収体膜4とを備えた構造の反射型マスクブランク10を示す。
なお、図示していないが、基板1の多層反射膜等が形成されている側とは反対側に裏面導電膜を設けることができる。
【0031】
上記基板1は、EUV露光用の場合、露光時の熱によるパターンの歪みを防止するため、0±5ppb/℃の範囲内の低熱膨張係数を有するものが好ましく用いられ、この範囲の低熱膨張係数を有する素材としては、例えば、SiO−TiO系ガラス、多成分系ガラスセラミックス等を用いることができる。
【0032】
上記基板1の転写パターンが形成される側の主表面は、少なくともパターン転写精度、位置精度を得る観点から高平坦度となるように表面加工されている。例えば、EUV露光用の場合、基板の転写パターンが形成される側の主表面132mm×132mmの領域において、平坦度が0.1μm以下であることが好ましく、さらに好ましくは0.05μm以下、特に好ましくは0.03μm以下である。また、転写パターンが形成される側と反対側の主表面は、露光装置にセットする時に静電チャックされる面であって、142mm×142mmの領域において、平坦度が1μm以下、さらに好ましくは0.5μm以下、特に好ましくは0.03μm以下である。
【0033】
また、EUV露光用の場合、基板1として要求される表面平滑度は、基板の転写パターンが形成される側の主表面の表面粗さが、二乗平均平方根粗さ(RMS)で0.1nm以下であることが好ましい。
【0034】
上記多層反射膜2は、屈折率の異なる元素が周期的に積層された多層膜であり、一般的には、低屈折率材料である重元素又はその化合物の薄膜(低屈折率層)と、高屈折率材料である軽元素又はその化合物の薄膜(高屈折率層)とが交互に40〜60周期程度積層された多層膜が用いられる。多層反射膜2は、基板側から高屈折率層と低屈折率層をこの順に積層した積層構造を1周期として複数周期積層しても良いし、基板側から低屈折率層と高屈折率層をこの順に積層した積層構造を1周期として複数周期積層してもよい。低屈折率材料としては、Mo、Ru、Rh、Ptから選ばれる元素やこれらの合金が用いられ、高屈折率材料としては、Si又はSi化合物が用いられる。例えば、波長13〜14nmのEUV光に対する多層反射膜としては、好ましくは、Mo膜とSi膜を交互に40〜60周期程度積層したMo/Si周期積層膜が好ましく用いられる。
【0035】
上記多層反射膜2は、例えばイオンビームスパッタリング法により、各層を成膜することにより形成できる。上述したMo/Si周期多層膜の場合、例えばイオンビームスパッタリング法により、まずSiターゲットを用いて厚さ数nm程度のSi膜を成膜し、その後、Moターゲットを用いて厚さ数nm程度のMo膜を成膜し、これを一周期として、40〜60周期積層する。
【0036】
本実施の形態においては、上記多層反射膜2の上に、吸収体膜のパターニング或いはパターン修正の際に該多層反射膜を保護するための保護膜3(キャッピング層あるいはバッファ層とも呼ばれることがある。)を設けている。このような保護膜3の材料としては、例えば、ケイ素のほか、ルテニウムや、ルテニウムにニオブ、ジルコニウム、ロジウムのうちの1以上の元素を含有するルテニウム化合物が好ましく用いられる。この他には、クロム系材料が用いられることもある。また、保護膜3は、上述の材料の積層膜としても良い。
【0037】
保護膜3がルテニウムや、ルテニウム化合物の場合、その膜厚としては、例えば1nm〜5nmの範囲が好ましい。膜厚が1nmより薄いと、多層反射膜を保護する機能が十分に得られないおそれがある。一方、膜厚が5nmよりも厚いと、マスクの反射領域となる保護膜を有する多層反射膜の反射率を低下させるおそれがある。
また、保護膜がケイ素と、ルテニウム又はルテニウム化合物との積層膜の場合、積層膜の膜厚としては、例えば6.5nm〜7nmの範囲が好ましい。
【0038】
保護膜3の成膜方法は特に限定されず、通常、イオンビームスパッタリング法や、マグネトロンスパッタリング法などが適用されるが、欠陥低減の観点からは、上記多層反射膜2、保護膜3を連続してイオンビームスパッタリング法で成膜することが望ましい。上記多層反射膜2を成膜後、異なる成膜方法を行う場合は、基板をいったん大気に出すことになるので、発塵の可能性があるからである。
【0039】
図2は、本発明に係る上記反射型マスクブランクの一実施形態の詳細な層構成を示す断面図である。
図2に示すように、本実施の形態の上記反射型マスクブランク10は、基板1上に、高屈折率層としてSi膜21と低屈折率層としてMo膜22とを交互に積層させた多層反射膜2を備えている。この場合、多層反射膜2の最上層はMo膜22である。
【0040】
さらに、この多層反射膜2の上に設けられる上記保護膜3としては、上記多層反射膜2の最上層がMo膜であることから反射率の低下を抑えるためのケイ素膜と、エッチング防止機能を有する上記ルテニウム化合物膜との積層膜などが好適である。
【0041】
また、上記吸収体膜4は、露光光であるEUV光を吸収する機能を有するものである。本発明においては、上記吸収体膜4は、位相制御層41と、該位相制御層41上に、高屈折率材料層42と低屈折率材料層43とを交互に積層した積層膜として構成されており、反射型マスクブランク10に入射し、前記多層反射膜2を構成する低屈折率層としてのMo膜22と前記高屈折率層としてのSi膜21との各界面での反射、および、前記保護膜3の表面での反射による反射光(A)と、前記吸収体膜4を構成する前記位相制御層41、前記高屈折率材料層42、及び前記低屈折率材料層43との各界面での反射による反射光(B)の位相が異なることにより、該吸収体膜に対するEUV光の反射率が2%以下となるように、前記位相制御層41の膜厚が設定されていることを特徴としている。
なお、本発明において、EUV光反射率とは、反射型マスクブランクに対し、EUV光を入射角6.0度で入射させて測定したときの反射率をいうものとする。
【0042】
本発明の反射型マスクブランクは、上記のとおり、吸収体膜4は、位相制御層41と、該位相制御層41上に、高屈折率材料層42と低屈折率材料層43とを交互に積層した積層膜として構成されており、反射型マスクブランク10に入射し、前記多層反射膜2を構成する低屈折率層としてのMo膜22と前記高屈折率層としてのSi膜21との各界面での反射、および、前記保護膜3の表面での反射による反射光(A)と、前記吸収体膜4を構成する前記位相制御層41、前記高屈折率材料層42、及び前記低屈折率材料層43との各界面での反射による反射光(B)の位相が異なることにより、該吸収体膜に対するEUV光の反射率が2%以下となるように、前記位相制御層41の膜厚が設定されていることにより、吸収体膜に対するEUV光の反射率を2%以下に抑えることができ、反射領域とのコントラストを高めて、本発明の反射型マスクブランクを用いて製造される反射型マスクを使用して高精細なパターン転写を実現することができる。
また、本発明の反射型マスクブランクは、従来よりも薄い吸収体膜の膜厚でEUV光に対する低い反射率(例えば2%以下)が得られる。つまり、吸収体膜を従来よりも薄膜化することができるため、前述の従来技術におけるシャドウイングや高アスペクト比による種々の問題点を解消することができる。
【0043】
上述の本発明による作用効果をより効果的に発揮させるためには、前記位相制御層は、反射型マスクブランクに入射し、前記反射光(A)光と、前記反射光(B)との位相が、180°±10°異なるように膜厚が設定されていることが望ましい。
【0044】
図2に示す本発明の一実施形態では、上記吸収体膜4は、位相制御層41と、その上の高屈折率材料層42と低屈折率材料層43の交互積層膜とで構成されている。吸収体膜4の薄膜化の効果を得るために、上記位相制御層41の材料は、波長13.5nmにおける消衰係数kが0.03以上の材料とすることが好ましい。好ましくは、上記位相制御層41の材料は、波長13.5nmにおける消衰係数kは0.03以上0.1以下が望ましい。ここで、上記吸収体膜4の最下層の位相制御層41と、その上層の各低屈折率材料層43とは、同一の材料でも異なる材料でも構わない。また、位相制御層41と低屈折率材料層43の膜厚についても、同一でもあっても異なっていてもよい。また、位相制御層41上の、高屈折率材料層42と低屈折率材料層43の交互積層膜は同周期長とすることが好ましい。なお、吸収体膜4の薄膜化の効果、及び反射率の低減効果は低くなるが、本発明の効果を逸脱しない範囲で、上記吸収体膜4を、位相制御層41と、その上の低屈折率材料層43と高屈折率材料層42の交互積層膜で構成してもよい。位相制御層41は、上記多層反射膜2を構成する上記低屈折率層のMo膜と、上記高屈折率層のSi膜の各界面での反射、及び、上記保護膜3の表面での反射による反射光(A)と、上記吸収体膜を構成する位相制御層41、高屈折率材料層42、低屈折率材料層43との各界面での反射による反射光(B)の位相が異なるように、位相を調整する働きを有する層である。
【0045】
図2に示すとおり、上記位相制御層41は、反射型マスクブランク10に入射し、前記吸収体膜4を構成する位相制御層41、高屈折率材料層42及び低屈折率材料層43の各界面での反射による反射光Bと、前記吸収体膜4を透過し前記多層反射膜2を構成する低屈折率層のMo膜と高屈折率層のSi膜の各界面での反射、及び前記保護膜表面での反射による反射光Aとの位相が、180°±10°異なることにより、吸収体膜4を透過し多層反射膜2からの反射光Aを、これと逆位相の吸収体膜4からの反射光Bで打ち消し、EUV光吸収領域での反射光を抑制することができる。従って、結果的に吸収体膜4(EUV光吸収領域)に対するEUV光の反射率を2%以下に抑えることができる。しかも、上記吸収体膜4を本発明の多層膜構成とすることにより、従来よりも薄い吸収体膜の膜厚でEUV光に対する低い反射率を得ることができる。
本発明においては、上記吸収体膜4で反射するEUV光(反射光B)と、上記吸収体膜4を透過し多層反射膜2で反射するEUV光(反射光A)との位相差は、180°±7.5°であることがより好ましい。
【0046】
本発明の反射型マスクブランクにおいては、上記のとおり、吸収体膜4のEUV光反射率は、2%以下とすることができる。好ましくは1%以下であり、さらに好ましくは0.5%以下であり、0.2%以下であることが最も望ましい。
また、本発明の反射型マスクブランクにおいては、吸収体膜の膜厚を薄膜化でき、例えば60nm以下であることが好ましい。より好ましくは、50nm以下であり、さらに好ましくは45nm以下であり、40nm以下であることが最も望ましい。
【0047】
上述のEUV光反射率、吸収体膜の膜厚を満たすため、本発明の上記多層膜の吸収体膜4を構成する低屈折率材料層43及び高屈折率材料層42の各々の屈折率、消衰係数は以下の条件を満たすことが好ましい。
すなわち、前記吸収体膜4を構成する低屈折率材料層43は、波長13.5nmにおける屈折率n(low)は、0.95以下であり、消衰係数k(low)は、0.03以上であることが好ましい。さらに好ましくは、前記低屈折率材料層43は、波長13.5nmにおける屈折率n(low)は、0.93以下であり、消衰係数k(low)は、0.04以上であることが望ましい。なお、前記低屈折率材料層43は、波長13.5nmにおける屈折率n(low)の下限値は0.83以上、消衰係数k(low)の上限値は0.1以下であることが好ましい。
【0048】
また、前記吸収体膜4を構成する高屈折率材料層42は、波長13.5nmにおける屈折率n(high)は、
n(high)≧1.46×n(low) −0.41
で示される条件を満たすことが好ましい。また、この高屈折率材料層42の消衰係数については特に制約はなく、任意である。
【0049】
本発明においては、上述の吸収体膜のEUV光反射率を2%以下に抑え、かつ吸収体膜を従来よりも薄膜化する観点からは、前記吸収体膜を構成する低屈折率材料層及び高屈折率材料層は、各々の屈折率と消衰係数が上記の条件を満たすことが好ましい。
【0050】
即ち、上記吸収体膜4は、位相制御層41と、該位相制御層41上に、高屈折率材料層42と低屈折率材料層43とを交互に積層した積層膜して構成され、かつ前記吸収体膜4の膜厚は例えば60nm以下であり、前記位相制御層41は、波長13.5nmにおける消衰係数kが0.03以上の材料であって、前記低屈折率材料層43は、波長13.5nmにおける屈折率n(low)は0.95以下、消衰係数k(low)は0.03以上であり、前記吸収体膜を構成する前記高屈折率材料層は、波長13.5nmにおける屈折率n(high)は、
n(high)≧1.46×n(low) −0.41
で示される条件を満たす材料であって、前記吸収体膜4に対するEUV光の反射率が所定の反射率以下になるように、前記位相制御層41の膜厚が設定されているので、従来よりも薄い吸収体膜の膜厚(60nm以下)でEUV光に対する低い反射率(例えば、2%以下)が得られるので、吸収体膜を従来よりも薄膜化することができ、従来のシャドウイングや高アスペクト比による種々の問題点を解消することができる反射型マスクブランクが得られる。
【0051】
本発明の反射型マスクブランクの吸収体膜に適用可能な位相制御層、及び、低屈折率材料層の材料としては、例えば、Ta,Cr,Ag,Pd,W,Fe,Pt,Au,Co,Ir,Ni,Snから選ばれる少なくとも1種の金属、若しくは該金属を含む合金、並びに前記金属、合金の酸化物、窒化物、炭化物、酸化窒化物、酸化炭化物、窒化炭化物、酸化窒化炭化物、ホウ化物、ホウ化酸化物、ホウ化窒化物、ホウ化酸化窒化物などが好ましく挙げられる。
また、本発明の反射型マスクブランクの吸収体膜に適用可能な高屈折率材料層の材料としては、例えば、Si,Al,Cu,Zn,Te,Ge,Mg,Hf,Zrから選ばれる少なくとも1種の金属、若しくは該金属を含む合金、並びに前記金属、合金の酸化物、窒化物、炭化物、酸化窒化物、酸化炭化物、窒化炭化物、酸化窒化炭化物、硼化物、硼化酸化物、硼化窒化物、硼化酸化窒化物などが好ましく挙げられる。
なお、上記位相制御層、低屈折率材料層、高屈折率材料層において、上記金属若しくは金属を含む合金の硼化物、硼化酸化物、硼化窒化物、硼化酸化窒化物を採用すると、結晶構造がアモルファス構造をとるので、吸収体膜表面が平滑化でき、欠陥検査における致命欠陥が検出し易くなる等の効果が得られるので好ましい。
【0052】
また、上記の好ましい屈折率n、消衰係数kの範囲に含まれる低屈折率材料層と高屈折率材料層の材料の組み合わせに関しては、以下の表1のとおりである。
【0053】
【表1】
【0054】
上記表1において、「○」は高屈折率材料層と低屈折率材料層の積層構造を1周期とした場合に、3〜6周期で、吸収体膜の膜厚が50nm以下となる好ましい材料の組み合わせであり、「◎」は、高屈折率材料層と低屈折率材料層の積層構造を1周期とした場合に、2周期で、吸収体膜の膜厚が20nm以下、反射率2%以下となるさらに好ましい材料の組み合わせである。
【0055】
上記吸収体膜4の成膜方法は特に限定されないが、本発明においては吸収体膜が、位相制御層、低屈折率材料層と高屈折率材料層の積層膜で構成される観点からは、イオンビームスパッタリング法で形成するのが好ましく、この場合、位相制御層、高屈折率層及び低屈折率層の材料は、上述に列記した金属若しくは合金が良い。また、上記多層反射膜2、保護膜3、及び吸収体膜4を連続してイオンビームスパッタリング法で形成することによって、欠陥低減効果も得られる。たとえば、従来のように吸収体膜の成膜にDCスパッタリング法を適用する場合、多層反射膜(及び保護膜)の成膜後に基板をいったん大気に出すことになるので、発塵の可能性がある。
上記吸収体膜4を構成する低屈折率材料層と高屈折率材料層の各膜厚や、繰返し周期などは、吸収体膜に適用する材料によっても異なるので一概には言えないが、たとえばシミュレーション法によって適宜決定することが好ましい。
なお、反射型マスクブランクにおいて、波長193nm、257nm等のEUV光に比べて長波長の検査光を使用した欠陥検査を行うことを想定し、本発明の効果(薄膜化効果とEUV光に対する反射率)を逸脱しない範囲で、上記吸収体膜4上に、上記検査光に対して反射率低減効果を有する反射防止膜を設けても良い。
【0056】
また、上記反射型マスクブランクは、吸収体膜に所定の転写パターンを形成するためのレジスト膜が形成された状態であっても構わない。
【0057】
以上のように、本発明の反射型マスクブランクによれば、吸収体膜に対するEUV光の反射率を2%以下に抑えることができるので、本発明の反射型マスクブランクを用いて製造される反射型マスクを使用して高精細なパターン転写を実現することができる。また、従来よりも薄い吸収体膜の膜厚でEUV光に対する低い反射率(例えば2%以下)が得られるので、吸収体膜を従来よりも薄膜化することができ、従来のシャドウイングや高アスペクト比による種々の問題点を解消することができる。
【0058】
[反射型マスク]
また、本発明は、反射型マスクおよび上記構成の反射型マスクブランクを用いる反射型マスクの製造方法についても提供する。
図3は反射型マスクの層構成を示す断面図であり、図1または図2の反射型マスクブランク10における吸収体膜4がパターニングされた吸収体膜パターン4aを備える反射型マスク20を示す。
【0059】
本発明の反射型マスクは、基板上にEUV光を反射する多層反射膜と、前記多層反射膜上に該多層反射膜を保護するためのエッチング防止機能を有する保護膜と、該保護膜上に吸収体膜からなる転写パターンとを備える反射型マスクであって、前記多層反射膜は、前記基板上に、低屈折率層と高屈折率層を積層した積層構造を1周期として複数周期積層した構成のものであり、前記吸収体膜は、位相制御層上に、高屈折率材料層と低屈折率材料層とを交互に積層した積層膜とで構成されており、前記反射型マスクブランクに入射し、前記多層反射膜を構成する前記低屈折率層と前記高屈折率層の各界面での反射、および、前記保護膜表面での反射による反射光(A)と、前記吸収体を構成する前記位相制御層、前記高屈折率材料層、及び前記低屈折率材料層との各界面での反射による反射光(B)の位相が異なることにより、前記吸収体膜に対するEUV光の反射率が2%以下となるように、前記位相制御層の膜厚が設定されている。
【0060】
上述の本発明の反射型マスクブランクを用いて反射型マスクを製造する場合、反射型マスクブランク10における転写パターンとなる上記吸収体膜4をパターニングする方法は、高精細のパターニングを行うことができるフォトリソグラフィー法が最も好適である。上述の実施形態では、前記多層反射膜2と前記吸収体膜4との間に、多層反射膜を保護するためのエッチング防止機能を有する保護膜3を備えることにより、吸収体膜のパターン形成にエッチングを含むフォトリソ法を適用することができ、吸収体膜のパターニング時に多層反射膜のダメージを防止することができる。
【0061】
以上のように、本発明の反射型マスクによれば、吸収体膜のEUV光反射率を2%以下に抑えることができるので、反射領域とのコントラストを高めて、本発明の反射型マスクを使用して高精細なパターン転写を実現することができる。また、従来よりも薄い吸収体膜の膜厚でEUV光に対する低い反射率(例えば2%以下)が得られるので、吸収体膜を従来よりも薄膜化することができ、従来のシャドウイングや高アスペクト比による種々の問題点を解消することができる。
【0062】
また、本発明の反射型マスクの好ましい一実施の形態としては、基板上にEUV光を反射する多層反射膜と、前記多層反射膜上に該多層反射膜を保護するためのエッチング防止機能を有する保護膜と、該保護膜上に吸収体膜からなる転写パターンとを備える反射型マスクであって、前記多層反射膜は、前記基板上に、低屈折率層と高屈折率層を積層した積層構造を1周期として複数周期積層した構成のものであり、前記吸収体膜は、位相制御層と、該位相制御層上に、高屈折率材料層と低屈折率材料層とを交互に積層してなる積層膜とで構成され、かつ前記吸収体膜の膜厚は60nm以下であり、前記位相制御層は、波長13.5nmにおける消衰係数kが0.03以上の材料とし、前記低屈折率材料層は、波長13.5nmにおける屈折率n(low)は0.95以下、消衰係数k(low)は0.03以上とし、前記吸収体膜を構成する前記高屈折率材料層は、波長13.5nmにおける屈折率n(high)は、
n(high)≧1.46×n(low) −0.41
で示される条件を満たす材料であって、前記転写パターン形成領域におけるEUV光の反射率が、前記転写パターンが露出している反射領域におけるEUV光の反射率に対して、前記転写パターンを認識できる程度に差を有するように、前記位相制御層の膜厚が設定されていることを特徴とする反射型マスクである。この実施形態の反射型マスクにより、従来よりも薄い吸収体膜の膜厚(60nm以下)でEUV光に対する低い反射率(例えば、2%以下)が得られるので、吸収体膜を従来よりも薄膜化することができ、従来のシャドウイングや高アスペクト比による種々の問題点を解消することができる反射型マスクが得られる。
【0063】
また、本発明の反射型マスクを用いたパターン転写によって半導体基板上に所望のパターン形成を行って半導体装置を製造することにより、欠陥の少ない高品質の半導体装置を得ることができる。
【実施例】
【0064】
以下、実施例により、本発明の実施の形態を更に具体的に説明する。
(実施例1)
使用する基板は、SiO−TiO系のガラス基板(6インチ角、厚さが6.35mm)である。
そして、このガラス基板の端面を面取加工、及び研削加工、更に酸化セリウム砥粒を含む研磨液で粗研磨処理を終えたガラス基板を両面研磨装置のキャリアにセットし、研磨液にコロイダルシリカ砥粒を含むアルカリ水溶液を用い、所定の研磨条件で精密研磨を行った。精密研磨終了後、ガラス基板に対し洗浄処理を行った。
以上のようにして、EUV反射型マスクブランク用ガラス基板を作製した。この得られたガラス基板の主表面の表面粗さは、二乗平均平方根粗さ(RMS)で、0.10nm以下と良好であった。また、平坦度は、測定領域132mm×132mmで30nm以下と良好であった。
【0065】
次に、上記反射型マスクブランク用ガラス基板の転写パターンが形成される側と反対側の主表面(露光装置にセットする時に静電チャックされる面)に以下のようにしてCrN導電膜を形成した。
即ち、Crターゲットを使用し、アルゴン(Ar)と窒素の混合ガスを用いたDCマグネトロンスパッタリング法によりCrN導電膜(膜厚20nm、Cr:N=90:10 原子%比)を成膜した。
【0066】
次に、上記導電膜付きガラス基板をイオンビームスパッタリング装置にセットし、上記ガラス基板の転写パターンが形成される側の主表面(上記導電膜が形成されていない面)上に、以下のようにして多層反射膜、保護膜、および吸収体膜を連続して形成した。
【0067】
まず、基板上に形成される多層反射膜は、13〜14nmの露光光波長帯域に適した多層反射膜とするために、Mo膜/Si膜周期多層反射膜を採用した。多層反射膜は、MoターゲットとSiターゲットを使用し、イオンビームスパッタリングにより基板上に交互に積層して形成した。
まず、Si膜を4.2nm成膜し、続いて、Mo膜を2.8nm成膜し、これを一周期とし、同様にして40周期積層し、多層反射膜を形成した。
【0068】
この後、同じくイオンビームスパッタリングにより、上記多層反射膜上に保護膜を以下のように成膜した。
まず、Siターゲットを使用し、Si膜を4.0nm成膜した。続いて、RuNbターゲット(Ru:Nb=80:20 原子%比)を使用して、RuNb膜を2.5nm成膜した。
【0069】
ここで、反射率測定用に上記と同様にして作製したサンプルを装置から取り出し、この保護膜を有する多層反射膜に対し、13.5nmのEUV光を入射角6.0度で反射率を測定したところ、反射率は65.3%であった。
【0070】
次に、同じくイオンビームスパッタリングにより、上記保護膜上に吸収体膜を以下のように成膜した。
まず、TaBターゲット(Ta:B=90:10 原子%比)を使用し、位相制御層のTaB膜を4.0nm成膜した。続いて、AlターゲットとTaBターゲット(Ta:B=90:10 原子%比)を使用し、高屈折率材料層のAl膜を3.5nm成膜した後、低屈折率材料層のTaB膜を3.5nm成膜し、これを一周期とし、同様にして5周期積層し、Al膜とTaB膜の交互積層膜からなる吸収体膜を形成した。
以上のようにして、本実施例の反射型マスクブランクを作製した。
なお、上記位相制御層のTaB膜の波長13.5nmにおける消衰係数kは0.03で、高屈折率材料層のAl膜の屈折率nは1.00、消衰係数kは0.03、低屈折率材料層のTaB膜の屈折率nは0.95、消衰係数kは0.03である。
【0071】
この反射型マスクブランクに対し、13.5nmのEUV光を入射角6.0度で反射率を測定したところ、反射率は1.8%であった。
本実施例の反射型マスクブランクによれば、上記吸収体の総膜厚は39.0nmであり、後述の比較例の反射型マスクブランクにおける吸収体の総膜厚70nmと比べても、大幅に薄膜化することが可能である。
【0072】
次に、この反射型マスクブランクを用いて、半導体デザインルールにおけるDRAM hp10nm世代のパターンを有するEUV露光用反射型マスクを以下のようにして作製した。
まず、上記反射型マスクブランク上に電子線描画用レジスト膜を形成し、電子線描画機を使用して所定のパターン描画を行った。描画後、所定の現像処理を行い、上記反射型マスクブランク上にレジストパターンを形成した。
次に、このレジストパターンをマスクとして、塩素系ガス(Clガス)により、Al膜とTaB膜の交互周期(5周期)積層膜及び下層のTaB膜をドライエッチングし、吸収体膜に転写パターンを形成した。
さらに、吸収体膜パターン上に残ったレジストパターンを熱硫酸で除去し、本実施例の反射型マスクを得た。
【0073】
得られた反射型マスクの最終確認検査を行ったところ、半導体デザインルールにおけるDRAM hp10nm世代のパターンを設計通りに形成できていることが確認できた。
【0074】
以上のように、本実施例の反射型マスクブランク及びこの反射型マスクブランクを用いて作製した反射型マスクにおいては、吸収体膜に対するEUV光反射率を2%以下に抑えることができ、しかも従来よりも薄い吸収体膜の膜厚でEUV光に対する低い反射率(2%以下)が得られ、吸収体膜の薄膜化を実現できることが確認できた。
また、得られた本実施例の反射型マスクを用いて、半導体基板上へのEUV光によるパターン転写を行うと、半導体デザインルールにおけるDRAM hp10nm世代の半導体装置を製造することができる。
【0075】
(実施例2)
実施例1と同様にして準備した反射型マスクブランク用ガラス基板の転写パターンが形成される側と反対側の主表面に実施例1と同様にしてCrN導電膜を形成した。
次に、上記導電膜付きガラス基板をイオンビームスパッタリング装置にセットし、上記ガラス基板の転写パターンが形成される側の主表面上に、以下のようにして多層反射膜、保護膜、および吸収体膜を連続して形成した。
【0076】
まず、基板上に実施例1と同様のSi膜とMo膜の交互積層膜からなる多層反射膜を形成した。
この後、上記多層反射膜上に、実施例1と同様にしてSi膜とRuNb膜の積層膜からなる保護膜を形成した。
【0077】
ここで、反射率測定用に上記と同様にして作製したサンプルを装置から取り出し、この保護膜を有する多層反射膜に対し、13.5nmのEUV光を入射角6.0度で反射率を測定したところ、反射率は65.3%であった。
【0078】
次に、同じくイオンビームスパッタリングにより、上記保護膜上に吸収体膜を以下のように成膜した。
まず、TaBターゲット(Ta:B=90:10 原子%比)を使用し、位相制御層のTaB膜を4.0nm成膜した。続いて、Si(アモルファス)ターゲットとTaBターゲット(Ta:B=90:10 原子%比)を使用し、高屈折率材料層のSi膜を2.7nm成膜した後、低屈折率材料層のTaB膜を4.4nm成膜し、これを一周期とし、同様にして6周期積層し、Si膜とTaB膜の交互積層膜からなる吸収体膜を形成した。
以上のようにして、本実施例の反射型マスクブランクを作製した。
なお、上記位相制御層のTaB膜の波長13.5nmにおける消衰係数kは0.03で、高屈折率材料層のSi膜の屈折率nは1.00、消衰係数kは0.002、低屈折率材料層のTaB膜の屈折率nは0.95、消衰係数kは0.03である。
【0079】
この反射型マスクブランクに対し、13.5nmのEUV光を入射角6.0度で反射率を測定したところ、反射率は1.6%であった。
本実施例の反射型マスクブランクによれば、上記吸収体の総膜厚は46.6nmであり、後述の比較例の反射型マスクブランクにおける吸収体の総膜厚70nmと比べても、大幅に薄膜化することが可能である。
【0080】
次に、この反射型マスクブランクを用いて、半導体デザインルールにおけるDRAM hp10nm世代のパターンを有するEUV露光用反射型マスクを以下のようにして作製した。
まず、上記反射型マスクブランク上に電子線描画用レジスト膜を形成し、電子線描画機を使用して所定のパターン描画を行った。描画後、所定の現像処理を行い、上記反射型マスクブランク上にレジストパターンを形成した。
次に、このレジストパターンをマスクとして、フッ素系ガス(CFガス)により、Si膜とTaB膜の交互周期(6周期)積層膜及び下層のTaB膜をドライエッチングし、吸収体膜に転写パターンを形成した。
さらに、吸収体膜パターン上に残ったレジストパターンを熱硫酸で除去し、本実施例の反射型マスクを得た。
【0081】
得られた反射型マスクの最終確認検査を行ったところ、半導体デザインルールにおけるDRAM hp10nm世代のパターンを設計通りに形成できていることが確認できた。
【0082】
以上のように、本実施例の反射型マスクブランク及びこの反射型マスクブランクを用いて作製した反射型マスクにおいては、吸収体膜に対するEUV光反射率を2%以下に抑えることができ、しかも従来よりも薄い吸収体膜の膜厚でEUV光に対する低い反射率(2%以下)が得られ、吸収体膜の薄膜化を実現できることが確認できた。
また、得られた本実施例の反射型マスクを用いて、半導体基板上へのEUV光によるパターン転写を行うと、半導体デザインルールにおけるDRAM hp10nm世代の半導体装置を製造することができる。
【0083】
(実施例3)
実施例1と同様にして準備した反射型マスクブランク用ガラス基板の転写パターンが形成される側と反対側の主表面に実施例1と同様にしてCrN導電膜を形成した。
次に、上記導電膜付きガラス基板をイオンビームスパッタリング装置にセットし、上記ガラス基板の転写パターンが形成される側の主表面上に、以下のようにして多層反射膜、保護膜、および吸収体膜を連続して形成した。
【0084】
まず、基板上に実施例1と同様のSi膜とMo膜の交互積層膜からなる多層反射膜を形成した。
この後、上記多層反射膜上に、実施例1と同様にしてSi膜とRuNb膜の積層膜からなる保護膜を形成した。
【0085】
ここで、反射率測定用に上記と同様にして作製したサンプルを装置から取り出し、この保護膜を有する多層反射膜に対し、13.5nmのEUV光を入射角6.0度で反射率を測定したところ、反射率は65.3%であった。
【0086】
次に、同じくイオンビームスパッタリングにより、上記保護膜上に吸収体膜を以下のように成膜した。
まず、W(タングステン)ターゲットを使用し、位相制御層のW膜を4.2nm成膜した。続いて、Si(アモルファス)ターゲットとW(タングステン)ターゲットを使用し、高屈折率材料層のSi膜を2.5nm成膜した後、低屈折率材料層のW膜を4.7nm成膜し、これを一周期とし、同様にして4周期積層し、Si膜とW膜の交互積層膜からなる吸収体膜を形成した。
以上のようにして、本実施例の反射型マスクブランクを作製した。
なお、上記位相制御層のW膜の波長13.5nmにおける消衰係数kは0.04で、高屈折率材料層のSi膜の屈折率nは1.00、消衰係数kは0.002、低屈折率材料層のW膜の屈折率nは0.93、消衰係数kは0.04である。
【0087】
この反射型マスクブランクに対し、13.5nmのEUV光を入射角6.0度で反射率を測定したところ、反射率は1.6%であった。
本実施例の反射型マスクブランクによれば、上記吸収体の総膜厚は33.0nmであり、後述の比較例の反射型マスクブランクにおける吸収体の総膜厚70nmと比べても、大幅に薄膜化することが可能である。
【0088】
次に、この反射型マスクブランクを用いて、半導体デザインルールにおけるDRAM hp10nm世代のパターンを有するEUV露光用反射型マスクを以下のようにして作製した。
まず、上記反射型マスクブランク上に電子線描画用レジスト膜を形成し、電子線描画機を使用して所定のパターン描画を行った。描画後、所定の現像処理を行い、上記反射型マスクブランク上にレジストパターンを形成した。
次に、このレジストパターンをマスクとして、塩素系ガス(SF)と酸素との混合ガスにより、Si膜とW膜の交互周期(4周期)積層膜及び下層のW膜をドライエッチングし、吸収体膜に転写パターンを形成した。
さらに、吸収体膜パターン上に残ったレジストパターンを熱硫酸で除去し、本実施例の反射型マスクを得た。
【0089】
得られた反射型マスクの最終確認検査を行ったところ、半導体デザインルールにおけるDRAM hp10nm世代のパターンを設計通りに形成できていることが確認できた。
【0090】
以上のように、本実施例の反射型マスクブランク及びこの反射型マスクブランクを用いて作製した反射型マスクにおいては、吸収体膜に対するEUV光反射率を2%以下に抑えることができ、しかも従来よりも薄い吸収体膜の膜厚でEUV光に対する低い反射率(2%以下)が得られ、吸収体膜の薄膜化を実現できることが確認できた。
また、得られた本実施例の反射型マスクを用いて、半導体基板上へのEUV光によるパターン転写を行うと、半導体デザインルールにおけるDRAM hp10nm世代の半導体装置を製造することができる。
【0091】
(比較例1)
実施例1と同様にして準備した反射型マスクブランク用ガラス基板の転写パターンが形成される側と反対側の主表面に実施例1と同様にしてCrN導電膜を形成した。
次に、上記導電膜付きガラス基板をイオンビームスパッタリング装置にセットし、上記ガラス基板の転写パターンが形成される側の主表面上に、多層反射膜および保護膜を連続して形成した。
【0092】
まず、基板上に実施例1と同様のSi膜とMo膜の交互積層膜からなる多層反射膜を形成した。
続いて、上記多層反射膜上に、実施例1と同様にしてSi膜とRuNb膜の積層膜からなる保護膜を形成した。
【0093】
ここで、多層反射膜付き基板を装置から取り出し、この保護膜を有する多層反射膜に対し、13.5nmのEUV光を入射角6.0度で反射率を測定したところ、反射率は65.3%であった。
【0094】
次に、上記のようにして作製した多層反射膜付き基板の保護膜上に、吸収体膜として、TaBSiN膜(膜厚60nm、Ta:B:Si:N=70:3:10:17 原子%比)とTaBSiON膜(膜厚10nm、Ta:B:Si:O:N=40:3:10:37:10 原子%比)の積層膜をDCマグネトロンスパッタリング法によって成膜した。上記吸収体の総膜厚は70nmである。
以上のようにして、本比較例の反射型マスクブランクを作製した。
この反射型マスクブランクに対し、13.5nmのEUV光を入射角6.0度で反射率を測定したところ、反射率は0.4%であった。
【0095】
次に、この反射型マスクブランクを用いて、半導体デザインルールにおけるDRAM hp10nm世代のパターンを有するEUV露光用反射型マスクを以下のようにして作製した。
まず、上記反射型マスクブランク上に電子線描画用レジスト膜を形成し、電子線描画機を使用して所定のパターン描画を行った。描画後、所定の現像処理を行い、上記反射型マスクブランク上にレジストパターンを形成した。
次に、このレジストパターンをマスクとして、フッ素系ガス(CFガス)により上層のTaBSiON膜を、塩素系ガス(Clガス)により下層のTaBSiN膜をドライエッチングし、吸収体膜に転写パターンを形成した。
さらに、吸収体膜パターン上に残ったレジストパターンを熱硫酸で除去し、本比較例の反射型マスクを得た。
【0096】
得られた反射型マスクの最終確認検査を行ったところ、半導体デザインルールにおけるDRAM hp10nm世代のパターンを設計通りに形成できていることが確認できた。
但し、得られた本比較例の反射型マスクを用いて、半導体基板上へのEUV光によるパターン転写を行うと、吸収体膜の膜厚が70nmと厚いため、シャドウイングや高アスペクト比によるパターン欠陥を生じる可能性がある。
【符号の説明】
【0097】
1 基板
2 多層反射膜
21 Si層
22 Mo層
3 保護膜
4 吸収体膜
41 位相制御層
43 低屈折率材料層
42 高屈折率材料層
10 反射型マスクブランク
20 反射型マスク
図1
図2
図3